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いう 点 である。 素 朴 な 一 例 をあげれば、 我 々はなるほど、おそらくは 真 木 の 言 うとおり 直 線 的 な 時 間<br />

を 生 きていると 思 われる。しかし 我 々は 昼 と 夜 のグラデーションを 持 つ 一 日 を 生 き、 四 季 が 連 続 して<br />

巡 る 一 年 を 生 きている。そして、いまだ 世 の 中 から 消 え 去 るには 至 っていないアナログ 時 計 の 形 状<br />

、、<br />

は、「 円 環 」である。 様 々な 時 間 性 が、このように 一 つの 社 会 に「 同 居 」している。 真 木 はこのことを 全<br />

く 意 識 していないとは 言 わない。(さもなければ、 直 線 的 時 間 性 からの「 解 放 」の 可 能 性 を 呈 示 する<br />

ことは 出 来 ないだろう。)しかし、 時 間 性 の「 共 存 」をうまく 説 明 できているとも 言 えないと 思 う。もちろ<br />

ん、 真 木 はこの 説 明 が「 理 念 型 」という 社 会 学 的 方 法 に 則 っているということに 意 識 的 であって、 時<br />

間 意 識 の 類 型 そのものが 方 法 論 的 に 整 備 された 概 念 であって、 実 際 に 存 在 する 時 間 意 識 が 混 淆<br />

的 であることは 真 木 自 身 百 も 承 知 であるだろう。<br />

だから 次 の 問 題 のほうがより 根 本 的 と 言 えるかもしれないが、 第 二 の 問 題 点 として、 時 間 性 の 区<br />

、、<br />

別 を「 社 会 」という 観 点 から 説 明 しているために、ある 時 間 性 が、そもそもなぜ人 間 という 存 在 者 にと<br />

、、、、、、、<br />

って 可 能 であるのか、を 説 明 し 損 ねている、といえるのではないか。 言 いかえれば、 人 間 の 存 在 仕<br />

方 の 可 能 性 そのもののうちに、そしてその 可 能 性 を 規 定 する 人 間 の 条 件 human condition のうちに、<br />

上 記 の 諸 時 間 へと 展 開 しうる 根 源 が 見 出 し 得 るのではないか、ということである。しかし 社 会 学 は―<br />

― 社 会 という 側 面 から 時 間 を 説 明 する 限 りは――そうした 時 間 の 根 源 としての、 人 間 の 存 在 様 態 そ<br />

のものに 迫 ることは、 不 可 能 ではないとしても 困 難 だろう――アーレントならば、そのように 言 うので<br />

はないかと 私 は 考 える。<br />

第 3 節<br />

言 語 に 表 われる 時 間 意 識<br />

社 会 学 的 時 間 論 は、 時 間 の 多 様 性 、 諸 々の 時 間 経 験 を 導 きだしてきた。ところで、 古 典 ギリシア<br />

語 は、その 言 語 のうちに、 様 々な 単 語 というかたちで、すでに 時 間 の 多 様 性 なるものを 備 えていると、<br />

私 は 考 えている。 詳 細 はこれから 見 るとしても、 一 つの 言 語 が 多 様 な 時 間 経 験 を 暗 示 する 単 語 の<br />

数 々を 備 えているという 事 実 は、 非 常 に 示 唆 的 である。というのもシモーヌ・ヴェイユが 言 うように、<br />

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、<br />

「ことばはそれ 自 体 すでに 思 想 を 内 包 している」 16 からである。ただし、 思 想 とは、 言 葉 が 直 観 的 に<br />

掴 みだした 世 界 の 構 造 や 関 係 を、 跡 づけ 的 に 論 理 にもたらしたものである、と 言 ったほうが 幾 分 適<br />

、、、<br />

切 かもしれないが。それはさておき、 一 言 語 を 共 有 する 一 社 会 において、その 言 語 が 複 数 の 時 間<br />

性 を 示 唆 する 単 語 を 含 むことは、 一 つの 社 会 の 形 態 と 一 つの 時 間 意 識 とが 対 応 するという 前 提 に、<br />

単 純 に 反 駁 する。さらに、その 時 間 の 多 様 性 が 言 語 に 現 われているという 点 から、「 社 会 」よりも 根<br />

源 的 な 次 元 に、 人 間 の 条 件 そのものに、 時 間 の 多 様 性 が 根 ざしていることも、 示 唆 される。<br />

たしかにヴェイユが「ことばは 社 会 が 自 然 につくりだしたものであって、 私 たちがある 語 を 考 えだ<br />

すのは 完 全 に 不 可 能 なこと」 17 であると 言 っているように、 言 葉 が 社 会 において 生 まれるのは 事 実 で<br />

ある。しかし「 社 会 がことばを 作 りだす」とここで 言 うときヴェイユが 意 味 しているのは、 社 会 構 造 が 先<br />

立 ち、その 表 出 として 言 語 や 言 葉 が 形 成 されてゆくということではなく、 社 会 、すなわち 複 数 の 人 間<br />

16 WEIL, Simone. 渡 辺 一 民 / 川 村 孝 則 訳 『ヴェーユの 哲 学 講 義 』ちくま 学 芸 文 庫 、1996 年 、103 頁 。ただし、 翻 訳<br />

では 原 文 イタリック 体 に 対 応 する 個 所 を《…》で 囲 むというように 対 応 しているが、 引 用 に 際 し《》を 外 し、 傍 点 を 付 す<br />

ことにした。<br />

17<br />

同 上 。<br />

6

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