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ここで、 勿 論 世 界 world という 概 念 にも 注 意 しなくてはならないだろう。アーレントが 世 界 という 単<br />

語 を 使 うとき、やはりそれは 現 象 学 や 基 礎 的 存 在 論 に 由 来 する 特 別 な 意 味 合 いを 持 っているから<br />

だ。アーレントは 言 う。<br />

ここでいう 世 界 とは 地 球 とか 自 然 のことではない。 地 球 とか 自 然 は、 人 びとがその 中 を 動 き、 有<br />

機 的 生 命 の 一 般 的 条 件 となっている 限 定 的 空 間 にすぎない。むしろ、ここでいう 世 界 は、 人 間<br />

の 工 作 物 や 人 間 の 手 が 作 った 製 作 物 に 結 びついており、さらに、この 人 工 的 な 世 界 に 共 生 し<br />

ている 人 びとの 間 で 進 行 する 事 象 に 結 びついている。 136<br />

それゆえここでハイデガーにおける 世 界 Welt の 概 念 を 想 起 しておくことは、 無 益 ではないだろう。<br />

ハイデガーにおいては、 現 存 在 ( 人 間 存 在 )は、まさに 世 界 内 存 在 In-der-Welt-sein という 存 在 構 成<br />

Seinsverfassung をもっていた 137 。 世 界 内 存 在 は 存 在 論 的 な 現 存 在 の 構 成 であって、 彼 はそのこと<br />

を「 世 界 性 Weltlichkeit」と 名 指 す。この 世 界 性 を 具 体 的 に 考 察 するさい、 彼 は「 道 具 Zeug」の 分 析<br />

に 着 手 する。 前 節 で 触 れた 被 制 作 的 存 在 者 は、『 存 在 と 時 間 』にあってはまさに 道 具 として 描 かれ<br />

ているので、ここで 世 界 性 の 意 味 と、 被 制 作 性 の 意 味 とが 同 時 に 明 らかとなる。<br />

厳 密 な 意 味 では、ひとつだけの 道 具 は 決 して「 存 在 」しない。 道 具 が 存 在 するには、いつもす<br />

でに、ひとまとまりの 道 具 立 て 全 体 がなければならない。この 道 具 がまさにこの 道 具 であるのは、<br />

このような 道 具 立 て 全 体 においてなのである。 道 具 というものは 本 質 上 、《……するためにある<br />

もの》(»etwas, um zu…«)である。 138<br />

この「するためにある」»Um-zu«という 指 示 に 従 うとき、すなわち 物 が 道 具 として 用 いられるとき、その<br />

道 具 に 特 有 の 便 利 さが 発 見 される。ハイデガーは「 道 具 がこのようにそれ 自 身 の 側 から 現 われてく<br />

るような 道 具 の 存 在 様 態 を、〔 略 〕 用 具 性 〔Zuhandenheit〕となづける」 139 。 世 界 のなかで 出 会 われる<br />

物 は 用 具 的 zuhanden であり、それゆえ「 手 元 に 備 わる zuhanden」ものである。このような 道 具 と 交 渉<br />

する 態 度 を 彼 は 配 慮 Besorgen と 呼 び、このように 道 具 を 指 示 関 係 において 見 る 見 方 を 配 視<br />

Umsicht というが、「 世 界 = 内 = 存 在 とは、 道 具 全 体 の 用 具 的 存 在 にとって 構 成 的 な 機 能 をもつさ<br />

まざまな 指 示 関 係 のなかへ、 非 主 題 的 に 配 視 的 に 融 けこんでいることである」 140 。つまり、 世 界 内 存<br />

、、、、、<br />

在 は、 道 具 の 指 示 関 係 のなかに、その 指 示 関 係 に 気 付 かずに親 しみきっているのだ。「 世 界 とは、<br />

、、、、、、<br />

現 存 在 が 存 在 者 としていつもすでに『そのなかで』 存 在 してきたところ」 141 であり、 上 で 述 べたような<br />

136 Ibid,. p.52. ( 前 掲 訳 書 、78 頁 。)<br />

137 アーレントにおいて、 世 界 が 地 球 や 自 然 を 意 味 しなかったのと 同 様 、ハイデガーもまた、「 世 界 のなかにある」と<br />

いうことを、 単 純 に 世 界 という「 空 間 」の 内 部 にあることと 解 釈 してはならないと 注 意 を 向 ける。ハイデガーはそのよう<br />

な 単 純 に 或 る 空 間 の 中 にあることを 内 部 性 Inwendigkeit と 呼 び、 存 在 論 的 な 世 界 内 存 在 と 鋭 く 区 別 している。<br />

138 HEIDEGGER, Sein und Zeit (ebenda), S.68. ( 前 掲 訳 書 、 上 、162 頁 。)<br />

139 Ebenda, S.69. ( 同 上 、163 頁 。)<br />

140 Ebenda, S.76. ( 同 上 、177 頁 。)<br />

141 Ebenda. ( 同 上 。)<br />

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