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ってもよい。というのも 本 論 の 主 題 は「 時 間 論 」という、どちらかといえば 形 而 上 学 的 なカテゴリーに<br />

属 する 問 題 であるからだ。<br />

第 8 節<br />

活 動 的 生 活 と 精 神 的 生 活<br />

アーレントは、 人 間 の 生 life の 様 式 を 大 きく 二 つに 区 別 している。 第 一 は「 活 動 的 生 活 」vita<br />

activa, tätiges Leben であり、 第 二 は「 精 神 的 生 活 」life of the mind, geistiges Leben である。さらにそ<br />

アクティヴィティ<br />

れぞれのなかに 三 つの 主 要 な 活 動 力 を 認 めている。すなわち、 活 動 的 生 活 における「 労 働 」work、<br />

「 仕 事 」labor、「 活 動 」action の 三 つ、および「 観 想 的 生 活 」における「 思 考 」thinking、「 意 志 」willing、<br />

レー ベ ン<br />

「 判 断 」judging である。 故 にこの 二 つの 生 活 の 区 別 を、この 時 間 論 の 分 析 における 基 本 的 な 範 疇 と<br />

してまず 画 定 しておくことは、 今 後 の 論 の 展 開 においても 重 要 である。 実 際 、 後 に 見 るように、 二 つ<br />

の 生 活 様 式 の 違 いそのものが 時 間 性 の 違 いに 通 じていて、それぞれの 生 活 において、それぞれ<br />

ジ ッ ヒ ・ ツ ァ イ テ ィ ゲ ン<br />

の 仕 方 で 人 間 は 自 らを 時 間 化 する 。ここでは 本 来 的 な 意 味 で「 時 間 とは 生 活 である Zeit ist Leben」<br />

83 。<br />

しかし 我 々はアーレントにおける 活 動 的 生 活 と 精 神 的 生 活 の 区 別 を 見 る 前 に、 先 ず 活 動 的 生 活<br />

、、、、、<br />

と 観 想 的 生 活 という 対 立 概 念 の 問 題 を 確 認 しておく 必 要 がある。 彼 女 は『 人 間 の 条 件 』の 段 階 では、<br />

「 活 動 的 生 活 」vita activa, βίος πολιτικός に 対 立 する 生 活 として、 伝 統 的 区 別 に 従 い「 観 想 的 生 活 」<br />

vita contemplativa, βίος θεωρητικός を 立 てていた。 一 瞥 した 限 りでは、この 観 想 的 生 活 vita<br />

contemplativa は、アーレントが『 精 神 の 生 活 』において 扱 っている 精 神 的 生 活 life of the mind と 等<br />

しく 見 える。しかしこの 二 つには 実 は 相 違 があると 考 えられる。アーレントは『 人 間 の 条 件 』から『 精<br />

神 の 生 活 』に 至 るあいだに―― 実 際 、このあいだに 十 年 以 上 が 経 過 している―― 活 動 的 生 活 対 観<br />

想 的 生 活 という 構 図 から、 活 動 的 生 活 対 精 神 的 生 活 という 構 図 84 への 転 換 を 図 っていると 考 えられ<br />

るのだ。<br />

アーレントは『 人 間 の 条 件 』に 次 のように 書 いている。「 本 書 は、 人 間 の 条 件 の 最 も 基 本 的 な 要 素<br />

を 明 確 にすること、すなわち、 伝 統 的 にも 今 日 の 意 見 によっても、すべての 人 間 存 在 の 範 囲 内 にあ<br />

るいくつかの 活 動 力 だけを 扱 う。このため、あるいはその 他 の 理 由 で、 人 間 がもっている 最 高 の、そ<br />

しておそらくは 最 も 純 粋 な 活 動 力 、すなわち 思 考 〔thinking〕という 活 動 力 は、 本 書 の 考 察 の 対 象 と<br />

レイバ ワ ー ク アクション<br />

はしない。したがって、 理 論 上 の 問 題 として、 本 書 は、 労 働<br />

ー、 仕 事 、 活 動 に 関 する 議 論 に 限 定 され」<br />

る 85 。この 文 章 から 差 し 当 たり 指 摘 できることは、 活 動 的 生 活 に 対 置 される 活 動 力 としては、この 段<br />

階 では 思 考 thinking のみが 考 えられているということである。 無 論 、アーレントが 意 志 willing や 判<br />

断 judging という、 後 に『 精 神 の 生 活 』で 問 題 化 されるような 精 神 的 活 動 力 にまるで 気 が 付 いていな<br />

ファクトゥム<br />

Piper Verlag, 2007, S.18. 拙 訳 。なお「 事 実 」に 関 しては 第 12 節 を 参 照 のこと。<br />

83 ENDE, Michael, Momo oder Die seltsame Geschichte von den Zeit-Dieben und von dem Kind, das den Menschen<br />

die gestohlene Zeit zurückbrachte; Schulausgabe mit Materialien, Stuttgart/Wien: Thienemann Verlag, 2005, S.75.<br />

( 大 島 かおり 訳 『モモ 時 間 どろぼうと 盗 まれた 時 間 を 人 間 にとりかえしてくれた 女 の 子 のふしぎな 物 語 』 岩 波 書 店 、<br />

1976 年 、61 頁 。)<br />

84<br />

念 のため 指 摘 しておくが、ここで 用 いた「 対 」という 表 現 は、 別 に 敵 対 的 対 立 を 表 わすものではなく、 対 称 概 念 とし<br />

て 扱 われていることを 意 味 しているにすぎないものである。<br />

85 ARENDT, The Human Condition (op.cit.), p.5. ( 前 掲 訳 書 、16 頁 。)<br />

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