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神 への 道 程 であり、 歴 史 のなかで 起 こる 出 来 事 は 絶 対 精 神 へと 至 る 手 段 なのだ。 手 段 という 言 い<br />

モ メ ン ト<br />

方 が 適 切 でなければ、 目 的 との 関 係 において 捉 えられるべき、 歴 史 の 展 開 に 組 み 込 まれる 契 機<br />

Momente であった、と 言 い 換 えてもよい。<br />

ヘーゲル 哲 学 の 絶 対 精 神 は、イデアという 概 念 の 一 変 種 であり、その 意 味 でヘーゲル 哲 学 の 論<br />

理 学 ( 存 在 論 )もまた、 制 作 的 存 在 論 の 範 疇 で 思 考 を 展 開 していた。それゆえ、 絶 対 精 神 に 至 る 過<br />

程 として 全 歴 史 を 叙 述 するヘーゲルの 歴 史 哲 学 の 方 法 は、プラトンのイデア 論 が 宿 していた 制 作<br />

的 時 間 概 念 の 可 能 性 の、 全 面 展 開 であると 言 えよう。<br />

ヘーゲル 哲 学 を 批 判 的 に 継 承 したマルクスにおいても、この 事 情 は 変 わらない。 確 かにマルクス<br />

は、「 弁 証 法 は 彼 〔ヘーゲル〕において 頭 で 立 っている。〔 略 〕これをひっくり 返 さなければならない」<br />

164 フ ォ ル ム<br />

と 述 べ、ヘーゲルを 批 判 する。そして 実 際 に、イデア、すなわち 形 相 優 位 であったヘーゲルの<br />

イデアリスムス マ テ リ ー マテリアリスムス<br />

観 念 論 から、 質 料 ( 物 質 ) を 優 位 に 立 たせる 唯 物 論 へと 問 題 を 転 回 させた。その 手 際 は 次 のような<br />

ものである。<br />

マルクスとエンゲルス 曰 く、「ヘーゲルの 体 系 によれば、 理 念 、 思 想 、 概 念 が、 人 間 たちの 現 実 的<br />

な 生 活 、 彼 らの 物 質 的 な 世 界 、 彼 らの 実 在 的 な 諸 関 係 を 産 出 し、 規 定 し、 支 配 してきた」 165 。すな<br />

わち、 理 念 が 先 行 し、 理 念 のほうが 物 質 的 な 世 界 を 動 かし、 作 ることになっている。しかし、「われわ<br />

れが 出 発 点 とする 諸 前 提 は、なんら 恣 意 的 なものではなく、ドグマでもなく、 仮 構 の 中 でしか 無 視 で<br />

きないような 現 実 的 諸 前 提 である。それは 現 実 的 な 諸 個 人 であり、 彼 らの 営 為 であり、そして、 彼 ら<br />

の 眼 前 にすでに 見 出 され、また 彼 ら 自 身 の 営 為 によって 創 出 された、 物 質 的 な 生 活 諸 条 件 である」<br />

166 マ テ リ エ ル<br />

。つまり 思 考 の 産 物 であるような 思 想 、 観 念 、 理 念 を 前 提 に 掲 げるのではなく、 物 質 ( 質 料 ) 的 な<br />

もののほうを 前 提 条 件 として 設 置 するのだ。<br />

、、、、<br />

生 産 の 様 式 は、〔 略 〕すでに、これら 諸 個 人 の 活 動 の 一 定 の 方 式 、 諸 個 人 の 一 定 の 生 活 様 式<br />

である。 諸 個 人 がいかにして 自 分 の 生 を 発 現 するか、それが、 彼 らの 存 在 の 在 り 方 である。 彼<br />

、、<br />

らが 何 であるかということは、それゆえ、 彼 らの 生 産 と 合 致 する。すなわち、 彼 らが 何 を生 産 す<br />

、、、<br />

るか、ならびにまた、 彼 らがいかに生 産 するかということと 合 致 する。それゆえ、 諸 個 人 が 何 で<br />

あるかということは、 彼 らの 生 産 の 物 質 的 諸 条 件 に 依 存 する。 167<br />

164 MARX, Karl, Das Kapital: Kritik der politischen Ökonomie, 1.Bd., Berlin: Dietz Verlag, 1977, S.27. ( 向 坂 逸 郎<br />

訳 『 資 本 論 』( 一 ) 岩 波 文 庫 、1969 年 、32 頁 。)<br />

165 MARX, Karl/ ENGELS, Friedrich, hrsg. von Wataru HIROMATSU, Die Deutsche Ideologie, Neuveröffentlichung des<br />

Abschnittes 1 des Bandes 1 mit text-kritischen Anmerkungen, Tokio: Kawadeshobo-shinsha Verlag, 1974, S.3. ( 廣<br />

松 渉 編 訳 、 小 林 昌 人 補 訳 『 新 編 輯 版 ドイツ・イデオロギー』 岩 波 文 庫 、2002 年 、17 頁 。 引 用 に 際 し、 短 剣 符 〔†〕で<br />

囲 まれている 部 分 は、 削 除 部 ではあるが 本 文 としてそのまま 取 り、〈…〉に 挟 まれている 部 分 は 削 除 部 として 除 外 し<br />

た。さらに、 文 庫 版 ではフォントの 区 別 によりマルクス・エンゲルスどちらの 書 いたものかを 差 別 化 しているが、ここで<br />

はフォントの 区 別 も 無 視 する。 記 号 の 意 味 の 詳 細 に 関 してはここでは 割 愛 するので、 詳 しくは 文 庫 版 の 凡 例 を 参 照<br />

されたい。 以 下 も 断 りがない 限 りこのルールに 従 って 引 用 する。)<br />

166 Ebenda, S.23. ( 前 掲 訳 書 、25 頁 。)<br />

167 Ebenda, S.25. ( 前 掲 訳 書 、27 頁 。)<br />

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