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見 られる。<br />

d)アイオーン<br />

最 後 はアイオーン αἰών という 時 間 性 である。これについては 記 述 が 少 ないが、 辞 書 によれば<br />

「《 時 間 のあいだや 期 間 》、《 人 生 の 時 間 》、《 人 生 》」という 意 味 が 最 初 にあり、 次 に「(より 長 い 期 間<br />

について)《 一 時 代 》、《 世 代 》、《 時 期 》」とある。 最 後 に「《 無 限 に 長 い 時 間 のあいだ》、《 永 遠 》」とい<br />

う 意 味 が 現 れる 43 。『 新 約 聖 書 ギリシャ 語 小 辞 典 』によれば、「もともと 一 定 の 時 間 的 スペースをあら<br />

わす 語 」 44 である(「もともと」というのは、『 新 約 聖 書 』の 用 法 に 対 して、 古 典 ギリシア 語 の 用 法 を 指 し<br />

ていると 思 われる)。 神 格 化 もされているようだが、 記 述 は 簡 潔 で、「 時 または 永 劫 の 擬 人 神 。 前 5 世<br />

紀 以 後 諸 所 でその 崇 拝 、 祭 礼 があったことが 知 られている」 45 とあるのみである。<br />

一 つ 示 唆 的 な 事 実 は、ホメロスにおける 用 法 では、「 人 生 の 期 間 ( 時 間 )」という 意 味 で 用 いられ<br />

ている 46 ということである。アイオーンの 原 義 はおそらくこの 意 味 、すなわち「 人 生 の 時 間 」という 区 切<br />

られた 時 間 であり、その 意 味 から 一 時 代 、 世 代 というやはり 区 切 られた 時 間 を 意 味 するに 至 ったの<br />

だろうと 考 えられる。 現 代 ではアイオーン(イーオン)は、「 永 遠 」という 意 味 のほうがよく 知 られている<br />

が、この 意 味 もおそらく 上 のような「 区 間 」 的 な 時 間 が 引 き 伸 ばされるようにして 生 まれたのだろう。<br />

上 述 の、「 無 限 に 長 い 時 間 のあいだ」というやや 矛 盾 的 な 言 い 回 しもそのことを 示 唆 している。『 新<br />

約 聖 書 ギリシャ 語 小 辞 典 』によれば、「 永 遠 へと 無 限 につながっている 一 連 の 時 代 の 一 つ、の 意 か<br />

ら 転 じてこのような 時 代 の 無 限 の 連 続 、〔つまり〕 永 遠 」 47 を 意 味 する。<br />

またアイオーンは、コスモス κόσμος やオイクーメネーοἰκουμένη という 語 とも、 共 通 の 類 語 群 に 含<br />

まれている。コスモスとは「 秩 序 ある 宇 宙 、この 世 界 の 物 的 秩 序 、 世 界 中 に 住 んでいる 人 間 、この 世<br />

のもの、この 世 のことがら」 48 という 意 味 での、「 世 界 」である。オイクーメネーは「 居 住 する οἰκῶ」とい<br />

う 動 詞 に 由 来 し、「 人 の 居 住 している 場 所 としての 世 界 」 49 である。それにたいし、アイオーンは「 時<br />

間 の 面 から 見 た 世 界 、 一 つの『 時 代 』、『 世 代 』」 50 を 意 味 する。<br />

とにかくアイオーンは 原 義 としては「いつか 始 まりいつか 終 わる」 生 命 の 時 間 を 指 している。 始 まり<br />

と 終 わりをもつ 時 間 という 点 では 真 木 の 言 う「 線 分 的 時 間 」にも 類 似 していると 言 えるだろう。そして<br />

その 意 味 が「 永 遠 」へと 拡 張 されるとき、それは「 肯 定 的 な 永 遠 」である。すなわち、キリスト 教 の 神<br />

表 象 における「 無 時 間 」としての 神 の 永 遠 、 時 間 の 否 定 としての 永 遠 とは、 異 なる。いわば 線 分 の 始<br />

え、 本 論 において、アーレントにおける 労 働 を 考 える 際 、ヘシオドスが 述 べている 内 容 は 示 唆 的 である。けだし、 労<br />

働 の 時 間 性 はいま 見 たような、 自 然 の 秩 序 との 繋 がりを 抱 えた、ホーラ 的 な 時 間 性 に 通 ずるところがある。その 点 は<br />

後 に 労 働 の 時 間 性 を 考 える 際 に、 重 要 な 観 点 になる。<br />

43 LIDDELL & SCOTT, op.cit., the article on “αἰών”.<br />

44<br />

織 田 昭 編 『 新 約 聖 書 ギリシャ 語 小 辞 典 』 改 訂 第 2 版 、 大 阪 聖 書 学 院 、1965 年 、「αἰών」の 項 。<br />

45<br />

高 津 、 前 掲 書 、「アイオーン」の 項 。<br />

46 AUTENRIETH, Georg, trans. fr. the German by Robert P. KEEP, revised by Isacc FLAGG, A Homeric Dictionary for<br />

Schools and Colleges, New York, Harper & Brothers, 1895, the article on “αἰών”.<br />

47<br />

小 田 編 、 前 掲 書 、 前 掲 の 項 。<br />

48<br />

同 上 。<br />

49<br />

同 上 。なお、オイクーメネーというギリシャ 語 は、 近 代 語 においてはエクメーネ/アネクメーネ Ökumene/<br />

Anökumene という 区 別 、すなわち「 人 間 の 居 住 可 能 地 域 / 不 可 能 地 域 」という 地 理 学 上 の 区 分 として 残 存 してい<br />

る。<br />

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