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始 まる 以 前 からすでに 存 在 し、 製 作 が 終 わった 後 にも 残 る。 要 するに、それは、 製 作 されて 存 在 す<br />

るに 至 ったすべての 使 用 対 象 物 〔use objects〕を 超 越 して 存 続 する」 155 。このイメージないしモデル<br />

の、このような 永 続 性 permanence の 経 験 は「 永 遠 のイデアというプラトンの 説 に 強 い 影 響 力 を 与 え<br />

た」 156 というアーレントの 説 明 は、 既 に 見 てきたハイデガーの 指 摘 と 軌 を 一 にするものである。プラト<br />

ポイエーシス<br />

ンがイデアやエイドスという 言 葉 を 使 ったのは、「 実 をいえば〔 略 〕 製 作 の 経 験 によっていた」 157 。そ<br />

れはさておき、 仕 事 の 活 動 力 は、その 明 確 な 始 まりをイデア=エイドスとして 持 っているということが<br />

明 らかとなった。<br />

仕 事 をする 人 間 ―― 工 作 人 ――は、それゆえ、 物 ( 使 用 対 象 物 )を 制 作 するために、 孤 立<br />

isolation しなくてはならない。 言 いかえれば、 複 数 の 人 間 ( 共 同 存 在 )を 離 れ、 一 人 にならなくては<br />

マスターシップ<br />

ならない。「というのは、 職 人 芸 は、ただ 物 のあるべき 精 神 的 イメージ、すなわち『イデア』だけを 相<br />

手 にすることによって 成 り 立 つものだからである」 158 。このイデアを 眺 める 工 程 は、 実 際 思 考 をはじ<br />

めとする 精 神 的 活 動 力 にむしろ 近 く、その 工 程 の 間 は 他 者 とともにある 現 われの 世 界 から 撤 退 しな<br />

くてはならないのである。ついでに 言 えば、アーレントは 思 考 の 生 み 出 すものですら、 仕 事 の 活 動<br />

力 を 通 さなければこの 世 界 に 現 われることはなく、 他 者 に 共 有 されることもないと 考 えている。たとえ<br />

ば、 思 考 は 文 字 として 書 かれ、 本 になるなどしなければ、その 場 で 消 滅 してしまう 儚 さを 持 っている。<br />

本 を 書 く 作 業 もまた、 一 種 の 仕 事 の 活 動 力 なのである。<br />

エ ン ド<br />

それでは 仕 事 の 活 動 力 はその 終 わり をどこに 持 っているのか 無 論 それは 仕 事 = 制 作 の 結 果<br />

エ ン ド<br />

生 産 される 物 である。「 製 作 された 物 は、 生 産 過 程 がそこにおいて 終 わる 〔 略 〕ということ、そして、 生<br />

エ ン ド<br />

産 過 程 が 完 成 品 というこの 目 的 を 生 み 出 す 唯 一 の 手 段 であるということ、この 二 重 の 意 味 で<br />

エ ン ド ・ プ ロ ダ ク ト<br />

最 終 生 産 物 である」 159 エ ン テ ィ テ ィ<br />

。 仕 事 の 終 わりははっきりしており、「 独 立 した 存 在 者 entity として 世 界 に 留 ま<br />

りうるほどの 持 続 性 をもった、 完 全 に 新 しい 物 が 人 間 の 工 作 物 につけ 加 えられたとき、 製 作 過 程 は<br />

終 わるのである」 160 エ ン ド<br />

。この 物 の 性 格 は、すでに 説 明 したとおりである。 他 方 仕 事 の 終 わり である 物 は、<br />

エ ン ド<br />

仕 事 の 目 的 でもある。 仕 事 の 活 動 力 はこの 物 以 外 に 如 何 なる 目 的 を 持 つこともない。それゆえ、 仕<br />

事 の 過 程 、すなわち「 製 作 過 程 それ 自 体 は、 手 段 means と 目 的 ends のカテゴリーによって 完 全 に<br />

決 定 されている」 161 。 故 に 仕 事 は、 目 的 である 物 以 外 をすべて 手 段 へと 変 えてしまう。こうして 仕 事<br />

テ ロ ス テ レ オ ロ ジ カ ル<br />

は 目 的 end, τελός を 持 つこと、つまり 仕 事 = 制 作 という 活 動 力 が 目 的 論 的 な 性 格 を 持 つことが、 判<br />

明 した。<br />

このように、 仕 事 は 始 まりと 終 わりを 持 つ。それどころか、 実 際 、「 明 確 な 始 まりと 明 確 で 予 見 でき<br />

る 終 りをもっているというのが 製 作 の 印 であり、 製 作 は、この 特 徴 だけでも 他 のすべての 人 間 の 活 動<br />

力 から 区 別 されるのである。たとえば 労 働 は、 肉 体 の 生 命 過 程 の 循 環 運 動 にとらえられていて、そ<br />

こには、 始 まりもなければ 終 りもない。また 活 動 は、 明 確 な 始 まりをもつ 場 合 があるとはいえ、 後 に 見<br />

155 Ibid., p.142. ( 前 掲 訳 書 、231 頁 。)<br />

156 Ibid. ( 同 上 。)<br />

157 Ibid. ( 同 上 。)<br />

158 Ibid., p.161. ( 前 掲 訳 書 、256 頁 。)<br />

159 Ibid., p.143. ( 前 掲 訳 書 、232 頁 。)<br />

160 Ibid. ( 同 上 。)<br />

161 Ibid. ( 同 上 。)<br />

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