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形 式 的 には、さしあたり、 時 間 は、 運 動 や 変 化 があるところに 存 在 する。<br />

アリストテレスによれば、「とにかく、 時 間 は 転 化 なしにはありえない。というのは、われわれ 自 らが<br />

自 らの 思 想 をすこしも 転 化 させないとき、あるいはそれが 転 化 していてもこれに 気 づかないでいると<br />

きには、われわれには『 時 がたった』〔 時 間 が 経 過 した〕とは 思 われないからである」 53 。「それゆえ、<br />

時 間 は 運 動 ではないが、 運 動 なしに 存 在 するものでもないこと、 明 白 である」 54 。「ところが、 時 間 は<br />

運 動 そのものではないから、それは 運 動 のなにかであること 必 然 である」 55 。 時 間 は、 転 化 ないし 運<br />

動 、なにかが 変 わることないし 動 くことがあるために、 存 在 する。 逆 に 言 えば、なにも 変 化 せず、 同<br />

一 であるなら、 時 間 があるとは 言 えない。 例 を 挙 げればきりはないが、たとえば 地 球 は 回 転 するため<br />

に 時 間 的 であり、 人 間 は 成 長 し 老 いるために 時 間 的 であり、 食 物 は 腐 敗 して 朽 ちるがゆえに、ない<br />

し 何 かに 食 されて 解 体 され 消 化 されるがゆえに 時 間 的 である。 永 遠 に 自 己 同 一 的 であるものは、<br />

時 間 的 ではない。<br />

ところで、それでは 転 化 するないし 運 動 するとはいったいどういうことを 意 味 するのか、という 問 い<br />

が 生 じるだろう。「 時 間 をわれわれが 認 知 するのは、ただわれわれが 運 動 を、[ 略 ] 前 と 後 で 限 定 し<br />

ながら、 限 定 するときにである。そしてまた、われわれが『 時 がたった』と 言 うのは、われわれが 運 動<br />

における 前 と 後 の 知 覚 をもつときにである」 56 。 運 動 を 認 知 するためには、 前 / 後 という 区 別 がなく<br />

てはならない。それは、 変 化 や 運 動 そのものが、 前 / 後 という 差 異 を 生 み 出 すことに 他 ならないか<br />

らである。かくして、 時 間 は、 差 異 を 生 み 出 してゆくものとしての 変 化 や 運 動 や 生 成 があるところに、<br />

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存 する。アリストテレスは 最 終 的 に「 時 間 とは[ 略 ] 前 と 後 に関 しての 運 動 の 数 である」と 定 義 するが、<br />

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我 々はここで「 数 」として 定 義 することは 避 けようと 思 う( 時 間 を 認 識 的 に 把 握 するのは 数 を 以 てでな<br />

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ければ 困 難 かもしれないが、 時 間 を 経 験 することは 数 を 持 たずとも 可 能 であろう)。<br />

アウグスティヌスにおいて 本 来 的 な 時 間 とは、「あるものが 先 行 しあるものがそれに 遅 れて 経 過 し、<br />

それらが 同 時 に 存 在 することのできぬような 変 化 をもつ 運 動 のことなのである」 57 という。この 形 式 的<br />

な 規 定 は、アリストテレスの 考 えをほとんどそのまま 受 け 継 いでいるが、アウグスティヌスにおいては、<br />

それは 被 造 物 の 存 在 仕 方 に 関 わる。「そのものの 変 化 や 運 動 において 時 間 が 経 過 するというような<br />

被 造 物 がまったく 存 在 しないところに、そもそも 時 間 というものは 存 在 することはできない」 58 。 時 間<br />

的 なものと 対 置 されるのは 永 遠 の 神 であり、「 時 間 は 可 変 性 をとおして 移 行 していくのであるから、<br />

それが 不 可 変 の 永 遠 性 と 等 しく 永 遠 であることはできない」 59 。つまり、 人 間 の 時 間 性 は、 神 の 永 遠<br />

性 と 対 比 的 に 理 解 される。アウグスティヌスにおいては、 可 変 的 な 存 在 者 である 世 界 と 天 使 と 人 間<br />

53 ARISTOTELES, Physica, 218b21-23. ( 出 隆 / 岩 崎 允 胤 訳 『アリストテレス 全 集 3 自 然 学 』 岩 波 書 店 、1968 年 、<br />

168 頁 。 尚 、 亀 甲 括 弧 〔…〕 内 は、 訳 者 による 捕 捉 である。 橋 爪 が 語 句 などを 加 える 場 合 、これと 区 別 するために 大<br />

括 弧 […]で 囲 んで 表 示 するようにする。 以 下 も 本 書 からの 引 用 は 同 様 に 対 応 する。 英 訳 ・ 仏 訳 ・ 原 文 は、with an<br />

English trans. by Philip H. WICKSTEED/ Francis M. CORNFORD, Aristotle IV: Physics I, revised ed., Cambridge/<br />

Massachusetts: Harvard Univ. Press, 1970 [orig. 1929] および texte établi et trad. par Henri CARTERON, Aristote<br />

Physique (I-IV), 7 ème tirage, Paris : Les Belles Lettres, 1990 [orig. 1926] を 参 照 した。)<br />

54 Ibid., 219a1-2. ( 前 掲 訳 書 、169 頁 。)<br />

55 Ibid., 219a9-10. ( 同 上 。)<br />

56 Ibid., 219a22-25. ( 前 掲 訳 書 、170 頁 。)<br />

57 AUGUSTINUS, Aurelius, De civitate Dei, XII, XVI. ( 服 部 英 次 郎 訳 『 神 の 国 』3 巻 、 岩 波 文 庫 、1983 年 、136 頁 。)<br />

58 Ibid. ( 前 掲 訳 書 、138 頁 。)<br />

59 Ibid. ( 同 上 。)<br />

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