聴覚障害者の英語学習のための手話教材開発に関する ... - 筑波技術大学
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する 学 生 の 大 半 は 大 学 で 初 めてフィリピン 手 話 を<br />
習 う。 中 には 口 話 教 育 で 育 ち、 手 話 が 初 めての 学<br />
生 もいる。1クラス 20 人 ほどの 英 語 の 授 業 では 音<br />
声 は 全 く 用 いられず、 聴 者 によってフィリピン 手<br />
話 で 英 語 が 指 導 されていた。 フィリピン 手 話 はア<br />
メリカ 手 話 の 影 響 を 強 く 受 けている。<br />
CAP カレジにおいても 同 様 に、 英 語 は 聴 者 の 教<br />
員 によって 声 なしのフィリピン 手 話 で 行 われてお<br />
り、 授 業 展 開 は 非 常 に 活 発 であった。CAP カレジ<br />
は 保 険 会 社 が 経 営 する 通 信 教 育 コースの 大 学 であ<br />
るが、 聴 覚 障 害 者 に 対 しては 通 学 のコースを 開 講<br />
している。 ここの 英 語 指 導 者 はかつて SEE を 用 い<br />
ていたが、 SEE ではうまくし、かないと 感 じたと 言<br />
う。 読 解 の 授 業 には 内 容 を 劇 化 したりイ ラストで<br />
表 したりといった、 言 語 以 外 の 方 法 を 用 いた 工 夫<br />
が 見 られ、 学 生 の 理 解 を 深 めるのに 役 立 つている<br />
ように 見 えた。 しかしながら 授 業 の 最 後 に 学 生 が<br />
書 いた 英 文 には、 さまざまな 誤 りが 見 られた。<br />
ここの 教 師 たちはSEEで 教 育 を 受 けてきた 学 生<br />
の 英 語 力 に 問 題 を 感 じている。 そしてあらためて<br />
フィリピン 手 話 を 教 え、 フィリヒン 手 話 を 使 って<br />
英 語 の 再 教 育 を 行 っている。 しかしながらその 方<br />
法 は 非 常 にうまくいっているようには 見 えなかっ<br />
た。<br />
音 声 言 語 対 応 手 話 にしろ、 自 然 手 話 にしろ、 手<br />
話 による 外 国 語 教 育 にはあまり 成 果 が 期 待 できな<br />
いのではないだろうか。<br />
3. 日 本 でのアメリカ 手 話 導 入 の 試 み<br />
手 話 が 尊 重 される 風 潮 の 中 で、 各 地 の 聾 学 校 が<br />
英 語 の 授 業 にアメリカ 手 話 を 採 り 入 れる 試 みをし<br />
てきた。 しかしながらAS Lを 自 在 に 使 用 できる 指<br />
導 者 はまれで、 たいていは 単 語 を 表 すのに 指 文 字<br />
を 使 用 したり、 会 話 表 現 に 手 話 をつけて 表 出 した<br />
りする 程 度 にとどまっている。 これはAS Lを 使 用<br />
した 英 語 の 指 導 とは 言 い 難 い。<br />
たとえA SLが 用 いられたとしても、 英 語 の 授 業<br />
で 英 語 の 単 語 について、 あるいは 英 文 の 構 造 を 説<br />
明 するのに、 その 語 、 句 、 文 をA SLなどの 手 話 に<br />
訳 してしまったならば、 手 話 という 別 言 語 にその<br />
英 語 の 意 味 を 訳 しただけで、 英 語 そのものの 説 明<br />
にならない。 また 英 単 語 を 指 文 字 で 表 すのも、 非<br />
常 に 時 間 がかかって、 間 に 合 わない。<br />
筆 者 は 英 語 を 目 に 見 える 形 にするとし、う 観 点 か<br />
ら、 AS Lではなく SEE、 あるいは Signe d English<br />
( SE)の 使 用 を 提 唱 し、 試 行 錯 誤 を 重 ねながら 実 践<br />
してきた。 しかしながら SEE は 筑 波 技 術 短 期 大 学<br />
の 学 生 がアメリカの 聾 学 生 とコミュニケーション<br />
するさいは 否 定 され ( 通 じないわけではないが )、<br />
対 応 手 話 ではなくAS Lを 指 導 すべきだという 主 張<br />
に 押 され 気 味 であった。 ところがここにきて ASL<br />
の 指 導 者 などからも 英 語 の 授 業 でアメリカ 手 話 を<br />
用 いることについて 疑 問 が 呈 されてきている。<br />
問 題 点 はおよそ 次 のようにまとめられる。<br />
(1) 日 本 の 手 話 にもなじんでいない 生 徒 には、<br />
ASLが 過 重 な 負 担 になることがある。<br />
(2 ) ASLをきちんと 指 導 できる 教 師 がし、ない。<br />
( 3) 生 徒 は 学 校 外 の 場 所 で 英 語 がほとんど 不 要<br />
な 社 会 に 生 きている。 ASLについても 同 様 なこと<br />
がいえる。 使 うチャンスがめつたにないものを 教<br />
えることの 意 味 が 関 われる。<br />
(4) ASLは 英 語 学 習 の 動 機 づけにはなっても、 英<br />
語 力 を 高 める 効 果 はほとんどない。<br />
4. 手 話 に 代 わる 方 法<br />
高 等 教 育 段 階 での 英 語 学 習 には、 native<br />
speakerによる 講 義 を 受 講 する 機 会 があるのは 当<br />
然 のことであり、どの 大 学 も native の 指 導 者 が 配<br />
備 されている。 しかしながら 聴 覚 障 害 学 生 は 情 報<br />
保 障 が 困 難 であることから、 生 きた 英 語 を 享 受 す<br />
る 機 会 から 遠 ざけられ、 そのことが 一 層 、 英 語 力<br />
が 身 につかない 原 因 ともなっていることを 見 逃 し<br />
てはならない。<br />
英 語 の 授 業 には 英 語 そのものがもっと 必 要 であ<br />
る。 聴 覚 障 害 者 に 対 しても 英 語 で 英 語 を 教 えるこ<br />
とをもっと 真 剣 に 考 えるべきである。 手 話 の 使 用<br />
は 英 語 そのものを 補 完 することにはならない。<br />
たとえばパソコンの 要 約 筆 記 や 音 声 自 動 認 識 装<br />
置 を 用 いて、 教 師 の 発 するあらゆる 音 声 を 文 字 化<br />
するということも 考 えて 良 いのではないだろうか。<br />
あるいは 優 れた 授 業 を 録 画 して 字 幕 をつけ、 遠<br />
隔 地 教 育 教 材 として 配 信 することも 考 えられる。<br />
このことは 生 徒 数 の 少 なくなった 聾 学 校 、 教 師 の<br />
異 動 が 多 い 聾 学 校 に 対 する 支 援 にもなるだろう。<br />
聾 教 育 のすべての 場 面 で 手 話 を 用 いることを 否<br />
定 するつもりは 毛 頭 ない。 しかしながら、 教 員 人<br />
事 の 問 題 も 含 めた 現 在 の 日 本 の 教 育 体 制 では、 英<br />
語 の 授 業 には 手 話 以 外 の 情 報 保 障 を 考 えたほうが<br />
得 策 ではないかと 考 える。<br />
参 考 文 献 :<br />
・ 渋 谷 英 章 「 外 来 勢 力 主 導 の 教 育 制 度 の 形 成 ース<br />
ペイ ン、 アメリカ、 日 本 j 弘 文 堂 「もっと 知 り<br />
たいフィリピンJ p191-2 03 (19 95)<br />
- 斉 藤 くるみ「 日 本 の 大 学 における 聴 覚 障 害 学 生<br />
に 対 する 英 語 教 育 の 問 題 点 と その 改 善 策 (2000<br />
年 )J 日 本 社 会 事 業 大 学 社 会 事 業 研 究 所 年 報 ,p23<br />
. 聴 覚 障 害 英 語 教 育 研 究 会 メーリングリスト<br />
de af eng2004 年 6 月 の 複 数 の 投 稿<br />
( 第 38 回 全 日 本 聾 教 育 研 究 大 会 研 究 収 録 p.l07-108)<br />
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