アメリカ法における生命保険契約と利益主義の展開 - 生命保険文化センター
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アメリカ 法 における 生 命 保 険 契 約 と 利 益 主 義 の 展 開<br />
のではない。<br />
以 上 のような 処 理 に 対 して、 保 険 金 受 取 人 による 被 保 険 者 故 殺 の 場<br />
合 に、 保 険 者 による 当 該 契 約 の 無 効 主 張 が 認 められる 例 外 法 理 も 形 成<br />
されている。すなわち 保 険 金 受 取 人 が 被 保 険 者 を 殺 害 する 目 的 で 保 険<br />
契 約 が 締 結 された 場 合 、それは 詐 欺 的 手 段 (fraudulent means)を 用<br />
いて 締 結 されたものとして 無 効 とするものである 20) 。また、 保 険 金 受<br />
取 人 が 保 険 証 券 の 発 行 前 に 被 保 険 者 を 殺 害 することを 決 断 していた 場<br />
合 は、 当 該 保 険 契 約 は 無 効 であり、 保 険 金 受 取 人 は 無 論 のこと 当 該 被<br />
保 険 者 の 遺 産 も 保 険 金 を 取 得 することはできないとする 判 断 である 21) 。<br />
このようなルールは、「 善 意 の 道 具 (innocent instrumentality)」 理<br />
論 と 呼 ばれている 22) 。それらに 対 しては、 裁 判 所 は、 保 険 金 受 取 人 が<br />
被 保 険 者 を「 善 意 の 道 具 」として 利 用 し 詐 欺 的 に 保 険 契 約 を 締 結 した<br />
のか、それとも 被 保 険 者 自 身 が、 保 険 金 受 取 人 と 指 定 した 者 の 邪 悪 な<br />
(evil) 動 機 ないし 計 画 を 知 らずに、 保 険 契 約 を 締 結 したのか 個 々の<br />
事 案 に 基 づき 慎 重 に 判 断 しなければならない 困 難 さを 抱 えていると 指<br />
摘 されている 23) 。たとえば、New England Mutual Life Insurance Co.<br />
v. Null 事 件 において、Victor Nullは 自 己 の 生 命 についての 生 命 保 険<br />
契 約 を 締 結 したが、それは 彼 の 新 しい 事 業 パートナー、RonaldとJames<br />
Calvertが、Nullの 発 明 に 対 する 彼 らの 投 資 のための 保 証 (security)<br />
としてそのような 保 険 が 必 要 であることを 主 張 したからであった。し<br />
かしながら、Nullの 知 らないうちに、Calvertsは、Nullの 殺 害 を 通 じ<br />
て 相 当 の 保 険 金 を 獲 得 する 計 画 を 練 った。Nullは、 何 度 も 撃 たれて、<br />
死 亡 した 状 態 で 発 見 された。 殺 人 者 は 逮 捕 されなかったが、Calverts<br />
は、 郵 便 詐 欺 (mail fraud)、 通 信 詐 欺 (wire fraud)そして 保 険 会 社<br />
を 詐 欺 したことを 理 由 として 共 謀 罪 で 有 罪 となった。 保 険 者 がこれら<br />
の 保 険 金 受 取 人 によって 詐 欺 されたことの 証 拠 としてCalvertsの 刑 事<br />
上 の 有 罪 を 利 用 することによって、 連 邦 地 裁 は、 最 初 に、「 善 意 の 道 具 」<br />
理 論 のもとで 保 険 者 に 略 式 判 決 (summary judgment)を 認 めた。しか<br />
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