San Diego Yu Yu, June 16, 2023

18 SAN DIEGO YU-YU JUNE 16, 2023
日 本 語 での 知 識 が 英 語 力 に
何 歳 からでもやれば 上 達
学 び 直 し、60 歳 で 通 訳 転 身
働 く 人 のリスキリング( 学 び 直 し)が 話 題 の 今 、 定 年 後 のセカンドキャリアを 見 据 えて
英 語 力 を 鍛 えたい 人 もいるだろう。 苦 手 だった 英 語 を 50 代 から 本 格 的 に 学 び 直 し、60
歳 で 通 訳 に 転 身 した 大 阪 市 の 田 代 真 一 郎 さん(72)に 極 意 を 聞 いた。
「コミュニケーションの 本 質 は 内 容 の 伝 達 。 内 容 について 日 本 語 での 知 識 があれば、
単 語 の 暗 記 もリスニングも 格 段 にしやすくなります」。 知 識 や 経 験 を 積 み 重 ねてきたシニ
ア 世 代 にとって、これは 大 きな 強 みになるかもしれない。「やみくもに 学 ぶのでなく、 続
けてきた 仕 事 のことや 興 味 のある 話 題 に 限 定 して 始 めるのが 合 理 的 です」
船 や 自 動 車 のエンジニアだった 田 代 さん。30 歳 で 初 めて 海 外 出 張 した 際 は、タクシ
ーに 乗 るのも 苦 労 するほど 英 語 が 話 せなかった。 転 機 は 50 歳 の 時 に 訪 れた。 勤 め 先
の 自 動 車 メーカーがグローバル 企 業 の 傘 下 に 入 った。
英 語 の 会 議 を 乗 り 切 るため「ボルト」「パッキン」といった 議 題 に 絞 って 知 識 や 単 語 を
詰 め 込 む 準 備 を 繰 り 返 すうち、 英 語 力 がアップ。「 仕 事 の 助 けになれば」と 週 末 に 通 訳
学 校 にも 通 い、 退 職 した 2010 年 に 国 際 会 議 で 通 訳 デビューした。
英 語 力 に 加 え、 体 力 や 瞬 発 力 も 求 められる 通 訳 業 。「 仲 間 内 ではいつも 最 年 長 」と 笑
う 田 代 さんに、 当 初 はなかなか 仕 事 は 回 ってこなかったが、「 翌 年 は 年 20 日 、 翌 々 年 は
60 日 、その 次 は 200 日 」という 調 子 で 増 え、やがて 名 指 しで 依 頼 されるようになった。
工 場 視 察 や 技 術 系 の 講 演 などで 田 代 さんが 通 訳 すると「 分 かっている 人 が 来 てくれた」
と 喜 ばれるという。 日 本 の 企 業 文 化 や 品 質 管 理 について、インドにある 日 系 企 業 の 現 地
採 用 者 らに 英 語 で 教 える 仕 事 も 受 けるようになった。「 私 より 英 語 がうまい 人 は 大 勢 いる
し、 記 憶 力 や 瞬 発 力 の 衰 えも 否 めない。けれど 現 役 時 代 の 経 験 や 知 識 が 大 きな 力 にな
ってくれています」
仕 事 を 通 じた 独 自 の 英 語 学 習 法 をつづった 15 年 の 著 書 が 評 判 を 呼 び、「 定 年 英 語 」と
改 題 して 今 年 2 月 に 再 刊 行 。 版 元 によると、50、60 代 を 中 心 に「この 年 で 英 語 力 強 化 が
できるか 不 安 だったが、レベルアップを 目 指 す 気 持 ちになった」と 反 響 が 寄 せられている。
「 生 涯 現 役 」を 目 指 す 田 代 さんは 今 も、 自 作 の 単 語 帳 で 勉 強 を 重 ねる。「 一 度 覚 えて
忘 れてしまってもいいのです。その 次 はもっと 覚 えやすくなります」。とはいっても、 独
学 はモチベーションの 維 持 が 難 しい…。「 地 域 の 英 語 サークルなどで 刺 激 を 受 けるのも
有 効 です。 大 事 なのは 毎 日 少 しずつでも 続 けること。 英 語 は 何 歳 からでも、やればやる
ほど 上 達 します」
2
1
1 「“ 外 国 人 恐 怖 症 ”だった
私 が 通 訳 になるとは 夢 にも 思
いませんでした」と 話 す 田 代
真 一 郎 さん
2 企 業 向 けセミナーで 通 訳 を
務 めた 後 、 外 国 人 講 師 ( 左 )
と 話 す 田 代 真 一 郎 さん( 中 央 )
=2015 年
3 インドで 日 系 企 業 の 現 地
採 用 社 員 らに 講 義 する 田 代 真
一 郎 さん =2019 年
記 事 & 写 真 提 供 : 共 同 通 信 社
3