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San Diego Yu Yu, April 1, 2024

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C<br />

16 SAN DIEGO YU-YU APRIL 1, <strong>2024</strong><br />

米 欧 中 心 秩 序 の 崩 壊<br />

終 結 の 青 写 真 は 何 処 に<br />

冷 戦 終 結 後 に 形 成 された「 米 欧 中 心 の 世 界 秩 序 」が 終 わる 歴 史 的 な 大 転 換 期 が 到 来 。 米 大 統 領 選 の 結 果 によってはウクライナ 危 機 への 関 与 が 変 わ<br />

る 可 能 性 もあるが、 未 だに 停 戦 の 見 通 しは 立 っていない。 多 くの 国 が 米 国 の 指 示 に 従 う 必 要 がないと 考 え、 自 国 の 利 益 を 優 先 する 状 況 が 続 きそうだ<br />

冷 戦 終 結 後 の「 米 欧 中 心 の 世 界 秩 序 」<br />

が 終 焉 ( しゅうえん ) を 迎 えようとして<br />

いる。 将 来 、 間 違 いなく 教 科 書 に 載 る<br />

歴 史 的 大 変 化 だろう。この 過 程 は 2 年<br />

前 の「 特 別 軍 事 作 戦 」 開 始 前 から 始 まっ<br />

ていたが、ウクライナ 危 機 で 大 きく 進 ん<br />

だ。かなりの 数 の 国 が、もう 米 国 の 指<br />

示 に 従 う 必 要 はないと 考 えるようになっ<br />

た。 米 欧 の 覇 権 は 終 わりつつある。<br />

対 ロ 制 裁 に 加 わるのは 日 本 のように<br />

義 務 的 な 対 米 関 係 を 持 つ 国 だけで、 他<br />

は 距 離 を 置 いている。ロシア 支 持 では<br />

な く 、「 自 分 のことは 自 分 で 決 める」と<br />

いう 態 度 だ。 大 多 数 の 国 が 自 分 の 国 益<br />

のために 行 動 するこの 状 況 は、 多 くの<br />

軍 事 紛 争 を 伴 いながら 長 期 間 続 く。<br />

ロシアは 政 治 や 経 済 に 打 撃 を 受 けた<br />

一 方 、 自 力 で 発 展 する 基 盤 を 強 めた。<br />

だが、 今 後 の 道 には 非 常 な 困 難 と 痛 み<br />

が 伴 う。 軍 事 作 戦 がこれほど 長 引 き、<br />

流 血 を 伴 う 大 戦 争 になるとは 誰 も 予 想<br />

しなかった。ウクライナのレジームチェ<br />

ンジ ( 体 制 転 換 ) には 失 敗 し、これほ<br />

ど 大 規 模 な 米 欧 の 軍 事 支 援 などは 予 測<br />

できなかった。 重 大 な 見 込 み 違 いだ。<br />

プーチン 大 統 領 を 含 め、 紛 争 終 結 の<br />

青 写 真 は 誰 も 持 っていない。だが、 彼<br />

にはこの 戦 いに 負 けられないという 強<br />

い 信 念 はある。 作 戦 の 今 後 について 誰<br />

にも 計 画 は なく、 状 況 によって 決 まって<br />

いく。これは、ロシアとウクライナだけ<br />

でなくユーラシア 地 域 を 構 造 的 に 変 え<br />

る 数 十 年 単 位 の 出 来 事 だ。 軍 事 衝 突 も<br />

数 年 で 終 わらないだろう。<br />

不 透 明 な「 多 極 化 」<br />

第 二 次 大 戦 後 に 築 かれた 世 界 秩 序<br />

の 崩 壊 はかなり 以 前 から 始 まっていた。<br />

冷 戦 終 結 で 世 界 は 安 定 したという 当 時<br />

の 解 釈 は 違 っていた。 冷 戦 で 対 立 した<br />

2 大 勢 力 のバランスが 失 われ、 状 況 は<br />

完 全 に 変 わった。 米 国 には 新 しい 世 界<br />

秩 序 を 構 築 する 責 任 と 可 能 性 があった<br />

が、 多 様 な 文 化 を 持 つ 世 界 に 西 欧 的<br />

な 国 家 モデルを 広 めようとして 緊 張 を<br />

生 んだ。2001 年 の 米 中 枢 同 時 テロや<br />

2003 年 のイラク 戦 争 はその 証 明 だ。<br />

一 方 、 多 くの 国 が 目 標 に 掲 げる「 多 極<br />

化 世 界 」は 概 念 に 過 ぎない。どう 構 築<br />

するのか 不 明 だ。ロシアが 求 める「 米<br />

国 の 覇 権 からの 脱 却 」は 起 きつつある<br />

が、その 後 、どういう 世 界 を 構 築 する<br />

かの 具 体 的 計 画 はない。<br />

国 連 改 革 は 不 可 能 だ。 安 全 保 障 理 事<br />

会 の 5 常 任 理 事 国 だけが 拒 否 権 を 持 つ<br />

という 前 世 紀 半 ばに 作 られた 不 平 等 な<br />

ルールに 多 くの 国 が 不 満 を 抱 くのは 当<br />

然 だが、 特 権 を 持 つ 国 は 自 発 的 に 手 放<br />

したりしない。 国 連 はなくならないが、<br />

重 心 は 安 全 保 障 理 事 会 から 総 会 に 移 る<br />

だろう。 総 会 決 定 に 拘 束 力 は ないが、<br />

投 票 で 示 された 意 思 は 一 定 の 心 理 的 影<br />

響 力 を 持 つ。<br />

停 戦 見 通 し 立 たず<br />

11 月 の 米 大 統 領 選 でバイデン 氏 が 再<br />

選 すれば 米 国 に 大 きな 変 化 はない。ト<br />

ランプ 前 大 統 領 が 勝 てば 米 国 の 内 政 は<br />

麻 痺 ( まひ ) 状 態 になりかねず、ウクラ<br />

© shutterstock.com<br />

G7 はロシアの 資 産 凍 結 を 強 化 して 追 加 制 裁 を 続 けたが、 同 意 したのは<br />

義 務 的 な 対 米 関 係 を 持 つ 国 だけ。 結 果 的 にロシアは 自 力 発 展 を 強 めた<br />

ウクライナ 侵 攻 が 長 期 的 な 大 戦 争 になったのはロシアにとって 大 誤 算 。<br />

体 制 転 換 にも 失 敗 し、 大 規 模 な 米 欧 の 軍 事 支 援 なども 想 定 外 だった<br />

イナ 危 機 への 関 与 が 低 減 するという 意<br />

味 ではロシアに 有 利 かもしれない。<br />

だが、 選 挙 前 に 米 国 がより 強 力 な 長<br />

距 離 兵 器 や 航 空 機 をウクライナに 供 与<br />

し、 対 ロ 圧 力 を 強 める 可 能 性 がある。<br />

これは 危 険 だ。 米 国 や 北 大 西 洋 条 約 機<br />

構 (N AT O) が 関 与 を 強 めるほどロシア<br />

は 強 く 対 応 し、 対 抗 策 が 質 的 に 変 化 す<br />

る 恐 れもある。<br />

停 戦 の 見 通 しは 今 のところない。 将<br />

来 、 交 渉 の 鍵 を 握 るのは 軍 事 作 戦 開 始<br />

直 前 の 2021 年 12 月 にロシアが 行 った、<br />

NATO 拡 大 停 止 とウクライナ 中 立 を 求 め<br />

る 提 案 だ。<br />

現 在 のロシアの 実 効 支 配 地 はその<br />

ままにし、 ウクライナの 残 りの 地 域 を<br />

N AT O に 加 盟 させる 妥 協 案 が 米 欧 で 検<br />

討 されているが、これは 上 手 ( うま ) く<br />

いかない。 プーチン 氏 にとってウクライ<br />

ナのNATO 加 盟 阻 止 こそが 絶 対 的 に 重<br />

要 だからだ。これを 協 議 対 象 にしない<br />

限 り、 和 平 への 動 きは 出 てこない。<br />

例 えば、 次 の 米 大 統 領 が「NATO に<br />

ウクライナは 不 要 」と 言 えば 交 渉 開 始<br />

の 第 1 条 件 となる。これが 米 指 導 層 で<br />

検 討 されるようになれば、 領 土 や 戦 後<br />

賠 償 などの 協 議 も 可 能 になる。<br />

ロシア 政 権 には、 自 国 民 に「NATO の<br />

拡 張 を 食 い 止 め 勝 利 した」と 説 明 する<br />

ために NATO 不 拡 大 が 必 要 だ。 既 に 制<br />

圧 した 地 域 を 確 保 しても、ウクライナ<br />

が N ATO に 加 盟 してしまえばロシアに<br />

とって 成 功 とはいえ な い 。■<br />

© shutterstock.com<br />

© shutterstock.com<br />

対 ロ 抑 止 、 同 盟 に 追 い 風<br />

米 大 統 領 選 、 予 断 許 さず<br />

軍 事 強 国 スウェーデンが3 月 7 日 、<br />

北 大 西 洋 条 約 機 構 (NATO)に 正 式<br />

加 盟 し 32 番 目 の 加 盟 国 になった。<br />

ロシアのウクライナ 侵 攻 から 3 年<br />

目 に 入 り、 対 ロ 抑 止 力 強 化 に 向 けて<br />

着 々と 態 勢 を 整 える N AT O には 追<br />

い 風 となる。ただ、NATO に 否 定 的<br />

なトランプ 前 米 大 統 領 が11 月 の 大<br />

統 領 選 で 返 り 咲 きを 狙 い、 同 盟 の<br />

先 行 きは 予 断 を 許 さない。<br />

* * * *<br />

スウェーデンの 加 盟 を 唯 一 認 めて<br />

いなかったハンガリー 議 会 が 承 認 し、<br />

加 盟 決 定 の 2 月 26 日 、 米 軍 の B1B<br />

戦 略 爆 撃 機 がスウェーデンの 空 軍<br />

基 地 を 飛 び 立 ち、 同 国 のグリペン<br />

戦 闘 機 と 訓 練 を 行 った 。 米 軍 は「 潜<br />

在 的 な 敵 に 強 い 抑 止 力 のメッセージ<br />

を 送 るものだ」と 意 義 を 強 調 した。<br />

スウェーデンはバルト 海 沿 岸 国 で<br />

海 岸 線 が 最 も 長 く、ロシアの 飛 び 地<br />

カリーニングラード 州 の 対 岸 に 位 置<br />

する。 優 れた 戦 闘 機 に 加 え、 最 新<br />

鋭 の 防 空 網 や 潜 水 艦 隊 による 大 き<br />

な 貢 献 が 期 待 される。<br />

米 国 のシンクタンク、 大 西 洋 評 議<br />

会 (Atlantic Council) は 北 欧 にロシ<br />

ア 軍 の 接 近 を 阻 止 する 空 域 の 形 成<br />

が 可 能 になると 指 摘 する。<br />

今 後 、ステルス 戦 闘 機 F35 など<br />

北 欧 諸 国 の 最 新 鋭 戦 闘 機 の 保 有 数<br />

は 200 機 以 上 に 膨 らむ。スウェー<br />

デ ン の 地 対 空 ミサイル シス テム「 パ<br />

トリオット」が 加 われば、ミサイル<br />

防 衛 (M D) 網 も 拡 大 。 次 世 代 の<br />

A26 型 潜 水 艦 が 配 備 されれば、バ<br />

ルト 海 の 監 視 も 強 化 される。<br />

スウェーデン 軍 は NATO がロシア<br />

による 攻 撃 を 想 定 して 1 月 から 実 施<br />

している 冷 戦 後 最 大 規 模 の 軍 事 演<br />

習 にも 参 加 。 加 盟 を 想 定 し、N ATO<br />

部 隊 との 連 携 向 上 に 余 念 がない。<br />

* * * *<br />

今 後 は NATO の 結 束 維 持 が 課 題 。<br />

スウェーデンを 巡 っては、 強 権 的 な<br />

政 治 姿 勢 で 欧 米 と 対 立 するトルコと<br />

ハンガリーが 批 准 に 消 極 的 な 姿 勢<br />

を 示 して 加 盟 が 遅 れ、NATO の 足 並<br />

みの 乱 れが 浮 き 彫 りになった。<br />

米 大 統 領 選 の 行 方 も 将 来 を 左 右<br />

する。バイデン 大 統 領 と 支 持 率 が<br />

拮 抗 するトランプ 氏 は 2 月 の 演 説 で、<br />

在 任 中 の 話 として、 軍 事 費 を 十 分<br />

負 担 しなければ 米 国 は 加 盟 国 を 守<br />

らないばかりか「むしろ 好 きに 振 る<br />

舞 うようロシアをけしかける」と 加<br />

盟 国 首 脳 に 伝 えたことがあると 主 張<br />

し、 欧 州 各 国 に 衝 撃 を 与 えた。<br />

欧 州 連 合 (EU) の 外 相 に 当 たる<br />

ジョセップ・ボレル 外 交 安 全 保 障 上<br />

級 代 表 は2 月 下 旬 、スペイン 紙 のイ<br />

ン タビ ューで「 トランプ 氏 は ま だ 勝 っ<br />

ていないが、 我 々は 目 を 覚 まさなけ<br />

ればならない」と 語 り、 独 自 に 防 衛<br />

力 を 高 めるべきだと 危 機 感 を 露 ( あ<br />

ら ) わにした。<br />

* 資 料 : 共 同 通 信 社

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