San Diego Yu Yu, April 1, 2024

アメリカ 健 康 ノート (258)
Medical
片 頭 痛 ( 下 )
(Migraine)
金 一 東 日 本 クリニック・サンディエゴ 院 長
金 一 東
日 本 クリニック 医 師 。 神 戸 市 出 身 。 岡 山
大 学 医 学 部 卒 業 。 同 大 学 院 を 経 て、 横 須
賀 米 海 軍 病 院 、 宇 治 徳 洲 会 等 を 通 じ 日
米 プライマリケアを 経 験 。その 後 渡 米 し、
コロンビア 大 学 公 衆 衛 生 大 学 院 を 経 て、
エール 大 学 関 連 病 院 で 内 科 ・ 小 児 科 合 併
研 修 を 終 了 。スクリップス・クリニックに 勤
務 の 後 、 現 職 に 。 内 科 ・ 小 児 科 両 専 門 医 。
26 SAN DIEGO YU-YU APRIL 1, 2024
片 頭 痛 は、 典 型 的 には 頭 の 片 側 に 起 こる 拍
動 性 の 頭 痛 で、 吐 き 気 や 嘔 吐 、 光 や 音 に 対 す
る 過 敏 性 が 伴 うことがあります。 片 頭 痛 の 症
状 は 数 時 間 から 数 日 間 続 きます。 頭 痛 は 軽 度
の 場 合 もあれば 日 常 生 活 が 困 難 になるほど 重
症 化 する 場 合 もあります。アメリカでは 人 口 の
12%が 経 験 する 一 般 的 な 頭 痛 です。
( 前 号 より 続 く)
片 頭 痛 の 治 療
片 頭 痛 の 治 療 は 主 に 薬 物 療 法 で、 軽 度 の 場
合 は、 市 販 の 痛 み 止 めだけでコントロールで
きる 場 合 が 多 いですが、 中 度 、 重 症 になると、
トリプタン 系 薬 剤 などの 薬 が 適 応 になります。
トリプタン 系 薬 剤 とエルゴタミンは 血 管 を 収 縮
させるので、 虚 血 性 心 疾 患 や 脳 梗 塞 のリスク
のある 人 には 使 えません。
< 治 療 薬 >
★ 痛 み 止 め ―― アスピリン、イブプロフェン
(Advil、Motorin)、アセタミノフェン (Tylenol)
など。カフェインと 合 剤 になったものもありま
す (Excedrin Migraine)。
★トリプタン 系 薬 剤 ―― スマトリプタン
(Imitrex、Tosymra)、リザトリプタン (Maxalt、
Maxalt-MLT)、アルモトリプタン (Axert)、エ
レトリプタン (Relpax)、 ゾルミトリプタン
(Zomig) があります。
トリプタン 系 薬 剤 は、 脳 の 血 管 に 作 用 して
広 がり 過 ぎた 脳 の 血 管 を 元 に 戻 し、 片 頭 痛 の
痛 みを 誘 発 する 三 叉 神 経 からの 神 経 ペプチド
(CGRP) の 放 出 を 抑 えます。 錠 剤 、 注 射 薬 、
鼻 スプレーなどのタイプがあります。
★ エ ル ゴ タ ミ ン (Cafergot、Ergomar、
Migergot)、ジヒドロエルゴタミン (Migranal、
Trudhesa) など。
鼻 スプレーや 注 射 もあります。 発 作 直 後 に
使 うと 効 果 があります。 片 頭 痛 による 嘔 気 や
嘔 吐 が 悪 化 する 副 作 用 があります。
★ジタン 系 薬 剤 ―― ラスミジタン (Reyvow)
新 しい 薬 で 片 頭 痛 の 痛 み、 吐 き 気 、 光 や 音
に 対 する 過 敏 性 に 効 果 があります。 眠 気 、め
まいなどの 副 作 用 があるので、 服 用 後 運 転 や
機 械 の 操 作 は 最 低 8 時 間 できません。
★ゲパント 系 薬 剤 ―― 経 口 カルシトニン 遺 伝
子 関 連 ペプチド (CGRP) 拮 抗 薬
ウブロゲパント (U b relv y)、リメゲパント
(Nurtec ODT) は 経 口 のゲパント 薬 です。 三 叉
神 経 から 放 出 された 神 経 ペプチドに 拮 抗 しま
す。 痛 みだけではなく、 嘔 気 や 光 や 音 に 対 す
る 過 敏 性 にも 効 果 があります。 副 作 用 として
は、 口 の 乾 燥 、 嘔 気 、 眠 気 などです。
★ザベゲパント (Zavzpret)
鼻 スプレーのゲパント 系 薬 剤 です。 使 用 後
15 分 から 2 時 間 以 内 に 効 果 が 出 て、48 時 間
続 きます。 嘔 気 や 光 や 音 に 対 する 過 敏 性 にも
効 果 があります。 副 作 用 としては、 味 覚 の 変 化 、
鼻 の 不 快 感 などです。
★オピオイド
以 上 の 薬 が 使 用 できないか、 効 果 がないと
き、 合 成 麻 薬 薬 が 使 われますが、 依 存 性 が 高
いのであまり 推 奨 されていません。
★ 吐 き 気 止 め
片 頭 痛 の 吐 き 気 、 嘔 吐 に 使 われます。クロ
ルプロマジン、メトクロプラミド (Reglan)、プ
ロクロルペラジン (Compazine) などです。
ニューロモ デュレーション 療 法 は 、 電 気 や 磁
気 などで 神 経 を 刺 激 して、 神 経 の 働 きを 調 整 す
■ 筆 者 閑 談 「 ウ ィー ク エ ン ド 」
娘 たちが 小 さい 頃 は、ウィークエンドによく 遊 びに 行 き
ましたが、 今 は 家 にいて、のんびりするのがいいですね。
孫 ができたら 変 わるかもしれませんが。
る 治 療 法 で、 片 頭 痛 の 治 療 法 としても 利 用 され
ています。 薬 物 療 法 の 効 果 がない 場 合 や、 薬
物 療 法 を 選 択 したくない 患 者 さんが 対 象 です。
ニ ュー ロ モ デ ュ レ ー シ ョン 療 法 に は 、ヘッド
バンドのような 電 気 刺 激 装 置 を 装 着 するよう
な 非 侵 襲 的 な 方 法 と、 手 術 をして 行 う 侵 襲 的
方 法 が あります。 非 侵 襲 的 治 療 法 としては、
C e f aly というヘッドバンドのような 装 置 で、 前
額 部 に 電 気 パルスを 送 って 三 叉 神 経 を 刺 激 す
る 三 叉 神 経 刺 激 療 法 や、gammaCoreで 電 気
パルスを 首 の 迷 走 神 経 に 送 り、 痛 みを 和 らげた
り 予 防 する 迷 走 神 経 刺 激 療 法 などがあります。
侵 襲 的 治 療 は 医 療 機 関 で 行 い、 後 頭 神 経
刺 激 療 法 , 翼 口 蓋 神 経 節 刺 激 療 法 , 脳 深 部
刺 激 療 法 などがあります。
鍼 灸 、バ イオ フィードバック、 認 知 行 動 療 法 、
瞑 想 、ヨガなどがあります。
リボフラビン ( ビタミン B2) やコエンザイ
ム Q10 が 痛 みを 軽 減 させたり、 片 頭 痛 の 頻 度
を 下 げる 可 能 性 が 示 唆 されています。 大 規 模
な 臨 床 研 究 で 実 証 されてはいません。マグネ
シウムの 片 頭 痛 に 対 する 効 果 は 様 々です。
< 自 分 でできること>
頭 痛 が 始 まったら、 暗 く 静 かな 部 屋 で 横 に
なります。 冷 したタオルやアイスパックを 布
に 包 んでオデコ ( 額 ) に 置 きます。そして 水
をたくさん 飲 みます。 頭 痛 日 記 を 付 けている
と 誘 因 が 分 かるかもしれません。 最 も 効 果 的
だった 治 療 法 を 書 き 留 めておきます。
片 頭 痛 の 予 防
片 頭 痛 の 予 防 に 薬 物 療 法 が 使 われます。
< 予 防 薬 >
片 頭 痛 の 回 数 が 多 い ( 週 に 2 日 以 上 )、 頭
痛 が 激 しい、 治 療 薬 が 使 えないなどの 場 合 は
予 防 薬 の 対 象 になります。
★ 高 血 圧 薬
β 遮 断 薬 :プロプラノロール (Inderal)、メ
トプロロール (Lopressor)、カルシウム 拮 抗 薬 :
べラパミール (Calan)。 副 作 用 はめまいなど。
★ 抗 うつ 薬
三 環 系 抗 うつ 薬 :アミトリプチリン。 副 作 用
は 眠 気 など。
★ 抗 けいれん 薬
バルプロエイト、トピラマート (Topamax)
は 妊 婦 には 禁 忌 です。トピラマートは 体 重 を
下 げる 副 作 用 があるので 体 重 過 多 の 人 には 良
いかもしれません。 副 作 用 は、めまい、 体 重
減 少 、 嘔 気 など。
★ボトックスの 注 射
3 か 月 毎 に 注 射 します。
★カルシトニン 遺 伝 子 関 連 ペプチド・モノク
ローナル 抗 体 (CGRP 受 容 体 抗 体 )
神 経 ペプチド (CG RP) の 受 容 体 をブロック
して 片 頭 痛 が 発 生 しないようにします。エレ
ヌマブ (Aimovig)、フレマネズマブ (Ajovy)、
ガルカネズマブ (Emgality)、エプチネズマブ
(Vyepti) を 1 〜 3 か 月 毎 に 注 射 をします。
★アトゲパント (Qulipta)
ゲパント 系 の 経 口 薬 です。 副 作 用 は、 嘔 気 、
便 秘 、 疲 労 感 など。
★リメゲパント (Nurtec ODT)
ゲパント 系 の 薬 で 治 療 薬 にも 予 防 薬 にもな
ります。
< 自 分 でできること>
自 分 でできる 予 防 法 としては、リラックスす
る 方 法 を 身 に 付 ける、 一 定 時 間 に 寝 て 起 きる
ようにする、 適 度 な 睡 眠 時 間 を 取 る、 食 事 は
毎 日 同 じ 時 間 に 取 る、 歩 行 、 水 泳 、サイクリ
ングなどの 有 酸 素 運 動 を 定 期 的 に 行 う、 誘 因
になりそうなものや 食 べ 物 を 避 けるなどです。
* * * * *
*この 記 事 に 関 するご 質 問 は 日 本 クリニック
☎ 858-560-8910 まで。