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先使用権制度の円滑な利用に関する 調査研究報告書

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[3]先使用権制度に関する問及び回答<br />

問1 先使用権が認められるためには、特許法 64 条に「(a) その特許が効力を<br />

有する場合にその侵害となるべき行為を善意で行う者、又は (b) 当該行為を<br />

行うために現実的かつ相当な準備を善意でなす者」と規定されている。ここでい<br />

う「現実的かつ相当な準備」とは具体的にどのような場合なのか。<br />

先使用権が認められるためには、「現実的かつ相当な準備」がなされているこ<br />

とが必要である。<br />

この「現実的」、「相当」については条文中で定義されていないが、判例は、「現<br />

実的かつ相当な準備」は、侵害行為の準備が行為を実行する段階に達しているこ<br />

とを要するものと示している。<br />

以下に「現実的かつ相当な準備」についての裁判所の判断及び学説を示す。<br />

(判例)<br />

Helitune 対 Stewart Hughes 事件[判例 2]では、特許を侵害する製品の試<br />

作品を優先日前に製作したが、販売用の製品を開発していなかった。優先日時点<br />

では、侵害製品の販売は行っておらず、特許を侵害しない別の製品に注力して生<br />

産を始め、侵害製品を売り始める意図はなかった。これらのことにより、侵害製<br />

品を製造するか販売するための現実的かつ相当な準備をする段階に達していな<br />

かったと判断された。<br />

Lubrizol 対 Esso 事件[判例 3-2]では、優先日前に侵害品の生産のための「事<br />

業計画」が準備されていた。しかしながら、その計画について議論するために開<br />

かれた会議の議事録には、開発が「非常に予備的段階」であるとの記載があった。<br />

このことにより、現実的かつ相当な準備が行われていたというには不十分である<br />

と判断された。<br />

Lubrizol 対 Esso 事件の 控訴審[判例 3-3]では、現実的かつ相当な準備の要<br />

件に関して、「「相当(effective)」という語は、「準備」という語を限定している。<br />

従って、侵害行為が行われるためには、準備以上のことが行われなければならな<br />

いということになる。準備以上のこととは、その製品の性質やそれを取り巻くあ<br />

らゆる状況に依存するが、いかなる場合にも、準備は、侵害行為がまさに行われ<br />

る段階にあると認められるほど進められたものでなければならない。」とし、さ<br />

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