先使用権制度の円滑な利用に関する 調査研究報告書
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第 64 条(2)は、法定実施権を「その行為」を引き続き実行するか又は実行す<br />
る権利に限定している。その行為とは、その者が実行した行為又は実行するため<br />
に行った現実的かつ相当な準備のことである。従って、この権利は、実行された<br />
特定の侵害行為又は現実的かつ相当な準備の対象となった特定の行為に限定さ<br />
れる。このような結論は、ある者が善意に侵害品を輸入した場合について検討す<br />
ることにより説明することができる。この条文によって、この者は、引き続きそ<br />
の侵害品を輸入することができるが、その輸入がその侵害品を販売するために現<br />
実的かつ相当な準備することに相当しない限りは、その侵害品を販売することは<br />
できない。<br />
第 64 条(1)は、侵害を構成する行為に関連するものであり、特定の物又は方<br />
法に関連するものではない。すでに述べたように、このような行為とは、第 60<br />
条に定められている特許の適用を受ける行為のことである。従って、ある者が優<br />
先日以前に侵害行為を実行したことを条件として、その者は、物若しくは方法に<br />
ある程度の相違がある場合であっても、当該行為を引き続き実行することができ<br />
る。これについては、侵害方法を使用する者について検討することにより説明す<br />
ることができる。<br />
この者がその方法を優先日以後に変更したという事実は問題ではない。この条文<br />
は、その行為、すなわち侵害方法を使用することは、侵害とはならないと定めて<br />
いる。<br />
訴訟の対象となった特許は、ヘリコプターの回転翼の不均衡を測る方法に関す<br />
るもので、日光やその他の光線が翼へ集められ、そして翼から受信機へ反射され<br />
るという‘能動システム’を使った方法だった。このシステムは、周囲の光の中<br />
に探知機が向けられ、翼によってその光を遮られることを読み取る‘受動システ<br />
ム’とは相対するものであった。<br />
被告は、光線が反射され、受信機がその反射された光を読み取るというレーザ<br />
ーシステムを使っていた。原告は被告の翼探知機は‘能動システム’であり、特<br />
許を直接侵害するものであると主張した。優先日の時点で、被告は‘受動’探知<br />
機の開発に従事しており、能動型探知機の試作品を有していたものの、それを販<br />
売する準備はなされていなかった。被告が能動型探知機の製品化を再度検討した<br />
のは、優先日後であった。<br />
本件では、被告は自らの RADS-AT(ヘリコプター試験機)追跡装置を引き続き<br />
販売することを希望しており、そのため、本判決では被告が侵害品である追跡装<br />
置を優先日以前に善意に販売したかどうか、又は被告が販売を実行するために現<br />
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