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先使用権制度の円滑な利用に関する 調査研究報告書

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特許出願によって無効になるべきではないという考えに基づくものである。先使<br />

用権によって保護されるのは、対応する事業の実施又は準備によって取得した占<br />

有状態である。 4<br />

3.成立要件<br />

ドイツ特許法第 12 条によれば、先使用権が認められるために、以下が必要と<br />

される。<br />

(1) 発明の所有、及び<br />

(2) 発明の実施(発明の「使用」)又は発明の実施を開始するための「必要な<br />

準備」により発明の所有が確認されること<br />

発明を実施するために必要な前提条件は、その発明を所有することである(連<br />

邦通常裁判所 1964 年 4 月 30 日判決、Formsand II 事件[判例 14])。その発明を<br />

所有しなければ、これを実施することはできない。<br />

判例では、「発明の所有」について、単なる幸運や偶然によるものではなく、<br />

発明の実施が可能となる方法で発明に関する技術的な知識を有することである<br />

と定義している (連邦通常裁判所 1964 年 6 月 30 日判決、Kasten für<br />

Fußabtrittsroste 事件[判例 15])。そして、発明の特徴とその効果が理解されてい<br />

なくてはならない (ライヒ裁判所 1938 年 1 月 17 日判決、Verbinderhaken II 事<br />

件[判例 6])。<br />

「実施」又は「必要な準備」は、ドイツ国内で行われた場合にのみ、先使用権<br />

の正当な根拠となりうる点に留意するべきである。したがって、ドイツ国外で行<br />

われた行為によっては、先使用権を成立させることができない。そのため、関連<br />

する特許が出願される前に、ドイツ国内で商品の製造、使用、販売等を行ってい<br />

ない日本企業は、ドイツにおいて先使用権が認められない。<br />

また、先使用権制度は、特許権の排他的保護の例外として、抗弁と考えられて<br />

いることに留意すべきである。先使用権は、特許権者の法的地位の抜け穴と例え<br />

られる。ドイツにおける法的実務に従えば、他人の権利に対する例外を規定する<br />

規則は、厳格に解釈されなければならない。したがって、ドイツの裁判所は、先<br />

使用権の成立要件については、厳格な規則を発展させてきた。<br />

すなわち、裁判所は、先使用権を他者の出願前に生じた先使用又は活動の実際<br />

の対象に厳密に限定して認めている。そのため、ドイツに製品を輸入し、製品を<br />

販売するだけの企業は、輸入及び販売に限定して先使用権が認められるが、例え<br />

ば、ドイツ国内での生産については、先使用権により保護されない。<br />

4 G. Benkard, Patentgesetz Gebrauchsmustergesetz, 10. Aufl., 2006, §12 Rn.2 を参照。<br />

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