先使用権制度の円滑な利用に関する 調査研究報告書
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また、CIPA Guide 5 (第 5 版、639 頁、64.06 段落)は、優先日前に行っていた<br />
行為が製造である場合は、製造された製品を販売する暗示の権利を生じると推定<br />
されると論じている。<br />
問5 先使用権者は、他者の優先日後に、生産規模の拡大、輸入規模の拡大、<br />
販売地域の拡大をすることが認められるか。<br />
この点については、いかなる判例においても検討されていない。<br />
一方、Terrell on the Law of Patents では、特許法 64 条は量的制限を課さな<br />
いと言及している。したがって、この学説によれば、一侵害製品を製造していた<br />
先使用権者は、その製造行為をどのような規模へでも(例えば新しいプラントの<br />
購入を含むものであっても)拡大することができると考えられる。<br />
問6 先使用権の効力は先使用権者ではない者にも及ぶのか。<br />
(1)自己の事業上のパートナーに実施させる場合の取扱い<br />
特許法 64 条 2 項(a)では、事業の過程において侵害となるべき実施行為を行い、<br />
又はその準備をなした者は、当該事業における現在の自己のパートナーに当該実<br />
施行為を行う権能を与えることができると規定している。<br />
この点について、Terrell on the Law of Patents の 8.60 では、「64 条 2 項 (a)<br />
は、先使用権者が、自己のビジネスパートナーに先使用者の行為を実行する権能<br />
を与える権利を有することを規定している。」と言及している。<br />
(2)先使用権者が製品を第三者に処分した場合の取扱い<br />
特許法 64 条 3 項 6 に、先使用権者が製品を第三者に処分(譲渡)した場合の取扱<br />
いが規定されている。先使用権者の先使用権に係る製品が先使用権者ではない者<br />
に譲渡された場合、その者は、その製品を特許権者から譲渡されたと同様に販売<br />
することができる。<br />
(3)グループ企業の取扱い<br />
グループ企業の一企業に先使用権が認められた場合、他のグループ関係企業に<br />
5 英国弁理士会著、Sweet & Maxwell 出版<br />
6 第 64 条 3 項<br />
何人かが(1)又は(2)の規定で与えられた権利を行使して他人に特許製品を処分するときは、前記の他人<br />
及びこの他人を経由する権限を有する何人も、前記の者が特許権者によって処分されたとする場合に於<br />
けるのと同様の方法でこれを取り扱うことができる。<br />
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