先使用権制度の円滑な利用に関する 調査研究報告書
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したがって、先使用権は、一般に先使用権者が実際に実施していたか又は近い<br />
将来実施するために必要な準備を行っていた同種の実施又は特にこれらの具現<br />
化を対象とするものである(ライヒ裁判所判決 1934 年 11 月 14 日判決,<br />
Tourenregulierung 事件[判例 4])。 9<br />
判例では、先使用権は、発明の所有に表明されている発明思想の範囲で認めら<br />
れるとされる。<br />
なお、連邦通常裁判所の最近の判決(2001 年 1 月 13 日判決、Biegevorrichtung<br />
事件)[判例 20]は、先使用の対象を更に開発することはそのような変更を加え<br />
た製品が特許により保護される特定の発明を侵害する場合には許されないとの<br />
判決を下した。<br />
このため、先使用権者は、付与されたクレームの「範囲に含まれるように製品<br />
を開発する」ことは許されない。<br />
連邦通常裁判所 2001 年 1 月 13 日判決, Biegevorrichtung 事件[判例 20]<br />
被告の装置については特許付与されたクレーム1の特徴の一つを欠いている<br />
ため、先使用権は、この特徴を欠く当該装置についてのみ確立されたとして、特<br />
許付与されたクレーム1の対象に変更することについては先使用権が認められ<br />
なかった。<br />
問5 先使用権者は、特許法第9条及び第10条に定義された実施行為を変更<br />
することはできるのか。例えば、出願前に輸入・販売していた場合、出願後に<br />
製造・販売に変更することはできるか。<br />
他者の出願後の実施行為の変更として、どの程度の実施行為の変更が認められ<br />
るかの判断は、先使用により先に確立されている発明の所有の範囲に依存する。<br />
製品の生産者には無制限に実施の種類を変更することが許され、先使用権はす<br />
べての実施を対象として認められる。すなわち、ドイツにおいて製品の生産を行<br />
う企業には、販売の申出、販売、輸入などを開始することが許され、すべての行<br />
為が先使用権の対象となることになる。<br />
これに関係する数少ない判例の一つは 1903 年にさかのぼる (ライヒ裁判所<br />
1902 年 9 月 20 日判決、Kessel 事件[判例 1])。この判例によれば、製品の製<br />
造により、考え得るあらゆる実施態様、すなわちドイツ特許法第 9 条及び第 10<br />
9 G. Benkard, Patentgesetz, 10. Aufl. 2006, §12 Rn 22 を参照。<br />
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