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特許審査便覧第2100章 - Japan Patent Office

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米 国<br />

特 許 審 査 便 覧 第 2100 章 特 許 性<br />

第 8 版 (2010 年 7 月 )<br />

目 次<br />

2105 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 ― 生 物<br />

2106 特 許 保 護 対 象 としての 適 格 性<br />

2106.01 コンピュータ 関 連 で 法 定 の 保 護 対 象 ではないもの<br />

2106.02 数 学 的 アルゴリズム<br />

2107 有 用 性 要 件 を 満 たす 出 願 の 審 査 基 準<br />

2107.01 有 用 性 要 件 による 拒 絶 を 律 する 一 般 原 則<br />

2107.02 有 用 性 要 件 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 について 手 続 上 考 慮 すべき 事 柄<br />

2107.03 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 に 関 する 特 別 な 考 慮<br />

2111 クレームの 解 釈 ; 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈<br />

2111.01 明 白 な 意 味<br />

2111.02 前 提 部 分 の 効 力<br />

2111.03 移 行 句<br />

2111.04 「Adapted to(~に 適 している)」、「Adapted for(~に 適 している)」、「Wherein(そ<br />

こで)」 及 び「Whereby(それによって)」 節<br />

2112 潜 在 的 特 性 に 基 づく 拒 絶 の 要 件 ; 立 証 責 任<br />

2112.01 組 成 物 、 製 品 及 び 装 置 のクレーム<br />

2112.02 方 法 クレーム<br />

2113 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム<br />

2114 装 置 及 び 物 品 のクレーム― 機 能 的 文 言<br />

2115 装 置 によって 加 工 を 受 ける 材 料 又 は 物 品<br />

2116 プロセスで 処 理 される 材 料<br />

2116.01 新 規 な、 自 明 でない 開 始 材 料 又 は 最 終 製 品<br />

2121 先 行 技 術 ; 一 応 の 証 明 がある 事 例 とするために 必 要 な 実 用 可 能 性 の 一 般 的 水 準<br />

2121.01 実 用 可 能 性 が 問 題 となる 拒 絶 での 先 行 技 術 の 使 用<br />

2121.02 化 合 物 及 び 組 成 物 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

2121.03 植 物 遺 伝 学 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

1


2121.04 装 置 及 び 物 品 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

2122 先 行 技 術 の 有 用 性 の 考 察<br />

2123 好 ましい 実 施 例 に 代 わる 先 行 技 術 の 広 範 な 開 示 による 拒 絶<br />

2124 引 用 例 の 基 準 日 は 出 願 日 に 先 行 しなければならないとする 規 則 に 対 する 例 外<br />

2125 先 行 技 術 としての 図 面<br />

2126 特 許 法 第 102 条 (a)、(b) 及 び(d)に 基 づく 拒 絶 において「 特 許 」としての 文 書 の 利 用 可<br />

能 性<br />

2126.01 特 許 が 引 例 として 利 用 可 能 になる 日<br />

2126.02 引 例 が「 特 許 」であるが「 刊 行 物 」でない 場 合 にクレームを 拒 絶 するため 使 用 し 得<br />

る 引 例 開 示 の 範 囲<br />

2127 先 行 技 術 としての 国 内 及 び 外 国 特 許 出 願<br />

2128 先 行 技 術 としての「 印 刷 された 刊 行 物 」<br />

2128.01 必 要 とされる 一 般 公 開 の 水 準<br />

2128.02 刊 行 物 が 引 例 として 利 用 可 能 になる 日<br />

2129 先 行 技 術 としての 自 認<br />

2131 新 規 性 の 欠 如 ― 特 許 法 第 102 条 (a)、(b) 及 び(e)の 適 用<br />

2131.01 複 数 引 例 の 特 許 法 第 102 条 拒 絶<br />

2131.02 属 - 種 の 問 題<br />

2131.03 範 囲 に 関 する 新 規 性 の 欠 如<br />

2131.04 副 次 的 考 察 事 項<br />

2131.05 非 類 似 の 又 はけなしている 先 行 技 術<br />

2132 特 許 法 第 102 条 (a)<br />

2132.01 特 許 法 第 102 条 (a) 先 行 技 術 としての 刊 行 物<br />

2133 特 許 法 第 102 条 (b)<br />

2133.01 一 部 継 続 出 願 (CIP)の 拒 絶<br />

2133.02 公 表 文 献 及 び 特 許 による 拒 絶<br />

2133.03 「 公 用 」 又 は「 販 売 」による 拒 絶<br />

2133.03(a) 「 公 用 」<br />

2133.03(b) 「 販 売 」<br />

2133.03(c) 「 発 明 」<br />

2


2133.03(d) 「 本 国 内 」<br />

2133.03(e) 許 される 行 為 ; 試 験 的 使 用<br />

2133.03(e)(1) 商 業 利 用<br />

2133.03(e)(2) 意 図<br />

2133.03(e)(3) 発 明 の「 完 全 性 」<br />

2133.03(e)(4) 試 験 目 的 を 示 す 要 因<br />

2133.03(e)(5) 試 験 並 びに 監 督 及 び 支 配 の 程 度<br />

2133.03(e)(6) 許 される 試 験 的 行 為 及 びテスト<br />

2133.03(e)(7) 独 立 した 第 三 者 である 発 明 者 の 行 為<br />

2134 特 許 法 第 102 条 (c)<br />

2135 特 許 法 第 102 条 (d)<br />

2135.01 特 許 法 第 102 条 (d)の 4 要 件<br />

2136 特 許 法 第 102 条 (e)<br />

2136.01 発 行 の 前 後 の 引 例 としての 米 国 出 願 の 地 位<br />

2136.02 クレームに 使 用 できる 先 行 技 術 の 内 容<br />

2136.03 引 用 例 の 基 準 日<br />

2136.04 異 なる 発 明 主 体 ;「 他 者 による」の 意 味<br />

2136.05 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 拒 絶 の 克 服<br />

2137 特 許 法 第 102 条 (f)<br />

2137.01 発 明 者<br />

2137.02 特 許 法 第 103 条 (c)の 適 用 可 能 性<br />

2138 特 許 法 第 102 条 (g)<br />

2138.01 インターフェアレンス 手 続 実 務<br />

2138.02 「 発 明 は 本 国 内 でなされた」<br />

2138.03 「 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 していない 他 人 による」<br />

2138.04 「 着 想 」<br />

2138.05 「 実 施 化 」<br />

2138.06 「 合 理 的 勤 勉 性 」<br />

2141 特 許 法 第 103 条 に 基 づいて 自 明 性 を 判 断 するための 審 査 指 針<br />

2141.01 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容<br />

2141.01(a) 類 似 及 び 非 類 似 技 術<br />

2141.02 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 相 違 点<br />

2141.03 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベル<br />

2142 一 応 の 自 明 性 の 法 的 概 念<br />

3


2143 一 応 の 自 明 性 の 事 例 の 基 本 的 要 件 の 例<br />

2143.01 引 例 を 修 正 するための 示 唆 又 は 動 機<br />

2143.02 成 功 の 合 理 的 期 待 が 必 要 とされる<br />

2143.03 すべてのクレーム 限 定 は 検 討 されねばならない<br />

2144 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける<br />

2144.01 黙 示 的 開 示<br />

2144.02 科 学 的 理 論 への 依 存<br />

2144.03 当 該 技 術 分 野 の 共 通 の 知 識 又 は「 既 存 」 先 行 技 術 への 依 存<br />

2144.04 理 論 的 根 拠 を 裏 付 ける 資 料 としての 法 的 先 例<br />

2144.05 範 囲 に 関 する 自 明 性<br />

2144.06 同 一 の 目 的 のために 等 価 であると 認 められる 技 術<br />

2144.07 意 図 した 目 的 のために 適 合 すると 認 められる 技 術<br />

2144.08 先 行 技 術 が 属 を 教 示 する 場 合 の 種 の 自 明 性<br />

2144.09 化 合 物 ( 同 族 体 、 類 似 体 、 異 性 体 ) 間 の 構 造 的 同 等 性<br />

2145 出 願 人 の 反 論 理 由 の 検 討<br />

2146 特 許 法 第 103 条 (c)<br />

2161 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 明 細 書 の 独 立 3 要 件<br />

2161.01 コンピュータプログラミングと 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落<br />

2162 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 根 拠 を 成 す 方 針<br />

2163 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 「 書 面 による 記 載 」 要 件 に 基 づく 特 許 出 願 の 審 査 指 針<br />

2163.01 開 示 におけるクレームされた 保 護 対 象 の 支 持<br />

2163.02 書 面 記 載 要 件 適 合 を 判 断 するための 基 準<br />

2163.03 書 面 記 載 の 十 分 性 が 問 題 になる 典 型 的 状 況<br />

2163.04 書 面 記 載 要 件 に 関 する 審 査 官 の 責 任<br />

2163.05 クレームの 範 囲 への 変 更<br />

2163.06 書 面 記 載 要 件 と 新 規 事 項 との 関 係<br />

2163.07 原 明 細 書 本 文 において 裏 付 けられる 出 願 への 補 正<br />

2163.07(a) 潜 在 的 な 機 能 、 理 論 又 は 利 点<br />

2163.07(b) 出 典 明 示 による 記 載<br />

2164 実 施 可 能 要 件<br />

2164.01 実 施 可 能 性 の 基 準<br />

2164.01(a) 過 度 の 実 験 の 要 因<br />

2164.01(b) クレーム 発 明 の 製 造 方 法<br />

2164.01(c) クレーム 発 明 の 使 用 方 法<br />

4


2164.02 実 施 例<br />

2164.03 当 該 技 術 の 予 測 可 能 性 と 実 施 可 能 要 件 との 関 係<br />

2164.04 実 施 可 能 要 件 に 基 づく 審 査 官 の 責 任<br />

2164.05 証 拠 全 体 に 基 づく 実 施 可 能 性 の 判 断<br />

2164.05(a) 明 細 書 は 出 願 日 現 在 で 実 施 可 能 でなければならない<br />

2164.05(b) 明 細 書 は 当 業 者 に 実 施 可 能 でなければならない<br />

2164.06 実 験 の 数<br />

2164.06(a) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ― 情 報 の 欠 如<br />

2164.06(b) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ― 化 学 物 質 の 場 合<br />

2164.06(c) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ―コンピュータプログラミングの 場 合<br />

2164.07 実 施 可 能 性 要 件 と 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 との 関 係<br />

2164.08 クレーム 範 囲 と 相 応 する 実 施 可 能 性<br />

2164.08(a) 単 一 ミーンズクレーム<br />

2164.08(b) 実 施 不 可 能 な 保 護 対 象<br />

2164.08(c) クレームされていない 決 定 的 に 重 要 な 特 徴<br />

2165 最 良 実 施 態 様 (ベストモード) 要 件<br />

2165.01 最 良 の 態 様 に 関 連 した 考 慮 事 項<br />

2165.02 実 施 可 能 性 要 件 と 比 較 した 最 良 実 施 態 様 要 件<br />

2165.03 最 良 実 施 態 様 要 件 の 欠 如 による 拒 絶 の 要 件<br />

2165.04 隠 蔽 の 証 拠 の 例<br />

2171 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 2 つの 別 要 件<br />

2172 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 える 保 護 対 象<br />

2172.01 クレームされていない 本 質 的 事 項<br />

2173 クレームは 発 明 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 に 主 張 しなければならない<br />

2173.01 クレーム 用 語<br />

2173.02 明 確 性 及 び 正 確 性<br />

2173.03 クレームと、 明 細 書 の 開 示 又 は 先 行 技 術 との 矛 盾<br />

2173.04 広 いことは 不 明 瞭 性 ではない<br />

2173.05 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 争 点 に 関 連 した 特 定 の 問 題<br />

2173.05(a) 新 しい 用 語<br />

2173.05(b) 相 対 的 な 語<br />

2173.05(c) 数 値 範 囲 及 び 量 の 限 定<br />

2173.05(d) 例 示 的 なクレーム 文 言 (「for example( 例 えば)」「such as(といった」)<br />

2173.05(e) 先 例 による 根 拠 の 欠 如<br />

2173.05(f) 別 のクレーム 中 の 限 定 の 参 照<br />

2173.05(g) 機 能 的 限 定<br />

2173.05(h) 択 一 的 限 定<br />

5


2173.05(i) 否 定 的 限 定<br />

2173.05(j) 古 いものの 組 み 合 わせ<br />

2173.05(k) 寄 せ 集 め<br />

2173.05(m) 冗 長<br />

2173.05(n) 多 項 化<br />

2173.05(o) 二 重 包 含<br />

2173.05(p) プロダクト・バイ・プロセス・クレーム、 又 は、 製 品 とプロセスを 対 象 とする<br />

クレーム<br />

2173.05(q) 「Use( 用 途 )」クレーム<br />

2173.05(r) オムニバスクレーム<br />

2173.05(s) 図 面 又 は 表 の 参 照<br />

2173.05(t) 化 学 式<br />

2173.05(u) クレーム 中 の 商 標 若 しくは 商 号<br />

2173.05(v) 機 械 の 単 なる 機 能<br />

2173.06 不 明 瞭 であるとして 拒 絶 されたクレームの 先 行 技 術 による 拒 絶<br />

2174 特 許 法 第 112 条 の 第 1 段 落 要 件 と 第 2 段 落 要 件 の 関 係<br />

2181 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 の 限 定 を 特 定 する<br />

2182 先 行 技 術 の 調 査 及 び 特 定 の 範 囲<br />

2183 均 等 の 一 応 の 証 明<br />

2184 一 応 の 証 明 が 行 われた 後 、 非 均 等 性 の 立 証 責 任 を 出 願 人 が 果 たしたかどうかの 判 断<br />

2185 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 又 は 第 2 段 落 に 基 づく 関 連 争 点<br />

2186 均 等 論 との 関 係<br />

2190 出 願 手 続 懈 怠<br />

6


2105 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 ― 生 物<br />

Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 206 USPQ 193 (1980)における 最 高 裁 判 所 の 判 決 は、<br />

遺 伝 子 工 学 で 作 り 出 された 微 生 物 は 特 許 法 第 101 条 による 特 許 保 護 の 範 囲 から 排 除 されるも<br />

のではないとした。 発 明 に 生 物 が 含 まれるかどうかの 問 題 は 特 許 性 を 論 ずることと 無 関 係 で<br />

あることは、 最 高 裁 判 所 の 判 決 及 び 意 見 から 明 らかである。 裁 判 所 がこの 分 野 において 特 許<br />

を 受 けられる 保 護 対 象 について 定 めている 基 準 は、その 生 物 は 人 が 介 入 した 結 果 であるか 否<br />

かである。<br />

上 記 の 判 決 を 背 景 に、 特 許 商 標 庁 は 特 許 法 第 101 条 をどのように 解 釈 するかについてこれら<br />

の 審 査 指 針 を 発 行 した。<br />

最 高 裁 判 所 は Chakrabarty 事 件 の 意 見 において 次 のように 主 張 した。<br />

1. 「これらの 解 釈 の 規 範 を 手 掛 かりに、 本 法 廷 は 第 101 条 の『 製 造 物 』という 言 葉 は 辞 書 の<br />

定 義 に 従 って『 手 仕 事 によると 機 械 によるとを 問 わず、 準 備 された 原 材 料 に 新 たな 形 、 性 質 、<br />

特 性 又 は 組 み 合 わせを 与 えることによる、これらの 材 料 からの 利 用 に 供 する 物 の 生 産 』をい<br />

うと 解 釈 した。」<br />

2. 「 議 会 は、 包 括 的 な『いかなる』という 語 で 修 飾 した『 製 造 物 』 及 び『 組 成 物 』 等 の 意 味<br />

の 広 い 言 葉 を 選 択 する 際 、 特 許 法 は 幅 広 い 範 囲 に 与 えられるであろうとはっきり 予 期 してい<br />

た。」<br />

3. 「 特 許 法 は『 発 明 の 才 は 惜 しみない 奨 励 を 受 けるべき』とのジェファーソン 哲 学 を 具 体 化<br />

した。5 Writings of Thomas Jefferson, at 75-76。Graham v. John Deere Co., 383 U.S. 1,<br />

7-10 (1966)を 参 照 のこと。 続 く 1836 年 ,1870 年 及 び 1874 年 の 特 許 法 でこの 同 じ 広 義 の 文<br />

言 を 採 用 した。1952 年 に 特 許 法 が 再 編 纂 された 際 、 議 会 は『 技 術 』を『 方 法 』に 置 き 換 えた<br />

がその 他 はジェファーソンの 文 言 をそのまま 残 した。1952 年 法 に 付 随 する 委 員 会 報 告 書 から、<br />

議 会 は 法 定 の 保 護 対 象 に『 人 によって 作 られるありとあらゆるものを 含 める』ことを 意 図 し<br />

ていたことがわかる。S. Rep. No. 1979, 82d Cong., 2d Sess., 5 (1952)。」<br />

4. 「このことは、 第 101 条 が 無 限 の 又 はあらゆる 発 見 を 受 け 入 れることを 示 唆 するものでは<br />

ない。 自 然 法 則 、 自 然 現 象 及 び 抽 象 的 概 念 は 特 許 性 を 有 しないと 考 えられている。」<br />

5. 「 従 って、 新 たに 地 中 で 発 見 された 鉱 物 又 は 新 たに 自 然 界 で 発 見 された 植 物 は 特 許 性 のあ<br />

る 保 護 対 象 とならない。 同 様 に、アインシュタインもあの 有 名 な 法 則 E=mc 2 で 特 許 権 を 得 ら<br />

れなかったし、ニュートンも 万 有 引 力 の 法 則 で 特 許 権 を 得 られなかった。<br />

6. 「クレームは 今 までに 知 られていない 自 然 現 象 に 対 してではなく、 非 自 然 的 に 発 生 する 製<br />

造 物 又 は 組 成 物 ―『 固 有 の 名 前 、 性 質 [ 及 び] 用 途 を 持 つ』 人 間 の 知 恵 の 産 物 に 対 するもので<br />

ある。<br />

7. 「 議 会 はこのように、 問 題 とされる 違 いは、 生 物 であるか 無 生 物 であるかではなく 自 然 の<br />

産 物 ( 生 物 無 生 物 を 問 わない)であるか 人 間 の 手 による 発 明 あるかであることを 認 めている。<br />

この 点 で、 被 告 の 微 生 物 は 人 間 の 知 恵 と 研 究 の 成 果 である。」<br />

8. 判 決 は、Funk Seed Co. & Kalo Co., 333 U.S.127 (1948)に 言 及 した 後 、「 本 件 では、こ<br />

れとは 異 なり、 特 許 権 者 は 自 然 界 で 発 見 されたいずれのものとも 著 しく 異 なる 新 たなバクテ<br />

リアを 作 り 出 しており、 非 常 に 有 用 なものとなる 可 能 性 を 有 する。この 発 見 は 自 然 の 創 造 物<br />

ではなく 特 許 権 者 自 身 のものである。 従 って、 第 101 条 に 基 づく 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象<br />

となる。」<br />

最 高 裁 の 上 記 判 示 事 項 及 び Chakrabarty 事 件 全 体 における 意 見 を 検 討 すると、 次 のことが 明<br />

7


らかになる。<br />

(A) 最 高 裁 はその 判 決 を 遺 伝 子 組 換 え 生 物 に 限 定 していないこと。<br />

(B) 最 高 裁 は 特 許 法 第 101 条 ( 上 記 1、2 及 び 3 の 引 用 に 特 に 留 意 )の「 製 造 物 」 及 び「 組 成 物 」<br />

に 非 常 に 広 い 解 釈 を 表 明 した。<br />

(C) 最 高 裁 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 が 存 在 しているかどうかを<br />

評 価 するためいくつかの 基 準 を 確 立 し、 次 のように( 上 記 引 用 7) 述 べている。<br />

「 問 題 とされる 違 いは、 生 物 であるか 無 生 物 であるかではなく 自 然 の 産 物 ( 生 物 無 生 物 を 問 わ<br />

ない)であるか 人 間 の 手 による 発 明 であるかである。」<br />

最 高 裁 によって 確 立 された 基 準 は 次 に 掲 げるとおり( 特 にイタリック 体 部 分 に 留 意 )。<br />

(A) 「 自 然 法 則 、 自 然 現 象 及 び 抽 象 的 概 念 」は 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 ではない。<br />

(B) 「 非 自 然 的 に 発 生 する 製 造 物 又 は 組 成 物 ― 人 間 の 知 恵 の 産 物 ― 固 有 の 名 前 、 性 質 [ 及 び]<br />

用 途 を 持 つもの」は 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 である。<br />

(C) 「 新 たに 地 中 で 発 見 された 鉱 物 又 は 新 たに 自 然 界 で 発 見 された 植 物 は 特 許 を 受 けられる<br />

保 護 対 象 ではない。 同 様 に、アインシュタインもあの 有 名 な 法 則 E=mc 2 で 特 許 権 を 得 られな<br />

かったし、ニュートンも 万 有 引 力 の 法 則 で 特 許 権 を 得 られなかった。かかる 発 見 は『 自 然 の<br />

顕 現 であって、すべての 人 類 に 公 開 され 何 人 にも 独 占 されない。』」<br />

(D) 「 手 仕 事 によると 機 械 によるとを 問 わず 準 備 された 原 材 料 に 新 たな 形 、 性 質 、 特 性 又 は<br />

結 合 を 与 えることによるこれらの 材 料 からの 利 用 に 供 する 物 品 の 生 産 」[ 強 調 は 引 用 者 によ<br />

る]は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく「 製 造 物 」である。<br />

1930 年 の 植 物 特 許 法 の 立 法 過 程 の 分 析 において、 最 高 裁 は 次 のように 述 べている。「 植 物 特<br />

許 法 の 制 定 に 際 し、 議 会 はこれら 2 つの 問 題 [ 植 物 は 人 工 的 に 育 成 されたとしても 特 許 法 の 目<br />

的 からは 天 然 物 であるという 問 題 と、 植 物 は 詳 細 な 書 面 による 説 明 に 適 さないと 考 えられる<br />

問 題 ]を 述 べ、「 自 然 を 助 ける」 植 物 育 種 家 の 作 品 は 特 許 性 のある 発 明 であるという 意 見 を 詳<br />

細 に 説 明 している。S. Rep. No. 315, 71st Cong., 2d Sess., 6-8 (1930); H.R. Rep. No. 1129,<br />

71st Cong., 2d Sess., 7-9 (1930)。」<br />

特 許 商 標 庁 は、 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 に 関 する 問 題 は<br />

Chakrabarty 事 件 で 確 立 された 基 準 に 従 って、 例 えば「 非 自 然 的 に 発 生 する 製 造 物 又 は 組 成<br />

物 」は 特 許 を 受 けることができる 等 、 個 別 に 判 断 する。ここにおいて 前 もって 準 拠 すべき 絶<br />

対 的 パラメータを 規 定 しようとすることは 適 切 ではない。<br />

これまでに 特 許 性 基 準 が 下 げられたことはなく、 今 後 もない。 特 許 法 第 第 102 条 及 び 第 103<br />

条 の 要 件 もまた 適 用 される。 上 述 の 基 準 は、 特 許 法 第 101 条 の 判 断 においての 合 理 的 根 拠 を<br />

示 すものに 過 ぎない。これに 加 えて、 特 許 法 第 112 条 の 要 件 もまた 満 たされねばならない。<br />

この 点 については MPEP 第 608.01(p) 条 を 参 照 のこと。<br />

もう 一 つの 特 許 法 第 101 条 の 範 囲 を 取 り 扱 った 事 例 において 最 高 裁 判 所 は、 新 たに 育 成 され<br />

た 植 物 品 種 が、 植 物 特 許 法 ( 特 許 法 第 161 条 乃 至 164 条 ) 及 び 植 物 品 種 保 護 法 (7 U.S.C. 第 2321<br />

条 以 下 )によっても 保 護 されるとしてもなお、 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 特 許 を 受 けられる 保 護<br />

対 象 に 含 まれると 判 示 した。J.E.M. Ag Supply, Inc. v. Pioneer Hi-Bred Int’ l, Inc., 534<br />

U.S. 124, 143-46, 122 S.Ct. 593, 605-06, 60 USPQ2d 1865, 1874 (2001)( 特 許 法 第 101<br />

条 の 対 象 範 囲 は 植 物 特 許 法 又 は 植 物 品 種 保 護 法 によって 限 定 されない。 法 律 ごとにその 要 件<br />

及 び 保 護 するものを 異 にするためそれぞれが 有 効 と 考 え 得 る)。<br />

Ex parte Hibberd, 227 USPQ 443 (Bd. Pat. App. & Inter. 1985)も 参 照 のこと。ここで 審<br />

8


判 部 は、 植 物 の 保 護 対 象 は 植 物 特 許 法 又 は 植 物 品 種 保 護 法 により 保 護 され 得 るにもかかわら<br />

ず 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 特 許 の 対 象 として 適 切 であり 得 るとした。Chakrabarty 事 件 の 論<br />

拠 に 従 って 特 許 審 判 部 もまた、 動 物 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 で<br />

あると 判 定 している。Ex parte Allen, 2 USPQ2d 1425 (Bd. Pat. App. & Inter. 1987)にお<br />

いて、 審 判 部 は、 倍 数 体 の 真 牡 蠣 は 特 許 要 件 のすべての 基 準 を 満 たしている 場 合 、 特 許 法 第<br />

101 条 に 基 づく 特 許 の 適 切 な 対 象 となり 得 ると 判 定 した。Allen 審 判 のすぐ 後 で 特 許 商 標 庁 長<br />

官 は、 特 許 商 標 庁 は 動 物 を 含 めてヒト 以 外 の 非 自 然 的 に 発 生 する 多 細 胞 生 物 は 特 許 法 101 条<br />

の 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 であると 考 えるとする 通 知 ( 動 物 ― 特 許 要 件 、 特 許 商 標 庁 公 報 第<br />

1077 号 、4 月 24 日 )を 発 行 した。<br />

クレームされている 発 明 全 体 の 最 も 広 い 合 理 的 な 解 釈 がヒトを 包 含 する 場 合 、そのクレーム<br />

されている 発 明 は 法 定 の 保 護 対 象 ではないとして 特 許 法 101 条 に 基 づき 拒 絶 されねばならな<br />

い。そのクレームされている 発 明 は、さらに 特 許 要 件 に 関 するすべての 事 項 について 審 査 さ<br />

れねばならならず、 特 許 法 102 条 、103 条 又 は 112 条 に 基 づき 適 用 される 拒 絶 もまた 成 され<br />

なくてはならない。<br />

9


2106 特 許 保 護 対 象 としての 適 格 性<br />

I. 序<br />

特 許 保 護 対 象 としての 適 格 性 に 関 する 特 許 出 願 審 査 の 暫 定 指 針 ( 以 下 「 審 査 指 針 」)は、クレ<br />

ームされている 発 明 が 法 定 の 保 護 対 象 に 関 するかどうかを 個 別 に 判 定 する 上 で 審 査 官 を 助 け<br />

るものである。これらの 審 査 指 針 は 米 国 特 許 商 標 庁 の 現 時 点 における 法 律 の 理 解 に 基 づくも<br />

のであって、 最 高 裁 判 所 、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 及 びその 前 身 裁 判 所 の 法 的 拘 束 力 を 有 する 判<br />

例 と 十 分 な 整 合 性 を 有 するものと 考 えられる。<br />

これらの 審 査 指 針 は 実 体 法 規 を 形 成 するものではなく、 従 って 法 的 効 力 も 拘 束 力 もない。こ<br />

れらの 審 査 指 針 は、クレームされた 保 護 対 象 は 実 体 法 に 適 合 しているかを 分 析 する 上 で 米 国<br />

特 許 商 標 庁 審 査 官 を 支 援 することを 目 的 としている。 拒 絶 は 実 体 法 に 基 づくものであり、 上<br />

訴 可 能 な 拒 絶 は 実 体 法 に 基 づくものである。 従 って、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 による 本 審 査 指<br />

針 の 不 遵 守 については 上 訴 することも 嘆 願 することもできない。<br />

本 審 査 指 針 は 出 願 審 査 時 に 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 従 う 手 順 を 規 定 する。 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

査 官 は、これらの 審 査 指 針 と 米 国 特 許 商 標 庁 の 以 前 の 指 示 との 間 に 矛 盾 する 問 題 の 取 扱 いが<br />

在 った 場 合 は、これらの 審 査 指 針 に 依 拠 しなければいけない。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 従 うべきプロセスの 流 れ 図 は 本 条 末 に 記 載 する。<br />

II. 出 願 人 が 発 明 し 特 許 を 請 求 しているものの 確 定<br />

特 許 出 願 人 には、 速 やかであってしかも 完 全 な 出 願 審 査 を 得 ることが 重 要 である。 審 査 手 続<br />

の 迅 速 化 の 原 則 のもと、1 以 上 のクレームが 法 定 特 許 要 件 を 満 たさないことが 分 かったとし<br />

ても、 最 初 の 出 願 審 査 においてすべてのクレームに 関 して、すべての 法 定 特 許 要 件 への 適 合<br />

性 を 審 査 しなくてはならない。したがって、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 最 初 の 拒 絶 理 由 通 知<br />

において、クレームを 拒 絶 するすべての 理 由 及 び 根 拠 を 陳 述 しなくてはならない。 不 備 は、<br />

拒 絶 の 根 拠 となる 場 合 は 特 に、 明 確 に 説 明 されねばならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 可 能<br />

な 場 合 はいつも、 拒 絶 を 克 服 し 得 る 方 法 及 び 問 題 を 解 決 し 得 る 方 法 を 示 さなくてはならない。<br />

この 手 法 を 守 らないことが 当 該 出 願 審 査 の 不 要 な 遅 延 につながる 可 能 性 がある。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 特 定 の 法 定 要 件 に 的 を 絞 る 前 に、 当 該 出 願 人 は 正 確 には 何 を 発 明 し<br />

て 特 許 を 請 求 しているか、クレームはその 発 明 にどのように 関 連 しかつその 発 明 をどのよう<br />

に 定 義 しているかを 確 認 することによって 審 査 を 開 始 しなくてはならない。( 裁 判 所 が 繰 り 返<br />

し 米 国 特 許 商 標 庁 に 次 のように 伝 えているとおり。「 目 的 は『 出 願 人 は 何 を 発 明 したか?』<br />

という 質 問 に 答 えることである。」In re Abele, 684 F.2d 902, 907, 214 USPQ 682, 687 (CCPA<br />

1982)。 同 様 の 事 例 として、Arrhythmia Research Tech. v. Corazonix Corp., 958 F.2d 1053,<br />

1059, 22 USPQ2d 1033, 1038 (Fed. Cir. 1992)。) 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 発 明 の 詳 細 な<br />

説 明 、 開 示 されたすべての 具 体 的 実 施 例 、クレーム 及 び 当 該 発 明 に 主 張 されるすべての 具 体<br />

的 、 実 質 的 かつ 信 頼 できる 有 用 性 を 含 めて、 明 細 書 のすべてを 審 査 する。<br />

出 願 人 が 発 明 したものの 理 解 を 得 た 後 、 審 査 官 は 先 行 技 術 の 調 査 を 実 施 して、クレームされ<br />

た 当 該 発 明 はすべての 法 定 要 件 に 適 合 しているかどうかを 判 断 する。<br />

A. 発 明 に 主 張 される 有 用 性 及 び/ 又 は 実 用 性 の 特 定 と 理 解<br />

全 体 としてクレームされている 発 明 は 有 用 であって 実 用 性 の 域 に 達 していなくてはならない。<br />

すなわち、「 有 用 、 具 体 的 かつ 有 形 の 成 果 」を 生 まなければならない。State Street Bank &<br />

Trust Co. v. Signature Financial Group Inc., 149 F.3d 1368, 1373-74, 47 USPQ2d 1596,<br />

10


1601-02 (Fed. Cir. 1998)。 本 要 件 の 目 的 は、 特 許 権 による 保 護 を、 考 えや 概 念 以 外 の 何 も<br />

のでもない、 若 しくは 将 来 の 調 査 や 研 究 の 単 なる 起 点 となる 対 象 に 対 してではなく、「 実 社<br />

会 」において 一 定 水 準 の 価 値 を 有 する 発 明 に 対 してのみ 与 えるように 限 定 することにある。<br />

(Brenner v. Manson, 383 U.S. 519, 528-36, 148 USPQ 689, 693-96 (1966);In re Fisher,<br />

421 F.3d 1365, 76 USPQ2d 1225 (Fed. Cir. 2005); In re Ziegler, 992 F.2d 1197, 1200-03,<br />

26 USPQ2d 1600, 1603-06 (Fed. Cir. 1993)。)<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 当 該 出 願 を 審 査 し、すべての 主 張 された 利 用 を 特 定 しなくてはなら<br />

ない。 出 願 人 は 発 明 が 有 用 と 信 じられる 理 由 を 説 明 できる 最 も 有 利 な 立 場 にある。 従 って、<br />

完 全 な 開 示 にはクレームされた 発 明 に 何 らかの 実 用 性 の 示 唆 、 即 ち、 出 願 人 がそのクレーム<br />

された 発 明 が 有 用 であると 信 ずる 理 由 がなくてはならない。かかる 陳 述 は 普 通 、その 発 明 の<br />

目 的 若 しくはその 発 明 がどのように 使 用 されるか( 例 えば、 化 合 物 は 特 定 疾 患 の 治 療 に 有 用 で<br />

あると 信 じられる)を 説 明 する。 有 用 性 の 陳 述 はその 様 式 にかかわらず、 出 願 人 がクレームさ<br />

れている 発 明 は 有 用 であると 信 ずる 理 由 を、 一 般 的 な 当 業 者 が 理 解 できるものでなければな<br />

らない。 有 用 性 の 審 査 指 針 については MPEP 第 2107 条 を 参 照 のこと。 出 願 人 は 1 以 上 の 有 用<br />

性 及 び 実 用 性 を 主 張 できるが、 必 ず 一 つは 必 要 である。<br />

B. 出 願 人 が 発 明 したものを 理 解 する 発 明 の 詳 細 な 開 示 及 び 具 体 的 実 施 例 の 審 査<br />

詳 細 な 書 面 による 説 明 は 当 該 発 明 の 実 証 、 先 行 技 術 とのかかわり 方 の 説 明 及 び 当 該 発 明 の<br />

様 々な 特 徴 に 関 する 相 対 的 有 意 性 の 説 明 を 行 う 事 によって、 出 願 人 の 発 明 の 最 も 明 解 な 説 明<br />

となる。 従 って、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 行 為 をもってそれらの 評 価 を 継 続 しな<br />

くてはならない。<br />

(A) 当 該 発 明 の 機 能 、 即 ち、 発 明 は 何 をするもので 何 時 使 われるかを 開 示 に 従 って 確 認 する<br />

( 例 えば、プログラムされたコンピュータの 機 能 性 )(Arrhythmia, 958 F.2d at 1057、22<br />

USPQ2dat 1036、「 現 代 のデジタルコンピュータはデータに 足 し 算 、 引 き 算 、 掛 け 算 、 割 り 算<br />

或 いはビットシフト 等 の 数 学 演 算 処 理 を 行 って、 通 常 はバイナリ 形 式 でデータを 処 理 すると<br />

いうことは 無 論 正 しい。しかし、これはコンピュータが 行 うことをどのように 行 うかという<br />

だけにすぎない。 重 要 なことはデータの 意 味 であって 実 社 会 でのデータ 処 理 、 即 ちコンピュ<br />

ータは 何 をするかである。」<br />

(B) 少 なくとも 一 つの 主 張 される 実 用 性 を 実 現 するために 必 要 な 機 能 を 確 認 する。<br />

特 許 出 願 人 は 発 明 のこのような 態 様 を 明 確 に 記 載 した 出 願 を 用 意 することによって、 米 国 特<br />

許 商 標 庁 を 助 けることができる。<br />

C. クレーム 審 査<br />

クレームは 特 許 権 により 保 護 される 財 産 権 を 定 義 するので、これには 入 念 な 調 査 を 必 要 とす<br />

る。クレーム 分 析 の 目 的 は 出 願 人 が 求 める 保 護 の 境 界 を 特 定 し、 当 該 クレームがどのように<br />

関 連 するかを 理 解 して 出 願 人 が 示 しているものが 当 該 発 明 であることを 明 確 にすることであ<br />

る。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 当 該 クレームが 各 法 定 特 許 要 件 を 満 たしている 場 合 、 判 断 を<br />

下 す 前 にまず、クレームの 文 言 を 徹 底 的 に 分 析 することによってクレーム 範 囲 を 判 定 しなけ<br />

ればならない。In re Hiniker Co., 150 F.3d 1362, 1369, 47 USPQ2d 1523, 1529 (Fed. Cir.<br />

1998)(「ゲーム 名 はクレームできる。」)を 参 照 のこと。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 各 クレームの 限 界 を 特 定 し 評 価 することによりクレーム 分 析 を 開 始<br />

しなくてはならない。プロセスでは、クレーム 限 定 は 実 行 される 手 順 又 は 行 為 を 定 義 する。<br />

製 品 では、クレーム 限 定 は 個 別 の 物 理 的 構 造 又 は 材 料 を 定 義 する。 製 品 クレームは 機 械 、 製<br />

11


造 物 又 は 組 成 物 のいずれかに 関 するクレームである。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 各 クレーム 限 定 をそのクレーム 限 定 を 記 述 する 開 示 のすべての 部 分<br />

と 関 連 付 けなくてはいけない。このことは、 特 許 請 求 される 発 明 がミーンズ 又 はステップ・<br />

プラス・ファンクションの 文 言 を 用 いて 定 義 されるかどうかに 関 わらずすべての 場 合 に 行 わ<br />

ねばならない。 関 連 付 ける 手 順 が、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 がそれぞれのクレーム 限 定 を 正 し<br />

く 解 釈 することを 保 証 する。<br />

正 しく 解 釈 されるクレームの 保 護 対 象 はその 範 囲 を 限 定 する 用 語 によって 定 義 される。 審 査<br />

されねばならないのはこの 保 護 対 象 である。 一 般 事 項 として、クレームに 用 いられる 文 法 及<br />

び 用 語 が 意 図 する 意 味 は、その 文 言 がクレーム 範 囲 を 限 定 するかどうかを 決 定 する。 示 唆 す<br />

る 又 は 任 意 とするが、 実 行 されるべき 工 程 を 要 求 しない、 若 しくは 特 定 構 造 にクレームを 限<br />

定 しない 文 言 は、クレーム 範 囲 又 はクレーム 限 定 を 制 限 しない。 次 に 掲 げる 例 は、クレーム<br />

に 用 いる 文 言 の 制 限 効 果 が 問 題 になり 得 る 文 言 である。<br />

(A) 意 図 した 用 途 又 は 使 用 分 野 の 記 載<br />

(B) 「adapted to(~に 適 している)」 又 は「adapted for(~に 適 している)」 節<br />

(C) 「wherein(そこで)」 節 、<br />

(D) 「whereby(それによって)」 節<br />

ここに 挙 げる 例 は 網 羅 的 なものではない。<br />

MPEP 第 2111.04 条 を 参 照 のこと。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、クレームを 裏 付 ける 開 示 書 類 に 照 らして 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 を<br />

クレームに 与 えねばならない。In re Morris, 127 F.3d 1048, 1054-55, 44 USPQ2d 1023,<br />

1027-28 (Fed. Cir. 1997)。 明 細 書 に 見 られるがクレーム 内 に 記 載 されていない 制 限 はクレ<br />

ームに 読 み 込 むべきではない。E-Pass Techs., Inc. v. 3Com Corp., 343 F.3d 1364, 1369,<br />

67 USPQ2d 1947, 1950 (Fed. Cir. 2003)。(クレームは、 制 限 を 明 細 書 からクレームへ 不 必<br />

要 に 取 り 込 むことなく「 明 細 書 を 考 慮 して」 解 釈 されねばならない)。In re Prater, 415 F.2d<br />

1393, 1404-05, 162 USPQ 541, 550-551 (CCPA 1969)。See also In re Zletz, 893 F.2d 319,<br />

321-22, 13 USPQ2d 1320, 1322 (Fed. Cir. 1989)も 参 照 のこと。(「 特 許 審 査 において 係 属<br />

中 のクレームはそれらの 用 語 が 合 理 的 と 考 えられる 限 り 幅 広 く 解 釈 されねばならない・・・。そ<br />

の 理 由 は、クレームを 補 正 することが 可 能 な 特 許 審 査 手 続 において、 曖 昧 さが 認 識 され、 探<br />

求 された 文 言 の 範 囲 及 び 広 さが 探 求 され、 明 確 化 されなければならないからである・・・。 特 許<br />

審 査 の 重 要 な 目 的 は、 的 確 、 明 快 、 正 確 かつ 一 義 的 であるクレームに 作 り 上 げることである。<br />

この 方 法 によってのみ、 行 政 手 続 の 間 にできる 限 りクレーム 範 囲 の 不 明 確 性 を 除 去 すること<br />

ができる。<br />

明 確 な 定 義 が 出 願 人 によって 用 語 に 与 えられている 場 合 には、その 用 語 が 当 該 クレームで 使<br />

用 されている 限 り、その 定 義 がその 用 語 の 解 釈 を 規 制 する。Toro Co. v. White Consolidated<br />

Industries Inc., 199 F.3d 1295, 1301, 53 USPQ2d 1065, 1069 (Fed. Cir. 1999)(クレー<br />

ム 中 に 使 用 される 言 葉 の 意 味 は「 辞 書 的 意 味 なしには 解 釈 されないが、 明 細 書 及 び 図 面 に 照<br />

らして」 解 釈 される)。 用 語 に 当 てられるどのような 特 別 の 意 味 も、「 明 細 書 において、 一 般<br />

的 用 法 からの 逸 脱 が 発 明 の 属 する 技 術 分 野 の 熟 練 者 によってそのように 理 解 されるように 十<br />

分 に 明 確 でなければならない。」Multiform Desiccants Inc. v. Medzam Ltd., 133 F.3d 1473,<br />

1477, 45 USPQ2d 1429, 1432 (Fed. Cir. 1998)。MPEP 第 2111.01 条 も 参 照 のこと。<br />

出 願 人 が 用 語 はその 用 語 が 当 該 技 術 分 野 で 一 般 に 認 められている 意 味 と 相 入 れない 意 味 を 有<br />

12


すると 主 張 する 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 出 願 人 が 発 明 だと 主 張 しようとするものを<br />

より 上 手 く 示 すため 出 願 人 にクレームの 補 正 を 働 きかけなくてはならない。その 出 願 が 特 許<br />

となると、 後 続 出 願 に 対 する 先 行 技 術 となる。 従 って、 特 許 権 者 に 一 般 的 に 認 められている<br />

用 語 を 使 用 させることは、 後 の 検 索 目 的 、 特 にテキスト 検 索 が 可 能 なデータベースの 検 索 に<br />

とって 重 要 である。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 当 業 者 の 視 点 を 使 うことを 何 時 も 忘 れてはならない。クレーム 及<br />

び 開 示 は 他 と 切 り 離 して 評 価 してはならない。 発 明 の 要 素 が 技 術 的 によく 知 られている 場 合 、<br />

出 願 人 はそれらの 要 素 を 記 述 する 開 示 を 用 意 する 必 要 はない。<br />

ミーンズ・プラス・ファンクションの 文 言 が 機 械 又 は 製 造 物 の 発 明 の 特 性 を 定 義 するために<br />

使 用 されている 場 合 、かかる 文 言 は 当 該 明 細 書 に 開 示 される 構 造 又 は 材 料 及 び 記 載 される 機<br />

能 に 相 当 する「その 均 等 物 」に 限 って 読 めると 解 釈 されねばならない。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所<br />

大 法 廷 の 2 判 決 は、 米 国 特 許 商 標 庁 は 特 許 法 112 条 第 6 段 落 に 従 ってミーンズ・プラス・フ<br />

ァンクション 文 言 を 解 釈 しなくてはならないことを 明 確 にしている。In re Donaldson, 16<br />

F.3d 1189, 1193, 29 USPQ2d 1845, 1848 (Fed. Cir. 1994)( 大 法 廷 ); In re Alappat, 33 F.3d<br />

1526, 1540, 31 USPQ2d 1545, 1554 (Fed. Cir. 1994) ( 大 法 廷 )。<br />

開 示 は 明 示 的 、 黙 示 的 若 しくは 潜 在 的 な 場 合 がある。したがって、 最 初 に 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

査 官 はクレームされた 手 段 を、 記 載 された 工 程 又 は 機 能 を 実 行 する 発 明 の 詳 細 な 書 面 に 示 さ<br />

れた 要 素 に 関 連 付 けようとしなければならない。 詳 細 な 書 面 による 説 明 は 明 細 書 原 本 及 び 図<br />

面 から 成 り、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はクレームされたミーンズ・プラス・ファンクション 制<br />

限 に、 明 細 書 に 記 載 されている、 対 応 するすべての 構 造 又 は 材 料 、 及 びクレームされた 機 能<br />

を 実 行 する 方 法 を 含 むそれらの 均 等 物 との 整 合 性 のとれた、 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 を 与 えな<br />

くてはならない。Kemco Sales, Inc. v. Control Papers Company, Inc., 208 F.3d 1352, 54<br />

USPQ2d 1308 (Fed. Cir. 2000)を 参 照 のこと。 均 等 物 の 範 囲 を 解 釈 する 際 の 詳 細 指 針 は MPEP<br />

第 2181 条 から 第 2186 条 を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 が 用 語 の 意 味 として 何 を 意 図 するかを 判 断 するために 明 細 書 を 用 いることは 適 切 では<br />

あるが、クレームそのものがその 制 限 を 課 していないクレームに 明 細 書 から 積 極 的 な 制 限 を<br />

読 込 むことはできない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 によるクレームの 幅 広 い 解 釈 は、クレームが<br />

発 行 された 場 合 、そのクレームが、 正 当 化 された、 若 しくは 意 図 された 以 上 に 広 く 解 釈 され<br />

る 可 能 性 が 減 少 させる。 出 願 人 は 審 査 手 続 中 、クレームの 意 図 する 範 囲 をより 良 く 示 すため<br />

いつでも 補 正 することができる。<br />

最 後 に、クレームの 範 囲 を 評 価 する 場 合 はそのクレームのすべての 制 限 が 検 討 されねばなら<br />

ない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はクレームされている 発 明 を 個 別 の 要 素 に 切 り 離 し、その 要 素<br />

を 単 独 で 評 価 してはならない。そうしないでクレームは 全 体 として 検 討 されねばならない。<br />

参 照 事 例 として、Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175, 188-89, 209 USPQ 1, 9 (1981)(「 被 上<br />

訴 人 が 特 許 権 保 護 を 主 張 するプロセスの 101 条 による 適 格 性 判 断 において、クレームは 全 体<br />

として 検 討 されねばならない。クレームを 新 旧 の 要 素 に 分 けてから、 分 析 において 旧 要 素 の<br />

存 在 を 無 視 することは 適 切 ではない。プロセスにおける 新 たな 工 程 の 組 み 合 わせは、その 組<br />

み 合 わせの 構 成 要 素 すべてがよく 知 られておりその 組 み 合 わせが 行 われる 以 前 に 一 般 に 使 用<br />

されていたとしても 特 許 性 があり 得 るため、 方 法 クレームにおいては 特 に 言 える。」)を 参 照<br />

のこと。<br />

13


III. 先 行 技 術 に 関 する 徹 底 的 調 査 の 実 施<br />

クレームされている 発 明 を、 特 許 法 第 101 条 に 基 づいて 評 価 する 前 に、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査<br />

官 は 先 行 技 術 の 徹 底 調 査 を 実 施 するよう 期 待 される。 徹 底 調 査 には 米 国 及 び 外 国 双 方 の 特 許<br />

並 びに 非 特 許 文 献 の 確 認 が 含 まれる。 多 くの 場 合 、かかる 調 査 の 結 果 は 米 国 特 許 商 標 庁 審 査<br />

官 が 当 該 発 明 を 理 解 するために 役 に 立 つ。クレームされていない 態 様 が 後 でクレームされる<br />

ことがあるという 合 理 的 予 想 がある 場 合 、 明 細 書 記 載 の 発 明 は、クレームされているものも<br />

クレームされていないものも 共 に 調 査 されねばならない。 調 査 は、 明 細 書 に 記 述 される 構 造<br />

又 は 材 料 と、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 並 びに MPEP 第 2181 条 乃 至 第 2186 条 に 従 ってクレーム<br />

されたミーンズ・プラス・ファンクションの 限 定 に 対 応 するその 均 等 物 を 考 慮 に 入 れなけれ<br />

ばならない。<br />

IV. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 に 適 合 するかどうかの 判 定<br />

A. 適 用 される 法 の 下 における 特 許 法 第 101 条 の 範 囲 の 検 討<br />

合 衆 国 法 典 第 35 巻 第 101 条 は 次 のように 規 定 している。<br />

新 規 かつ 有 用 な 方 法 , 機 械 , 製 造 物 若 しくは 組 成 物 , 又 はそれらの 新 規 かつ 有 用 な 改 良 を 発<br />

明 又 は 発 見 した 者 は, 本 法 の 条 件 及 び 要 件 のもとに 特 許 を 取 得 することができる。<br />

最 高 裁 判 所 が 認 めているように、 議 会 は「 人 間 によって 作 られるいかなる 物 も」 法 定 の 保 護<br />

対 象 として 含 むべく 特 許 法 第 101 条 に 意 味 の 広 い 文 言 を 選 択 した。Diamond v. Chakrabarty,<br />

447 U.S. 303, 308-09, 206 USPQ 193, 197 (1980)。Chakrabarty, 447 U.S.の at 308-309、<br />

206 USPQat 197 で 裁 判 所 は 次 のように 述 べた。<br />

議 会 は、 包 括 的 な『いかなる』という 語 で 修 飾 した『 製 造 物 』 及 び『 組 成 物 』 等 の 意 味 の 広<br />

い 用 語 を 選 択 するとき、 特 許 法 は 幅 広 い 範 囲 に 与 えられることを 明 確 に 予 想 した。また、 関<br />

連 立 法 の 経 緯 も 幅 広 い 解 釈 を 裏 付 けている。トーマス・ジェファーソン 起 草 による 1793 年 特<br />

許 法 は 法 に 定 められる 保 護 対 象 を「 新 規 かつ 有 用 な 技 術 、 機 械 、 製 造 物 、 又 は 組 成 物 、 若 し<br />

くは 新 規 かつ 有 用 な[それらの] 改 良 」と 定 義 した。1793 年 2 月 21 日 特 許 法 第 11 章 第 1 条 、<br />

制 定 法 第 1 巻 318 条 。 特 許 法 は『 発 明 の 才 は 惜 しみない 奨 励 を 受 けるべき』というジェファ<br />

ーソン 哲 学 を 具 体 化 した。5 Writings of Thomas Jefferson, at 75-76。Graham v. John Deere<br />

Co., 383 U.S. 1, 7-10 (148 USPQ 459, 462-464) (1966)を 参 照 のこと。 続 く 1836 年 ,1870<br />

年 及 び 1874 年 の 特 許 法 でこの 同 じ 広 義 の 文 言 を 採 用 した。1952 年 に 特 許 法 が 再 編 纂 された<br />

際 、 議 会 は『 技 術 』を『 方 法 』に 置 き 換 えたがその 他 はジェファーソンの 文 言 をそのまま 残<br />

した。1952 年 の 法 律 に 付 随 する 委 員 会 報 告 書 から、 議 会 は 法 定 の 保 護 対 象 に『 人 によって 作<br />

られるありとあらゆるものを 含 める』ことを 意 図 していたことがわかる。S. Rep. No. 1979,<br />

82d Cong., 2d Sess., 5 (1952); H.R. Rep. No. 1923, 82d Cong., 2d Sess., 6 (1952)。[ 脚<br />

注 略 ]<br />

このような 考 えは 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 に 受 け 入 れられてきた。<br />

第 101 条 の 平 易 かつ 曖 昧 さのない 意 味 は、 新 規 かつ 有 用 な 方 法 、 機 械 、 製 造 物 、 又 は 組 成 物 、<br />

若 しくは 新 規 かつ 有 用 なそれらの 改 良 は、 特 許 法 に 定 められる 特 許 要 件 、 第 102 条 、 第 103<br />

条 及 び 第 112 条 などの 要 件 に 適 合 する 場 合 、 特 許 を 受 けられる 可 能 性 があるということであ<br />

る。 第 101 条 における 包 括 的 な 用 語 「いかなる」の 使 用 は、 特 許 を 取 得 し 得 る 保 護 対 象 に、<br />

第 101 条 及 び 特 許 法 の 他 の 部 分 で 具 体 的 に 記 載 される 制 限 を 超 える 何 らの 制 限 も 設 けないと<br />

する 議 会 の 意 図 を 示 している。このように、 立 法 経 緯 が、 議 会 はかかる 制 限 を 明 確 に 意 図 し<br />

14


ていることを 示 していない 場 合 、 第 101 条 のの 中 に、 特 許 を 取 得 し 得 る 保 護 対 象 についての<br />

制 限 を 読 み 取 ることは 正 しくない。<br />

Alappat, 33 F.3d at 1542、31 USPQ2d at 1556。<br />

特 許 法 第 101 条 は、 議 会 が 適 切 な 特 許 保 護 対 象 であると 考 える 発 明 の 4 カテゴリー、 方 法 、<br />

機 械 、 製 造 物 及 び 組 成 物 を 定 義 している。 後 者 の 3 カテゴリーは「 物 」 又 は「 製 品 」を 定 義<br />

しているのに 対 し、 最 初 のカテゴリーは「 行 為 」( 即 ち、 一 連 の 実 行 工 程 又 は 行 為 から 成 る 発<br />

明 )を 定 義 している。 特 許 法 第 100(b) 条 (「『 方 法 』とは, 方 法 , 技 術 又 は 手 段 をいい, 既 知<br />

の 方 法 , 機 械 , 製 造 物 , 組 成 物 又 は 材 料 の 新 規 用 途 を 含 む。」)を 参 照 のこと。<br />

連 邦 裁 判 所 は、 特 許 法 第 101 条 は 一 定 の 制 限 を 有 するとしている。まず、「 人 によって 作 ら<br />

れるありとあらゆるもの」という 語 句 は、 機 械 、 製 造 物 、 組 成 物 又 は 方 法 であるものにのみ<br />

特 許 権 を 付 与 し 得 るという 特 許 法 第 101 条 本 文 によって 制 限 される。 参 照 事 例 として、<br />

Alappat, 33 F.3d at 1542、31 USPQ2d at 1556; In re Warmerdam, 33 F.3d 1354, 1358, 31<br />

USPQ2d 1754, 1757 (Fed. Cir. 1994)。 第 2 に、 特 許 法 第 101 条 は 特 許 を 申 請 する 保 護 対 象<br />

は「 新 規 かつ 有 用 な」 発 明 であることを 求 めている。 従 って、 議 会 の 意 図 を 反 映 する 特 許 法<br />

第 101 条 の 対 象 範 囲 についての 定 義 の 全 文 は、 人 によって 作 られるすべての 新 規 かつ 有 用 な<br />

方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 は 特 許 権 の 適 切 な 保 護 対 象 であるとなる。<br />

裁 判 所 が 発 明 の 4 つの 法 定 のカテゴリーの 枠 外 即 ち 例 外 とする 保 護 対 象 は、 抽 象 概 念 、 自 然<br />

法 則 及 び 自 然 現 象 に 限 定 される。これを 言 うことは 簡 単 であるが、 出 願 人 が 抽 象 概 念 、 自 然<br />

法 則 又 は 自 然 現 象 に 特 許 を 求 めているかどうかを 判 断 することは 困 難 なことである。これら<br />

3 つの 例 外 事 項 から、 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 という 実 用 性 や 用 途 のない 保 護 対 象 は 特<br />

許 性 がないことがわかる。 参 照 事 例 として、Rubber-Tip Pencil Co. v. Howard, 87 U.S. (20<br />

Wall.) 498, 507 (1874)(「 概 念 そのものは 特 許 性 がないが、 概 念 を 実 際 に 役 立 たせられる 新<br />

たな 考 案 は 特 許 性 がある。」);Mackay Radio & Telegraph Co. v. Radio Corp. of America,<br />

306 U.S. 86, 94, 40 USPQ 199, 202 (1939)。(「 科 学 的 真 理 又 はその 数 式 表 現 は 特 許 性 のあ<br />

る 発 明 ではないが、 科 学 的 真 理 の 知 識 を 用 いて 創 造 される 新 規 かつ 有 用 な 構 造 は 特 許 性 のあ<br />

る 発 明 となり 得 る。」)Warmerdam, 33 F.3d at 1360、31 USPQ2d at 1759(「 中 間 軸 を『 位 置<br />

決 め』して 泡 の 階 層 構 造 を『 創 り 出 す』 等 々は 基 本 的 な 数 学 的 構 成 概 念 の 取 扱 い、 系 列 的 『 抽<br />

象 概 念 』を 述 べたにすぎない」)。<br />

裁 判 所 はまた、クレームは 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 を 先 占 すること(preempt)はできない<br />

としている。 先 占 に 対 する 懸 念 は 早 くも 1852 年 に 表 明 されている。Le Roy v. Tatham, 55 U.S.<br />

156, 175 (1852)を 参 照 のこと。<br />

(「 抽 象 的 な 原 理 は、 根 本 的 な 真 理 、 本 来 的 原 因 、 動 因 であって、 何 人 もこれらのいずれにも<br />

独 占 権 を 請 求 することはできないのであり、これらは 特 許 を 得 ることができない。」)Funk<br />

Brothers Seed Co. v. Kalo Inoculant Co., 333 U.S. 127, 132, 76 USPQ 280, 282 (1948)(6<br />

種 類 のバクテリアの 組 み 合 わせは 法 定 の 保 護 対 象 ではないとの 判 決 が 下 された)。<br />

従 って、 人 は 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 の「 実 用 化 」のすべてに 対 して 特 許 権 を 得 ること<br />

ができないかもしれない。なぜなら、かかる 特 許 は「 実 質 的 効 果 において[ 概 念 、 自 然 法 則 又<br />

は 自 然 現 象 ]そのものの 特 許 となり 得 る」からである。Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63,<br />

71-72, 175 USPQ 673, 676 (1972)。<br />

B. クレームされている 発 明 が 列 挙 された 法 定 のカテゴリーに 該 当 するかどうかの 判 断<br />

クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 の 法 定 発 明 要 件 に 適 合 しているかどうかを 正 しく<br />

15


判 定 するため、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 ははじめに、 当 該 クレームが 第 101 条 において 記 載 さ<br />

れる 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 について 列 挙 される 4 カテゴリー( 即 ち、 方 法 、 機 械 、 製 造 物<br />

又 は 組 成 物 )の 少 なくとも 一 つに 該 当 するかどうかを 特 定 しなければならない。<br />

多 くの 場 合 、クレームされている 発 明 が 列 挙 されるカテゴリーのどれかに 該 当 することは 明<br />

白 である。クレームされている 発 明 の 性 質 が 明 確 でないとしても、 通 常 は、これにより 第 101<br />

条 の 判 断 について 正 確 で 誤 りのない 評 価 を 妨 げることにはならない。 特 許 法 第 101 条 により<br />

認 められる 範 囲 は、クレームに 書 かれている 発 明 の 様 式 又 はカテゴリーにかかわらず、 同 一<br />

である。AT&T, 172 F.3d at 1357、50 USPQ2d at 1451。<br />

State Street, 149 F.3d at 1375、47 USPQ2d at 1602 も 参 照 のこと。ここで 連 邦 巡 回 控 訴<br />

裁 判 所 は 次 のように 説 明 している。<br />

クレームが 法 定 の 保 護 対 象 を 包 含 しているかどうかの 問 題 は、[ 保 護 対 象 が 法 定 の 保 護 対 象 —<br />

方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 —の 少 なくとも 一 つのカテゴリーに 該 当 している 場 合 ]、クレ<br />

ームが 保 護 対 象 の 4 カテゴリーのいずれに 向 けられたものかということではなく、 保 護 対 象<br />

の 本 質 的 特 性 、 特 にその 実 質 的 有 用 性 に 焦 点 を 合 わせなくてはならない。<br />

例 えば、クレームされている 発 明 は、 機 械 とその 機 械 によって 実 行 される 機 能 の 1 以 上 の 工<br />

程 に 関 するもののように 見 える 複 数 装 置 の 組 み 合 わせかもしれない。かかる 混 合 した 性 質 を<br />

有 する 事 例 は、クレームが 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 のいずれに 属 するかについて 混 乱 する<br />

可 能 性 はあるが、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 行 う 判 断 に 影 響 を 及 ぼすものではない。プロセス<br />

工 程 のある 装 置 クレームは「 混 合 」クレームに 分 類 されず、 単 に 機 能 的 制 限 を 含 む 装 置 クレ<br />

ームである。 参 照 事 例 として、R.A.C.C. Indus. v. Stun-Tech, Inc., 178 F.3d 1309 (Fed.<br />

Cir. 1998)( 未 刊 行 )。<br />

特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 をする 責 任 は 米 国 特 許 商 標 庁 にある。 従 って、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査<br />

官 が、どちらかといえばクレームされた 保 護 対 象 が 法 定 のカテゴリーすべての 枠 外 に 該 当 す<br />

るであろうと 判 断 した 場 合 、 理 由 を 説 明 しなければならない。 例 えば、 楽 曲 、 文 学 作 品 、デ<br />

ータのコンパイル、シグナル、 又 は 法 律 文 書 ( 例 えば、 保 険 証 書 ) 自 体 だけを 記 載 しているク<br />

レームは、 方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 であると 考 えられない。 参 照 事 例 として、In re<br />

Nuitjen, Docket no. 2006-1371 (Fed. Cir. Sept. 20, 2007)(slip. op. at 18)(「Nuitjen<br />

のもののように 一 過 性 の 伝 搬 シグナルは『 方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 』ではない。・・・こ<br />

のようなシグナルは 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 となることはできない。」) 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

査 官 が、クレームが 法 定 のカテゴリーに 該 当 しないことの 一 応 の 証 明 をできた 場 合 、 特 許 性<br />

分 析 はそこで 終 わらない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はさらに 下 記 の 規 定 に 従 って 法 定 の 保 護 対<br />

象 の 分 析 を 進 めなければならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はまた、 特 許 法 第 102 条 、 第 103<br />

条 及 び 第 112 条 の 遵 守 についても 当 該 クレームを 審 査 しなければならない。<br />

詳 細 な 書 面 による 説 明 に 記 載 されるその 発 明 は 法 定 のものであるが、そのクレームは 法 定 の<br />

保 護 対 象 ではないものを 定 義 している 場 合 、その 不 備 はクレームの 適 切 な 補 正 によって 修 正<br />

することができる。このような 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 法 定<br />

の 保 護 対 象 ではないとされたクレームを 拒 絶 しなくてはならないが、そのクレーム 内 に 記 載<br />

される 場 合 にクレームされた 保 護 対 象 が 法 定 のものとなる 発 明 の 特 徴 を 特 定 しなくてはなら<br />

ない。<br />

16


C. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 ― 自 然 法 則 、 自 然 現 象<br />

及 び 抽 象 概 念 に 該 当 するかどうかの 判 断<br />

クレームが 特 許 法 第 101 条 に 記 載 される 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 の 4 カテゴリー( 即 ち、 方<br />

法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 )の 一 つに 該 当 するかどうかの 判 断 は 分 析 を 終 わらせない。なぜ<br />

なら、 抽 象 概 念 ( 数 学 的 アルゴリズム 等 )、 自 然 現 象 及 び 自 然 法 則 に 過 ぎないものに 関 するク<br />

レームは 特 許 権 によって 保 護 される 資 格 がない。<br />

Diehr, 450 U.S.at 185、209 USPQat 7; 同 様 の 事 例 として、Chakrabarty, 447 U.S.の 309、<br />

206 USPQat 197;Parker v. Flook, 437 U.S. 584, 589, 198 USPQ 193, 197 (1978);Benson,<br />

409 U.S.at 67-68、175 USPQat 675;Funk, 333 U.S.at 130、76 USPQat 281。「 抽 象 的 な 原<br />

理 は、 根 本 的 な 真 理 、 本 来 的 原 因 、 動 因 であって、 何 人 もこれらのいずれにも 独 占 権 を 請 求<br />

することはできないのであり、これらは 特 許 を 得 ることができない。」Le Roy, 55 U.S. (14<br />

How.) at 175。それどころか、かかる「 自 然 法 則 の 表 明 」は「 知 識 の 宝 庫 の 一 部 」であって<br />

「すべての 人 に 公 開 されており 何 人 にも 独 占 されない」。Funk, 333 U.S. at 130、76 USPQ at<br />

281.<br />

従 って、 第 101 条 に 基 づき「 新 たに 地 中 で 発 見 された 鉱 物 又 は 新 たに 自 然 界 で 発 見 された 植<br />

物 は 特 許 を 受 けられる 保 護 対 象 とならない。」Chakrabarty, 447 U.S.at 309, 206 USPQat 197。<br />

「 同 様 に、アインシュタインもあの 有 名 な 法 則 E=mc 2 で 特 許 権 を 得 られなかったし、ニュー<br />

トンも 万 有 引 力 の 法 則 で 特 許 権 を 得 られなかった。」Ibid。「 新 規 かつ 有 用 な 数 式 」も 特 許<br />

を 得 ることはできない。Flook, 437 U.S.at 585、198 USPQat 195; 電 磁 気 力 又 は 蒸 気 動 力 、<br />

O’Reilly v. Morse, 56 U.S. (15 How.) 62, 113-114 (1853); 或 いは、「バクテリアの 質 、<br />

太 陽 熱 、 電 気 又 は 金 属 の 質 」Funk, 333 U.S.at 130、76 USPQat 281;Le Roy, 55 U.S. (14 How.)at<br />

175 参 照 。<br />

抽 象 概 念 、 自 然 現 象 及 び 自 然 法 則 は 特 許 を 受 ける 適 格 性 はないが、その 一 方 で、 現 実 の 世 界<br />

で 機 能 を 実 行 するために 抽 象 概 念 、 自 然 現 象 及 び 自 然 法 則 を 用 いる 方 法 及 び 製 品 は 適 格 性 を<br />

有 する。クレームが 第 101 条 の 要 件 を 満 たすかどうかを 評 価 する 際 、クレームは 全 体 として<br />

審 査 しなければならず、 抽 象 概 念 、 自 然 現 象 又 は 自 然 法 則 の 特 定 の 応 用 であるか、 抽 象 概 念 、<br />

自 然 現 象 又 は 自 然 法 則 そのものではないかどうかを 判 断 しなければならない。<br />

1. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 又 は 特 許 法 第 101 条 の 判<br />

例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 のいずれに 該 当 するかの 判 断<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、クレームが 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 又 は 特 許 法 第 101<br />

条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 のいずれに 該 当 するかを 判 断 するためクレームの 範 囲<br />

を 確 認 しなければならない。 特 定 のクレームが 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 を 含 む<br />

という 結 論 が 出 ても、 判 例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 は 特 許 権 保 護 の 対 象 となりうるため、<br />

調 査 は 終 わらない。「 自 然 法 則 又 は 数 式 の 既 知 の 構 造 又 はプロセスへの 適 用 は、 特 許 権 によ<br />

る 保 護 を 受 けるに 値 するであろうことは 今 では 当 たり 前 となっている。」Diehr, 450 U.S.at<br />

187、209 USPQat 8; 同 様 に、Flook, 437 U.S.at 590、198 USPQat 197;Benson, 409 U.S.at<br />

67、175 USPQat 675。このように、(「 科 学 的 真 理 又 はその 数 式 表 現 は 特 許 性 のある 発 明 では<br />

ないが、 科 学 的 真 理 の 知 識 を 用 いて 創 造 される 新 規 かつ 有 用 な 構 造 は 特 許 性 のある 発 明 とな<br />

り 得 る。」)Diehr, 450 U.S.at 188、209 USPQat 8-9( 引 用 は Mackay, 306 U.S.at 94); Corning<br />

v. Burden, 56 U.S. (15 How.) 252, 268, 14 L.Ed. 683 (1854)も 参 照 のこと。(「 有 益 な 結<br />

果 又 は 効 果 を 生 ずる 実 用 的 方 法 又 は 手 段 の 発 見 又 は 発 明 については、 特 許 権 は 付 与 され<br />

17


る・・・。」)<br />

2. クレームされている 発 明 が 抽 象 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 ( 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上<br />

の 例 外 事 項 )の 実 際 的 応 用 であるかどうかの 判 断<br />

例 外 事 項 の 対 象 を 含 むクレームについて 特 許 権 による 保 護 を 受 ける 資 格 が 得 られるようにす<br />

るには、そのクレームが 抽 象 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 の 実 際 的 応 用 に 対 するものでなけ<br />

ればならない。Diehr, 450 U.S.at 187、209 USPQat 8(「 自 然 法 則 又 は 数 式 の 既 知 の 構 造 又<br />

はプロセスへの 適 用 は 特 許 権 による 保 護 を 受 けるに 値 するであろう。」Benson, 409 U.S.at 71、<br />

175 USPQat 676 (「 実 質 的 に 実 際 的 応 用 がない」ことによる 数 式 クレームの 拒 絶 )。<br />

次 に 掲 げる 場 合 、クレームされている 発 明 は 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的<br />

応 用 に 関 するものである。<br />

(A) 物 又 は 物 理 的 対 象 を 異 なる 状 態 又 は 物 に「 変 換 する」<br />

(B) または、 以 下 に 述 べる 要 因 に 基 づいて 有 用 、 具 体 的 かつ 有 形 の 成 果 を 生 ずる。<br />

(1) 物 理 的 変 換 による 実 際 的 応 用<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 ははじめにクレームを 審 査 し、クレームが 物 の 変 換 又 は 変 形 を 起 こし<br />

て 異 なる 状 態 又 は 物 にするかどうかを 判 断 する。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 がかかる 変 換 又 は 変<br />

形 を 見 出 した 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はその 調 査 を 終 了 し、そのクレームが 特 許 法 第 101<br />

条 の 法 定 の 要 件 を 満 たしていることを 確 認 する。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 がかかる 変 換 又 は 変<br />

形 を 見 出 せなかった 場 合 、クレームされている 発 明 は 有 用 、 具 体 的 かつ 有 形 の 結 果 を 生 ずる<br />

かどうかを 判 断 しなければならない。<br />

(2) 有 用 、 具 体 的 かつ 有 形 の 結 果 を 生 ずる 実 際 的 応 用<br />

適 格 性 分 析 の 目 的 上 、 物 理 的 変 換 は「 不 変 の 要 件 ではなく、 数 学 的 アルゴリズム[ 即 ち、 自 然<br />

法 則 ]がどのように 有 用 な 用 途 をもたらし 得 るかの 一 例 に 過 ぎない。」AT&T, 172 F.3d at<br />

1358-59、50 USPQ2d at 1452。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 当 該 クレームは 物 の 変 換 を 伴 わない<br />

と 判 断 した 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 次 にそのクレームは 有 用 、 有 形 かつ 具 体 的 結 果 を<br />

生 ずるかどうかを 判 断 するため 審 査 を 行 う。この 判 断 を 行 う 際 の 焦 点 は、 特 定 の 成 果 を 達 成<br />

するために 取 られる 工 程 が 有 用 、 有 形 かつ 具 体 的 かどうかにあるのではなく、クレームされ<br />

た 発 明 によって 達 成 される 最 終 結 果 が「 有 用 、 有 形 かつ 具 体 的 」であるかどうかにある。 即<br />

ち、 当 該 クレームに 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 以 上 の 何 かがあるかどうかを 確 か<br />

めるために、クレームは 審 査 されねばならない。 当 該 クレームが 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上<br />

の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 に 関 する 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はそのクレームが 判 例 法 上 の<br />

例 外 事 項 の 先 占 (preemption)かどうかを 判 断 しなければならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は<br />

かかる 実 際 的 応 用 を 見 いだせなかった 場 合 、そのとき 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 当 該 クレー<br />

ムは 法 定 要 件 を 満 たさないと 判 断 する。<br />

クレームが 有 用 、 有 形 かつ 具 体 的 成 果 を 生 ずる 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際<br />

的 応 用 を 提 供 するかどうかを 判 断 する 際 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 次 の 要 因 を 検 討 し 重 点 を<br />

置 かねばならない。<br />

a) 「 有 用 な 成 果 」<br />

発 明 が「 有 用 」であるためには、 第 101 条 の 有 用 性 要 件 を 満 たしていなければならない。 有<br />

用 性 要 件 に 関 する 米 国 特 許 商 標 庁 の 公 式 解 釈 は、 発 明 の 有 用 性 は(i) 具 体 的 、(ii) 実 質 的 、か<br />

つ(iii) 信 頼 できなければならないと 定 めている。MPEP 第 2107 条 及 び Fisher, 421 F.3d<br />

18


at1372、76 USPQ2d at 1230。(「 具 体 的 」 及 び「 実 質 的 」の 解 釈 に 対 して 承 認 を 得 ている 実<br />

用 性 審 査 指 針 を 引 用 )。さらに、 審 査 官 が 当 該 クレームは 有 用 な 成 果 を 生 ずる 実 際 的 応 用 に 対<br />

するものではないと 信 ずる 場 合 、 当 該 クレームは 拒 絶 されねばならないので、 出 願 人 に 対 し、<br />

実 際 的 応 用 をクレーム 内 に 具 体 的 に 記 載 することによって 当 該 クレームを 特 許 を 受 けられる<br />

保 護 対 象 に 対 する 3 つの 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 と 区 別 するように 求 める。こ<br />

のような 場 合 、 実 際 的 応 用 を 記 載 する 明 細 書 の 文 言 はクレームされている 発 明 に 関 する 第<br />

101 条 の 要 件 を 満 足 させるために 十 分 ではないかもしれない。 同 様 に、クレームが 広 すぎて、<br />

法 定 の 保 護 対 象 とそうではないものの 両 方 を 含 むクレームは、 実 際 的 応 用 に 限 定 するよう 補<br />

正 されなければならない。 言 い 換 えれば、 明 細 書 は 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 について<br />

実 際 的 応 用 を 開 示 しているが、 当 該 クレームは 開 示 よりも 幅 広 く 実 際 的 応 用 を 構 成 要 件 とし<br />

ない 場 合 、そのクレームは 拒 絶 されねばならない。<br />

b) 「 有 形 の 成 果 」<br />

有 形 要 件 は、クレームが 必 ず 特 定 の 機 械 又 は 装 置 に 関 係 していなければならないとか、 或 い<br />

は 物 又 は 材 料 を 異 なる 状 態 又 は 物 に 変 えるように 働 かなければならないとかいうものではな<br />

い。しかし、 有 形 要 件 は、 当 該 クレームが 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 以 上 のもの<br />

を 記 載 しなければならないだけではなく、そこにはプロセスクレームが 現 実 の 世 界 における<br />

成 果 を 生 み 出 すための 判 例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 を 明 記 せねばならないことを 必 要 と<br />

する。Benson, 409 U.S.at 71-72、175 USPQat 676-77 (「 実 質 的 に 実 際 的 応 用 がない」こと<br />

による 発 明 の 不 適 格 性 )。「 自 然 法 則 つまり 数 式 の・・・プロセスへの 応 用 は 特 許 権 による 保 護<br />

に 値 するだろう。」Diehr, 450 U.S.at 187、209 USPQat 8;Corning, 56 U.S. (15 How.) at<br />

268, 14 L.Ed. 683 も 参 照 のこと。(「 有 益 な 結 果 又 は 効 果 を 生 ずる 実 用 的 方 法 又 は 手 段 の 発<br />

見 又 は 発 明 については、 特 許 権 は 付 与 される・・・。」) 即 ち、「 有 形 」の 反 意 語 は「 抽 象 」で<br />

ある。<br />

c) 「 具 体 的 な 成 果 」<br />

もう 一 つの 考 慮 すべき 事 柄 は、 当 該 発 明 は「 具 体 的 」 成 果 を 生 ずるかどうかである。 通 常 、<br />

この 疑 問 は 成 果 が 確 信 されない 場 合 に 生 ずる。 即 ち、 当 該 プロセスは 十 分 に 反 復 できる 成 果<br />

がなければならない、 又 は 当 該 プロセスは 実 質 的 に 同 じ 成 果 を 再 び 生 じなければならない。<br />

In re Swartz, 232 F.3d 862, 864, 56 USPQ2d 1703, 1704 (Fed. Cir. 2000)(クレームされ<br />

ている 発 明 により 主 張 される 成 果 が、 第 101 条 に 基 づき 拒 絶 されるべき「 再 生 不 可 能 な」)<br />

クレームである 場 合 )。「 具 体 的 」の 反 対 は 反 復 不 可 能 、 若 しくは 予 測 不 可 能 である。この 問<br />

題 の 解 決 は 技 術 的 な 熟 練 のレベルに 依 存 する。 例 えば、クレームされている 発 明 が 特 定 の 熟<br />

練 作 業 を 必 要 とするプロセスに 対 するものである 場 合 、プロセスを 実 質 的 に 反 復 できるかど<br />

うかを 判 断 するには、その 分 野 の 通 常 の 当 業 者 の 技 術 レベルを 判 定 することが 必 然 的 に 必 要<br />

となる。 特 許 法 第 101 条 による 適 切 な 拒 絶 は、 当 該 発 明 が 過 度 の 実 験 を 要 することなく 意 図<br />

されたように 働 くことができない 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 実 施 可 能 性 の 欠 如 に<br />

よる 拒 絶 を 伴 わなければならない。 以 下 参 照 。<br />

3. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 ( 抽 象 概 念 、 自 然 法 則 又<br />

は 自 然 現 象 )を 先 占 する(preempt)かどうかの 判 断<br />

クレームが 数 式 を、 例 えば 一 見 したところ 特 許 性 のあるプロセスの 一 部 として 利 用 している<br />

場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 実 際 にはその 抽 象 的 な 数 式 に 対 して 特 許 権 による 保 護 を 求<br />

めるものではないことを 確 認 しなければならない。Diehr, 450 U.S.at 191、209 USPQat 10。<br />

19


「 発 見 されたばかりの 自 然 現 象 、 精 神 的 プロセス、 抽 象 的 な 知 的 概 念 は、 科 学 的 ・ 技 術 的 研<br />

究 の 基 本 的 ツールであるため 特 許 性 がない。」Benson, 409 U.S.at 67、175 USPQat 675。 人<br />

は 抽 象 概 念 の「 実 質 的 な 応 用 」のすべてにより 成 り 立 っているプロセスに 特 許 を 受 けること<br />

はできない。なぜなら、かかる 特 許 は「 実 質 的 効 果 」におて[ 抽 象 概 念 ]そのものの 特 許 とい<br />

うことになるからである。Benson, 409 U.S.at 71-72、175 USPQat 676;Diehr, 450 U.S.at<br />

187、209 USPQat 8 参 照 。( 本 件 における 特 許 出 願 人 は、「 方 程 式 の 利 用 を 先 占 しようとした<br />

のではなく」、クレームされたプロセスの 中 のその 他 のすべての 工 程 と 併 用 するその 方 程 式<br />

の 利 用 についてのみ 他 者 を 排 除 しようとしたことを 強 調 )。「このように 解 さなければ、 有 能<br />

な 製 図 工 は、 特 許 権 による 保 護 対 象 のタイプについて 認 められた 制 限 を 回 避 するであろう。」<br />

Diehr, 450 U.S.at 192、209 USPQat 10。このように、 数 式 を 計 算 するだけのコンピュータ<br />

(Benson 参 照 ) 又 は 数 式 を 格 納 するだけのコンピュータディスクを 記 載 するクレームは 特 許<br />

権 による 保 護 にふさわしい 種 類 の 保 護 対 象 に 関 するものでない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、<br />

クレームされている 発 明 は 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 を 先 占 すると 判 断 した 場 合 、<br />

抽 象 概 念 、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 を 特 定 し、 当 該 クレームがそれのすべての 実 質 的 な 応 用 を<br />

含 んでいる 理 由 を 説 明 しなければならない。<br />

D. 一 応 の 証 明 の 記 録<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、クレームされている 発 明 が 特 許 適 格 性 のある 保 護 対 象 を 記 載 して<br />

いるかどうかについて 結 論 を 出 す 前 に 証 拠 全 体 ( 例 えば、 明 細 書 、クレーム、 関 連 する 先 行 技<br />

術 )を 審 査 しなくてはならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、どちらかといえばクレームされて<br />

いる 発 明 が 全 体 として 列 挙 される 法 定 のカテゴリーの 一 つの 枠 外 となるか、 若 しくは、 法 定<br />

の 保 護 対 象 に 対 する 例 外 の 一 つに 入 るかどうかについていずれの 可 能 性 が 高 いか、 上 記 で 下<br />

した 決 定 に 重 みを 置 いて 結 論 を 出 さねばならない。「 審 査 官 は、 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 を<br />

示 すことについて・・・ 第 一 の 立 証 責 任 を 負 う。」In re Oetiker, 977 F.2d 1443, at 1445, 24<br />

USPQ2d 1443, at 1444 (Fed. Cir. 1992)。 当 該 記 録 全 体 が、クレームされている 発 明 がどち<br />

らかといえば 抽 象 概 念 、 自 然 現 象 又 は 自 然 法 則 の 実 際 的 応 用 であると 考 えられる 可 能 性 が 高<br />

いことを 示 唆 している 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はそのクレームを 拒 絶 してはならない。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 当 該 記 録 に、クレームは 抽 象 概 念 で 実 際 的 応 用 を 示 していないもの<br />

でについてである 理 由 を 特 定 し 説 明 した 後 は、そのクレームを 補 正 するか、そのクレームは<br />

特 許 権 による 保 護 を 受 ける 資 格 がある 理 由 を 証 明 する 責 任 は 出 願 人 へ 移 行 する。 例 えば、In<br />

re Brana, 51 F.3d 1560, 1566, 34 USPQ2d 1436, 1441 (Fed. Cir. 1995) 参 照 ;MPEP 第 2107<br />

条 ( 有 用 性 の 審 査 指 針 ) 参 照 。<br />

保 護 対 象 が 適 格 か 不 適 格 かの 線 引 きに 関 する 判 例 法 上 の 議 論 、 及 び、 保 護 対 象 の 適 格 性 に 関<br />

する 不 適 切 なテストの 概 要 については、Interim Guidelines for Examination of <strong>Patent</strong><br />

Applications for <strong>Patent</strong> Subject Matter Eligibility、1300 Off. Gaz. Pat. <strong>Office</strong> 142(2005<br />

年 11 月 22 日 )( 特 許 保 護 対 象 適 格 性 暫 定 指 針 )の 付 属 書 II 及 び 付 属 書 III を 参 照 のこと。<br />

V. 出 願 は 特 許 法 第 112 条 に 適 合 するかの 評 価<br />

A. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 112 条 の 第 二 段 落 要 件 (MPEP 第 2171 条 )に 適 合 するか<br />

どうかの 判 断<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 二 段 落 ははっきりと 異 なる 独 立 した 次 の 2 つの 要 件 を 規 定 している。(A)<br />

クレームは、 出 願 人 が 発 明 であると 考 える 保 護 対 象 を 記 載 すること、 及 び(B)クレームは 発 明<br />

20


を 特 定 し 明 確 にクレームすること。<br />

出 願 は、 自 白 を 含 む 証 拠 ( 出 願 時 の 願 書 を 除 く)が、 出 願 人 が 当 該 発 明 をクレームされたもの<br />

とは 異 なるものと 考 えると 述 べたことを 示 している 場 合 (MPEP 第 2171 条 乃 至 第 2172.01 条 参<br />

照 )、 特 許 法 第 112 条 第 二 段 落 の 第 1 要 件 に 基 づき 不 備 となる。<br />

出 願 は、クレームが 合 理 的 な 程 度 の 正 確 さと 特 定 性 を 持 って 当 該 発 明 を 記 載 し 定 義 していな<br />

い 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第 二 段 落 の 第 2 要 件 に 適 合 しない。その 際 、 当 該 文 言 の 明 確 性 は 他<br />

と 切 り 離 さず、 当 業 者 によって 解 釈 されるように、 必 ず 開 示 内 容 を 踏 まえて 分 析 されねばな<br />

らない。 開 示 に 照 らして 解 釈 される 出 願 人 のクレームは、 当 該 発 明 の 当 業 者 に 無 理 なく 伝 わ<br />

らなければならない。<br />

「 手 段 (means)」による 制 限 の 範 囲 は、 書 面 による 明 細 及 びその 均 等 物 に 記 載 されている、 対<br />

応 する 構 造 又 は 材 料 と 定 義 される。MPEP 第 2181 条 乃 至 第 2186 条 を 参 照 のこと。クレームは<br />

発 明 を 特 定 し 明 確 にクレームすることとする 特 許 法 第 112 条 第 二 段 落 の 要 件 に 関 する 様 々な<br />

問 題 点 の 検 討 については MPEP 第 2173 条 以 下 を 参 照 のこと。<br />

B. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 112 条 の 第 一 段 落 要 件 に 適 合 するかどうかの 判 断<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 一 段 落 ははっきりと 異 なる 独 立 した 3 つの 要 件 を 規 定 している。<br />

(A) 十 分 な 書 面 記 載<br />

(B) 実 施 可 能 性<br />

(C) 最 良 の 態 様<br />

1. 十 分 な 書 面 記 載<br />

書 面 記 載 要 件 については、 出 願 人 の 明 細 書 は、 出 願 人 が 発 明 の 日 付 においてクレームされた<br />

発 明 を 有 する 当 該 技 術 分 野 の 専 門 家 に 無 理 なく 伝 えなくてはならない。Regents of the<br />

University of California v. Eli Lilly & Co., 119 F.3d 1559, 1566-67, 43 USPQ2d 1398,<br />

1404-05 (Fed. Cir. 1997); Hyatt v. Boone, 146 F.3d 1348, 1354, 47 USPQ2d 1128, 1132<br />

(Fed. Cir. 1998)。クレームされる 発 明 の 保 護 対 象 は 逐 語 的 に、 即 ち、 開 示 が 記 載 要 件 を 満<br />

たすことができるように 同 一 用 語 を 用 いて 記 述 する 必 要 はない。 例 えば、 発 明 のソフトウェ<br />

アの 側 面 は 機 能 的 に 記 載 することができる。Robotic Vision Sys. v. View Eng fg, Inc., 112<br />

F.3d 1163, 1166, 42 USPQ2d 1619, 1622-23 (Fed. Cir. 1997); Fonar Corp. v. General<br />

Electric Co., 107 F.3d 1543, 1549, 41 USPQ2d 1801, 1805 (Fed. Cir. 1997); In re Hayes<br />

Microcomputer Prods., Inc., 982 F.2d 1527, 1537-38, 25 USPQ2d 1241, 1248-49 (Fed. Cir.<br />

1992)を 参 照 のこと。 書 面 記 載 要 件 の 適 合 性 に 関 する 特 許 出 願 の 評 価 について、 詳 細 な 審 査 指<br />

針 は MPEP 第 2163 条 を 参 照 のこと。<br />

2. 実 施 可 能 な 開 示<br />

出 願 人 の 明 細 書 は、 当 業 者 が 過 度 の 実 験 をすることなくクレームされている 発 明 を 生 産 、 使<br />

用 できるようにするものでなくてはならない。しかし、 実 験 が 複 雑 であるという 事 実 があっ<br />

ても、 当 業 者 が 一 般 的 にかかる 複 雑 な 実 験 に 従 事 している 場 合 、 実 験 が 過 度 であることには<br />

ならない。<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 一 段 落 の 実 施 可 能 要 件 に 関 する 詳 細 な 審 査 指 針 については MPEP 第 2164<br />

条 以 下 を 参 照 のこと。<br />

3. 最 良 の 態 様 (ベストモード)(MPEP 第 2165 条 )<br />

最 良 実 施 態 様 (ベストモード) 要 件 に 適 合 するかどうかの 判 断 は、 次 の 2 つの 部 分 から 成 る 基<br />

準 による。<br />

21


(1) 出 願 時 点 において、 発 明 者 は 当 該 発 明 を 実 施 するための 最 良 の 態 様 を 有 していたか。<br />

(2) 発 明 者 が 最 良 の 態 様 を 有 していた 場 合 、 書 面 記 載 は 当 業 者 がそれを 実 施 できるような 最<br />

良 の 態 様 を 開 示 しているか。<br />

詳 細 な 審 査 指 針 については、MPEP 第 2165 条 以 下 を 参 照 のこと。<br />

クレームされている 発 明 を 実 施 するための 最 良 の 態 様 開 示 についての 不 備 には、かかる 不 備<br />

を 裏 付 ける 証 拠 はほとんど 記 録 に 存 在 しないため、 出 願 審 査 の 際 には 通 常 は 遭 遇 しない。<br />

Fonar, 107 F.3d at 1548-49、41 USPQ2d at 1804-05。<br />

VI. クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 102 条 及 び 第 103 条 に 適 合 するかどうかの 判 断<br />

クレームされた 発 明 の 特 許 法 第 102 条 及 び 第 103 条 適 合 性 についての 審 査 は、クレームされ<br />

た 保 護 対 象 の 先 行 技 術 として 知 られているものとの 比 較 から 開 始 する。 特 許 法 第 102 条 及 び<br />

第 103 条 に 基 づく 特 許 性 の 判 断 についての 具 体 的 審 査 指 針 については、MPEP 第 2131 条 乃 至<br />

第 2146 条 を 参 照 のこと。クレームされている 発 明 と 先 行 技 術 との 間 に 違 いが 見 られない 場 合 、<br />

クレームされている 発 明 は 新 規 性 に 欠 けるので 特 許 法 第 112 条 に 基 づき 米 国 特 許 商 標 庁 審 査<br />

官 によって 拒 絶 されねばならない。クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 間 に 違 いが 特 定 されると、<br />

それらの 違 いは 当 業 者 の 持 つ 知 識 に 照 らして 評 価 され 解 決 されねばならない。この 状 況 を 踏<br />

まえ、 当 該 発 明 は、 当 該 発 明 が 成 された 時 点 において 自 明 であったかどうかを 判 断 しなけれ<br />

ばならない。 自 明 でなかった 場 合 、クレームされている 発 明 は 特 許 法 第 103 条 の 要 件 を 満 た<br />

している。<br />

VII. 認 定 、 終 結 及 びそれらの 根 拠 を 明 確 に 通 知 すること<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 特 許 法 第 101 条 、 第 112 条 、 第 102 条 及 び 第 103 条 を 含 めすべて<br />

の 法 規 定 に 基 づき、クレームされている 発 明 の 上 記 の 分 析 を 終 結 させた 時 点 で、 予 定 される<br />

拒 絶 及 びその 根 拠 をすべて 検 討 し、 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 を 示 すことができることを 確 認<br />

しなくてはならない。そうすることによって 初 めて 拒 絶 は 特 許 商 標 庁 の 行 政 行 為 として 課 さ<br />

れることとなる。 特 許 商 標 庁 の 行 政 行 為 は、 明 確 に 認 定 、 終 結 及 びそれらを 裏 付 ける 理 由 を<br />

通 知 しなくてはならない。<br />

審 査 指 針 フローチャート<br />

出 願 人 が 発 明 し 特 許 を 請 求 しているものの 確 定<br />

・ 発 明 に 主 張 される 有 用 性 及 び/ 又 は 実 際 的 応 用 の 特 定 と 理 解<br />

・ 発 明 の 詳 細 な 開 示 及 び 具 体 的 な 実 施 例 の 審 査<br />

・クレーム 審 査<br />

先 行 技 術 に 関 する 徹 底 的 調 査 の 実 施<br />

クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 101 条 の 保 護 対 象 の 適 格 性 要 件 に 適 合 するかどうかの 判<br />

断<br />

・クレームされている 発 明 は 列 挙 された 法 定 のカテゴリーに 該 当 しているかどうか?<br />

・レームされている 発 明 は 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 ― 自 然 法 則 、 自 然 現 象 及 び<br />

22


抽 象 概 念 に 該 当 するか?<br />

・クレームされている 発 明 は 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 又 は 特 許 法 第 101 条 の 判<br />

例 法 上 の 例 外 事 項 の 実 際 的 応 用 に 該 当 するか?<br />

- 物 理 的 変 換 による 実 際 的 応 用 か?<br />

- 有 用 ( 特 許 法 第 101 条 有 用 性 )、 有 形 及 び 具 体 的 成 果 を 生 ずる 実 際 的 応 用 か?<br />

・クレームされている 発 明 は 特 許 法 第 101 条 の 判 例 法 上 の 例 外 事 項 ( 抽 象 概 念 、 自 然 法 則 又<br />

は 自 然 現 象 )を 先 占 する(preempt)か<br />

・ 一 応 の 証 明 を 記 録 上 ではっきりさせること<br />

出 願 は 特 許 法 第 101 条 ( 有 用 性 ) 及 び 第 112 条 に 適 合 するかの 評 価<br />

クレームされている 発 明 が 特 許 法 第 102 条 及 び 第 103 条 に 適 合 するかどうかの 判 断<br />

認 定 、 終 結 及 びそれらの 根 拠 を 明 確 に 通 知 すること<br />

・ 予 定 される 拒 絶 及 びその 根 拠 をすべて 検 討 し、 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 決 定 を 確 認 すること<br />

2106.01 コンピュータ 関 連 で 法 定 の 保 護 対 象 ではないもの<br />

記 述 的 要 素 (material)は「 機 能 記 述 的 要 素 」 又 は「 非 機 能 記 述 的 要 素 」に 分 けられる。この<br />

文 脈 において「 機 能 記 述 的 要 素 」は、コンピュータ 構 成 部 分 として 使 用 される 場 合 に 機 能 性<br />

を 付 与 するデータ 構 造 及 びコンピュータプログラムから 成 る。(「データ 構 造 」の 定 義 は「デ<br />

ータ 要 素 間 の 位 置 又 は 論 理 関 係 であって 特 定 のデータ 操 作 機 能 をサポートするように 設 計 さ<br />

れている。」The New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms 308<br />

頁 ( 第 5 版 1993 年 )。)「 非 機 能 記 述 的 要 素 」は 音 楽 、 文 学 作 品 及 びデータのコンパイル 又 は<br />

単 なる 配 列 を 含 むが、それに 限 らない。<br />

どちらの 形 式 も「 記 述 的 要 素 」は 記 述 的 要 素 それ 自 体 としてクレームされる 場 合 は 法 定 の 保<br />

護 対 象 ではない。33 F.3d at 1360、31 USPQ2d at 1759。 機 能 記 述 的 要 素 がコンピュータ 読<br />

取 り 可 能 な 媒 体 に 記 録 されると、その 媒 体 に 対 して 構 造 的 にも 機 能 的 にも 相 互 に 関 連 付 けら<br />

れ、テクノロジーの 利 用 で 記 述 的 要 素 の 機 能 を 実 現 できるので、ほとんどの 場 合 に 法 定 の 保<br />

護 対 象 である。In re Lowry, 32 F.3d 1579, 1583-84, 32 USPQ2d 1031, 1035 (Fed. Cir.<br />

1994)(コンピュータ 効 率 を 高 めるコンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 に 格 納 されるデータ 構 造 に 対<br />

する 法 定 の 保 護 対 象 であるクレームの 文 脈 において、データ 構 造 の 制 限 について 特 許 性 にお<br />

ける 重 要 性 を 論 じている) 及 び In re Warmerdam, 33 F.3d 1354, 1360-61, 31 USPQ2d 1754,<br />

1759( 個 別 のデータ 構 造 をメモリに 格 納 するコンピュータに 対 するクレームは 法 定 の 保 護 対<br />

象 であるプロダクト・バイ・プロセス・クレームとされた)を Warmerdam, 33 F.3d at 1361、<br />

31 USPQ2d at 1760(データ 構 造 それ 自 体 に 対 するクレームは 法 定 の 保 護 対 象 ではないとされ<br />

た)と 併 せて 対 照 のこと。<br />

非 機 能 記 述 的 要 素 がコンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 、コンピュータ 又 は 電 磁 搬 送 波 信 号 に 記 録<br />

される 場 合 は、 実 際 的 応 用 の 要 件 を 満 たすことのできる 必 須 機 能 性 が 存 在 せず、 法 定 の 保 護<br />

対 象 ではない。 単 に、 非 機 能 記 述 的 要 素 、 即 ち、コンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 、コンピュー<br />

タ 又 は 電 磁 搬 送 波 信 号 に 格 納 される 抽 象 概 念 をクレームするだけでは 法 定 の 保 護 対 象 として<br />

23


認 められるものとならない。Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175, 185-86, 209 USPQ 1, 8(ベ<br />

ンソンのアルゴリズムに 対 するクレームは、アルゴリズムの 単 独 の 実 際 的 応 用 が 汎 用 コンピ<br />

ュータのプログラミングに 関 連 しているものであって、 抽 象 概 念 のため 特 許 性 はないことに<br />

留 意 )を 参 照 のこと。かかる 結 果 は 内 容 よりも 様 式 の 効 果 を 強 めることになる。In re Sarkar,<br />

588 F.2d 1330, 1333, 200 USPQ 132, 137 (CCPA 1978) (「 各 発 明 はクレームされたとおり<br />

に 評 価 されなければならない。けれども、 意 味 論 的 考 察 は 当 該 クレームに 使 われる 言 葉 だけ<br />

に 基 づく 判 断 をできなくしてしまう。 第 101 条 に 基 づく 最 終 分 析 では、クレームされた 発 明<br />

は 全 体 としてあるがままに 評 価 されねばならない。」)(Abele, 684 F.2d at 907、214 USPQat<br />

687 に 同 意 を 得 て 引 用 )。In re Johnson, 589 F.2d 1070, 1077, 200 USPQ 199, 206 (CCPA<br />

1978)(「クレームの 様 式 は 起 案 の 運 用 方 法 であることが 多 い」)も 参 照 のこと。このように、<br />

法 定 の 保 護 対 象 ではない 音 楽 はコンピュータの 構 成 要 素 ではなく、コンピュータディスクに<br />

単 に 記 録 することによって 法 定 の 保 護 対 象 となることはない。このタイプの 作 品 に 対 する 保<br />

護 は 著 作 権 法 により 提 供 される。<br />

非 機 能 記 述 的 要 素 がコンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 、コンピュータ 又 は 電 磁 搬 送 波 信 号 に 記 録<br />

される 場 合 、それは 法 定 の 保 護 対 象 とはならず 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 拒 絶 されねばならな<br />

い。さらに、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 があるか 否<br />

かを 審 査 しなくてはならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 はクレームされた 非 機 能 記 述 的 要 素 に<br />

特 許 性 の 点 で 重 要 性 があるか 否 かを 判 断 しなくてはならない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 先<br />

行 技 術 に 照 らして 発 明 の 特 許 性 を 判 断 する 場 合 、すべてのクレーム 限 定 を 検 討 しなければな<br />

らない。In re Gulack, 703 F.2d 1381, 1385, 217 USPQ 401, 403-04 (Fed. Cir. 1983)。<br />

米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 印 刷 物 から 成 るクレーム 限 定 を 軽 視 してはならない。Gulack, 703<br />

F.2d at 1384、217 USPQat 403 を 参 照 のこと。また、Diehr, 450 U.S.at 191、209 USPQat 10<br />

も 参 照 のこと。しかし、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 印 刷 物 と 基 板 との 間 に 新 規 かつ 非 自 明 の<br />

機 能 的 関 係 がない 印 刷 物 に、 特 許 性 の 点 で 重 きを 置 く 必 要 はない。Lowry, 32 F.3d at 1583-84、<br />

32 USPQ2d at 1035;In re Ngai, 367 F.3d 1336, 70 USPQ2d 1862 (Fed. Cir. 2004)を 参 照<br />

のこと。<br />

I. 機 能 記 述 的 要 素 : 記 述 的 要 素 それ 自 体 を 表 す「データ 構 造 」 又 はコンピュータリストそれ<br />

自 体 を 表 すコンピュータプログラム<br />

コンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 に 具 体 化 されてクレームされないデータ 構 造 は、それ 自 体 では<br />

記 述 的 要 素 であって 法 定 の 保 護 対 象 ではない。なぜなら、それらはコンピュータ 内 で 機 能 的<br />

変 化 を 起 こすことができない。 例 えば、Warmerdam, 33 F.3d at 1361、31 USPQ2d at 1760(デ<br />

ータ 構 造 それ 自 体 に 対 するクレームは 法 定 の 保 護 対 象 として 認 められていないと 判 示 され<br />

た。)を 参 照 のこと。このようにクレームされるデータ 構 造 は、 当 該 データ 構 造 と 当 該 データ<br />

構 造 の 機 能 性 を 実 現 できる 発 明 のクレームされたその 他 の 態 様 との 機 能 的 相 互 関 係 を 定 義 し<br />

ていない。その 一 方 、データ 構 造 でコード 化 されてクレームされるコンピュータ 読 取 り 可 能<br />

媒 体 は、データ 構 造 とデータ 構 造 の 機 能 性 を 実 現 できるコンピュータのソフトウェア 及 びハ<br />

ードウェアウェア 構 成 部 品 との 構 造 的 機 能 的 相 互 関 係 を 定 義 するので、 法 定 の 保 護 対 象 であ<br />

る。<br />

同 様 に、コンピュータリストそれ 自 体 としてクレームされるコンピュータプログラム、 即 ち、<br />

プログラム 記 述 又 はプログラム 式 は 物 理 的 な「 物 」ではない。それらは 実 行 される「 行 為 」<br />

24


ではないので、プログラム 構 成 部 品 でも 法 定 の 保 護 対 象 であるプロセスでもない。このよう<br />

にクレームされるコンピュータプログラムは、 当 該 コンピュータプログラムと 当 該 コンピュ<br />

ータプログラムの 機 能 性 を 実 現 できるその 他 のクレームされたコンピュータ 要 素 との 間 のい<br />

かなる 構 造 的 機 能 的 相 互 関 係 も 定 義 していない。その 一 方 、コンピュータプログラムでコー<br />

ド 化 されてクレームされるコンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 は、コンピュータの 要 素 であってコ<br />

ンピュータプログラムとコンピュータプログラムの 機 能 性 を 実 現 しうるコンピュータの 残 り<br />

の 部 分 との 構 造 的 機 能 的 相 互 関 係 を 定 義 しているので、 法 定 の 保 護 対 象 である。Lowry, 32<br />

F.3d at 1583-84、32 USPQ2d at 1035 を 参 照 のこと。 従 って、 記 述 的 要 素 それ 自 体 を 定 義 す<br />

るクレームと、 法 定 の 保 護 対 象 である 発 明 を 定 義 するクレームとを 区 別 することは 重 要 であ<br />

る。<br />

コンピュータプログラムはクレームの 一 部 として 記 載 されることが 多 い。 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

査 官 はコンピュータプログラムが 法 定 の 保 護 対 象 である 製 品 又 は 機 械 の 一 部 としてクレーム<br />

されているかどうかを 判 断 しなくてはならない。このような 場 合 、コンピュータプログラム<br />

が 当 該 クレームに 含 まれている 事 実 にかかわりなく、 当 該 クレームは 依 然 として 法 定 の 保 護<br />

対 象 である。コンピュータがコンピュータプログラムに 書 き 込 まれた 指 示 を 実 行 するコンピ<br />

ュータ 化 されたプロセスでコンピュータプログラムが 使 用 された 場 合 、 同 一 結 果 が 生 ずる。<br />

クレームされた 全 体 としての 発 明 が 単 なるプログラムリスト、 即 ちプログラムの 記 述 又 はプ<br />

ログラム 式 のみに 関 する 場 合 、それは 記 述 的 要 素 それ 自 体 であるので 法 定 の 保 護 対 象 ではな<br />

い。<br />

コンピュータプログラムは 単 にコンピュータが 実 行 しうる 一 連 の 指 示 に 過 ぎず、コンピュー<br />

タプログラムそのものはプロセスではないので、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、コンピュータプ<br />

ログラムの 機 能 性 を 実 現 するために 必 要 なコンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 がない 場 合 、コンピ<br />

ュータプログラムに 対 するクレームは 法 定 の 保 護 対 象 ではない 機 能 記 述 的 要 素 として 扱 わな<br />

くてはならない。コンピュータプログラムが、コンピュータがコンピュータプログラムの 指<br />

示 を 実 行 しているプロセスの 中 でクレームされる 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 方 法 クレー<br />

ムとしてクレームを 扱 わなくてはならない。コンピュータプログラムがコンピュータメモリ<br />

などの 物 理 的 構 造 との 関 係 で 記 載 されている 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 当 該 クレームを<br />

製 品 クレームとして 取 り 扱 わなくてはならない。<br />

II. 非 機 能 記 述 的 要 素<br />

法 定 の 保 護 対 象 である 方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 に 相 当 しない 非 機 能 記 述 的 要 素 は、 特<br />

許 法 第 101 条 に 基 づき 拒 絶 すべきである。 音 楽 、 文 学 、 美 術 、 写 真 及 び 事 実 又 はデータの 単<br />

なる 配 列 又 は 編 集 等 、 機 能 的 相 互 関 係 を 持 たない 一 定 タイプの 記 述 的 要 素 は、 方 法 、 機 械 、<br />

製 造 物 又 は 組 成 物 ではない。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は 前 述 の 審 査 指 針 を 適 用 するに 当 たって<br />

慎 重 でなくてはならない。 非 機 能 記 述 的 要 素 は、 特 許 法 第 101 条 の 要 件 を 満 たすために 必 要<br />

な 機 能 的 構 造 的 相 互 関 係 を 提 供 するため、コンピュータ 読 取 り 可 能 媒 体 上 で 他 の 機 能 記 述 的<br />

マルチメディア 要 素 と 組 み 合 わせてクレームされることがある。クレームされる 非 機 能 記 述<br />

的 要 素 の 存 在 は、 必 ずしも 法 定 の 保 護 対 象 ではないことを 決 定 づけるわけではない。 例 えば、<br />

メモリから 読 み 出 した 特 定 グループ 又 は 一 連 の 音 符 を 認 識 した 後 に 他 の 一 連 の 音 符 を 定 義 し<br />

て 演 奏 させるコンピュータは、そのデータ 間 の 機 能 的 相 互 関 係 とそのデータを 利 用 する 際 に<br />

実 行 される 計 算 処 理 を 必 要 とする。そのコンピュータに 対 するクレームは、 法 定 の 保 護 対 象<br />

25


となるプロセスを 実 施 するため、 法 定 の 保 護 対 象 となる。<br />

2106.02 数 学 的 アルゴリズム<br />

数 学 的 問 題 を 解 く 又 は 抽 象 概 念 を 扱 うにすぎないプロセスに 対 するクレームは、 分 析 が 複 雑<br />

でありここで 取 り 上 げる。<br />

クレームされるプロセスの「 行 為 」が 数 字 、 抽 象 概 念 又 は 前 述 のいずれかを 示 す 信 号 のみを<br />

扱 っている 場 合 、その 行 為 は 適 切 な 保 護 対 象 に 応 用 されていない。Gottschalk v. Benson, 409<br />

U.S. 63, 71 - 72, 175 USPQ 673, 676 (1972)。このように、 数 学 演 算 、 即 ち、 一 組 みの 数<br />

字 からもう 一 組 みの 数 字 への 変 換 だけで 構 成 されるプロセスは 適 切 な 保 護 対 象 を 扱 っておら<br />

ず、 法 定 の 保 護 対 象 であるプロセスを 構 成 することはできない。<br />

具 体 的 に 言 うと、 次 に 掲 げるプロセスの 場 合 、クレームは 法 定 の 保 護 対 象 ではない。<br />

- クレームされた 実 際 的 応 用 なしに 数 学 演 算 のみで 構 成 される( 即 ち、「 数 学 的 アルゴリズ<br />

ム」の 実 行 )。<br />

- 単 に 抽 象 概 念 だけを 扱 う。 例 えば、 実 際 的 応 用 がクレームされていない 入 札 (Schrader, 22<br />

F.3d at 293-94、30 USPQ2d at 1458-59) 又 はバブル 階 層 構 造 (Warmerdam, 33 F.3d at 1360、<br />

31 USPQ2d at 1759)。<br />

Alappat, 33 F.3d at 1543 n.19、31 USPQ2d at 1556 n.19 を 参 照 のこと。 連 邦 巡 回 控 訴 裁<br />

判 所 はここで 混 同 を 認 めた。<br />

最 高 裁 判 所 は、かかる 保 護 対 象 が 自 然 法 則 、 自 然 現 象 又 は 抽 象 概 念 を 表 しているので、 第 101<br />

条 の 範 囲 から 除 外 されるかどうかについて 明 確 にしていない。Diehr, 450 U.S.at 186( 数 学<br />

的 アルゴリズムを 自 然 法 則 とみなす); Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63, 71-72 (1972)( 数<br />

学 的 アルゴリズムを「 概 念 」として 取 り 扱 う)を 参 照 のこと。また、 最 高 裁 判 所 はどのような<br />

種 類 の 数 学 的 保 護 対 象 に 特 許 性 がないか 正 確 には 明 らかにしていない。 最 高 裁 判 所 は 他 に「 数<br />

学 的 アルゴリズム」、「 数 式 」 及 び「 数 学 方 程 式 」という 用 語 を 用 いて 単 独 で 特 許 権 による<br />

保 護 を 受 けられない 数 学 的 保 護 対 象 のタイプを 説 明 している。しかし、 最 高 裁 判 所 は、 説 明<br />

しているとしても、かかる 用 語 によって 意 図 するもの、 又 はこれらの 用 語 がどのように 関 連<br />

するかの 一 貫 した、 又 は 明 快 な 説 明 は 述 べていない。<br />

一 定 の 数 学 的 アルゴリズムは、 自 然 法 則 又 は 自 然 現 象 について 数 学 的 定 義 を 表 しているので、<br />

法 定 の 保 護 対 象 とは 認 められないとされた。 例 えば、 数 式 E=mc 2 で 表 される 数 学 的 アルゴリ<br />

ズムは「 自 然 法 則 」である―これは「 基 礎 的 な 科 学 的 真 理 」を 定 義 している( 即 ち、エネルギ<br />

ーと 質 量 の 関 係 )。 自 然 法 則 の 物 体 へのかかわり 方 を 理 解 するには、 必 ず 一 定 の 手 順 を 踏 まな<br />

くてはならない( 例 えば、 物 体 の 質 量 を 表 す 数 に 光 速 を 表 す 数 の 2 乗 を 乗 じる)。このような<br />

場 合 、E=mc 2 という 数 学 的 表 示 を 解 くために 従 わねばならない 手 順 のみからなるクレームされ<br />

たプロセスは、 自 然 法 則 と 区 別 がつかず、 自 然 法 則 を「 先 占 」することになる。 特 許 はかか<br />

るプロセスに 付 与 することができない。<br />

26


2107 有 用 性 要 件 に 適 合 する 出 願 の 審 査 基 準<br />

I. 序<br />

次 の 審 査 指 針 は 特 許 法 第 101 条 及 び 第 112 条 の 有 用 性 要 件 に 適 合 する 特 許 出 願 を 評 価 する 際<br />

に 本 庁 審 査 官 が 遵 守 すべき 方 針 及 び 手 順 を 設 定 するものである。これらの 審 査 方 針 は 有 用 性<br />

要 件 の 遵 守 に 関 する 出 願 審 査 において 本 庁 審 査 官 を 支 援 するため 交 付 された。 審 査 指 針 は 特<br />

許 法 第 101 条 及 び 第 112 条 の 本 質 的 要 件 を 変 更 するものでも、その 他 すべての 法 令 上 の 特 許<br />

要 件 適 合 性 に 関 する 審 査 官 の 出 願 審 査 を 不 要 にするものでもない。 本 審 査 指 針 は 実 体 法 規 を<br />

制 定 するものではなく、 従 って 法 的 効 力 も 拘 束 力 もない。 拒 絶 は 実 体 法 に 基 づくものであり、<br />

それは 上 訴 可 能 な 拒 絶 である。 従 って、 本 庁 審 査 官 による 本 審 査 指 針 の 不 遵 守 に 対 しては、<br />

上 訴 することも 嘆 願 することもできない。<br />

II. 有 用 性 要 件 に 対 する 審 査 指 針<br />

本 庁 審 査 官 は、 特 許 法 第 101 条 及 び 第 112 条 第 1 段 落 の「 有 用 な 発 明 」( 以 下 「 有 用 性 」とい<br />

う)の 適 合 性 について 特 許 出 願 を 審 査 する 場 合 、 次 に 掲 げる 手 順 を 忠 実 に 守 らなくてはならな<br />

い。<br />

(A) クレーム 及 び 裏 付 けの 書 面 による 説 明 を 読 み 取 る。<br />

(1) 発 明 の 具 体 的 な 実 施 例 に 留 意 して 出 願 人 がクレームしているものを 確 定 する。<br />

(2) クレームが 法 定 の 保 護 対 象 ( 即 ち、 方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 )を 定 義 していること<br />

を 確 認 する。<br />

(3) 審 査 中 のどの 時 点 でも、クレームされている 発 明 が 十 分 に 確 立 された 有 用 性 を 有 するこ<br />

とが 容 易 に 明 らかになった 場 合 、 有 用 性 の 欠 如 による 拒 絶 を 課 さない。 発 明 は 次 の 場 合 に 十<br />

分 に 確 立 された 有 用 性 を 有 する。(i) 当 業 者 は 当 該 発 明 の 有 用 である 理 由 を 当 該 発 明 の 特 性<br />

( 例 えば、 製 品 又 はプロセスの 特 性 又 は 利 用 )に 基 づいて 速 やかに 理 解 するであろう 場 合 、さ<br />

らに(ii)その 有 用 性 は 具 体 的 、 実 質 的 かつ 信 頼 できる 場 合 。<br />

(B) クレーム 及 び 裏 付 けとなる 書 面 による 説 明 を 審 査 し、 出 願 人 がクレームされた 発 明 に 対<br />

して、 次 に 掲 げる 各 事 項 について 信 憑 性 があって 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 主 張 している<br />

か 否 かを 判 定 する。<br />

(1) 出 願 人 が、クレームされている 発 明 は 特 定 の 実 用 的 な 目 的 に 有 用 である( 即 ち、「 具 体 的<br />

かつ 実 質 的 な 有 用 性 」を 有 する)と 主 張 しており、その 主 張 は 当 業 者 によって 信 用 できると 認<br />

められるに 十 分 である 場 合 、 実 用 性 の 欠 如 を 根 拠 に 拒 絶 してはならない。<br />

(i) クレームされた 発 明 は 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 有 しなくてはならない。 本 要 件 は、<br />

特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 を 満 たす 一 手 段 として、 埋 立 地 のように 複 雑 な 発 明 の 利 用 等 、<br />

「 使 い 捨 て」、「 非 本 質 的 」 又 は「 非 特 定 的 」な 有 用 性 を 排 除 する。<br />

(ii) 信 頼 性 は、 開 示 及 びその 他 の 出 願 人 の 主 張 の 証 拠 となる 記 録 証 拠 ( 例 えば、 試 験 データ、<br />

技 術 的 専 門 家 の 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 、 特 許 若 しくは 刊 行 物 )を 考 慮 して 当 業 者 の 観 点 から 査<br />

定 される。 有 用 性 要 件 を 満 たすために、 出 願 人 には、クレームされた 発 明 ごとに 具 体 的 かつ<br />

実 質 的 な 有 用 性 について 信 頼 できる 1 主 張 の 提 供 のみが 求 められる。<br />

(2) 出 願 人 によりクレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 の 主 張 が 信 頼 できず、<br />

クレームされている 発 明 に 容 易 に 分 かる 十 分 に 確 立 された 有 用 性 がない 場 合 、クレームされ<br />

た 発 明 は 有 用 性 を 欠 くことを 理 由 に 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 当 該 クレームを 拒 絶 する。また、<br />

開 示 がクレームされた 発 明 について 使 用 の 方 法 を 教 えていないという 理 由 から 特 許 法 第 112<br />

27


条 第 1 段 落 に 基 づき 当 該 クレームを 拒 絶 する。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 が、 特 許 法 第<br />

101 条 の 拒 絶 と 併 せて 課 される 場 合 は、 特 許 法 第 101 条 の 拒 絶 に 対 応 する 理 由 を 参 照 して 組<br />

み 込 まなければならない。<br />

(3) 出 願 人 がクレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 主 張 していないので、<br />

その 発 明 が 容 易 に 分 かる 十 分 に 確 立 された 有 用 性 を 有 しない 場 合 、 出 願 人 は 当 該 発 明 の 具 体<br />

的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 開 示 していないことを 強 調 して、 特 許 法 第 101 条 に 基 づき 拒 絶 を 課<br />

す。また、 出 願 人 は 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 の 欠 如 によって 当 該 発 明 の 利 用 方 法 を 開 示 し<br />

ていないことを 理 由 に、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 別 個 の 拒 絶 を 課 す。 特 許 法 第 101<br />

条 及 び 第 112 条 の 拒 絶 により、 次 に 掲 げる 事 項 のために 証 拠 を 提 出 する 責 任 は 出 願 人 に 転 換<br />

する。<br />

(i) クレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 明 確 に 特 定 する。<br />

(ii) その 特 定 された 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 は 出 願 時 において 十 分 に 確 立 されたもので<br />

あることを、 当 業 者 が 認 めていたであろうことの 証 拠 を 提 出 する。その 後 、 審 査 官 は 上 記 の<br />

評 価 基 準 を 用 いて 提 出 された 有 用 性 に 関 する 証 拠 を 審 査 しなくてはならない。 審 査 官 はまた、<br />

その 証 拠 と、 今 は 出 願 時 に 開 示 されたようにクレームされる 保 護 対 象 の 特 性 との 間 に 適 切 な<br />

つながりがあることをも 確 認 しなくてはならない。 即 ち、 出 願 人 は 提 出 された 証 拠 とクレー<br />

ムされている 発 明 の 当 初 に 開 示 された 特 性 との 間 に 証 拠 となる 関 係 を 構 築 する 義 務 を 負 う。<br />

(C) 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 には、クレームされている 発 明 に 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信<br />

頼 できる 有 用 性 がないことの 詳 細 な 説 明 を 含 めなくてはならない。 審 査 官 は 可 能 な 限 り、 具<br />

体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 がないことの 一 応 の 証 明 に 関 して 事 実 に 基 づく 理 由 を 裏<br />

付 けるため、 公 開 日 に 関 わらず 証 拠 書 類 ( 例 えば、 科 学 的 ・ 技 術 的 雑 誌 、 専 門 書 又 は 文 献 の 抜<br />

粋 、 若 しくは 米 国 又 は 外 国 特 許 )を 用 意 しなくてはならない。 証 拠 書 類 を 揃 えることができな<br />

い 場 合 、 審 査 官 は 自 らの 事 実 に 基 づく 結 論 について 科 学 的 根 拠 を 具 体 的 に 説 明 しなくてはな<br />

らない。<br />

(1) 主 張 される 有 用 性 が 具 体 的 又 は 実 質 的 でない 場 合 、 一 応 の 証 明 は、どちらかといえば 当<br />

業 者 は 出 願 人 が 主 張 する 有 用 性 は 具 体 的 かつ 実 質 的 ではないとするであろうことを、 確 立 し<br />

なければならない。 一 応 の 証 明 には 次 の 要 素 がなければならない。<br />

(i) クレームされている 発 明 に 主 張 される 有 用 性 が 具 体 的 でも 実 質 的 でもなく、 十 分 に 確 立<br />

されてもいないとする 判 断 に 用 いた 根 拠 を 明 確 に 記 載 する 説 明<br />

(ii) この 結 論 に 達 した 際 の 信 頼 される 事 実 に 基 づく 認 定 の 裏 付 け<br />

(iii) 直 近 の 先 行 技 術 に 依 拠 する 有 用 性 を 含 め、 記 録 に 関 する 全 関 係 証 拠 の 評 価<br />

(2) 主 張 される 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 が 信 用 できない 場 合 、 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 用 で<br />

きる 有 用 性 ではないことの 一 応 の 証 明 は、どちらかといえば 当 業 者 は 出 願 人 がクレームされ<br />

ている 発 明 について 主 張 する 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 は 信 用 できないとするだろうことに<br />

よって 立 証 しなければならない。 一 応 の 証 明 には 次 の 要 素 がなければならない。<br />

(i) 主 張 される 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 は 信 用 できないとする 判 断 に 用 いられた 根 拠 を 明<br />

確 に 記 載 する 説 明<br />

(ii) この 結 論 に 達 した 際 の 信 頼 される 事 実 に 基 づく 認 定 の 裏 付 け<br />

(iii) 直 近 の 先 行 技 術 に 依 拠 する 有 用 性 を 含 め、 記 録 に 関 する 全 関 係 証 拠 の 評 価<br />

(3) 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 が 開 示 されていない、 若 しくは 十 分 に 確 立 されていない 場 合 、<br />

具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 がないことの 一 応 の 証 明 は、 出 願 人 は 有 用 性 を 主 張 していないこ<br />

28


と、 及 び 審 査 官 が 審 査 する 記 録 に、 既 知 の 十 分 に 確 立 された 有 用 性 がないことによって 立 証<br />

しさえすればよい。<br />

(D) 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 は、クレームされている 発 明 に 主 張 される 有 用 性 が 当 業<br />

者 によって 記 録 のすべての 証 拠 に 照 らして 具 体 的 、 実 質 的 及 び 信 頼 できるであろうと 考 えら<br />

れる 場 合 、 維 持 されるべきではない。<br />

当 業 者 がかかる 申 立 ての 信 頼 性 を 疑 うべき 合 法 的 根 拠 を 有 するであろうことを 証 明 する 反 対<br />

証 拠 を 示 すことができない 限 り、 本 庁 審 査 官 は 主 張 される 有 用 性 に 関 して 出 願 人 により 行 わ<br />

れる 事 実 の 申 立 てを 真 実 として 取 り 扱 わねばならないことに 留 意 する。 同 様 に、 本 庁 審 査 官<br />

は、 正 確 さに 疑 問 を 挟 まれることのない 関 連 事 実 に 基 づく 有 資 格 専 門 家 の 意 見 を 受 け 入 れね<br />

ばならない。 即 ち、 与 えられた 事 実 の 有 意 性 又 は 重 要 性 について 単 に 意 見 を 異 にするとの 理<br />

由 でその 意 見 を 無 視 することは 不 適 切 である。<br />

具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 ではないことの 一 応 の 証 明 が 適 切 に 立 証 されると、 出<br />

願 人 はそれに 反 論 する 責 任 を 負 う。 出 願 人 はクレームを 補 正 することにより、 論 拠 又 は 意 見<br />

書 を 提 出 することにより、 若 しくは 37 CFR 1.132 による 宣 誓 書 又 は 特 許 又 は 一 応 の 証 明 の 根<br />

拠 又 は 論 理 に 反 論 する 刊 行 物 の 形 で 証 拠 を 提 出 することにより、これを 行 うことができる。<br />

出 願 人 が 一 応 の 拒 絶 に 対 して 応 答 した 場 合 、 本 庁 審 査 官 は 原 開 示 、 一 応 の 証 明 を 確 立 した 際<br />

に 依 存 した 証 拠 、クレームの 補 正 、 及 び 主 張 された 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 の<br />

裏 付 けとして 出 願 人 により 提 出 された 新 たな 論 拠 若 しくは 証 拠 を 検 討 しなくてはならない。<br />

本 庁 審 査 官 は、 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 に 対 する 応 答 の 実 体 要 素 ごとに 認 識 し、 十 分<br />

検 討 して 答 えることが 重 要 である。 当 該 記 録 の 全 体 が、 主 張 される 有 用 性 は 具 体 的 、 実 体 的<br />

かつ 信 用 できるものではないことを 示 し 続 けている 場 合 に 限 り、 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする<br />

拒 絶 は 維 持 されるべきである。<br />

出 願 人 が 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 一 応 の 拒 絶 に 満 足 のいく 反 論 を<br />

行 った 場 合 、 特 許 法 第 101 条 の 拒 絶 及 びこれに 対 応 して 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 課<br />

された 拒 絶 を 取 り 下 げる。<br />

2107.01 有 用 性 要 件 による 拒 絶 を 律 する 一 般 原 則<br />

特 許 法 第 101 条 特 許 を 受 けることができる 発 明<br />

何 人 も 新 規 かつ 有 用 な 方 法 、 機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 , 若 しくはそれらの 新 規 かつ 有 用 な 改<br />

良 を 発 明 又 は 発 見 したときは, 本 法 の 条 件 及 び 要 件 のもとに 特 許 を 取 得 することができる。<br />

特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 の 遵 守 に 関 する 出 願 審 査 の 指 針 については、MPEP 第 2107 条 を<br />

参 照 のこと。<br />

特 許 商 標 庁 は「 有 用 な 発 明 」すなわち 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 の 遵 守 を 確 認 するため 各<br />

出 願 を 審 査 しなければならない。しかし、 本 庁 審 査 官 はこの 職 責 を 果 たす 際 、 有 用 性 要 件 の<br />

適 用 を 規 制 するいくつかの 一 般 規 則 に 留 意 しなくてはならない。 連 邦 裁 判 所 により 解 釈 され<br />

ているとおり、 特 許 法 第 101 条 は 2 つの 目 的 を 有 する。 第 1 に、 特 許 法 第 101 条 は 特 許 権 に<br />

よる 保 護 にふさわしい 発 明 のカテゴリーを 規 定 する。 機 械 、 製 造 物 、 組 成 物 又 は 方 法 ではな<br />

い 発 明 は 特 許 権 を 得 ることができない。Diamond v.Chakrabarty, 447 U.S. 303, 206 USPQ 193<br />

(1980);Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175, 209 USPQ 1 (1981)を 参 照 のこと。 第 2 に、 特 許<br />

法 第 101 条 は、「 有 用 」である 発 明 に 限 って 特 許 権 が 付 与 されることを 保 障 する 働 きをする。<br />

この 第 2 の 目 的 は 憲 法 に 定 められており、 憲 法 第 I 章 第 8 条 は「 有 用 な 技 術 」を 促 進 するた<br />

29


め 発 明 者 に 排 他 的 権 利 を 与 えることを 議 会 に 認 めている。Carl Zeiss Stiftung v.Renishaw<br />

PLC, 945 F.2d 1173, 20 USPQ2d 1094 (Fed. Cir. 1991)を 参 照 のこと。 従 って、 特 許 法 第<br />

101 条 の 要 件 を 満 たすため、 出 願 人 は 法 定 の 保 護 対 象 である 発 明 をクレームしなければなら<br />

ないだけでなく、クレームされている 発 明 は 明 示 黙 示 を 問 わずある 目 的 に「 有 用 」であるこ<br />

とを 証 明 しなければならない。 特 許 法 第 101 条 の 中 のこの 後 者 の 要 素 を 適 用 することが、こ<br />

れらの 審 査 基 準 の 中 心 となる。<br />

特 許 法 第 101 条 の「 有 用 な 発 明 」 要 件 の 不 備 は 2 形 態 のうちのどちらかで 生 ずる。 第 1 は、<br />

当 該 発 明 が「 有 用 」である 理 由 が 明 確 でない 場 合 である。これは、 出 願 人 が 当 該 発 明 の 具 体<br />

的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 特 定 できない、 又 は、 当 該 発 明 についてその 有 用 性 を 発 明 の 技 術 分<br />

野 に 精 通 する 者 が 速 やかに 理 解 するに 足 る 情 報 を 開 示 できない 場 合 に 生 じ 得 る。Brenner v.<br />

Manson, 383 U.S. 519, 148 USPQ 689 (1966); In re Fisher, 421 F.3d 1365, 76 USPQ2d 1225<br />

(Fed. Cir. 2005); In re Ziegler, 992 F.2d 1197, 26 USPQ2d 1600 (Fed. Cir. 1993)。 要<br />

件 不 備 の 第 2 のタイプは 希 な 事 例 ではあるが、 出 願 人 が 行 う 当 該 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な<br />

有 用 性 の 主 張 が 信 用 できない 場 合 に 生 ずる。<br />

I. 具 体 的 かつ 実 質 的 な 要 件<br />

特 許 法 第 101 条 に 適 合 するためには、 発 明 は「 有 用 」でなければならない。 裁 判 所 は、 有 用<br />

性 要 件 に 関 して 使 用 される「 有 用 」という 用 語 は 定 義 することが 困 難 な 用 語 になることがあ<br />

ることを 認 めている。Brenner v. Manson, 383 U.S. 519, 529, 148 USPQ 689, 693 (1966) (「 有<br />

用 な」のような 単 純 な 日 常 語 は「 現 実 に 用 いられると 曖 昧 さを 宿 すことがある。」) 出 願 人 が<br />

具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 説 明 している 場 合 、 裁 判 所 は、 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 の 本<br />

質 について 出 願 人 の 意 見 が 的 確 でないということだけに 基 づき、 特 許 法 第 101 条 により 拒 絶<br />

することに 消 極 的 である。 例 えば、Nelsonv. Bowler, 626 F.2d 853, 206 USPQ 881 (CCPA 1980)<br />

において 裁 判 所 は、 出 願 人 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく「 実 用 的 」 有 用 性 を 規 定 していないと<br />

する 特 許 商 標 庁 の 認 定 を 覆 した。この 事 例 において 出 願 人 は、 当 該 組 成 物 は 特 定 の 薬 学 的 応<br />

用 において「 有 用 」であって、その 主 張 を 裏 付 ける 証 拠 を 提 出 したと 主 張 した。 裁 判 所 は「 実<br />

用 的 有 用 性 」、「 実 質 的 有 用 性 」 又 は「 具 体 的 有 用 性 」というラベルを 用 い、 特 許 法 第 101<br />

条 の「 有 用 な 発 明 」 要 件 のこの 側 面 に 言 及 した。 関 税 特 許 控 訴 裁 判 所 は 次 のように 述 べてい<br />

る。<br />

「 実 用 的 有 用 性 は、『 現 実 世 界 』の 価 値 をクレームされた 保 護 対 象 に 与 えるための 簡 易 な 方<br />

法 である。 即 ち、 当 業 者 は 公 衆 に 直 ちに 利 益 を 与 えるやり 方 で、クレームされた 発 見 を 使 用<br />

することができる。」<br />

Nelson v.Bowler, 626 F.2d 853, 856, 206 USPQ 881, 883 (CCPA 1980)。<br />

現 実 の 審 査 では、 特 許 商 標 庁 は、 発 明 は「 有 用 」であると 信 じられるかどうか、 発 明 は 何 に<br />

対 して「 有 用 」であると 信 じられるかを 判 断 する 上 で、 発 明 者 自 身 の 発 明 に 関 する 理 解 に 依<br />

拠 せざるをえない。このため、 本 庁 審 査 官 は、 発 明 は 具 体 的 な 理 由 で「 有 用 」であるとする<br />

出 願 人 の 主 張 に 焦 点 を 合 わせ、 受 け 入 れようとしなくてはならない。<br />

A. 具 体 的 有 用 性<br />

「 具 体 的 有 用 性 」はクレームされた 保 護 対 象 に 対 して 具 体 的 であって「 明 確 に 定 義 された 特 定 の<br />

便 益 を 公 衆 に 提 供 」することができる。In re Fisher, 421 F.3d 1365, 1371, 76 USPQ2d 1225, 1230<br />

(Fed. Cir. 2005)。これは 当 該 発 明 の 幅 広 い 区 分 に 適 用 されるであろう 一 般 的 有 用 性 と 対 照 をな<br />

30


す。 本 庁 審 査 官 は、 出 願 人 が 当 該 発 明 の 具 体 的 使 用 又 は 適 用 を 開 示 している 状 況 と、 出 願 人<br />

が 単 に、 当 該 発 明 が 有 用 であると 考 えられる 理 由 を 具 体 的 に 特 定 することなく 当 該 発 明 は 有<br />

用 であると 証 明 し 得 ることを 示 している 状 況 とを 区 別 しなくてはならない。 例 えば、 化 合 物<br />

は 不 特 定 の 疾 患 の 治 療 に 有 用 であるかもしれないこと、 又 は、その 化 合 物 は「 有 用 な 生 物 学<br />

的 」 特 性 を 有 することを 示 すことはその 化 合 物 の 具 体 的 有 用 性 を 定 義 するに 十 分 ではないで<br />

あろう。 参 照 事 例 として、In re Kirk, 376 F.2d 936, 153 USPQ 48 (CCPA 1967); In re Joly,<br />

376 F.2d 906, 153 USPQ 45 (CCPA 1967)。 同 様 に、 単 に「 遺 伝 子 プローブ」 又 は「 染 色 体 マ<br />

ーカー」としてその 使 用 が 開 示 されるポリヌクレオチドに 対 するクレームは、 具 体 的 な DNA<br />

対 象 の 開 示 が 無 く 具 体 的 ではないとされるであろう。In re Fisher, 421 F.3d at 1374、76<br />

USPQ2d at 1232 (「トウモロコシのゲノム 遺 伝 子 から 転 写 される EST[ 発 現 配 列 タグ]は、 主<br />

張 されている 使 用 のうちの 一 つを 行 う 可 能 性 を 有 する・・・。[ 出 願 人 の]7 つの 主 張 している 使<br />

用 についてはいずれも、 当 該 [] 出 願 に 開 示 される 32,000 を 超 える EST、 即 ち、 実 際 にはあら<br />

ゆる 組 織 に 由 来 するあらゆる EST を 別 にすれば、5 つのクレームされた EST に 当 てはまらな<br />

い。 従 って、[ 出 願 人 は]クレームした EST について、 第 101 条 に 適 合 する 具 体 的 使 用 ではな<br />

く、 一 般 的 使 用 のみを 開 示 していると 結 論 する。) 不 特 定 の 疾 患 の 診 断 など 診 断 的 有 用 性 に<br />

関 する 一 般 的 な 記 載 は、 一 般 に、 診 断 しうる 条 件 の 開 示 がなければ 不 十 分 であろう。 出 願 人<br />

が 具 体 的 な 生 物 活 性 を 開 示 してその 活 性 を 病 態 と 合 理 的 に 関 連 付 けた 場 合 の 状 況 と 対 比 せよ。<br />

後 者 の 分 類 に 該 当 するという 主 張 は、 当 該 発 明 の 具 体 的 有 用 性 を 特 定 するのに 十 分 である。<br />

前 者 の 分 類 に 該 当 する 主 張 は、 特 にその 主 張 が、「 有 用 な」 発 明 が 出 願 人 によって 開 示 され<br />

たことから 生 じ 得 ることが 明 らかであるとする 一 般 的 記 述 の 形 を 取 っている 場 合 は、 当 該 発<br />

明 の 具 体 的 有 用 性 を 定 義 するには 不 十 分 である。Knapp v. Anderson, 477 F.2d 588, 177 USPQ<br />

688 (CCPA 1973)。<br />

B. 実 質 的 有 用 性<br />

「 出 願 は、 発 明 はさらに 研 究 を 進 めた 後 のいつか 将 来 の 日 に 有 用 であることが 分 かるという<br />

のではなく、 現 在 の 形 で 開 示 されたときに 公 衆 に 対 して 有 用 であることを 証 明 しなくてはな<br />

らない。 簡 潔 に 言 うと、『 実 質 的 』 有 用 性 要 件 を 満 足 させるには、 主 張 される 使 用 で、クレ<br />

ームされている 発 明 は 公 衆 に 対 して 有 意 かつ 現 在 利 用 できる 便 益 を 有 することを 証 明 しなけ<br />

ればならない。」Fisher, 421 F.3d at 1371、76 USPQ2d at 1230。Fisher 事 例 で 問 題 とさ<br />

れたクレームは 発 現 配 列 タグ(EST)に 向 けられた。セル 内 に 表 れるゲノム 及 び 下 流 タンパク 質<br />

を 見 つけるために 使 用 できる 短 いヌクレオチド 配 列 である。 裁 判 所 は 次 のように 判 決 を 下 し<br />

た。「クレームされた EST は 根 拠 を 成 す 遺 伝 子 及 びそれらの 遺 伝 子 によってコード 化 された<br />

タンパク 質 についての 詳 細 情 報 を 取 得 するためにのみ 使 用 され 得 る。クレームされた EST そ<br />

のものは[ 出 願 人 の] 研 究 成 果 の 完 了 ではなく、 実 用 的 有 用 性 のための 研 究 途 上 で 使 用 される<br />

ツールに 過 ぎない・・・[ 出 願 人 は] 根 拠 を 成 す 遺 伝 子 によってコード 化 されるタンパク 質 の 機<br />

能 を 特 定 していない。かかる 特 定 がない 限 り、 当 裁 判 所 はクレームされた EST は 特 許 権 の 付<br />

与 に 値 する 即 時 的 で 十 分 に 定 義 された 実 社 会 的 な 便 益 を 大 衆 に 提 供 するというところまで 研<br />

究 、 理 解 されていないとする。」Id. at 1376、76 USPQ2d at 1233-34)。このように「 実 質<br />

的 有 用 性 」とは「 実 社 会 」での 使 用 を 意 味 している。 使 用 の「 実 社 会 」における 意 味 を 特 定<br />

し、 又 は 合 理 的 に 確 認 するためには、さらに 研 究 の 遂 行 を 要 する 有 用 性 は、 実 質 的 な 有 用 性<br />

とはならない。 例 えば、 既 知 の 又 は 新 たに 発 見 された 疾 患 を 治 療 する 治 療 法 も、それ 自 体 に<br />

「 実 質 的 有 用 性 」がある 化 合 物 を 特 定 するための 分 析 方 法 も、 使 用 の「 実 社 会 」における 意<br />

31


味 を 明 らかにしている。 特 定 の 病 態 の 発 病 素 因 に 対 して 決 まった 相 関 関 係 を 有 する 物 質 の 存<br />

在 を 測 定 する 分 析 もまた、 予 防 対 策 又 はモニタリング 実 施 のための 候 補 物 を 特 定 する 際 に、<br />

使 用 の「 実 社 会 」における 意 味 を 明 らかにするであろう。 一 方 、 次 に 掲 げるものは、 使 用 の<br />

「 実 社 会 」における 意 味 の 特 定 又 は 合 理 的 な 確 認 のためにさらに 研 究 の 遂 行 を 必 要 とする 状<br />

況 の 例 である。 従 って、これらは「 実 質 的 な 有 用 性 」を 明 らかにしていない。<br />

(A) クレームされる 製 品 自 体 又 は 材 料 が 含 まれるメカニズムの 特 性 を 研 究 するような 基 礎 研<br />

究<br />

(B) 不 特 定 の 疾 患 又 は 状 態 を 治 療 する 方 法<br />

(C) それ 自 体 に 特 定 の 及 び/ 又 は 実 質 的 な 有 用 性 のない 物 質 を 分 析 又 は 特 定 する 方 法<br />

(D) それ 自 体 に 具 体 的 、 実 体 的 及 び 信 頼 できる 有 用 性 のない 物 質 を 作 成 する 方 法<br />

(E) 具 体 的 、 実 体 的 及 び 信 頼 できる 有 用 性 のない 最 終 製 品 を 作 成 する 際 に 使 用 する 中 間 生 成<br />

物 に 対 するクレーム<br />

本 庁 審 査 官 は、「 公 衆 に 対 する 即 時 的 便 益 」という 言 葉 、 又 はその 他 の 場 合 の 類 似 の 表 現 を、<br />

クレームされている 発 明 に 基 づく 製 品 又 はサービスは 有 益 性 要 件 を 満 たすために 公 衆 に 対 し<br />

て「 現 在 入 手 可 能 」でなければならないという 意 味 に 解 釈 しないよう 気 を 付 けなければなら<br />

ない。 参 照 事 例 として、Brenner v. Manson, 383 U.S. 519, 534-35, 148 USPQ 689, 695 (1966)。<br />

むしろ、 発 明 が 公 衆 に 便 益 を 供 すると 考 えられる 合 理 的 な 使 用 を 出 願 人 が 特 定 している 場 合<br />

は、 少 なくとも「 実 質 的 」 有 用 性 を 明 らかにすることに 関 しては 十 分 として 受 け 入 れられな<br />

くてはならない。<br />

C. 研 究 ツール<br />

発 明 の 一 定 のタイプを、 当 該 発 明 が 使 用 されるはずの 環 境 に 基 づいて 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有<br />

用 性 を 有 することができないと 決 めつけようとすると、 混 乱 が 生 ずることがある。 一 例 が 研<br />

究 室 や 実 験 室 で 使 用 される 発 明 である。ガスクロマトグラフ、スクリーニング 分 析 及 びヌク<br />

レオチド 配 列 決 定 法 など 多 くの 研 究 ツールは 明 確 で 具 体 的 かつ 疑 う 余 地 のない 有 用 性 を 有 し<br />

ている( 例 えば、 化 合 物 の 分 析 に 有 用 である)。したがって、 発 明 が 研 究 室 でのみ 有 用 である<br />

かどうかを 対 象 とする 評 価 は、その 発 明 が 特 許 という 意 味 で 実 際 に「 有 用 」であるかどうか<br />

を 問 題 とするものではない。そうではなくて、 本 庁 審 査 官 は、 具 体 的 に 特 定 された 本 質 的 な<br />

有 用 性 を 有 する 発 明 と、 主 張 される 有 用 性 の 特 定 又 は 合 理 的 確 認 にさらに 研 究 を 必 要 とする<br />

発 明 とを 見 分 けなければならない。「 研 究 ツール」、「 中 間 物 」 又 は「 研 究 目 的 で」などの<br />

ラベル 付 けは、 出 願 人 が 当 該 発 明 に 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 特 定 しているかどうかを 判<br />

断 する 際 の 助 けにならない。<br />

II. 全 体 として 実 施 不 能 の 発 明 ;「 信 用 できない」 有 用 性<br />

「 実 施 不 能 の」( 即 ち、 特 許 出 願 人 がクレームする 結 果 を 生 み 出 す 機 能 がない) 発 明 は、 特 許<br />

法 上 の 意 味 において「 有 用 な」 発 明 ではない。 参 照 事 例 として、Newman v. Quigg, 877 F.2d<br />

1575, 1581, 11 USPQ2d 1340, 1345 (Fed. Cir. 1989); In re Harwood, 390 F.2d 985, 989,<br />

156 USPQ 673, 676 (CCPA 1968)(「 実 施 不 能 の 発 明 は 無 論 、 発 明 は 有 用 であるものとする 特<br />

許 法 第 101 条 の 要 件 を 遵 守 しない」)。しかし、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 が 述 べているように「[ 特<br />

許 法 ] 第 101 条 に 違 反 するというには、クレームされた 装 置 は 有 用 な 結 果 を 全 く 獲 得 すること<br />

ができないものでなければならない。」Brooktree Corp. v. Advanced Micro Devices, Inc.,<br />

977 F.2d 1555, 1571, 24 USPQ2d 1401, 1412 (Fed. Cir. 1992)( 強 調 は 引 用 者 による)。 次<br />

32


の 事 例 も 参 照 のこと。E.I. du Pont De Nemours and Co. v. Berkley and Co., 620 F.2d 1247,<br />

1260 n.17, 205 USPQ 1, 10 n.17 (8th Cir. 1980)(「わずかな 有 用 性 で 十 分 である・・・。ク<br />

レームされた 発 明 は 何 らかの 有 益 な 機 能 をわずかに 実 施 できるに 違 いない・・・。 発 明 は 特 許 で<br />

開 示 された 特 定 の 実 施 例 が 完 全 性 に 欠 けていたり、 実 施 として 未 熟 であったりするという 理<br />

由 だけで、 有 用 性 に 欠 けていることにはならない・・・。 商 業 的 に 成 功 した 製 品 は 要 求 されな<br />

い・・・。 発 明 はそれが 意 図 する 機 能 のすべてを 実 現 する・・・ 又 はあらゆる 条 件 下 で 作 動 するこ<br />

とは 本 質 的 なものではない・・・、 部 分 的 成 功 で、 特 許 性 のある 有 用 性 を 実 証 するには 十 分 であ<br />

る・・・。 要 するに、 有 用 性 がないという 抗 弁 は、 全 体 的 に 無 能 であるという 証 拠 なしに 立 証 で<br />

きない。」 発 明 が 有 効 な 成 果 を 得 ることに 部 分 的 成 功 を 収 めただけの 場 合 、 有 用 性 の 欠 如 を<br />

理 由 にクレームされた 特 許 を 全 体 として 拒 絶 することは 適 切 でない。In re Brana, 51 F.3d<br />

1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995); In re Gardner, 475 F.2d 1389, 177 USPQ 396 (CCPA),<br />

reh’g denied, 480 F.2d 879 (CCPA 1973); In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 169 USPQ 367<br />

(CCPA 1971)を 参 照 のこと。<br />

発 明 が「 実 施 不 能 」であり、 従 って 有 用 性 に 欠 けると 判 定 される 状 況 はまれである。さらに、<br />

拒 絶 がこの 理 由 のみに 基 づいて 連 邦 裁 判 所 により 支 持 されることはさらにまれである。この<br />

ような 事 例 の 多 くで、 出 願 人 により 主 張 される 有 用 性 は、 特 許 商 標 庁 によって 初 めに 審 査 さ<br />

れた 時 点 で「 技 術 知 識 に 照 らして 信 じ 難 い、 若 しくは 事 実 上 誤 解 を 与 える」と 考 えられた。<br />

In re Citron, 325 F.2d 248, 253, 139 USPQ 516, 520 (CCPA 1963)。 他 の 事 例 では、 初 期<br />

評 価 時 において 特 許 商 標 庁 は、 主 張 される 有 用 性 を 授 けるため 必 要 な 当 該 発 明 の 属 性 が 当 該<br />

発 明 に 実 際 に 存 在 するかどうかに 関 し、 主 張 される 有 用 性 は 既 知 の 科 学 的 原 則 に 矛 盾 してい<br />

る、 若 しくは「よくても 推 論 」と 考 えたことが 示 唆 されている。In re Sichert, 566 F.2d 1154,<br />

196 USPQ 209 (CCPA 1977)。これらの 事 例 において 事 実 に 基 づく 記 録 によって 裁 判 所 が 認 定<br />

した 事 実 はこのようなものであって 、 当 該 発 明 は、 発 明 者 がそれをクレームするように 機 能<br />

できないし 機 能 しないことが 明 らかであった。 実 際 には、ひとつの 問 題 ( 例 えば、 有 用 性 につ<br />

いて 間 違 った 主 張 )を 記 述 するために 多 くのラベルを 使 用 したことで、「 有 用 性 」 要 件 による<br />

拒 絶 について 今 日 存 在 する 混 乱 のいくつかが 生 じた。このような 事 例 を 次 に 挙 げる。 磁 場 を<br />

用 いて 味 覚 を 変 えると 主 張 する 発 明 (Fregeau v. Mossinghoff, 776 F.2d 1034, 227 USPQ 848<br />

(Fed. Cir. 1985))、 永 久 運 動 機 関 (Newman v.Quigg, 877 F.2d 1575, 11 USPQ2d 1340 (Fed.<br />

Cir. 1989))、「 羽 ばたき 機 能 」で 飛 ぶ 飛 行 機 (In re Houghton, 433 F.2d 820, 167 USPQ 687<br />

(CCPA 1970))、エネルギーを 生 産 する「 常 温 核 融 合 」プロセス(In re Swartz, 232 F.3d 862,<br />

56 USPQ2d 1703, (Fed. Cir. 2000))、 磁 界 への 暴 露 によって 燃 焼 時 の 化 石 燃 料 のエネルギー<br />

出 力 を 増 大 させる 方 法 (In re Ruskin, 354 F.2d 395, 148 USPQ 221 (CCPA 1966))、 多 様 な<br />

悪 性 腫 瘍 治 療 用 の 未 同 定 組 成 剤 (In re Citron, 325 F.2d 248, 139 USPQ 516 (CCPA 1963))、<br />

及 び 老 化 作 用 を 防 ぐ 方 法 (In re Eltgroth, 419 F.2d 918, 164 USPQ 221 (CCPA 1970))。こ<br />

れらの 例 は 事 実 特 定 的 であって、それ 自 体 を 一 般 的 ルールとして 適 用 してはならない。 上 に<br />

述 べたようにかかる 事 例 のまれな 性 質 を 考 慮 し、 本 庁 審 査 官 は 主 張 される 有 用 性 に「 信 じ 難<br />

い」、「 推 論 的 」 又 はその 他 の 方 法 でラベル 付 けをしてはならない。ただし、「 有 用 性 の 欠<br />

如 」による 拒 絶 が 適 切 であることが 明 確 である 場 合 を 除 く。<br />

III. 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性<br />

ヒト 又 は 動 物 の 疾 患 の 治 療 に 有 用 性 を 有 すると 主 張 される 発 明 は、 他 の 技 術 分 野 の 発 明 と 同<br />

33


じ 有 用 性 に 対 する 法 的 要 件 を 前 提 とする。In re Chilowsky, 229 F.2d 457, 461-2, 108 USPQ<br />

321, 325 (CCPA 1956)(「 事 例 の 種 類 によってより 決 定 的 な 有 効 性 についての 証 拠 を 求 める 理<br />

由 は 法 令 又 は 判 決 に 見 当 たらない。 必 要 とされる 証 拠 の 質 と 量 は、 出 願 に 記 載 され 主 張 され<br />

る 働 きが 確 立 された 科 学 的 原 則 と 一 致 する、 又 は 収 束 する、 若 しくは、 主 張 されているが 一<br />

般 に 認 められていない 原 則 によって 決 まるように 思 われるかどうかによって 変 わることがあ<br />

るが、 実 施 可 能 又 は 実 施 不 能 に 関 する 重 要 事 実 についての 確 実 性 の 度 合 いはすべての 事 例 に<br />

おいて 同 一 でなくてはならない。」);In re Gazave, 379 F.2d 973, 978, 154 USPQ 92, 96<br />

(CCPA 1967)(「 従 って、 主 張 される 働 きの 態 様 が 容 易 に 理 解 でき 既 知 の 物 理 的 化 学 的 法 則 に<br />

一 致 する 一 般 事 例 において 実 施 可 能 性 は 問 題 とはならないので、さらなる 証 拠 を 必 要 としな<br />

い」)。このように、いかなる「 公 衆 に 対 する 即 時 的 便 益 」を 提 供 する 薬 理 学 的 若 しくは 治 療<br />

的 発 明 は 特 許 法 第 101 条 を 満 たす。Nelson 事 件 において 主 張 された 有 用 性 は、 薬 理 学 的 有 用<br />

性 を 有 する 化 合 物 に 関 するものであった。Nelson v. Bowler, 626 F.2d 853, 856, 206 USPQ<br />

881, 883 (CCPA 1980)。 本 庁 審 査 官 は、その 発 明 の 治 療 的 、 予 防 的 又 は 薬 理 学 的 活 性 に 基 づ<br />

く 発 明 の 有 用 性 を 評 価 する 場 合 、 一 般 的 指 針 を 与 えるものとして Nelson 事 件 及 びその 他 の 判<br />

決 例 に 依 拠 しなくてはならない。<br />

裁 判 所 は、 主 張 される 薬 理 学 的 使 用 に 関 する 化 合 物 の 薬 理 学 的 活 性 の 単 なる 特 定 が「 公 衆 に<br />

対 する 即 時 的 便 益 」を 提 供 する、 従 って 有 用 性 要 件 を 満 たすと 繰 り 返 し 認 定 している。 同 様<br />

に、 関 税 特 許 控 訴 裁 判 所 は Nelson v. Bowler 事 件 で 次 の 判 決 を 出 した。<br />

「 化 合 物 の 薬 理 学 的 活 性 に 関 する 知 識 は 公 衆 に 対 して 明 らかに 便 益 となる。 医 療 従 事 者 が 薬<br />

理 学 的 活 性 が 知 られている 薬 品 の 倉 庫 で 身 を 固 めれば、 病 気 を 治 療 し 症 状 を 緩 和 させること<br />

が 本 質 的 に 迅 速 化 され 容 易 化 される。できる 限 り 多 くの 化 合 物 で 薬 理 学 的 活 性 を 明 らかにす<br />

るインセンティブを 研 究 者 に 提 供 することが 重 要 であるため、 我 々は、かかる 活 性 を 十 分 に<br />

証 明 するものは、 実 用 的 有 用 性 を 示 すものであるとする。」<br />

Nelson v. Bowler, 626 F.2d 853, 856, 206 USPQ 881, 883 (CCPA 1980)。<br />

Nelson v. Bowler 事 件 事 例 において、 裁 判 所 はインターフェアレンス 手 続 の 中 で 実 用 的 有 用<br />

性 要 件 を 検 討 した。Nelson が 自 身 の 出 願 において 当 該 発 明 の 実 用 的 有 用 性 を 十 分 かつ 説 得 力<br />

のあるやり 方 で 公 開 できていないことを 理 由 に、Bowler は、Nelson がクレームした 当 該 発 明<br />

の 特 許 性 に 異 議 を 申 し 立 てた。Nelson は 天 然 のプロスタグランジンをまねた 合 成 プロスタグ<br />

ランジンの 一 種 を 開 発 しクレームしていた。 天 然 のプロスタグランジンは Nelson の 特 許 出 願<br />

時 点 において 生 物 活 性 化 合 物 であり、 薬 理 学 において 価 値 が 認 められていた( 例 えば、 子 宮 平<br />

滑 筋 を 刺 激 して 陣 痛 誘 発 又 は 妊 娠 中 絶 をもたらす、 血 圧 を 上 げる 又 は 下 げる 能 力 等 )。Nelson<br />

は 自 らの 開 示 で 特 定 した 有 用 性 を 裏 付 けるため 出 願 に 試 験 結 果 を 記 載 し、 天 然 プロスタグラ<br />

ンジンの 生 物 活 性 と 比 較 して 自 らの 新 しい 置 換 プロスタグランジンの 生 物 活 性 を 実 証 した。<br />

裁 判 所 は、Nelson は 合 成 プロスタグランジンを 薬 理 学 的 活 性 化 合 物 として 特 定 しており、 実<br />

用 的 有 用 性 を 満 たしているとした。この 結 論 に 達 する 際 、 裁 判 所 は Bowler によって 提 示 され<br />

た、 当 該 化 合 物 は 薬 理 学 的 に 機 能 すると 主 張 する Nelson の 証 拠 基 盤 を 攻 撃 する 意 見 を 検 討 の<br />

上 で 却 下 した。<br />

In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206 USPQ 885 (CCPA 1980)においては、 発 明 者 が 白 血 病 治 療<br />

用 の 医 薬 組 成 物 をクレームした。<br />

当 該 組 成 物 の 有 効 成 分 は 既 知 の 抗 がん 剤 に 対 する 構 造 類 似 体 であった。 出 願 人 は、クレーム<br />

された 類 似 体 は 既 知 の 抗 がん 剤 と 同 じ 一 般 的 薬 剤 活 性 を 有 することを 証 明 する 証 拠 を 提 供 し<br />

34


た。 裁 判 所 は、 関 連 する 薬 理 学 的 活 性 を 証 明 する 証 拠 を 挙 げて 主 張 される 薬 剤 有 用 性 は「 信<br />

じ 難 い」とする 審 判 部 の 認 定 を 覆 した。<br />

Cross v. Iizuka, 753 F.2d 1040, 224 USPQ 739 (Fed. Cir. 1985)において 連 邦 巡 回 控 訴 裁<br />

判 所 は、 薬 理 学 的 有 用 性 は 一 方 当 事 者 のインターフェアレンス 手 続 申 請 において 開 示 された<br />

とする 審 判 部 による 認 定 を 支 持 した。 審 判 部 で 争 われた 発 明 は 血 液 疾 患 の 治 療 に 用 いられる<br />

化 合 物 であった。Cross がクレームされた 有 用 性 を 裏 付 ける Iizuka の 明 細 書 の 証 拠 に 異 議 を<br />

申 し 立 てた。しかし、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、Iizuka の 出 願 は 十 分 に 当 該 化 合 物 の 薬 理 学 的<br />

有 用 性 を 開 示 しているとする 認 定 において Nelson v. Bowler 事 件 に 広 く 依 拠 した。 本 件 を<br />

「 生 物 学 的 特 性 」など 一 般 化 され「 漫 然 とした」 表 現 のみが 明 細 書 に 開 示 されている 事 例 と<br />

区 別 した。 同 法 廷 はそのような 記 載 を「 化 合 物 の 有 用 性 について 明 確 な 表 示 をほとんど 伝 え<br />

ていない」とした。Cross, 753 F.2d at 1048、224 USPQat 745 (In re Kirk, 376 F.2d 936,<br />

941, 153 USPQ 48, 52 (CCPA 1967) 引 用 )。<br />

同 様 に、 出 願 人 はクレームされた 薬 理 又 は 生 物 活 性 化 合 物 若 しくは 組 成 物 に 基 づく 医 薬 品 又<br />

は 治 療 方 式 開 発 のごく 初 期 の 段 階 にあるという 事 実 にもかかわらず、 裁 判 所 は 治 療 上 の 発 明<br />

に 有 用 性 を 認 めている。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は Cross v. Iizuka, 753 F.2d 1040, 1051, 224<br />

USPQ 739, 747-48 (Fed. Cir. 1985)で、 薬 理 学 的 活 性 を 示 すインビトロ 検 査 のデータの 有 意<br />

性 について 意 見 を 述 べている。<br />

「 我 々は、 適 当 な 状 況 下 で、 連 鎖 スクリーニングの 第 1 階 梯 であるインビトロ 検 査 が 問 題 の<br />

化 合 物 に 対 して 実 用 的 有 用 性 を 立 証 しうることを 認 定 することに、 何 ら 克 服 できない 困 難 は<br />

ないと 考 える。 良 好 なインビトロ 検 査 は 資 源 をそろえるととともに 費 やす 労 力 を 最 も 有 効 な<br />

化 合 物 のインビボ 検 査 の 推 進 に 向 かわせる。 従 って、 公 衆 に 対 して、インビボ 有 用 性 の 証 明<br />

によってもたらされる 便 益 に 類 似 する、 即 時 的 便 益 を 提 供 する。」<br />

連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、 特 許 法 による 治 療 的 有 用 性 の 十 分 さが 合 衆 国 内 で 販 売 される 薬 の 安<br />

全 性 及 び 有 効 性 に 関 する FDA の 要 件 と 混 同 されてはならないことを 繰 り 返 し 述 べている。<br />

「FDA の 認 可 は、 特 許 法 上 の 意 味 で 化 合 物 を 有 用 であるとする 必 要 条 件 ではない。Scott [v.<br />

Finney], 34 F.3d 1058, 1063, 32 USPQ2d 1115, 1120 [(Fed.Cir. 1994)]。 特 許 法 における<br />

有 用 性 は、とりわけ 薬 剤 発 明 に 関 連 して、 必 然 的 にさらなる 研 究 開 発 への 期 待 を 含 む。 本 分<br />

野 における 発 明 が 有 用 となる 段 階 は、 人 間 への 投 与 準 備 ができるよりかなり 以 前 である。 有<br />

用 性 を 証 明 するために 第 2 相 試 験 を 求 めることになれば、 関 連 費 用 のために 多 くの 企 業 は 新<br />

規 の 有 望 な 発 明 に 特 許 権 による 保 護 を 得 られないであろう。その 結 果 、 癌 治 療 など 数 多 くの<br />

主 要 分 野 で、 研 究 開 発 により 治 癒 の 可 能 性 を 追 求 しようとするインセンティブが 衰 える。」<br />

In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995)。 従 って 本 庁 審 査 官 は、「 実<br />

用 的 」 有 用 性 の 論 理 に 基 づくと 否 にかかわらず、 出 願 人 が、クレームされている 発 明 に 基 づ<br />

く 治 療 薬 は 人 間 にとって 安 全 若 しくは 十 分 に 有 効 な 薬 であることを 実 証 する 必 要 があるとし<br />

て 特 許 法 第 101 条 を 解 釈 すべきではない。 参 照 事 例 として、In re Sichert, 566 F.2d 1154,<br />

196 USPQ 209 (CCPA 1977); In re Hartop, 311 F.2d 249, 135 USPQ 419 (CCPA 1962); In re<br />

Anthony, 414 F.2d 1383, 162 USPQ 594 (CCPA 1969); In re Watson, 517 F.2d 465, 186 USPQ<br />

11 (CCPA 1975)。<br />

これらの 一 般 原 則 は、 出 願 人 が 人 間 又 は 動 物 の 疾 患 を 治 療 するためのプロセスをクレームし<br />

た 場 合 に 等 しく 適 用 できる。このような 場 合 、 主 張 される 有 用 性 は 通 常 明 確 であり、 当 該 発<br />

明 は 特 定 疾 患 の 治 療 に 有 用 であると 主 張 される。 主 張 される 有 用 性 が 信 頼 できる 場 合 、 特 許<br />

35


法 第 101 条 に 基 づく 有 用 性 に 欠 けることを 理 由 としてそのようなクレームに 異 議 を 申 し 立 て<br />

る 理 由 はない。<br />

主 張 される 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 に 関 して 特 に 考 慮 すべき 事 柄 については、MPEP 第<br />

2107.03 条 を 参 照 のこと。<br />

IV. 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 と 特 許 法 第 101 条 の 関 係<br />

特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 部 分 の 不 備 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 不 備 をももたらす。In re<br />

Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995); In re Jolles, 628 F.2d 1322, 1326<br />

n.10, 206 USPQ 885, 889 n.11 (CCPA 1980); In re Fouche, 439 F.2d 1237, 1243, 169 USPQ<br />

429, 434 (CCPA 1971)(「かかる 組 成 物 が 事 実 上 役 に 立 たない 場 合 、 出 願 人 の 明 細 書 はそれら<br />

の 使 用 方 法 を 教 えることはできていない」)を 参 照 のこと。 裁 判 所 はまた、 特 許 法 第 112 条 は<br />

特 許 法 第 101 条 の 遵 守 を 前 提 とするという 特 許 法 第 101 条 と 特 許 法 第 112 条 の 関 係 にも 目 を<br />

向 けている。 次 の 事 例 を 参 照 のこと。In re Ziegler, 992 F.2d 1197, 1200-1201, 26 USPQ2d<br />

1600, 1603 (Fed. Cir. 1993)(「 第 112 条 の 部 分 の 使 い 方 は、 明 細 書 が 発 明 の 実 用 的 有 用 性<br />

を 事 実 問 題 として 開 示 しているという 特 許 法 第 101 条 の 要 件 を 法 律 問 題 として 取 り 入 れ<br />

る・・・。 出 願 が 特 許 法 第 101 条 を 事 実 問 題 として 満 たさない 場 合 、その 出 願 は 法 律 問 題 とし<br />

ても、 特 許 法 第 112 条 に 基 づき 当 業 者 に 当 該 発 明 の 使 用 を 可 能 にすることもできない。」);<br />

In re Kirk, 376 F.2d 936, 942, 153 USPQ 48, 53 (CCPA 1967)(「 必 然 的 に、 第 112 条 を 満<br />

たすためには、 現 在 有 用 な 発 明 をどのように 使 用 するかの 記 載 を 必 要 とする。さもなければ<br />

出 願 人 は、 奇 妙 なことに、 役 に 立 たない 発 明 の 使 用 方 法 を 教 えることを 求 められることにな<br />

るであろう」)。 例 えば、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は「 勿 論 、クレームされている 発 明 が 有 用 性 を<br />

有 しない 場 合 、 明 細 書 はそれの 使 用 を 可 能 にすることはできない」ことに 言 及 した。In re<br />

Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995)。 同 様 に、 有 用 性 の 欠 如 により 特<br />

許 法 第 101 条 に 基 づき 適 切 に 課 される 拒 絶 は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 拒 絶 を 伴 わ<br />

ねばならない。それと 同 時 に、「 有 用 性 の 欠 如 」を 理 由 とする 拒 絶 は 特 許 法 第 101 条 による<br />

と 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 によるとを 問 わず、 同 一 理 由 に 基 づくことは 明 らかである( 即 ち、<br />

主 張 される 有 用 性 は 信 じられない)。 混 乱 を 回 避 するため、 特 許 法 第 101 条 に 基 づいて 課 さ<br />

れる 有 用 性 の 欠 如 による 拒 絶 は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 拒 絶 を 伴 わなくてはなら<br />

ない。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 は、 事 実 に 基 づく 理 由 及 び 特 許 法 第 101 条 拒 絶 に 明 記<br />

される 結 論 を 引 用 することにより 組 み 入 れる 個 別 の 拒 絶 として 記 載 しなくてはならない。<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 は、クレーム 時 の 発 明 は 有 用 性 を 有 していないので 当 業 者 は<br />

クレーム 時 の 発 明 を 使 用 することはできないであろうこと、そこで、 当 該 クレームは 特 許 法<br />

第 112 条 第 1 段 落 のもとで 不 備 であることを 述 べなくてはならない。 特 許 法 第 112 条 第 1 段<br />

落 の 有 用 性 の 欠 如 に 基 づく 拒 絶 は、 特 許 法 第 101 条 に 基 づいて 有 用 性 拒 絶 を 課 す 適 切 な 理 由<br />

が 存 在 しない 場 合 、これを 課 す 若 しくは 支 持 してはならない。 即 ち、 本 庁 審 査 官 は、 特 許 法<br />

第 101 条 拒 絶 が 適 切 でない 場 合 、「 有 用 性 の 欠 如 」を 理 由 とする 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の<br />

拒 絶 を 課 してはならない。 特 に、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 拒 絶 が「 有 用 性 の 欠 如 」<br />

を 理 由 に 課 さねばならない 場 合 、 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 を 課 すために 必 要 な 事 実 に 基<br />

づく 証 明 が 提 示 されねばならない。<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 は、 発 明 は 有 用 性 を 欠 くかどうかの 問 題 に 関 連 する 事 項 以 外 の 事 項<br />

を 取 り 扱 っていることを 認 識 することが 重 要 である。これらは 次 に 掲 げる 事 項 を 含 む。 当 該<br />

36


クレームが 開 示 によって 十 分 に 裏 付 けされているかどうか(In re Vaeck, 947 F.2d 488, 495, 20<br />

USPQ2d 1438, 1444 (Fed. Cir. 1991))、 出 願 人 はクレームされている 保 護 対 象 について 実 施 可 能<br />

な 開 示 をしているかどうか(In re Wright, 999 F.2d 1557, 1561-1562, 27 USPQ2d 1510, 1513 (Fed.<br />

Cir. 1993))、 出 願 人 は 当 該 発 明 について 適 切 な 書 面 記 載 をを 提 示 しているかどうか、そして 出<br />

願 人 はクレームされている 発 明 を 実 行 する 最 良 の 態 様 を 開 示 しているかどうか(Chemcast Corp. v.<br />

Arco Indus. Corp., 913 F.2d 923, 927-928, 16 USPQ2d 1033, 1036-1037 (Fed. Cir. 1990))。<br />

次 も 参 照 のこと。Transco Products Inc. v. Performance Contracting Inc., 38 F.3d 551, 32<br />

USPQ2d 1077 (Fed. Cir. 1994); Glaxo Inc. v. Novopharm Ltd. 52 F.3d 1043, 34 USPQ2d 1565<br />

(Fed. Cir. 1995)。 出 願 人 が 発 明 の 具 体 的 な 有 用 性 を 開 示 し、その 具 体 的 有 用 性 を 裏 付 ける 信 頼<br />

できる 理 由 を 示 しているという 事 実 は、 当 該 クレームが 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 のすべての 要 件<br />

を 満 たすと 結 論 付 ける 理 由 を 提 供 するものではない。 例 えば、 出 願 人 がある 化 合 物 である 病 態 を<br />

治 療 する 方 法 をクレームし、その 化 合 物 はその 点 について 有 用 であることを 主 張 するために 信 頼<br />

できる 理 由 を 提 示 したが、クレーム 時 の 発 明 を 実 際 に 実 行 するために 当 業 者 が 過 度 の 実 験 を 実 施<br />

しなくてならないであろう 場 合 、そのクレームは 特 許 法 第 101 条 ではなく 特 許 法 第 112 条 によっ<br />

て 不 備 となる 可 能 性 がある。 審 査 時 の 混 乱 を 回 避 するため、「 有 用 性 の 欠 如 」 以 外 の 理 由 に 基 づ<br />

く 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 は、 特 許 法 第 101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく<br />

「 有 用 性 の 欠 如 」によって 課 される 拒 絶 とは 別 に 課 せられねばならない。<br />

2107.02 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 について 手 続 上 考 慮 すべき 事 柄<br />

I. クレームされている 発 明 は 有 用 性 要 件 の 対 象 となる<br />

クレームされている 発 明 は 出 願 人 が 有 用 性 要 件 を 満 たしているかどうかを 評 価 する 対 象 とな<br />

る。 従 って、クレームごとに( 即 ち、「 発 明 」ごとに)すべての 法 令 上 の 要 件 遵 守 についてそ<br />

の 実 体 上 の 事 項 を 評 価 しなければならない。しかし、 一 般 的 に 言 って、 従 属 クレームは、 従<br />

属 クレームが 従 属 する 独 立 クレームが 当 該 従 属 クレームと 同 じ 発 明 の 法 定 区 分 に 設 定 されて、<br />

当 該 独 立 クレームが 有 用 性 を 有 する 発 明 を 定 義 する 場 合 に、 有 用 性 を 有 する 発 明 を 定 義 する。<br />

この 一 般 規 則 の 例 外 は、 従 属 クレームに 定 義 された 発 明 に 特 定 される 有 用 性 が、 当 該 従 属 ク<br />

レームが 従 属 する 独 立 クレームに 定 義 された 発 明 に 示 された 有 用 性 と 異 なる 場 合 である。 出<br />

願 人 が、 確 認 されているある 化 合 物 の 属 に 該 当 するある 種 の 有 用 性 を 確 立 し、その 属 を 対 象<br />

とする 属 クレームを 提 出 する 場 合 、 一 般 事 項 として、そのクレームは 特 許 法 第 101 条 の 下 で<br />

十 分 であるとして 取 り 扱 われるべきである。 明 らかに 当 該 クレームに 含 まれるその 他 の 種 が<br />

有 用 性 を 有 していないことを 証 明 できる 場 合 にのみ、その 属 クレームに 拒 絶 が 課 せられるべ<br />

きである。このような 場 合 、 出 願 人 は 有 用 性 に 欠 ける 種 を 排 除 するために 当 該 属 クレームを<br />

補 正 するよう 奨 励 されなくてはならない。<br />

出 願 人 が 発 明 にいくつかの 具 体 的 有 用 性 を 特 定 することは、 特 に、 当 該 発 明 が 製 品 ( 例 えば、<br />

機 械 、 製 造 物 又 は 組 成 物 )である 場 合 、 一 般 的 であって 理 にかなっている。しかし、クレーム<br />

されている 発 明 のカテゴリー( 例 えば、 製 品 又 はプロセス)にかかわらず、 出 願 人 はクレーム<br />

されている 発 明 について 特 許 法 第 101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 を 満 足 させる 具 体 的 有 用 性 のた<br />

め 信 頼 できる 主 張 のみを 行 う 必 要 がある。 有 用 性 についての 付 加 的 記 述 は、「 信 頼 できる」<br />

ものでなくても、クレームされている 発 明 を 有 用 性 に 欠 けているとしない。 参 照 事 例 として、<br />

Raytheon v. Roper, 724 F.2d 951, 958, 220 USPQ 592, 598 (Fed. Cir. 1983), cert. denied,<br />

469 U.S. 835 (1984) (「 適 切 にクレームされている 発 明 が 少 なくとも 1 つの 表 明 した 目 的 に<br />

37


合 致 する 場 合 、 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 は 明 確 に 証 明 される。」);<br />

In re Gottlieb, 328 F.2d 1016, 1019, 140USPQ 665, 668 (CCPA 1964)(「 抗 生 物 質 がある<br />

目 的 に 有 用 であると 認 定 されると、 有 用 であると 思 われるとして 明 細 書 に『 表 示 』されるそ<br />

の 他 の 目 的 に 実 際 に 有 用 であるかどうかを 判 断 することが 不 要 になる。」); In re<br />

Malachowski, 530 F.2d 1402, 189 USPQ 432 (CCPA 1976); Hoffman v. Klaus, 9 USPQ2d 1657<br />

(Bd. Pat. App. & Inter. 1988)。 従 って、 出 願 人 が 有 用 性 について 1 つの 信 頼 できる 主 張 を<br />

行 うと、クレームされている 発 明 全 体 の 有 用 性 が 確 立 される。<br />

明 細 書 に 又 は 特 許 商 標 庁 への 出 願 手 続 に 付 随 して 出 願 人 が 行 う 記 述 は、 単 独 で、 特 許 法 第 101<br />

条 又 は 特 許 法 第 112 条 に 基 づく 有 用 性 の 欠 如 による 拒 絶 の 根 拠 とすることはできない。<br />

Tol-O-Matic, Inc. v. Proma Produkt-Und Mktg. Gesellschaft m.b.h., 945 F.2d 1546, 1553,<br />

20 USPQ2d 1332, 1338 (Fed. Cir. 1991) ( 特 定 の 性 質 を 特 許 法 第 101 条 を 満 足 させるために<br />

行 われる 手 続 処 理 履 歴 に 記 載 する 必 要 はない)。 出 願 人 は、その 技 術 的 正 確 さを 容 易 に 裏 付 け<br />

ることのできない 記 述 を 明 細 書 に 含 めることができる。ただし、それらの 記 述 により、 法 的<br />

根 拠 について 発 明 の 特 許 性 を 立 証 する 必 要 がない 場 合 とする。 従 って、 特 許 商 標 庁 は 出 願 人<br />

に 有 用 性 に 関 して 不 必 要 な 記 述 を、 当 該 記 述 の 技 術 的 正 確 さ 又 はそれが 示 している 主 張 にか<br />

かわらず、 特 許 の 開 示 から 削 除 するよう 求 めてはならない。また、 本 庁 審 査 官 は 請 求 されて<br />

いない 発 明 の 成 果 、 制 限 若 しくは 実 施 例 をクレームに 読 み 込 まないよう 特 に 慎 重 でなくては<br />

ならない。Carl Zeiss Stiftung v. Renishaw PLC, 945 F.2d 1173, 20 USPQ2d 1094 (Fed. Cir.<br />

1991); In re Krimmel, 292 F.2d 948, 130 USPQ 215 (CCPA 1961)を 参 照 のこと。そうする<br />

ことは、クレームされている 発 明 に 対 して 主 張 される 有 用 性 の 関 係 を 不 適 切 に 変 え、そのク<br />

レームの 審 査 に 関 係 のない 問 題 点 を 生 じさせることがある。<br />

II. クレームされている 発 明 に 主 張 される 又 は 十 分 に 確 立 された 有 用 性 はあるか?<br />

最 初 の 審 査 で、 審 査 官 は 明 細 書 を 審 査 し、クレームされている 発 明 はなんらかの 特 定 した 目<br />

的 に 有 用 であると 主 張 する 記 述 があるかどうかを 確 定 する。 完 全 な 開 示 には 当 該 発 明 の 具 体<br />

的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 特 定 する 記 述 がなければならない。<br />

A. 主 張 される 有 用 性 は 具 体 的 かつ 実 質 的 でなければならない<br />

具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 の 記 述 は 出 願 人 が 当 該 発 明 を 有 用 と 信 ずる 理 由 を 十 分 かつ 明 確 に<br />

説 明 しなくてはならない。かかる 陳 述 は 一 般 に、その 発 明 の 目 的 若 しくはその 発 明 がどのよ<br />

うに 使 用 されるか( 例 えば、 化 合 物 は 特 定 疾 患 の 治 療 に 有 用 であると 信 じられる)を 説 明 する。<br />

有 用 性 の 陳 述 はその 様 式 にかかわらず、 出 願 人 がクレームされている 発 明 は 有 用 であると 信<br />

ずる 理 由 を、 一 般 的 な 当 業 者 が 理 解 できるものでなければならない。<br />

発 明 に 十 分 に 確 立 された 有 用 性 がある 場 合 を 除 き、 発 明 は 有 用 であると 信 じられる 理 由 を 出<br />

願 人 が 具 体 的 に 特 定 できないものは、 特 許 法 第 101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき<br />

クレームされた 発 明 の 不 備 とする。そのような 場 合 、 出 願 人 はクレームされている 発 明 の「 具<br />

体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 」の 特 定 に 失 敗 している。 例 えば、 組 成 物 に 特 定 されていない「 生<br />

物 活 性 」がある 記 述 、 又 はその 活 性 を 有 する 組 成 物 が 有 用 であると 信 じられる 理 由 を 説 明 し<br />

ていない 記 述 は、「 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 」を 説 明 できていない。Brenner v. Manson, 383<br />

US 519, 148 USPQ 689 (1966) (クレームされた 化 合 物 が、 有 用 であることが 知 られている 既<br />

知 の 化 合 物 と 類 似 していることについて 一 般 的 に 主 張 し、これに 対 応 する、クレームされた<br />

化 合 物 がこれと 同 様 に 有 用 であることの 理 由 について 十 分 に 説 明 しない 場 合 、 特 許 法 第 101<br />

38


条 の 下 で 不 十 分 );In re Ziegler, 992 F.2d 1197, 1201, 26 USPQ2d 1600, 1604 (Fed. Cir.<br />

1993) ( 組 成 物 は「プラスチック 状 」で「フィルム」を 形 成 できるとする 開 示 は、 発 明 の 具 体<br />

的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 特 定 するには 十 分 でない);In re Kirk, 376 F.2d 936, 153 USPQ 48<br />

(CCPA 1967)( 化 合 物 は「 生 物 的 に 活 性 」である、 又 は「 生 物 学 的 特 性 」を 有 するとの 指 摘 は<br />

それだけでは 不 十 分 )。 次 の 事 例 も 参 照 のこと。In re Joly, 376 F.2d 906, 153 USPQ 45 (CCPA<br />

1967);Kawai v.Metlesics, 480 F.2d 880, 890, 178 USPQ 158, 165 (CCPA 1973)( 特 定 の 有<br />

効 性 を 示 唆 する 鎮 静 剤 としての 発 明 の 記 述 は、 示 唆 しない「 中 枢 神 経 系 への 薬 理 効 果 」につ<br />

いての 一 般 的 な 示 唆 とは 随 分 異 なる)。その 一 方 、 化 合 物 の 具 体 的 生 物 活 性 を 特 定 し、その 活<br />

性 を 当 該 化 合 物 の 特 定 の 治 療 的 応 用 でどのように 利 用 できるかを 説 明 する 開 示 は、 当 該 発 明<br />

の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 に 関 する 主 張 を 包 含 する。<br />

出 願 人 が 発 明 を 有 用 と 考 える 理 由 を 特 定 できない、 又 は 出 願 人 が 当 該 有 用 性 を 不 正 確 に 記 載<br />

する 状 況 はまれにしか 生 じない。この 理 由 の 1 つは、 出 願 人 は 願 書 出 願 時 点 で 当 該 発 明 実 施<br />

について 分 かっている 最 良 態 様 を 開 示 するように 求 められているからである。 当 該 発 明 の 具<br />

体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 についての 記 載 を 省 く、 又 はその 有 用 性 を 不 完 全 に 記 載 する 出 願 人<br />

は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 最 良 実 施 態 様 要 件 に 関 連 する 問 題 に 遭 遇 する 可 能 性 がある。<br />

B. 明 細 書 にクレームされている 発 明 の 有 用 性 について 記 述 のないこ 自 体 は 有 用 性 を 否 定 し<br />

ない<br />

出 願 人 が 明 細 書 又 はその 他 に 明 示 的 記 述 を 行 わず、クレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実<br />

質 的 な 有 用 性 を 主 張 しないことがある。 明 細 書 にクレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質<br />

的 な 有 用 性 を 主 張 する 記 述 が 見 られない 場 合 、 本 庁 審 査 官 はそのクレームされている 発 明 は<br />

十 分 に 確 立 された 有 用 性 を 有 するか 否 かを 判 断 しなくてはならない。 発 明 は 次 の 場 合 に 十 分<br />

に 確 立 された 有 用 性 を 有 する。(i) 当 業 者 は 当 該 発 明 の 有 用 である 理 由 を 当 該 発 明 の 特 性 ( 例<br />

えば、 製 品 又 はプロセスの 特 性 又 は 用 途 )に 基 づいて 速 やかに 理 解 するであろう 場 合 、さらに<br />

(ii)その 有 用 性 は 具 体 的 、 実 質 的 かつ 信 頼 できる 場 合 。 発 明 が 十 分 に 確 立 された 有 用 性 を 有<br />

する 場 合 、 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 特 許 法 第 101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒<br />

絶 を 課 してはならない。In re Folkers, 344 F.2d 970, 145 USPQ 390 (CCPA 1965)。 例 えば、<br />

出 願 がインシュリン 等 の 良 く 知 られたタンパク 質 のヌクレオチド 配 列 のクローン 作 成 と 特 性<br />

評 価 を 教 えており、 出 願 時 に 当 業 者 がインシュリンには 十 分 に 確 立 された 使 用 法 があること<br />

を 知 っている 場 合 、 省 略 された 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 の 記 述 を 理 由 に 単 に 有 用 性 を 欠 く<br />

としてクレームされている 発 明 を 拒 絶 することは 不 適 切 であろう。<br />

当 業 者 が 発 明 の 特 性 又 は 出 願 人 による 記 述 に 基 づいてクレームされている 発 明 の 具 体 的 かつ<br />

実 質 的 な 有 用 性 ( 即 ち、それが 有 用 であろう 理 由 )を 速 やかに 認 識 しない 場 合 、 審 査 官 は、ク<br />

レームされている 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 が 特 定 されていないとして 特 許 法 第 101<br />

条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 当 該 出 願 を 拒 絶 しなくてはならない。 当 該 拒 絶 は、<br />

拒 絶 の 理 由 は 当 該 発 明 の 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 を 出 願 人 が 特 定 していないことであるこ<br />

とを 明 確 に 表 示 しなくてはならない。また、 当 該 拒 絶 には、 出 願 人 は 当 該 発 明 が 有 用 と 信 じ<br />

られる 理 由 と、その 有 用 性 の 裏 付 けが 出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 された 個 所 を 特 定 して 応 答 しな<br />

ければならないことも 明 記 しなくてはならない。MPEP 第 2701 条 を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 がその 後 に 当 該 発 明 は 有 用 である 理 由 を 特 定 した 場 合 、 本 庁 審 査 官 は、 下 記 の 明 確 な、<br />

主 張 される 有 用 性 について 信 頼 性 を 審 査 するための 基 準 に 従 ってその 主 張 を 審 査 しなくては<br />

ならない。<br />

39


III. 主 張 される 有 用 性 について 信 頼 性 を 評 価 する<br />

A. 主 張 される 有 用 性 は 有 用 性 についての 推 定 を 生 む<br />

ほとんどの 場 合 、 出 願 人 の 有 用 性 の 主 張 は 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 を 満 たすに 十 分 であ<br />

るとする、 有 用 性 についての 推 定 を 生 む。 参 照 事 例 として、In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206<br />

USPQ 885 (CCPA 1980); In re Irons, 340 F.2d 974, 144 USPQ 351 (CCPA 1965); In re Langer,<br />

503 F.2d 1380, 183 USPQ 288 (CCPA 1974); In re Sichert, 566 F.2d 1154, 1159, 196 USPQ<br />

209, 212-13 (CCPA 1977)。In re Langer 事 件 において 関 税 特 許 控 訴 裁 判 所 が 次 のように 述<br />

べている 通 りである。<br />

「 特 許 商 標 庁 の 業 務 上 、 特 許 出 願 された 保 護 対 象 の 範 囲 に 相 当 する 有 用 性 の 開 示 を 記 述 する<br />

明 細 書 は、クレームされた 保 護 対 象 全 体 として 第 101 条 の 有 用 性 要 件 を 満 たすに 十 分 とみな<br />

さなければならない。ただし、 当 業 者 が 有 用 性 の 記 述 又 はその 範 囲 について 客 観 的 真 実 に 疑<br />

問 を 持 つ 論 拠 がない 場 合 とする。」<br />

In re Langer, 503 F.2d at 1391、183 USPQat 297( 強 調 は 原 文 のまま)。 有 用 性 に 関 する「Langer」<br />

テストは、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 と 関 税 特 許 控 訴 裁 判 所 の 両 者 によって 特 許 法 第 112 条 第 1 段<br />

落 による 拒 絶 の 評 価 で 用 いられている。ここで、 拒 絶 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 不 備 を 理 由<br />

とする。In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995)において、 連 邦 巡<br />

回 控 訴 裁 判 所 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 に「Langer」テストの 関 税 特 許 控 訴 裁 判 所 の<br />

表 現 を 明 示 的 に 採 用 した。In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 223, 169 USPQ 367, 369 (CCPA<br />

1971)にわずかに 語 句 を 言 い 換 えた 形 で 表 現 されているとおり。 即 ち、「 特 許 出 願 された 保 護<br />

対 象 を 記 述 し 定 義 する 際 に 用 いられた 言 葉 の 範 囲 に 合 致 する 言 葉 を 使 った 当 該 発 明 の 作 成 及<br />

び 使 用 方 法 の 教 示 を 含 む 明 細 書 の 開 示 は、 第 112 条 の 第 1 段 落 の 実 施 可 能 性 要 件 に 適 合 して<br />

いるとしなければならない。ただし、 実 施 可 能 性 の 裏 付 けに 信 頼 に 足 るものでなければなら<br />

ず、そこに 記 載 される 記 述 の 客 観 的 真 実 を 疑 う 理 由 がない 場 合 とする。( 強 調 は 引 用 者 によ<br />

る)。」<br />

従 って、Langer とそれに 続 く 事 例 によって 特 許 商 標 庁 は 出 願 者 によって 行 われた 有 用 性 の 記<br />

述 は 真 実 であると 推 定 するようになった。In re Langer, 503 F.2d at 1391、183 USPQat 297;<br />

In re Malachowski, 530 F.2d 1402, 1404, 189 USPQ 432, 435 (CCPA 1976); In re Brana,<br />

51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995)を 参 照 のこと。 明 らかな 効 率 性 の 理 由 及 び<br />

出 願 人 の 発 明 についての 理 解 を 重 んじ、 有 用 性 の 記 述 を 評 価 する 際 、 本 庁 審 査 官 は 有 用 性 に<br />

関 する 記 述 の 真 実 を 疑 うことから 始 めてはならない。そうではなく、 審 査 は 有 用 性 について<br />

の 記 述 の 真 実 を 疑 う 理 由 があるかどうかを 尋 ねることから 開 始 しなければならない。これは、<br />

出 願 人 が 引 用 した 証 拠 を 考 慮 に 入 れ、 出 願 人 が 作 成 した 記 述 の 妥 当 性 を 単 純 に 評 価 すること<br />

によって 成 すことができる。 主 張 される 有 用 性 が 信 頼 できる( 即 ち、 当 該 発 明 の 記 録 又 は 本 質<br />

に 基 づいて 信 ずることができる) 場 合 、「 有 用 性 の 欠 如 」を 理 由 とする 拒 絶 は 適 切 ではない。<br />

本 庁 審 査 官 は、 当 該 発 明 の 技 術 分 野 又 はその 他 一 般 的 理 由 に 基 づき、 主 張 される 有 用 性 は 誤<br />

りらしいと 仮 定 して 有 用 性 の 評 価 を 開 始 してはならないことは 明 らかである。<br />

特 許 法 第 101 条 を 満 たすことは 事 実 に 関 する 争 点 である。Raytheon v. Roper, 724 F.2d 951,<br />

956, 220 USPQ 592, 596 (Fed. Cir. 1983) cert. denied, 469 U.S. 835 (1984)。 従 って、<br />

出 願 人 の 有 用 性 主 張 の 真 実 性 の 推 定 を、 覆 すには、 本 庁 審 査 官 はどちらといえば 当 業 者 は 有<br />

用 性 についての 記 述 の 真 実 性 を 疑 う( 即 ち、「 異 議 を 申 し 立 てる」)だろうことを 立 証 しなけ<br />

ればならない。 拒 絶 の 表 明 に 当 たって 査 定 系 審 査 を 通 じて 用 いるべき 証 拠 基 準 は、 検 討 中 の<br />

40


証 拠 全 体 の 優 位 性 である。In re Oetiker, 977 F.2d 1443, 1445, 24 USPQ2d 1443, 1444 (Fed.<br />

Cir. 1992)(これに 応 えて 証 拠 又 は 意 見 書 が 出 願 人 により 提 出 された 後 、 特 許 性 は 当 該 記 録 全<br />

体 に 基 づき、 証 拠 の 優 位 性 により、 意 見 書 の 説 得 力 を 適 正 に 検 討 して 決 定 される。」);In re<br />

Corkill, 771 F.2d 1496, 1500, 226 USPQ 1005, 1008 (Fed. Cir. 1985)。 証 拠 の 優 位 性 は、<br />

どちらかといえば 論 争 中 の 主 張 は 真 実 であるとの 念 を 抱 かせる 場 合 に 存 在 する。Herman v.<br />

Huddleston, 459 U.S. 375, 390 (1983)。そうするためには、 本 庁 審 査 官 は 主 張 される 有 用<br />

性 の 記 述 は 当 業 者 によって「 正 しくない」と 考 えられるであろうことを 立 証 するに 十 分 な 証<br />

拠 を 用 意 しなければならない。 無 論 、 当 業 者 は 陳 述 の 真 実 性 を 評 価 するために 事 実 及 び 論 拠<br />

の 双 方 共 に 利 用 できねばならない。これは、 出 願 人 が 有 用 性 を 主 張 する 際 に 用 いた 論 拠 を 裏<br />

付 ける 事 実 を 提 示 している 場 合 、 本 庁 審 査 官 は、 当 業 者 が 出 願 人 の 有 用 性 についての 主 張 を<br />

信 じないであろうことを 確 証 するに 十 分 な、 対 抗 する 事 実 及 び 論 拠 を 提 示 しなければならな<br />

いことをいう。In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995)。この 問 題<br />

の 評 価 の 際 に 使 用 する 最 初 の 証 拠 基 準 は 当 該 証 拠 の 優 位 性 ( 即 ち、 事 実 及 び 論 拠 の 全 体 がどち<br />

らかといえば、 出 願 人 の 記 述 は 正 しくないことを 示 唆 している)である。<br />

B. 主 張 される 有 用 性 が 信 じられないのはいつか?<br />

出 願 人 が 発 明 は 特 定 の 有 用 性 を 有 すると 主 張 する 場 合 、その 主 張 のすべてが 正 確 ではないと<br />

信 じられる 理 由 があったとしても、 本 庁 審 査 官 はその 主 張 が 単 に「 誤 り」であるとして 却 下<br />

することはできない。むしろ、 本 庁 審 査 官 は、その 有 用 性 の 主 張 が 信 頼 できるかどうか( 即<br />

ち、 供 された 証 拠 及 び 論 拠 の 全 体 に 基 づいて 当 業 者 はその 有 用 性 の 主 張 を 信 じられるかどう<br />

か)を 究 明 しなければならない。 次 の 場 合 を 除 き 主 張 は 信 頼 できる。(A) 当 該 主 張 の 基 礎 を 成<br />

す 論 理 に 重 大 な 誤 りがある。 又 は、(B) 当 該 主 張 が 根 拠 とする 事 実 は 当 該 主 張 の 基 礎 を 成 す<br />

論 理 と 矛 盾 している。この 文 脈 において 使 用 される 信 頼 性 は、 有 用 性 の 主 張 を 裏 付 けるため<br />

に 出 願 人 が 提 出 する 論 理 及 び 事 実 に 基 づく 記 述 の 信 頼 性 についてである。<br />

有 用 性 の 主 張 が 信 じ 難 いと 見 なされないであろう 状 況 は、 当 業 者 が 当 該 主 張 は「 現 代 の 知 識<br />

に 照 らして 信 じ 難 い」と 見 なすであろう 場 合 に、 出 願 人 が 提 出 する 何 ものをもってしても 現<br />

代 知 識 が 示 唆 しうることに 反 論 できないであろう 場 合 である。しかし、 本 庁 審 査 官 は 一 定 の<br />

発 明 に「 信 じ 難 い」 又 は「 推 論 的 」であるとラベル 付 けしないように 慎 重 でなくてはならな<br />

い。このようなラベルは 有 用 性 の 主 張 の 評 価 に 正 しい 的 の 絞 り 方 をもたらさない。「 信 じ 難<br />

い 有 用 性 」は 結 論 であって 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 分 析 の 出 発 点 ではない。 主 張 される 有 用<br />

性 が 信 じ 難 いという 結 論 には、 特 許 商 標 庁 が 有 用 性 に 関 する 出 願 人 の 主 張 及 びその 主 張 の 証<br />

拠 基 盤 を 共 に 評 価 した 後 にのみ 達 することができる。 特 許 商 標 庁 は、 主 張 される 有 用 性 はそ<br />

れ 自 体 「 信 じ 難 い」との 前 提 で 始 め、その 前 提 に 基 づいて 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 を 築 き<br />

上 げるために 進 めることのないよう、 特 に 慎 重 でなくてはならない。<br />

信 頼 できる 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 は、 例 えば、 出 願 人 は 当 該<br />

発 明 の 有 用 性 を 開 示 できなかった、 若 しくは、 熱 力 学 の 第 2 法 則 や 自 然 法 則 などの 科 学 的 原<br />

理 に 反 する 場 合 、 又 は 全 体 として 当 該 技 術 分 野 の 現 代 知 識 に 矛 盾 している 場 合 にしか 真 実 と<br />

はならないような 有 用 性 を 出 願 人 が 主 張 した 場 合 に、 連 邦 裁 判 所 は 支 持 している。In re<br />

Gazave, 379 F.2d 973, 978, 154 USPQ 92, 96 (CCPA 1967)。クレームされている 発 明 につ<br />

いて 主 張 される 治 療 的 有 用 性 の 信 頼 性 を 評 価 する 場 合 は 特 別 な 配 慮 をせねばならない。その<br />

ような 場 合 、 病 態 治 療 に 以 前 には 成 功 が 得 られていないこと、 又 は 人 の 疾 患 に 関 する 薬 物 療 法 効<br />

果 試 験 で 立 証 された 動 物 モデルがないこと 自 体 は、 特 許 法 第 101 条 により、 主 張 される 有 用 性 に<br />

41


異 議 を 申 し 立 てる 理 由 とならない。 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 に 関 する 詳 細 については MPEP 第<br />

2107.03 条 を 参 照 のこと。<br />

IV. 一 応 の 証 明 をし、その 証 拠 の 裏 付 けを 用 意 する 最 初 の 立 証 責 任 は 特 許 商 標 庁 が 負 う<br />

特 許 法 第 101 条 に 基 づきクレームされている 発 明 を 正 当 に 拒 絶 するには、 特 許 商 標 庁 は(A)<br />

クレームされている 発 明 が 有 用 性 に 欠 けることの 一 応 の 証 明 をおこない、(B) 一 応 の 証 明 を 確<br />

定 するに 当 たって 信 頼 するに 値 する 事 実 を 推 定 するための 十 分 な 証 拠 を 提 示 しなければなら<br />

ない。In re Gaubert, 524 F.2d 1222, 1224, 187 USPQ 664, 666 (CCPA 1975)(「そこで、<br />

PTO は 単 に 実 用 可 能 性 を 問 題 として 取 り 上 げるだけにとどまってはならない― 当 事 者 が 実 用<br />

可 能 性 の 記 述 の 客 観 的 真 実 に 対 して 疑 問 をもつようになるであろう 事 実 に 基 づく 理 由 を 明 記<br />

しなければならない。」)。 特 許 商 標 庁 は、 適 切 な 一 応 の 証 拠 がある 事 例 を 明 らかにして 特 許<br />

法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 に 証 拠 の 裏 付 けを 用 意 できない 場 合 、この 理 由 に 基 づく 拒 絶 を 課 し<br />

てはならない。 参 照 事 例 として、In re Oetiker, 977 F.2d 1443, 1445, 24 USPQ2d 1443, 1444<br />

(Fed. Cir. 1992) (「 審 査 官 は、 先 行 技 術 の 確 認 又 はその 他 の 理 由 に 基 づき、 特 許 性 欠 如 の<br />

一 応 の 証 明 をする 最 初 の 立 証 責 任 を 負 う。その 責 任 が 果 たされると、 証 拠 又 は 意 見 書 を 提 出<br />

する 責 任 は 出 願 人 へ 転 換 する・・・。 最 初 の 段 階 の 審 査 が 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 をしない 場 合 、<br />

他 になければ、 出 願 人 は 当 該 特 許 の 付 与 を 受 ける 権 利 を 得 る。」)Fregeau v. Mossinghoff, 776<br />

F.2d 1034, 227 USPQ 848 (Fed. Cir. 1985)( 特 許 法 第 101 条 に 一 応 の 証 明 の 法 則 を 適 用 );<br />

In re Piasecki, 745 F.2d 1468, 223 USPQ 785 (Fed. Cir. 1984)も 参 照 のこと。<br />

一 応 の 証 明 は 十 分 な 理 由 を 付 して 記 述 しなければならない。 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶<br />

には、クレームされている 発 明 に 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 がないことの 詳 細 な<br />

説 明 を 含 めなくてはならない。 審 査 官 は 可 能 な 限 り、 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性<br />

ではないことの 一 応 の 証 明 に 関 して 事 実 に 基 づく 理 由 を 裏 付 けるため、 公 開 日 に 関 わらず 証<br />

拠 書 類 ( 例 えば、 科 学 的 ・ 技 術 的 雑 誌 、 専 門 書 又 は 文 献 の 抜 粋 若 しくは 米 国 又 は 外 国 特 許 )を<br />

用 意 しなくてはならない。 証 拠 書 類 を 揃 えることができない 場 合 、 審 査 官 は 自 らの 事 実 に 基<br />

づく 結 論 について 科 学 的 根 拠 を 具 体 的 に 説 明 しなくてはならない。<br />

主 張 される 有 用 性 が 具 体 的 又 は 実 質 的 でない 場 合 、どちらかといえば 当 業 者 は 出 願 人 が 主 張<br />

する 有 用 性 は 具 体 的 かつ 実 質 的 ではないとするであろうことを、 一 応 の 証 明 によって 確 証 し<br />

なければならない。 一 応 の 証 明 には 次 の 要 素 がなければならない。<br />

(A) クレームされている 発 明 に 主 張 される 有 用 性 が 具 体 的 でも 実 質 的 でもなく、 十 分 に 確 立<br />

されてもいないとする 判 断 に 用 いた 根 拠 を 明 確 に 記 述 する 説 明<br />

(B) この 結 論 に 達 した 際 の 信 頼 される 事 実 に 基 づく 認 定 の 裏 付 け<br />

(C) 直 近 の 先 行 技 術 に 依 拠 する 有 用 性 を 含 め、 記 録 に 関 する 全 関 係 証 拠 の 評 価<br />

主 張 される 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 が 信 じられない 場 合 、どちらかといえば 当 業 者 は 出 願<br />

人 がクレームされている 発 明 について 主 張 する 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 は 信 じられないと<br />

するだろうことを、 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 ではないこと 一 応 の 証 明 によって<br />

立 証 しなければならない。 一 応 の 証 明 には 次 の 要 素 がなければならない。<br />

(A) 主 張 される 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 は 信 じられないとする 判 断 に 用 いられた 根 拠 を 明<br />

確 に 記 述 する 説 明<br />

(B) この 結 論 に 達 した 際 の 信 頼 される 事 実 に 基 づく 認 定 の 裏 付 け<br />

(C) 直 近 の 先 行 技 術 に 依 拠 する 有 用 性 を 含 め、 記 録 に 関 する 全 関 係 証 拠 の 評 価<br />

42


具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 が 開 示 されていない、 若 しくは 十 分 に 確 立 されていない 場 合 、 出<br />

願 人 は 有 用 性 を 主 張 していないこと、 及 び 審 査 官 が 審 査 する 記 録 に、 既 知 の 十 分 に 確 立 され<br />

た 有 用 性 がないことを、 具 体 的 かつ 実 質 的 な 有 用 性 がないことを 一 応 の 証 明 によって 立 証 し<br />

さえすればよい。<br />

本 庁 審 査 官 は、 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 最 初 の 拒 絶 を 述 べるに 当 たって 特 定 性 を 用 いること、<br />

及 びその 一 応 の 証 明 においてなされた 事 実 に 基 づく 結 論 を 裏 付 けることは 必 須 である。<br />

特 定 性 を 用 いることによって、 出 願 人 は 拒 絶 を 述 べる 際 に 特 許 商 標 庁 が 行 った 推 論 を 特 定 す<br />

ることができ、また、それらの 推 論 に 正 しく 対 応 することができる。<br />

V. 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 けるための 審 査 官 による 証 拠 要 請<br />

適 切 な 場 合 、 特 許 商 標 庁 はクレームされている 発 明 に 主 張 される 有 用 性 を 実 証 することを 出<br />

願 人 に 求 めることができる。In re Pottier, 376 F.2d 328, 330, 153 USPQ 407, 408 (CCPA<br />

1967)(「プロセスの 実 施 可 能 性 が 当 業 者 によって 疑 わしいと 判 断 されるだろう 場 合 、 審 査 官<br />

が 実 施 可 能 性 の 証 拠 を 求 めることは 間 違 いではない。」)を 参 照 のこと。In re Jolles, 628 F.2d<br />

1322, 1327, 206 USPQ 885, 890 (CCPA 1980);In re Citron, 325 F.2d 248, 139 USPQ 516<br />

(CCPA 1963);In re Novak, 306 F.2d 924, 928, 134 USPQ 335, 337 (CCPA1962)も 参 照 のこ<br />

と。In re Citron 事 件 において 裁 判 所 は、「 主 張 されている 有 用 性 が 技 術 知 識 に 照 らして 信<br />

じ 難 いと 思 われる、 又 は 事 実 上 誤 りである 場 合 、 出 願 人 は 受 入 可 能 な 証 拠 によって 主 張 する<br />

有 用 性 を 立 証 しなければならない。」とした。325 F.2d at 253、139 USPQat 520。 裁 判 所 は、<br />

「 癌 治 療 に 関 する 技 術 的 知 識 の 欠 如 及 び 当 該 主 張 を 実 証 する 臨 床 データの 不 足 を 考 慮 し」 特<br />

許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 を 支 持 する 審 判 部 の 決 定 を 維 持 した。325 F.2d at 252、139 USPQat<br />

519( 強 調 は 原 文 のまま)。 裁 判 所 はこのように、 使 用 の 説 明 が 信 じ 難 い 又 は 誤 解 を 与 える 場 合 、<br />

出 願 人 に、より 高 い 立 証 責 任 を 課 した。このような 場 合 、 審 査 官 はその 使 用 に 異 議 を 唱 えて<br />

実 施 可 能 性 の 十 分 な 証 拠 を 求 めなくてはならない。 本 権 限 の 目 的 は、さもなければ 欠 陥 のあ<br />

る 事 実 に 基 づいている 発 明 の 実 施 可 能 性 の 根 拠 を 出 願 人 が 是 正 できるようにすることである。<br />

これは 是 正 的 権 限 ( 例 えば、 出 願 人 が 当 該 出 願 の 記 録 の 事 実 に 矛 盾 する 主 張 に 裏 付 けを 与 えら<br />

れるように 証 拠 が 求 められる)であるので、 本 庁 審 査 官 は、 事 実 に 基 づく 記 録 が 出 願 人 の 主 張<br />

に 関 して 不 備 が 在 る 理 由 だけでなく、 必 要 に 応 じて、その 問 題 を 正 すために 出 願 人 が 提 出 す<br />

ることのできる 証 拠 証 明 の 種 類 も 示 さなくてはならない。<br />

追 加 証 拠 の 要 求 はめったに 課 すべきでなく、 主 張 される 有 用 性 の 科 学 的 信 頼 性 に 裏 付 けを 与<br />

えることが 必 要 な 場 合 に 限 る( 例 えば、 主 張 される 有 用 性 が 記 録 の 証 拠 及 び 現 在 の 科 学 知 識 と<br />

一 致 しない 場 合 )。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は 最 近 、 次 のように 述 べている。「 当 業 者 が、 主 張 さ<br />

れる 有 用 性 に 合 理 的 疑 問 を 持 つであろうことを 示 す 証 拠 を 特 許 商 標 庁 が 提 示 した 後 にのみ、<br />

当 該 発 明 者 の 主 張 する 有 用 性 を 当 業 者 に 納 得 させるに 十 分 な 反 論 証 拠 を 提 供 するという 責 任<br />

は 出 願 人 へ 転 換 する。」In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed. Cir. 1995) ( 引<br />

用 は In re Bundy, 642 F.2d 430, 433, 209 USPQ 48, 51 (CCPA 1981))。Brana 事 件 におい<br />

て 裁 判 所 は、 化 合 物 を 用 いる 癌 治 療 の 目 的 それ 自 体 は 信 じ 難 い 有 用 性 を 示 唆 していないと 指<br />

摘 した。 先 行 技 術 が「 様 々な 腫 瘍 モデルの 化 学 療 法 薬 として 有 効 なことがインビボで 証 明 さ<br />

れていると 出 願 人 が 主 張 する 化 合 物 と 構 造 的 に 類 似 する 化 合 物 を 明 らかにしている 場<br />

合 、・・・ 当 業 者 には、 表 面 上 、 出 願 人 の 主 張 する 有 用 性 に 合 理 的 疑 いを 持 つ 根 拠 はないであろ<br />

う」。51 F.3d at 1566、34 USPQ2d at 1441。 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。<br />

43


「 審 査 官 がさらに 試 験 データを 求 めることは 明 らかに 不 適 切 である。 証 拠 としてデータは 十<br />

分 であって、おそらく 出 願 人 に 不 当 な 負 担 を 負 わせる 以 外 の 何 ものでもないようである。」<br />

In re Isaacs, 347 F.2d 887, 890, 146 USPQ 193, 196 (CCPA 1965)。<br />

VI. 有 用 性 の 欠 如 による 一 応 の 拒 絶 に 対 する 反 論 の 考 慮<br />

特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 が 適 切 に 課 せられると、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 対 応<br />

して 課 せられる 拒 絶 とともに、 一 応 の 証 明 に 反 論 する 責 任 は 出 願 人 へ 転 換 する。In re Oetiker,<br />

977 F.2d 1443, 1445, 24 USPQ2d 1443, 1444 (Fed. Cir. 1992)(「 審 査 官 は、 先 行 技 術 の 確<br />

認 又 はその 他 の 理 由 に 基 づいて、 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 をする 最 初 の 立 証 責 任 を 担 う。そ<br />

の 責 任 が 果 たされると、 証 拠 又 は 意 見 書 を 提 出 する 責 任 は 出 願 人 へ 転 換 する・・・。これに 応 え<br />

て 証 拠 又 は 意 見 書 が 出 願 人 により 提 出 された 後 、 特 許 性 は 当 該 記 録 全 体 に 基 づき、 証 拠 の 優<br />

位 性 により、 意 見 書 の 説 得 力 を 適 切 に 検 討 して 決 定 される。」) 出 願 人 は 次 に 挙 げる 任 意 の 組<br />

み 合 わせを 用 いてこれを 行 うことができる。 即 ち、 当 該 クレーム、 意 見 書 又 は 論 拠 への 補 正 、<br />

若 しくは 特 許 法 施 行 規 則 1.132 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 において 提 出 される 新 たな 証<br />

拠 、 若 しくは 刊 行 物 である。 出 願 人 により 提 出 される 新 たな 証 拠 は、 当 該 拒 絶 において 提 起<br />

された 問 題 点 に 関 するものでなくてはならない。 例 えば、 結 論 とそれを 裏 付 ける 証 拠 とのつ<br />

ながりを 確 立 せずそれらの 結 論 が 示 されている 宣 言 書 、 若 しくは 単 に 意 見 を 表 明 するだけの<br />

宣 言 書 は、 一 応 の 証 明 に 対 する 反 論 の 限 定 的 証 明 力 しかないかもしれない。In re Grunwell,<br />

609 F.2d 486, 203 USPQ 1055 (CCPA 1979); In re Buchner, 929 F.2d 660, 18 USPQ2d 1331<br />

(Fed. Cir. 1991)。MPEP 第 716.01(a) 条 乃 至 第 716.01(c) 条 を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 が 一 応 の 拒 絶 に 対 して 応 答 した 場 合 、 本 庁 審 査 官 は 原 開 示 、 一 応 の 証 明 を 確 立 した 際<br />

に 依 存 した 証 拠 、クレームの 補 正 、 及 び 主 張 された 具 体 的 かつ 実 質 的 で 信 頼 できる 有 用 性 の<br />

裏 付 けとして 出 願 人 により 提 出 された 新 たな 論 拠 若 しくは 証 拠 を 検 討 しなくてはならない。<br />

本 庁 審 査 官 は、 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 に 対 する 応 答 の 実 体 要 素 ごとに 認 識 し、 十 分<br />

検 討 して 答 えることが 重 要 である。 当 該 記 録 の 全 体 が、 主 張 される 有 用 性 は 具 体 的 、 実 体 的<br />

かつ 信 用 できないことを 示 し 続 けている 場 合 に 限 り、 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 は 主 張<br />

されるべきである。 当 該 記 録 が 全 体 としてどちらかといえば、クレームされている 発 明 に 主<br />

張 される 有 用 性 が 当 業 者 によって 信 頼 できると 認 められるようになると、 特 許 商 標 庁 は 拒 絶<br />

を 主 張 することはできない。In re Rinehart, 531 F.2d 1048, 1052, 189 USPQ 143, 147 (CCPA<br />

1976)。<br />

VII. 有 用 性 に 関 する 証 拠 の 評 価<br />

治 療 目 的 であるなしにかかわらず、 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 けるため 出 願 人 によって 提 供 さ<br />

れなければならない 証 拠 の 量 若 しくは 性 質 については 定 まっていない。 正 しくは、 主 張 され<br />

る 有 用 性 を 裏 付 けるために 必 要 な 証 拠 の 質 及 び 量 は、 何 がクレームされるか(Ex parte<br />

Ferguson, 117 USPQ 229 (Bd. App. 1957))そして、 主 張 される 有 用 性 が 確 立 された 科 学 的 原<br />

則 及 び 判 断 と 矛 盾 するように 見 えるかどうかによって 変 わる。In re Gazave, 379 F.2d 973,<br />

978, 154 USPQ 92, 96 (CCPA 1967); In re Chilowsky, 229 F.2d 457, 462, 108 USPQ 321,<br />

325 (CCPA 1956)。さらに 言 うと、 出 願 人 は 必 ずしも、 主 張 される 有 用 性 が「 合 理 的 疑 義 の 余<br />

地 なく」 真 正 であることを 確 証 するのに 十 分 な 証 拠 を 提 供 する 必 要 はない。In re Irons,340<br />

F.2d 974, 978, 144 USPQ 351, 354 (CCPA 1965)。 出 願 人 は、 主 張 される 有 用 性 を 統 計 的 に<br />

44


確 実 なものとして 立 証 するような 証 拠 を 提 供 する 必 要 もない。Nelson v. Bowler, 626 F.2d<br />

853, 856-57, 206 USPQ 881, 883-84 (CCPA 1980)( 有 用 性 の 証 拠 は 統 計 的 に 有 意 でないとす<br />

る 審 判 部 の 審 決 破 棄 、 並 びに Bowler の 反 論 却 下 )。 裁 判 所 は、 試 験 がその 反 応 を 合 理 的 に 予<br />

測 しているとき 厳 密 な 相 互 関 係 を 必 要 としないことを 指 摘 した。Rey-Bellet v. Englehardt,<br />

493 F.2d 1380, 181 USPQ 453 (CCPA 1974) ( 動 物 試 験 のデータは、「 動 物 への 影 響 と 人 間 に<br />

最 終 的 に 観 察 された 影 響 との 間 に 満 足 すべき 相 互 関 係 」が 存 在 する 場 合 、 主 張 されるヒトの<br />

治 療 有 用 性 にとって 適 切 である)も 参 照 のこと。それどころか、 証 拠 が、 全 体 として 考 えた 場<br />

合 、 主 張 される 有 用 性 はどちらかと 言 えば 真 正 であるとの 結 論 に 当 業 者 を 導 くならば、それ<br />

で 十 分 である。<br />

2107.03 主 張 される 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 に 関 する 特 別 な 考 慮<br />

連 邦 裁 判 所 は、 出 願 人 が 薬 理 学 的 若 しくは 治 療 的 有 用 性 を 合 理 的 に 裏 付 ける 証 拠 を 提 供 して<br />

いる 場 合 には、そのような 有 用 性 の 欠 如 を 主 張 する 特 許 商 標 庁 による 拒 絶 を 一 貫 して 覆 して<br />

いる。 従 って、 本 庁 審 査 官 は、 主 張 される 治 療 的 若 しくは 薬 理 学 的 有 用 性 の 裏 付 けとして 提<br />

供 される 証 拠 の 審 査 においては 特 に 慎 重 でなくてはならない。<br />

I. 証 拠 と 主 張 される 有 用 性 との 合 理 的 な 相 互 関 係<br />

一 般 事 項 として、 化 合 物 の 薬 理 学 的 活 性 若 しくはその 他 の 生 物 活 性 の 証 拠 は、 問 題 となって<br />

いる 活 性 と 主 張 される 有 用 性 との 間 に 合 理 的 な 相 互 関 係 が 存 在 する 場 合 、 主 張 される 治 療 的<br />

用 途 に 関 連 性 のあるものとなる。Cross v. Iizuka, 753 F.2d 1040, 224 USPQ 739 (Fed. Cir.<br />

1985); In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206 USPQ 885 (CCPA 1980); Nelson v. Bowler, 626<br />

F.2d 853, 206 USPQ 881 (CCPA 1980)。 出 願 人 はこの 合 理 的 な 相 互 関 係 を、 化 合 物 又 は 組 成<br />

物 の 活 性 を 立 証 する 統 計 的 な 関 連 データ、 意 見 書 又 は 論 拠 、 証 拠 書 類 ( 例 えば、 科 学 雑 誌 の 記<br />

事 ) 又 はそれの 任 意 の 組 み 合 わせに 依 拠 することにより 構 築 することができる。 出 願 人 は、 化<br />

合 物 の 特 定 の 活 性 と 主 張 される 治 療 的 用 途 との 間 に 相 互 関 係 が 存 在 することを 統 計 に 基 づく<br />

確 実 な 事 柄 として 証 明 する 必 要 はなく、また、そのように 有 用 性 が 主 張 されるところのヒト<br />

の 治 療 における 成 功 の 現 実 の 証 拠 を 提 供 する 必 要 もない。 裁 判 所 が 繰 り 返 し 判 決 を 出 してい<br />

るとおり、 必 要 なことは、 活 性 と 主 張 される 用 途 との 間 の 合 理 的 な 相 互 関 係 だけである。<br />

Nelson v. Bowler, 626 F.2d 853, 857, 206 USPQ 881, 884 (CCPA 1980)。<br />

II. 確 立 された 有 用 性 のある 化 合 物 との 構 造 的 類 似<br />

裁 判 所 は、 新 たな 化 合 物 の 治 療 的 有 用 性 についての 主 張 を 支 えるものとして、 特 定 の 治 療 的<br />

又 は 薬 理 学 的 有 用 性 を 有 することが 知 られる 化 合 物 との 構 造 的 類 似 性 があることの 証 拠 を 常<br />

に 確 認 してきた。In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206 USPQ 885 (CCPA 1980)において、クレ<br />

ームされた 化 合 物 はダウノルビシン 及 びドキソルビシンとの 密 接 な 構 造 的 関 係 が 認 められる<br />

ことに 基 づいて 有 用 性 を 有 することが 確 認 され、 薬 理 学 的 活 性 はそれらの 化 合 物 と 共 有 され<br />

た。このどちらの 化 合 物 も 癌 の 化 学 療 法 に 有 効 であることが 知 られていた。 既 存 の 化 合 物 と<br />

密 接 な 構 造 的 類 似 性 がある 証 拠 は、 抗 がん 剤 のスクリーニングで 慣 習 的 に 用 いられる 動 物 で<br />

クレームされた 化 合 物 の 実 質 的 活 性 を 実 証 する 証 拠 と 併 用 して 提 出 された。このような 証 拠<br />

は、 当 業 者 が、 主 張 される 有 用 性 が 信 頼 できるとするかどうかの 判 断 に 当 たって 適 切 に 重 要<br />

視 されなくてはならない。 本 庁 審 査 官 は、 構 造 的 関 係 の 存 在 だけでなく、その 構 造 的 類 似 性<br />

45


が 当 該 出 願 人 の 有 用 性 の 主 張 に 関 連 性 があると 信 じられる 理 由 説 明 のため、 出 願 人 又 は 宣 言<br />

人 により 使 用 される 論 拠 も 評 価 しなくてはならない。<br />

III. インビトロ 検 査 又 は 動 物 実 験 のデータは 治 療 的 有 用 性 を 裏 付 けるのに 十 分 である<br />

特 定 の 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 に 対 して 合 理 的 に 相 関 する 場 合 、インビトロ 試 験 又 は 動 物<br />

モデル 実 験 若 しくはそれらの 組 み 合 わせで 生 成 されるデータは、ほとんどと 言 っていいほど、<br />

化 合 物 、 組 成 物 又 はプロセスの 治 療 的 又 は 薬 理 学 的 有 用 性 を 立 証 するのに 十 分 である。 特 許<br />

法 第 101 条 が 特 許 の 行 方 を 左 右 する 争 点 となった 治 療 法 の 発 明 に 関 する 事 例 を 大 まかに 見 直<br />

してみると、 連 邦 裁 判 所 はとりわけ 実 施 不 可 能 性 を 理 由 に 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 を 受<br />

け 入 れないという 事 実 が 明 らかである。 出 願 人 が、 主 張 される 治 療 的 有 用 性 を 裏 付 ける 合 理<br />

的 な 証 拠 を 提 供 したそれらの 事 例 において、ほとんど 一 様 に、 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶<br />

は 覆 されている。 参 照 事 例 として、In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ 1436 (Fed. Cir. 1995);<br />

Cross v. Iizuka, 753 F.2d 1040, 224 USPQ 739 (Fed. Cir. 1985); In re Jolles, 628 F.2d<br />

1322, 206 USPQ 885 (CCPA 1980); Nelson v. Bowler, 626 F.2d 853, 856, 206 USPQ 881, 883<br />

(CCPA 1980); In re Malachowski, 530 F.2d 1402, 189 USPQ 432 (CCPA 1976); In re Gaubert,<br />

530 F.2d 1402, 189 USPQ 432 (CCPA 1975); In re Gazave, 379 F.2d 973, 154 USPQ 92 (CCPA<br />

1967); In re Hartop, 311 F.2d 249, 135 USPQ 419 (CCPA 1962); In re Krimmel, 292 F.2d<br />

948, 130 USPQ 215 (CCPA 1961)。それらの 事 例 において、クレームされている 発 明 は 実 施 不<br />

能 であるとする 特 許 商 標 庁 の 認 定 に、 出 願 人 が 反 論 できる 関 連 証 拠 を 何 も 提 出 できなかった<br />

事 例 のみ、 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 が 裁 判 所 によって 支 持 された。In re Citron, 325 F.2d<br />

248, 253, 139 USPQ 516, 520 (CCPA 1963)( 裏 付 けのない、 又 は 科 学 的 信 頼 性 のない 未 特 定<br />

の 生 物 抽 出 物 の 治 療 的 有 用 性 );In re Buting, 418 F.2d 540, 543, 163 USPQ 689, 690 (CCPA<br />

1969) ( 記 録 は、 問 題 となっている 化 合 物 のひとつのクラスが 異 種 の 悪 性 腫 瘍 の 治 療 に 有 用 で<br />

あるとする 主 張 について、 信 頼 できる 根 拠 を 確 立 していなかった);In re Novak, 306 F.2d 924,<br />

134 USPQ 335 (CCPA 1962)(クレームされた 化 合 物 は、 有 用 性 のクレームが 根 拠 とする 生 理 学<br />

的 活 性 をもたらす 能 力 を 有 しなかった)。 対 して、In re Buting to In re Gardner, 475 F.2d<br />

1389, 177 USPQ 396 (CCPA 1973), reh'g denied, 480 F.2d 879 (CCPA 1973)においては、<br />

同 裁 判 所 は、 同 じ 属 の 有 用 性 は 1 つの 種 の 有 用 性 の 証 明 を 介 して 裏 付 けられることが 判 明 す<br />

るとした。どの 場 合 にも 連 邦 裁 判 所 は、 主 張 される 有 用 性 をヒトの 臨 床 試 験 のデータで 裏 付<br />

けるよう 出 願 人 に 求 めていない。<br />

出 願 人 が、 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 けるためインビトロ 試 験 又 は 動 物 実 験 若 しくはその 療 法<br />

のデータ、 及 びそのデータが 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 ける 理 由 の 説 明 を 提 出 した 場 合 、 特 許<br />

商 標 庁 は、そのデータ 及 びその 説 明 は 当 業 者 にとって、 主 張 される 有 用 性 の 合 理 的 予 測 とな<br />

ると 見 えるかどうかを 判 定 する。 参 照 事 例 として、Ex parte Maas, 9 USPQ2d 1746 (Bd. Pat.<br />

App. & Inter. 1987); Ex parte Balzarini, 21 USPQ2d 1892 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)。<br />

本 庁 審 査 官 は、 慎 重 に、この 問 題 に 関 する 当 業 者 の 結 論 に 影 響 を 与 える 可 能 性 があるすべて<br />

の 要 因 を 評 価 しなければならない。これらの 要 因 には、 試 験 パラメータ、 動 物 の 選 択 、 治 療<br />

される 特 定 の 疾 患 に 対 する 活 性 の 関 係 、 化 合 物 又 は 組 成 物 の 特 性 、 提 供 されるデータの 相 対<br />

的 重 要 性 、 並 びに 何 よりも、 提 供 される 情 報 が 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 けると 信 じられる 理<br />

由 について 出 願 人 により 提 示 される 説 明 がある。 提 供 されるデータが 主 張 される 有 用 性 に 一<br />

致 する 場 合 、 特 許 商 標 庁 は 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 を 主 張 することはできない。<br />

46


証 拠 は、 主 張 される 有 用 性 が 関 係 している 特 定 の 疾 患 又 は 病 態 について 当 該 技 術 分 野 におい<br />

て 認 められている 動 物 モデルのデータ 形 式 である 必 要 はない。 出 願 人 が、 主 張 される 有 用 性<br />

と 合 理 的 に 関 連 付 けるいかなる 試 験 のデータも、 実 質 的 に 評 価 されるべきである。 従 って、<br />

出 願 人 は 特 定 の 動 物 モデルを 用 いて 生 成 されたデータを、そのデータが 主 張 される 有 用 性 を<br />

裏 付 ける 理 由 についての 適 切 な 説 明 とあわせて 提 供 することができる。 問 題 の 試 験 が 当 該 産<br />

業 分 野 で 認 められたモデルであることの 証 明 がないことは、 動 物 モデルのデータが 実 際 に 主<br />

張 される 有 用 性 に 関 係 しているかどうかを 決 めるものではない。 従 って、 当 業 者 がその 動 物<br />

実 験 をヒトにおける 有 用 性 を 合 理 的 に 予 測 すると 認 める 場 合 、それらの 実 験 の 証 拠 は 主 張 さ<br />

れる 有 用 性 の 信 頼 性 を 裏 付 けるために 十 分 であると 考 えるべきである。In re Hartop, 311<br />

F.2d 249, 135 USPQ 419 (CCPA 1962); In re Krimmel, 292 F.2d 948, 953, 130 USPQ 215,<br />

219 (CCPA 1961); Ex parte Krepelka, 231 USPQ 746 (Bd. Pat. App. & Inter. 1986)。 本<br />

庁 審 査 官 は、ヒトの 病 態 に 関 する 動 物 モデルが 当 該 出 願 以 前 に 立 証 されていないというだけ<br />

の 理 由 で 証 拠 に 説 得 力 がないと 考 えないよう 注 意 しなくてはならない。 参 照 として、In re<br />

Chilowsky, 229 F.2d 457, 461, 108 USPQ 321, 325 (CCPA 1956)(「 何 かが 明 らかに 以 前 に<br />

成 されていないということだけ、それ 自 体 では、その 方 法 を 開 示 すると 主 張 するすべての 出<br />

願 を 拒 絶 する 十 分 な 理 由 とならない」);In re Wooddy, 331 F.2d 636, 639, 141 USPQ 518,<br />

520 (CCPA 1964) (「 現 在 の 時 点 で、クレームされた 方 法 はクレームされた 様 式 で 作 動 するか<br />

どうかを 確 信 している 者 は 全 くないようである。しかしながら、 絶 対 確 実 なことは 法 律 で 求<br />

められていない。 何 かが 明 らかに 以 前 に 成 されていないということだけ、それ 自 体 では、そ<br />

の 方 法 を 開 示 すると 主 張 するすべての 出 願 を 拒 絶 する 十 分 な 理 由 とはならない。」)。<br />

IV. ヒトの 臨 床 データ<br />

本 庁 審 査 官 は 出 願 人 に、ヒトの 臨 床 試 験 の 証 拠 を 提 供 するという 不 必 要 な 負 担 を 課 してはな<br />

らない。ヒトの 疾 患 の 治 療 に 関 する 発 明 の 有 用 性 を 確 立 するため、 出 願 人 にヒトの 臨 床 試 験<br />

のデータを 提 出 することを 求 める 判 例 法 はない(In re Isaacs, 347 F.2d 889, 146 USPQ 193<br />

(CCPA 1963);In re Langer, 503 F.2d 1380, 183 USPQ 288 (CCPA 1974)を 参 照 )。これは、<br />

クレームに 含 まれるヒトの 疾 患 について 当 該 技 術 分 野 において 認 められる 動 物 モデルが 存 在<br />

しない 場 合 であっても 変 わらない。Ex parte Balzarini, 21 USPQ2d 1892 (Bd. Pat. App. &<br />

Inter. 1991) (ヒトの 臨 床 データはクレームされている 発 明 の 有 用 性 を 実 証 する 必 要 はない。<br />

これは、 当 業 者 がクレームされている 治 療 組 成 物 の 有 効 性 及 びクレームされているヒトの 治<br />

療 方 法 の 実 施 可 能 性 を 立 証 するその 他 の 証 拠 を 容 認 しない 場 合 であっても 変 わらない)。 薬 物<br />

を 用 いたヒトの 臨 床 試 験 に 入 れるようになる 前 に、スポンサー( 多 くの 場 合 、 出 願 人 )はとり<br />

わけそれらの 当 業 者 ( 例 えば、 食 品 医 薬 品 局 )に 対 して 当 該 調 査 は 成 功 し 得 るという 説 得 力 の<br />

ある 理 由 を 提 供 しなければならない。そのような 理 由 は、 当 該 調 査 は 成 功 し 得 るとするスポ<br />

ンサーの 期 待 の 根 拠 となるであろう。 第 1 相 試 験 即 ち 臨 床 調 査 の 第 1 相 の 計 画 を 決 定 するた<br />

めには、その 薬 物 がどの 程 度 有 効 であるか、 若 しくはどの 程 度 有 効 たり 得 るかについていく<br />

らかの 信 頼 できる 理 由 が 必 要 でとなろう。 従 って、 一 般 に、 出 願 人 が 治 療 用 製 品 又 はプロセ<br />

スについてヒトの 臨 床 試 験 を 開 始 した 場 合 、 本 庁 審 査 官 は、 出 願 人 がその 試 験 の 保 護 対 象 は<br />

主 張 される 治 療 的 有 用 性 を 有 するとの 合 理 的 予 測 を 立 証 していると 推 定 しなくてはならない。<br />

47


V. 安 全 性 及 び 有 効 性 の 考 慮<br />

特 許 商 標 庁 は、その 特 許 出 願 の 審 査 を 特 許 法 上 の 要 件 から 外 れないようにしなければならな<br />

い。その 他 の 政 府 機 関 が、 薬 物 の 広 告 、 使 用 、 販 売 又 は 流 通 に 関 する 法 令 によって 制 定 され<br />

た 基 準 への 適 合 を 確 実 なものとする 責 任 を 与 えられている。 食 品 医 薬 品 局 は 2 つの 部 分 から<br />

成 る 判 定 方 法 に 従 って 試 験 の 承 認 を 与 える。その 判 定 方 法 に 基 づき、スポンサーは、 当 該 調<br />

査 が 不 当 なかつ 重 大 な 病 気 又 は 損 傷 のリスクを 有 しないこと、 及 び、 当 該 研 究 に 満 足 できる<br />

理 由 があることを 証 明 しなければならない。 審 査 事 項 として、 化 合 物 が 有 効 であると 信 じる<br />

理 由 がなければならない。 食 品 医 薬 品 局 により 審 査 される 用 途 が 明 細 書 に 記 載 されていない<br />

場 合 、 食 品 医 薬 品 局 の 審 査 は 特 許 法 第 101 条 の 要 件 を 満 たさないかもしれない。しかし、 審<br />

査 される 用 途 が 当 該 明 細 書 に 記 載 されるものであれば、 本 庁 審 査 官 は 有 用 性 に 異 議 を 申 し 立<br />

てることにひどく 抵 抗 を 感 じるに 違 いない。このような 場 合 食 品 医 薬 品 局 の 専 門 家 は、 当 該<br />

薬 物 の 合 理 性 又 は 主 張 される 有 用 性 が 根 拠 とする 調 査 研 究 を 査 定 して、それが 満 足 できると<br />

判 定 したのである。<br />

従 って、 有 用 性 に 異 議 を 申 し 立 てる 際 、 本 庁 審 査 官 は、 主 張 される 有 用 性 に 妥 当 な 理 由 がな<br />

く 当 該 問 題 解 決 のため 議 会 により 指 名 された 専 門 家 が 反 対 の 結 論 を 出 したとしても、 自 らの<br />

職 責 を 担 うことができるはずである。「 食 品 医 薬 品 局 の 認 可 は 特 許 法 の 意 義 の 範 囲 内 で 化 合<br />

物 を 有 用 であるとする 必 要 条 件 ではない。」In re Brana, 51 F.3d 1560, 34 USPQ2d 1436 (Fed.<br />

Cir. 1995)( 引 用 は Scott v. Finney, 34 F.3d 1058, 1063, 32 USPQ2d 1115, 1120 (Fed. Cir.<br />

1994))。<br />

従 って、 出 願 人 は、 発 明 がクレームのとおり 機 能 することを 示 す 証 拠 を 提 供 しなければなら<br />

ないことがある 一 方 で、 本 庁 審 査 官 がヒトの 治 療 の 安 全 性 若 しくは 有 効 性 の 程 度 について 証<br />

拠 を 求 めることは 適 切 ではない。In re Sichert, 566 F.2d 1154, 196 USPQ 209 (CCPA 1977);<br />

In re Hartop, 311 F.2d 249, 135 USPQ 419 (CCPA 1962); In re Anthony, 414 F.2d 1383,<br />

162 USPQ 594 (CCPA 1969); In re Watson, 517 F.2d 465, 186 USPQ 11 (CCPA 1975); In re<br />

Krimmel, 292 F.2d 948, 130 USPQ 215 (CCPA 1961); Ex parte Jovanovics, 211 USPQ 907 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1981)を 参 照 のこと。<br />

VI. 特 定 の 病 態 の 治 療<br />

以 前 に 有 効 な 治 療 法 が 存 在 しない 疾 患 を 治 療 する 方 法 に 関 するクレームは、 特 許 法 第 101 条<br />

の 適 合 性 に 関 する 慎 重 な 審 査 の 理 由 となる。ヒトの 疾 患 治 療 に 主 張 される 有 用 性 の 信 頼 性 は、<br />

現 時 点 での 科 学 的 理 解 はそのような 課 題 はどこで 不 可 能 とするかを 立 証 することがより 困 難<br />

となろう。このような 判 定 においては 常 に、 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 の 最 先 端 の 十 分 な 理 解<br />

が 必 要 となる。 例 えば、1980 年 代 以 前 においては、ヒトの 癌 治 療 において 主 張 される 用 途 は<br />

「 信 じ 難 い」とみなされる 事 例 が 多 かった。In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206 USPQ 885 (CCPA<br />

1980); In re Buting, 418 F.2d 540, 163 USPQ 689 (CCPA 1969); Ex parte Stevens, 16 USPQ2d<br />

1379 (Bd. Pat. App. & Inter. 1990); Ex parte Busse, 1 USPQ2d 1908 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1986); Ex parte Krepelka, 231 USPQ 746 (Bd. Pat. App. & Inter. 1986); Ex parte Jovanovics,<br />

211 USPQ 907 (Bd. Pat. App. & Inter. 1981)。しかし、 疾 患 に 既 知 の 治 療 法 が 存 在 しない<br />

という 事 実 は、そのような 発 明 は 有 用 性 がないとする 結 論 の 根 拠 として 機 能 しない。むしろ、<br />

本 庁 審 査 官 は 当 該 発 明 について 主 張 される 有 用 性 が 当 該 出 願 において 開 示 された 情 報 に 基 づ<br />

き 信 頼 できるかどうかを 判 断 しなければならない。 主 張 される 有 用 性 がそれらについて 信 用<br />

48


できないクレームに 限 り、 拒 絶 されなくてはならない。そのような 場 合 、 特 許 商 標 庁 は 出 願<br />

人 によりクレームされているものを 慎 重 に 審 査 しなくてはならない。クレームされている 発<br />

明 が 治 療 不 能 の 疾 患 症 状 の 治 療 に 有 用 であるとの 主 張 は、ごくわずかな 量 の 証 拠 又 は 裏 付 け<br />

に 基 づいて 当 業 者 により 信 頼 できると 考 えられるかもしれない。その 一 方 で、クレームされ<br />

た 発 明 は 疾 患 の「 治 療 」に 有 用 となるとの 主 張 は、 当 業 者 により 有 用 であると 考 えられるに<br />

は 著 しく 大 量 の 証 拠 の 裏 付 けを 必 要 とするかもしれない。In re Sichert, 566 F.2d 1154, 196<br />

USPQ 209 (CCPA 1977); In re Jolles, 628 F.2d 1322, 206 USPQ 885 (CCPA 1980)。Ex parte<br />

Ferguson, 117 USPQ 229 (Bd. Pat. App. & Inter. 1957)も 参 照 のこと。<br />

これらの 場 合 、 食 品 医 薬 品 局 は、 生 命 にかかわる 病 気 及 び 重 度 に 進 行 する 病 気 を 治 療 するた<br />

めに 用 いられる 薬 物 の 臨 床 試 験 を 関 係 者 が 実 施 できるようにする 規 則 を、 代 替 療 法 が 存 在 し<br />

ない 場 合 でも、 制 定 していることに 留 意 することが 重 要 である。21 CFR 312.80-88 (1994)<br />

を 参 照 のこと。これらの 規 則 には、 治 療 法 の 有 効 性 を 評 価 する 資 格 を 有 する 専 門 家 は、 不 治<br />

の 病 気 又 は 以 前 には 治 療 不 可 能 な 病 気 のための 薬 物 の 臨 床 試 験 を 実 施 するに 十 分 な 根 拠 を 確<br />

認 することができ、 確 認 することが 多 いという 認 識 が 内 在 する。 従 って、 妥 当 な 論 拠 によっ<br />

て 裏 付 けされた、 成 功 への 合 理 的 期 待 があることを 示 している 当 該 技 術 分 野 の 専 門 家 の 宣 誓<br />

供 述 証 拠 は、 通 常 、そのような 有 用 性 は 信 頼 できるとする 立 証 に 十 分 としなくてはならない。<br />

49


2111 クレームの 解 釈 ; 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈<br />

クレームはそれらの 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 がなされなくてはならない<br />

特 許 審 査 中 、 係 属 中 のクレームは「 明 細 書 と 一 致 するそれらの 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 」がさ<br />

れなくてはならない。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 の 大 法 廷 の 判 決 は Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d<br />

1303, 75 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 2005)において、 米 国 特 許 商 標 庁 は「 最 も 広 く 合 理 的 な 解<br />

釈 」 基 準 を 用 いることを 明 示 的 に 確 認 した。<br />

「 特 許 商 標 庁 (「PTO」という)は、 単 にクレームの 文 言 に 基 づくのみならず「 当 業 者 により 解<br />

釈 されるであろうように 明 細 書 に 照 らして」 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 をクレームに 与 えて、 特<br />

許 出 願 のクレームの 範 囲 を 特 定 する。In re Am. Acad. of Sci. Tech. Ctr., 367 F.3d 1359,<br />

1364[, 70 USPQ2d 1827] (Fed. Cir. 2004)。 実 際 に、 特 許 商 標 庁 の 規 則 は、 出 願 クレームは<br />

『 明 細 書 の 残 り 部 分 に 記 載 される 発 明 と 一 致 しなくてはならず,かつ,クレームにおいて 使<br />

用 される 用 語 及 び 表 現 は,クレームの 中 の 用 語 の 意 味 が 発 明 の 説 明 を 参 照 することによって<br />

確 認 できるように, 発 明 の 説 明 の 中 に 明 瞭 な 裏 付 け 又 は 先 行 根 拠 を 見 出 せるものでなければ<br />

ならない』ことを 求 めている。37 CFR 1.75(d)(1).」<br />

415 F.3d at 1316、75 USPQ2d at 1329。 次 も 参 照 のこと。In re Hyatt, 211 F.3d 1367, 1372,<br />

54 USPQ2d 1664, 1667 (Fed. Cir. 2000)。 出 願 人 は 手 続 処 理 中 いつでもクレームを 補 正 する<br />

機 会 があり、 審 査 官 による 広 い 解 釈 は、 一 旦 特 許 を 交 付 されると、 当 該 クレームが 認 められ<br />

ているよりも 広 く 解 釈 される 可 能 性 を 減 少 させる。In re Prater, 415 F.2d 1393, 1404-05,<br />

162 USPQ 541, 550-51 (CCPA 1969)(クレーム 9 は 気 体 質 量 の 光 学 分 析 により 生 成 されるデー<br />

タを 分 析 するプロセスに 向 けられた。プロセスは、そのデータを 数 式 展 開 させることによっ<br />

て 解 析 されるデータを 選 択 することで 構 成 された。 審 査 官 は 特 許 法 第 101 条 及 び 第 102 条 に<br />

基 づく 拒 絶 を 行 った。 特 許 法 第 102 条 の 拒 絶 において、 審 査 官 は、 当 該 クレームは 鉛 筆 と 紙<br />

に 印 をつけることで 増 幅 される 精 神 的 プロセスによって 予 見 されたと 説 明 した。 裁 判 所 は、<br />

当 該 クレームはその 機 器 を 明 示 的 に 説 明 していないので、そのプロセスを 実 行 することが 機<br />

器 使 用 に 限 定 されていないことを 認 めた。 裁 判 所 は「 明 細 書 に 照 らしてクレームを(それによ<br />

って 当 該 クレームに 明 示 的 に 記 載 される 制 限 を 解 釈 するために) 読 むことは『 明 細 書 の 制 限 を<br />

クレームに(それによって、 当 該 クレームに 論 拠 を 表 していない 開 示 された 制 限 を 暗 示 的 に 付<br />

加 することによりクレームの 範 囲 を 狭 めるために) 読 み 込 むこと』とは 全 く 異 なることを 説 明<br />

した。 同 裁 判 所 は、 出 願 人 は 後 者 、 即 ち、 保 護 対 象 の 明 細 書 からクレームへの 容 認 できない<br />

の 移 入 を 主 張 していたと 判 定 した。)In re Morris, 127 F.3d 1048, 1054-55, 44 USPQ2d 1023,<br />

1027-28 (Fed. Cir. 1997)( 裁 判 所 は、 特 許 商 標 庁 が 手 続 処 理 の 過 程 で、 裁 判 所 が 侵 害 訴 訟 に<br />

おいてクレームを 解 釈 するのと 同 じように 願 書 のクレームを 解 釈 することを 求 めていないと<br />

した。むしろ、「 特 許 商 標 庁 は、 定 義 として、またはそれ 以 外 の、 出 願 人 の 明 細 書 に 含 まれ<br />

るその 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 によって 提 供 される 可 能 性 のあるいかなる 啓 蒙 であれ 考<br />

慮 に 入 れて、 提 案 されているクレームの 用 語 に 当 業 者 により 理 解 されるであろうそれらの 通<br />

常 の 使 い 方 で 単 語 の 最 も 広 い 合 理 的 な 意 味 を 適 用 する。」)も 参 照 のこと。<br />

また、クレームの 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 は 当 業 者 が 到 達 できるであろう 解 釈 と 一 致 しなくて<br />

はならない。In re Cortright, 165 F.3d 1353, 1359, 49 USPQ2d 1464, 1468 (Fed. Cir. 1999)<br />

( 審 判 部 が、「 毛 髪 の 成 長 を 回 復 させる」というクレームの 限 定 を、 毛 髪 が 元 の 状 態 に 戻 され<br />

ることを 求 めると 解 釈 したことは、 限 定 の 正 しくない 解 釈 であるとされた。 同 裁 判 所 は、 出<br />

願 人 の 開 示 及 び、 同 一 表 現 を 用 いて 毛 髪 の 成 長 にわずかな 増 進 を 期 待 する 類 似 技 術 の 3 特 許<br />

50


の 開 示 と 一 致 するように、 当 業 者 は「 毛 髪 の 成 長 を 回 復 させる」を、クレームされた 方 法 は<br />

頭 皮 の 発 毛 量 を 促 進 させるが 頭 髪 をふさふさにするとは 限 らないことを 意 味 することに 解 釈<br />

するであろうとした。)<br />

2111.01 明 白 な 意 味<br />

I. クレームの 言 葉 は「 明 白 な 意 味 」を 与 えられなくてはならない。ただし、その 意 味 は 明 細<br />

書 に 矛 盾 しないものとする。<br />

発 行 された 特 許 のクレームは 明 細 書 、 審 査 履 歴 、 先 行 技 術 及 びその 他 のクレームに 照 らして<br />

解 釈 されるのではあるが、これは 審 査 中 に 適 用 すべきクレーム 解 釈 方 法 ではない。 審 査 時 に<br />

おいてクレームはそれらの 用 語 が 合 理 的 と 考 えられる 限 り 幅 広 く 解 釈 されねばならない。In<br />

re American Academy of Science Tech Center, 367 F.3d 1359, 1369, 70 USPQ2d 1827, 1834<br />

(Fed. Cir. 2004)( 米 国 特 許 商 標 庁 は 地 方 裁 判 所 によりクレーム 解 釈 用 いられる 基 準 と 異 なる<br />

基 準 を 用 いる。 審 査 時 においては、 米 国 特 許 商 標 庁 は 明 細 書 に 照 らしてクレームにそれらの<br />

最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 を 与 えなければならない。)これは、 当 該 クレームの 単 語 はそれらの 明<br />

白 な 意 味 を 与 えられなくてはならないことをいう。ただし、 明 白 な 意 味 が 当 該 明 細 書 に 矛 盾<br />

しない 場 合 とする。In re Zletz, 893 F.2d 319, 321, 13 USPQ2d 1320, 1322 (Fed. Cir. 1989)<br />

( 後 述 ); Chef America, Inc. v. Lamb-Weston, Inc., 358 F.3d 1371, 1372, 69 USPQ2d 1857<br />

(Fed. Cir. 2004)( 一 般 に、 意 味 が 明 確 で 議 論 の 余 地 がなく、 特 定 の 文 脈 での 使 用 はその 意 味<br />

を 変 えることを 示 されることのない、 平 易 な 英 単 語 は、それらが 言 うことを 正 確 に 意 味 する<br />

ものと 解 釈 される。 従 って、「 出 来 上 がった 衣 をつけた 生 地 をおよそ 400 o F 乃 至 850 o Fの 範<br />

囲 の 温 度 に 加 熱 する」は、オーブン 内 の 空 気 というよりも、その 生 地 を 特 定 の 温 度 に 加 熱 す<br />

ることを 必 要 とする。)<br />

II. クレームの 限 定 を 明 細 書 から 移 入 することは 不 適 切 である<br />

「クレームの 文 言 はその 発 明 の 詳 細 な 書 面 に 記 載 される 説 明 により 支 援 されると 理 解 されて<br />

いるが、 当 該 クレーム 部 分 ではない 限 定 をクレームに 移 入 しないことが 重 要 である。 例 えば、<br />

発 明 の 書 面 による 説 明 にある 特 定 の 実 施 例 は、そのクレームの 文 言 がその 実 施 例 よりも 広 い<br />

場 合 、クレームに 読 み 込 んではならない。)Superguide Corp. v. DirecTV Enterprises, Inc.,<br />

358 F.3d 870, 875, 69 USPQ2d 1865, 1868 (Fed. Cir. 2004) 。 次 も 参 照 のこと。<br />

Liebel-Flarsheim Co. v. Medrad Inc., 358 F.3d 898, 906, 69 USPQ2d 1801, 1807 (Fed. Cir.<br />

2004)( 特 許 が 単 一 の 実 施 例 のみ 記 載 している 場 合 、その 特 許 の 当 該 クレームはその 実 施 例 に<br />

限 定 されると 解 釈 しなければならないとする 主 張 を 裁 判 所 が 明 示 的 に 拒 絶 した 最 近 の 事 例 を<br />

論 じている); E-Pass Techs., Inc. v. 3Com Corp., 343 F.3d 1364, 1369, 67 USPQ2d 1947,<br />

1950 (Fed. Cir. 2003)(「 特 許 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 の 記 述 文 の 解 釈 は、 文 章 が 明 瞭 な 辞<br />

書 式 定 義 であるか、 若 しくは 好 ましい 実 施 形 態 の 記 述 であるかどうかについて 特 有 の 緊 張 性<br />

が 存 在 するので、 困 難 な 仕 事 である。 問 題 は、 制 限 を 明 細 書 から 当 該 クレームへ 不 必 要 に 取<br />

り 込 むことなく「 明 細 書 を 考 慮 して」クレームを 解 釈 することにある。」);Altiris Inc. v.<br />

Symantec Corp., 318 F.3d 1363, 1371, 65 USPQ2d 1865, 1869-70 (Fed. Cir. 2003)( 当 該<br />

明 細 書 は 単 一 の 実 施 例 のみを 論 じているが、 裁 判 所 は、 論 理 的 又 は 文 法 的 には、 当 該 方 法 ク<br />

レームの 文 言 が 当 該 方 法 工 程 の 実 施 について 明 確 な 順 序 を 与 えておらず、かつ、 当 該 明 細 書<br />

が 直 接 的 又 は 黙 示 的 に 特 定 の 順 序 を 求 めていない 方 法 クレームに、 工 程 の 明 確 な 順 序 を 読 み<br />

51


込 むことは 不 適 切 であるとした。) 下 記 IV. 段 落 も 参 照 のこと。 要 素 が 特 許 法 第 112 条 第 6 段<br />

落 ( 広 くミーンズ 又 はステップ・プラス・ファンクション 文 言 といわれることが 多 い)の 範 囲<br />

に 入 る 文 言 を 用 いてクレームされる 場 合 、 当 該 明 細 書 は 当 該 クレームに 記 載 される 機 能 に 対<br />

応 する 構 造 、 材 料 若 しくは 行 為 を 決 定 するため 調 べられねばならない。In re Donaldson, 16<br />

F.3d 1189, 29 USPQ2d 1845 (Fed. Cir. 1994) (MPEP 第 2181 条 乃 至 第 2186 条 を 参 照 のこと)。<br />

In re Zletz, supra 事 件 において 審 査 官 及 び 審 判 部 は、「 通 常 固 体 のポリプロピレン」 及 び<br />

「 結 晶 ポリプロピレン 内 容 物 を 有 する 通 常 固 体 のポリプロピレン」を「 結 晶 ポリプロピレン<br />

内 容 物 を 有 するポリプロピレンの 通 常 固 体 線 状 高 ホモポリマー」に 限 定 されるように 読 み 取<br />

ってクレームを 解 釈 した。 裁 判 所 は、 限 定 は 当 該 クレームに 存 在 せず、 当 該 明 細 書 から 不 適<br />

切 に 移 入 されたと 裁 定 した。In re Marosi, 710 F.2d 799, 218 USPQ 289 (Fed. Cir. 1983)<br />

も 参 照 のこと。(「クレームは 他 と 切 り 離 して 読 まれるべきでなく、その 限 定 は 明 細 書 に 照 ら<br />

しそれらの『 最 も 広 い 合 理 的 な 解 釈 』を 与 えて 解 釈 すべきである。」710 F.2d at 802、218 USPQat<br />

292( 引 用 は In re Okuzawa,537 F.2d 545, 548, 190 USPQ 464, 466 (CCPA 1976))( 強 調 は 原<br />

文 のまま)。 裁 判 所 は 明 細 書 を 見 て、やむを 得 ない 不 純 物 のレベルを 含 むがそれ 以 上 には 含 ま<br />

ないので「 本 質 的 にアルカリ 金 属 を 含 まない」と 解 釈 した。 次 を 比 較 のこと。In re Weiss, 989<br />

F.2d 1202, 26 USPQ2d 1885 (Fed. Cir. 1993)( 未 公 開 審 決 ― 先 例 として 引 用 できない)(「あ<br />

らかじめ 選 択 された 力 のレベルで 離 脱 する」ので 着 用 者 を 傷 つけないようにする 滑 り 止 め 付<br />

き 運 動 靴 に 関 するクレーム。 審 査 官 は、 離 脱 することを 意 図 しない 滑 り 止 め 付 き 運 動 靴 を 教<br />

えている 先 行 技 術 に 基 づいて 当 該 クレームを 拒 絶 し、その 滑 り 止 めは 十 分 高 い 力 を 与 えられ<br />

て 離 脱 するであろうと 合 理 的 に 考 えた。 裁 判 所 は、「あらかじめ 選 択 された 力 レベル」など<br />

曖 昧 なクレームの 言 葉 を 解 釈 する 場 合 、 我 々は 発 明 者 によりその 言 葉 が 持 っているとみなさ<br />

れた 意 味 を 求 めて 明 細 書 を 見 なければならないと 述 べて、 拒 絶 を 覆 した。 当 該 明 細 書 は「あ<br />

らかじめ 選 択 された 力 レベル」を、 離 脱 するときの 力 レベルは 運 動 中 の 着 用 者 を 傷 つけない<br />

ようにすると 定 義 していた。<br />

III. 「 明 白 な 意 味 」は 当 業 者 により 当 該 用 語 に 与 えられた 通 常 的 かつ 慣 例 的 意 味 を 優 先 させ<br />

る<br />

「クレームの 用 語 の 通 常 的 慣 例 的 意 味 とは、その 言 葉 が、 当 該 発 明 時 において、つまり 当 該<br />

特 許 出 願 の 有 効 な 出 願 日 現 在 において、 問 題 となっている 技 術 分 野 の 当 業 者 にとって、 持 て<br />

いるであろう 意 味 である。」Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303, 1313, 75 USPQ2d 1321,<br />

1326 (Fed. Cir. 2005)( 大 法 廷 )。Sunrace Roots Enter. Co. v. SRAM Corp., 336 F.3d 1298,<br />

1302, 67 USPQ2d 1438, 1441 (Fed. Cir. 2003); Brookhill-Wilk 1, LLC v. Intuitive Surgical,<br />

Inc., 334 F.3d 1294, 1298 67 USPQ2d 1132, 1136 (Fed. Cir. 2003)(「クレームの 用 語 に<br />

新 たな 意 味 を 与 える 明 白 な 意 図 がない 場 合 、その 言 葉 は 当 業 者 によりそれらに 起 因 すると 考<br />

えられる 通 常 的 慣 例 的 意 味 を 獲 得 すると 推 定 される。」) 当 該 クレーム 内 の 用 語 の「 通 常 的 」<br />

かつ「 慣 例 的 」 意 味 をともに 正 確 に 反 映 するのは、その 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 に 照 ら<br />

して、 慣 例 的 に 当 業 者 によって 使 われるその 言 葉 の 使 用 である。Ferguson Beauregard/Logic<br />

Controls v. Mega Systems, 350 F.3d 1327, 1338, 69 USPQ2d 1001, 1009 (Fed. Cir. 2003)( 当<br />

業 者 にとっての「 標 準 」 及 び「 所 定 の」という 言 葉 の 通 常 的 かつ 慣 例 的 な 意 味 を 規 定 するた<br />

め、 辞 書 の 定 義 が 使 用 された。クレームの 用 語 の 解 釈 において、 辞 書 などのレファレンス 情<br />

報 源 から 収 集 された 一 般 的 な 意 味 は 必 ず 文 脈 のその 用 語 の 利 用 と 比 較 されねばならず、 本 来<br />

52


備 わっている 記 録 は、 異 なる 可 能 性 のある 辞 書 のどの 意 味 が 発 明 者 によるその 言 葉 の 利 用 と<br />

ほとんど 一 致 するかを 特 定 するため、 必 ず 調 べられねばならない。ACTV, Inc. v. The Walt<br />

Disney Company, 346 F.3d 1082, 1092, 68 USPQ2d 1516, 1524 (Fed. Cir. 2003)( 明 細 書 の<br />

「URL」という 用 語 に 与 えられた 明 確 な 定 義 がないので、その 用 語 は 本 来 備 わっている 記 録 に<br />

一 致 するそれの 最 も 広 い 合 理 的 な 解 釈 を 与 えられ、 当 業 者 によってそれに 起 因 すると 考 えら<br />

れる 通 常 的 及 び 慣 例 的 な 意 味 を 獲 得 しなくてはならない。 従 って、「URL」という 用 語 は 相 対<br />

的 URL 及 び 絶 対 的 URL の 両 方 を 包 含 するとされた。);さらに、E-Pass Technologies, Inc. v.<br />

3Com Corporation, 343 F.3d 1364, 1368, 67 USPQ2d 1947, 1949 (Fed. Cir. 2003)(「 電 子<br />

多 機 能 カード」という 用 語 に 明 示 的 定 義 が 明 細 書 で 与 えられていない 場 合 、この 用 語 はそれ<br />

の 通 常 的 意 味 及 び 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 を 与 えられなくてはならない。その 用 語 は、この 定<br />

義 がクレームされるように 電 子 多 機 能 カードに 適 用 するという 示 唆 がない 場 合 にはクレジッ<br />

トカードの 業 界 標 準 定 義 に 限 定 されてはならず、また、 明 細 書 の 好 ましい 実 施 例 に 限 定 され<br />

てはならない。)<br />

用 語 の 通 常 的 かつ 慣 例 的 意 味 は 多 様 な 情 報 源 によって 明 白 に 表 されることができ、それには<br />

「クレームそのものの 言 葉 、 明 細 書 の 残 りの 部 分 、 審 査 履 歴 、 及 び 関 連 性 のある 科 学 的 原 則 、<br />

技 術 用 語 の 意 味 並 びに 最 先 端 技 術 に 関 する 外 的 証 拠 がある。」Phillips v. AWH Corp., 415<br />

F.3d at 1314、75 USPQ2d at 1327。 辞 書 のような 外 的 レファレンス 情 報 源 がその 用 語 の 2<br />

以 上 の 定 義 を 立 証 する 場 合 、 本 来 備 わっている 記 録 は 異 なる 可 能 性 のあるどの 定 義 がその 用<br />

語 の 出 願 人 の 利 用 とほとんど 一 致 するかを 特 定 するために 調 べられなくてはならない。<br />

Brookhill-Wilk 1, 334 F. 3d at 1300、67 USPQ2d at 1137; 次 も 参 照 のこと。Renishaw PLC<br />

v. Marposs Societa' per Azioni, 158 F.3d 1243, 1250, 48 USPQ2d 1117, 1122 (Fed. Cir.<br />

1998)(「クレームの 用 語 に 数 個 の 一 般 的 な 意 味 がある 場 合 、 特 許 の 開 示 は 不 適 切 な 意 味 から<br />

は 外 れて 適 切 な 意 味 の 方 向 に 向 ける 助 けとなる。」)そして、Vitronics Corp. v. Conceptronic<br />

Inc., 90 F.3d 1576, 1583, 39 USPQ2d 1573, 1577 (Fed. Cir. 1996)(「はんだリフロー 温<br />

度 」という 用 語 を 明 細 書 との 整 合 性 を 保 つために、はんだの「 液 相 温 度 」というよりは、は<br />

んだの「ピークリフロー 温 度 」の 意 味 に 解 釈 している)。2 以 上 の 外 部 定 義 が 本 来 備 わってい<br />

る 記 録 内 の 単 語 の 利 用 と 一 致 する 場 合 、そのクレームの 用 語 はすべての 一 致 した 意 味 を 包 含<br />

すると 解 釈 することができる。 参 照 事 例 として、Rexnord Corp. v. Laitram Corp., 274 F.3d<br />

1336, 1342, 60 USPQ2d 1851, 1854 (Fed. Cir. 2001)( 争 点 となっているクレームの 用 語 の<br />

意 味 を 決 定 する 裁 判 所 の 分 析 プロセスを 説 明 );Toro Co. v. White Consol. Indus., Inc., 199<br />

F.3d 1295, 1299, 53 USPQ2d 1065, 1067 (Fed. Cir. 1999)(「 特 許 クレームの 言 葉 は 当 該 発<br />

明 分 野 で 使 用 されるそれらの 通 常 の 意 味 を 与 えられる。ただし、その 特 許 の 本 文 が、ある 語<br />

は 特 別 な 意 味 で 使 用 されることを 明 確 にしている 場 合 を 除 く。」) 比 較 事 例 として、MSM<br />

Investments Co. v. Carolwood Corp., 259 F.3d 1335, 1339-40, 59 USPQ2d 1856, 1859-60<br />

(Fed. Cir. 2001)( 動 物 の 餌 の 質 を 高 めるメチルサルフォニルメタン(MSM)の 有 益 量 を 動 物 に<br />

給 餌 する 方 法 に 関 するクレームは、 痛 みを 和 らげるためヒトの 患 者 に 対 する 従 前 の MSM 経 口<br />

投 与 によって 予 見 されていた。「 給 餌 」の 通 常 の 意 味 は 餌 又 は 栄 養 の 供 給 に 限 定 されるが、<br />

その 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 の「 餌 」の 幅 広 い 定 義 が、クレームされた 方 法 は 栄 養 目 的<br />

及 び 薬 理 学 的 目 的 の 両 方 の MSM の 利 用 を 包 含 するという 認 定 を 与 えた。); 並 びに、Rapoport<br />

v. Dement, 254 F.3d 1053, 1059-60, 59 USPQ2d 1215, 1219-20 (Fed. Cir. 2001)( 本 来 備<br />

わっている 証 拠 及 び「 睡 眠 時 無 呼 吸 症 の 治 療 方 法 」という 用 語 の 明 白 な 意 味 の 両 方 が、 睡 眠<br />

53


時 無 呼 吸 という 基 礎 疾 患 そのものの 治 療 に 限 定 されているその 用 語 の 解 釈 を 裏 付 けており、<br />

不 安 神 経 症 及 び 睡 眠 時 無 呼 吸 症 に 関 するその 他 の 二 次 的 症 状 の 治 療 を 包 含 していない。)<br />

IV. 出 願 人 は 自 らの 辞 書 編 集 者 たり 得 る<br />

出 願 人 は 自 らの 辞 書 編 集 者 となる 権 利 を 有 し、クレームの 用 語 の 通 常 的 慣 例 的 意 味 と 異 なる<br />

用 語 の 定 義 を 明 確 に 示 すことによって、それらの 通 常 的 慣 例 的 意 味 を 与 えられるべきである<br />

とする 推 定 を 退 けることができる。 参 照 として、In re Paulsen, 30 F.3d 1475, 1480, 31 USPQ2d<br />

1671, 1674 (Fed. Cir. 1994)( 発 明 者 は 発 明 を 記 載 するため 使 用 される 特 定 の 用 語 を 定 義 す<br />

ることができるが、「 合 理 的 明 確 さ、 思 慮 深 さ 及 び 正 確 さをもって」それをおこなわねばな<br />

らない。そして、そうする 場 合 は、 意 味 の「 変 更 を 当 業 者 に 通 知 できるよう、『 特 許 の 開 示<br />

に 何 らかの 方 法 で 発 明 者 の 普 通 ではない 定 義 を 明 確 に 述 べ』なければならない。)( 引 用 は<br />

Intellicall, Inc. v. Phonometrics, Inc., 952 F.2d 1384, 1387-88, 21 USPQ2d 1383, 1386<br />

(Fed. Cir. 1992))。<br />

明 確 な 定 義 が 出 願 人 によって 用 語 に 与 えられている 場 合 には、その 用 語 が 当 該 クレームで 使<br />

用 されている 限 り、その 用 語 の 解 釈 はその 定 義 による。Toro Co. v. White Consolidated<br />

Industries Inc., 199 F.3d 1295, 1301, 53 USPQ2d 1065, 1069 (Fed. Cir. 1999)(クレー<br />

ム 中 に 使 用 される 言 葉 の 意 味 は「 辞 書 編 集 全 くなしには 解 釈 されないが、 明 細 書 及 び 図 面 に<br />

照 らして」 解 釈 される)。 用 語 に 当 てられるどのような 特 別 の 意 味 も、「 明 細 書 において、 一<br />

般 的 用 法 からの 逸 脱 が 発 明 の 属 する 技 術 分 野 の 熟 練 者 によってそのように 理 解 されるであろ<br />

うように 十 分 に 明 確 でなければならない。」Multiform Desiccants Inc. v. Medzam Ltd., 133<br />

F.3d 1473, 1477, 45 USPQ2d 1429, 1432 (Fed. Cir. 1998)。 併 せて、Process Control Corp.<br />

v. HydReclaim Corp., 190 F.3d 1350, 1357, 52 USPQ2d 1029, 1033 (Fed. Cir. 1999) 及 び<br />

MPEP 第 2173.05(a) 条 も 参 照 のこと。 明 細 書 もまた、 出 願 人 が 自 らの 辞 書 編 集 者 として 行 為 す<br />

る 場 合 は、クレームの 用 語 の 意 味 を 定 義 するため、 単 なる 明 示 的 辞 書 編 集 又 はクレーム 範 囲<br />

の 明 確 な 否 定 以 上 に 信 頼 されなくてはならない。 個 々のクレームの 用 語 の 意 味 は、その 用 語<br />

が 明 細 書 の 文 脈 の 中 で 使 われている 用 法 にしたがった 含 意 をもつものとして 定 義 される 場 合<br />

もある。 参 照 として、Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303, 75 USPQ2d 1321 (Fed. Cir.<br />

2005)( 大 法 廷 ) 及 び Vitronics Corp. v. Conceptronic Inc., 90 F.3d 1576, 1583, 39 USPQ2d<br />

1573, 1577 (Fed. Cir. 1996)。 比 較 として、Merck & Co., Inc., v. Teva Pharms. USA, Inc.,<br />

395 F.3d 1364, 1370, 73 USPQ2d 1641, 1646 (Fed. Cir. 2005)、 本 件 で 裁 判 所 は、 特 許 権<br />

者 は、「およそ」の 語 の 通 常 の 意 味 が、「 正 確 に」を 意 味 するとして 再 定 義 するという 直 感<br />

に 反 する 定 義 を 正 当 化 するために 十 分 明 確 な 用 語 で 再 定 義 することに 失 敗 したと 判 示 した。<br />

(「 特 許 権 者 が 特 定 のクレームの 用 語 の 意 味 をそれらの 通 常 の 意 味 から 外 れて 再 定 義 し 自 己 の<br />

辞 書 編 集 者 として 行 為 する 場 合 、 特 許 権 者 はその 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 にその 意 図 を<br />

明 確 に 表 明 しなければならない。」)<br />

MPEP 第 2173.05(a) 条 もまた 参 照 のこと。<br />

2111.02 前 提 部 分 の 効 力<br />

前 提 部 分 がクレームを 限 定 するかどうかの 判 断 は、 事 例 ごとの 事 実 に 照 らしてその 都 度 行 わ<br />

れる。 前 提 部 分 がクレームの 範 囲 を 限 定 する 場 合 を 定 義 するリトマス 試 験 はない。Catalina<br />

Mktg. Int’l v. Coolsavings.com, Inc., 289 F.3d 801, 808, 62 USPQ2d 1781, 1785 (Fed.<br />

54


Cir. 2002)。クレームの 範 囲 に 対 する 前 提 部 分 の 影 響 を 検 討 する 様 々な 判 決 から 浮 かび 上 が<br />

る 指 標 についての 議 論 、 及 びこれらの 原 則 を 解 説 する 仮 説 例 について、 同 じく 808-10, 62<br />

USPQ2d at 1784-86 を 参 照 のこと。<br />

「クレーム 前 提 部 分 は 当 該 クレーム 全 体 が 示 す 趣 旨 が 書 かれている。」Bell Communications<br />

Research, Inc. v. Vitalink Communications Corp., 55 F.3d 615, 620, 34 USPQ2d 1816, 1820<br />

(Fed. Cir. 1995)。「クレーム 前 提 部 分 が、クレーム 全 体 の 文 脈 に 読 み 込 まれる 場 合 は、 当<br />

該 クレームの 限 定 を 記 載 する、 或 いは、クレーム 前 提 部 分 が 当 該 クレームに『 命 、 意 味 及 び<br />

活 力 を 与 えために 必 要 』な 場 合 は、そのクレーム 前 提 部 分 は 当 該 クレームのバランスをとっ<br />

ているかのように 解 釈 されなくてはならない。」Pitney Bowes, Inc. v. Hewlett-Packard Co.,<br />

182 F.3d 1298, 1305, 51 USPQ2d 1161, 1165-66 (Fed. Cir. 1999)。さらに 参 照 として、<br />

Superguide Corp. v. DirecTV Enterprises, Inc., 342 F.3d 1329, 1333, 68 USPQ2d 1154,<br />

1158 (Fed. Cir. 2003)( 一 定 のビタミン 剤 を「それを 必 要 とするヒト」に 投 与 することによ<br />

りヒトの 悪 性 貧 血 を 治 療 若 しくは 防 止 する 方 法 に 関 するクレームの 前 提 部 分 の 効 力 を 検 討 す<br />

るに 当 たって、 裁 判 所 は、 患 者 又 は「 必 要 としている」ヒトについての 当 該 クレームの 記 載<br />

は、 前 提 部 分 の 目 的 の 陳 述 に 命 及 び 意 味 を 与 えているとした。)Kropa v. Robie, 187 F.2d 150,<br />

152, 88 USPQ 478, 481 (CCPA 1951)(「 研 磨 物 品 」を 記 載 する 前 提 部 分 は、 研 磨 粒 及 び 硬 化<br />

結 合 剤 を 含 む 物 品 並 びにそれを 製 造 するプロセスに 対 し、クレームによって 定 義 された 発 明<br />

を 示 すために 必 須 とされた。 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。「 当 該 クレームによって 定 義<br />

された 保 護 対 象 は 研 磨 物 品 として 構 成 されることはその 表 現 によってのみ 分 かる。とりわけ<br />

研 磨 粒 及 び 結 合 剤 として 使 用 することのできる 実 体 の 結 合 のどれもが『 研 磨 物 品 』というわ<br />

けではない。 従 って、その 前 提 部 分 は 生 産 される 物 品 の 構 造 を 詳 細 に 定 義 する 働 きをする。)<br />

I. 構 造 を 限 定 する 前 提 部 分 の 説 明<br />

クレームされた 発 明 の 構 造 を 限 定 する 前 提 部 分 のいかなる 用 語 もクレームを 限 定 するとして<br />

取 り 扱 われねばならない。 参 照 事 例 として、Corning Glass Works v. Sumitomo Elec. U.S.A.,<br />

Inc., 868 F.2d 1251, 1257, 9 USPQ2d 1962, 1966 (Fed. Cir. 1989)( 前 提 部 分 の 記 載 が 構<br />

造 的 限 定 であるかどうかの 判 定 は、「 当 該 発 明 が 実 際 に 発 明 し 当 該 クレームによって 包 含 す<br />

ることを 意 図 するものの 理 解 を 得 るため」の 当 該 出 願 全 体 の 審 査 に 基 づいてのみ 決 定 するこ<br />

とができる。);Pac-Tec Inc. v. Amerace Corp., 903 F.2d 796, 801, 14 USPQ2d 1871, 1876<br />

(Fed. Cir. 1990)( 構 造 的 限 定 を 構 成 する 前 提 部 分 の 文 言 は、 現 実 に、クレームされた 発 明 の<br />

部 分 である)。 次 も 参 照 のこと。In re Stencel, 828 F.2d 751, 4 USPQ2d 1071 (Fed. Cir.<br />

1987)( 問 題 のクレームはねじ 付 きカラーのジョイントを 固 定 するためのドライバーに 向 けら<br />

れた;しかし、 当 該 クレーム 本 体 部 にはクレームされた 物 品 の 部 品 としてそのカラーの 構 造<br />

が 直 接 的 に 含 まれていない。 審 査 官 はその 前 提 部 分 ( 当 該 カラー 構 造 を 述 べていた)をクレー<br />

ムを 限 定 するものとして 考 慮 しなかった。 裁 判 所 は 当 該 カラー 構 造 を 無 視 できないと 判 示 し<br />

た。 当 該 クレームは 当 該 カラーを 直 接 的 には 限 定 していないが、 前 提 部 分 に 記 載 される 当 該<br />

カラー 構 造 が 当 該 ドライバーの 構 造 を 限 定 している。「 特 許 性 が 評 価 される 枠 組 み( 先 行 技 術<br />

から 教 示 される 内 容 )は、 広 義 にすべてのドラーバーというのではなく、 当 該 クレームが 限 定<br />

しているように、このカラーと 組 み 合 わせて 使 用 するのに 適 したドライバーである。」Id. at<br />

1073、828 F.2d at 754。)<br />

55


II. 目 的 又 は 意 図 した 用 途 を 記 載 する 前 提 部 分 の 説 明<br />

クレームの 前 提 部 分 はクレーム 全 体 の 文 脈 に 読 み 込 まれねばならない。( 前 提 部 分 の 記 載 が 構<br />

造 的 限 定 であるか、 又 は 単 なる 目 的 若 しくは 用 途 の 陳 述 であるかどうかの 判 定 は、「 当 該 発<br />

明 が 実 際 に 発 明 し 当 該 クレームによって 包 含 することを 意 図 するものの 理 解 を 得 るための 当<br />

該 [ 記 録 ]の 全 体 についての 審 査 に 基 づいてのみ 決 定 することができる。」Corning Glass Works,<br />

868 F.2d at 1257、9 USPQ2d at 1966。クレームの 本 体 部 が 完 全 かつ 本 質 的 にクレームされ<br />

た 発 明 の 限 定 のすべてを 述 べており、 前 提 部 分 はクレームされた 発 明 の 何 らかの 限 定 の 明 確<br />

な 定 義 というよりは、 例 えば、 当 該 発 明 の 目 的 又 は 意 図 した 用 途 を 述 べているだけの 場 合 、<br />

その 前 提 部 分 は 限 定 とみなされず、クレームの 解 釈 にとって 何 ら 意 味 はない。Pitney Bowes,<br />

Inc. v. Hewlett-Packard Co., 182 F.3d 1298, 1305, 51 USPQ2d 1161, 1165 (Fed. Cir. 1999)。<br />

次 も 参 照 のこと。Rowe v. Dror, 112 F.3d 473, 478, 42 USPQ2d 1550, 1553 (Fed. Cir.<br />

1997)(「 特 許 権 者 がクレーム 本 体 部 に 構 造 的 に 完 全 な 発 明 を 定 義 し、その 前 提 部 分 を 当 該 発<br />

明 の 目 的 又 は 意 図 した 用 途 を 記 述 するのみに 使 用 している 場 合 、その 前 提 部 分 はクレームを<br />

限 定 するものではない。」);Kropa v. Robie, 187 F.2d at 152、88 USPQ2d at 480-81( 前<br />

提 部 分 はクレームが 製 品 に 向 ける 限 定 ではなく、その 前 提 部 分 は 単 に 当 該 クレームの 残 りの<br />

部 分 によって 定 義 される 旧 製 品 に 本 来 備 わっている 性 質 を 記 載 するだけである);STX LLC. v.<br />

Brine, 211 F.3d 588, 591, 54 USPQ2d 1347, 1350 (Fed. Cir. 2000)(ラクロススティック<br />

のヘッドについて 書 かれたクレームの「 改 良 されたプレーイング 及 びハンドリング 特 性 を 提<br />

供 する」 前 提 部 分 の 表 現 はクレームを 限 定 するものではないとされている)。 比 較 として、<br />

Jansen v. Rexall Sundown, Inc., 342 F.3d 1329, 1333-34, 68 USPQ2d 1154, 1158 (Fed. Cir.<br />

2003)(「 一 定 のビタミン 剤 を、それを 必 要 とするヒト」に 投 与 することによりヒトの 悪 性 貧<br />

血 を 治 療 若 しくは 防 止 する 方 法 に 関 するクレームにおいて、 裁 判 所 は、その 前 提 部 分 は 期 待<br />

されるかどうか 又 は 高 く 評 価 されるかどうか 分 からない 効 果 の 単 なる 陳 述 ではなく、むしろ<br />

その 方 法 が 実 施 されねばならない 意 図 的 な 目 的 の 陳 述 であるとした。) 従 って、 当 該 クレーム<br />

はそのビタミン 剤 は 悪 性 貧 血 の 治 療 又 は 防 止 が 必 要 と 認 められたヒトに 投 与 されなければな<br />

らないという 意 味 に 適 切 に 解 釈 される。);In re Cruciferous Sprout Litig., 301 F.3d 1343,<br />

1346-48, 64 USPQ2d 1202, 1204-05 (Fed. Cir. 2002)( 問 題 のクレームは、 十 字 花 科 の 新 芽<br />

を 双 葉 期 より 前 に 収 穫 し、グルコシノラートに 富 む 食 物 を 作 成 する 方 法 に 向 けられた。 裁 判<br />

所 は、「グルコシノラートに 富 む」という 前 提 部 分 の 表 現 は、 明 細 書 及 び 審 査 履 歴 により 立<br />

証 されているのでクレームされている 発 明 の 定 義 に 役 立 つとした。 従 って、( 当 該 クレームは<br />

もともと「グルコシノラートに 富 む」 新 芽 を 生 産 する 先 行 技 術 により 予 見 されているにもか<br />

かわらず) 当 該 クレームの 限 定 となると 判 示 した。)<br />

審 査 において、クレームされている 発 明 の 目 的 又 は 意 図 した 用 途 を 記 載 する 前 提 部 分 の 陳 述<br />

は、 記 載 される 目 的 又 は 意 図 した 用 途 がクレームされている 発 明 と 先 行 技 術 との 構 造 的 違 い<br />

( 若 しくは、 方 法 クレームの 場 合 は 操 作 の 違 い)をもたらすかどうかを 明 らかにするため 評 価<br />

されねばならない。 違 いがあれば、その 記 載 はクレームを 限 定 する 役 目 を 果 たしている。 参<br />

照 事 例 として、In re Otto, 312 F.2d 937, 938, 136 USPQ 458, 459 (CCPA 1963)( 当 該 クレ<br />

ームはヘアカラーの 芯 部 材 とヘアカラーの 芯 部 材 を 作 成 するプロセスに 向 けられた。 裁 判 所<br />

は、ヘアカールという 意 図 した 用 途 は、 作 成 する 構 造 及 びプロセスに 何 ら 意 味 がないとし<br />

た。);In re Sinex, 309 F.2d 488, 492, 135 USPQ 302, 305 (CCPA 1962)( 装 置 クレームに<br />

おける 意 図 した 用 途 の 陳 述 には、 従 来 の 装 置 を 超 える 違 いはない。) 従 来 技 術 の 構 造 が 当 該 前<br />

56


提 部 分 に 記 載 される 意 図 した 用 途 を 果 たすことが 可 能 であれば、 当 該 クレームに 適 合 する。<br />

参 照 事 例 として、In re Schreiber, 128 F.3d 1473, 1477, 44 USPQ2d 1429, 1431 (Fed. Cir.<br />

1997)( 引 用 例 のディスペンサー( 油 差 しからオイルを 小 出 しするなどの 目 的 に 有 用 であると<br />

して 開 示 された 注 ぎ 口 )は、 出 願 人 のクレーム 1( 所 定 の 方 法 でポップコーンを 小 出 しするた<br />

めの 小 出 し 口 )に 記 載 される 方 法 でポップコーンを 注 ぐことができるであろうとする 審 判 部<br />

の 事 実 認 定 に 基 づく 新 規 性 の 欠 如 による 拒 絶 が 支 持 された。 本 件 で 引 用 された 裁 判 例 も 参 照 。<br />

MPEP 第 2112 条 乃 至 第 2112.02 条 も 参 照 のこと。<br />

しかしながら、「 前 提 部 分 はクレーム 構 成 についての 背 景 を 提 供 することができる、とりわ<br />

け・・・その 前 提 部 分 の 意 図 した 用 途 の 記 載 が 当 該 特 許 の 審 査 履 歴 において 先 行 技 術 を 区 別 す<br />

る 根 拠 を 形 成 している 場 合 である。」Metabolite Labs., Inc. v. Corp. of Am. Holdings, 370<br />

F.3d 1354, 1358-62, 71 USPQ2d 1081, 1084-87 (Fed. Cir. 2004)。 問 題 の 特 許 クレームは<br />

ビタミン B12 又 は 葉 酸 の 欠 乏 症 を 検 出 する 次 の 2 段 階 から 成 る 方 法 に 向 けられた。(i) 体 液 を<br />

分 析 してホモシステインの「 上 昇 したレベル」を 求 める。 次 に、(ii)「 上 昇 した」レベルを<br />

ビタミン 欠 乏 症 と「 相 関 させる」。370 F.3d at 1358-59、71 USPQ2d at 1084。 裁 判 所 は、<br />

争 点 となっているクレームの 用 語 「 相 関 させる」は、 上 昇 したレベルのみではなく、 上 昇 し<br />

たレベルもしていないレベルも 共 に 比 較 することを 含 むと 述 べた。なぜなら、 先 行 技 術 を 克<br />

服 するために 審 査 過 程 で、クレームの「 相 関 させる」ステップを 前 提 部 分 を 直 接 結 びつけて<br />

追 加 したからである。370 F.3d at 1362、71 USPQ2d at 1087。 前 提 部 分 のビタミン 欠 乏 症 「 検<br />

出 」についての 意 図 した 用 途 の 記 載 は、クレームされた 発 明 を「 検 出 」 方 法 としており、 従<br />

って「 上 昇 した」レベルを 検 出 することに 限 定 されない。 同 文 献 。<br />

次 も 参 照 のこと。Catalina Mktg. Int’l v. Coolsavings.com, Inc., 289 F.3d at 808-09、<br />

62 USPQ2d at 1785。(「 手 続 中 のクレームされている 発 明 を 先 行 技 術 から 区 別 することにつ<br />

いての 前 提 部 分 への 明 確 な 依 拠 は、そのような 依 拠 が、 一 つにはクレームされている 発 明 を<br />

定 義 するための 前 提 部 分 の 使 用 を 意 味 するので、 前 提 部 分 をクレームの 限 定 に 変 換 す<br />

る。・・・しかし、このような 依 拠 がない 場 合 、クレーム 本 体 部 が 構 造 的 に 完 全 な 発 明 を 記 載 し<br />

ており、 前 提 部 分 がなくてもクレームされている 発 明 の 構 造 又 は 工 程 に 影 響 を 与 えないない<br />

場 合 は、 前 提 部 分 は 一 般 に 限 定 しない。」 従 って、「クレームされている 発 明 の 便 益 又 は 機<br />

能 を 単 に 称 賛 するだけの 前 提 部 分 の 文 言 は、 特 許 を 取 得 する 上 で 重 要 なものとしてそれらの<br />

便 益 又 は 機 能 に 明 確 に 依 拠 していないため、クレームの 範 囲 を 限 定 しない。」)In<br />

Poly-America LP v. GSE Lining Tech. Inc., 383 F.3d 1303, 1310, 72 USPQ2d 1685, 1689<br />

(Fed. Cir. 2004), 裁 判 所 は、「’047 特 許 全 体 を 検 討 すると、『 吹 込 フィルム』に 関 する 前<br />

提 部 分 の 文 言 は 当 該 発 明 の 目 的 又 は 意 図 した 用 途 を 記 述 していないが、クレームされている<br />

発 明 の 基 本 的 特 性 を 開 示 しており、 当 該 クレームの 限 定 として 解 釈 されるのが 適 切 であ<br />

る・・・。」とした。 比 較 事 例 として、Intirtool, Ltd. v. Texar Corp., 369 F.3d 1289, 1294-96,<br />

70 USPQ2d 1780, 1783-84 (Fed. Cir. 2004)(「 重 ねた 板 金 のせん 孔 と 連 結 を 同 時 にできる 手<br />

持 ちの 穴 開 けぺンチ」をに 関 する 特 許 クレームの 前 提 部 分 は、 次 の 理 由 で 当 該 クレームを 限<br />

定 していないとされた。(i) 当 該 クレーム 本 体 部 はその 前 提 部 分 がなくても「 構 造 的 に 完 全 な<br />

発 明 」を 記 載 しており、(ii) 発 明 の「せん 孔 と 連 結 」 機 能 に 言 及 する 審 査 履 歴 の 陳 述 は、 当<br />

該 前 提 部 分 が 限 定 になるために 必 要 とされる、 当 該 前 提 部 分 への「 明 確 な 依 拠 」を 構 成 する<br />

ものではない。)<br />

57


2111.03 移 行 句<br />

「comprising(~からなる、~を 特 徴 とする)」、「consisting essentially of( 本 質 的 に~<br />

のみからなる)」 及 び「consisting of(~のみからなる)」の 移 行 句 は、 記 載 されていない 追<br />

加 の 構 成 要 素 又 は 工 程 がある 場 合 に、それがクレームの 範 囲 から 排 除 されるかに 関 してクレ<br />

ームの 範 囲 を 定 義 する。<br />

「comprising(~からなる、~を 特 徴 とする)」の 移 行 句 は、「including」、「containing」<br />

又 は「characterized by」と 同 義 語 であり、 包 括 的 若 しくは 非 限 定 であって、 追 加 の、 記 載<br />

されていない 要 素 又 は 方 法 工 程 を 排 除 しない。 参 照 事 例 として、Mars Inc. v. H.J. Heinz Co.,<br />

377 F.3d 1369, 1376, 71 USPQ2d 1837, 1843 (Fed. Cir. 2004)(「『comprising』の 用 語 と<br />

同 様 に、『containing』 及 び『mixture( 混 合 物 )』の 用 語 も 非 限 定 である。」)Invitrogen Corp.<br />

v. Biocrest Mfg., L.P., 327 F.3d 1364, 1368, 66 USPQ2d 1631, 1634 (Fed. Cir. 2003)(「 方<br />

法 クレームの『comprising』の 移 行 句 は、そのクレームは 非 限 定 で 追 加 工 程 を 認 めているこ<br />

とを 示 す。」);Genentech, Inc. v. Chiron Corp., 112 F.3d 495, 501, 42 USPQ2d 1608, 1613<br />

(Fed. Cir. 1997)(「Comprising」は 指 定 された 要 素 は 必 須 であるがその 他 の 要 素 を 加 えるこ<br />

とができることを 意 味 するクレームの 文 言 に 使 用 される 専 門 用 語 であるが、なお 当 該 クレー<br />

ムの 範 囲 内 で 構 成 概 念 を 形 成 する。);Moleculon Research Corp. v.CBS, Inc., 793 F.2d 1261,<br />

229 USPQ 805 (Fed. Cir. 1986); In re Baxter, 656 F.2d 679, 686, 210 USPQ 795, 803 (CCPA<br />

1981); Ex parte Davis, 80 USPQ 448, 450 (Bd. App. 1948)(「comprising」は「 大 量 であ<br />

ったとしても 特 定 されていない 構 成 要 素 を 包 含 するために 当 該 クレームをオープンのままと<br />

する。」)In Gillette Co. v. Energizer Holdings Inc., 405 F.3d 1367, 1371-73, 74 USPQ2d<br />

1586, 1589-91 (Fed. Cir. 2005), 裁 判 所 は、「ガード、キャップ 及 び 第 1 刃 、 第 2 刃 並 びに<br />

第 3 刃 のグループ(group of)からなる(comprising) 安 全 かみそり 刃 一 式 」に 対 するクレーム<br />

は、 前 提 部 分 の「からなる(comprising)」の 移 行 句 及 び「のグループ(group of)」の 表 現 は<br />

非 限 定 とみなされるので、4 枚 の 刃 を 持 つかみそりを 包 含 するとした。「 前 提 部 分 から 本 体<br />

部 へ 移 行 する『comprising』の 語 は、クレーム 全 体 が 非 限 定 とみなされることを 示 す。」 同<br />

文 献 。その 一 方 で 裁 判 所 は、「のみからなるグループ(group consisting of)」の 表 現 は 限 定<br />

用 語 であること、そしてそれは、その 本 質 上 限 定 されている「Markush グループ」を 示 すた<br />

めにクレーム 作 成 でしばしば 使 用 されていることに 言 及 した。 同 文 献 。また、 同 裁 判 所 は、<br />

同 クレームの「 第 1」、「 第 2」 及 び「 第 3」の 刃 への 言 及 は 連 続 又 は 数 値 限 定 を 示 すために<br />

使 われているのではなく、 同 グループのさまざまな 刃 を 区 別 若 しくは 識 別 するために 使 われ<br />

ていることを 強 調 した。 同 文 献 。<br />

移 行 句 「consisting of」は 当 該 クレームで 特 定 されないいかなる 要 素 、 工 程 若 しくは 材 料 も<br />

排 除 する。In re Gray, 53 F.2d 520, 11 USPQ 255 (CCPA 1931); Ex parte Davis, 80 USPQ<br />

448, 450 (Bd. App. 1948)(「consisting of」は「 通 常 それに 結 び 付 く 不 純 物 を 除 いて 記 載<br />

された 材 料 以 外 の 材 料 の 包 含 に 対 して 当 該 クレームを 閉 ざす」と 定 義 する。)しかし、 次 を 参<br />

照 のこと。 Norian Corp. v. Stryker Corp., 363 F.3d 1321, 1331-32, 70 USPQ2d 1508,<br />

1516(Fed. Cir. 2004)(クレームされた 化 学 物 質 のみからなる(consisting of) 骨 修 復 キット<br />

は、クレームされた 化 学 物 質 の 他 にへらを 含 む 骨 修 復 キットによって 侵 害 されるとした。な<br />

ぜなら、へらが 存 在 することは、クレームされた 発 明 とは 関 係 がないからである。) 記 載 され<br />

た 要 素 又 は 工 程 「のみからなる(consists of)」クレームに 従 属 するクレームは 要 素 又 は 工 程<br />

を 追 加 することができない。クレーム 本 体 部 の 請 求 項 に、 前 提 部 分 の 直 後 ではなく、「~の<br />

58


みからなる(consists of)」の 表 現 が 表 れたとき、その 請 求 項 に 記 載 される 要 素 のみを 限 定 す<br />

る。その 他 の 要 素 は 当 該 クレーム 全 体 から 排 除 されない。Mannesmann Demag Corp. v.<br />

Engineered Metal Products Co., 793 F.2d 1279, 230 USPQ 45 (Fed. Cir. 1986)。 次 も 参<br />

照 のこと。In re Crish, 393 F.3d 1253, 73 USPQ2d 1364 (Fed. Cir. 2004)( 問 題 のクレー<br />

ムは「ヒトのインボルクリン 遺 伝 子 (hINV)にプロモーター 活 性 を 有 する 精 製 DNA 分 子 に 関 連<br />

していた。」 同 文 献 、73 USPQ2d at 1365。「 当 該 部 分 が SEQ ID NO:1 の・・・から 2473 of ま<br />

でのヌクレチオド 配 列 のみからなり(consists of)、かつ SEQ ID NO:1 のヌクレチオド 配 列 の<br />

当 該 部 分 がプロモーター 活 性 を 有 するヌクレチオド 配 列 SEQ ID NO:1 の 少 なくとも 一 部 から<br />

なる(comprising at least) 精 製 オリゴヌクレチオド」に 関 する 出 願 人 のクレーム 範 囲 を 確 定<br />

するに 当 たって、 裁 判 所 は、 当 該 クレーム 本 体 部 の「consists」の 使 用 は 当 該 クレームの 非<br />

限 定 の「comprising」の 文 言 を 限 定 しないと 述 べた。Id. at 1257、73 USPQ2d at 1367。ク<br />

レームされた SEQ ID NO:1 と 表 されるプロモーター 配 列 は、 従 来 技 術 と 同 一 のプラスミドを<br />

配 列 決 定 することにより 入 手 される。 従 って、クレームされているオリゴヌクレチオドと 同<br />

じ DNA 配 列 を 必 然 的 に 有 する 従 来 のプラスミドにより 新 規 性 がなかったとした。Id. at 1256<br />

及 び 1259、73 USPQ2d at 1366、1369。 裁 判 所 は 審 判 部 の、「consists」の 移 行 句 は 番 号 付<br />

けされ 記 載 された SEQ ID NO:1 のヌクレチオド 配 列 に 当 該 クレームを 限 定 せず、「comprising」<br />

の 移 行 句 は 当 該 クレームがインボルクリン 遺 伝 子 全 体 に 加 えて 当 該 プラスミドのその 他 の 部<br />

分 を 対 象 とすることを、その 遺 伝 子 が 当 該 クレームに 記 載 される SEQ ID NO:1 の 特 定 部 分 を<br />

含 む 限 りにおいて、 認 めるとする 解 釈 を 支 持 した。Id. at 1256、73 USPQ2d at 1366。<br />

「consisting essentially of」の 移 行 句 は 特 定 された 材 料 又 は 工 程 「 及 びクレームされてい<br />

る 発 明 の 基 本 的 かつ 新 規 な 特 性 に 大 きく 影 響 しないそれら」にクレームの 範 囲 を 限 定 する。<br />

In re Herz, 537 F.2d 549, 551-52, 190 USPQ 461, 463 (CCPA 1976) ( 強 調 は 原 文 のまま)( 審<br />

判 請 求 人 が 主 張 する 分 散 剤 を 必 要 とする 従 来 の 油 圧 油 は、「 実 質 的 に 所 定 の 構 成 要 素 のみか<br />

らなる」 機 能 液 に 限 定 されるクレームから 排 除 された。 当 該 クレームは 従 来 技 術 の 分 散 剤 を<br />

排 除 しないと 認 定 するに 際 し、 同 裁 判 所 は、 審 判 請 求 人 の 明 細 書 はクレームされた 構 成 要 素<br />

は 分 散 剤 のような 任 意 の 既 知 の 添 加 剤 を 含 むことができ、また、 分 散 剤 の 存 在 がそのクレー<br />

ムされている 発 明 の 基 本 的 かつ 新 規 な 特 性 に 大 きく 影 響 するであろう 証 拠 はないことに 言 及<br />

した。 従 来 の 組 成 物 には、 追 加 の 強 化 浄 化 剤 及 び 分 散 剤 の 特 性 と 同 じように 同 一 の 基 本 的 か<br />

つ 新 規 な 特 性 ( 耐 酸 化 性 の 強 化 )があった。)「『consisting essentially of』クレームは<br />

『consisting of』」 方 式 で 書 かれるクローズド( 限 定 )クレームと『comprising』 方 式 で 起 草<br />

される 完 全 オープン( 非 限 定 )クレームとの 中 間 的 立 場 を 占 める。」PPG Industries v.<br />

Guardian Industries, 156 F.3d 1351, 1354, 48 USPQ2d 1351, 1353-54 (Fed. Cir. 1998)。<br />

次 も 参 照 のこと。Atlas Powder v. E.I. duPont de Nemours & Co., 750 F.2d 1569, 224 USPQ<br />

409 (Fed. Cir. 1984); In re Janakirama-Rao, 317 F.2d 951, 137 USPQ 893 (CCPA 1963);<br />

Water Technologies Corp. vs. Calco, Ltd., 850 F.2d 660, 7 USPQ2d 1097 (Fed. Cir. 1988)。<br />

特 許 法 第 102 条 及 び 第 103 条 に 基 づく 先 行 技 術 の 検 索 及 び 適 用 の 目 的 上 、 実 際 的 に 基 本 的 か<br />

つ 新 規 な 特 性 は 何 であるかについて 当 該 明 細 書 又 はクレームに 明 快 な 指 示 がない 場 合 、<br />

「consisting essentially of」は「comprising」に 相 当 すると 解 釈 される。 参 照 事 例 として、<br />

PPG, 156 F.3d at 1355、48 USPQ2d at 1355(「PPG は、その 明 細 書 で 当 該 発 明 の 基 本 的 かつ<br />

新 規 な 特 性 の 重 大 な 変 化 を 構 成 するとみなされるものを 明 確 にすることによって、その 特 許<br />

の 目 的 に『 基 本 的 に~のみからなる(consisting essentially of)』という 表 現 の 範 囲 を 定 義<br />

59


することができた。」) 次 も 参 照 のこと。AK Steel Corp. v. Sollac, 344 F.3d 1234, 1240-41,<br />

68 USPQ2d 1280, 1283-84 (Fed. Cir. 2003)( 出 願 人 の「 被 膜 金 属 のシリコン 含 有 物 は 約 0.5%<br />

重 量 を 超 えてはならない」とする 明 細 書 の 陳 述 は、シリコンの 悪 影 響 につての 考 察 とともに、<br />

0.5% 重 量 を 超 えるシリコンは 当 該 発 明 の 基 本 的 かつ 新 規 の 特 性 を 大 きく 変 えるであろうと<br />

する 結 論 する 根 拠 を 提 供 した。このように、 前 提 部 分 に 記 載 される「consisting essentially<br />

of」はアルミニウム 被 膜 に 0.5% 重 量 以 上 のシリコンを 許 容 しないと 解 釈 された。);In re<br />

Janakirama-Rao, 317 F.2d 951, 954, 137 USPQ 893, 895-96 (CCPA 1963)。 出 願 人 が、 先 行<br />

技 術 の 追 加 工 程 又 は 材 料 が「consisting essentially of」の 記 載 によって 排 除 されると 主 張<br />

するのであれば、 出 願 人 は、 追 加 工 程 又 は 構 成 要 素 の 採 用 が 出 願 人 の 発 明 特 性 を 大 きく 変 え<br />

ることになることを 証 明 する 責 任 を 有 する。In re De Lajarte, 337 F.2d 870, 143 USPQ 256<br />

(CCPA 1964)。 次 も 参 照 のこと。Ex parte Hoffman, 12 USPQ2d 1061, 1063-64 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1989)。(「『consisting essentially of』は 特 に 組 成 物 に 関 連 して 使 用 され、 定<br />

義 されるが、 方 法 工 程 の 変 更 因 子 としての 使 用 に 本 来 的 に 何 らまずい 点 は 見 当 たらない・・・ 当<br />

該 クレームは、クレームされた 方 法 の 基 本 的 かつ 新 規 な 特 性 に 重 大 な 影 響 を 与 えない 工 程 の<br />

含 有 についてのみ 非 限 定 であると 解 釈 する。 含 まれる 工 程 に 対 して 含 まれない 工 程 を 確 定 す<br />

るため、 当 該 クレームは 明 細 書 に 照 らして 読 まれねばならない・・・ 従 来 技 術 の 方 法 で 実 施 され<br />

る 工 程 は「consisting essentially of」の 文 言 で 自 らのクレームから 排 除 されることを 立 証<br />

することは 出 願 人 の 責 任 である。」)<br />

その 他 の 移 行 句<br />

「having(~を 有 する)」などの 移 行 句 は、オープン( 非 制 限 )クレーム 又 はクローズド( 制 限 )<br />

クレームのいずれが 意 図 されているかを 判 断 するため 明 細 書 に 照 らして 解 釈 しなければなら<br />

ない。 参 照 事 例 として、Lampi Corp. v. American Power Products Inc., 228 F.3d 1365, 1376,<br />

56 USPQ2d 1445, 1453 (Fed. Cir. 2000)(「having」の 用 語 はオープン 用 語 として 解 釈 され、<br />

記 載 される 構 成 要 素 に 加 えてその 他 の 構 成 要 素 も 含 むことを 認 める。)Crystal<br />

Semiconductor Corp. v. TriTech Microelectronics Int’l Inc., 246 F.3d 1336, 1348, 57<br />

USPQ2d 1953, 1959 (Fed. Cir. 2001)( 移 行 句 に 含 まれる「having」の 用 語 は「クレーム 本 体<br />

部 はオープンであるとする 前 提 は 作 り 出 さない。」);Regents of the Univ. of Cal. v. Eli<br />

Lilly & Co., 119 F.3d 1559, 1573, 43 USPQ2d 1398, 1410 (Fed. Cir. 1997)(ヒトの PI<br />

に 関 する 配 列 コードを 有 する cDNA の 文 脈 では、「 有 する(having)」の 用 語 は、なおもう 一 方<br />

の 半 族 の 含 有 を 認 めた。)「composed of(~からなる、~を 特 徴 とする)」の 移 行 句 は、 特 定<br />

の 事 例 の 事 実 によって「consisting of(~のみからなる)」 又 は「consisting essentially<br />

of( 実 質 的 に~のみからなる)」のいずれか 一 方 と 同 じように 解 釈 されてきた。 次 を 参 照 のこ<br />

と。AFG Industries, Inc. v. Cardinal IG Company, 239 F.3d 1239, 1245, 57 USPQ2d 1776,<br />

1780-81 (Fed. Cir. 2001)( 明 細 書 及 びその 他 の 証 拠 に 基 づき「composed of」は「consisting<br />

essentially of」と 同 じ 様 に 解 釈 された。);In re Bertsch, 132 F.2d 1014, 1019-20, 56 USPQ<br />

379, 384 (CCPA 1942)(「composed of」は「consisting of」と 同 じように 解 釈 された。しか<br />

し、 裁 判 所 はさらに、「『composed of』の 語 は 特 定 の 状 況 下 で、 特 許 法 において、『consisting<br />

of』よりも 幅 広 き 意 味 が 与 えられることがある」とした。)<br />

60


2111.04 「Adapted to(~に 適 している)」、「Adapted for(~に 適 している)」、「Wherein(そ<br />

こで)」 及 び「Whereby(それによって)」 節<br />

クレームの 範 囲 は、 示 唆 する 又 は 省 略 可 能 にするが 工 程 が 実 施 される 必 要 はないクレームの<br />

文 言 によって、 若 しくは 特 定 の 構 造 についてクレームを 制 限 しないクレームの 文 言 によって、<br />

制 限 されない。しかし、 次 に 掲 げるクレームの 文 言 は、 網 羅 的 ではないが、クレームに 用 い<br />

る 文 言 の 制 限 効 果 に 疑 問 を 起 こさせる 文 言 である。<br />

(A) 「adapted to(~に 適 している)」 又 は「adapted for(~に 適 している) 節<br />

(B) 「wherein(そこで)」 節 、 及 び<br />

(C) 「whereby(それによって)」 節<br />

これらの 節 のそれぞれがクレームにおいて 限 定 となるかどうかの 判 定 は、 当 該 事 案 の 具 体 的<br />

事 実 に 依 存 する。Hoffer v. Microsoft Corp., 405 F.3d 1326, 1329, 74 USPQ2d 1481, 1483<br />

(Fed. Cir. 2005)において、 裁 判 所 は、「『whereby』 節 が 特 許 性 に 関 係 のあるものの 状 況 を<br />

述 べている 場 合 、 当 該 発 明 の 実 体 が 変 化 するために 無 視 することができない。 同 文 献 。しか<br />

し、 同 裁 判 所 は( 引 用 は Minton v. Nat’l Ass fn of Securities Dealers, Inc., 336 F.3d<br />

1373, 1381, 67 USPQ2d 1614, 1620 (Fed. Cir. 2003))、「『 方 法 クレームの whereby 節 は、<br />

最 終 的 に 記 載 されたプロセス 工 程 の 意 図 された 結 果 を 単 に 表 している 場 合 は 重 視 されない』」<br />

同 文 献 。<br />

61


2112 潜 在 的 特 性 に 基 づく 拒 絶 の 要 件 ; 立 証 責 任<br />

先 行 技 術 の 引 例 の 明 確 、 黙 示 的 かつ 潜 在 的 な 開 示 は、 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 によるク<br />

レームの 拒 絶 において 依 拠 され 得 る。「 先 行 技 術 の 引 例 、 事 実 に 関 する 争 点 から 潜 在 的 に 教<br />

示 される 内 容 は、 新 規 性 の 欠 如 及 び 自 明 性 を 検 討 する 中 で 生 じる。」In re Napier, 55 F.3d<br />

610, 613, 34 USPQ2d 1782, 1784 (Fed. Cir. 1995)( 引 用 文 献 の 一 つに 潜 在 的 に 開 示 された<br />

部 分 に 基 づく 特 許 法 第 103 条 拒 絶 を 支 持 。)In re Grasselli, 713 F.2d 731, 739, 218 USPQ<br />

769, 775 (Fed. Cir. 1983)も 参 照 のこと。<br />

I. 古 いものは 新 しい 特 性 の 発 見 によって 特 許 を 受 けられない<br />

「 先 行 技 術 の 組 成 物 の、 従 前 には 認 められていない 特 性 や、 又 は 従 来 技 術 の 機 能 に 関 する 科<br />

学 的 説 明 を 発 見 しても、 発 見 者 が 古 い 組 成 物 は 新 規 であるとして 特 許 を 受 けられるようには<br />

ならない。」Atlas Powder Co. v. Ireco Inc., 190 F.3d 1342, 1347, 51 USPQ2d 1943, 1947<br />

(Fed. Cir. 1999)。 従 って、 先 行 技 術 に 潜 在 的 に 存 在 する 新 規 使 用 、 新 規 機 能 又 は 未 知 の 特<br />

性 についてクレームすることは 必 ずしも 当 該 クレームを 特 許 性 のあるものとするわけではな<br />

い。In re Best, 562 F.2d 1252, 1254, 195 USPQ 430, 433 (CCPA 1977)。In re Crish, 393<br />

F.3d 1253, 1258, 73 USPQ2d 1364, 1368 (Fed. Cir. 2004)において、 裁 判 所 は、 以 前 に 配<br />

列 決 定 されていない 従 来 技 術 のプラスミドを 配 列 決 定 することによって 入 手 され、クレーム<br />

されているプロモーター 配 列 は、クレームされているオリゴヌクレチオドと 同 一 の DNA 配 列<br />

を 必 然 的 に 有 する 従 前 技 術 のプラスミドによって 新 規 性 を 喪 失 したとした。 同 裁 判 所 は「た<br />

だ 単 に 既 知 の 材 料 の 特 性 を 発 見 しても 新 規 性 はなく、 従 来 技 術 材 料 の 特 定 及 び 特 性 評 価 もま<br />

たそれに 新 規 性 を 与 えるものではない」と 述 べた。 同 文 献 。また、 潜 在 的 特 性 及 びプロダク<br />

ト・バイ・プロセス・クレームについては MPEP 第 2112.01 条 を、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 潜<br />

在 的 特 性 及 び 拒 絶 については MPEP 第 2141.02 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 当 該 発 明 時 に 認 識 される 必 要 のない 潜 在 的 特 徴<br />

当 業 者 が 発 明 時 にその 潜 在 的 開 示 を 認 識 していたであろうことは 必 要 ない。 単 に、 当 該 保 護<br />

対 象 が 先 行 技 術 引 例 の 中 に 事 実 上 潜 在 的 に 含 まれているだけでよい。Schering Corp. v.<br />

Geneva Pharm. Inc., 339 F.3d 1373, 1377, 67 USPQ2d 1664, 1668 (Fed. Cir. 2003)( 潜 在<br />

的 に 新 規 性 がないとするためには、 基 準 日 以 前 の 当 業 者 による 認 識 を 必 要 とするという 主 張<br />

の 拒 絶 、 及 び、 潜 在 的 特 性 を 明 らかにするための、 基 準 日 を 過 ぎてからの 臨 床 試 験 に 関 する<br />

専 門 家 証 言 の 許 可 ); 次 も 参 照 のこと。Toro Co. v. Deere & Co., 355 F.3d 1313, 1320, 69<br />

USPQ2d 1584, 1590 (Fed. Cir. 2004)(「 特 性 は 必 要 な 特 徴 である、 若 しくは 先 行 技 術 の 実 施<br />

例 (それ 自 体 十 分 に 記 述 され 実 施 可 能 である)の 成 果 であるという 事 実 は、その 事 実 が 先 行 技<br />

術 の 発 明 時 に 知 られていなかったとしても、 潜 在 的 に 新 規 性 がないとすることに 十 分 であ<br />

る。」);Abbott Labs v. Geneva Pharms., Inc., 182 F.3d 1315, 1319, 51 USPQ2d 1307, 1310<br />

(Fed.Cir.1999)(「 売 りに 出 される 製 品 が 当 該 クレームの 各 限 定 のそれぞれを 潜 在 的 に 有 する<br />

場 合 、その 発 明 は、 当 該 取 引 当 事 者 がその 製 品 は 当 該 クレームの 特 性 を 有 することを 認 めて<br />

いるか 否 かを 問 わず、 販 売 中 である。」);Atlas Powder Co. v. Ireco, Inc., 190 F.3d 1342,<br />

1348-49 (Fed. Cir. 1999)(「 十 分 な 給 気 」はその 先 行 技 術 の 潜 在 的 特 性 であったので、その<br />

先 行 技 術 が 当 該 発 明 の 重 要 な 特 徴 を 認 識 していないことは 関 連 性 がない。・・・ 潜 在 的 な 構 造 、<br />

組 成 物 又 は 機 能 は 必 ずしも 知 られているというわけではない。);SmithKline Beecham Corp. v.<br />

62


Apotex Corp., 403 F.3d 1331, 1343-44, 74 USPQ2d 1398, 1406-07 (Fed. Cir. 2005)( 化 合<br />

物 の 無 水 形 に 対 する 先 行 技 術 特 許 により、クレームされている 半 水 化 物 は 新 規 性 を 喪 失 する、<br />

なぜなら、その 無 水 化 合 物 を 製 造 するために 先 行 技 術 のプロセスを 実 行 すれば、 先 行 技 術 が<br />

その 半 水 化 物 を 検 討 若 しくは 認 識 していないとしても、クレームされている 半 水 化 物 「を 潜<br />

在 的 に 少 なくとも 微 量 もたらすことになる」からであるとした。)<br />

III. 特 許 法 第 102 条 / 第 103 条 による 拒 絶 は 先 行 技 術 製 品 が 同 一 のように 思 われる 場 合 に 行<br />

うことができる。ただし、その 先 行 技 術 が 潜 在 的 特 性 について 言 及 のない 場 合 を 除 く。<br />

出 願 人 が、 機 能 、 属 性 又 は 特 性 に 関 して 組 成 物 をクレームし、かつ 先 行 技 術 の 当 該 組 成 物 が<br />

クレームの 組 成 物 と 同 一 であるがその 機 能 が 引 例 によって 明 示 的 に 開 示 されていない 場 合 、<br />

審 査 官 は 特 許 法 第 第 102 条 及 び 第 103 条 の 両 条 項 に 基 づき、 第 102 条 / 第 103 条 拒 絶 として<br />

表 された、 拒 絶 を 行 うことができる。「 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 自 明 性 及 び 特 許 法 第 102 条<br />

に 基 づく 新 規 性 の 欠 如 による 同 時 拒 絶 に 何 ら 矛 盾 はない。」In re Best,562 F.2d 1252, 1255<br />

n.4, 195 USPQ 430, 433 n.4 (CCPA 1977)。この 同 じ 理 由 は、 製 品 、 装 置 及 び、 機 能 、 属 性<br />

又 は 特 性 についてクレームされた 方 法 クレームにも 適 用 しなくてはならない。 従 って、 特 許<br />

法 第 102 条 / 第 103 条 の 拒 絶 は、これらの 種 類 のクレーム 及 び 組 成 物 クレームに 適 している。<br />

IV. 審 査 官 は 潜 在 的 特 性 を 示 すに 資 する 理 由 又 は 証 拠 を 用 意 しなければならない<br />

所 定 の 成 果 又 は 特 性 が 先 行 技 術 において 現 れる 若 しくは 存 在 する 可 能 性 があるという 事 実 は、<br />

その 成 果 又 は 特 性 が 潜 在 的 特 性 であることを 立 証 するには 十 分 でない。In re Rijckaert, 9<br />

F.3d 1531, 1534, 28 USPQ2d 1955, 1957 (Fed. Cir. 1993)( 潜 在 的 性 質 は 先 行 技 術 に 必 然 的<br />

に 存 在 したものではなく、 条 件 の 最 適 化 によって 得 られるであろうものに 基 づいていたので、<br />

拒 絶 を 取 り 消 した);In re Oelrich, 666 F.2d 578, 581-82, 212 USPQ 323, 326 (CCPA 1981)。<br />

「 潜 在 的 性 質 を 立 証 するには、 外 的 証 拠 が『 不 足 している 説 明 事 項 が 引 例 に 記 載 されたもの<br />

に 必 然 的 に 存 在 すること、そして、それは 当 業 者 によってそのように 認 識 されるであろうこ<br />

とを 明 確 にしなくてはならない。しかし、 潜 在 的 特 性 は 蓋 然 性 若 しくは 可 能 性 により 立 証 さ<br />

れてはならない。 所 定 のことが 与 えられた 状 況 によって 生 じる 可 能 性 があるという 単 なる 事<br />

実 では 十 分 でない。』」In re Robertson, 169 F.3d 743, 745, 49 USPQ2d 1949, 1950-51 (Fed.<br />

Cir. 1999)( 引 用 省 略 )( 当 該 クレームは 3 個 の 固 定 要 素 を 有 する 使 い 捨 ておむつに 向 けられた。<br />

引 例 は、 当 該 クレームの 3 個 の 固 定 要 素 と 同 一 機 能 を 果 たす 2 個 の 固 定 要 素 を 示 した。 裁 判<br />

所 は、 当 該 クレームは、3 個 の 独 立 した 要 素 を 必 要 とすると 解 釈 し、その 引 例 は 第 3 の 固 定<br />

要 素 を 明 示 的 にせよ 潜 在 的 にせよ 示 していないと 判 示 した。)また、 先 行 技 術 の 引 例 が「その<br />

発 見 の 適 用 可 能 性 のせいぜい 一 つの 広 い 属 を 開 示 しているだけの」 場 合 、「 調 査 の 求 めは 潜<br />

在 的 特 性 の 開 示 ではない。」Metabolite Labs., Inc. v. Lab. Corp. of Am. Holdings, 370<br />

F.3d 1354, 1367, 71 USPQ2d 1081, 1091 (Fed. Cir. 2004)(「 一 つの 属 を 記 載 する 先 行 技 術<br />

の 引 例 は、まだ、その 広 いカテゴリ 内 のすべての 種 を 潜 在 的 に 開 示 するものではない」が、<br />

クレームの 種 の 記 載 が 行 われているかどうか、また、 先 行 技 術 の 引 例 はその 種 を 発 見 するた<br />

めのいっそうの 実 験 を 求 めているにすぎないかどうかを 確 認 するため 審 査 されねばならない<br />

ことの 説 明 。<br />

「 潜 在 的 特 性 の 理 論 に 依 拠 するにあたって、 審 査 官 は、 事 実 及 び/ 又 は 技 術 的 論 拠 に 基 づい<br />

て、 潜 在 的 であるとされる 特 性 は、 必 然 的 に、その 適 用 された 先 行 技 術 の 教 示 内 容 に 由 来 す<br />

63


るとの 判 断 を 合 理 的 に 裏 付 けなければならない。」Ex parte Levy, 17 USPQ2d 1461, 1464 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1990)( 強 調 は 原 文 のまま)( 出 願 人 の 発 明 は、 例 えば、 心 臓 病 患 者 の 血 管<br />

をきれいにする 際 に 使 用 される 二 軸 延 伸 の 軟 性 拡 張 カテーテル( 膨 張 して 展 開 するチューブ)<br />

に 向 けられた。) 審 査 官 は、 管 状 予 備 成 型 物 を 射 出 成 形 し、 次 にその 予 備 成 型 物 を 型 に 当 てて<br />

拡 張 させるためそれに 空 気 を 注 入 することを 開 示 した Schjeldahl の 米 国 特 許 を 適 用 した。こ<br />

の 引 例 は、 最 終 製 品 のバルーンが 二 軸 延 伸 であると 直 接 述 べてはいなかった。バルーンは「 薄<br />

く 曲 がりやすい 非 弾 性 の、 引 張 強 度 の 高 い、 二 軸 延 伸 の 合 成 プラスチック 材 料 」であること<br />

を 記 載 していた。Id. at 1462( 強 調 は 原 文 のまま)。 審 査 官 は Schjeldahl のバルーンは 本 質<br />

的 に 二 軸 延 伸 であると 主 張 した。 審 判 部 は、 審 査 官 が 潜 在 的 特 性 とする 結 論 を 裏 付 ける 客 観<br />

的 証 拠 又 は 説 得 力 のある 技 術 的 論 拠 を 提 供 していないことを 理 由 に 拒 絶 査 定 を 覆 した。<br />

In re Schreiber, 128 F.3d 1473, 44 USPQ2d 1429 (Fed. Cir. 1997)において、 裁 判 所 は、<br />

円 錐 形 の 口 に 与 えられた 先 行 特 許 が、 主 に、 油 差 しから 油 を 分 注 するために 使 われているが、<br />

潜 在 的 には、はじけたポップコーンを 小 分 けするための 円 錐 容 器 頭 部 という 出 願 人 のクレー<br />

ムに 記 載 される 機 能 を 果 たしているという 認 定 を 支 持 した。 審 査 官 は、 特 許 された 注 ぎ 口 と<br />

出 願 人 が 開 示 したキャップの 構 造 的 類 似 、すなわち、 二 つの 構 造 は 同 一 の 全 体 形 状 を 有 する<br />

ことに 基 づいて、 潜 在 的 特 性 を 主 張 した。 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。<br />

「Schreiber[ 出 願 人 ]のクレームに 何 ら、Schreiber の 容 器 が Harz の[ 特 許 ]と「 異 なる 形 状 」<br />

であることを 示 唆 するものはない。 実 際 、[]Harz( 図 5)による 実 施 例 と Schreiber の 出 願 の<br />

図 1 に 示 される 実 施 例 は 同 一 の 全 体 形 状 を 有 する。 従 って、 審 査 官 は、Harz により 開 示 され<br />

た 円 錐 状 キャップの 開 口 部 は 潜 在 的 に「はじけたポップコーンのかなりの 粒 を 同 時 に 通 過 さ<br />

せる」ために 十 分 な 大 きさであり、かつ、Harz の 円 錐 状 キャップのテーパーは 潜 在 的 に「 錐<br />

体 の 前 までにはじけたポップコーンを 自 動 的 に 詰 め 込 むことができ、また、キャップが 容 器<br />

に 取 り 付 けられる 場 合 、パッケージの 一 振 動 で 数 粒 だけを 分 注 させることができる」ような<br />

形 状 であるとの 結 論 を 正 当 化 した。 従 って、 審 査 官 が、Harz は 新 規 性 喪 失 につき 一 応 の 証 明<br />

をしたと 認 定 したことは 妥 当 である。」<br />

In re Schreiber, 128 F.3d at 1478、44 USPQ2d at 1432<br />

V. 製 品 が 実 質 的 に 同 一 であるように 思 われることを 教 示 する 引 例 が 一 度 拒 絶 の 根 拠 とされ、<br />

審 査 官 が 潜 在 的 特 性 を 示 す 証 拠 又 は 論 拠 を 提 示 すると、 自 明 でない 相 違 を 立 証 する 責 任 は 出<br />

願 人 に 転 換 する<br />

「 特 許 商 標 庁 は 出 願 人 に、 先 行 技 術 の 製 品 は 出 願 人 がクレームする 製 品 の 特 性 を 必 ずしも 若<br />

しくは 潜 在 的 に 有 していないことの 証 明 を 求 めることができる。 特 許 法 第 102 条 に 基 づく『 潜<br />

在 的 特 性 』による 拒 絶 であろうと、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく『 一 応 の 自 明 性 』による 拒 絶 で<br />

あろうと、これら 両 方 であろうと 片 方 であろうと、その 立 証 責 任 は 同 一 である・・・[ 脚 注 省<br />

略 ]。」 立 証 責 任 は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて 求 められるものと 同 様<br />

である。In re Fitzgerald, 619 F.2d 67, 70, 205 USPQ 594, 596 (CCPA 1980) (quoting In<br />

re Best, 562 F.2d 1252, 1255, 195 USPQ 430, 433-34 (CCPA 1977))。<br />

In re Fitzgerald 事 件 において、クレームは、 結 晶 性 熱 可 塑 性 物 質 のパッチを 接 着 させた 金<br />

属 締 め 具 からなる 自 動 ロック 式 ねじ 締 め 具 に 向 けられた。さらに 当 該 クレームは 熱 可 塑 性 物<br />

質 が 結 晶 化 による 収 縮 である 程 度 収 縮 することを 明 確 にした。 明 細 書 は、そのロック 式 締 め<br />

具 は、 金 属 締 め 具 を 加 熱 することによってその 金 属 にプレスする 熱 可 塑 性 ブランクを 溶 解 さ<br />

64


せ、 製 造 されることを 公 開 した。 熱 可 塑 性 物 質 が 金 属 締 め 具 に 接 着 した 後 、 最 終 製 品 は 水 で<br />

急 冷 し 冷 却 される。 審 査 官 は Barnes の 米 国 特 許 に 基 づいて 拒 絶 を 行 った。Barnes は、 熱 可<br />

塑 性 粉 体 をその 後 加 熱 される 金 属 締 め 具 に 置 くことにより 熱 可 塑 性 物 質 のパッチがその 中 に<br />

作 られる 自 動 ロック 式 締 め 具 を 教 示 した。 最 終 製 品 は 周 囲 空 気 中 で、 冷 却 用 空 気 によって、<br />

若 しくは 締 め 具 を 水 槽 に 接 触 させることによって 冷 却 された。 裁 判 所 はまず、2 つの 締 め 具<br />

は 同 一 であるか 互 いにわずかな 違 いしかないことを 指 摘 した。「2 つの 締 め 具 は 同 一 の 有 用<br />

性 を 有 し、 同 一 の 結 晶 性 ポリマーを 用 いており、そのポリマーを 溶 解 させ、 次 に 冷 却 するこ<br />

とで 形 成 される 接 着 性 の 樹 脂 パッチを 有 する。」Id. at 596 n.1, 619 F.2d at 70 n.l。 次<br />

に 裁 判 所 は、 審 判 部 は Barnes の 冷 却 速 度 は、ポリマーがクレームの 結 晶 化 による 収 縮 速 度 を<br />

持 つという 結 果 になることが 合 理 的 に 予 期 され 得 ると 判 定 していることに 言 及 した。 出 願 人<br />

は、その 収 縮 速 度 が 実 際 に 異 なるという 証 拠 による 認 定 に 反 論 しなかった。 出 願 人 は、 結 晶<br />

化 による 収 縮 速 度 はクールダウン 速 度 に 依 存 すること、Barnes のクールダウン 速 度 は 自 分 た<br />

ちのものよりずっと 緩 慢 であることを 主 張 したのみであった。クールダウン 速 度 の 違 いは 必<br />

ずしも 収 縮 の 違 いをもたらさないので、 特 許 法 第 102/103 条 の 一 応 の 証 明 に 反 論 するため、<br />

客 観 的 証 拠 が 要 求 された。<br />

In re Schreiber, 128 F.3d 1473, 1478, 44 USPQ2d 1429, 1432 (Fed.Cir.1997)において 裁<br />

判 所 は、 出 願 人 の 宣 誓 書 はテストされるディスペンスキャップ 及 び 使 用 されるポップコーン<br />

のいずれも 寸 法 を 指 定 していないので、その 宣 言 書 は 新 規 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 を 克 服 できな<br />

いと 判 示 した。 出 願 人 の 宣 言 書 は 単 に、 先 行 技 術 の 特 許 の 図 に 準 じて 作 られる 円 錐 形 のディ<br />

スペンスキャップは 小 型 すぎてポップコーンを 押 し 詰 め 小 分 けすることができず、 従 って、<br />

出 願 人 のクレームに 記 載 される 機 能 を 潜 在 的 に 行 うことができないことを 主 張 したにすぎな<br />

い。 裁 判 所 は、 先 行 技 術 特 許 の 開 示 は 油 差 しのディスペンサーとしての 使 用 に 限 定 されず、<br />

むしろ 特 許 の 図 に 示 される 正 確 な 構 成 よりも 広 範 であることを 指 摘 した。 裁 判 所 はまた、 審<br />

判 部 が 事 実 認 定 として、 当 該 特 許 で 開 示 されたキャップを 拡 大 版 は、 出 願 人 のクレームに 記<br />

載 される 機 能 を 行 うことができるであろうと 認 定 していることを 指 摘 した。<br />

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに 適 用 される 類 似 の 立 証 責 任 についての 詳 細 は、MPEP<br />

第 2113 条 を 参 照 のこと。<br />

2112.01 組 成 物 、 製 品 及 び 装 置 のクレーム<br />

I. 製 品 及 び 装 置 のクレーム― 引 例 に 記 載 される 構 造 が 実 質 的 に 当 該 クレームの 構 造 と 同 一<br />

の 場 合 、クレームの 特 性 又 は 機 能 は 潜 在 的 特 性 であると 推 定 される<br />

クレームの 製 品 と 先 行 技 術 の 製 品 が 同 一 若 しくは 構 造 又 は 組 成 物 において 実 質 的 に 同 一 であ<br />

る、 若 しくは 同 一 又 は 実 質 的 に 同 一 のプロセスで 生 産 される 場 合 、 新 規 性 の 欠 如 の 又 は 自 明<br />

性 の、 一 応 の 証 明 が 成 立 している。In re Best,562 F.2d 1252, 1255, 195 USPQ 430, 433 (CCPA<br />

1977)。「 特 許 商 標 庁 が、 出 願 人 の 当 該 製 品 及 び 先 行 技 術 は 同 一 であると 信 ずる 妥 当 な 理 由 を<br />

示 す 場 合 、 出 願 人 はそうでないことを 明 らかにする 責 任 を 有 する。」In re Spada, 911 F.2d<br />

705, 709, 15 USPQ2d 1655, 1658 (Fed. Cir. 1990)。 従 って、 一 応 の 証 明 は、 先 行 技 術 製 品<br />

はクレームする 製 品 の 特 性 を 必 ずしも 有 しないことを 示 す 証 拠 によって 反 論 することができ<br />

る。In re Best, 562 F.2d at 1255、195 USPQat 433, 次 も 参 照 のこと。Titanium Metals Corp.<br />

v. Banner, 778 F.2d 775, 227 USPQ 773 (Fed. Cir. 1985)(クレームは、0.2~0.4%の Mo<br />

と 0.6~0.9%の Ni を 含 み、 耐 腐 食 性 を 有 するチタン 合 金 に 向 けられた。ロシアの 論 文 はチ<br />

65


タン 合 金 が 0.2~0.4%の Mo と 0.6~0.9%の Ni を 含 むことは 開 示 したが 耐 腐 食 性 については<br />

無 言 であった。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、Mo 及 び Ni の 割 合 がまさにクレームされた 範 囲 内 に<br />

あったので、 当 該 クレームは 新 規 性 がないと 判 示 した。 同 裁 判 所 はさらに 続 けて、 当 該 組 成<br />

物 は 同 一 であり、したがって、 必 ず 当 該 特 性 を 示 すはずであるのだから、 合 金 がどのような<br />

特 性 を 有 するか、また、その 特 性 を 誰 が 発 見 したかは 重 要 でないとした。 次 も 参 照 のこと。<br />

In re Ludtke, 441 F.2d 660, 169 USPQ 563 (CCPA 1971)(クレーム 1 は、けい 線 を 放 射 状 に<br />

広 げることによって 互 いに 放 射 状 に 分 かれる 同 軸 円 周 パネルを 有 するパラシュートのかさに<br />

向 けられた。パネルは「 連 続 的 に 大 きくなる 各 パネルの 臨 界 速 度 が 前 のパネルの 臨 界 速 度 よ<br />

りも 小 さくなるように」 分 けられており、「それによって 前 記 パラシュートは 連 続 的 に 開 き、<br />

こうして 次 第 に 減 速 する。」 裁 判 所 は 当 該 クレームは Menget により 先 に 開 示 されたと 判 示 し<br />

た。Menget は、けい 線 で 分 けられた 3 枚 の 円 周 パネルを 有 するパラシュートを 教 示 した。 同<br />

裁 判 所 は、Menget が 当 該 クレームの 機 能 的 特 性 を 有 しないことを 出 願 人 は 立 証 できないとす<br />

る 拒 絶 を 支 持 した。Northam Warren Corp. v. D. F. Newfield Co.,7 F. Supp. 773, 22 USPQ<br />

313 (E.D.N.Y. 1934)( 指 の 爪 をきれいにするペンシルへの 特 許 は、 同 一 構 造 を 持 つ 書 くため<br />

のペンシルが 先 行 技 術 で 確 認 されたため 無 効 と 判 示 された。)<br />

II. 組 成 物 のクレーム― 組 成 物 が 物 理 的 に 同 一 である 場 合 、 必 ず 同 一 特 性 を 有 する<br />

「 同 一 化 学 成 分 の 製 品 は 相 互 に 排 他 的 な 特 性 を 有 することはできない。」 化 学 成 分 及 びその<br />

特 性 は 分 離 できない。 従 って、 先 行 技 術 が 同 一 化 学 構 造 を 教 示 する 場 合 、 出 願 人 が 開 示 する<br />

特 性 及 び/ 又 はクレームが 必 然 的 に 存 在 する。In re Spada, 911 F.2d 705, 709, 15 USPQ2d<br />

1655, 1658 (Fed. Cir. 1990)( 出 願 人 は、クレームの 組 成 物 は 粘 着 性 ポリマーを 含 む 感 圧 性<br />

接 着 テープであるが、 引 例 の 製 品 は 硬 質 かつ 耐 摩 耗 性 であると 主 張 した。「 審 判 部 は、モノ<br />

マーの 実 質 的 同 一 性 及 び 手 続 きは、 新 規 性 に 欠 ける Spada のポリマーラテックスの 特 許 性 欠<br />

如 の 一 応 の 証 明 を 裏 付 けるために 十 分 であると 正 しく 判 定 した。」)<br />

III. 製 品 のクレーム― 非 機 能 的 印 刷 物 によって、クレームの 製 品 と、その 印 刷 物 がなけれ<br />

ば 同 一 である 先 行 技 術 製 品 は 区 別 されない<br />

先 行 技 術 製 品 とクレームする 製 品 との 間 の 唯 一 の 違 いが 機 能 的 に 当 該 製 品 に 関 係 しない 印 刷<br />

物 である 場 合 、その 印 刷 物 の 内 容 はクレームする 製 品 と 先 行 技 術 を 区 別 しない。In re Ngai,<br />

367 F.3d 1336, 1339, 70 USPQ2d 1862, 1864 (Fed. Cir. 2004)( 問 題 のクレームは 使 用 法 と<br />

緩 衝 剤 を 必 要 とするキットであった。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、 当 該 クレームは、 使 用 法 の 内<br />

容 が 異 なっているとしても、 使 用 法 と 緩 衝 剤 を 含 むキットを 教 示 する 先 行 技 術 の 引 例 により<br />

新 規 性 を 喪 失 したと 判 示 した。) 次 も 参 照 のこと。In re Gulack, 703 F.2d 1381, 1385-86, 217<br />

USPQ 401, 404 (Fed. Cir. 1983)(「 印 刷 物 が 基 板 に 機 能 的 に 関 係 しない 場 合 、その 印 刷 物 は<br />

当 該 発 明 と 先 行 技 術 を 特 許 性 という 点 で 区 別 しない・・・ 重 要 な 問 題 はその 印 刷 物 と 当 該 基 板<br />

との 間 に 新 規 かつ 自 明 でない 機 能 的 関 係 が 存 在 するか 否 かである。」)<br />

2112.02 方 法 のクレーム<br />

方 法 のクレーム― 先 行 技 術 装 置 が 正 常 運 転 時 にクレームの 方 法 をを 実 行 する 場 合 、その 装 置<br />

はクレームの 方 法 の 新 規 性 を 喪 失 させる<br />

潜 在 的 特 性 の 原 則 に 基 づき、 先 行 技 術 装 置 が 正 常 かつ 通 常 運 転 時 において 必 然 的 にクレーム<br />

66


される 方 法 を 行 うであろう 場 合 、そのクレームされる 方 法 は 先 行 技 術 装 置 により 新 規 性 を 喪<br />

失 するとみなされる。 先 行 技 術 装 置 が、クレームする 方 法 の 実 施 について、 明 細 書 に 記 載 さ<br />

れた 装 置 と 同 一 の 場 合 、その 装 置 は 潜 在 的 にクレームの 方 法 を 実 行 するとみなすことができ<br />

る。In re King, 801 F.2d 1324, 231 USPQ 136 (Fed. Cir. 1986)( 当 該 クレームは、 塗 装 基<br />

板 の 光 の 吸 収 及 び 反 射 のプロセスを 通 して 周 辺 光 によって 生 まれる 色 彩 効 果 を 高 める 方 法 に<br />

向 けられた。Donley の 先 行 技 術 の 引 例 は、 銀 及 び 厚 さ 200~800 オングストロームの 金 属 酸<br />

化 物 で 被 膜 された 硝 子 基 板 を 示 した。Donley は 建 設 用 のペンキを 生 産 するため 被 膜 基 板 を 使<br />

用 したが、クレームの 方 法 の 吸 収 と 反 射 のメカニズムは 明 らかにされなかった。しかし、King<br />

の 明 細 書 は 自 らのプロセスで 使 用 するため Donley の 構 造 の 被 膜 基 板 を 使 用 していることを<br />

開 示 した。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、「Donley は、その 装 置 が『 正 常 かつ 通 常 運 転 』で 使 用 さ<br />

れる 場 合 、 審 判 請 求 されている 方 法 クレームに 記 載 された 機 能 を 潜 在 的 に 行 う」という 審 判<br />

部 の 認 定 を 支 持 し、 新 規 性 を 欠 く 一 応 の 証 明 がされたと 判 示 した。Id. at 138、801 F.2d at<br />

1326。Donley の 構 造 は 周 辺 光 に 置 いたときクレームの 方 法 を 行 わないであろうことを 証 明 す<br />

ることは 出 願 人 の 責 任 であった。) 次 も 参 照 のこと。In re Best, 562 F.2d 1252, 1255, 195<br />

USPQ 430, 433 (CCPA 1977)( 出 願 人 は、「( 前 略 ) 冷 却 されたゼオライトが X 線 回 折 パターン<br />

を 示 す 十 分 に 速 いペースで・・・スチームゼオライトの 冷 却 工 程 を 含 む」 加 水 分 解 に 安 定 なゼオ<br />

ライトアルミノケイ 酸 塩 を 調 合 する 方 法 をクレームした)。 方 法 の 制 限 のすべてが、 冷 却 工 程<br />

を 除 いて Hansford の 米 国 特 許 によりに 明 示 的 に 開 示 された。 裁 判 所 は、Hansford のゼオラ<br />

イトのサンプルは 後 に 続 く 取 扱 いを 容 易 にするため 必 然 的 に 冷 却 されるであろうと 述 べた。<br />

従 って、 特 許 法 第 102 条 / 第 103 条 による 一 応 の 証 明 がされた。 出 願 人 は、クレームの 方 法<br />

と Hansfordの 方 法 との 間 で X 線 回 折 パターンを 比 較 し、 冷 却 速 度 の 違 いを 示 す 何 らの 証 拠 も、<br />

若 しくは Hansfordの 方 法 は 異 なるX 線 回 折 を 有 する 製 品 となるであろうことを 示 す 何 らのデ<br />

ータも 提 出 することができなかった。2 つのタイプの 証 拠 のどちらかが 特 許 法 第 102 条 によ<br />

る 一 応 の 証 明 に 反 証 していただろう。 当 該 方 法 が 特 許 法 第 103 条 により 自 明 でないかどうか<br />

の 判 断 にはさらに 分 析 が 必 要 であろう。Ex parte Novitski, 26 USPQ2d 1389 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1993)( 審 判 部 は、 線 虫 を 防 止 する P. cepacia 菌 株 を 用 いて 植 菌 することにより 植<br />

物 病 原 性 線 虫 から 植 物 を 保 護 する 方 法 に 向 けられたクレームを 拒 絶 した。Dart に 対 する 米 国<br />

特 許 は 真 菌 病 から 植 物 を 守 るため P. cepacia タイプの Wisconsin 526 バクテリアを 用 いる 植<br />

菌 法 を 開 示 した。Dart は 線 虫 防 止 に 関 して 無 言 であったが、 審 判 部 はそのバクテリアの 潜 在<br />

的 な 特 性 であると 結 論 した。 審 判 部 は、 出 願 人 は 明 細 書 で Wisconsin 526 は 18%の 線 虫 予 防<br />

率 を 有 すると 述 べていることを 指 摘 した。)<br />

使 用 方 法 のクレーム― 古 い 構 造 及 び 組 成 物 の 新 規 かつ 自 明 でない 使 用 は 特 許 性 を 有 すること<br />

がある<br />

古 い 構 造 の 未 知 の 特 性 の 上 に 築 き 上 げられた 当 該 構 造 の 新 たな 利 用 法 の 発 見 は、 使 用 方 法 と<br />

してその 発 見 に 特 許 性 がある 場 合 がある。In re Hack, 245 F.2d 246, 248, 114 USPQ 161, 163<br />

(CCPA 1957)。しかし、 当 該 クレームが 古 い 組 成 物 又 は 構 造 を 使 用 することを 記 載 しており、<br />

その「 使 用 」がその 組 成 物 又 は 構 造 の 成 果 又 は 特 性 に 向 けられている 場 合 、 当 該 クレームは<br />

新 規 性 を 欠 く。In re May,574 F.2d 1082, 1090, 197 USPQ 601, 607 (CCPA 1978)(クレーム<br />

1 及 び 6 は、 動 物 の 非 中 毒 性 の 鎮 痛 ( 痛 みの 軽 減 ) 効 果 法 に 関 するものであるが、 鎮 痛 効 果 を<br />

有 する 同 一 化 合 物 を 開 示 するが 中 毒 については 無 言 である 先 行 技 術 によって 新 規 性 を 欠 くと<br />

67


判 断 された。 裁 判 所 はその 拒 絶 を 支 持 し、 出 願 人 は 単 に 当 該 化 合 物 の 新 たな 特 性 を 見 出 した<br />

に 過 ぎないのでそのような 発 見 は 新 たな 利 用 を 構 成 しないと 述 べた。 続 けて、 同 裁 判 所 は 新<br />

たな 化 合 物 を 使 用 するプロセスを 記 載 したクレーム 2 乃 至 5 並 びにクレーム 7 乃 至 10 の 拒 絶<br />

を 覆 した。 同 裁 判 所 は、 新 たな 化 合 物 の 非 中 毒 性 特 性 は 予 測 されていないことを 示 す 証 拠 に<br />

依 拠 した。) 次 も 参 照 のこと。In re Tomlinson, 363 F.2d 928, 150 USPQ 623 (CCPA 1966)( 当<br />

該 クレームは、ジチオカルバミン 酸 ニッケルを 含 む 化 合 物 の 属 の 一 つと 混 合 することにより<br />

ポリプロピレンの 光 劣 化 を 阻 止 するプロセスに 向 けられた。ある 引 例 は、 熱 劣 化 を 減 じるた<br />

めポリプロピレンをジチオカルバミン 酸 ニッケルと 混 合 することを 教 示 していた。 裁 判 所 は、<br />

当 該 クレームはポリプロピレンをジチオカルバミン 酸 ニッケルと 混 合 する 明 白 なプロセスに<br />

読 めること、 及 びクレームの 前 提 部 分 は 単 に 2 種 類 の 材 料 を 混 合 した 結 果 に 向 けられたにす<br />

ぎないことを 判 示 した。「 引 例 はその 結 果 の 具 体 的 評 価 を 示 していないが、 出 願 人 によるそ<br />

の 発 明 は 古 い 組 成 物 の 特 性 を 発 見 しただけのことに 等 しい。」363 F.2d at 934、150 USPQat<br />

628( 強 調 は 原 文 のまま)。<br />

68


2113 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム<br />

プロダクト・バイ・プロセス・クレームは 記 載 された 工 程 の 操 作 に 限 定 されず、その 工 程 に<br />

よって 暗 黙 に 定 義 される 構 造 にのみ 限 定 される<br />

「プロダクト・バイ・プロセス・クレームはプロセスによって 限 定 され 定 義 されるにしても、<br />

特 許 性 の 判 定 は 製 品 そのものを 基 にする。 製 品 の 特 許 性 は、その 製 品 の 生 産 方 法 に 依 存 しな<br />

い。プロダクト・バイ・プロセス・クレームの 製 品 が 先 行 技 術 の 製 品 と 同 一 又 は 自 明 である<br />

場 合 、 当 該 クレームは 従 前 の 製 品 が 異 なるプロセスで 製 造 されたとしても 特 許 を 取 得 するこ<br />

とはできない。In re Thorpe, 777 F.2d 695, 698, 227 USPQ 964, 966 (Fed. Cir. 1985)( 引<br />

用 省 略 )(クレームはノボラック 発 色 剤 に 向 けられた。 発 色 剤 製 造 プロセスは 認 められた。 当<br />

該 発 明 プロセスと 先 行 技 術 との 違 いは、 高 価 な 予 備 反 応 をさせた 金 属 カルボン 酸 塩 を 加 える<br />

代 わりに 金 属 酸 化 物 及 びカルボン 酸 を 別 々の 材 料 として 加 えることであった。プロダクト・<br />

バイ・プロセス・クレームは、 先 行 技 術 および 特 許 されたプロセスの 両 方 で 最 終 製 品 に 結 局<br />

金 属 カルボン 酸 塩 が 含 まれることになることを 理 由 に 拒 絶 された。 金 属 カルボン 酸 塩 は 直 接<br />

加 えられないが、 代 わりにその 場 で 合 成 されるという 事 実 は 最 終 製 品 を 変 えるものではな<br />

い。)<br />

プロセス 工 程 により 暗 黙 に 定 義 される 構 造 は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの 特<br />

許 性 を 先 行 技 術 について 評 価 する 場 合 、とりわけ、 当 該 製 品 を 製 造 するプロセス 工 程 によっ<br />

てのみ 当 該 製 品 を 定 義 することができる 場 合 、 又 は、 製 造 プロセス 工 程 が 最 終 製 品 に 顕 著 な<br />

構 造 特 性 を 付 与 することが 期 待 されるであろう 場 合 に 考 慮 されなくてはならない。 参 照 事 例<br />

として、In re Garnero, 412 F.2d 276, 279, 162 USPQ 221, 223 (CCPA 1979)(「interbonded<br />

by interfusion( 混 合 により 相 互 に 接 着 された)」をクレームの 組 成 物 の 構 造 を 限 定 すると 判<br />

断 し、「welded( 溶 接 した)」、「intermixed( 混 合 された)」、「ground in place( 所 定 の 位<br />

置 にすり 合 わせた)」、「press fitted( 圧 入 した)」 及 び「etched( 刻 み 込 んだ)」などの 用 語<br />

はいずれも 構 造 限 定 として 解 釈 できるとした。)<br />

実 質 的 に 同 一 であると 思 われる 製 品 が 一 旦 認 定 され、 特 許 法 第 102 条 / 第 103 条 の 拒 絶 が 行 わ<br />

れると、 自 明 でない 違 いを 立 証 する 責 任 は 出 願 人 に 転 換 する<br />

製 品 が 従 来 の 様 式 でクレームされる 場 合 と 比 べて「プロダクト・バイ・プロセス・クレームの 一<br />

応 の 自 明 性 を 証 明 する 際 には、その 特 有 の 性 質 のため、 特 許 庁 が 負 う 立 証 責 任 は 軽 減 される。」<br />

In re Fessmann, 489 F.2d 742, 744, 180 USPQ 324, 326 (CCPA 1974)。 審 査 官 が、クレー<br />

ムされた 製 品 が 先 行 技 術 の 製 品 と 同 一 又 は 類 似 するように 思 われることを 示 すに 資 する 理 由<br />

を 一 旦 提 示 すると、 異 なるプロセスで 製 造 されるとしても、クレームの 製 品 と 先 行 技 術 の 製<br />

品 との 自 明 でない 違 いを 立 証 する 証 拠 を 提 示 する 責 任 は 出 願 人 に 転 換 する。In re Marosi,<br />

710 F.2d 798, 802, 218 USPQ 289, 292 (Fed. Cir. 1983)(クレームは、アルカリ 金 属 を 実<br />

質 的 に 含 まない 結 晶 性 金 属 ケイ 酸 塩 を 作 成 するため、 様 々な 無 機 材 料 を 溶 液 中 で 混 合 し、 結<br />

果 として 得 られるゲルを 加 熱 して 製 造 されるゼオライトに 向 けられた。 先 行 技 術 は、イオン<br />

交 換 によってアルカリ 金 属 を 除 去 した 後 、「 実 質 的 にアルカリ 金 属 を 含 まない」と 考 えられる<br />

ゼオライト 製 造 プロセスを 記 載 していた。 裁 判 所 は、 出 願 人 が、 先 行 技 術 は「 実 質 的 にアル<br />

カリ 金 属 を 含 まない」ものではないので、 違 いがあって 自 明 ではない 製 品 であるという 証 拠 を<br />

何 ら 提 出 していなかったので 拒 絶 を 支 持 した。)<br />

Ex parte Gray, 10 USPQ2d 1922 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)( 先 行 技 術 はヒトの 胎 盤 組<br />

69


織 から 取 り 出 されたヒトの 神 経 成 長 因 子 (b-NGF)を 明 らかにした。クレームは 遺 伝 子 工 学 技 術<br />

によって 作 られる b-NGF に 向 けられた。その 作 られる 因 子 は、 組 織 から 取 り 出 されたもので<br />

あろうと 遺 伝 子 工 学 技 術 によって 作 られたものであろうと 実 質 的 に 同 一 であるように 見 えた。<br />

出 願 人 は 先 行 技 術 の 因 子 の 純 度 を 問 題 にしたが、 自 明 でない 相 違 点 の 具 体 的 な 証 拠 は 全 く 示<br />

されなかった。 審 判 部 は、 特 許 の 行 方 を 左 右 する 争 点 は、クレームの 因 子 が 先 行 技 術 で 明 ら<br />

かにされた 因 子 と 比 べて 予 想 されない 特 性 を 示 すかどうかであると 述 べた。さらに 審 判 部 は、<br />

当 該 材 料 は 同 一 またはわずかな 違 いしかないように 見 えるので、 出 願 人 は 予 想 されない 特 性<br />

を 立 証 するために 二 つの 因 子 について 何 らかの 比 較 をすべきであったと 述 べた。<br />

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに 対 する 特 許 法 第 102 条 / 第 103 条 拒 絶 の 行 使 は 裁 判 所<br />

によって 認 められている<br />

「プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおける 物 理 的 記 述 の 欠 如 は、 当 該 クレームがプ<br />

ロセス 限 定 のみを 記 載 することができるという 事 実 にかかわらず、 記 載 されたプロセス 工 程<br />

のものではなくクレームされる 製 品 の 特 許 要 件 を 立 証 しなければならないので、 当 該 クレー<br />

ムの 特 許 要 件 の 判 断 をより 難 しいものにする。 従 って、 我 々は、 先 行 技 術 がプロダクト・バ<br />

イ・プロセス・クレームでクレームされる 製 品 と 同 一 、 又 はわずかな 違 いしかないと 合 理 的 に<br />

考 えられる 製 品 を 開 示 する 場 合 、 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 のいずれかに 基 づく 拒 絶 は、<br />

極 めて 公 正 であり 容 認 できると 考 える。 実 際 問 題 として、 特 許 庁 は 無 数 のプロセスを 適 用 し<br />

て 製 品 を 製 造 し、 次 に 先 行 技 術 の 製 品 を 入 手 してそれをもって 物 理 的 比 較 を 行 う 体 勢 が 整 っ<br />

ていない。」In re Brown, 459 F.2d 531, 535, 173 USPQ 685, 688 (CCPA 1972)。<br />

70


2114 装 置 及 び 物 品 のクレーム― 機 能 的 文 言<br />

ミーンズ・プラス・ファンクションの 限 定 の 機 能 的 部 分 を 解 釈 する 際 に 指 針 となる 判 例 の 論 考<br />

については、MPEP 第 2181 条 乃 至 第 2186 条 を 参 照 のこと。<br />

装 置 クレームは 先 行 技 術 と 構 造 的 に 区 別 できなければならない<br />

装 置 の 特 徴 は 構 造 的 または 機 能 的 に 列 挙 することができるが、 装 置 に 向 けられたクレームは<br />

機 能 というよりは 構 造 の 観 点 から 先 行 技 術 と 区 別 されねばならない。In re Schreiber, 128<br />

F.3d 1473, 1477-78, 44 USPQ2d 1429, 1431-32 (Fed. Cir. 1997)( 先 行 技 術 の 引 例 で 機 能 に<br />

関 する 開 示 がないことは、 問 題 の 限 定 は 先 行 技 術 の 引 例 に 潜 在 的 に 備 わっていると 判 断 され<br />

るため、クレームされた 装 置 の 新 規 性 の 欠 如 という 審 判 部 の 認 定 を 覆 すものではない。) 次 も<br />

参 照 のこと。In re Swinehart, 439 F.2d 210, 212-13, 169 USPQ 226, 228-29 (CCPA 1971);<br />

In re Danly, 263 F.2d 844, 847, 120 USPQ 528, 531 (CCPA 1959)。「 装 置 クレームは、 発<br />

明 品 が 何 をするかではなく、 発 明 品 が 何 であるかに 適 用 される。」Hewlett-Packard Co. v.<br />

Bausch & Lomb Inc., 909 F.2d 1464, 1469, 15 USPQ2d 1525, 1528 (Fed. Cir. 1990)( 強 調<br />

は 原 文 のまま)。<br />

発 明 品 を 操 作 する 方 法 は、 装 置 クレームと 先 行 技 術 を 区 別 しない<br />

「クレームされた 装 置 の 意 図 された 使 用 方 法 に 関 する 記 載 を 含 むクレームは、」 先 行 技 術 の<br />

装 置 がそのクレームの 構 造 的 限 定 のすべてを 教 示 している 場 合 、「クレームされた 装 置 と 先<br />

行 技 術 の 装 置 を 区 別 しない。」Ex parte Masham, 2 USPQ2d 1647 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1987)(クレーム 1 の 前 提 部 分 は、 当 該 装 置 は「 流 動 現 像 剤 材 料 を 混 合 する」ものであると 記<br />

載 し、クレーム 本 体 部 は「・・・を 混 合 する 手 段 、 前 記 混 合 手 段 は 固 定 されていて 現 像 剤 材 料 に<br />

完 全 に 浸 漬 されている」と 述 べている。 当 該 クレームは、 流 動 現 像 剤 を 混 合 する 意 図 した 用<br />

途 についてクレームのすべての 構 造 的 限 定 を 教 示 する 引 例 によって 拒 絶 された。しかしなが<br />

ら、その 混 合 機 は 現 像 剤 材 料 に 部 分 的 に 浸 漬 されているだけだった。 審 判 部 は、 浸 漬 の 量 は<br />

混 合 機 の 構 造 に 関 係 しないので 当 該 クレームは 適 切 に 拒 絶 されたと 判 定 した。)<br />

先 行 技 術 の 発 明 品 が 装 置 クレームのすべての 機 能 を 行 うことができても、 当 該 クレームが 新<br />

規 性 を 喪 失 しない 場 合<br />

先 行 技 術 の 発 明 品 がクレームに 記 載 されるすべての 機 能 を 行 うとしても、 構 造 的 違 いがある<br />

場 合 、その 先 行 技 術 は 当 該 クレームの 新 規 性 を 喪 失 させない。しかし、ミーンズ・プラス・フ<br />

ァンクションの 限 定 は 明 細 書 に 記 載 された 対 応 する 構 造 と 均 等 な 構 造 に 適 合 していることに<br />

留 意 しなくてはならない。In re Ruskin, 347 F.2d 843, 146 USPQ 211 (CCPA 1965)、In re<br />

Donaldson, 16 F.3d 1189, 29 USPQ2d 1845 (Fed. Cir. 1994)によって 黙 示 的 に 修 正 された<br />

とおり。 次 も 参 照 のこと。In re Robertson, 169 F.3d 743, 745, 49 USPQ2d 1949, 1951 (Fed.<br />

Cir. 1999)( 当 該 クレームは 3 個 の 固 定 要 素 を 有 する 使 い 捨 ておむつに 向 けられた。 引 例 は、<br />

当 該 クレームの 3 個 の 固 定 要 素 と 同 一 機 能 を 果 たす 2 個 の 固 定 要 素 を 示 した。 裁 判 所 は、 当<br />

該 クレームは 3 個 の 独 立 した 要 素 を 必 要 とすると 解 釈 し、その 引 例 は 第 3 の 固 定 要 素 を 明 示<br />

的 にせよ 潜 在 的 にせよ 示 していないと 判 示 した。)<br />

71


2115 装 置 によって 加 工 を 受 ける 材 料 又 は 物 品<br />

加 工 を 受 ける 材 料 又 は 物 品 は 装 置 クレームを 限 定 しない<br />

「 当 該 装 置 を 意 図 された 作 用 時 のその 内 容 物 に 関 連 付 ける 表 現 は、 装 置 クレームの 特 許 性 を<br />

判 断 する 上 で 重 要 ではない。」Ex parte Thibault, 164 USPQ 666, 667 (Bd. App. 1969)。<br />

さらに、「クレームされている 構 造 によって 加 工 を 受 ける 材 料 又 は 物 品 を 含 めることは、 当<br />

該 クレームに 特 許 性 を 与 えるものではない。」In re Young, 75 F.2d 996, 25 USPQ 69 (CCPA<br />

1935)(In re Otto, 312 F.2d 937, 136 USPQ 458, 459 (CCPA 1963)において 言 い 換 えられた<br />

とおり。)<br />

In re Young 事 例 において、コンクリート 梁 を 製 造 する 機 械 に 対 するクレームは、その 機 械<br />

で 作 られるコンクリート 補 強 部 材 及 びその 機 械 自 体 の 構 造 要 素 に 対 する 限 定 を 含 んでいた。<br />

裁 判 所 は、クレーム 本 体 部 内 で 形 成 される 物 品 の 包 含 は、それ 以 上 のものがなければ、クレ<br />

ームを 特 許 性 のあるものにしないと 判 示 した。<br />

In re Casey, 370 F.2d 576, 152 USPQ 235 (CCPA 1967)において、 装 置 クレームは「 支 持 構<br />

造 と、 前 記 支 持 構 造 に 付 属 するブラシからなり、 前 記 ブラシは 固 定 されない 端 部 に 終 端 する<br />

突 き 出 た 剛 毛 で 形 成 され、 接 着 テープが 脱 着 自 在 に 付 着 する 面 を 集 合 的 に 規 定 し、 前 記 接 着<br />

テープが 前 記 の 面 に 付 着 している 間 に、 前 記 ブラシと 前 記 支 持 構 造 との 間 に 相 対 運 動 を 提 供<br />

するための 手 段 を 備 えているテーピングマシン」と 記 載 した。 自 明 性 による 拒 絶 は、 穿 孔 シ<br />

ート 用 機 械 を 教 示 する Kienzle の 引 用 例 により 行 われた。 裁 判 所 は、「クレーム 1 の 接 着 テ<br />

ープ 取 扱 いに 関 する 引 例 は、 明 示 的 にも 黙 示 的 にも Kienzle の 構 造 の 他 にはいかなる 特 定 の<br />

構 造 も 要 求 していない」と 述 べて 拒 絶 を 支 持 した。 穿 孔 装 置 はクレームされたようなテービ<br />

ング 装 置 の 構 造 を 有 しており、 相 違 はその 装 置 の 用 途 にあって、「そのような 機 器 が 用 いら<br />

れる 方 法 又 は 手 段 はその 機 器 自 体 の 特 許 性 の 問 題 に 密 接 な 関 係 はない。」<br />

このような 判 例 は、その 意 図 された 用 途 で 物 品 又 は 材 料 を 加 工 する 機 械 類 に 向 けられたクレ<br />

ームに 限 られることに 留 意 すること。 製 品 クレームまたはキットクレーム(すなわち、キット<br />

にグループ 分 けされた 複 数 の 物 品 に 向 けられるクレーム)には 適 用 しない。<br />

72


2116 プロセスで 処 理 される 材 料<br />

プロセスが 実 行 される 材 料 はプロセスの 特 許 性 を 判 断 するに 当 たって 重 きが 置 かれなければ<br />

ならない。Ex parte Leonard, 187 USPQ 122 (Bd. App. 1974)。<br />

2116.01 新 規 な、 自 明 でない 開 始 材 料 又 は 最 終 製 品<br />

プロセス、 方 法 クレームの 自 明 性 を 判 断 する 際 にクレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 違 いを 評 価<br />

する 場 合 は、クレームの 全 ての 限 定 を 考 慮 しなければならない。MPEP 第 2143.03 条 を 参 照 の<br />

こと。<br />

In re Ochiai, 71 F.3d 1565, 37 USPQ2d 1127 (Fed. Cir. 1995) 及 び In re Brouwer, 77 F.3d<br />

422, 37 USPQ2d 1663 (Fed. Cir. 1996)は、 自 明 でない 製 品 を 製 造 又 は 使 用 することに 限 定<br />

するのでなければ 従 来 プロセスであるプロセスに、 特 許 が 与 えられるかどうかの 問 題 を 述 べ<br />

ている。どちらの 事 例 においても 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、 一 般 的 ルールを 特 許 法 第 103 条 の<br />

自 明 性 基 準 に 適 用 することが 不 適 切 であると 判 示 した。むしろ、 特 許 法 第 103 条 は、クレー<br />

ムの 保 護 対 象 を 全 体 的 に 見 て、それを 先 行 技 術 と 比 較 することに 関 する 高 度 に 事 実 依 存 的 な<br />

分 析 を 要 する。「 新 規 かつ 自 明 でない 製 品 を 生 み 出 すプロセスは、それでもなお 自 明 である<br />

可 能 性 がある。 反 対 に、 既 知 の 製 品 を 生 み 出 すプロセスは、それにもかかわらず 自 明 でない<br />

可 能 性 がある。」TorPharm, Inc. v. Ranbaxy Pharmaceuticals, Inc., 336 F.3d 1322, 1327,<br />

67 USPQ2d 1511, 1514 (Fed. Cir. 2003)。<br />

クレームの 発 明 を 全 体 として 解 釈 することは、すべてのクレーム 限 定 の 検 討 を 必 要 とする。<br />

従 って、 正 確 なクレーム 解 釈 は、 自 明 でない 製 品 の 製 造 又 は 使 用 を 記 載 する 方 法 クレームの<br />

文 言 を 材 料 限 定 として 取 り 扱 うことを 必 要 とする。Ochiai 事 件 における 判 決 はとりわけ、ク<br />

レームのどちらのタイプにせよ 製 品 限 定 の 効 果 について、 製 品 を 製 造 するプロセスと 製 品 を<br />

使 用 する 手 法 との 区 別 を 払 拭 した。<br />

Brouwer, 77 F.3d at 425、37 USPQ2d at 1666 において 言 及 されるとおり、クレームの 発 明<br />

が 自 明 であったであろうか 否 かに 関 する 審 査 は「 高 度 に 事 実 に 固 有 」である。 従 って、 自 明<br />

性 はケースバイケースで 査 定 されなくてはならない。 次 に 示 す 審 決 は、 特 許 法 第 103 条 の 自<br />

明 性 基 準 を 適 用 するに 当 たって、 一 般 的 なルールを 欠 き、 事 実 を 重 視 してクレームされたプ<br />

ロセスと 先 行 技 術 との 比 較 をした 例 である。In re Durden, 763 F.2d 1406, 226 USPQ 359 (Fed.<br />

Cir. 1985)( 審 査 官 は、 特 許 性 のある 開 始 材 料 が 反 応 して 特 許 性 のある 最 終 製 品 を 形 成 するプ<br />

ロセスに 向 けられたクレームを 拒 絶 した。 先 行 技 術 は、 同 一 の 化 学 反 応 メカニズムが 他 の 化<br />

学 物 質 に 当 てはまることを 示 した。 裁 判 所 は、 当 該 方 法 クレームは 先 行 技 術 に 基 づき 自 明 で<br />

あると 判 示 した。);In re Albertson, 332 F.2d 379, 141 USPQ 730 (CCPA 1964)( 別 の 新 規<br />

の 自 明 でない 材 料 を 得 るために、ある 新 規 の、 自 明 でない 材 料 を 化 学 的 に 還 元 するプロセス<br />

がクレームされた。そのプロセスは、その 還 元 反 応 が 既 知 であるため 自 明 と 判 示 された。In re<br />

Kanter, 399 F.2d 249, 158 USPQ 331 (CCPA 1968)( 特 許 性 のある 製 品 を 得 るために 特 許 性 の<br />

ある 基 材 にシリコン 処 理 を 施 すプロセスがクレームされた。 異 なる 基 材 に 塗 布 されるシリコ<br />

ン 処 理 プロセスを 教 示 する 先 行 技 術 に 基 づく 拒 絶 が 支 持 された。);Cf. In re Pleuddemann,<br />

910 F.2d 823, 15 USPQ2d 1738 (Fed. Cir. 1990)( 新 規 のシランカップリング 剤 を 用 いてポ<br />

リマーとフィルターを 接 合 させる 手 法 は、 他 のシランカップリング 剤 を 用 いて 接 合 させる 手<br />

法 はよく 知 られていたのであるが、 当 該 プロセスは 新 しいカップリング 剤 なしで 行 うことが<br />

できないとして、 特 許 性 があると 判 示 された。);In re Kuehl, 475 F.2d 658, 177 USPQ 250<br />

73


(CCPA 1973)( 新 規 のゼオライト 触 媒 を 用 いて 炭 化 水 素 を 分 解 するプロセスは、 接 触 分 解 工 程<br />

が 知 られていたけれども 特 許 性 があると 判 示 された。「 特 許 法 第 103 条 による 基 準 は、 先 行<br />

技 術 の 点 から 見 て、 本 発 明 全 体 としてそれが 発 明 された 時 点 において 自 明 であったであろう<br />

か 否 かであり、 先 行 技 術 はこの 点 でゼオライト ZK-22 を 含 んでいない。」 触 媒 として ZK-22<br />

を 用 いて 炭 化 水 素 を 分 解 するプロセスの 自 明 性 は、ZK-22 及 びその 特 性 に 関 する 知 識 を 全 く<br />

考 慮 せずに 判 断 されなくてはならない。475 F.2d at 664-665、177 USPQat 255) 及 び In re Mancy,<br />

499 F.2d 1289, 182 USPQ 303 (CCPA 1974)( 新 規 の 自 明 でない 微 生 物 を 培 養 することで 既 知<br />

の 抗 生 物 質 を 製 造 するプロセスに 対 するクレームは、 特 許 性 があると 判 示 された。)<br />

74


2121 先 行 技 術 ; 一 応 の 証 明 をするために 必 要 な 実 用 可 能 性 の 一 般 的 水 準<br />

I. 先 行 技 術 は 使 用 可 能 / 実 施 可 能 であると 推 定 される<br />

依 拠 する 引 例 がクレームの 発 明 の 要 素 すべてについて 明 示 的 に 新 規 性 を 喪 失 させる、 若 しく<br />

は 自 明 とする 場 合 、その 引 例 は 使 用 可 能 であると 推 定 される。<br />

そのような 引 例 が 一 旦 認 定 されると、 先 行 技 術 の 実 用 可 能 性 の 推 定 に 反 論 する 事 実 を 提 供 す<br />

る 責 任 は 出 願 人 側 に 転 換 する。In re Sasse, 629 F.2d 675, 207 USPQ 107 (CCPA 1980)。MPEP<br />

第 716.07 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 何 が「 実 施 可 能 な 開 示 」を 構 成 するかは、 開 示 が 含 まれる 先 行 技 術 の 種 類 に 依 存 しない<br />

「 実 施 可 能 な 開 示 」とするため 引 例 に 必 要 とされる 開 示 水 準 は、 問 題 となる 先 行 技 術 の 種 類<br />

にかかわらず 同 一 である。 先 行 技 術 の 引 例 は 米 国 特 許 、 外 国 特 許 、 印 刷 刊 行 物 又 はその 他 で<br />

あっても 問 題 にならない。 国 籍 に 基 づいて 先 行 技 術 の 引 例 に 賛 成 か 反 対 かを 差 別 するような<br />

制 定 法 ( 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 )の 根 拠 は 存 在 しない。In re Moreton,288 F.2d 708, 129<br />

USPQ 227 (CCPA 1961)。<br />

III. 有 効 性 は 先 行 技 術 の 実 施 可 能 性 の 要 件 ではない<br />

先 行 技 術 の 引 例 は 実 施 可 能 な 開 示 を 提 供 する。 従 って、その 引 例 は、 当 業 者 がクレームの 発<br />

明 を 実 施 し 得 るに 足 る 詳 細 さでクレームの 発 明 を 記 載 している 場 合 、クレームの 発 明 は 新 規<br />

性 を 喪 失 する。「 先 行 技 術 の 引 例 が、 新 規 性 を 喪 失 させる 目 的 を 果 たすために、 有 効 性 の 証<br />

明 は 必 要 ない。」Impax Labs. Inc. v. Aventis Pharm.Inc., 468 F.3d 1366, 1383, 81 USPQ2d<br />

1001, 1013 (Fed. Cir. 2006)。MPEP 第 2122 条 も 参 照 のこと。<br />

2121.01 実 用 可 能 性 が 問 題 となる 拒 絶 での 先 行 技 術 の 使 用<br />

「 出 願 人 の 発 明 を 第 102 条 の『 新 規 でない』 又 は『 新 規 性 を 欠 く』と 宣 言 するために 必 要 な<br />

先 行 技 術 の 開 示 の 量 を 判 断 する 場 合 、 判 示 されてきた 基 準 は、 引 例 が『 実 施 可 能 な 開 示 』を<br />

含 むかどうかである・・・。」In re Hoeksema, 399 F.2d 269, 158 USPQ 596 (CCPA 1968)。 新<br />

規 性 を 喪 失 させると 主 張 されている 引 例 の 開 示 は、 望 ましい 保 護 対 象 の 実 施 可 能 な 開 示 でな<br />

ければならない。 単 なる 保 護 対 象 の 名 指 し 又 は 説 明 では、 過 度 の 実 験 なしにそれが 作 り 出 さ<br />

れない 場 合 、 十 分 でない。Elan Pharm., Inc. v. Mayo Found. For Med. Educ. & Research,<br />

346 F.3d 1051, 1054, 68 USPQ2d 1373, 1376 (Fed. Cir. 2003)( 問 題 となっているのは、 先<br />

行 技 術 の 引 例 は 当 業 者 が Elan のクレームする 遺 伝 子 導 入 マウスを 過 度 の 実 験 をせずに 作 り<br />

出 せるようにするかどうかであった。 開 示 が、 当 業 者 に 遺 伝 子 導 入 マウスを 過 度 の 実 験 をせ<br />

ずに 作 り 出 せるようにできなければ、 引 例 は 先 行 技 術 として 適 用 できない。) 発 明 の 日 以 前 に<br />

クレームの 発 明 が 周 知 されていた 場 合 、 引 例 は「 実 施 可 能 な 開 示 」を 含 む。「 当 業 者 が 当 該<br />

発 明 に 関 する 刊 行 物 の 記 載 とクレームの 発 明 を 作 成 できる 自 身 の 知 識 とを 組 み 合 わせること<br />

ができる 場 合 、そのような 周 知 は 効 力 を 有 する。」In re Donohue, 766 F.2d 531, 226 USPQ<br />

619 (Fed. Cir. 1985)。<br />

I. 特 許 法 第 102 条 拒 絶 と 引 例 は 使 用 可 能 であることを 示 す 証 拠 の 追 加<br />

特 許 法 第 102 条 の 拒 絶 を 行 うことは、 引 例 自 体 が 当 業 者 に 当 該 発 明 を 実 践 する 方 法 、すなわ<br />

ち 開 示 される 物 品 の 製 造 法 若 しくは 使 用 法 を 教 示 しないとしても、 可 能 である。その 引 例 が<br />

75


クレームの 物 品 のすべての 要 素 を 教 示 する 場 合 、その 他 の 特 許 又 は 刊 行 物 などの 二 次 的 証 拠<br />

を 引 用 して 製 造 及 び/ 又 は 使 用 方 法 が 公 知 となっていることを 示 すことができる。In re<br />

Donohue, 766 F.2d at 533、226 USPQat 621。 二 次 的 引 例 を 用 いて 主 たる 引 例 が「 実 施 可 能<br />

な 開 示 」を 含 むことを 示 す、 特 許 法 第 102 条 拒 絶 の 詳 細 については MPEP 第 2131.01 条 を 参 照<br />

のこと。<br />

II. 特 許 法 第 103 条 の 拒 絶 と 実 施 不 能 先 行 技 術 の 使 用<br />

「 引 例 が 実 施 不 能 の 装 置 を 開 示 したとしても、それにもかかわらず、それは 先 行 技 術 を 教 示<br />

する。Beckman Instruments v. LKB Produkter AB, 892 F.2d 1547, 1551, 13 USPQ2d 1301,<br />

1304 (Fed. Cir. 1989)。 従 って、 実 行 不 可 能 な 引 例 は、 特 許 法 第 103 条 による 自 明 性 を 判 断<br />

するために 先 行 技 術 としての 資 格 を 与 えることができる。Symbol Techs. Inc. v. Opticon<br />

Inc., 935 F.2d 1569, 1578, 19 USPQ2d 1241, 1247 (Fed. Cir. 1991)。<br />

2121.02 化 合 物 及 び 組 成 物 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

I. 当 業 者 が 製 造 又 は 合 成 できなければならない<br />

化 合 物 を 製 造 するプロセスが 発 明 の 日 の 後 まで 開 発 されない 場 合 、 引 例 の 化 合 物 の 単 なる 名<br />

指 しは、それ 以 上 のものがなければ、 当 該 化 合 物 の 説 明 を 構 成 することができない。In re<br />

Hoeksema, 399 F.2d 269, 158 USPQ 596 (CCPA 1968)。しかし、 出 願 人 が 実 用 可 能 性 の 推 定<br />

に 反 証 する 事 実 を 提 示 するまで、 引 例 は 使 用 可 能 と 推 定 されることに 留 意 すること。In re<br />

Sasse, 629 F.2d 675, 207 USPQ 107 (CCPA 1980)。 従 って、 出 願 人 は 製 造 のためのプロセス<br />

が 当 該 発 明 時 点 に 知 られていなかったことを 示 す 証 拠 を 提 示 しなければならない。 適 用 すべ<br />

き 証 拠 基 準 については 次 の 段 落 を 参 照 のこと。<br />

II. 引 例 は、 化 合 物 又 は 組 成 物 を 製 造 する 試 みが 発 明 日 前 に 成 功 していない 場 合 、「 実 施 可<br />

能 な 開 示 」を 含 まない<br />

先 行 技 術 の 引 例 が 単 にクレームする 化 合 物 の 構 造 を 開 示 しているだけの 場 合 、その 化 合 物 を<br />

調 合 する 試 みは 発 明 の 日 以 前 に 成 功 していないことを 示 す 証 拠 は、 実 施 不 可 能 性 を 示 すため<br />

に 十 分 である。In re Wiggins, 488 F.2d 538, 179 USPQ 421 (CCPA 1971)。しかし、 刊 行 物<br />

の 著 作 者 が 化 合 物 を 開 示 させようとしない 事 実 は、それ 以 上 のものがなければ、その 刊 行 物<br />

に 基 づく 拒 絶 を 克 服 しない。In re Donohue, 766 F.2d 531, 226 USPQ 619 (Fed. Cir. 1985)(こ<br />

の 事 例 において、 審 査 官 は、 特 定 クラスの 化 合 物 を 製 造 する 一 般 的 なプロセスを 教 示 してい<br />

る 2 つの 特 許 と 組 み 合 わせてクレームの 化 合 物 を 開 示 した 刊 行 物 に 基 づいて、 特 許 法 第 102<br />

条 による 拒 絶 を 行 った。 出 願 人 は、 刊 行 物 の 著 作 者 が 実 際 にはその 化 合 物 を 合 成 していなか<br />

ったことを 述 べて 宣 誓 供 述 書 を 提 出 した。 裁 判 所 は、 刊 行 物 の 著 作 者 は 開 示 された 化 合 物 を<br />

合 成 しなかったという 事 実 は 引 例 の 実 用 可 能 性 についての 問 題 に 重 要 でないと 判 示 した。 特<br />

許 は 合 成 方 法 が 十 分 に 知 られている 証 拠 であった。 裁 判 所 は、きわめてよく 似 た 拒 絶 が 覆 さ<br />

れている Wiggins 事 件 を 区 別 した。Wiggins 事 件 では、 先 行 技 術 の 方 法 を 用 いて 当 該 化 合 物<br />

を 製 造 しようとする 試 みはすべて 成 功 していない。) 次 を 比 較 のこと。In re Hoeksema, 399<br />

F.2d 269, 158 USPQ 596 (CCPA 1968)( 化 合 物 のクレームは、クレームされる 化 合 物 ( 自 明 の<br />

同 族 体 )に 構 造 が 類 似 する 化 合 物 、 及 びそれらの 化 合 物 を 製 造 するプロセスを 開 示 した De<br />

Boer の 特 許 に 基 づいて 拒 絶 された。 出 願 人 は、De Boer 特 許 に 開 示 されるプロセスはクレー<br />

76


ムの 化 合 物 を 製 造 するために 使 用 できるとは De Boer 特 許 に 表 示 がないことを 述 べる 専 門 家<br />

Wiley による 宣 誓 供 述 書 をもって 応 答 し、 彼 は、De Boer 特 許 に 開 示 されるプロセスはクレー<br />

ムの 化 合 物 の 製 造 に 適 用 させることができるとは 考 えないと 述 べた。 裁 判 所 は、この 宣 誓 供<br />

述 書 に 述 べられた 事 実 は 当 該 拒 絶 を 克 服 するに 法 律 上 十 分 であり、 出 願 人 は、すべての 既 知<br />

のプロセスはクレームの 化 合 物 を 製 造 できないことを 証 明 することは 実 質 的 に 不 可 能 である<br />

ので、 示 す 必 要 なない、と 判 示 した。)<br />

2121.03 植 物 遺 伝 学 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

当 業 者 は 当 該 植 物 を 育 成 及 び 栽 培 できなければならない<br />

当 該 クレームが 植 物 に 関 するものの 場 合 、 先 行 技 術 の 知 識 に 結 び 付 けられる 引 例 は 当 業 者 が<br />

その 植 物 を 繁 殖 できるものでなければならない。In re LeGrice, 301 F.2d 929, 133 USPQ 365<br />

(CCPA 1962)( 英 国 王 立 ばら 会 年 刊 書 及 び 種 々のその 他 のカタログは、クレームのバラのカラ<br />

ー 写 真 を 掲 載 しており、 出 願 人 がそのバラを 栽 培 していることを 記 載 していた。 刊 行 物 は 出<br />

願 人 の 出 願 提 出 日 の 1 年 よりも 前 に 出 版 された。 裁 判 所 は、その 刊 行 物 はそのバラを 公 知 に<br />

するものではないと 判 示 した。そのバラを 繁 殖 させるために 必 要 な 接 ぎ 木 法 に 関 する 情 報 は<br />

その 刊 行 物 に 記 載 されていないが、そのような 情 報 は 当 業 者 ( 植 物 育 種 家 )がそのバラを 繁 殖<br />

させるために 必 要 である。) 次 と 比 較 のこと。Ex parte Thomson, 24 USPQ2d 1618 (Bd. Pat.<br />

App. & Inter. 1992)( 種 は、 出 願 人 の 特 許 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に 市 販 されていた。 当 業 者<br />

は 市 販 の 種 からクレームの 綿 品 種 を 栽 培 することができた。 従 って、その 綿 品 種 を 記 載 する<br />

刊 行 物 は「 開 示 を 実 施 可 能 」にしていた。 審 判 部 は、In re LeGric 事 件 のバラのカタログ 写<br />

真 はその 場 合 だけの 証 拠 であるとする 判 断 によって In re LeGriceby 事 件 を 区 別 した。 無 性<br />

的 に 繁 殖 させるバラは 種 から 繁 殖 することができないので、 実 施 可 能 な 形 で 市 販 されていた<br />

証 拠 は 無 かった。 従 って、そのバラはその 写 真 だけで 公 知 ということにはならないが、 綿 品<br />

種 はその 刊 行 物 及 びその 種 の 入 手 可 能 性 により 公 知 ということになる。)<br />

In re Elsner, 381 F.3d 1125, 1126, 72 USPQ2d 1038, 1040 (Fed. Cir. 2004)において、<br />

植 物 特 許 出 願 の 基 準 日 以 前 に 当 該 植 物 はドイツ 国 内 で 販 売 されており、 同 一 植 物 に 対 する 外<br />

国 の 植 物 育 種 家 の 権 利 (PBR) 出 願 が 欧 州 共 同 体 植 物 種 局 の 公 報 に 公 告 されていた。 裁 判 所 は、<br />

(i) 公 報 がクレームされたその 植 物 を 特 定 していること、(ii) 国 外 販 売 は 当 業 者 にその 植 物 そ<br />

のものを 所 有 させることになること、 及 び(iii)そのような 所 有 は 当 業 者 の 過 度 の 実 験 なしに<br />

その 植 物 の 無 性 繁 殖 を 許 すこと、その 結 果 、 事 実 及 び 出 来 事 の 組 み 合 わせがその 発 明 に 不 可<br />

欠 な 知 識 を 直 接 付 与 して 特 許 法 第 102 条 (b) 法 定 不 特 許 事 由 を 構 成 すると 判 示 した。381 F.3d<br />

at 1129、72 USPQ2d at 1041。 裁 判 所 は、 国 外 販 売 がそうでなければ 実 施 不 可 能 な 印 刷 刊 行<br />

物 を 実 施 可 能 にしうるとする 審 判 部 に 賛 同 したが、 同 事 案 は、その 植 物 の 国 外 販 売 は 熟 練 当<br />

業 者 に 入 手 できることが 知 られていたかどうか、 熟 練 当 業 者 はその 植 物 を 入 手 した 後 で 過 度<br />

の 実 験 をすることなく 無 性 的 にそれを 繁 殖 できたかどうかを 判 断 するため 追 加 事 実 認 定 のた<br />

め 差 し 戻 された。381 F.3d at 1131、72 USPQ2d at 1043。<br />

2121.04 装 置 及 び 物 品 ― 何 が 実 施 可 能 な 先 行 技 術 を 構 成 するか<br />

画 像 は「 実 施 可 能 な 開 示 」を 構 成 し 得 る<br />

画 像 及 び 図 面 は、 画 像 化 された 物 品 を 公 知 とする 十 分 な 実 施 可 能 性 がある。 従 って、そのよ<br />

うな 実 施 可 能 性 のある 画 像 は、 当 該 物 品 のクレームの 拒 絶 に 使 用 することができる。しかし、<br />

77


その 画 像 はすべてのクレームの 構 造 的 特 徴 及 びそれらがどのように 組 み 立 てられているかを<br />

示 すものでなければならない。Jockmus v. Leviton, 28 F.2d 812 (2d Cir. 1928) 先 行 技 術<br />

の 図 面 に 関 する 詳 細 については MPEP 第 2125 条 を 参 照 のこと。<br />

78


2122 先 行 技 術 の 有 用 性 の 考 察<br />

有 用 性 は 引 例 に 開 示 される 必 要 はない<br />

先 に 開 示 された 先 行 技 術 を 構 成 するために、 引 例 はクレームの 化 合 物 と 同 様 に 開 示 しなくて<br />

はならないが、 有 用 性 はその 引 例 により 開 示 される 必 要 はない。In reSchoenwald, 964 F.2d<br />

1122, 22 USPQ2d 1671 (Fed. Cir. 1992)( 当 該 出 願 は、ドライアイ 症 候 群 を 治 療 する 目 薬 組<br />

成 物 に 使 用 される 化 合 物 をクレームした。 審 査 官 は、クレームの 化 合 物 を 記 載 するがその 化<br />

合 物 の 利 用 法 は 記 載 していない 印 刷 刊 行 物 を 探 し 出 した。 裁 判 所 は、 当 該 化 合 物 及 びそれを<br />

製 造 するプロセスがその 引 用 文 献 によって 教 示 されたのでそのクレームは 新 規 性 がないと 判<br />

断 した。 裁 判 所 は、「 古 い 化 合 物 のクレームが 新 規 性 に 欠 けることを 示 す 引 例 となるために、<br />

有 用 性 が 開 示 される 必 要 はない」と 説 明 した。964 F.2d at 1124、22 USPQ2d at 1673。クレ<br />

ームの 化 合 物 は 引 例 により 教 示 されることで 十 分 である。) 次 も 参 照 のこと。Impax Labs. Inc.<br />

v. Aventis Pharm. Inc., 468 F.3d 1366, 1383, 8 USPQ2d 1001, 1013 (Fed. Cir. 2006)(「 有<br />

効 性 の 立 証 は、 先 行 技 術 の 引 例 が、 新 規 性 を 喪 失 させる 目 的 を 果 たすために 必 要 ではない。」)<br />

79


2123 好 ましい 実 施 例 に 代 わる 先 行 技 術 の 広 範 な 開 示 による 拒 絶<br />

I. 特 許 はその 内 容 すべてが 先 行 技 術 として 関 係 する<br />

「 引 例 としての 特 許 の 使 用 は、 特 許 権 者 が 自 らの 発 明 として 記 載 するもの、 又 は 取 り 上 げて<br />

いる 問 題 に 限 らない。それらは 当 該 技 術 に 関 する 文 献 の 一 部 であってそれらの 内 容 すべてが<br />

関 係 する。In re Heck, 699 F.2d 1331, 1332-33, 216 USPQ 1038, 1039 (Fed. Cir. 1983)( 引<br />

用 は In re Lemelson, 397 F.2d 1006, 1009, 158 USPQ 275, 277 (CCPA 1968))。<br />

引 例 は 好 ましくない 実 施 例 も 含 め、 当 業 者 に 対 して 合 理 的 に 示 唆 したであろうすべてについ<br />

て 依 拠 することができる。Merck & Co. v. Biocraft Laboratories, 874 F.2d 804, 10 USPQ2d<br />

1843 (Fed. Cir.), cert.denied, 493 U.S. 975 (1989). 次 も 参 照 のこと。Upsher-Smith Labs.<br />

v. Pamlab, LLC, 412 F.3d 1319, 1323, 75 USPQ2d 1213, 1215 (Fed. Cir. 2005)(ある 特 定<br />

の 構 成 要 素 を 任 意 に 含 むことを 開 示 している 引 例 は、その 構 成 要 素 を 含 む 組 成 物 と 含 まない<br />

組 成 物 を 共 に 教 示 する。);Celeritas Technologies Ltd. v. Rockwell International Corp.,<br />

150 F.3d 1354, 1361, 47 USPQ2d 1516, 1522-23 (Fed. Cir. 1998)。 裁 判 所 は、クレームの<br />

発 明 から 外 れたところを 教 示 していても、 先 行 技 術 はそのクレームの 新 規 性 を 喪 失 させると<br />

判 定 した。「 単 一 キャリアデータ 信 号 のモデムは 最 善 ではないことが 示 されている 事 実 は、<br />

それが 開 示 されている 事 実 の 効 果 を 損 なうものではない。」)<br />

MPEP 第 2131.05 条 及 び 第 2145 条 X.D.も 参 照 のこと。これらは、 新 規 性 欠 如 及 び 自 明 性 に 関<br />

して、クレームの 発 明 から 外 れたところを 教 示 している 先 行 技 術 について 論 じている。<br />

II. 好 ましくない 実 施 例 及 び 代 替 実 施 例 は 先 行 技 術 を 構 成 する<br />

開 示 例 及 び 好 ましい 実 施 例 があれば、より 広 い 開 示 又 は 好 ましくない 実 施 例 により、 的 外 れ<br />

の 教 示 を 構 成 しない。In re Susi,440 F.2d 442, 169 USPQ 423 (CCPA 1971)。「 既 知 の 又 は<br />

自 明 の 組 成 物 は、それが 同 一 用 途 の 他 の 何 らかの 製 品 よりも 少 し 劣 っていると 記 載 されてい<br />

たという 理 由 だけで 特 許 を 受 けることができるようにはならない。」In re Gurley, 27 F.3d<br />

551, 554, 31 USPQ2d 1130, 1132 (Fed. Cir. 1994)(その 発 明 はエポキシを 含 浸 させ 繊 維 強<br />

化 したプリント 基 板 の 材 料 に 向 けられた。 適 用 された 先 行 技 術 の 引 例 は、クレームの 材 料 と<br />

似 ているがエポキシの 代 わりにポリエステルイミド 樹 脂 で 含 浸 させたプリント 基 板 材 料 を 教<br />

示 していた。しかし、その 引 例 は、エポキシはこの 用 途 で 知 られていること、しかしエポキ<br />

シを 含 浸 させた 回 路 基 板 は「 比 較 的 満 足 な 寸 法 安 定 性 」 及 び「ある 程 度 の 柔 軟 性 」を 有 する<br />

がポリエステルイミド 樹 脂 で 含 浸 させた 回 路 基 板 よりも 劣 ることを 開 示 していた。 裁 判 所 は、<br />

その 引 例 はエポキシを 用 いることから 外 れたところを 教 示 しているとする 出 願 人 の 主 張 は、<br />

「Gurley は 当 該 技 術 分 野 において 知 られているものを 超 える 発 見 を 何 ら 主 張 していない」の<br />

で、 拒 絶 を 克 服 するには 不 十 分 であると 結 論 して 拒 絶 を 支 持 した。27 F.3d at 554、31 USPQ2d<br />

at 1132。)しかも、「 先 行 技 術 の 2 つ 以 上 の 代 替 例 の 単 なる 開 示 は、そのような 開 示 がクレ<br />

ームされた 解 決 手 段 を 批 判 したり、 信 じられないものとしたり、 又 は 不 賛 成 の 意 を 表 明 した<br />

りということをしていないので、これらの 代 替 例 のいずれも、 的 外 れの 教 示 を 構 成 しな<br />

い・・・。」In re Fulton, 391 F.3d 1195, 1201, 73 USPQ2d 1141, 1146 (Fed. Cir. 2004)。<br />

80


2124 引 用 例 の 基 準 日 は 出 願 日 に 先 行 しなければならないとする 規 則 に 対 する 例 外<br />

状 況 によっては 事 実 に 基 づく 引 例 が 出 願 日 に 先 行 する 必 要 はない<br />

状 況 によっては、 普 遍 的 事 実 を 示 すため 引 用 する 引 例 は 出 願 人 の 出 願 日 前 の 先 行 技 術 として<br />

利 用 可 能 である 必 要 はない。In re Wilson, 311 F.2d 266, 135 USPQ 442 (CCPA 1962)。そ<br />

のような 事 実 は 材 料 の 特 性 及 び 属 性 若 しくは 科 学 的 公 理 を 含 む。 事 実 に 基 づく 証 拠 が 示 され<br />

ている 後 日 の 刊 行 物 を 引 用 できる 具 体 例 としては、 引 例 に 示 される 事 実 が 次 のよう 証 拠 であ<br />

るという 状 況 がある。「 出 願 日 現 在 で、 過 度 の 実 験 が 必 要 とされた(In re Corneil, 347 F.2d<br />

563, 568, 145 USPQ 702, 705 (CCPA 1965))、 又 は、パラメータが 当 該 クレームに 存 在 しな<br />

い、 若 しくは 重 要 でない(In re Rainer, 305 F.2d 505, 507 n.3, 134 USPQ 343, 345 n.3 (CCPA<br />

1962))、 又 は、 明 細 書 の 記 載 が 不 正 確 である(In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 223 n.4, 169<br />

USPQ 367, 370 n.4 (CCPA 1971))、 又 は、 当 該 発 明 は 実 施 不 能 、 若 しくは 有 用 性 に 欠 ける(In<br />

re Langer, 503 F.2d 1380, 1391, 183 USPQ 288, 297 (CCPA 1974))、 又 は、クレームが 不<br />

明 確 である(In re Glass, 492 F.2d 1228,1232 n.6, 181 USPQ 31, 34 n.6 (CCPA 1974))、<br />

又 は、 先 行 技 術 製 品 の 特 性 は 既 知 である(In re Wilson, 311 F.2d 266, 135 USPQ 442 (CCPA<br />

1962))。」In re Koller, 613 F.2d 819, 823 n.5, 204 USPQ 702, 706 n.5 (CCPA 1980)( 引<br />

用 は In re Hogan, 559 F.2d 595, 605 n.17, 194 USPQ 527, 537 n.17 (CCPA 1977)( 強 調 は<br />

原 文 のまま))。しかし、 後 日 の 事 実 に 基 づく 引 例 を 用 いて、 当 該 出 願 が 特 許 法 第 112 条 第 1<br />

段 落 で 求 められるとおり 実 行 可 能 であるか 若 しくは 記 載 されているかどうかを 判 断 すること<br />

は 許 されない。In re Koller, 613 F.2d 819, 823 n. 5, 204 USPQ 702, 706 n.5 (CCPA 1980)。<br />

クレームの 発 明 後 であるという 理 由 で 先 行 技 術 として 適 さない 引 例 は、 当 該 技 術 分 野 又 は 当<br />

該 発 明 が 成 された 前 後 の 当 業 者 レベルを 示 すために 依 拠 することができる。Ex parte Erlich,<br />

22 USPQ 1463 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)。<br />

81


2125 先 行 技 術 としての 図 面<br />

図 面 は 先 行 技 術 として 使 用 することができる<br />

図 面 及 び 画 像 は、クレームされる 構 造 を 明 確 に 示 している 場 合 、クレームの 新 規 性 を 喪 失 さ<br />

せることができる。In re Mraz, 455 F.2d 1069, 173 USPQ 25 (CCPA 1972)。しかし、その<br />

画 像 はすべてのクレームの 構 造 的 特 徴 及 びそれらがどのように 組 み 立 てられているかを 示 す<br />

ものでなければならない。Jockmus v. Leviton, 28 F.2d 812 (2d Cir. 1928)。 図 面 の 出 所<br />

は 重 要 でない。 例 えば、 意 匠 特 許 の 図 面 は、 実 用 特 許 の 図 面 と 同 じようにクレームの 発 明 の<br />

新 規 性 を 喪 失 させる、 若 しくは 自 明 であるとすることができる。 引 例 が 実 用 特 許 の 場 合 、 示<br />

される 態 様 が 明 細 書 に 表 されていない 又 は 説 明 されていないことは 重 要 ではない。 当 該 図 面<br />

は、それが 当 業 者 に 対 し 合 理 的 に 開 示 、 示 唆 していることが 評 価 されねばならない。In re<br />

Aslanian, 590 F.2d 911, 200 USPQ 500 (CCPA 1979)。「 実 施 可 能 な 開 示 」としての 先 行 技<br />

術 図 面 についての 詳 細 は、MPEP 第 2121.04 条 を 参 照 のこと。<br />

図 面 の 特 徴 の 比 率 は、 図 面 が 正 確 な 縮 尺 率 でない 場 合 、 実 際 の 比 率 の 証 拠 とならない<br />

引 例 が 当 該 図 面 は 正 確 な 縮 尺 率 であることを 開 示 しておらず、 寸 法 についても 無 言 である 場<br />

合 、 図 面 の 特 徴 の 寸 法 に 基 づく 主 張 はほとんど 意 味 がない。 次 を 参 照 のこと。<br />

Hockerson-Halberstadt, Inc. v. Avia Group Int fl, 222 F.3d 951, 956, 55 USPQ2d 1487,<br />

1491 (Fed. Cir. 2000)(その 開 示 には、 図 面 が 正 確 な 縮 尺 率 で 書 かれているという 表 示 がな<br />

かった。「 特 許 図 面 は 要 素 の 正 確 な 比 率 を 明 記 していないので、 明 細 書 がその 点 について 完<br />

全 に 無 言 である 場 合 にこれに 依 拠 して 特 定 の 寸 法 を 証 明 することはできない、とすることが<br />

確 立 している。」)しかし、 図 示 された 品 物 の 説 明 は、 図 面 と 組 み 合 わせ、 図 面 が 当 業 者 に 合<br />

理 的 に 教 示 するであろうことについて 依 拠 することができる。In re Wright, 569 F.2d 1124,<br />

193 USPQ 332 (CCPA 1977)( 我 々は、「 上 訴 人 と Bauer の 図 面 の 相 対 寸 法 を 比 較 することで 達<br />

成 された、Bauer は『ウィスキー 樽 に 概 略 で 1/2 乃 至 1 インチのチャイム 長 さを 使 用 するこ<br />

とを 明 確 に 指 摘 している』とする 法 務 官 の 結 論 に 同 意 できない。これは、Bauer が 自 らの 図<br />

面 は 正 確 な 縮 尺 率 であることを 開 示 していないという 事 実 を 無 視 している。・・・しかしながら、<br />

我 々は、ウィスキーの 目 減 りはその 酒 が『 木 材 の 細 孔 を 通 る』ために 必 要 な 距 離 に 影 響 され<br />

る( 鏡 板 の 厚 みに 関 してではあるが)とする Bauer の 教 示 が、ウィスキーの 目 減 りをさらに 減<br />

らそうとしている 当 業 者 にチャイム 長 の 延 長 が 望 ましいことを 示 唆 しただろうとする 法 務 官<br />

に 賛 同 する。」569 F.2d at 1127、 193 USPQat 335-36。)<br />

82


2126 特 許 法 第 102 条 (a)、(b) 及 び(d)に 基 づく 拒 絶 において「 特 許 」としての 文 書 の 利 用<br />

可 能 性<br />

「 特 許 」の 名 前 だけでは、 文 書 を 特 許 法 第 102 条 (a) 又 は(b)に 基 づく 先 行 技 術 特 許 として 使<br />

用 できない<br />

外 国 が 特 許 であることを 示 すものは、 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び(b)に 基 づく 拒 絶 において 特 許<br />

たり 得 ない。 付 与 された 権 利 の 実 体 及 びその「 特 許 」 内 の 情 報 が 管 理 される 方 法 が 決 定 的 で<br />

ある。In re Ekenstam, 256 F.2d 321, 118 USPQ 349 (CCPA 1958)。 文 書 を「 特 許 」として<br />

拒 絶 に 適 用 し 得 る 場 合 につての 詳 細 は、 次 の 段 落 を 参 照 のこと。 特 許 法 第 102 条 (d)の 拒 絶 に<br />

おける「 特 許 」の 使 用 の 詳 細 については、MPEP 第 2135.01 条 を 参 照 のこと。<br />

秘 密 特 許 は、それが 公 衆 に 公 開 されるようになるまで 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び(b)に 基 づき 引<br />

例 として 利 用 することはできないが、 付 与 日 以 降 は 特 許 法 第 102 条 (d)に 基 づき 利 用 するこ<br />

とができる<br />

秘 密 特 許 は、「 印 刷 刊 行 物 」を 構 成 するには 一 般 公 開 が 十 分 でない 特 許 として 定 義 される。<br />

何 が「 印 刷 刊 行 物 」の 十 分 な 形 で 入 手 できるかについての 決 定 は MPEP 第 2128 条 乃 至 第<br />

2128.01 条 を 参 照 のこと。<br />

特 許 が 排 他 的 権 利 ( 法 的 強 制 力 のある)を 付 与 されていても、それが 秘 密 の 又 は 一 般 公 開 しな<br />

いものである 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び(b)に 基 づき 先 行 技 術 として 利 用 することはでき<br />

ない。In re Carlson, 983 F.2d 1032, 1037, 25 USPQ2d 1207, 1211 (Fed. Cir. 1992)。 当<br />

該 文 書 は、 少 なくとも 最 低 限 一 般 に 公 開 されていて 先 行 技 術 を 構 成 できなければならない。<br />

当 該 特 許 は、 公 衆 の 閲 覧 に 供 されるか 印 刷 された 形 で 提 供 されている 場 合 、 特 許 法 第 102 条<br />

(a) 及 び(b)の 目 的 上 十 分 な 形 で 一 般 に 公 開 される。 参 照 事 例 として、In re Carlson, 983 F.2d<br />

at 1037、25 USPQ2d at 1211(「 我 々は、はるかかなたの 遠 く 離 れた 都 市 で Geschmacksmuster<br />

が 一 般 公 開 にされることによって、 直 接 本 人 が、 若 しくは 代 理 人 が、ドイツの 法 律 に 基 づい<br />

て 登 録 されたことを 見 るためそこへ 旅 する 時 間 や 資 金 を 持 たず、 旅 したいとも 思 わない 者 に、<br />

調 査 の 負 担 をもたらし 得 ることを 認 識 している。しかし、このような 負 担 を、 関 連 する 先 行<br />

技 術 のすべての 内 容 に 関 する 知 識 で 満 たされている 仮 想 の 人 物 である 当 業 者 に、 法 は 課 して<br />

いるのである。 当 該 特 許 が 公 衆 に 公 開 される 日 は、それが 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び(b)の 引 例<br />

として 可 能 になる 日 である。In re Ekenstam, 256 F.2d 321, 118 USPQ 349 (CCPA 1958)。<br />

しかし、 当 該 特 許 付 与 後 の 秘 密 保 持 期 間 は、 特 許 法 第 102 条 (d)に 関 して 効 力 を 有 しないと 判<br />

示 されている。これらの 特 許 は、 特 許 権 が 付 与 される 日 以 降 、 特 許 法 第 102 条 (d)による 拒 絶<br />

に 使 用 できる。In re Kathawala,9 F.3d 942, 28 USPQ2d 1789 (Fed. Cir. 1993)。 特 許 法 第<br />

102 条 (d)に 関 する 詳 細 については MPEP 第 2135 条 乃 至 第 2135.01 条 を 参 照 のこと。<br />

2126.01 特 許 が 引 例 として 利 用 可 能 になる 日<br />

外 国 特 許 が 引 例 として 有 効 になる 日 は 通 常 、 特 許 権 が 正 式 にその 出 願 人 に 与 えられた 日 であ<br />

る<br />

特 許 が 引 例 として 利 用 可 能 になる 日 は 一 般 的 にその 特 許 が 権 利 行 使 可 能 となる 日 である。こ<br />

の 日 は、 主 権 者 が 正 式 に 特 許 権 を 当 該 出 願 人 に 与 える 日 である。In re Monks, 588 F.2d 308,<br />

200 USPQ 129 (CCPA 1978)。 当 該 特 許 がその 権 利 を 付 与 される 日 現 在 で 秘 密 であった 場 合 も、<br />

この 規 則 に 対 する 例 外 はない。In re Ekenstam, 256 F.2d 321, 118 USPQ 349 (CCPA 1958)。<br />

83


MPEP 第 901.05 条 に 多 くの 外 国 特 許 の 特 許 日 が 表 形 式 で 要 約 されていることに 留 意 。<br />

Chisum, 特 許 法 体 系 書 §3.06[4]n.2 は、 外 国 特 許 の 個 々の 段 階 の 引 例 利 用 可 能 日 を 明 記 する<br />

審 決 の 要 約 を 挙 げている。Chisum の 体 系 書 は 法 務 官 の 事 務 所 の 法 律 図 書 館 及 び、the Madison<br />

West Building, Room 1C35, 600 Dulany Street, Alexandria, Virginia 22314 に 位 置 する<br />

Memorial Law Library の Lutrelle F. Parker, Sr.に 用 意 されている。<br />

2126.02 引 例 が「 特 許 」であるが「 刊 行 物 」でない 場 合 にクレームを 拒 絶 するため 使 用 し 得<br />

る 引 例 開 示 の 範 囲<br />

特 許 明 細 書 に 良 く 見 られるクレームされていない 詳 細 は、 特 許 が 秘 密 であるとしても 依 拠 し<br />

得 る<br />

特 許 された 文 書 が 特 許 として 使 用 されるが 刊 行 物 としてではないとき、 審 査 官 はその 特 許 ク<br />

レームによって 伝 えられる 情 報 に 制 限 されるが、 特 許 法 第 102 条 (a)、(b) 及 び(d)に 基 づく 拒<br />

絶 を 行 う 場 合 、 特 許 されたクレームの 保 護 対 象 に 関 連 する 明 細 書 に 提 供 される 情 報 を 使 用 す<br />

ることができる。Ex parte Ovist, 152 USPQ 709, 710 (Bd. App. 1963)(イタリア 特 許 のク<br />

レームは 属 であった。 従 って 実 施 例 に 開 示 される 種 を 含 有 していた。 審 判 部 は 明 細 書 全 体 が<br />

クレームの 発 明 に 密 接 な 関 係 があることを 付 加 し、 審 査 官 の 特 許 法 第 102 条 (b)の 拒 絶 を 支 持<br />

した。);In re Kathawala, 9 F.3d 942, 28 USPQ2d 1785 (Fed. Cir. 1993) ( 問 題 のクレー<br />

ムは、 出 願 人 自 身 のギリシアおよびスペインにおける 親 出 願 に 基 づき 特 許 法 第 102 条 (d)によ<br />

り 拒 絶 された。 出 願 人 は「スペインで 特 許 された・・・ 発 明 は 米 国 出 願 においてクレームする 同<br />

一 の『 発 明 』ではない。なぜなら、スペイン 特 許 は[コレステロール 生 合 成 を 阻 止 する 化 合 物<br />

を] 製 造 するプロセスをクレームしており、クレーム 1 及 び 2 は 化 合 物 そのものに 向 けられて<br />

いる」と 主 張 した。9 F.3d at 944、28 USPQ2d at 1786。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は「 出 願 人 が<br />

自 己 の 発 明 を 完 全 に 開 示 し、さまざまな 形 で 自 己 の 発 明 をクレームする 可 能 性 がある 外 国 出<br />

願 を 行 う 場 合 、『 特 許 される・・・ 発 明 』に 対 する 第 102 条 (d)の 引 例 は 必 然 的 にその 発 明 のす<br />

べての 開 示 された 態 様 を 含 む」と 判 定 した。9 F.3d at 945-46、28 USPQ2d at 1789。)<br />

In re Fuge, 272 F.2d 954, 957, 124 USPQ 105, 107 (CCPA 1959)は 上 述 の 審 決 と 矛 盾 しな<br />

い。この 審 決 は 単 に「 少 なくとも、 当 該 特 許 の 範 囲 はその[クレーム]に 含 まれるすべてを 包<br />

含 する」とだけ 述 べた。( 強 調 は 引 用 者 による)。<br />

裁 判 所 は、 第 102 条 (a)、(b) 及 び(d)において「 特 許 される・・・ 発 明 」の 表 現 を 同 様 に 解 釈 し<br />

ており、 審 理 中 の 個 別 の 事 案 において、 特 許 法 第 102 条 のこれらのいずれの 項 が 問 題 になっ<br />

ているかには 関 係 なく 審 決 を 引 用 していることに 留 意 せよ。 従 って、 当 該 事 案 が 第 102 条 の<br />

いずれの 項 の 問 題 であるかは 重 要 でないようである。 裁 判 所 の 判 決 はこの 点 に 関 して 互 換 性<br />

がある。<br />

84


2127 先 行 技 術 としての 国 内 及 び 外 国 特 許 出 願<br />

I. 放 棄 された 出 願 、 仮 出 願 を 含 む<br />

公 衆 に 開 示 される 放 棄 出 願 は 先 行 技 術 として 使 用 することができる<br />

「 放 棄 された 特 許 出 願 は、 例 えば、 放 棄 された 特 許 [ 出 願 ]がもう 一 つの 特 許 の 開 示 において<br />

言 及 されている 場 合 に、 公 報 で、 又 は 37 CFR 1.139 に 基 づく 自 主 的 情 報 開 示 [ 先 行 防 衛 公 開<br />

ルール]によって 適 切 に 開 示 されている 場 合 、 先 行 技 術 の 証 拠 となることができる。Lee<br />

Pharmaceutical v. Kreps, 577 F.2d 610, 613, 198 USPQ 601, 605 (9th Cir. 1978)。 放 棄<br />

された 特 許 出 願 は 一 般 公 開 された 日 以 降 に 限 って 先 行 技 術 として 利 用 できるようになる。 特<br />

許 法 施 行 規 則 1.14(a)(1)(ii) 及 び(iv)を 参 照 のこと。しかし、 先 行 技 術 米 国 特 許 又 は 米 国 特<br />

許 出 願 公 開 において 言 及 された 放 棄 された 出 願 の 保 護 対 象 は、 仮 出 願 及 び 非 仮 出 願 の 両 方 を<br />

含 めて、その 特 許 又 は 特 許 出 願 公 開 に 基 づく 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 において、 依 拠 するこ<br />

とができる。ただし、 放 棄 された 出 願 の 開 示 が 当 該 特 許 の 引 例 によって 実 際 に 含 まれ 又 は 組<br />

みこまれている 場 合 とする。In re Lund, 376 F.2d 982, 991, 153 USPQ 625, 633 (CCPA 1967)<br />

を 比 較 のこと。( 裁 判 所 は 放 棄 された 出 願 の 一 部 継 続 出 願 である 特 許 に 基 づく 拒 絶 を 覆 した。<br />

出 願 人 の 出 願 日 は 引 例 特 許 の 発 行 日 以 前 であった。 放 棄 された 出 願 は、 拒 絶 に 不 可 欠 ではあ<br />

るが 一 部 継 続 出 願 に 持 ち 込 まれていない 保 護 対 象 を 包 含 していた。 裁 判 所 は、その 放 棄 され<br />

た 出 願 の 保 護 対 象 は 親 出 願 の 日 若 しくは 子 出 願 の 日 のいずれの 時 点 においても 公 衆 に 公 開 さ<br />

れておらず、 従 って 第 102 条 (e)の 拒 絶 において 依 拠 することはできないと 判 示 した。)MPEP<br />

第 901.02 条 も 参 照 のこと。 特 許 法 第 102 条 (e)の 特 許 法 第 119 条 又 は 第 120 条 に 基 づく 優 先<br />

権 を 主 張 する 米 国 特 許 の 日 については、MPEP 第 2136.02 条 及 び 第 2136.03 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 特 許 としてすでに 発 行 された 出 願<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 は 出 願 から 取 り 消 された、 従 って、 発 行 された 特 許 に 公 開 されな<br />

かった 事 項 に 依 拠 することはできない<br />

米 国 特 許 の 出 願 書 類 の 取 り 消 された 事 項 は 特 許 法 第 102 条 (e)による 拒 絶 において 依 拠 する<br />

ことはできない。Ex Parte Stalego, 154 USPQ 52, 53 (Bd. App. 1966)。 取 り 消 された 事 項<br />

は 出 願 が 特 許 になる 日 に、この 日 が 出 願 書 類 履 歴 を 公 衆 が 利 用 可 能 となる 日 であるので、 初<br />

めて 先 行 技 術 として 利 用 可 能 となる。In re Lund, 376 F.2d 982, 153 USPQ 625 (CCPA 1967)。<br />

特 許 法 第 102 条 (e) 拒 絶 に 使 用 できる 先 行 技 術 の 詳 細 については MPEP 第 2136.02 条 を 参 照 の<br />

こと。<br />

第 102 条 (b) 公 開 された 出 願 に 関 する 拒 絶 は 公 開 前 に 取 り 消 された 情 報 に 依 拠 することがで<br />

きる<br />

カナダ 特 許 出 願 から 特 許 発 行 前 に 取 り 消 されていた 図 は、その 出 願 が 一 般 に 公 開 されるよう<br />

になった 日 以 降 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 先 行 技 術 として 使 用 することができた。<br />

Bruckelmyer v. Ground Heaters, Inc., 445 F.3d 1374, 78 USPQ2d 1684 (Fed. Cir. 2006)<br />

III. 外 国 出 願 は 公 衆 の 閲 覧 のため 公 開 される( 出 願 公 開 )<br />

出 願 公 開 は「 刊 行 された」 文 書 を 構 成 することができる<br />

明 細 書 は 印 刷 された 形 で 発 行 されないが 公 報 に 発 表 され、かつ 何 人 も 謄 本 を 閲 覧 若 しくは 入<br />

手 することができる 場 合 、 十 分 に 一 般 公 開 されており 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び(b)の 意 義 で「 刊<br />

85


行 物 」を 構 成 する。In re Wyer, 655 F.2d 221, 210 USPQ 790 (CCPA 1981)を 参 照 のこと。<br />

従 前 の 審 決 では、 特 許 出 願 公 開 は「 刊 行 」されず、 従 って 先 行 技 術 を 構 成 できないと 判 定 さ<br />

れていた。Ex parte Haller, 103 USPQ 332 (Bd. App. 1953)。しかし、 文 書 が「 刊 行 される」<br />

かどうかを 問 わず、 特 許 法 第 第 102 条 及 び 第 103 条 の 適 用 上 その 文 書 は 一 般 にどのように 公<br />

開 されるかによる。 技 術 の 発 達 で 文 書 の 複 製 がより 容 易 になり、 出 願 公 開 へのアクセスは 増<br />

大 した。 容 易 に 複 製 可 能 な 形 式 で 提 供 される 項 目 は、 上 に 述 べるように、その 表 現 が 特 許 法<br />

第 102 条 で 用 いられるとき「 印 刷 された 刊 行 物 」となっている。In re Wyer, 655 F.2d 221,<br />

226, 210 USPQ 790, 794 (CCPA 1981)。(オーストラリア 特 許 出 願 公 開 はその 要 約 が 公 開 され<br />

るのみではあるが、 公 衆 の 閲 覧 に 供 されるので「 印 刷 さた 刊 行 物 」であると 判 示 された。マ<br />

イクロフィルム、「ジアゾ 印 画 」は 適 切 な 複 製 装 置 を 有 する 5 従 局 に 配 布 され、ジアゾ 印 画<br />

は 販 売 可 能 であった。) 外 国 特 許 出 願 の 内 容 は、 公 布 日 (すなわち、 出 願 公 開 への 組 み 入 れ)<br />

が 審 査 官 の 当 該 文 書 の 謄 本 の 審 査 によって 承 認 されるまで 先 行 技 術 として 依 拠 されてはなら<br />

ない。MPEP 第 901.05 条 を 参 照 のこと。<br />

IV. 係 属 中 の 米 国 出 願<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.14 条 (a)の 規 定 に 従 って、すべての 係 属 中 の 出 願 は 秘 密 にされる。ただ<br />

し、 公 開 された 出 願 、 再 発 行 出 願 、 及 び 完 全 な 出 願 の 一 般 公 開 請 求 が 特 許 商 標 庁 によって 認<br />

められた 出 願 ( 特 許 法 施 行 規 則 第 1.11 条 (b))を 除 く。しかし、 公 開 されていない 出 願 に 審 査<br />

中 の 出 願 を 共 有 する 譲 受 人 若 しくは 発 明 者 がある 場 合 、 状 況 次 第 で 拒 絶 が 適 切 となる。 例 え<br />

ば、2 出 願 が 独 立 していない 又 は 区 別 できない 場 合 、 仮 の 二 重 特 許 拒 絶 が 行 われる。MPEP 第<br />

804 条 を 参 照 のこと。 同 時 係 属 出 願 が 少 なくとも 一 人 の 発 明 者 が 異 なり、かつ 少 なくとも 出<br />

願 の 一 方 が 他 方 に 照 らして 自 明 であった 場 合 、 適 切 な 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (e) 又 は 第 103<br />

条 について 仮 の 拒 絶 が 行 われる。MPEP 第 706.02 条 (f)(2)、 第 706.02 条 (k)、 第 706.02 条 (l)(1)<br />

及 び 第 706.02 条 (l)(3)を 参 照 のこと。 米 国 出 願 公 開 に 依 拠 する 拒 絶 に 関 する 詳 細 については、<br />

MPEP 第 706.02 条 (a)、 第 804 条 及 び 第 2136 条 以 下 を 参 照 のこと。<br />

86


2128 先 行 技 術 としての「 印 刷 された 刊 行 物 」<br />

引 例 は、 一 般 に 公 開 される 場 合 、「 印 刷 された 刊 行 物 」とする<br />

引 例 は、「そのような 文 書 が 普 及 している、そうでなければ、 当 該 保 護 対 象 又 は 技 術 分 野 に<br />

関 心 を 持 つ 当 業 者 が 合 理 的 努 力 を 払 ってそれを 探 すことができる 範 囲 において 利 用 可 能 であ<br />

ることを 十 分 に 示 すことによって」、「 印 刷 された 刊 行 物 」であることを 証 明 される。In re<br />

Wyer, 655 F.2d 221, 210 USPQ 790 (CCPA 1981)。( 引 用 は I.C.E. Corp. v. Armco Steel Corp.,<br />

250 F. Supp. 738, 743, 148 USPQ 537, 540 (SDNY 1966))(「 我 々は『 印 刷 された 刊 行 物 』<br />

を 単 一 概 念 として 取 り 上 げなくてはならないことに 同 意 する。 従 来 のように『 印 刷 された』<br />

と『 刊 行 物 』を 分 けて 考 えることにもはや 正 当 性 はない。 文 書 複 製 、データ 保 存 及 びデータ<br />

検 索 システムにおける 技 術 の 状 態 を 考 慮 すると、ある 事 項 の『 普 及 の 可 能 性 』は 非 常 に 多 く<br />

の 場 合 、1836 年 の 特 許 法 に 導 入 された 当 時 のその 言 葉 の 意 味 で、それが『 印 刷 される』かど<br />

うかはほとんど 関 係 がない。いずれにしても、『 普 及 の 可 能 性 』 及 び『 公 衆 の 利 用 しやすさ』<br />

それぞれを 意 味 するための『 印 刷 された』 及 び『 刊 行 物 』の 語 の 解 釈 は、 今 では『 印 刷 され<br />

た 刊 行 物 』の 表 現 でそれらを 使 用 することでいささか 冗 長 になっているように 思 われる。In<br />

re Wyer, 655 F.2d at 226、210 USPQat 794。<br />

次 も 参 照 のこと。Carella v. Starlight Archery, 804 F.2d 135, 231 USPQ 644 (Fed. Cir.<br />

1986)(Starlight Archery は、アーチェリー 照 準 器 に 対 する Carella の 特 許 クレームは 雑 誌<br />

Wisconsin Bow Hunter Association (WBHA)の 広 告 と Carella の 出 願 日 以 前 に 用 意 された WBHA<br />

メール 広 告 によって 特 許 法 第 102 条 (a)に 基 づき 新 規 性 を 欠 如 していると 主 張 した。しかし、<br />

メール 広 告 が 受 信 人 の 何 人 によってにせよ、いつ 受 信 されたかについて 証 拠 はなかった。ま<br />

た、 雑 誌 は Carella の 出 願 日 から 10 日 後 まで 郵 送 されなかった。 裁 判 所 は、 広 告 又 はメール<br />

広 告 のいずれも 出 願 日 前 に 一 般 の 何 人 にも 公 開 されていなかったので、 特 許 法 第 102 条 (a)<br />

による 拒 絶 を 下 せないと 判 示 した。)<br />

先 行 技 術 としての 電 子 出 版 物<br />

「 印 刷 された 刊 行 物 」としての 地 位<br />

電 子 出 版 物 はオンラインデータベース 又 はインターネット 出 版 物 を 含 めて、 特 許 法 第 102 条<br />

(a) 及 び(b)の 意 義 で「 印 刷 された 刊 行 物 」であるとみなされる。ただし、 当 該 出 版 物 は 当 該<br />

文 書 に 関 係 する 当 業 者 に 公 開 されているものとする。 次 を 参 照 のこと。In re Wyer, 655 F.2d<br />

221, 227, 210 USPQ 790, 795 (CCPA 1981)(「 従 って、 情 報 は 印 刷 される、 手 書 きされる、<br />

又 はマイクロフィルム 若 しくは 磁 気 ディスクや 磁 気 テープ 等 に 格 納 されるであろうとなかろ<br />

うと、それがどのような 形 式 であっても、その 情 報 を『 印 刷 された 刊 行 物 』とみなしたい 者<br />

がその 普 及 の、 若 しくはその 文 書 が 関 係 する、 従 ってその 内 容 を 利 用 する 可 能 性 が 最 も 高 い<br />

当 業 者 が 入 手 し 利 用 できたことの、 十 分 な 証 拠 を 提 示 しなくてはならない。」( 引 用 省 略 ))<br />

次 も 参 照 のこと。Amazon.com v. Barnesandnoble.com, 73 F. Supp. 2d 1228, 53 USPQ2d 1115,<br />

1119 (W.D. Wash. 1999)(ウェブサイトのページが 先 行 する 引 例 として 被 告 により 依 拠 された<br />

( 無 駄 であった)が、 先 行 技 術 としての 引 例 の 地 位 は 異 議 を 申 し 立 てられなかった。);In re<br />

Epstein, 32 F.3d 1559, 31 USPQ2d 1817 (Fed. Cir. 1994)(それ 自 体 は 先 行 技 術 の 刊 行 物 で<br />

はない 要 約 データベースのプリントアウトは、そこで 言 及 されるソフトウェア 製 品 が 出 願 人<br />

の 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に「 最 初 にインストールされた」 又 は「リリースされた」ことの 証<br />

拠 を 提 示 しているとして 適 切 に 依 拠 された。)<br />

87


調 査 分 野 及 び 調 査 結 果 の 記 録 を 求 める 特 許 商 標 庁 の 方 針 (MPEP 第 719.05 条 を 参 照 )は、 審 査<br />

官 によって 引 用 されるインターネット 及 びオンラインデータベースの 引 例 は「その 文 書 が 関<br />

係 する 当 該 技 術 分 野 に 携 わっている 者 が 利 用 しやすい、 従 ってその 内 容 を 利 用 する 可 能 性 が<br />

最 も 高 い 者 が 利 用 しやすい」という 認 定 に 賛 成 している。<br />

Wyer, 655 F.2d at 221、210 USPQat 790。 将 来 同 じものを 検 索 することが 不 可 能 であるよう<br />

な 電 子 文 書 については,その 写 しを 特 許 商 標 庁 用 として 保 管 しなければならない。これは,<br />

情 報 源 がインターネットやオンラインデータベースである 場 合 等 は 特 に 重 要 である。<br />

利 用 可 能 となる 日<br />

インターネット 又 はオンラインデータベースの 先 行 技 術 開 示 はその 事 項 が 公 式 に 掲 載 された<br />

日 以 降 一 般 に 公 開 されるとみなされる。その 開 示 が 公 式 に 掲 載 された 日 の 証 拠 の 欠 如 は、 当<br />

該 刊 行 物 それ 自 体 に 刊 行 日 ( 若 しくは 検 索 日 )が 記 載 されていない 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (a)<br />

又 は(b)に 基 づく 先 行 技 術 として 依 拠 することができない。しかし、 当 該 技 術 の 現 状 について<br />

の 証 拠 の 提 示 は 依 拠 され 得 る。 審 査 官 は、 公 開 又 は 掲 載 の 最 先 日 を 見 いだすために 科 学 技 術<br />

情 報 センターに 尋 ねることができる。MPEP 第 901.06 条 (a) 第 IV.G. 段 落 を 参 照 のこと。<br />

依 拠 される 教 示 内 容 の 範 囲<br />

電 子 出 版 物 は、あらゆる 刊 行 物 のように、 当 業 者 に 合 理 的 に 示 唆 したであろうすべてについ<br />

て 依 拠 することができる。MPEP 第 2121.01 条 及 び 第 2123 条 を 参 照 のこと。しかし、 特 許 又<br />

は 印 刷 された 刊 行 物 の 要 約 である 電 子 文 書 が 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 のた<br />

めに 依 拠 される 場 合 、 要 約 ( 元 である 文 書 でない)の 文 章 に 限 りその 拒 絶 の 裏 付 けとして 依 拠<br />

することができる。 同 一 又 は 相 当 する 特 許 若 しくは 印 刷 された 刊 行 物 の 電 子 版 と 刊 行 された<br />

紙 の 版 が 認 め 得 るほどに 異 なる 場 合 、それぞれを 引 用 し、それらが 開 示 する 内 容 により 独 立<br />

した 引 例 として 依 拠 しなければならないかもしれない。<br />

インターネット 使 用 方 針<br />

インターネット 検 索 及 び 文 書 検 索 方 法 に 関 するインターネット 使 用 方 針 の 詳 細 については、<br />

MPEP 第 904.02 条 (c)を 参 照 のこと。 電 子 文 書 の 適 切 な 引 用 については MPEP 第 707.05 条 を 参<br />

照 のこと。<br />

審 査 官 は、 誰 が 実 際 に 文 書 を 調 べたかを 示 す 必 要 はない<br />

その 公 表 文 献 が 図 書 館 又 は 特 許 庁 を 通 じて 一 般 に 公 開 されている 場 合 、 誰 が 実 際 に 公 表 文 献<br />

を 調 べたかを 示 す 必 要 はない。In re Wyer, 655 F.2d 221, 210 USPQ 790 (CCPA 1981); In re<br />

Hall, 781 F.2d 897, 228 USPQ 453 (Fed. Cir. 1986)を 参 照 のこと。<br />

2128.01 必 要 とされる 一 般 公 開 の 水 準<br />

I. 大 学 図 書 館 に 収 蔵 される 論 文 は、 一 般 に 十 分 公 開 されている 場 合 、 先 行 技 術 となり 得 る<br />

索 引 を 付 け 図 書 館 の 書 架 に 置 かれた 博 士 論 文 は 十 分 に 一 般 公 開 されており「 印 刷 された 刊 行<br />

物 」として 先 行 技 術 を 構 成 する。In re Hall, 781 F.2d 897, 228 USPQ 453 (Fed. Cir. 1986)。<br />

図 書 館 利 用 に 制 限 があるとしても、 引 例 は、 技 術 に 関 係 する 公 衆 の 一 定 部 分 が 当 該 発 明 につ<br />

いて 知 るようになるであろうと 推 定 される 限 り、「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構 成 する。In re Bayer,<br />

88


568 F.2d 1357, 196 USPQ 670 (CCPA 1978)。<br />

In re Hall 事 例 において、 一 般 図 書 館 の 目 録 及 び 陳 列 業 務 では 大 学 図 書 館 に 預 けられた 博 士<br />

論 文 は 索 引 を 付 けられ 目 録 を 作 成 されて 棚 に 置 かれたであろうから 基 準 日 以 前 に 公 衆 が 利 用<br />

できることを 示 した。In re Cronyn,890 F.2d 1158, 13 USPQ2d 1070 (Fed. Cir. 1989)を 比<br />

較 のこと。ここでは 博 士 論 文 は 化 学 図 書 館 内 で、 棚 に 置 かれ 学 生 名 でアルファベット 順 にフ<br />

ァイルされた 索 引 カードによって 索 引 が 付 けられていたが 靴 箱 に 保 存 されていた。その 索 引<br />

カードは 学 生 名 及 び 論 文 タイトルのみが 記 載 された。3 名 中 2 名 の 判 事 が 学 生 の 論 文 は 一 般<br />

に 公 開 されていないと 判 定 した。 裁 判 所 は、 論 文 は 研 究 者 の 名 前 が 知 られている 場 合 にのみ<br />

検 索 することができたが、その 名 前 は 論 文 のテーマとは 何 の 関 係 もないので、その 論 文 は 有<br />

意 義 な 方 法 で 分 類 も 索 引 付 けもされていないと 判 断 した。しかし、1 名 の 判 事 は、 論 文 は 図<br />

書 館 内 の 棚 に 置 かれるという 事 実 は 論 文 を 一 般 に 公 開 しているに 足 るとするに 十 分 であると<br />

判 定 した。 索 引 の 性 質 は 決 定 的 なものではない。この 判 事 は 審 判 部 の 過 去 の 審 決 (Gulliksen v.<br />

Halberg, 75 USPQ 252, 257 (Bd. App. 1937) 及 び Ex parte Hershberger, 96 USPQ 54, 56 (Bd.<br />

App. 1952))に 依 拠 した。これらは、 論 文 のコピー 一 部 を 公 共 図 書 館 の 棚 に 置 くことでその 論<br />

文 は「 印 刷 された 刊 行 物 」となると 判 定 した。これらの 審 判 部 審 決 は 明 示 的 に 破 棄 されてい<br />

ないが、その 他 の 審 決 において 批 判 されていることに 留 意 しなくてはならない。 次 を 参 照 の<br />

こと。In re Tenney, 254 F.2d 619, 117 USPQ 348 (CCPA 1958)(Rich 判 事 による 同 意 意 見 )( 一<br />

部 しかない 文 書 であっても、 手 書 き、タイプライターで 打 った、 又 はマイクロフィルムに 記<br />

録 したものであると 否 を 問 わず、それを 検 索 ことができる 何 人 も 技 術 的 に 利 用 できる 可 能 性<br />

がある。)そのような 文 書 は、これまでの 印 刷 機 がその 文 書 を 複 製 するために 使 用 されている<br />

という 意 味 において「 印 刷 された」ものではない。 技 術 的 なアクセスの 容 易 性 のみが 求 めら<br />

れる 場 合 、「 論 理 的 にはすべての 印 刷 されていない 公 文 書 が 用 語 [ 印 刷 された]の 範 囲 内 に 含<br />

まれることを 必 要 とするであろう、それらはすべて『アクセス 可 能 』なのだから。 審 判 機 関<br />

の 中 にはその 方 向 からかけ 離 れてしまったものもあるが、『 大 学 論 文 の 事 件 』などの 場 合 、<br />

不 当 に、 間 違 った 理 論 でそれが 行 われてしまっていると 感 じる。 知 識 は、 技 術 的 なアクセス<br />

のしやすさと 区 別 されるとして、 普 及 のないところでは 公 衆 の 手 にはいらない・・・。」「 印 刷<br />

された」の 語 の 本 当 の 意 味 は「 広 範 な 普 及 の 可 能 性 」に 基 づいている。) 次 も 参 照 のこと。Deep<br />

Welding, Inc. v. Sciaky Bros., 417 F.2d 1227, 163 USPQ 144 (7th Cir. 1969) (Ex parte<br />

Hershberger 事 件 の 判 定 を「 行 き 過 ぎ」としている)。 次 を 比 較 のこと。In re Bayer, 568 F.2d<br />

1357, 196 USPQ 670 (CCPA 1978)( 引 例 は、 技 術 に 関 係 する 公 衆 の 一 定 部 分 が 当 該 発 明 につい<br />

て 知 るようになるであろうと 推 定 される 限 り、たとえ 利 用 のしやすさが 公 衆 のこの 部 分 のみ<br />

に 限 られているとしても、「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構 成 する。しかし、 出 願 人 の 論 文 の 利 用<br />

可 能 性 は 学 士 委 員 会 の 会 員 3 名 のみに 限 られていた。この 場 合 、 当 該 技 術 分 野 に 関 心 を 持 つ<br />

者 がその 発 明 について 知 っていたであろうと 推 定 することはできない。)<br />

II. 口 頭 で 提 示 された 論 文 は、 制 約 なしに 文 書 を 入 手 できる 場 合 「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構<br />

成 することができる<br />

すべての 関 係 者 に 開 かれたフォーラムで 口 頭 で 提 示 される 論 文 は、 文 書 が 制 約 なく 広 められ<br />

るならば「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構 成 する。Massachusetts Institute of Technology v. AB<br />

Fortia, 774 F.2d 1104, 1109, 227 USPQ 428, 432 (Fed. Cir. 1985)( 当 該 テーマに 関 心 を<br />

持 つすべての 者 に 開 かれた 科 学 会 議 で 50 乃 至 500 名 の 人 々に 口 頭 で 提 示 された 論 文 は、 求 め<br />

89


る 者 すべてに 制 約 なく 文 書 が 配 布 されており、 印 刷 された 刊 行 物 である。6 名 が 文 書 を 求 め<br />

て 入 手 した。)<br />

III. 秘 密 であることを 目 的 とした 内 部 文 書 は「 印 刷 された 刊 行 物 」ではない<br />

一 つの 組 織 の 内 部 のみで 秘 密 を 保 持 する 目 的 で 配 布 された 文 書 及 び 記 載 項 目 は、 配 布 された<br />

部 数 にかかわらず、「 印 刷 された 刊 行 物 」ではない。その 組 織 内 に 既 存 の 秘 密 保 持 方 針 又 は<br />

秘 密 を 保 持 する 為 の 合 意 がなくてはならない。 単 に 秘 密 を 保 持 する 意 図 のみでは 不 十 分 であ<br />

る。In re George, 2 USPQ2d 1880 (Bd. Pat. App. & Inter. 1987)( 研 究 報 告 書 に 関 する 秘<br />

密 保 持 方 針 を 理 解 する 者 に 限 って 組 織 内 に 配 布 するそのような 報 告 書 は、その 方 針 が 具 体 的<br />

に 文 書 に 記 載 されていたとしても 印 刷 された 刊 行 物 ではない。);Garret Corp. v. United<br />

States, 422 F.2d 874, 878, 164 USPQ 521, 524 (Ct. Cl.1970)(「 政 府 機 関 及 び 政 府 職 員 に<br />

限 る 配 布 は 刊 行 物 を 構 成 しないが・・・ 使 用 制 限 のない 営 利 会 社 への 配 布 は 明 らかに 構 成 す<br />

る。」);Northern Telecom Inc. v. Datapoint Corp., 908 F.2d 931, 15 USPQ2d 1321 (Fed.<br />

Cir. 1990) ( 秘 密 文 書 に 分 類 されていない、 軍 の AESOP-B コンピュータシステムに 関 する 4<br />

レポートが AESOP-B プロジェクトに 係 るおよそ 50 の 組 織 に 配 布 された。 一 つの 文 書 に「 複 製<br />

又 は 他 者 への 配 布 を 禁 ずる」の 表 示 がなされていた。 他 の 文 書 はこの 説 明 が 記 載 されるであ<br />

ろう 等 級 のものであった。<br />

当 該 文 書 は Mitre Corporation の 図 書 館 に 収 納 された。この 図 書 館 の 利 用 は AESOP-B プロジ<br />

ェクトの 関 係 者 に 限 定 されていた。 裁 判 所 は、 当 該 文 書 を「 印 刷 された 刊 行 物 」とするには<br />

一 般 開 放 が 不 十 分 であると 判 示 した。」)<br />

IV. 一 般 に 展 示 された 文 書 は、 展 示 期 間 が 僅 か 数 日 であってその 文 書 の 写 しが 配 布 されない<br />

としても、 若 しくは 図 書 館 又 はデータベースで 索 引 付 けされないとしても、「 印 刷 された 刊<br />

行 物 」を 構 成 する<br />

一 般 に 展 示 され、 当 業 者 がそれを 見 ることができるが 複 写 することができない 文 書 は、 複 製<br />

又 は 複 写 を 配 布 することで 流 布 しないとしても、 及 び/ 又 は 図 書 館 若 しくはデータベースで<br />

索 引 付 けされないとしても、「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構 成 することができる。In re<br />

Klopfenstein, 380 F.3d 1345, 1348, 72 USPQ2d 1117, 1119 (Fed. Cir. 2004)に 記 載 され<br />

るとおり、「 鍵 となる 調 査 は 引 例 が『 公 衆 にとってアクセス 可 能 』であるか 否 かである。」<br />

基 準 日 以 前 に、 当 該 発 明 を 開 示 するスライド 14 枚 のプレゼンテーションが 印 刷 されポスター<br />

ボードに 掲 示 された。 印 刷 されたスライドのプレゼンテーションは、2 つの 異 なる 産 業 イベ<br />

ントでおよそ 3 日 間 連 続 し、 何 ら 機 密 保 持 の 制 約 を 行 うことなく 展 示 された。380 F.3d at 1347、<br />

72 USPQ2d at 1118。 裁 判 所 は、「 当 該 プレゼンテーションのスライドも 原 稿 も 用 いない 完 全<br />

な 口 頭 によるプレゼンテーションは、 疑 いなく、 特 許 法 第 102 条 の 適 用 上 「 印 刷 された 刊 行<br />

物 ではない。さらに、スライドという 一 時 的 な 公 開 を 含 むプレゼンテーションは、 同 様 に、<br />

必 ずしも「 印 刷 された 刊 行 物 」とは 限 らない。」と 注 記 した。380 F.3d at 1349 n.4、72 USPQ2d<br />

at 1122 n.4。 配 布 されず 索 引 付 けされてもいない 一 時 的 に 展 示 された 参 照 文 献 が、そうであ<br />

っても、 公 的 に 十 分 公 開 されており 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく「 印 刷 された 刊 行 物 」とみな<br />

すことができるかどうかを 決 着 させるに 当 たって、 裁 判 所 は 次 の 要 因 を 検 討 した。「 展 示 さ<br />

れた 時 間 の 長 さ、 対 象 者 の 専 門 知 識 、 展 示 された 資 料 がコピーされないであろう 合 理 的 な 予<br />

想 があること( 又 は 予 想 されないこと)、 及 び 展 示 された 資 料 をコピーされたかもしれない 簡<br />

90


単 さ 若 しくは 容 易 さ」380 F.3d at 1350、72 USPQ2d at 1120。 上 述 の 要 因 を 審 査 して 裁 判 所<br />

は、その 展 示 は「 十 分 に 一 般 公 開 されており『 印 刷 された 刊 行 物 』とみなすことができる」<br />

と 結 論 した。380 F.3d at 1352、72 USPQ2d at 1121。<br />

2128.02 刊 行 物 が 引 例 として 利 用 可 能 になる 日<br />

利 用 可 能 になった 日 は 日 常 業 務 内 容 の 証 拠 によって 証 明 することができる<br />

日 常 業 務 内 容 を 示 す 証 拠 は、 刊 行 物 が 一 般 に 公 開 されるようになった 日 を 立 証 するために 用<br />

いることができる。 特 定 の 文 書 が 実 際 に 利 用 可 能 となった 日 を 立 証 する 具 体 的 証 拠 は 必 ずし<br />

も 必 要 とされない。Constant v. Advanced Micro-Devices, Inc., 848 F.2d 1560, 7 USPQ2d<br />

1057 (Fed. Cir.), cert. denied, 988 U.S. 892 (1988)( 裁 判 所 は、 更 新 された 仕 様 書 につ<br />

いて Intel が 提 出 した 証 拠 は、 企 業 は 通 常 そのような 仕 様 書 をどのように 取 扱 うかを 示 して<br />

おり、 基 準 日 前 に 一 般 に 公 開 されたことを 示 すのに 十 分 であると 判 定 した。);In re Hall, 781<br />

F.2d 897, 228 USPQ 453 (Fed. Cir. 1986)( 博 士 論 文 を 索 引 付 けし 分 類 して 書 架 に 置 くとい<br />

う 通 常 の 時 間 枠 及 び 業 務 を 立 証 する 図 書 館 員 の 宣 誓 供 述 書 は、 問 題 の 論 文 が 基 準 日 以 前 に 一<br />

般 に 公 開 されていたであろうことを 立 証 した。)<br />

学 術 論 文 又 はその 他 の 刊 行 物 は 一 般 公 衆 の 一 員 に 受 け 取 られた 日 に 先 行 技 術 として 利 用 可 能<br />

となる<br />

郵 便 により 広 められる 刊 行 物 は 少 なくとも 一 般 公 衆 の 一 員 に 受 け 取 られるまで 先 行 技 術 とな<br />

らない。 従 って、 雑 誌 若 しくは 技 術 雑 誌 はそれが 発 行 者 に 郵 送 又 は 送 付 された 日 ではなく、<br />

その 発 行 の 日 ( 最 初 の 人 物 がそれを 受 け 取 る 日 )に 有 効 となる。In re Schlittler, 234 F.2d<br />

882, 110 USPQ 304 (CCPA 1956)。<br />

91


2129 先 行 技 術 としての 自 認<br />

I. 出 願 人 による 自 認 は 先 行 技 術 を 構 成 する<br />

明 細 書 によって 又 は 手 続 時 に 行 われた 出 願 人 による 他 人 の 成 果 を「 先 行 技 術 」として 特 定 す<br />

る 陳 述 は, 新 規 性 の 欠 如 及 び 自 明 性 の 判 定 の 両 方 で 依 拠 できる 自 認 であり, 自 ら 認 めた 先 行<br />

技 術 がその 他 に 特 許 法 第 102 条 の 法 定 のカテゴリーに 基 づく 先 行 技 術 として 適 格 であるか 否<br />

かにかかわらない。Riverwood Int’l Corp. v. R.A. Jones & Co., 324 F.3d 1346, 1354, 66<br />

USPQ2d 1331, 1337 (Fed. Cir. 2003); Constant v. Advanced Micro-Devices Inc., 848 F.2d<br />

1560, 1570, 7 USPQ2d 1057, 1063 (Fed. Cir. 1988)。しかし、「 先 行 技 術 」に 分 類 された<br />

としてもその 同 一 発 明 者 の 成 果 は、それが 法 定 のカテゴリーの 一 つに 該 当 しない 限 り、その<br />

クレームの 先 行 技 術 とみなしてはならない。 同 文 献 ; 次 も 参 照 のこと。Reading & Bates<br />

Construction Co. v. Baker Energy Resources Corp., 748 F.2d 645, 650, 223 USPQ 1168,<br />

1172 (Fed. Cir. 1984)( 発 明 者 が 自 己 の 成 果 物 を 継 続 して 改 良 する 場 合 、 発 明 者 の 基 本 的 な<br />

成 果 物 は、 法 的 根 拠 なしに 発 明 者 が 自 己 の 成 果 の 知 識 を 自 認 しているという 理 由 だけで 先 行<br />

技 術 として 取 り 扱 ってはならない。 発 明 者 が 自 己 の 成 果 について 知 識 を 有 することは、 自 認<br />

の 有 無 に 関 わらず、 常 識 である。」)<br />

従 って、 審 査 官 は「 先 行 技 術 」として 特 定 される 保 護 対 象 は 出 願 人 自 身 の 成 果 であるか、 若<br />

しくは 他 人 の 成 果 であるかを 確 認 しなければならない。 他 に 信 頼 できる 説 明 がない 場 合 、 審<br />

査 官 はこのような 保 護 対 象 を 他 人 の 成 果 として 取 り 扱 わなくてはならない。<br />

II. 明 細 書 の 先 行 技 術 についての 考 察<br />

明 細 書 が 他 人 によってなされた 成 果 を「 先 行 技 術 」として 挙 げている 場 合 、そのように 挙 げ<br />

られた 保 護 対 象 は 自 ら 認 めた 先 行 技 術 として 取 り 扱 われる。In re Nomiya, 509 F.2d 566, 571,<br />

184 USPQ 607, 611 (CCPA 1975)( 出 願 人 が 出 願 図 面 の 二 つの 図 を「 先 行 技 術 」に 分 類 したこ<br />

とは、 描 かれたものは 出 願 人 の 改 良 に 関 連 した 先 行 技 術 であると 自 ら 認 めたと 判 断 された。)<br />

III. ジェプソンクレーム<br />

ジェプソン 形 式 (すなわち、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.75 条 (e)に 記 載 される 形 式 ;MPEP 第 608.01<br />

条 (m)を 参 照 )でクレームを 書 くことは、 前 提 部 分 の 保 護 対 象 は 他 人 の 既 知 の 成 果 とする 黙 示<br />

的 承 認 と 受 け 止 められる。In re Fout, 675 F.2d 297, 301, 213 USPQ 532, 534 (CCPA 1982)( 出<br />

願 者 の 明 細 書 が 他 者 を 前 提 部 分 の 保 護 対 象 の 発 明 者 として 引 用 するジェプソン 形 式 のクレー<br />

ムの 前 提 部 分 を 自 ら 認 めた 先 行 技 術 であると 判 定 した。)しかし、この 推 断 は 出 願 人 がジェプ<br />

ソン 形 式 でクレームを 書 くことの 信 頼 できる 理 由 を 他 に 挙 げる 場 合 は 克 服 され 得 る。In re<br />

Ehrreich, 590 F.2d 902, 909-910, 200 USPQ 504, 510 (CCPA 1979)( 出 願 人 がジェプソン 形<br />

式 は 同 時 係 属 出 願 における 二 重 特 許 拒 絶 を 回 避 するために 用 いられたことを 説 明 したのに 対<br />

して、 前 提 部 分 を 自 ら 認 めた 先 行 技 術 ではないと 判 定 し、 審 査 官 は 前 提 部 分 の 保 護 対 象 を 示<br />

す 何 の 技 術 も 挙 げなかった。)また、ジェプソンクレームの 前 提 部 分 が 出 願 人 自 身 の 成 果 を 記<br />

載 している 場 合 、そういうものは 当 該 クレームに 対 して 使 用 してはならない。Reading & Bates<br />

Construction Co. v. Baker Energy Resources Corp., 748 F.2d 645, 650, 223 USPQ 1168,<br />

1172 (Fed. Cir. 1984); Ehrreich, 590 F.2d at 909-910, 200 USPQ at 510。<br />

92


IV. 情 報 開 示 陳 述 書 (IDS)<br />

単 に 情 報 開 示 陳 述 書 に 引 例 を 列 挙 するだけでは、その 引 例 がクレームに 対 する 先 行 技 術 であ<br />

ることを 認 めたこととして 受 け 取 られない。Riverwood Int’l Corp. v. R.A. Jones & Co.,<br />

324 F.3d 1346, 1354-55, 66 USPQ2d 1331, 1337-38 (Fed Cir. 2003)( 出 願 人 自 身 の 先 行 特<br />

許 を IDS に 挙 げることは、 法 的 根 拠 なくしてそれを 先 行 技 術 として 利 用 可 能 にすることでは<br />

ない。) 次 も 参 照 のこと。37 CFR 1.97(h)(「 情 報 開 示 陳 述 書 の 提 出 は,その 陳 述 書 に 引 用 さ<br />

れる 情 報 が 第 1.56 条 (b)に 規 定 される 特 許 性 にとって 重 要 である 若 しくは 重 要 であると 考 え<br />

られると 自 ら 認 めたと 解 釈 されるものではない。)<br />

93


2131 新 規 性 の 欠 如 ― 特 許 法 第 102 条 (a)、(b) 及 び(e)の 適 用<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

次 に 該 当 する 場 合 を 除 き, 何 人 も 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(a) その 発 明 は, 当 該 特 許 出 願 人 によるそれの 発 明 の 前 に, 合 衆 国 において 他 人 により 知 ら<br />

れていた 若 しくは 使 用 されていた, 又 は 合 衆 国 若 しくは 外 国 において 特 許 されていた 若 しく<br />

は 印 刷 された 刊 行 物 に 記 載 されていた。 又 は、<br />

(b) その 発 明 は, 合 衆 国 におけるその 特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に, 合 衆 国 若 しくは 外 国<br />

において 特 許 され、 若 しくは 印 刷 された 刊 行 物 に 記 載 されていた, 又 は 合 衆 国 において 公 用<br />

若 しくは 販 売 されていた。 又 は、<br />

(c) 同 人 がその 発 明 を 放 棄 している。 又 は、<br />

(d) その 発 明 は、 合 衆 国 におけるその 特 許 出 願 日 よりも 前 に 外 国 において、 出 願 人 又 は 出 願<br />

人 の 法 定 代 理 人 若 しくは 譲 受 人 によって、 合 衆 国 におけるその 出 願 日 よりも 12 月 以 上 前 に 申<br />

請 された 特 許 出 願 又 は 発 明 者 証 について、 最 初 に 特 許 された 又 は 特 許 を 取 得 するように 手 続<br />

きされた 若 しくは 発 明 者 証 の 保 護 対 象 であった。 又 は、<br />

(e) その 発 明 は, 次 のものに 記 載 されていた。(1) 当 該 特 許 出 願 人 による 発 明 以 前 に 合 衆 国 に<br />

おいて 申 請 された 他 人 による 特 許 出 願 で 第 122 条 (b)に 基 づき 公 開 されたもの。 又 は、(2) 当<br />

該 特 許 出 願 人 による 発 明 以 前 に, 合 衆 国 において 申 請 された 他 人 による 特 許 出 願 に 与 えられ<br />

た 特 許 。ただし, 第 351 条 (a)に 規 定 する 条 約 に 基 づいて 申 請 された 国 際 出 願 は, 合 衆 国 にお<br />

いて 申 請 される 出 願 に 関 する 本 項 の 適 用 上 ,その 国 際 出 願 が 合 衆 国 を 指 定 しており,かつ,<br />

英 語 で 当 該 条 約 第 21 条 (2)に 基 づいて 公 開 される 場 合 に 限 り, 効 果 を 有 するものとする。 又<br />

は、<br />

(f) 特 許 を 得 ようとする 保 護 対 象 を 同 人 自 身 が 発 明 していなかった。 又 は、<br />

(g) (1) 第 135 条 又 は 291 条 に 基 づいて 行 われるインターフェアレンスにおいて,そこに 係 る<br />

他 の 発 明 者 は, 第 104 条 で 認 められる 限 りにおいて、 次 のことを 立 証 している。 当 該 人 のそ<br />

の 発 明 以 前 にその 発 明 がそのような 他 の 発 明 者 によって 行 われ、 放 棄 , 秘 匿 又 は 隠 蔽 されて<br />

いないこと。 又 は、(2) 当 該 人 のその 発 明 以 前 に,その 発 明 は 合 衆 国 において、それを 放 棄 ,<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 していない 他 の 発 明 者 によって 行 われていた。 本 項 に 基 づく 発 明 の 優 先 度 を 判<br />

断 する 際 , 発 明 の 着 想 及 び 実 施 化 それぞれの 日 のみならず, 着 想 した 最 初 で 実 施 化 した 最 後<br />

の 者 の 合 理 的 な 努 力 も、 他 者 による 着 想 よりも 前 の 時 期 から、 考 慮 されねばならない。<br />

クレームが 新 規 性 を 喪 失 しているとするには、 引 例 が 当 該 クレームのすべての 要 素 を 教 示 し<br />

なければならない<br />

「クレームは、そのクレームに 記 載 される 一 つ 一 つの 要 素 が、 単 一 の 先 行 技 術 の 引 例 の 中 に、<br />

記 載 が 明 示 的 にせよ 潜 在 的 にせよ、 確 認 される 場 合 に 限 って、 新 規 性 を 喪 失 する。」Verdegaal<br />

Bros. v. Union Oil Co. of California, 814 F.2d 628, 631, 2 USPQ2d 1051, 1053 (Fed. Cir.<br />

1987)。「クレームが 総 称 的 にであれ 選 択 肢 としてであれ、いくつかの 構 造 又 は 組 成 物 を 対 象<br />

としているとき、そのクレームの 範 囲 内 の 構 造 又 は 組 成 物 のいずれにしろ 先 行 技 術 において<br />

知 られている 場 合 、そのクレームは 新 規 性 を 欠 くとみなされる。」Brown v. 3M, 265 F.3d 1349,<br />

1351, 60 USPQ2d 1375, 1376 (Fed. Cir. 2001)(2000 年 (Y2K) 問 題 に 対 応 するため、「 少 な<br />

くとも 2 桁 ,3 桁 又 は 4 桁 表 示 の 一 つ」で 年 月 データを 伴 う 記 録 に 適 用 することができ、コ<br />

ンピュータ 時 計 をオフセットタイムに 設 定 するシステムに 対 するクレームは、2 桁 フォーマ<br />

94


ットに 限 り 年 月 をオフセットするシステムにより 新 規 性 を 欠 くと 判 示 された。)MPEP 第<br />

2111.02 条 も 参 照 のこと。「 同 一 である 発 明 は、その・・・クレームに 記 載 されるものと 同 じく<br />

らい 完 全 で 詳 細 に 示 されなければならない。」Richardson v. Suzuki Motor Co., 868 F.2d 1226,<br />

1236, 9 USPQ2d 1913, 1920 (Fed. Cir. 1989)。 当 該 要 素 はクレームによって 必 要 とされる<br />

とおり 構 成 されなければならないが、 文 字 通 りにという 基 準 ではない。すなわち、 用 語 の 同<br />

一 性 は 要 求 されない。In re Bond, 910 F.2d 831, 15 USPQ2d 1566 (Fed. Cir. 1990)。 状 況<br />

によっては、 特 許 法 第 102 条 の 拒 絶 に 複 数 の 引 例 を 用 いることが 許 されることに 留 意 。MPEP<br />

第 2131.01 条 を 参 照 のこと。<br />

2131.01 複 数 引 例 による 特 許 法 第 102 条 拒 絶<br />

通 常 、 特 許 法 第 102 条 に 基 づく 拒 絶 を 行 う 際 には 一 つの 引 例 だけを 使 用 すべきである。しか<br />

し、 複 数 引 用 による 特 許 法 第 102 条 の 拒 絶 は、 追 加 の 引 例 が 次 に 挙 げる 目 的 で 引 用 される 場<br />

合 、 適 切 であると 判 定 されている。<br />

(A) 主 たる 引 例 が「 実 施 可 能 な 開 示 」を 含 むことを 証 明 する。<br />

(B) 主 たる 引 例 に 使 用 される 用 語 の 意 味 を 説 明 する。 又 は、<br />

(C) その 引 例 に 開 示 されていない 特 性 は 潜 在 的 特 性 であることを 示 す。<br />

状 況 ごとの 詳 細 については、 以 下 の I 乃 至 III の 段 落 を 参 照 のこと。<br />

I. 引 例 が「 実 施 可 能 な 開 示 」を 含 むことを 証 明 する<br />

追 加 の 引 例 及 び 外 的 証 拠 は、 主 たる 引 例 が「 実 施 可 能 な 開 示 」を 含 むことを 証 明 するために<br />

使 用 することができる<br />

クレームの 組 成 物 又 は 機 械 が 引 例 によってあらゆる 点 で 同 じであるとして 開 示 されている 場<br />

合 、 追 加 の 引 例 に 依 拠 して 主 たる 引 例 が「 実 施 可 能 な 開 示 」を 有 することを 示 すことができ<br />

る。In re Samour, 571 F.2d 559, 197 USPQ 1 (CCPA 1978) and In re Donohue, 766 F.2d 531,<br />

226 USPQ 619 (Fed. Cir. 1985)( 化 合 物 クレームは 2 件 の 特 許 の 点 から 見 て、 刊 行 物 により<br />

特 許 法 102 条 で 拒 絶 された。その 刊 行 物 はクレームされた 化 合 物 の 構 造 を 開 示 しており、 一<br />

方 でその 2 件 の 特 許 はその 化 合 物 の 一 般 的 クラスの 製 造 方 法 を 教 示 していた。 出 願 人 は、ど<br />

のような 有 用 性 も 当 該 化 合 物 については 従 前 に 知 られていないのでその 引 例 を 組 み 合 わせる<br />

動 機 がないこと、 及 び 複 数 の 引 例 による 特 許 法 102 条 の 拒 絶 は 正 しくないと 反 論 した。 裁 判<br />

所 は、その 刊 行 物 は 当 該 クレームのすべての 要 素 を 教 示 しているので 組 み 合 わせの 動 機 は 必<br />

要 とされないと 判 示 した。その 2 件 の 特 許 は、 出 願 人 の 発 明 以 前 に 何 が 公 知 であったかを 示<br />

す 証 拠 としてのみ 提 出 された。)<br />

II. 主 たる 引 例 に 使 用 される 用 語 の 意 味 を 説 明 する<br />

追 加 の 引 例 又 はその 他 の 証 拠 を 用 いて、 主 たる 引 例 に 使 用 される 用 語 の 意 味 を 示 すことがで<br />

きる<br />

外 的 証 拠 を 用 いて、クレームの 保 護 対 象 の 新 規 性 の 欠 如 として、 依 拠 される 引 例 で 用 いられ<br />

る 用 語 及 び 表 現 の 意 味 を、 拡 張 するのではなく、 説 明 することができる。In re Baxter<br />

Travenol Labs., 952 F.2d 388, 21 USPQ2d 1281 (Fed. Cir. 1991)(Baxter Travenol Labs.<br />

の 発 明 は、DEHP、 血 液 バッグの 赤 血 球 貯 蔵 能 力 を 向 上 させる 可 塑 材 への 添 加 物 、を 含 むバッ<br />

グを 内 蔵 する 血 液 バッグシステムに 向 けられた。 審 査 官 は、 同 一 の 血 液 バッグシステムを 教<br />

95


示 しているが DEHP の 存 在 を 明 示 的 に 開 示 していない Becker の 技 術 的 進 歩 に 関 する 研 究 報 告<br />

書 によってそのクレームを 拒 絶 した。しかし、その 研 究 報 告 書 は 市 販 の 血 液 バッグの 使 用 を<br />

開 示 していた。また、「[Baxter] Travenol の 市 販 の 二 つのバッグ 型 血 液 容 器 に 極 めて 類 似<br />

する」 血 液 バッグシステムも 開 示 していた。 外 的 証 拠 ( 証 言 録 取 書 、 宣 言 書 及 び Bexter<br />

Travenol 自 身 の 承 認 )は、Becker の 研 究 報 告 書 が 書 かれた 当 時 、 市 販 の 血 液 バッグは DEHP<br />

を 含 んでいることを 示 していた。 従 って、 当 業 者 は「 市 販 の 血 液 バッグ」が DEHP を 含 むバッ<br />

グを 意 味 することが 分 かっていただろう。 従 って、そのクレームは 新 規 性 を 欠 くと 判 示 され<br />

た。)<br />

III. 引 例 に 開 示 されていない 特 性 は 潜 在 的 特 性 であることを 示 す<br />

追 加 の 引 例 又 は 証 拠 を 用 い、 主 たる 引 例 によって 教 示 されるものの 潜 在 的 特 性 を 示 すことが<br />

できる<br />

「 当 該 引 例 が 主 張 される 潜 在 的 特 性 について 無 言 である 場 合 、 新 規 性 が 欠 如 しているとする<br />

ため、 当 該 引 例 のこのような 欠 落 を 外 的 証 拠 に 頼 って 埋 めることができる。このような 証 拠<br />

は、 不 足 している 説 明 事 項 がその 引 例 に 記 載 されたものに 必 然 的 に 存 在 すること、そして、<br />

それは 当 業 者 によってそのように 認 識 されるであろうことを 明 確 にしなくてはならない。」<br />

Continental Can Co. USA v. Monsanto Co.,948 F.2d 1264, 1268, 20 USPQ2d 1746, 1749 (Fed.<br />

Cir. 1991)( 裁 判 所 はさらに、「『 新 規 性 喪 失 』が 当 該 クレームのすべての 要 素 は 単 一 の 引 例<br />

に 示 されることを 必 要 とするルールにおいて、このささやかな 柔 軟 性 は、 技 術 者 の 共 通 の 知<br />

識 がその 引 例 に 記 録 されていないという 状 況 、すなわち、 技 術 的 な 事 実 がたとえ 裁 判 官 に 知<br />

られていないとしても 当 業 者 に 知 られているという 状 況 に、 必 要 なものを 提 供 する」と 説 明<br />

した。948 F.2d at 1268、20 USPQat 1749-50。) 潜 在 的 特 性 であることを 立 証 する 記 録 の 証<br />

拠 がある 限 り、 当 業 者 が 同 時 期 に 先 行 技 術 の 引 例 の 潜 在 的 特 性 、 機 能 若 しくは 構 成 要 素 を 認<br />

識 していないことで 新 規 性 欠 如 の 認 定 が 妨 げられないことに 留 意 すること。Atlas Powder Co.<br />

v. IRECO, Inc., 190 F.3d 1342, 1349, 51 USPQ2d 1943, 1948 (Fed. Cir. 1999)( 二 つの 先<br />

行 技 術 の 引 例 は、クレームされた 成 分 と 同 一 の 成 分 でできた 油 中 水 型 乳 剤 を 含 み、クレーム<br />

された 組 成 物 と 重 複 範 囲 にある 爆 破 組 成 物 を 開 示 していた。 先 行 技 術 の 組 成 物 に 存 在 しない<br />

ことがほぼ 間 違 いのないクレームの 要 素 だけが「 十 分 な 通 気 で・・・ 取 り 込 まれて 感 度 をかなり<br />

の 程 度 まで 高 められた。」 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は 記 録 証 拠 ( 試 験 データ 及 び 専 門 家 証 言 を 含 む)<br />

に 基 づき、2 つの 引 例 に 記 載 される 乳 剤 は、 必 然 的 かつ 潜 在 的 に、その 化 合 物 をクレーム 範<br />

囲 で 感 度 を 上 げるために「 十 分 な 通 気 」を 有 していたであろうと 判 断 した。この 潜 在 的 特 性<br />

の 認 定 は、その 引 例 の 一 方 は 空 気 の 閉 じ 込 め 若 しくは 意 図 的 通 気 から 外 れたところで 教 示 し<br />

ている 事 実 によって 無 効 にされなかった。 次 も 参 照 のこと。In re King, 801 F.2d 1324, 1327,<br />

231 USPQ 136, 139 (Fed. Cir. 1986); Titanium Metals Corp. v. Banner, 778 F.2d 775, 782,<br />

227 USPQ 773, 778 (Fed. Cir. 1985) 潜 在 的 特 性 の 判 例 については、MPEP 第 2112 条 乃 至 第<br />

2112.02 条 を 参 照 のこと。また、 普 遍 的 事 実 を 証 明 する 外 的 証 拠 の 基 準 日 は、 出 願 日 より 前<br />

である 必 要 がないことに 留 意 すること。MPEP 第 2124 条 を 参 照 のこと。<br />

2131.02 属 - 種 の 問 題<br />

種 は 属 に 対 するクレームの 新 規 性 を 喪 失 させる<br />

「 属 クレームは、 先 行 技 術 がクレームの 属 に 該 当 する 種 を 記 載 する 場 合 、 出 願 人 に 特 許 が 許<br />

96


されることはない。」その 場 合 、 種 は 属 の 新 規 性 を 喪 失 させる。In re Slayter, 276 F.2d 408,<br />

411, 125 USPQ 345, 347 (CCPA 1960); In re Gosteli, 872 F.2d 1008, 10 USPQ2d 1614 (Fed.<br />

Cir. 1989)(Gosteli は Markush クレームの 二 環 式 チアアザ 化 合 物 である 21 の 特 定 化 学 種 か<br />

ら 成 る 属 をクレームした。 先 行 技 術 の 引 例 はその 化 学 種 の 中 の 2 種 を 開 示 するクレームに 適<br />

用 された。 両 当 事 者 は、 出 願 人 に 外 国 優 先 日 が 与 えられていない 限 り、 先 行 技 術 の 種 はクレ<br />

ームの 新 規 性 を 喪 失 させることに 同 意 した。)<br />

明 確 にクレームの 種 名 を 挙 げている 引 例 は、その 他 の 種 名 をいくつ 挙 げているかにかかわら<br />

ず、そのクレームの 新 規 性 を 喪 失 させる<br />

属 はその 属 内 の 種 に 対 するクレームの 新 規 性 を 常 に 喪 失 させるとは 限 らない。しかし、その<br />

種 の 名 前 が 明 確 に 挙 げられている 場 合 、その 種 に 対 するクレームは、その 他 の 種 の 名 前 が 追<br />

加 的 にいくつ 挙 げられているかにかかわらず、 新 規 性 を 欠 く。Ex parte A, 17 USPQ2d 1716 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1990)(クレームの 化 合 物 は、その 他 45 種 の 化 合 物 も 記 載 する 引 例 に 名<br />

前 を 挙 げられていた。 審 判 部 は、リストの 包 括 性 はクレームされる 化 合 物 が 具 体 的 に 教 示 さ<br />

れている 事 実 を 否 定 しないと 判 定 した。 審 判 部 はその 事 実 を 当 該 化 合 物 が Merck 索 引 に 見 ら<br />

れる 状 況 と 比 較 し、「Merck 索 引 第 11 版 は 10,000 の 化 合 物 を 挙 げている。 我 々の 見 解 によ<br />

れば、その 刊 行 物 においてそれら 化 合 物 の 一 つ 一 つはその 用 語 が 特 許 法 第 102 条 (a)で 用 いら<br />

れるように『 記 載 』されている。」)Id. at 1718。 次 も 参 照 のこと。In re Sivaramakrishnan,<br />

673 F.2d 1383, 213 USPQ 441 (CCPA 1982)(クレームは、 添 加 剤 としてラウリン 酸 カドミウ<br />

ムを 含 むポリカーボネートに 向 けられた。 裁 判 所 は、ポリカーボネート 樹 脂 の 数 多 い 適 切 な<br />

塩 リストの 中 からラウリン 酸 カドミウムを 添 加 剤 として 具 体 的 に 名 前 を 挙 げている 引 例 がそ<br />

のクレームの 新 規 性 を 喪 失 させるとする 審 判 部 の 認 定 を 支 持 した。 出 願 人 は、ラウリン 酸 カ<br />

ドミウムは 当 該 塩 を 代 表 するものとして 記 載 されたに 過 ぎず、リストに 記 載 される 他 の 塩 と<br />

同 一 の 特 性 を 有 することが 予 期 されると 同 時 に、 出 願 に 示 されるように、ラウリン 酸 カドミ<br />

ウムは 予 期 せぬ 特 性 を 有 すると 主 張 した。 裁 判 所 は、その 塩 が 望 ましいとして 開 示 されてい<br />

ないことは 問 題 でなく、 当 該 引 例 はやはり 当 該 クレームの 新 規 性 を 喪 失 させること、さらに<br />

当 該 クレームは 新 規 性 に 欠 けるので 予 期 せぬ 特 性 は 重 要 ではないと 判 定 した。<br />

一 般 化 学 式 は、 種 が 化 学 式 から「 即 座 に 予 測 する」ことができる 場 合 、その 化 学 式 が 表 すク<br />

レームの 種 の 新 規 性 を 喪 失 させる<br />

化 合 物 の 名 前 が 具 体 的 に 挙 げられておらず、 引 例 内 の 教 示 部 分 を 選 択 しそれらを 組 み 合 わせ<br />

る 必 要 がある 場 合 、たとえば、 特 定 の 化 合 物 にたどり 着 くために、 一 般 化 学 式 の 特 定 部 の 置<br />

換 に 与 えられた 選 択 肢 のリストからさまざまな 選 択 基 を 選 択 する 場 合 、 新 規 性 の 欠 如 は 選 択<br />

基 のクラスが 十 分 に 限 定 されている 又 は 十 分 に 線 引 きされている 場 合 に 限 って、 認 めること<br />

ができる。Ex parte A, 17 USPQ2d 1716 (Bd. Pat. App. & Inter. 1990)。 当 業 者 が 一 般 化<br />

学 式 で 表 される 特 定 の 化 合 物 を「 即 座 に 予 測 する」ことができる 場 合 、その 化 合 物 は 新 規 性<br />

に 欠 ける。 当 業 者 は、その 化 合 物 を「 即 座 に 予 測 する」ことができるというには、その 一 般<br />

式 に 含 まれる 各 化 合 物 の 構 造 式 を 描 く 又 は 名 前 を 書 くことができなければならない。いずれ<br />

の 化 合 物 が 新 規 性 を 欠 くのかを 判 断 するため、 好 ましい 実 施 例 に 目 を 向 けることができる。<br />

In re Petering, 301 F.2d 676, 133 USPQ 275 (CCPA 1962)。<br />

In re Petering 事 例 において、 先 行 技 術 は 一 般 化 学 式 「ここで、X、Y、Z、P 及 び R'は 水 素<br />

97


基 又 はアルキル 基 を、R は OH 基 を 含 む 側 鎖 を 表 す」を 開 示 した。 裁 判 所 は、 一 般 式 は 膨 大 な<br />

数 のおそらく 無 限 数 の 化 合 物 を 網 羅 するので、この 化 学 式 は、それ 以 上 のものがなければ、<br />

7-メチル-9-[d, l'-リビチル]-イソアロキサジンに 対 するクレームを 新 規 性 に 欠 けるとする<br />

ことはできないと 判 示 した。しかし、その 引 例 は 次 のとおり X、Y、Z、P、R 及 び R'に 好 まし<br />

い 選 択 基 も 開 示 した。<br />

ここで、X、P、 及 び R'は 水 素 、Y 及 び Z は 水 素 又 はメチル、R は 8 種 の 特 定 のイソアロキサ<br />

ジン。 裁 判 所 は、このおよそ 20 種 の 化 合 物 から 成 る、より 限 定 された 一 般 的 クラスを 確 認 し<br />

た。 限 られた 数 の 化 合 物 は、 選 択 基 数 が 各 部 において 数 が 少 なく 環 位 置 は 限 定 されていて 大<br />

きく 変 化 しない 構 造 的 な 核 があるという 事 実 と 相 まって、その 好 ましい 式 の 対 象 となり、 結<br />

果 として、その 引 例 は「 各 構 造 式 を 描 いた 場 合 のように、 若 しくは 各 名 前 を 記 載 した 場 合 の<br />

ように 完 全 に、ここに 含 まれるさまざまな 置 換 のそれぞれを」 十 分 に 記 載 すると 認 定 された。<br />

クレームの 化 合 物 はこれら 化 合 物 20 種 の 中 の 1 種 であった。 従 って、その 引 例 はクレームの<br />

化 合 物 を「 記 載 」し、かつその 引 例 はそのクレームの 新 規 性 を 喪 失 させた。<br />

In re Schauman, 572 F.2d 312, 197 USPQ 5 (CCPA 1978)において、 先 行 技 術 は、その 先 行<br />

技 術 の 化 合 物 のクラスが 持 つ 構 造 及 び 特 性 において 相 互 に 密 接 に 関 係 する 限 られた 数 の 化 合<br />

物 を 包 含 する 一 般 式 がクレームの 化 合 物 に 対 する 開 示 であることを 教 示 するため、 特 定 の 化<br />

合 物 に 対 するクレームは 新 規 性 に 欠 けた。 幅 広 い 一 般 式 は 無 限 数 の 化 合 物 を 記 載 すると 思 わ<br />

れるが、クレーム 1 はわずか 1 種 の 変 数 選 択 基 を 持 つ 構 造 に 限 定 されていた。この 選 択 基 は<br />

低 アルキル 基 に 限 定 された。 当 業 者 は、その 引 例 からクレーム 1 の 保 護 対 象 を 即 座 に 予 測 し<br />

たであろう。)<br />

次 を 比 較 のこと。In re Meyer, 599 F.2d 1026, 202 USPQ 175 (CCPA 1979)(「アルカリ 性 の<br />

塩 素 又 は 臭 素 液 」を 開 示 する 引 例 は 多 数 の 種 を 包 含 するので「アルカリ 金 属 次 亜 鉛 素 酸 」に<br />

対 するクレームが 新 規 性 に 欠 けると 言 うことができない);Akzo N.V. v. International Trade<br />

Comm’n, 808 F.2d 1471, 1 USPQ2d 1241 (Fed. Cir. 1986)(98%の 硫 酸 液 を 用 いてアラミド<br />

繊 維 を 製 造 するプロセスに 対 するクレームは、 硫 酸 液 を 用 いることを 開 示 しているが 98% 濃<br />

度 の 硫 酸 液 を 用 いることを 開 示 していない 引 例 によって 新 規 性 に 欠 けるとされなかった。)<br />

属 - 種 の 問 題 における 自 明 性 の 考 察 については、MPEP 第 2144.08 条 を 参 照 のこと。<br />

2131.03 範 囲 に 関 する 新 規 性 の 欠 如<br />

I. 先 行 技 術 の 具 体 的 実 施 例 がクレームの 範 囲 内 にあれば、その 範 囲 は 新 規 性 がない<br />

「 範 囲 またはその 他 の 方 法 で 記 載 されるように、クレームが 数 個 の 組 成 物 をカバーする 場 合 、<br />

それらの 一 つが 先 行 技 術 であるとそのクレームは『 新 規 性 を 欠 く』。」Titanium Metals Corp.<br />

v. Banner, 778 F.2d 775, 227 USPQ 773 (Fed. Cir. 1985)( 引 用 In re Petering, 301 F.2d<br />

676, 682, 133 USPQ 275, 280 (CCPA 1962)( 強 調 は 原 文 のまま)(ニッケル(Ni)0.6 乃 至 0.9%、<br />

モリブデン(Mo)0.2 乃 至 0.4%を 含 むチタン(Ti) 合 金 に 対 するクレームは、Ti-Mo-Ni 合 金 に<br />

関 するロシアの 論 文 のグラフに、0.25%の Mo 及 び 0.75%の Ni を 含 む Ti 合 金 に 対 応 する 実<br />

際 のデータポイントがあったため、このロシアの 論 文 のグラフに 基 づき、この 構 成 は 組 成 物<br />

のクレームの 範 囲 内 にあることを 理 由 に、 新 規 性 に 欠 けると 判 示 された。)<br />

98


II. ある 範 囲 がクレームの 範 囲 に 重 複 又 は 接 触 することを 教 示 する 先 行 技 術 は、その 先 行 技<br />

術 の 範 囲 が「 十 分 な 特 異 性 」によりクレームの 範 囲 を 開 示 している 場 合 、 新 規 性 を 喪 失 させ<br />

る<br />

先 行 技 術 がクレームの 範 囲 に 接 触 又 は 重 複 する 範 囲 を 開 示 しているがクレームの 範 囲 内 に 該<br />

当 する 具 体 的 な 実 施 例 がない 場 合 、 新 規 性 の 欠 如 について 個 別 的 判 断 を 行 わねばならない。<br />

クレームが 新 規 性 を 欠 くためには、クレームの 保 護 対 象 がその 引 例 において「 法 定 の 新 規 性<br />

の 欠 如 を 構 成 するに 十 分 な 特 異 性 」をもって 開 示 されていなければならない。 何 が「 十 分 な<br />

特 異 性 」を 構 成 するかは 事 実 による。クレームは 狭 い 範 囲 に 向 けられており、 引 例 は 広 い 範<br />

囲 を 教 示 していてその 事 例 のその 他 の 事 実 に 依 存 することになる 場 合 、その 狭 い 範 囲 はその<br />

クレームの 新 規 性 の 欠 如 を 構 成 するに「 十 分 な 特 異 性 」をもって 開 示 されていないと 結 論 付<br />

けることは 妥 当 かもしれない。 参 照 事 例 として、Atofina v. Great Lakes Chem. Corp, 441 F.3d<br />

991, 999, 78 USPQ2d 1417, 1423 (Fed. Cir. 2006)、この 事 例 において 裁 判 所 は、 引 例 の<br />

100 乃 至 500℃の 温 度 範 囲 は 新 規 性 を 欠 くに 十 分 な 特 異 性 をもって 330 乃 至 450℃のクレーム<br />

範 囲 を 記 載 していないと 判 断 した。さらに、 引 例 の 好 ましい 範 囲 (150 乃 至 350℃) 及 びクレー<br />

ム 範 囲 との 間 にわずかな 重 複 があるが、その 重 複 は 新 規 性 を 欠 くとするには 十 分 でなかった。<br />

「その 範 囲 の 開 示 は、その 中 間 点 のそれぞれの 点 でないのと 同 様 にその 範 囲 の 端 点 の 開 示 で<br />

もない。」Id. at 1000、78 USPQ2d at 1424。 狭 い 範 囲 内 の 予 期 せぬ 成 果 の 何 らかの 証 拠 が<br />

クレームを 自 明 でないものとする 可 能 性 もある。「 十 分 な 特 異 性 」の 問 題 は、 属 の 教 示 から<br />

種 を「 明 確 に 予 測 すること」の 問 題 に 類 似 する。MPEP 第 2131.02 条 を 参 照 のこと。 特 許 法 第<br />

102 条 / 第 103 条 の 組 み 合 わせ 拒 絶 は、 引 例 が「 十 分 な 特 異 性 」をもって 当 該 範 囲 を 教 示 す<br />

るかどうかが 明 らかでない 場 合 に 可 能 となる。この 場 合 、 審 査 官 は 自 明 性 について 理 由 を 記<br />

載 した 文 書 だけではなく 新 規 性 の 欠 如 についても 理 由 を 用 意 しなければならない。Ex parte<br />

Lee, 31 USPQ2d 1105 (Bd. Pat. App. & Inter. 1993)( 拡 大 審 判 ) 範 囲 の 自 明 性 に 関 する 考 察<br />

については、MPEP 第 2144.05 条 を 参 照 のこと。<br />

III. クレーム 範 囲 に 極 めて 近 いが 重 複 又 は 接 触 しない 数 値 又 は 範 囲 を 教 示 する 先 行 技 術 は、<br />

クレーム 範 囲 を 新 規 性 を 欠 くものとしない<br />

「102 条 に 基 づく 新 規 性 の 欠 如 は、 引 例 がクレームされているものを 正 確 に 開 示 している 場<br />

合 に 限 って 判 定 することができ、それも、 引 例 の 開 示 とクレームとの 間 に 相 違 があれば、そ<br />

の 拒 絶 は 相 違 を 考 慮 に 入 れる 第 103 条 に 基 づかねばならない。」<br />

Titanium Metals Corp. v. Banner, 778 F.2d 775, 227 USPQ 773 (Fed. Cir. 1985)(0.8%<br />

のニッケル(Ni) 及 び 0.3%のモリブデン(Mo)を 含 むチタン 合 金 に 対 するクレームは、 自 明 で<br />

あるとはされたが、0.25%の Mo 及 び 0.75%の Ni を 含 む Ti 合 金 に 対 応 する 実 際 のデータポ<br />

イントが 記 載 された Ti-Mo-Ni 合 金 に 関 するロシアの 論 文 のグラフによって 新 規 性 がないと<br />

されなかった。)<br />

2131.04 副 次 的 考 察 事 項<br />

予 期 せぬ 成 果 又 は 商 業 的 な 成 功 などの 副 次 的 考 察 の 証 拠 は、 特 許 法 102 条 の 拒 絶 とは 無 関 係<br />

である。 従 って、 同 条 に 基 づく 拒 絶 を 克 服 することはできない。In re Wiggins, 488 F.2d 538,<br />

543, 179 USPQ 421, 425 (CCPA 1973)。<br />

99


2131.05 非 類 似 の 又 はけなしている 先 行 技 術<br />

「 新 規 性 を 喪 失 させると 主 張 する 先 行 技 術 は『 非 類 似 性 の 技 術 』である、 又 は『 当 該 発 明 か<br />

ら 外 れたところで 教 示 する』、 又 はクレームの 発 明 によって 解 決 された 課 題 を 解 決 するよう<br />

に 認 識 されていないとする 反 論 は、102 条 に 基 づく 拒 絶 に『 適 切 』ではない。」Twin Disc, Inc.<br />

v. United States, 231 USPQ 417, 424 (Cl. Ct. 1986)( 引 用 In re Self, 671 F.2d 1344, 213<br />

USPQ 1, 7 (CCPA 1982))。 次 も 参 照 のこと。State Contracting & Eng’ g Corp. v. Condotte<br />

America, Inc., 346 F.3d 1057, 1068, 68 USPQ2d 1481, 1488 (Fed. Cir. 2003)( 引 例 が 類<br />

似 技 術 かどうかの 問 題 は、その 引 例 が 新 規 性 を 否 定 するかどうかに 関 連 しない。 引 例 は、 発<br />

明 者 にが 取 り 組 んだ 問 題 とまったく 異 なる 問 題 に 向 けられているかもしれないし、またクレ<br />

ームの 発 明 分 野 ではないまったく 異 なる 活 動 分 野 から 出 たものかもしれないが、その 引 例 が<br />

クレームに 記 載 される 限 定 のすべてを 明 示 的 又 は 潜 在 的 に 開 示 している 場 合 はやはり 新 規 性<br />

を 否 定 する。<br />

発 明 を 開 示 した 後 に、 引 例 がその 発 明 をけなしている 場 合 でもその 引 例 はやはり 新 規 性 を 否<br />

定 する。 引 例 が 発 明 から「 離 れて 教 示 している」かどうかの 問 題 は、 新 規 性 の 欠 如 の 分 析 に<br />

当 てはまらない。Celeritas Technologies Ltd. v. Rockwell International Corp., 150 F.3d<br />

1354, 1361, 47 USPQ2d 1516, 1522-23 (Fed. Cir. 1998)(クレームの 発 明 から 外 れたところ<br />

で 教 示 していても、その 先 行 技 術 はそのクレームの 新 規 性 を 喪 失 させると 判 示 された。「 単<br />

一 キャリアデータ 信 号 のモデムは 最 善 ではないことが 示 されている 事 実 は、それが 開 示 され<br />

ている 事 実 の 効 果 を 損 なうものではない。」) 次 を 参 照 のこと。Upsher-Smith Labs. v. Pamlab,<br />

LLC, 412 F.3d 1319, 1323, 75 USPQ2d 1213, 1215 (Fed. Cir. 2005)(ある 構 成 要 素 を 明 示<br />

的 に 排 除 したクレームの 組 成 物 は、 同 じ 構 成 要 素 を 任 意 に 含 む 引 例 の 組 成 物 によって 新 規 性<br />

を 欠 くと 判 定 された。) 次 も 参 照 のこと。Atlas Powder Co. v. IRECO, Inc., 190 F.3d 1342,<br />

1349, 51 USPQ2d 1943, 1948 (Fed. Cir. 1999)( 引 例 が 空 気 の 閉 じ 込 め 又 は 意 図 的 通 気 から<br />

外 れたところで 教 示 していても、「 十 分 な 通 気 」というクレームの 限 定 を 潜 在 的 に 満 たす 先<br />

行 技 術 の 引 例 によって、クレームの 組 成 物 は 新 規 性 を 否 定 された。)<br />

100


2132 特 許 法 第 102 条 (a)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(a) その 発 明 が, 当 該 特 許 出 願 人 によるそれの 発 明 の 前 に, 合 衆 国 において 他 人 により 知 ら<br />

れていた 若 しくは 使 用 されていた, 又 は 合 衆 国 若 しくは 外 国 において 特 許 されていた 若 しく<br />

は 印 刷 された 刊 行 物 に 記 載 されていた。<br />

I. 「KNOWN OR USED( 知 られていた 又 は 使 用 されていた)」<br />

「Known or Used」とは 公 に 知 られていた 又 は 使 用 されていたことをいう<br />

「 法 律 用 語 『 合 衆 国 内 で 他 の 者 によって 知 られていた、 又 は 使 用 されていた』( 特 許 法 第 102<br />

条 (a))とは、 一 般 人 が 利 用 できる 知 識 又 は 使 用 をいう。」Carellav. Starlight Archery, 804<br />

F.2d 135, 231 USPQ 644 (Fed. Cir. 1986)。その 知 識 又 は 使 用 を 故 意 に 秘 匿 しようとする 試<br />

みがない 場 合 、 一 般 人 に 公 開 されている。W. L. Gore & Assoc. v. Garlock, Inc.,721 F.2d<br />

1540, 220 USPQ 303 (Fed. Cir. 1983)。<br />

刊 行 物 の 一 般 の 利 用 可 能 性 に 関 する 判 例 については、MPEP 第 2128 条 乃 至 第 2128.02 条 を 参<br />

照 のこと。<br />

秘 密 のプロセスによって 作 られた 他 の 者 の 製 品 の 販 売 は 特 許 法 第 102 条 (a)の 公 用 となるこ<br />

とがある。ただし、そのプロセスがその 製 品 を 調 べることによって 突 き 止 められる 場 合 とす<br />

る。<br />

「 商 業 目 的 で 物 品 を 生 産 する 通 常 の 過 程 において、クレームされたプロセスを 非 秘 密 裏 に 使<br />

用 することは、 公 用 となる。」しかし、その 製 品 の 販 売 に 連 結 したプロセスの 秘 密 使 用 はそ<br />

のプロセスの 公 用 とはならない。ただし、 公 衆 がその 製 品 を 調 べることによりクレームのプ<br />

ロセスを 学 習 できる 場 合 を 除 く。 従 って、 他 の 者 によるプロセスの 秘 密 使 用 は、その 製 品 が<br />

市 販 されるとしても、 特 許 法 第 102 条 (a)による 拒 絶 につながらない。ただし、その 製 品 を 調<br />

べてもそのプロセスが 明 らかにならない 場 合 とする。 同 文 献 。<br />

II. 「 本 国 内 」<br />

合 衆 国 内 の 知 識 又 は 使 用 に 限 り、 特 許 法 第 102 条 (a)の 拒 絶 に 使 用 できる<br />

特 許 法 第 102 条 (a)の 拒 絶 に 際 し 依 拠 される 知 識 又 は 使 用 は「 本 国 内 」の 知 識 又 は 使 用 でなけ<br />

ればならない。 米 国 内 に 存 在 しない 従 前 の 知 識 又 は 使 用 は、 外 国 において 広 く 存 在 していた<br />

としても、 特 許 法 第 102 条 (a)に 基 づく 拒 絶 の 根 拠 になり 得 ない。In re Ekenstam, 256 F.2d<br />

321, 118 USPQ 349 (CCPA 1958)。NAFTA( 公 法 第 103 条 乃 至 第 182 条 ) 及 びウルグアイラウン<br />

ド 協 定 ( 公 法 第 103 条 乃 至 第 465 条 )による 特 許 法 第 104 条 の 改 正 により 特 許 法 第 102 条 (a)<br />

で 用 いられる「 本 国 内 」の 意 味 は 修 正 されておらず、 従 って「 本 国 内 」は 今 でも 特 許 法 第 102<br />

条 (a) 拒 絶 の 目 的 上 、 合 衆 国 内 をいう。<br />

III. 「 他 人 による」<br />

「 他 人 」とは 発 明 主 体 と 異 なる 著 作 者 又 は 発 明 者 の 任 意 の 組 み 合 わせをいう<br />

特 許 法 第 102 条 (a)の「 他 人 」という 言 葉 は 発 明 主 体 と 異 なる 任 意 の 主 体 をいう。その 主 体 が<br />

「 他 人 による」といえるためには、 一 人 の 人 間 が 異 なってさえいれば 十 分 である。これは、<br />

101


刊 行 物 及 び 公 知 と 公 用 も 含 めて 特 許 法 第 102 条 (a)に 基 づく 先 行 技 術 にふさわしいすべての<br />

種 類 の 引 例 について 当 てはまる。 特 許 法 第 102 条 (a)のその 他 のいずれの 解 釈 も「 第 102 条 (b)<br />

により 与 えられる 1 年 の[ 猶 予 ] 期 間 を 否 定 するであろう。」In re Katz, 687 F.2d 450, 215<br />

USPQ 14 (CCPA 1982)。<br />

IV. 「 合 衆 国 又 は 外 国 で 特 許 された」<br />

先 行 技 術 としての 秘 密 特 許 の 使 用 に 関 する 情 報 については MPEP 第 2126 条 を 参 照 のこと。<br />

2132.01 特 許 法 第 102 条 (a)の 先 行 技 術 としての 刊 行 物<br />

特 許 法 第 102 条 (a) 一 応 の 証 明 は 参 考 刊 行 物 が「 他 人 による」ものの 場 合 に 立 証 される。<br />

一 応 の 証 明 は、 次 の 場 合 に 特 許 法 第 102 条 (a)により 立 証 される。 出 願 日 の 1 年 以 内 に 当 該 発<br />

明 若 しくはその 自 明 の 変 形 が、いずれの 方 法 にせよ 著 作 者 が 発 明 主 体 と 異 なる「 印 刷 された<br />

刊 行 物 」に 記 載 された 場 合 で、その 刊 行 物 が 出 願 人 の 成 果 を 記 載 していることをその 刊 行 物<br />

自 体 に 掲 載 されているのでない 場 合 である。In re Katz, 687 F.2d 450, 215 USPQ 14 (CCPA<br />

1982)。 何 が「 印 刷 された 刊 行 物 」を 構 成 するかに 関 する 判 例 については MPEP 第 2128 条 を 参<br />

照 のこと。 引 例 が 出 願 の 日 の 前 1 年 以 内 に 発 行 された 米 国 特 許 である 場 合 、 特 許 法 第 102 条<br />

(e)の 拒 絶 が 行 われねばならない。 第 102 条 (e)に 関 する 判 例 については MPEP 第 2136 条 乃 至<br />

第 2136.05 条 を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 は、 引 例 の 開 示 が 出 願 人 自 身 の 成 果 に 由 来 することを 示 すことにより 一 応 の 証 明 に 反<br />

論 することができる<br />

出 願 人 自 身 の 成 果 に 関 する 出 願 日 前 1 年 以 内 の 自 らの 開 示 は、 特 許 法 第 102 条 (a)に 基 づき 自<br />

らに 対 して 使 用 することはできない。In re Katz, 687 F.2d 450, 215 USPQ 14 (CCPA 1982)( 後<br />

述 )。 従 って、 出 願 人 が 自 らの 出 願 に 対 して 引 用 する 刊 行 物 の 共 著 者 の 一 人 である 場 合 、その<br />

刊 行 物 は、その 刊 行 物 の 関 係 部 分 が 出 願 人 を 端 緒 とする、 若 しくは 出 願 人 から 入 手 されたこ<br />

とを 立 証 する 他 の 著 作 者 により 作 成 された 宣 誓 供 述 書 を 提 出 することにより 引 例 として 削 除<br />

することができる。そのような 宣 誓 供 述 書 を 放 棄 宣 誓 供 述 書 という。Ex parte Hirschler, 110<br />

USPQ 384 (Bd. App. 1952)。 拒 絶 はまた、 出 願 人 がその 論 文 は 出 願 人 自 身 の 成 果 を 記 載 する<br />

ものであることを 立 証 することによる、 具 体 的 宣 誓 書 を 提 出 することによって 克 服 すること<br />

もできる。In re Katz, 687 F.2d 450, 215 USPQ 14 (CCPA 1982)。しかし、 共 著 者 が 発 明 者<br />

名 の 放 棄 を 拒 んでおり 自 身 が 発 明 者 であることを 信 じているとする 証 拠 がある 場 合 、 出 願 人<br />

の 宣 誓 供 述 書 は 出 願 人 が 唯 一 の 発 明 者 であることを 立 証 するには 十 分 でなく、その 拒 絶 は 生<br />

き 続 ける。Ex parte Kroger, 219 USPQ 370 (Bd. Pat. App. & Int. 1982)( 後 述 )。また、 特<br />

許 法 第 116 条 第 3 段 落 の 要 件 に 適 合 する 場 合 、 発 明 者 として 共 著 者 を 出 願 に 加 えることによ<br />

り 当 該 拒 絶 を 克 服 することも 可 能 である。In re Searles, 422 F.2d 431, 164 USPQ 623 (CCPA<br />

1970)。<br />

In re Katz, 687 F.2d 450, 215 USPQ 14 (CCPA 1982)において、Katz は 宣 誓 書 に 刊 行 物 の<br />

共 著 者 Chiorazzi 及 び Eshhar は「 発 明 者 David H. Katz 博 士 の 指 示 及 び 監 督 の 下 で 働 く 学 生<br />

であった」ことを 記 載 している。 裁 判 所 は、この 宣 言 書 は、その 刊 行 物 は 研 究 論 文 であると<br />

いう 事 実 と 合 わせて、Katz を 唯 一 の 発 明 者 として 認 めるに 十 分 であること、 従 ってその 刊 行<br />

物 に 記 載 される 成 果 は 彼 自 身 のものであると 判 示 した。 研 究 論 文 において、 分 析 及 び 試 験 の<br />

102


みに 係 わる 学 生 を 共 著 者 として 挙 げることは 一 般 的 であるが、 共 同 発 明 者 とはみなされない。<br />

Ex parte Kroger, 219 USPQ 370 (Bd. Pat. App. & Inter. 1982)において、Kroger 及 び Knaster<br />

その 他 は 太 陽 光 発 電 に 関 する 論 文 に 著 作 者 として 名 前 を 挙 げられた。その 論 文 は Kroger 及 び<br />

Rod が 発 明 者 として 名 前 を 挙 げられる 出 願 のクレームを 拒 絶 するために 使 用 された。Kroger<br />

及 び Rod は 自 らが 発 明 者 であることを 宣 言 する 宣 誓 供 述 書 を 提 出 した。その 宣 誓 供 述 書 には、<br />

Knaster は 単 に 与 えられた 業 務 を 実 行 し、Kroger の 監 督 及 び 指 示 の 下 で 作 業 したのみである<br />

ことも 記 載 された。 審 判 部 は、これがこの 事 例 の 唯 一 の 証 拠 であれば In re Katz 事 件 の 下 で<br />

Kroger 及 び Rod は 唯 一 の 発 明 者 であると 立 証 されるであろうとした。しかし、 本 件 において<br />

は、Knaster は 発 明 者 名 を 放 棄 する 宣 誓 供 述 書 への 署 名 を 拒 絶 している 証 拠 があり、また<br />

Knaster はその 中 で 自 分 は 共 同 発 明 者 であると 主 張 する PTO への 書 簡 の 形 で 本 件 への 証 拠 を<br />

提 出 していた。 審 判 部 は、その 証 拠 は 拒 絶 を 十 分 に 克 服 できるほど 明 らかでないと 判 定 した。<br />

その 拒 絶 は 特 許 法 第 102 条 (f)により 行 われたが、 審 判 部 はその 問 題 をそれが 特 許 法 第 102<br />

条 (a)により 生 じた 場 合 と 同 じように 取 り 扱 った。MPEP 第 2136.05 条 に 示 される、 第 102 条<br />

(e) 拒 絶 の 克 服 に 関 する 判 例 についても 参 照 のこと。その 問 題 の 多 くは 同 一 である。<br />

特 許 法 施 行 規 則 1.131 条 の 宣 誓 供 述 書 は 特 許 法 第 102 条 (a)の 拒 絶 を 克 服 するために 使 用 でき<br />

る<br />

引 例 が 特 許 法 第 102 条 (b)、(c) 又 は(d)による 法 定 の 不 特 許 事 由 でない 場 合 、 出 願 人 は、 特 許<br />

法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 を 提 出 することにより、その 引 例 の 遡 及 による 拒<br />

絶 を 克 服 することができる。In re Foster, 343 F.2d 980, 145 USPQ 166 (CCPA 1965)。 引<br />

例 が 出 願 人 自 身 の 成 果 を 自 身 から 得 たとして 公 開 しようとしている 場 合 、 出 願 人 は 特 許 法 施<br />

行 規 則 第 1.131 条 の 宣 誓 供 述 書 を 提 出 してその 引 例 に 先 行 させるか、 又 は、 特 許 法 施 行 規 則<br />

第 1.132 条 の 宣 誓 供 述 書 を 提 出 して 出 願 人 からのその 引 例 の 保 護 対 象 の 派 生 物 及 び 出 願 人 に<br />

よる 発 明 を 示 すことができる。In re Facius,408 F.2d 1396, 161 USPQ 294 (CCPA 1969)。<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 による 宣 誓 供 述 書 を 引 例 の 克 服 に 使 用 できる 場 合 、 及 び 求 められ<br />

る 証 拠 についての 詳 細 は、MPEP 第 715 条 を 参 照 のこと。<br />

103


2133 特 許 法 第 102 条 (b)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(b) その 発 明 は 合 衆 国 における 特 許 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に, 合 衆 国 若 しくは 外 国 において<br />

特 許 付 与 されていた, 印 刷 された 刊 行 物 に 記 載 されていた, 又 は 合 衆 国 において 公 用 若 しく<br />

は 販 売 されていた。<br />

1 年 の 猶 予 期 間 は、 最 終 日 が 祭 日 又 は 週 末 にかかる 場 合 、 次 の 業 務 日 まで 延 長 される<br />

刊 行 物 、 特 許 、 公 用 及 び 販 売 は、 特 許 法 第 102 条 (b)により 特 許 を 妨 げるためには、「 合 衆 国<br />

内 の 特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に」 生 じていなければならない。しかし、1 年 の 猶 予 期 間<br />

が 土 曜 日 、 日 曜 日 又 は 連 邦 祝 日 に 満 了 して 出 願 人 の 合 衆 国 出 願 日 が 翌 業 務 日 となる 場 合 、 出<br />

願 人 自 身 の 活 動 は 特 許 を 妨 げない。Ex parte Olah, 131 USPQ 41 (Bd. App. 1960)。 特 許 法<br />

施 行 規 則 第 1.10 条 に 従 って 米 国 郵 政 公 社 に「 速 達 郵 便 」として 預 けた 日 付 で 出 願 に 出 願 日 を<br />

付 与 すること( 例 えば, 土 曜 日 出 願 日 )を PTO に 求 めている 特 許 法 施 行 規 則 第 1.6 条 (a)(2) 及<br />

び 第 1.10 条 への 変 更 にもかかわらず,この 規 則 変 更 は,「 何 らかの 行 為 をする」ための 最 終<br />

日 が 土 曜 日 , 日 曜 日 又 は 連 邦 祝 日 に 当 たる 場 合 ( 例 えば,1 年 の 猶 予 期 間 の 最 終 日 が 土 曜 日 に<br />

当 たる)、 翌 就 業 日 までその 出 願 申 請 を 延 期 できる 出 願 人 の 併 存 する 権 利 に 影 響 を 及 ぼさない。<br />

1 年 の 時 間 的 制 約 は 米 国 出 願 の 日 から 数 えられる<br />

特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に 自 らの 成 果 を 開 示 した 場 合 、その 特 許 は 特 許 の 取 得 を 阻 却 さ<br />

れる。In re Katz, 687 F.2d 450, 454, 215 USPQ 14, 17 (CCPA 1982)。1 年 の 時 間 的 制 約<br />

は 米 国 出 願 の 日 から 数 えられる。 従 って、 出 願 人 は、 米 国 出 願 の 日 で 終 了 する 1 年 の 猶 予 期<br />

間 前 の 日 に、 当 該 発 明 が 公 衆 の 手 にはいった 場 合 、 特 許 の 取 得 を 阻 却 される。 当 該 発 明 が 公<br />

衆 の 手 に 入 った 方 法 は 問 題 とならない。 公 知 となることは 公 用 、 公 の 販 売 、 公 開 、 特 許 又 は<br />

これらの 組 み 合 わせによって 生 じ 得 る。さらに、 先 行 技 術 はクレームの 発 明 と 同 一 である 必<br />

要 はないが、その 自 明 の 変 形 である 場 合 は 特 許 性 を 阻 却 する。In re Foster, 343 F.2d 980,<br />

145 USPQ 166 (CCPA 1966)。 有 効 な 米 国 出 願 の 日 については MPEP 第 706.02 条 を 参 照 のこと。<br />

2133.01 一 部 継 続 (CIP) 出 願 の 拒 絶<br />

出 願 人 が、クレームに 当 該 親 出 願 による 裏 付 けのない 一 部 継 続 出 願 を 行 う 場 合 、 有 効 な 出 願<br />

日 は 一 部 継 続 の 子 出 願 の 日 となる。 子 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 が 引 用 例 としての 基 準 日 とな<br />

る 先 行 技 術 が、 当 該 発 明 又 はその 自 明 の 変 形 を 開 示 する 場 合 は、 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づき<br />

特 許 発 行 は 阻 却 される。Paperless Accounting v. Bay Area Rapid Transit System, 804 F.2d<br />

659, 665, 231 USPQ 649, 653 (Fed. Cir. 1986)。<br />

2133.02 公 表 文 献 及 び 特 許 による 拒 絶<br />

猶 予 期 間 前 に 一 般 に 公 開 されていた 出 願 人 自 身 の 成 果 は 特 許 法 第 102 条 (b)の 拒 絶 に 使 用 す<br />

ることができる<br />

「 特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に 印 刷 された 刊 行 物 に 記 載 された 発 明 は、 印 刷 された 刊 行 物<br />

が 特 許 出 願 人 によって 書 かれたものであったとしても、 第 102 条 (b)により 先 行 技 術 となる。」<br />

De Graffenried v. United States, 16 USPQ2d 1321, 1330 n.7 (Cl. Ct. 1990)。「 発 明 者<br />

104


が 自 己 の 成 果 から 秘 密 のベールを 剥 がすことを 一 旦 決 めると、 連 邦 特 許 の 保 護 を 受 けるか 又<br />

は 一 般 大 衆 に 自 己 のアイデアを 捧 げるかを 選 択 しなければならない。」Bonito Boats, Inc. v.<br />

Thunder Craft Boats, Inc., 489 U.S. 141, 148, 9 USPQ2d 1847, 1851 (1989)。<br />

特 許 法 第 102 条 (b)の 拒 絶 は、 拒 絶 されたクレームの 特 許 要 件 に 対 して 法 定 不 特 許 事 由 を 生<br />

ずる<br />

特 許 法 第 102 条 (b)による 拒 絶 は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 ( 規 則 131 宣 誓 書 )による 宣 誓 供 述<br />

書 及 び 宣 言 書 、 外 国 優 先 日 又 は 出 願 人 自 身 が 当 該 保 護 対 象 を 発 明 した 証 拠 によって 克 服 でき<br />

ない。1 年 の 猶 予 期 間 を 外 れると、 出 願 人 は、 新 規 性 を 欠 く 又 は 自 明 のクレームを 含 む 特 許<br />

を 得 ることができない。In re Foster, 343 F.2d 980, 984, 145 USPQ 166, 170 (CCPA 1965)<br />

2133.03 「 公 用 」 又 は「 販 売 」による 拒 絶<br />

特 許 法 第 102 条 (b)は「 複 数 の 独 立 した 不 特 許 要 件 を 含 んでおり、これらは、 出 願 日 の 1 年 よ<br />

りも 前 の 行 動 又 は 開 示 に 関 係 する。それらの 2 つ、「 公 用 」 及 び「 販 売 」の 拒 絶 は、いずれ<br />

か 一 方 の 適 用 が 極 めて 明 確 であって 他 方 がそうでないとしても、 併 せて 考 慮 されることがあ<br />

る。Dart Indus. v. E.I. du Pont de Nemours & Co., 489 F.2d 1359, 1365, 179 USPQ 392,<br />

396 (7th Cir. 1973)。 販 売 活 動 がなくても、 当 該 発 明 の 公 用 はありうる。 同 じように、 発 明<br />

の 非 公 開 、 例 えば「 秘 密 」の 販 売 若 しくは 販 売 の 申 込 みにもかかわらず、 法 定 不 特 許 事 由 に<br />

該 当 する 場 合 もありうる。Hobbs v. United States, 451 F.2d 849, 859-60, 171 USPQ 713,<br />

720 (5th Cir. 1971)。<br />

同 様 に、すべての「 公 用 」 及 び「 販 売 」 活 動 が 必 然 的 に 同 一 結 果 を 引 き 起 こすとは 限 らない。<br />

2 つの 活 動 は 発 明 者 がどのように 特 許 出 願 前 の 発 明 を 使 用 するかに 影 響 を 与 えるが、「 非 営<br />

利 的 な」 特 許 法 第 102 条 (b)の 活 動 は 類 似 の「 営 利 的 な」 活 動 と 同 一 に 見 てはならない。MPEP<br />

第 2133.03 条 (a) 及 び 第 2133.03 条 (e)(1)を 参 照 のこと。 同 じように、 出 願 人 による「 公 用 」<br />

活 動 は 出 願 人 以 外 の 者 による 類 似 の「 公 用 」 活 動 と 同 じ 考 え 方 で 検 討 してはならない。MPEP<br />

第 2133.03 条 (a) 及 び 第 2133.03 条 (e)(7)を 参 照 のこと。さらに、「 実 験 的 使 用 」の 概 念 は「 営<br />

利 」 及 び「 非 営 利 」 環 境 において 異 なる 意 味 を 持 つ 可 能 性 がある。MPEP 第 2133.03 条 (c) 及<br />

び 第 2133.03 条 (e) 乃 至 第 2133.03 条 (e)(6)を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 102 条 (b)は、 公 用 に 若 しくは 販 売 に 供 された 発 明 品 が 後 にクレームされた 発 明 の 新<br />

規 性 を 喪 失 させる 場 合 には 単 独 で、 又 はクレームされた 発 明 が 先 行 技 術 と 関 連 する 発 明 品 か<br />

ら 自 明 であったであろう 場 合 には 特 許 法 第 103 条 と 併 せて、 不 特 許 事 由 を 生 むことに 注 意 し<br />

なければならない。LaBounty Mfg. v. United States Int’l Trade Comm’n, 958 F.2d 1066,<br />

1071, 22 USPQ2d 1025, 1028 (Fed. Cir. 1992)<br />

方 針 の 検 討<br />

(A) 「[ 販 売 ]の 阻 却 事 由 の 根 拠 を 成 す 一 つの 方 針 は、 特 許 を 介 してできる 限 り 速 やかに 公 衆<br />

に 新 規 発 明 の 幅 広 い 開 示 が 行 われるようにすることである。」RCA Corp. v. Data Gen. Corp.,<br />

887 F.2d 1056, 1062, 12 USPQ2d 1449, 1454 (Fed. Cir. 1989)。<br />

(B) 別 の 公 用 及 び 販 売 の 阻 却 事 由 の 根 拠 を 成 す 方 針 は、 発 明 者 に 法 的 に 認 められた 期 間 を 実<br />

質 的 に 超 えて、 自 己 の 発 明 を 商 業 的 に 独 占 利 用 させないようにすることである。RCA Corp. v.<br />

Data Gen. Corp., 887 F.2d 1056, 1062, 12 USPQ2d 1449, 1454 (Fed. Cir. 1989)。MPEP<br />

105


第 2133.03 条 (e)(1)を 参 照 のこと。<br />

(C) もう 一 つの 公 用 及 び 販 売 の 阻 却 事 由 の 根 拠 を 成 す 方 針 は、「 公 衆 が、 自 由 に 利 用 できると<br />

正 当 に 信 じるようになった 発 明 を、パブリックドメインから 撤 去 すること」を 妨 げることで<br />

ある。Manville Sales Corp. v. Paramount Sys., Inc.,917 F.2d 544, 549, 16 USPQ2d 1587,<br />

1591 (Fed. Cir. 1990)。<br />

2133.03(a) 「 公 用 」<br />

I. 公 用 の 基 準<br />

特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 公 用 の 阻 却 事 由 は、 発 明 がその 基 準 日 前 に 公 用 に 供 せられ、かつ<br />

いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 である 場 合 に 生 ずる。Invitrogen Corp. v. Biocrest<br />

Manufacturing L.P., 424 F.3d 1374, 76 USPQ2d 1741 (Fed. Cir. 2005)。 裁 判 所 は 次 のよ<br />

うに 説 明 している:<br />

「 第 102 条 (b)の 法 定 不 特 許 事 由 の 公 用 部 分 に 関 する 適 切 な 基 準 は、 当 該 使 用 が 次 に 挙 げるも<br />

のかどうかである。(1) 一 般 に 公 開 されていた。 又 は、(2) 商 業 的 に 使 われた。 商 業 利 用 は 明<br />

らかに 公 用 を 意 味 するが、それは 恐 らく、 例 えば、 秘 密 の 販 売 申 出 以 上 のものを 要 求 する。<br />

従 って、 公 用 部 分 の 基 準 は、 実 験 や、とりわけ、 公 に 行 われた 行 為 の 性 質 、 利 用 への 公 衆 の<br />

アクセス、その 利 用 を 見 た 公 衆 のメンバーに 課 せられた 秘 密 保 持 義 務 、 並 びに 商 業 利 用 に 関<br />

わる 証 拠 もまた 考 慮 すべきである・・・。その 証 拠 は、 当 該 使 用 が 不 特 許 事 由 を 生 じ 得 る 公 用 で<br />

あるかどうかを 識 別 することに 関 係 するが、 公 用 阻 却 事 由 のもう 一 つの 必 要 要 件 、Pfaff 事<br />

件 による 2 つの 基 準 のうちの、いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 という 構 成 要 素 にかかわる 証<br />

拠 とは 別 である。」<br />

Id. at 1380、76 USPQ2d at 1744( 引 用 省 略 )<br />

公 用 及 び 販 売 による 法 定 阻 却 事 由 の「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」の 部 分 に 関 する 考 察<br />

については、MPEP 第 2133.03 条 (c)を 参 照 のこと。<br />

「 発 明 の 公 用 を 構 成 するには、 特 許 製 品 の 2 つ 以 上 が 公 に 使 用 される 必 要 はない。 多 数 の 使<br />

用 はその 証 拠 を 強 化 する 傾 向 があるが、そのような 使 用 を 十 分 に 定 義 しているものは、 多 数<br />

と 全 く 同 じくらい 当 該 特 許 を 無 効 にする 効 力 を 有 する。 同 様 に、2 名 以 上 の 者 が 当 該 発 明 を<br />

使 用 する 必 要 はない。Egbert v. Lippmann,104 U.S. 333, 336 (1881)<br />

II. 公 知 は 必 ずしも 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 公 用 ではない<br />

その 発 明 が 一 般 に 知 られているだけで、 特 許 法 第 102 条 (b)による 拒 絶 は 正 当 化 されない。 特<br />

許 法 第 102 条 (b)は、 公 知 ではなく 公 用 又 は 販 売 による 阻 却 である。TP Labs., Inc., v.<br />

Professional Positioners, Inc., 724 F.2d 965, 970, 220 USPQ 577, 581 (Fed. Cir. 1984)。<br />

しかし、 公 知 は 特 許 法 第 102 条 (a)による 拒 絶 理 由 を 提 供 し 得 ることに 留 意 すること。MPEP<br />

第 2132 条 を 参 照 のこと。<br />

A. 非 商 業 利 用 と 商 業 利 用 、 及 び 秘 密 の 影 響<br />

発 明 の 秘 密 又 は 機 密 使 用 が 公 用 の 阻 却 事 由 につながる 限 定 された 環 境 が 存 在 する。「 秘 密 に<br />

使 用 したことだけで、 既 存 の 知 識 が 公 用 から 撤 回 されないことを 示 すには 十 分 ではない。 商<br />

業 利 用 もまた 禁 じられる。」Invitrogen, 424 F.3d at 1382、76 USPQ2d at 1745-46(いまだ<br />

かつて 販 売 されていない 将 来 の 製 品 を 開 発 するため、 基 準 日 以 前 に 内 部 的 にクレームの 発 明<br />

を 特 許 権 者 が 秘 密 裏 に 使 用 したという 事 実 は、 単 独 で 公 用 の 阻 却 事 由 を 特 許 を 受 けられるも<br />

106


のにするには 不 十 分 である。)<br />

1. 「 公 用 」 及 び「 非 秘 密 使 用 」は 必 ずしも 同 義 ではない<br />

「 公 」は「 非 秘 密 」と 必 ずしも 同 義 ではない。「 発 明 品 の 非 秘 密 使 用 が[ 発 明 者 若 しくはその<br />

発 明 に 繋 がる 誰 かによって] 基 準 日 よりも 前 に 成 されたという 事 実 自 体 が、 特 許 法 第 102 条<br />

(b)の 下 で 不 特 許 事 由 が 発 生 したかどうかの 争 点 を 決 着 させることはない。 発 明 品 が 見 えな<br />

い 所 に 隠 されなかったという 事 実 はその 使 用 を 秘 密 ではなくするが、 非 秘 密 使 用 はそれ 自 体<br />

で『 公 用 』 活 動 になるのではない。」 発 明 者 が 発 明 の 秘 密 を 保 護 する 環 境 下 で 発 明 の 商 業 的<br />

使 用 をしている 場 合 も「また 同 様 に、すべての 秘 密 使 用 が 制 定 法 の 意 義 の 範 囲 内 で 事 実 上 『 公<br />

用 』にあたらないとは 限 らないことを 加 えねばならない。」TP Labs., Inc. v. Professional<br />

Positioners, Inc., 724 F.2d 965, 972, 220 USPQ 577, 583 (Fed. Cir. 1983) ( 引 用 省 略 )<br />

2. 発 明 が 隠 されていたとしても、その 発 明 を 具 体 化 する 機 械 又 は 物 品 を 公 の 目 に 曝 す 発 明<br />

者 は、その 発 明 が 公 用 に 供 されるので 特 許 を 取 得 できない<br />

発 明 者 又 は 発 明 者 に 繋 がる 者 がその 発 明 を 展 示 又 は 販 売 に 供 すると、まさにその 性 質 上 、 発<br />

明 がそれよりも 大 きな 機 械 又 は 物 品 の 一 部 として 完 全 に 見 えなくされていたとしても、その<br />

発 明 がその 本 来 の 状 態 かつ 意 図 された 方 法 で 使 用 され、それよりも 大 きな 機 械 又 は 物 品 が 一<br />

般 に 公 開 されている 場 合 は、 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 の 範 囲 内 で「 公 用 」が 存 在 する。In re<br />

Blaisdell, 242 F.2d 779, 783, 113 USPQ 289, 292 (CCPA 1957); Hall v. Macneale, 107 U.S.<br />

90, 96-97 (1882); Ex parteKuklo, 25 USPQ2d 1387, 1390 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)(ク<br />

レームする 発 明 の 構 造 的 特 徴 を 含 む 装 置 を 研 究 所 の 訪 問 者 に 対 して 展 示 すると、 公 衆 が 発 明<br />

品 の 内 部 の 働 きを 理 解 しなかったとしても、 公 用 となる。その 発 明 を 開 示 される 者 が、その<br />

発 明 の 意 味 及 び 技 術 的 複 雑 さを 理 解 する 必 要 はない。<br />

3. 発 明 者 が、 秘 密 性 が 合 理 的 に 期 待 され、その 使 用 を 自 身 が 享 受 する 場 所 に 使 用 を 制 約 し<br />

た 場 合 、 公 用 は 存 在 しない<br />

発 明 者 の、 発 明 者 自 身 の 享 受 のための、 発 明 の 私 的 利 用 は 公 用 とならない。Moleculon<br />

Research Corp. v. CBS, Inc., 793 F.2d 1261, 1265, 229 USPQ 805, 809 (Fed. Cir. 1986)( 発<br />

明 者 は 自 分 の 寮 の 部 屋 にいる 間 に 親 しい 友 人 に 発 明 パズルを 見 せた。 後 に、 発 明 者 が 働 く 会<br />

社 の 社 長 が 発 明 者 の 机 の 上 のパズルを 見 て、 彼 らはそれについて 意 見 を 交 わした。 裁 判 所 は、<br />

発 明 者 は 支 配 権 を 維 持 しているのでこれらの 行 為 は「 公 用 」とはならないと 判 示 した。)<br />

4. 秘 密 保 持 契 約 の 有 無 は 公 用 の 争 点 を 解 決 することにならない<br />

「 秘 密 保 持 契 約 の 有 無 は 公 用 の 争 点 を 解 決 することにならないが、『すべての 証 拠 を 査 定 す<br />

る 際 に 検 討 すべき 一 つの 要 因 となる』。」Bernhardt, L.L.C. v. Collezione Europa USA, Inc.,<br />

386 F.3d 1371, 1380-81, 72 USPQ2d, 1901, 1909 (Fed. Cir. 2004)( 引 用 Moleculon Research<br />

Corp. v. CBS Inc., 793 F.2d 1261, 1266, 229 USPQ 805, 808 (Fed. Cir. 1986))。 裁 判 所<br />

は、「 公 衆 が 自 由 に 使 用 できると 正 当 に 信 ずる 発 明 のパブリックドメインからの 撤 去 を 思 い<br />

とどまらせること、 発 明 を 利 用 する 期 間 の 延 長 を 禁 ずること、そして 発 明 の 速 やかな 幅 広 い<br />

開 示 を 促 すこと」を 含 む、 公 用 及 び 販 売 の 阻 却 事 由 の 根 底 となる 方 針 に 即 して 公 用 の 証 拠 を<br />

分 析 することが 必 要 であると 強 調 した。Bernhardt, 386 F.3d at 1381、72 USPQ2d at 1909。<br />

次 も 参 照 のこと。Invitrogen, 424 F.3d at 1379、76 USPQ2d at 1744;MPEP §2133.03 方<br />

針 の 検 討 。 裁 判 所 が 強 調 した 証 拠 は「 公 になされた 行 為 の 性 質 ; 公 用 に 対 する 公 衆 のアクセ<br />

スおよび 知 識 ;[ 及 び] 利 用 を 見 る 人 々に 課 せられた 秘 密 保 持 義 務 の 有 無 」を 含 んだ。Bernhardt,<br />

386 F.3d at 1381、72 USPQ2d at 1909。 例 えば、Bernhardt 事 件 において 裁 判 所 は、 同 事 例<br />

107


で 争 点 となった 展 示 会 陳 列 について、「 参 加 者 は ID を 承 認 された 名 簿 に 照 らしてビルの 守 衛<br />

にチェックされた 後 、ショールームまで 付 き 添 われ、そのショールーム 近 くの 受 付 カウンタ<br />

ーでもう 一 度 チェックされている。さらに 参 加 者 はショールーム 内 でメモや 写 真 を 取 ること<br />

が 許 されていないので、 公 衆 への 公 開 に 当 たらない」と 指 摘 した。 同 文 献 。 裁 判 所 は、 地 方<br />

裁 判 所 が 秘 密 保 持 契 約 のない 点 の 考 察 に 集 中 し、 展 示 会 を 取 り 巻 く 環 境 全 体 が 公 用 の 阻 却 事<br />

由 の 根 拠 を 成 す 方 針 に 適 合 するかどうかを 考 察 若 しくは 分 析 していないので、 展 示 会 陳 列 は<br />

公 用 であるかどうかの 争 点 を 差 戻 した。 同 文 献 。<br />

B. 出 願 人 から 発 明 を 得 る 第 三 者 による 使 用<br />

発 明 は、 発 明 者 がその 発 明 について 秘 密 の 制 約 又 は 義 務 を 課 さずに 他 者 に 使 用 を 許 す 場 合 、<br />

公 用 となる<br />

「クレームの 発 明 の 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく『 公 用 』は、 発 明 者 が 発 明 者 に 対 する 秘 密 の<br />

限 定 、 制 約 若 しくは 義 務 を 科 さず、 他 者 にその 発 明 の 使 用 を 認 める 場 合 に 生 ずる。」In re Smith,<br />

714 F.2d 1127, 1134, 218 USPQ 976, 983 (Fed. Cir. 1983)。 秘 密 保 持 契 約 の 有 無 はそれ 自<br />

体 が 公 用 問 題 の 決 定 要 因 とならないが、 発 明 者 がその 発 明 に 保 有 する 支 配 の 程 度 を 示 す、 使<br />

用 の 期 間 、 場 所 及 び 状 況 とともに 考 慮 すべき 一 つの 要 因 である。Moleculon Research Corp. v.<br />

CBS, Inc., 793 F.2d 1261, 1265, 229 USPQ 805, 809 (Fed. Cir. 1986)。 参 照 として、Ex parte<br />

C, 27 USPQ2d 1492, 1499 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)( 発 明 者 は、 契 約 をかわして 種 子<br />

を 植 え 付 けその 後 の 販 売 に 備 えて 備 蓄 を 増 やすために 支 払 いを 行 った 栽 培 者 に 発 明 の 大 豆 種<br />

子 を 販 売 した。 種 子 使 用 の 商 業 的 性 質 が、 契 約 の「 販 売 」 的 側 面 及 び 秘 密 保 持 要 件 の 表 見 的<br />

欠 如 と 相 まって、「 公 用 」の 阻 却 事 由 の 水 準 にまで 達 した。);Egbert v. Lippmann, 104 U.S.<br />

333, 336 (1881)( 発 明 者 が 他 者 に 発 明 のコルセットインサート 使 用 を 認 めたところ、 使 用 時<br />

には 見 えない 所 に 隠 されてはいるが、 発 明 者 は 秘 密 保 守 義 務 若 しくは 使 用 制 約 を 課 さなかっ<br />

たので 公 用 と 判 定 された。)<br />

C. 独 立 した 第 三 者 による 使 用<br />

独 立 した 第 三 者 による 使 用 は、 公 衆 にその 発 明 を 伝 えるのに 十 分 である 若 しくは 競 争 相 手 が<br />

その 発 明 を 合 理 的 に 確 認 することができる 場 合 、 公 用 となる<br />

発 明 にかかわりのない 者 、その 発 明 を 独 自 に 行 った 者 など、による 取 引 又 は 営 利 目 的 の 通 常<br />

業 務 過 程 におけるその 発 明 の「 非 秘 密 」 使 用 は、「 公 用 」となり 得 る。Bird Provision Co. v.<br />

Owens Country Sausage, Inc., 568 F.2d 369, 374-76, 197 USPQ 134, 138-40 (5th Cir. 1978)。<br />

また、 別 の 発 明 者 による 製 品 を 製 造 するための 機 械 又 はプロセスの「 秘 密 」 使 用 であっても、<br />

その 機 械 又 はプロセスの 詳 細 が 販 売 された 若 しくは 公 に 陳 列 された 製 品 を 観 察 又 は 分 析 する<br />

ことによって 確 認 される 場 合 、「 公 開 されたこと」となる。Gillman v. Stern, 114 F.2d 28,<br />

46 USPQ 430 (2d Cir. 1940); Dunlop Holdings, Ltd. v. Ram Golf Corp., 524 F.2d 33, 36-7,<br />

188 USPQ 481, 483-484 (7th Cir. 1975)。 発 明 プロセスの 詳 細 は 販 売 された 又 は 陳 列 された<br />

製 品 から 確 認 することができず、 第 三 者 が 企 業 秘 密 としてその 発 明 を 保 持 している 場 合 、そ<br />

の 使 用 は 公 用 とはならず、その 使 用 者 にかかわりのない 者 に 発 行 される 特 許 の 妨 げとならな<br />

い。W.L. Gore & Assocs. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 1550, 220 USPQ 303, 310 (Fed.<br />

Cir. 1983)。しかし、クレームの 態 様 が 基 準 日 よりも 前 に 公 知 となっている 場 合 、その 発 明<br />

品 のクレームされていない 態 様 が 公 表 されていないとしても、 発 明 品 は 先 行 技 術 とみなす。<br />

Lockwood v. American Airlines, Inc., 41 USPQ2d 1961, 1964-65 (Fed. Cir. 1997)(コン<br />

ピュータ 予 約 システムは「SABRE ソフトウェアの 基 本 アルゴリズムが 財 産 価 値 のあるもので<br />

108


機 密 であり、 一 般 人 の 目 に 容 易 に 明 らかであったシステムのこれらの 点 では、 当 業 者 がその<br />

システム[のクレームされていない 態 様 ]を 再 現 するには 十 分 ではなかったったとしても、( 当<br />

該 コンピュータ 予 約 システムは) 先 行 技 術 であった・・・」) 公 衆 が、 出 願 人 以 外 の 者 により、 公<br />

用 活 動 に 関 わる 発 明 を 知 るようになる 範 囲 は、その 活 動 を 取 り 巻 く 実 際 の 環 境 と、これらが<br />

販 売 及 び 公 用 の 阻 却 事 由 の 根 拠 を 成 す 方 針 にどのように 適 合 するかに 依 存 する。Manville<br />

Sales Corp. v. Paramount Sys., Inc., 917 F.2d 544, 549, 16 USPQ2d 1587, 1591 (Fed. Cir.<br />

1990)( 引 用 King Instrument Corp. v. Otari Corp., 767 F.2d 833, 860, 226 USPQ 402, 406<br />

(Fed. Cir. 1985))。 例 として、 出 願 人 以 外 の 第 三 者 によりなされた「 秘 密 」とされる 使 用 で、<br />

その 者 の 多 数 の、 秘 密 の 約 束 の 下 にない 従 業 員 が、その 発 明 の 性 質 について 他 の 従 業 員 を 教<br />

育 するために、その 者 による 許 可 の 下 、 制 限 なく 発 明 の 利 用 を 許 されている 場 合 、 公 衆 は「 知<br />

らされている」。Chemithon Corp. v. Proctor & Gamble Co., 287 F. Supp. 291, 308, 159<br />

USPQ 139, 154 (D.Md. 1968), aff’d., 427 F.2d 893, 165 USPQ 678 (4th Cir. 1970)。<br />

公 衆 が 出 願 人 以 外 の 者 による 公 用 活 動 が 十 分 に 通 知 されないとしても、 特 許 法 第 102 条 (f)<br />

及 び 特 許 法 第 102 条 (g)による 拒 絶 を 根 拠 とする 十 分 な 理 由 が 存 在 し 得 る。Dunlop Holdings<br />

Ltd. v. Ram Golf Corp., 524 F.2d 33, 188 USPQ 481 (7th Cir. 1975)を 参 照 のこと。MPEP<br />

第 2137 条 及 び 第 2138 条 を 参 照 のこと。<br />

2133.03(b) 「 販 売 」<br />

米 国 出 願 の 有 効 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に 明 確 な 販 売 若 しくは 販 売 の 申 出 があって、その 販 売<br />

若 しくは 販 売 の 申 出 の 対 象 がクレームの 発 明 の 新 規 性 を 喪 失 させるか、 又 は 先 行 技 術 にそれ<br />

を 加 えることによってクレームの 発 明 を 自 明 としたであろう 場 合 、 容 認 できない 販 売 が 生 じ<br />

ている。Ferag AG v. Quipp, Inc., 45 F.3d 1562, 1565, 33 USPQ2d 1512, 1514 (Fed. Cir.<br />

1995) 特 許 法 第 102 条 (b)の 販 売 の 阻 却 事 由 は、その 発 明 が(1) 主 として 実 験 目 的 ではなく 商 業<br />

的 販 売 申 出 の 対 象 であり、かつ(2)いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 にある 場 合 に 引 き 起 こされ<br />

る。Pfaff v. Wells Elecs., Inc., 525 U.S. 55, 67, 48 USPQ2d 1641, 1646-47 (1998)。<br />

従 来 の 契 約 法 の 原 則 は、 商 業 的 販 売 申 出 が 発 生 していたかどうかを 判 断 する 場 合 に 適 用 され<br />

る。 参 照 として、Linear Tech. Corp. v. Micrel, Inc., 275 F.3d 1040, 1048, 61 USPQ2d 1225,<br />

1229 (Fed. Cir. 2001), petition for cert. filed, 71 USLW 3093 (Jul. 03, 2002) (No.<br />

02-39);Group One, Ltd. v. Hallmark Cards, Inc., 254 F.3d 1041,1047, 59 USPQ2d 1121,<br />

1126 (Fed. Cir. 2001)(「 一 般 的 な 提 案 として 我 々は、コミュニケーション 又 は 一 連 のコミ<br />

ュニケーションが 商 業 的 販 売 の 水 準 に 達 していたかどうか・・・を 統 一 商 事 法 典 (「UCC」)に 頼<br />

る」)。<br />

I. 「 販 売 」の 意 味<br />

販 売 は、 買 主 の 支 払 いすなわち「 売 買 される 物 の 代 金 を 支 払 うこと」の 見 返 りとして 売 主 が<br />

「 所 有 権 を 与 えること 又 は 渡 すこと」に 合 意 する 当 事 者 間 の 契 約 である。In re Caveney, 761<br />

F.2d 671, 676, 226 USPQ 1, 4 (Fed. Cir. 1985)。 商 品 の 販 売 契 約 には 具 体 的 提 供 及 びその<br />

提 供 の 受 け 入 れを 必 要 とする。 参 照 事 例 として、Linear Tech., 275 F.3d at 1052-54、61 USPQ2d<br />

at 1233-34( 裁 判 所 は、 購 入 予 定 者 は 問 題 となっている 商 品 を 発 注 したが「 追 って 連 絡 する-<br />

未 予 約 」と 読 み 取 れる 注 文 受 取 書 を 受 け 取 っていた 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 における<br />

販 売 は 存 在 しないと 判 示 した。 購 入 予 定 者 はその 注 文 は 受 注 されていないと 判 断 するであろ<br />

109


う。)<br />

A. 条 件 付 き 販 売 は 特 許 を 阻 却 することがある<br />

発 明 は、その 販 売 に 条 件 が 付 けられたとしても「 販 売 」とみなされることがある。 販 売 は 買<br />

主 満 足 を 条 件 とする 事 実 は、それ 以 上 のものがなければ、その 販 売 が 実 験 目 的 であることを<br />

証 明 するものではない。Strong v. General Elec. Co., 434 F.2d 1042, 1046, 168 USPQ 8,<br />

12 (5th Cir. 1970)<br />

B. 非 営 利 販 売 は 特 許 を 阻 却 することがある<br />

「 販 売 」は、 特 許 を 阻 却 するのに 営 利 目 的 である 必 要 はない。 販 売 が 発 明 の 商 業 利 用 目 的 で<br />

ある 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 において「 販 売 」となる。In re Rinehart, 524 F.2d 1393,<br />

1401, 187 USPQ 593, 599 (CCPA 1975)。(「 営 利 目 的 の 発 明 品 販 売 は 商 業 利 用 目 的 であるこ<br />

とを 実 証 することになろうが、 出 願 人 がその 販 売 から 全 く 利 益 がないことを 自 覚 していると<br />

いう 事 実 はその 逆 を 実 証 するものではない。」)<br />

C. 1 回 の 販 売 又 は 販 売 申 出 は 特 許 を 阻 却 することがある<br />

たった 一 度 の 販 売 又 は 販 売 申 出 も 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づいて 特 許 性 を 阻 却 することがあ<br />

る。Consolidated Fruit-Jar Co. v. Wright, 94 U.S. 92, 94 (1876);Atlantic Thermoplastics<br />

Co. v. Faytex Corp., 970 F.2d 834, 836-37, 23 USPQ2d 1481, 1483 (Fed. Cir. 1992)。<br />

D. 権 利 の 販 売 は 発 明 の 販 売 ではなく、 特 許 の 阻 却 事 由 とならない<br />

「 発 明 の 権 利 及 び 潜 在 的 特 許 権 の 譲 渡 若 しくは 販 売 は、 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 において<br />

『 発 明 』の 販 売 とはならない。」Moleculon Research Corp. v. CBS, Inc., 793 F.2d 1261,<br />

1267, 229 USPQ 805, 809 (Fed. Cir. 1986); 次 も 参 照 のこと。 Elan Corp., PLC v. Andrx<br />

Pharms. Inc., 366 F.3d 1336, 1341, 70 USPQ2d 1722, 1728 (Fed. Cir. 2004);In re Kollar,<br />

286 F.3d 1326, 1330 n.3, 1330-1331, 62 USPQ2d 1425, 1428 n.3, 1428-1429 (Fed. Cir.<br />

2002)( 販 売 の 阻 却 事 由 を 誘 引 するライセンス( 例 えば、 製 品 があたかも 販 売 されたように 直 ち<br />

に 実 施 権 者 に 移 転 される 標 準 的 なコンピュータソフトウェアのライセンス)は、それ 自 体 で 販<br />

売 の 阻 却 事 由 を 誘 引 しない 単 に 発 明 に 付 与 されるライセンス( 例 えば、 発 明 を 市 販 する 排 他 的<br />

権 利 又 は 潜 在 的 特 許 権 )と 区 別 される);Group One, Ltd. v. Hallmark Cards, Inc., 254 F.3d<br />

1041, 1049 n. 2, 59 USPQ2d 1121, 1129 n. 2 (Fed. Cir. 2001)。<br />

E. 買 主 は 売 主 又 は 提 案 者 に 拘 束 されてはならない<br />

販 売 又 は 販 売 申 出 は 別 個 の 実 体 間 で 行 われねばならない。In re Caveney, 761 F.2d 671, 676,<br />

226 USPQ 1, 4 (Fed. Cir. 1985)。「 当 事 者 が 主 張 された 販 売 に 関 わっている 場 合 、 法 定 不<br />

特 許 事 由 が 存 在 するかどうかどうかは、 売 主 が 発 明 を 一 般 公 開 しないままとするように 購 入<br />

者 を 拘 束 するかどうかに 依 存 する。Ferag AG v. Quipp, Inc., 45 F.3d 1562, 1566, 33 USPQ2d<br />

1512, 1515 (Fed. Cir. 1995)( 売 主 が 買 主 会 社 の 親 会 社 であるが、 買 主 会 社 の 社 長 が 買 主 会<br />

社 の 事 業 に 対 し「 原 則 的 に 自 由 な」 管 理 権 限 を 有 する 場 合 、その 販 売 は 法 定 不 特 許 事 由 とな<br />

る。)<br />

II. 販 売 申 出<br />

「 商 業 的 販 売 申 出 の 水 準 に 達 するたった 一 つの 申 込 み、 他 方 当 事 者 が 単 なる 引 受 ( 報 酬 を 前 提<br />

として)によって 拘 束 力 のある 契 約 にすることができる 申 込 みは、 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づ<br />

く 販 売 申 出 を 構 成 する。」Group One, Ltd. v. Hallmark Cards, Inc., 254 F.3d 1041,1048,<br />

59 USPQ2d 1121, 1126 (Fed. Cir. 2001)。<br />

110


A. 拒 絶 された 又 は 受 理 されない 販 売 申 出 は 特 許 の 十 分 な 阻 却 事 由 となる<br />

発 明 が「 販 売 」となったとき 法 定 不 特 許 事 由 が 生 じるので、 単 なる 販 売 申 出 も 十 分 に 不 特 許<br />

事 由 の 商 業 活 動 となる。In re Theis, 610 F.2d 786, 791, 204 USPQ 188, 192 (CCPA 1979)。<br />

拒 絶 された 申 込 みであっても、 販 売 の 阻 却 事 由 を 生 ずることがある。UMC Elecs. v. United<br />

States, 816 F.2d 647, 653, 2 USPQ2d 1465, 1469 (Fed. Cir. 1987)。 実 際 に、 申 込 みは 購<br />

入 予 定 者 によって 実 際 に 受 け 取 られる 必 要 すらない。Wende v. Horine, 225 F. 501 (7th Cir.<br />

1915)<br />

B. 提 供 される 品 目 の 引 渡 しは 必 要 とされない<br />

「 販 売 は、 阻 却 事 由 が 機 能 するために 完 結 する 必 要 はない。」Buildex v. Kason Indus., Inc.,<br />

849 F.2d 1461, 1463-64, 7 USPQ2d 1325, 1327-28 (Fed. Cir. 1988) ( 引 用 省 略 )。 次 も 参<br />

照 のこと。Weatherchem Corp. v. J.L. Clark Inc., 163 F.3d 1326, 1333, 49 USPQ2d 1001,<br />

1006-07 (Fed. Cir. 1998)( 基 準 日 以 前 に 署 名 された 購 入 契 約 書 は 商 業 的 申 出 を 構 成 する。 後<br />

に 特 許 されるキャップの 引 渡 しはなく 基 準 日 後 まで 金 銭 のやりとりはないことは 関 係 しな<br />

い。)<br />

C. 売 主 は、 販 売 申 出 が 行 われたときに 商 品 を「 手 元 に」 持 っている 必 要 はない<br />

商 品 は、 販 売 又 は 申 出 の 時 点 で「 手 元 に」あって 移 転 されることを 必 要 としない。 販 売 申 出<br />

の 日 は「 販 売 」の 活 動 の 有 効 日 である。J. A. La Porte, Inc. v. Norfolk Dredging Co., 787<br />

F.2d 1577, 1582, 229 USPQ 435, 438 (Fed. Cir. 1986)。しかし、 当 該 発 明 は 基 準 日 前 に 完<br />

成 しており「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」(MPEP 第 2133.03 条 (c) 参 照 )でなければなら<br />

ない。Pfaff v. Wells Elecs., Inc. , 525 U.S. 55, 67, 119 S.Ct. 304, 311-12, 48 USPQ2d<br />

1641, 1647 (1998) 次 も 参 照 のこと。Micro Chemical, Inc. v. Great Plains Chemical Co.,<br />

103 F.3d 1538, 1545, 41 USPQ2d 1238, 1243 (Fed. Cir. 1997)( 発 明 者 は 主 張 される 申 出 の<br />

時 点 で 当 該 発 明 の 完 成 に 近 づいておらず、 当 該 発 明 は 完 成 時 にその 意 図 する 目 的 のために 作<br />

動 するであろうという 高 い 可 能 性 を 明 らかにしていなかったので、 販 売 申 出 により、 販 売 の<br />

阻 却 事 由 は 適 用 されなかった。);Shatterproof Glass Corp. v. Libbey-Owens Ford Co., 758<br />

F.2d 613, 225 USPQ 634 (Fed. Cir. 1985)( 見 込 客 に 見 せられた 見 本 は 新 たなプロセスおよ<br />

び 装 置 によって 製 造 された 証 拠 がなかったので、 販 売 申 出 は 販 売 阻 却 事 由 の 水 準 まで 達 しな<br />

かった。) 次 を 比 較 のこと。Barmag Barmer Maschinenfabrik AG v. Murata Mach., Ltd., 731<br />

F.2d 831, 221 USPQ 561 (Fed. Cir. 1984)( 発 明 製 品 の「 暫 定 」モデルが 販 売 申 出 と 同 時 に<br />

購 買 予 定 者 に 見 せられており、その 申 出 は 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 不 特 許 事 由 として 十 分<br />

であった。)<br />

D. 販 売 申 出 の 重 要 な 条 件 が 存 在 しなければならない<br />

「その 製 品 の 明 確 な 販 売 申 出 を 構 成 できず、 重 要 な 条 件 を 含 んでいない 通 知 は、 契 約 という<br />

意 味 で「 申 出 」とならない。」Elan Corp., PLC v. Andrx Pharms. Inc., 366 F.3d 1336, 1341,<br />

70 USPQ2d 1722, 1728 (Fed. Cir. 2004)。 裁 判 所 は、「もし 発 明 が 開 発 されたとき 特 許 を 付<br />

与 された 発 明 の 将 来 の 販 売 に 関 し、 特 許 に 基 づくライセンス 契 約 に 入 るとする 申 出 は、・・・ 販<br />

売 による 阻 却 事 由 を 構 成 する 特 許 発 明 の 販 売 申 出 とならない。」 同 上 、70 USPQ2d at 1726。<br />

従 って、 裁 判 所 は Elan の 書 簡 は 製 品 の 販 売 申 出 ではないと 結 論 した。さらに、 同 裁 判 所 は、<br />

その 書 簡 は 製 品 価 格 、 数 量 、 引 渡 日 時 及 び 場 所 、 並 びに 製 品 仕 様 などの 商 業 的 提 供 の 重 要 な<br />

条 件 を 欠 いていること、その 書 簡 に 記 載 されるドル 金 額 はその 製 品 の 販 売 価 格 条 件 ではなく、<br />

むしろ 求 められた 金 額 はパートナーシップを 形 成 し 継 続 するためであって、 明 示 的 に「ライ<br />

111


センス 料 」といわれるのものであると 述 べた。 同 文 献 。<br />

III. 発 明 者 、 譲 受 人 又 はその 他 の 業 務 の 過 程 で 発 明 者 に 関 わる 者 による 販 売<br />

A. 販 売 活 動 は 公 である 必 要 はない<br />

公 用 の 問 題 と 違 って、「 販 売 」の 活 動 は「 公 に」である 必 要 はない。 特 許 法 第 102 条 (b)で 使<br />

われる「 公 に」は「 使 用 」のみを 修 飾 する。「 公 に」は「 販 売 」を 修 飾 しない。Hobbs v. United<br />

States, 451 F.2d 849, 171 USPQ 713, 720 (5th Cir. 1971)。<br />

B. 発 明 者 の 販 売 同 意 は 販 売 による 阻 却 事 由 の 認 定 への 必 要 条 件 ではない<br />

発 明 が 発 明 者 からその 発 明 を 入 手 した 第 三 者 により 販 売 された 場 合 、その 発 明 者 が 販 売 に 同<br />

意 していなかったとしても、 若 しくはその 発 明 が 販 売 された 物 品 に 具 体 化 されていることを<br />

知 らなかったとしても、 特 許 は 阻 却 される。Electric Storage Battery Co. v. Shimadzu, 307<br />

U.S. 5, 41 USPQ 155 (1938); In re Blaisdell, 242 F.2d 779, 783, 113 USPQ 289, 292 (CCPA<br />

1957); CTS Corp. v. Electro Materials Corp. of America, 469 F. Supp. 801, 819, 202 USPQ<br />

22, 38 (S.D.N.Y. 1979)<br />

C. 販 売 又 は 販 売 申 出 の 客 観 的 証 拠 が 必 要 とされる<br />

クレームされた 発 明 の 販 売 又 は 販 売 申 出 があったかどうかを 決 定 する 際 、 問 うべき 重 要 な 質<br />

問 は、 出 願 でクレームされている 発 明 を 具 体 化 する 製 品 を 発 明 者 が 販 売 した 又 は 販 売 申 出 を<br />

したかどうかである。 販 売 契 約 書 又 はその 他 の 購 入 者 との 連 絡 に 記 載 された 発 明 製 品 の 明 細<br />

書 などの 客 観 的 証 拠 は、 売 買 契 約 に 基 づき 発 明 製 品 を 引 き 渡 すために 売 主 により 伝 えられな<br />

かった 意 図 を 確 認 する。Ferag AG v. Quipp, Inc., 45 F.3d 1562, 1567, 33 USPQ2d 1512, 1516<br />

(Fed. Cir. 1995)( 販 売 の 阻 却 事 由 は、 最 初 の 交 渉 及 び 売 買 契 約 を 含 む 契 約 書 は 発 明 設 計 の 使<br />

用 を 明 確 に 記 述 も 排 除 もしていないのに 対 して、 基 準 日 前 の 注 文 確 認 書 は 発 明 設 計 の 使 用 を<br />

明 記 していることを 確 認 した。) 購 入 者 は、 発 明 が 販 売 されるためにその 発 明 の 実 際 知 識 を 持<br />

つ 必 要 はない。「 申 込 まれた 製 品 が 実 際 にクレームされた 発 明 かどうかの 判 断 は、 覚 書 、 図<br />

面 、 往 復 書 簡 及 び 証 人 の 供 述 などの 関 係 証 拠 によって 立 証 することができる。RCA Corp. v.<br />

Data Gen. Corp., 887 F.2d 1056, 1060, 12 USPQ2d 1449, 1452 (Fed. Cir. 1989)。しかし、<br />

「 購 入 者 が、 発 明 者 が 申 し 出 ていると 合 理 的 に 信 ずるものは、 結 局 、その 申 出 は 客 観 的 に 特<br />

許 発 明 のものであるといえかどうかに 関 係 する。」Envirotech Corp. v. Westech Eng fg, Inc.,<br />

904 F.2d 1571, 1576, 15 USPQ2d 1230, 1234 (Fed. Cir. 1990)(ゼネコンに 製 品 を 供 給 する<br />

ための 提 案 書 は 新 しい 設 計 を 述 べずにむしろ 先 行 技 術 設 計 に 言 及 したのに 対 して、サプライ<br />

ヤの 新 しい 設 計 を 供 給 するという 伝 えられなかった 意 図 は、その 契 約 を 請 け 負 うことになっ<br />

た 場 合 、サプライヤの 付 け 値 が 新 しい 設 計 のより 低 いコストを 反 映 したとしても、 新 しい 設<br />

計 に 関 する 特 許 に 対 して「 販 売 」の 阻 却 事 由 を 構 成 しない。)<br />

IV. 独 立 した 第 三 者 による 販 売<br />

A. 独 立 した 第 三 者 による 販 売 又 は 販 売 申 出 は 特 許 を 阻 却 する<br />

独 立 した 第 三 者 による 出 願 人 の 特 許 出 願 日 の 1 年 よりも 前 の 当 該 発 明 の 販 売 又 は 販 売 申 出 は、<br />

出 願 人 の 特 許 取 得 を 阻 却 する。「 本 規 則 の 例 外 は、 特 許 される 方 法 が 秘 密 にされてその 方 法<br />

の 特 許 を 付 与 されていない 製 品 が 販 売 された 後 も 秘 密 を 保 持 する 限 りとする。 基 準 日 以 前 の<br />

販 売 は 阻 却 事 由 となる。ただし、 特 許 権 者 又 は 特 許 出 願 人 により 行 われた 場 合 であって、そ<br />

の 他 の 者 により 行 われた 場 合 ではない。In re Caveney, 761 F.2d 671, 675-76, 226 USPQ 1,<br />

112


3-4 (Fed. Cir. 1985)。<br />

B. 非 先 行 技 術 の 刊 行 物 は 基 準 日 以 前 の 販 売 の 証 拠 として 使 用 できる<br />

製 品 リリース 日 又 は 発 明 者 の 基 準 日 前 のインストールに 加 えて 連 絡 先 、 価 格 条 件 、 参 照 文 献 、<br />

保 証 、 研 修 及 び 保 守 点 検 などの 潜 在 的 購 入 者 に 有 用 な 情 報 を 記 載 して 製 品 ベンダーを 特 定 す<br />

る 要 約 は、 特 許 法 第 102 条 (b) 若 しくは 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 第 三 者 による 事 前 の<br />

販 売 の 十 分 な 証 拠 を 提 供 し 得 る。In re Epstein, 32 F.3d 1559, 31 USPQ2d 1817 (Fed. Cir.<br />

1994)( 審 査 官 の 拒 絶 は、 当 該 クレームを 満 足 するソフトウェア 製 品 を 開 示 した、 非 先 行 技 術<br />

を 公 開 した 要 約 を 理 由 とした。その 要 約 はソフトウェアのリリース 日 及 び 出 願 人 の 出 願 日 の<br />

1 年 よりも 前 の 初 めてインストールされた 日 を 明 示 していた。)<br />

2133.03(c) 「 発 明 」<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(b) その 発 明 は 合 衆 国 におけるその 特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に 合 衆 国 において・・・ 公 用<br />

若 しくは 販 売 されていた。<br />

( 強 調 は 引 用 者 による)。<br />

I. 発 明 は「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」でなければならない<br />

In Pfaff v. Wells Elecs., Inc., 525 U.S. 55, 66-68, 119 S.Ct. 304, 311-12, 48 USPQ2d<br />

1641, 1647 (1998)、 最 高 裁 判 所 は、 発 明 がまだ 実 施 化 されていないとしても、それが 特 許 法<br />

第 102 条 (b)の 意 義 の 範 囲 内 で「 販 売 」であったかどうかを 判 断 するための 2 つの 部 分 から 成<br />

る 判 定 方 法 を 明 確 に 述 べた。「 販 売 の 阻 却 事 由 は、2 つの 条 件 が 基 準 日 前 [ 米 国 出 願 の 有 効 出<br />

願 日 の 1 年 よりも 前 ]に 満 たされたとき 適 用 する。 第 一 に、その 製 品 は 商 業 的 販 売 申 出 の 対 象<br />

でなければならない・・・ 第 二 に、その 発 明 はいつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 でなければならな<br />

い。Id.at 67, 119 S.Ct.at 311-12、48 USPQ2d at 1646-47。<br />

連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、 最 高 裁 判 所 の「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」の 部 分 は 販 売 及 び<br />

公 用 の 両 阻 却 事 由 との 関 連 で 適 用 すると 説 明 した。Invitrogen Corp. v. Biocrest Manuf.,<br />

424 F.3d 1374, 1379, 76 USPQ2d 1741, 1744 (Fed. Cir. 2005)(「 第 102 条 (b)に 基 づく 阻<br />

却 事 由 は、 基 準 日 前 に、 発 明 が 公 用 に 供 され、かつ、いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 にある<br />

場 合 に 生 ずる。」)「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 (Pfaff 基 準 の 第 二 の 部 分 )は 少 なくとも<br />

次 の 2 方 法 、すなわち、 基 準 日 前 の 実 施 化 の 証 明 によって、 若 しくは、 基 準 日 前 に 発 明 者 が、<br />

当 業 者 がその 発 明 を 実 施 し 得 るほど 十 分 に 具 体 的 な 発 明 の 図 面 又 はその 他 の 詳 細 な 説 明 を 準<br />

備 していたことの 証 明 によって、 満 足 することができる。」Id. at 67、199 S.Ct.at 311-12、<br />

48 USPQ2d at 1647-47( 特 許 は、そのコンピュータのチップソケットの 発 明 はその 出 願 日 の 1<br />

年 よりも 前 に 販 売 された 時 点 でいつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 であったので、 無 効 と 判 示 さ<br />

れた。その 発 明 がまだ 実 用 化 されていなかったとしても、 製 造 者 は 当 該 発 明 者 の 詳 細 な 図 面<br />

及 び 明 細 書 を 用 いてクレームのコンピュータチップソケットを 生 産 することが 可 能 であった。<br />

そして、それらのソケットは 当 該 特 許 でクレームされた 発 明 のすべての 要 素 を 含 んでいた。<br />

次 も 参 照 のこと。Weatherchem Corp. v. J.L. Clark Inc., 163 F.3d 1326, 1333, 49 USPQ2d<br />

1001, 1006-07 (Fed. Cir. 1998)( 販 売 された 可 塑 性 の 分 配 キャップの 詳 細 な 図 面 は 当 該 クレ<br />

ームの 各 限 定 を 含 んでおり、 当 業 者 がその 発 明 を 実 施 できるだけの 十 分 な 具 体 性 があったの<br />

113


で、その 発 明 は「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」と 判 示 された。)<br />

その 発 明 が、 当 該 出 願 の 1 年 よりも 前 に 販 売 又 は 販 売 申 出 されるより 以 前 に 実 際 に 実 施 化 さ<br />

れていた 場 合 、 特 許 は 阻 却 される。Vanmoor v. Wal-Mart Stores, Inc., 201 F.3d 1363, 1366-67,<br />

53 USPQ2d 1377, 1379 (Fed. Cir. 2000)(「ここで、 基 準 日 前 の 販 売 は、 今 日 まで 変 わって<br />

いない 仕 様 書 どおりに 作 られる 完 成 したカートリッジであって、 被 疑 侵 害 カートリッジに 具<br />

体 化 された 発 明 は 当 該 基 準 日 以 前 に 実 施 化 されたことを 示 した。Pfaff のいつでも 特 許 を 受<br />

けられる 状 態 もまた 満 たされている、なぜなら 明 細 書 の 図 面 は 基 準 日 以 前 に 使 用 することが<br />

できており、 実 際 に 被 疑 侵 害 カートリッジの 生 産 に 使 用 された。」);In re Hamilton, 882 F.2d<br />

1576, 1580, 11 USPQ2d 1890, 1893 (Fed. Cir. 1989)。(「 販 売 申 出 される 製 品 が 当 該 クレ<br />

ームの 各 限 定 を 潜 在 的 に 有 する 場 合 、その 発 明 は、 当 該 取 引 当 事 者 がその 製 品 は 当 該 クレー<br />

ムの 特 性 を 有 することを 認 めているか 否 かを 問 わず、 販 売 である」);Abbott Laboratories v.<br />

Geneva Pharmaceuticals, Inc., 182 F.3d 1315, 1319, 51 USPQ2d 1307, 1310 (Fed. Cir.<br />

1999)( 薬 学 的 化 合 物 の 特 定 の 無 水 結 晶 形 についてのクレームは、 外 国 製 化 合 物 の 米 国 販 売 に<br />

かかわる 当 事 者 はその 特 定 の 結 晶 形 の 同 一 性 を 承 知 していないとはいえ、 特 許 法 第 102 条 (b)<br />

の 販 売 による 阻 却 事 由 により 無 効 と 判 示 された。STX LLC. v. Brine Inc., 211 F.3d 588, 591,<br />

54 USPQ2d 1347, 1350 (Fed. Cir. 2000)(ラクロススティックについてのクレームは、 販 売<br />

当 時 にそのスティックが 言 われるところの「 改 良 された 取 扱 いやすい 特 性 」を 有 するものか<br />

どうか 知 られていなかったとする 反 論 にかかわらず、 販 売 の 阻 却 事 由 により 無 効 と 判 示 され<br />

た。「『 改 良 された 取 扱 いやすい 特 性 』など 製 品 に 潜 在 的 に 備 わる 主 観 的 品 質 は 販 売 の 阻 却<br />

事 由 を 回 避 する 脱 出 ハッチとなることはできない」。) 販 売 の 阻 却 事 由 を 争 点 とする 中 で 現 実<br />

の 実 施 化 があったというには、 一 般 的 に、 失 敗 するよりも 高 い 確 率 で、 意 図 した 目 的 につい<br />

て 発 明 の 実 用 的 有 用 性 を 実 証 できるような 方 法 で 実 際 の 動 作 状 態 の 下 で 試 験 することを 必 要<br />

とする。ただし、 発 明 が 極 めて 単 純 であるため 実 用 的 実 施 可 能 性 が 明 らかな 場 合 を 除 く。Field<br />

v. Knowles, 183 F.2d 593, 601, 86 USPQ 373, 379 (CCPA 1950); Steinberg v. Seitz, 517<br />

F.2d 1359, 1363, 186 USPQ 209, 212 (CCPA 1975)。<br />

当 該 発 明 は、 販 売 が 特 許 を 阻 却 するためにはいつでも 十 分 な 商 業 マーケティングができる 状<br />

態 である 必 要 はない。Atlantic Thermoplastics Co. v. Faytex Corp., 970 F.2d 834, 836-37,<br />

23 USPQ2d 1481, 1483 (Fed. Cir. 1992)<br />

II. 発 明 者 は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 の 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 を 提 出 した<br />

引 例 を 支 持 して 誓 うため 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づいて 提 出 される 宣 誓 供 述 書 又 は 宣<br />

言 書 は、 発 明 が 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に「 完 成 」していたことの 自 認 を、 何 よりも 構 成 する<br />

ことができる。See In re Foster, 343 F.2d 980, 987-88, 145 USPQ 166, 173 (CCPA 1965);<br />

Dart Indus. v. E.I. duPont de Nemours & Co., 489 F.2d 1359, 1365, 179 USPQ 392, 396<br />

(7th Cir. 1973)。MPEP 第 715.10 条 も 参 照 のこと。<br />

III. プロセスの 販 売<br />

クレームのプロセス、 一 連 の 行 為 又 は 工 程 、はクレームされた 製 品 、 道 具 若 しくは 装 置 など<br />

有 形 品 目 と 同 じ 意 味 では 販 売 されない。「 当 該 プロセスは 何 で 構 成 するか、 当 該 プロセスは<br />

どのように 実 行 されるべきかを 記 述 する『ノウハウ』は、 買 主 が 当 該 プロセスの 知 識 を 習 得<br />

し、 取 引 条 件 に 従 ってそれを 実 行 する 自 由 を 手 に 入 れるという 意 味 で 販 売 することができる。<br />

114


しかし、そのような 取 引 は、 当 該 プロセスは 取 引 の 結 果 として 実 行 又 は 履 行 されていないの<br />

で、 第 102 条 (b)の 意 義 における 発 明 の『 販 売 』ではない。」In re Kollar, 286 F.3d 1326,<br />

1332, 62 USPQ2d 1425, 1429 (Fed. Cir. 2002)。しかし、クレームのプロセスで 特 許 権 者 又<br />

は 実 施 権 者 により 製 造 された 製 品 の 販 売 は、 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 におけるプロセスの<br />

販 売 を 構 成 するであろう。 次 を 参 照 のこと。Id. at 1333、62 USPQ2d at 1429;D.L. Auld Co.<br />

v. Chroma Graphics Corp., 714 F.2d 1144, 1147-48, 219 USPQ 13, 15-16 (Fed. Cir. 1983)( 基<br />

準 日 前 にクレームの 方 法 で 製 造 された 製 品 の 販 売 により、その 方 法 について 何 ら 公 開 されな<br />

かったとしても、その 販 売 はその 方 法 に 対 する 特 許 権 を「 失 権 」することになった);W.L.<br />

Gore & Assocs., Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 1550, 220 USPQ 303, 310 (Fed.<br />

Cir. 1983)。 特 許 法 第 102 条 (b)の 適 用 もまた、クレームのプロセスそのものを 検 討 のため 実<br />

際 に 履 行 することによって 発 生 するであろう。 次 も 参 照 のこと。Scaltech, Inc. v.<br />

Retec/Tetra, L.L.C., 269 F.3d 1321, 1328, 60 USPQ2d 1687, 1691(Fed. Cir. 2001)( 特 許<br />

は、 特 許 出 願 日 の 1 年 よりも 前 に 精 油 所 の 廃 油 処 理 に 関 するクレームのプロセスを 行 うとい<br />

う 特 許 権 者 の 申 し 出 を 理 由 として 特 許 法 第 102 条 (b)により 無 効 と 判 示 された。)さらに、ク<br />

レームのプロセスを 具 体 化 する 発 明 品 の 販 売 は 販 売 の 阻 却 事 由 を 誘 引 する 可 能 性 がある。<br />

Minton v. National Ass’n. of Securities Dealers, Inc., 336 F.3d 1373, 1378, 67 USPQ2d<br />

1614, 1618 (Fed. Cir. 2003)( 完 全 に 使 用 できる 状 態 のコンピュータプログラムを 実 装 する<br />

こと、こうしてクレームの 方 法 を 具 体 化 することは 販 売 の 阻 却 事 由 を 誘 引 するとの 裁 定 )。<br />

しかし、クレームの 方 法 を 行 うことが 可 能 となる 基 準 日 以 降 に 主 張 される 特 許 で 開 示 される<br />

ものと 異 なる 先 行 技 術 発 明 品 の 販 売 は、 当 該 プロセスの 販 売 中 の 阻 却 事 項 とならない。<br />

Poly-America LP v. GSE Lining Tech. Inc., 383 F.3d 1303, 1308-09, 72 USPQ2d 1685, 1688-89<br />

(Fed. Cir. 2004)( 先 行 技 術 発 明 品 の 販 売 を 含 む 取 引 は、クレームの 方 法 の 取 引 を 含 んでいな<br />

かったが 代 わりに、そのクレームの 方 法 を 実 施 するために 当 該 特 許 に 記 載 されたものとは 異<br />

なる 発 明 品 だけを 含 んでいた。そこで、その 発 明 品 は 十 分 に 基 準 日 以 降 となるまでクレーム<br />

の 方 法 を 実 施 するために 使 用 しなかった、さらに、その 発 明 品 はクレームのプロセスを 行 う<br />

ことができるかどうか 知 られてさえいなかったという 証 拠 があった。)<br />

2133.03(d) 「 本 国 内 」<br />

特 許 法 第 102 条 (b)の 適 用 可 能 性 の 裁 定 において、 公 用 又 は 販 売 の 活 動 は 合 衆 国 内 で 行 われね<br />

ばならない。「 販 売 」の 阻 却 事 由 は 一 般 に、 製 造 及 び 引 渡 し 共 に 外 国 で 発 生 する 場 合 は 適 用<br />

しない。Gandy v. Main Belting Co., 143 U.S. 587, 593 (1892)。しかし、「 販 売 」の 状 態<br />

は、「 販 売 」の 前 段 階 となる 実 質 的 活 動 が 合 衆 国 内 で 生 ずる 場 合 に 見 られる。Robbins Co. v.<br />

Lawrence Mfg. Co., 482 F.2d 426, 433, 178 USPQ 577, 583 (9th Cir. 1973)。 販 売 申 出 ( 本<br />

国 内 製 造 又 は 原 産 )は、 販 売 及 び 引 渡 しが 外 国 で 行 われるとしても、 制 定 法 の 枠 内 での 申 出 を<br />

もたらすに 十 分 な 前 段 階 的 活 動 となり 得 る。 同 一 の 理 論 的 根 拠 は、 基 準 日 よりも 前 に 合 衆 国<br />

内 において 購 入 予 定 者 に 連 絡 される 国 外 の 製 造 者 による 申 出 に 対 して 適 用 する。CTS Corp. v.<br />

Piher Int’l Corp., 593 F.2d 777, 201 USPQ 649 (7th Cir. 1979)。<br />

2133.03(e) 許 される 活 動 ; 試 験 的 使 用<br />

試 験 的 使 用 の 原 則 に 伴 う 問 題 は「 販 売 時 点 において 発 明 者 の 主 目 的 は、 取 引 の 事 実 関 係 をめ<br />

ぐる 客 観 的 な 評 価 から 判 断 されるものとして、 実 験 を 実 施 することであるかどうか」である。<br />

115


Allen Eng’g Corp. v. Bartell Indus., Inc., 299 F.3d 1336, 1354, 63 USPQ2d 1769, 1780<br />

(Fed. Cir. 2002)、 引 用 EZ Dock v. Schafer Sys., Inc., 276 F.3d 1347, 1356-57, 61 USPQ2d<br />

1289, 1295-96 (Fed. Cir. 2002)(Linn, J., 同 意 意 見 )。 実 験 は 主 目 的 でなければならず、<br />

また 商 業 利 用 は 付 帯 的 でなければならない。<br />

使 用 又 は 販 売 が 実 験 的 なものであった 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (b)による 阻 却 事 由 は 存 在 しない。<br />

「 使 用 又 は 販 売 は、 当 該 発 明 を 不 備 のないものにするため 若 しくは 意 図 した 目 的 に 応 えるか<br />

どうかを 確 認 するために 誠 実 な 努 力 を 示 す 場 合 、 第 102 条 (b)の 目 的 の 実 験 的 なものとな<br />

る・・・。 商 業 利 用 が 生 じる 場 合 、 単 に、 当 該 発 明 を 不 備 のないものにする 実 験 の 主 目 的 に 付 随<br />

して 起 こるものでなければならない。」LaBounty Mfg. v. United States Int’l Trade Comm’n,<br />

958 F.2d 1066, 1071, 22 USPQ2d 1025, 1028 (Fed. Cir. 1992)( 引 用 Pennwalt Corp. v. Akzona<br />

Inc., 740 F.2d 1573, 1581, 222 USPQ 833, 838 (Fed. Cir. 1984))。「 試 験 的 使 用 の 例 外 ・・・は、<br />

発 明 者 が 自 己 のクレームの 発 明 に 対 する 消 費 者 需 要 を 測 ろうとする 場 合 の 市 場 テストを 含 ま<br />

ない。このような 活 動 の 目 的 は 商 業 利 用 であって 実 験 ではない。In re Smith, 714 F.2d 1127,<br />

1134, 218 USPQ 976, 983 (Fed. Cir. 1983)。<br />

2133.03(e)(1) 商 業 利 用<br />

販 売 及 び 公 用 の 阻 却 事 由 に 関 する 一 つの 方 針 は、 特 許 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 の 商 業 的 な 発<br />

明 の 利 用 を 発 明 者 に 禁 止 することである。 従 って、 出 願 者 の 基 準 日 前 の 活 動 が 市 場 への 浸 透<br />

を 求 める 販 売 又 は 販 売 申 出 である 場 合 、 特 許 は 阻 却 される。このように、 真 正 の 実 験 活 動 が<br />

あるとしても 発 明 者 は 出 願 の 日 の 1 年 よりも 前 に 発 明 を 商 業 的 に 利 用 してはならない。In re<br />

Theis, 610 F.2d 786, 793, 204 USPQ 188, 194 (CCPA 1979)。<br />

商 業 活 動 は 発 明 の 完 成 に 向 けてその 発 明 の 開 発 を 合 法 的 に 進 めなければならない<br />

特 許 法 第 102 条 (b)の 活 動 をめぐる 商 業 利 用 の 程 度 が 増 加 するにつれて、 公 用 に 関 する 試 験 活<br />

動 の 明 確 かつ 説 得 力 のある 証 拠 を 確 立 する 出 願 人 の 責 任 はより 困 難 なものとなる。 審 査 官 が<br />

販 売 又 は 販 売 申 出 の 一 応 の 証 明 を 認 めた 場 合 、 明 確 かつ 説 得 力 のある 試 験 の 必 要 性 が 出 願 人<br />

により 立 証 されない 限 り、この 責 任 はめったに 満 たされない。このことは、 無 論 、 商 業 利 用<br />

の 中 で 主 張 される 試 験 活 動 を 認 める 状 況 がないことを 意 味 するものではない。 一 定 の 状 況 に<br />

おいて、 販 売 の 主 目 的 が 試 験 的 なものである 場 合 、 販 売 さえも 発 明 の 試 験 開 発 を 合 法 的 に 進<br />

めるために 必 要 である 可 能 性 がある。In re Theis, 610 F.2d 786, 793, 204 USPQ 188, 194<br />

(CCPA 1979); Robbins Co. v. Lawrence Mfg. Co., 482 F.2d 426, 433, 178 USPQ 577, 582<br />

(9th Cir. 1973)。しかし、このような 販 売 にかかわる 客 観 的 事 実 に 基 づく 状 況 証 拠 について<br />

審 査 官 による 慎 重 な 精 査 は 必 須 である。Ushakoff v. United States, 327 F.2d 669, 140 USPQ<br />

341 (Ct.Cl. 1964); Cloud v. Standard Packaging Corp., 376 F.2d 384, 153 USPQ 317 (7th<br />

Cir. 1967)を 参 照 のこと。<br />

「 商 業 利 用 」を 示 す 重 要 な 要 因<br />

MPEP 第 2133.03 条 で 考 察 するように、 特 許 法 第 102 条 (b)の 活 動 において 問 題 となる 方 針 の<br />

検 討 は、「 完 成 された」 又 は「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」の 発 明 の 早 過 ぎる「 商 業 利<br />

用 」である(MPEP 第 2133.03 条 (c)を 参 照 のこと。)。 特 許 法 第 102 条 (b)の「 販 売 」の 状 態 を<br />

構 成 する 商 業 活 動 の 範 囲 は、その 活 動 の 状 況 、 客 観 的 証 拠 を 介 して 明 らかにされる 発 明 者 の<br />

116


主 観 的 意 図 である 基 本 的 指 標 に 依 存 する。 次 に 挙 げる 活 動 はこの 主 観 的 意 図 の 証 拠 として 審<br />

査 官 により 使 用 されねばならない。<br />

(A) 同 時 期 に 発 生 した 様 々な「 商 業 」 書 類 、 例 えば、 注 文 書 、インボイス、 受 領 書 、 納 入 予<br />

定 表 などの 準 備<br />

(B) 価 格 表 の 準 備 (Akron Brass Co. v. Elkhart Brass Mfg. Co., 353 F.2d 704, 709, 147 USPQ<br />

301, 305 (7th Cir. 1965) 及 び 価 格 見 積 書 の 配 布 (Amphenol Corp. v. General. Time Corp.,<br />

158 USPQ 113, 117 (7th Cir. 1968));<br />

(C) 見 込 客 に 対 する 見 本 の 陳 列 (Cataphote Corp. v. DeSoto Chemical Coatings, Inc.,356<br />

F.2d 24, 27, 148 USPQ 527, 529 (9th Cir. 1966) mod. on other grounds, 358 F.2d 732,<br />

149 USPQ 159 (9th Cir.), cert. denied, 385 U.S. 832 (1966); Chicopee Mfg. Corp. v.<br />

Columbus Fiber Mills Co., 165 F.Supp. 307, 323-325, 118 USPQ 53, 65-67 (M.D.Ga. 1958));<br />

(D) ひな 型 又 は 試 作 品 の 実 物 説 明 (General Elec. Co. v. United States, 206 USPQ 260,<br />

266-67 (Ct. Cl. 1979);Red Cross Mfg. v. Toro Sales Co., 525 F.2d 1135, 1140, 188 USPQ<br />

241, 244-45 (7th Cir. 1975);Philco Corp. v. Admiral Corp., 199 F. Supp. 797, 815-16,<br />

131 USPQ 413, 429-30 (D.Del. 1961))、とりわけ 貿 易 コンベンションで(InterRoyal Corp. v.<br />

Simmons Co., 204 USPQ 562, 563-65 (S.D. N.Y. 1979))、 及 び 注 文 が 実 際 に 入 らない 場 合 で<br />

あっても(Monogram Mfg. v. F. & H. Mfg.,144 F.2d 412, 62 USPQ 409, 412 (9th Cir. 1944));<br />

(E) 入 場 料 が 課 された 場 合 の 発 明 の 使 用 (In re Josserand, 188 F.2d 486, 491, 89 USPQ 371,<br />

376 (CCPA 1951);Greenewalt v. Stanley, 54 F.2d 195, 12 USPQ 122 (3d Cir. 1931));<br />

及 び、<br />

(F) 宣 伝 広 告 リリース、パンフレット 及 びさまざまな 定 期 刊 行 物 (In re Theis, 610 F.2d 786,<br />

792 n.6, 204 USPQ 188, 193 n. 6 (CCPA 1979);InterRoyal Corp. v. Simmons Co., 204 USPQ<br />

562, 564-66 (S.D.N.Y.1979); Akron Brass, Inc. v. Elkhart Brass Mfg., Inc., 353 F.2d<br />

704, 709, 147 USPQ 301, 305 (7th Cir.1965); Tucker Aluminum Prods. v. Grossman, 312<br />

F.2d 393, 394, 136 USPQ 244, 245 (9th Cir. 1963))。<br />

試 験 目 的 を 示 す 要 因 については、MPEP 第 2133.03 条 (e)(4)を 参 照 のこと。<br />

2133.03(e)(2) 意 図<br />

「 販 売 が 一 般 的 な 商 業 環 境 で 行 われて 当 該 商 品 が 発 明 者 の 管 理 外 に 置 かれた 場 合 、 発 明 者 の<br />

秘 密 にしていた『 試 験 』に 対 する 主 観 的 意 図 は、それが 真 実 としても、その 主 張 を 裏 付 ける<br />

客 観 的 証 拠 なしには 功 を 奏 さなくなる。<br />

そのような 状 況 下 では 少 なくとも 顧 客 はその 試 験 を 意 識 しなければならない。」LaBounty<br />

Mfg., Inc. v. United States Int’l Trade Comm’n, 958 F.2d 1066, 1072, 22 USPQ2d 1025,<br />

1029 (Fed. Cir. 1992) ( 引 用 Harrington Mfg. Co. v. Powell Mfg. Co., 815 F.2d 1478, 1480<br />

n.3, 2 USPQ2d 1364, 1366 n.3 (Fed. Cir. 1986));Paragon Podiatry Laboratory, Inc. v.<br />

KLM Labs., Inc., 984 F.2d 1182, 25 USPQ2d 1561 (Fed. Cir. 1993)(パラゴン 社 は 発 明 一<br />

式 を 完 成 発 明 品 として、 主 張 されている 検 査 に 関 係 している 医 者 若 しくは 患 者 のいずれに 対<br />

してもいかなる 開 示 もせずに 顧 客 に 販 売 した。 発 明 者 の 秘 密 にしていた、そのユニットは 耐<br />

久 性 がなく 顧 客 にとって 満 足 できるものではないかもしれないとする 意 見 の 証 拠 は、それの<br />

みでは 法 定 不 特 許 事 由 を 回 避 するのに 十 分 ではなかった。<br />

117


2133.03(e)(3) 発 明 の「 完 全 性 」<br />

I. 試 験 的 使 用 は 発 明 が 実 際 に 実 施 化 されたときに 終 了 する<br />

試 験 的 使 用 は「 意 図 した 目 的 のために 機 能 することが 確 定 するところまで 発 明 を 不 備 のない<br />

ものにする 若 しくは 完 成 させることを 意 味 する。」 従 って、 試 験 的 使 用 は「 現 実 の 実 施 化 で<br />

終 了 する。」RCA Corp. v. Data Gen. Corp., 887 F.2d 1056, 1061, 12 USPQ2d 1449, 1453<br />

(Fed. Cir. 1989)。 審 査 官 が、 記 録 の 証 拠 から 出 願 者 は 発 明 が 実 際 に「 完 成 」したことに 満<br />

足 したと 結 論 する 場 合 、 出 願 人 によって 待 たれるアンダーライターズ・ラボラトリーズ・イ<br />

ンクのような 組 織 からの 認 可 は 一 般 にこの 結 論 を 克 服 できない。InterRoyal Corp. v.<br />

Simmons Co., 204 USPQ 562, 566 (S.D.N.Y. 1979);Skil Corp. v. Rockwell Manufacturing<br />

Co., 358 F. Supp. 1257, 1261, 178 USPQ 562, 565 (N.D.Ill. 1973), aff’d. in part, rev fd<br />

in part sub nom. Skil Corp. v. Lucerne Products Inc., 503 F.2d 745, 183 USPQ 396, 399<br />

(7th Cir. 1974), cert. denied, 420 U.S. 974, 185 USPQ 65 (1975)。 何 が「 完 成 」 発 明 を<br />

構 成 するかの 詳 細 については、MPEP 第 2133.03 条 (c)を 参 照 のこと。<br />

主 張 される 試 験 活 動 が 発 明 の 特 定 の 修 正 又 は 改 良 につながらないという 事 実 は、 決 定 的 な 証<br />

拠 とは 限 らないが、そのような 活 動 が 制 定 法 によって 認 められる 範 囲 内 にない 証 拠 となる。<br />

これはとりわけ、 記 録 の 証 拠 が 審 査 官 に 対 し、 発 明 はその 活 動 時 に 発 明 者 により「 完 成 した」<br />

と 認 められることを 明 確 に 示 している 場 合 にいえる。そのような 試 験 活 動 によって 生 じる 修<br />

正 若 しくは 改 良 は 少 なくとも、クレームされた 発 明 の 価 値 を 立 証 できる 特 性 でなければなら<br />

ない。In re Theis, 610 F.2d 786, 793, 204 USPQ 188, 194 (CCPA 1979)。<br />

II. 試 作 品<br />

発 明 の 試 作 品 が 発 明 者 によって 基 準 日 前 に 陳 列 された 場 合 、 審 査 官 による 調 査 は 発 明 者 の 意<br />

図 及 びあらゆる 状 況 の 下 の 処 分 の 合 理 性 に 焦 点 をあわせなくてはならない。そうでなければ<br />

試 作 品 の 合 理 的 処 分 は 副 次 的 な 収 入 を 伴 うという 事 実 は、 必 ずしも 重 大 ではない。In re Dybel,<br />

524 F.2d 1393, 1399, n.5, 187 USPQ 593, 597 n.5 (CCPA 1975)。しかし、 試 作 品 が 発 明 者<br />

により「 完 成 した」とみなされ、 基 底 をなす 発 明 についてすべての 試 験 が 終 了 した 場 合 、 試<br />

作 品 の 制 限 のない 処 分 は 特 許 法 第 102 条 (b)による 阻 却 事 由 を 構 成 する。In re Blaisdell, 242<br />

F.2d 779, 113 USPQ 289 (CCPA 1957); contra, Watson v. Allen, 254 F.2d 342, 117 USPQ<br />

68 (D.C. Cir. 1958)。<br />

2133.03(e)(4) 試 験 目 的 を 示 す 要 因<br />

裁 判 所 は、クレームの 発 明 が 主 として 試 験 目 的 とする 商 業 的 販 売 申 出 の 対 象 であるかどうか<br />

を 判 定 する 際 に 多 くの 要 因 を 検 討 している。「これらの 要 因 には 次 のようなものがある。(1)<br />

公 開 テストの 必 要 性 、(2) 発 明 者 が 保 有 する 試 験 の 支 配 の 程 度 、(3) 発 明 の 性 質 、(4)テスト 期<br />

間 の 長 さ、(5) 支 払 いが 行 われたかどうか、(6) 守 秘 義 務 があったかどうか、(7) 試 験 記 録 がつ<br />

けられたかどうか、(8) 誰 がその 試 験 を 行 ったか・・・、(9)テスト 時 の 商 業 利 用 の 程 度 ・・・、(10)<br />

発 明 は 実 際 の 使 用 条 件 下 で 合 理 的 評 価 を 求 めたかどうか、(11)テストは 体 系 的 に 行 われたか<br />

どうか、(12) 発 明 者 はテスト 中 継 続 的 に 発 明 をモニタリングしたかどうか、(13) 見 込 み 客 と<br />

の 接 触 の 性 質 。」Allen Eng’g Corp. v. Bartell Indus., Inc., 299 F.3d 1336, 1353, 63<br />

USPQ2d 1769, 1780 (Fed. Cir. 2002) 引 用 EZ Dock v. Schafer Sys., Inc., 276 F.3d 1347,<br />

1357, 61 USPQ2d 1289, 1296 (Fed. Cir. 2002)(Linn, J., 同 意 意 見 )。 試 験 のもう 一 つの 重<br />

118


要 な 属 性 は「 販 売 という 状 況 でテストの 意 図 への 顧 客 の 意 識 」である。Electromotive Div. of<br />

Gen. Motors Corp. v. Transportation Sys. Div. of Gen. Elec. Co., 417 F.3d 1203, 1241,<br />

75 USPQ2d 1650, 1658 (Fed. Cir. 2005)。<br />

主 張 される 試 験 活 動 が、 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づき 一 応 の 証 明 をするため 出 願 人 によって 提<br />

示 されると、 審 査 官 はその 活 動 の 範 囲 及 び 期 間 、 並 びに 関 連 保 護 対 象 の 性 質 は 出 願 人 により<br />

意 図 される 試 験 目 的 の 観 点 から 合 理 的 であるかどうかを 確 認 しなければならない。 必 ずしも<br />

要 因 の 一 つ、 又 は 特 定 の 組 み 合 わせがこの 目 的 の 決 定 要 因 というわけではない。<br />

商 業 利 用 を 示 す 要 因 については、MPEP 第 2133.03 条 (e)(1)を 参 照 のこと。<br />

2133.03(e)(5) 試 験 と 監 督 及 び 支 配 の 程 度<br />

発 明 者 は 第 三 者 によるテスト 中 、 発 明 への 十 分 な 支 配 を 維 持 しなくてはならない<br />

試 験 目 的 で 問 題 となる 重 要 な 決 定 要 因 は、 主 張 される 試 験 期 間 中 の 発 明 への 発 明 者 によって<br />

維 持 される 監 督 並 びに 支 配 、 及 び 顧 客 の 試 験 に 対 する 認 識 の 程 度 である。Electromotive Div.<br />

of Gen. Motors Corp. v. Transportation Sys. Div. of Gen. Elec. Co., 417 F.3d 1203,<br />

1214,75 USPQ2d 1650, 1658 (Fed. Cir. 2005)。(「 支 配 及 び 顧 客 認 識 は、 試 験 であると 認 定<br />

するのであれば、 通 常 は 証 明 されねばならない。」) 試 験 活 動 の 期 間 が 終 了 し、 監 督 及 び 支 配<br />

が 発 明 の 後 続 使 用 を 何 も 制 約 せず 発 明 者 により 手 放 されると、その 発 明 の 自 由 なその 後 の 使<br />

用 は 特 許 法 第 102 条 (b)の 不 特 許 事 由 となる。In re Blaisdell, 242 F.2d 779, 784, 113 USPQ<br />

289, 293 (CCPA 1957)。<br />

2133.03(e)(6) 許 される 試 験 的 行 為 及 びテスト<br />

I. 発 達 テストは 許 される<br />

技 術 開 発 の 通 常 の 流 れにおける 発 明 のテストは、 一 般 的 に 許 された 試 験 的 行 為 の 範 囲 内 であ<br />

る。 同 様 に 有 用 性 を 確 認 する 試 験 も、 特 許 法 第 101 条 においてその 言 葉 が 適 用 されるように、<br />

容 認 できる 行 為 を 構 成 しうる。General Motors Corp. v. Bendix Aviation Corp., 123 F. Supp.<br />

506, 521, 102 USPQ 58, 69 (N.D.Ind. 1954)を 参 照 のこと。 例 えば、 発 明 が 知 られていない<br />

有 用 性 を 有 する 化 学 成 分 に 関 するものである、すなわち、その 組 成 物 の 特 許 出 願 ができない<br />

( 特 許 法 第 101 条 ; 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 ) 場 合 、 組 成 物 の 販 売 又 は 商 業 利 用 のその 他 の 証<br />

拠 がない 限 り、 有 用 性 を 確 認 するための 継 続 テストは 特 許 法 第 102 条 (b)により 恐 らく 容 認 さ<br />

れるであろう。<br />

II. 市 場 テストは 許 されない<br />

製 品 受 け 入 れを 決 める 試 験 、すなわち 市 場 テストは 業 者 に 特 有 のものであって 発 明 者 の 試 験<br />

ではない。 従 って、 許 される 試 験 的 行 為 の 範 疇 にない。Smith & Davis Mfg. Co. v. Mellon,<br />

58 F. 705, 707 (8th Cir. 1893)。 同 様 に、 顧 客 を 懐 柔 するための、すなわち「 発 明 者 の 技<br />

能 を 必 要 とせず、むしろ 適 格 な 専 門 家 の 技 能 を 必 要 とする 小 規 模 な『 調 整 』」を 行 うための<br />

発 明 テストもまた 例 外 の 範 疇 に 入 らない。In re Theis, 610 F.2d 786, 793, 204 USPQ 188,<br />

193-94 (CCPA 1979)。<br />

III. 意 匠 出 願 に 関 連 する 試 験 的 行 為<br />

意 匠 の 美 しさという 点 で 顧 客 が 関 心 を 持 つようにさせる 装 飾 的 意 匠 の 公 用 は、 試 験 的 使 用 で<br />

119


はない。In re Mann, 861 F.2d 1581, 8 USPQ2d 2030 (Fed. Cir. 1988)( 見 本 市 における 鍛<br />

鉄 テーブルの 陳 列 は 公 用 であると 判 示 された。)しかし、「 装 飾 的 意 匠 も 含 む 製 品 の 機 能 的 特<br />

性 に 向 けられた 試 験 は、そうでなければ 特 許 法 第 102 条 (b)の 意 義 において 公 用 とみなされる<br />

であろうものを 否 定 し 得 る。」Tone Brothers, Inc. v.Sysco Corp., 28 F.3d 1192, 1196, 31<br />

USPQ2d 1321, 1326 (Fed. Cir. 1994)( 学 生 が 薬 味 入 れの 意 匠 の 機 能 的 特 徴 の 効 果 を 評 価 した<br />

調 査 は、 試 験 的 使 用 とみなされ 得 る。)<br />

2133.03(e)(7) 独 立 した 第 三 者 である 発 明 者 の 行 為<br />

試 験 的 使 用 の 例 外 は 出 願 人 が 直 接 行 うものである<br />

特 許 法 第 102 条 (b)の 法 定 不 特 許 事 由 は、 公 用 又 は 販 売 の 行 為 が 出 願 人 以 外 の 関 係 者 によるも<br />

のであったとしても 適 用 可 能 である。 出 願 人 がそのような 他 の 関 係 者 による 試 験 的 行 為 の 証<br />

拠 を 提 示 した 場 合 、その 行 為 が 出 願 人 の 監 督 及 び 支 配 の 下 にある 場 合 でなければ、その 証 拠<br />

はそのような 関 係 者 の 行 為 を 理 由 とする 特 許 法 第 102 条 (b)による 一 応 の 証 明 を 克 服 するも<br />

のではない。ただし、Magnetics v. Arnold Eng’g Co., 438 F.2d 72, 74, 168 USPQ 392, 394<br />

(7th Cir. 1971), Bourne v. Jones, 114 F.Supp. 413, 419, 98 USPQ 206, 210 (S.D. Fla.<br />

1951), aff'd., 207 F.2d 173, 98 USPQ 205 (5th Cir. 1953), cert. denied, 346 U.S. 897,<br />

99 USPQ 490 (1953); contra, Watson v. Allen, 254 F.2d 342, 117 USPQ 68 (D.C.Cir. 1957).<br />

すなわち、 試 験 的 使 用 行 為 の 例 外 は 出 願 人 が 直 接 行 うものである。<br />

120


2134 特 許 法 第 102 条 (c)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(c) 同 人 がその 発 明 を 放 棄 している。<br />

特 許 法 第 102 条 (c)に 基 づく 放 棄 は 意 図 的 でなければならない<br />

「 特 許 法 第 102 条 (c)に 基 づく 実 際 の 放 棄 は、 発 明 者 が 当 該 発 明 の 放 棄 を 意 図 すること、そし<br />

て 意 図 を 当 該 発 明 に 関 する 発 明 者 の 行 為 から 読 み 取 ることができることを 必 要 とする。In re<br />

Gibbs, 437 F.2d 486, 168 USPQ 578 (CCPA 1971)。 当 該 発 明 を 放 棄 しようとするそのような<br />

意 図 は 負 わされるものではなく、すべての 合 理 的 疑 いは 発 明 者 に 有 利 に 解 決 する。Ex parte<br />

Dunne, 20 USPQ2d 1479 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)。<br />

最 初 の 出 願 を 行 う 際 の 遅 延<br />

特 許 法 第 102 条 (c)に 基 づく 放 棄 は、 特 許 を 受 ける 権 利 の 意 図 的 な、 必 ずしも 明 確 ではないに<br />

せよ、 放 棄 を 必 要 とする。 発 明 を 放 棄 するためには、 発 明 者 は 公 衆 に 捧 げる 意 図 がなければ<br />

ならない。このような 献 身 は 明 示 的 又 は 黙 示 的 を 問 わず 発 明 者 の 作 為 又 は 無 為 によるものと<br />

することができる。 遅 延 のみで 放 棄 に 不 可 欠 な 意 図 を 推 察 することは 十 分 でない。Moore v.<br />

United States, 194 USPQ 423, 428 (Ct. Cl. 1977)( 発 明 者 による 2 つの 特 許 出 願 の 自 身 に<br />

よる 申 請 書 作 成 及 び 保 持 は、 自 己 の 発 明 を 保 有 しようとする 意 図 を 示 している。よって、 出<br />

願 の 遅 延 は 放 棄 を 立 証 するには 十 分 でなかった。);しかし 次 も 参 照 のこと。Davis Harvester<br />

Co., Inc. v. Long Mfg. Co., 252 F. Supp. 989, 1009-10, 149 USPQ 420, 435-436 (E.D. N.C.<br />

1966)( 発 明 者 は 長 い 期 間 にわたって 自 己 の 発 明 を 進 展 させる 若 しくは 特 許 を 取 るために 何 も<br />

しておらず、その 発 明 を 展 開 する 他 の 者 の 試 みをあざけり、その 発 明 を 具 体 化 する 発 明 品 の<br />

他 の 者 による 市 場 化 が 成 功 して 初 めて、 自 己 の 発 明 の 促 進 及 び 展 開 に 積 極 的 関 心 を 示 し 始 め<br />

た 場 合 、その 発 明 者 は 特 許 法 第 102 条 (c)の 下 で 自 己 の 発 明 を 放 棄 している。)<br />

先 の 特 許 出 願 を 放 棄 した 後 の 特 許 再 出 願 における 遅 延<br />

発 明 者 による 自 己 の 発 明 を 放 棄 しようとする 明 確 な 意 図 又 は 行 為 の 証 拠 がない 場 合 、 先 の 出<br />

願 を 放 棄 した 後 の 再 出 願 における 遅 延 は 特 許 法 第 102 条 (c)による 放 棄 を 構 成 しない。<br />

Petersen v. Fee Int fl, Ltd., 381 F. Supp. 1071, 182 USPQ 264 (W.D. Okla. 1974)。<br />

先 に 交 付 された 特 許 にクレームされていない 開 示<br />

開 示 されたが、 先 に 交 付 された 特 許 にクレームされていない 保 護 対 象 の 放 棄 のいかなる 推 定<br />

も(すなわち、 公 衆 に 捧 げる 意 図 )、 法 定 不 特 許 事 由 が 生 ずる 前 はいつでも 出 願 により 反 証 す<br />

ることができる。 従 って、その 出 願 のクレームの 保 護 対 象 をクレームせずに 公 開 している 特<br />

許 が 発 行 されたことのみを 断 定 して、その 特 許 出 願 のクレームを 特 許 法 第 102 条 (c)に 基 づい<br />

て 拒 絶 することは 、 係 争 中 の 出 願 と 特 許 として 発 行 された 出 願 との 間 に 共 有 の 係 属 があるか<br />

どうかにかかわらず、 不 適 切 なものとなろう。In re Gibbs, 437 F.2d 486, 168 USPQ 578 (CCPA<br />

1971)。<br />

121


先 行 する 係 争 が 存 在 する 場 合 に 限 り、 時 間 の 経 過 が 特 許 を 阻 却 できる<br />

単 なる 時 間 の 経 過 は 特 許 を 阻 却 しない。 唯 一 の 例 外 は、 特 許 法 第 102 条 (g)による 先 行 する 係<br />

争 があり、 出 願 人 は 当 該 発 明 を 放 棄 、 秘 匿 若 しくは 隠 蔽 している 場 合 である。 Panduit Corp.<br />

v. Dennison Mfg. Co., 774 F.2d 1082, 1101, 227 USPQ 337, 350 (Fed. Cir. 1985). 放 棄 、<br />

秘 匿 若 しくは 隠 蔽 は 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づき 裁 判 所 で 取 り 扱 われる。この 問 題 の 詳 細 につ<br />

いては MPEP 第 2138.03 条 を 参 照 のこと。<br />

122


2135 特 許 法 第 102 条 (d)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(d) その 発 明 は, 出 願 人 又 はその 法 定 代 理 人 又 は 譲 受 人 によって 外 国 において, 合 衆 国 にお<br />

ける 特 許 の 出 願 日 以 前 に, 合 衆 国 において 出 願 申 請 が 行 われる 12 月 よりも 前 に 申 請 された 特<br />

許 出 願 又 は 発 明 者 証 の 出 願 に 基 づいて 最 初 に 特 許 権 を 与 えられ 若 しくは 特 許 権 を 与 えられる<br />

ようにされ 又 は 発 明 者 証 の 保 護 対 象 であった。<br />

特 許 法 第 102 条 (d)の 一 般 的 要 件<br />

特 許 法 第 102 条 (d)は 4 つの 条 件 を 規 定 しており、その 全 ての 条 件 が 存 在 する 場 合 , 合 衆 国 に<br />

おける 特 許 付 与 の 阻 却 事 由 が 確 定 する。<br />

(A) 外 国 出 願 は 有 効 な 米 国 出 願 日 の 12 月 よりも 前 に 申 請 されねばならない( 有 効 な 米 国 特 許<br />

出 願 日 については MPEP 第 706.02 条 を 参 照 のこと)。<br />

(B) 外 国 出 願 は 合 衆 国 と 同 一 の 出 願 人 によって、 又 はその 法 定 代 理 人 若 しくは 譲 受 人 によっ<br />

て 申 請 されていなければならない。<br />

(C) 外 国 特 許 又 は 発 明 者 証 は 米 国 特 許 出 願 の 日 よりも 前 に 実 際 に 付 与 されていなければなら<br />

ない( 例 えば、 英 国 で 証 明 書 に 公 印 が 押 されることによって)。 公 開 される 必 要 はない。<br />

(D) 同 一 の 発 明 が 含 まれていなければならない。<br />

そのような 外 国 特 許 又 は 発 明 者 証 が 審 査 官 によって 発 見 された 場 合 , 法 定 不 特 許 事 由 に 基 づ<br />

き 特 許 法 第 102 条 (d)によって 拒 絶 が 行 われる。 特 許 法 第 102 条 (d)の 4 要 件 それぞれの 詳 細<br />

については、MPEP 第 2135.01 条 を 参 照 のこと。<br />

2135.01 特 許 法 第 102 条 (d)の 4 要 件<br />

I. 外 国 出 願 は 有 効 な 米 国 出 願 日 の 12 月 よりも 前 に 出 願 されねばならない。<br />

A. 週 末 又 は 祝 日 に 終 了 する 周 年 日 は 翌 就 業 日 まで 延 長 される<br />

米 国 出 願 は、 米 国 出 願 が 外 国 出 願 日 の 1 周 年 日 に 出 願 されると、 特 許 法 第 102 条 (d)の 阻 却 事<br />

由 が 生 じることがない 出 願 として 間 に 合 う。この 日 が 土 曜 日 、 日 曜 若 しくは 連 邦 祝 日 の 場 合 、<br />

1 年 は 翌 就 業 日 まで 延 長 されるであろう。See Ex parte Olah, 131 USPQ 41 (Bd. App. 1960)。<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.10 条 に 従 って 米 国 郵 政 公 社 に「 速 達 郵 便 」として 預 けた 日 付 で 出 願 に 出<br />

願 日 を 付 与 すること( 例 えば, 土 曜 日 出 願 日 )を PTO に 求 めている 特 許 法 施 行 規 則 第 1.6 条<br />

(a)(2) 及 び 第 1.10 条 への 変 更 にもかかわらず,この 規 則 変 更 は,「 何 らかの 行 為 をする」た<br />

めの 最 終 日 が 土 曜 日 , 日 曜 日 又 は 連 邦 祝 日 に 当 たる 場 合 ( 例 えば,1 年 の 猶 予 期 間 の 最 終 日 が<br />

土 曜 日 に 当 たる)、 翌 就 業 日 までその 出 願 申 請 を 延 期 できる 出 願 人 の 併 存 する 権 利 に 影 響 を 及<br />

ぼさない。<br />

B. 一 部 継 続 出 願 は 米 国 親 出 願 と 同 様 に 外 国 出 願 に 関 する 優 先 権 のつながりを 断 つ<br />

出 願 人 が 外 国 出 願 を 行 った 後 にその 外 国 出 願 に 基 づく 優 先 権 を 主 張 して 米 国 出 願 を 行 い、そ<br />

の 後 、そのクレームが 米 国 親 出 願 の 出 願 日 を 認 められる 権 利 がない 一 部 継 続 (CIP) 出 願 を 申 請<br />

した 場 合 、 有 効 出 願 日 は CIP 出 願 日 となり、 出 願 人 は 米 国 親 出 願 若 しくは 外 国 出 願 の 日 の 利<br />

益 を 受 けることはできない。In re Van Langenhoven, 458 F.2d 132, 137, 173 USPQ 426, 429<br />

(CCPA 1972)。 外 国 出 願 が CIP 出 願 日 よりも 前 に 特 許 となった 場 合 、CIP に 付 加 された 保 護 対<br />

象 により 当 該 クレームが 外 国 特 許 から 非 自 明 性 があるとされないならば、 特 許 法 第 102 条 (d)<br />

123


第 103 条 の 拒 絶 に 使 用 することができる。Ex parte Appeal No. 242-47, 196 USPQ 828 (Bd.<br />

App. 1976)( 外 国 特 許 は、 特 許 法 第 102 条 (d)/ 第 103 条 に 基 づく 自 明 性 の 拒 絶 において、そ<br />

の 他 の 先 行 技 術 と 組 み 合 わせ、 米 国 特 許 を 阻 却 することができる。)<br />

II. 外 国 出 願 は 同 一 出 願 人 、その 法 定 代 理 人 又 は 譲 受 人 によって 申 請 されたものでなければ<br />

ならない<br />

米 国 出 願 が 2 名 以 上 の 発 明 者 によって 行 われた 場 合 、これらの 発 明 者 が、 発 明 者 それぞれで<br />

若 しくは 発 明 者 間 の 組 み 合 わせで、 別 個 の 出 願 から 優 先 権 をクレームすることが 許 容 される。<br />

例 えば、 発 明 者 A 及 び B の 名 前 を 挙 げる 米 国 出 願 は、 外 国 において 申 請 された A の 出 願 及 び<br />

B の 出 願 から 優 先 権 を 得 ることができる。<br />

III. 外 国 特 許 又 は 発 明 者 証 は 米 国 出 願 日 の 前 に 実 際 に 付 与 された<br />

A. 「 特 許 権 を 有 する」には、 排 他 的 権 利 が 出 願 人 に 与 えられなければならない<br />

「 特 許 権 を 有 する」とは「 主 権 者 から 出 願 人 への 特 許 権 の 正 式 授 与 」をいう。In re Monks, 588<br />

F.2d 308, 310, 200 USPQ 129, 131 (CCPA 1978); American Infra-Red Radiant Co. v. Lambert<br />

Indus., 360 F.2d 977, 149 USPQ 722 (8th Cir.), cert. denied, 385 U.S. 920 (1966)(ド<br />

イツGebrauchsmuster 実 用 新 案 は 特 許 法 第 102 条 (d)の 拒 絶 で 使 用 できる 特 許 であると 判 示 さ<br />

れた。Gebrauchmustern は 審 査 されず 6 年 の 特 許 期 間 のみが 付 与 される。しかし、 期 間 に 関<br />

するものを 除 き、 付 与 される 排 他 的 特 許 権 は 米 国 内 と 同 じくらい 広 範 囲 である。)<br />

B. 公 開 された 出 願 は「 特 許 」ではない<br />

出 願 は、 特 許 法 第 102 条 (d)の 拒 絶 で 適 用 できるようになるには、 特 許 となっていなければな<br />

らない。Ex parte Fujishiro, 199 USPQ 36 (Bd. App. 1977)( 特 許 法 第 102 条 (d)の 意 義 にお<br />

いて「 特 許 」は 日 本 の 実 用 新 案 登 録 出 願 の 公 開 ( 公 開 又 は 公 表 ) 時 には 生 じない);Ex parte<br />

Links, 184 USPQ 429 (Bd. App. 1974)(ドイツ 出 願 で 異 議 申 立 に 対 する 公 開 が 未 だされてい<br />

ないものは、 出 願 の 18 月 後 、Offenlegungsschriften と 呼 ぶ 印 刷 文 書 の 形 で 公 開 される。こ<br />

れらの 出 願 は 公 開 時 に 未 審 査 若 しくは 審 査 の 過 程 にある。 審 判 部 は、Offenlegungsschrift<br />

は 一 部 の 仮 の 権 利 は 付 与 されているとしても 特 許 法 第 102 条 (d)に 基 づく 特 許 ではないと 判<br />

定 した。 審 判 部 は、 仮 の 権 利 は 最 低 限 であって、 出 願 が 取 り 下 げられるか 拒 絶 されると 効 力<br />

を 発 しないと 説 明 した。)<br />

C. 認 められた 出 願 は、 特 許 として 未 だ 付 与 されていないとしても 異 議 申 立 のため 公 開 され<br />

た 日 現 在 で 特 許 法 第 102 条 (d)の 目 的 上 、「 特 許 」となることができる<br />

審 査 官 によって 認 められ 特 許 付 与 に 異 議 を 申 し 立 てるため 公 開 を 許 されすでに 公 開 された、<br />

審 査 済 出 願 は、 実 質 的 な 仮 の 実 施 権 が 生 じている 場 合 、 異 議 申 立 のため 公 開 された 日 現 在 で<br />

特 許 法 第 102 条 (d)に 基 づく 拒 絶 の 目 的 上 、「 特 許 」であると 判 定 されている。Ex parte Beik,<br />

161 USPQ 795 (Bd. App. 1968)(この 事 例 はドイツの 審 査 済 出 願 を 取 り 扱 った。 出 願 が 許 され<br />

ると 判 断 された 後 に、その 出 願 は Auslegeschrift と 呼 ぶ 印 刷 文 書 の 形 で 公 開 された。 公 開 に<br />

より 公 衆 が 特 許 性 欠 如 を 示 す 証 拠 を 提 示 することができる 異 議 申 立 期 間 が 開 始 する。 異 議 申<br />

立 期 間 が 過 ぎると 得 られる 権 利 と 本 質 的 に 変 わらない 仮 の 特 許 権 が 付 与 され、 次 いで 特 許 が<br />

付 与 される。 審 判 部 は、 特 許 法 第 102 条 (d)に 基 づく 拒 絶 の 目 的 上 、Auslegeschrift は 特 許<br />

の 法 的 効 果 を 提 供 すると 認 定 した。<br />

D. 付 与 は、 特 許 が 権 利 行 使 可 能 となるとき 発 生 する<br />

124


特 許 法 第 102 条 (d)による 引 例 としての 外 国 特 許 の 基 準 日 は 特 許 が 権 利 行 使 可 能 となる( 発 行 、<br />

公 印 付 与 又 は 付 与 ) 日 とする。In re Monks, 588 F.2d 308, 310, 200 USPQ 129, 131 (CCPA<br />

1978)( 英 国 の 引 用 文 献 は 特 許 が「 公 印 を 付 与 された」 日 付 で 先 行 技 術 として 利 用 可 能 となっ<br />

た。なぜなら、この 日 付 現 在 で 出 願 人 はクレームされた 発 明 の 製 造 、 使 用 若 しくは 販 売 から<br />

他 の 者 を 排 除 する 権 利 を 有 した。)<br />

E. 特 許 法 第 102 条 (d)は、 特 許 付 与 後 に 秘 密 保 持 期 間 が 存 在 する 場 合 であっても、 付 与 日 現<br />

在 で 適 用 する<br />

ベルギー 及 びスペインのような 特 許 付 与 後 の 秘 密 保 持 期 間 は 、 特 許 法 第 102 条 (d)に 関 して<br />

効 力 を 有 しないと 判 示 されている。これらの 特 許 は、 特 許 権 が 付 与 される 日 以 降 、 特 許 法 第<br />

102 条 (d)による 拒 絶 に 使 用 できる。In re Kathawala, 9 F.3d 942, 28 USPQ2d 1789 (Fed. Cir.<br />

1993)( 発 明 は、 特 許 権 者 の 特 許 に 基 づく 権 利 が 確 定 したとき 特 許 法 第 102 条 (d)の 目 的 上 、 特<br />

許 権 を 有 する。 出 願 人 のスペイン 出 願 は 米 国 出 願 日 の 後 まで 公 開 されないという 事 実 は、ス<br />

ペイン 特 許 は 米 国 出 願 以 前 に 付 与 されたので、 重 要 でない。);Gramme Elec. Co. v. Arnoux<br />

and Hochhausen Elec. Co., 17 F. 838, 1883 C.D. 418 (S.D.N.Y. 1883)(1 年 間 の 排 他 的 権<br />

利 を 付 与 されたが、その 期 間 、 特 許 権 者 の 自 由 選 択 で 秘 密 が 保 持 されたオーストリア 特 許 に<br />

基 づき、 特 許 法 第 102 条 (d)の 旧 規 定 の 下 で 拒 絶 が 行 われた。 裁 判 所 は、オーストリア 特 許 の<br />

付 与 日 は 特 許 法 第 102 条 (d)の 目 的 上 、 制 定 法 による 基 準 日 であると 判 定 したが、その 特 許 は<br />

特 許 法 第 102 条 (a) 又 は(b)による 拒 絶 で 使 用 することはできないとした。)In re Talbott, 443<br />

F.2d 1397, 170 USPQ 281 (CCPA 1971)( 出 願 人 は、ドイツ Gebrauchsmuster( 実 用 新 案 )の 保<br />

護 対 象 を 米 国 出 願 の 時 まで 秘 密 に 保 持 するという 自 由 選 択 の 行 使 により、 特 許 法 第 102 条 (d)<br />

を 回 避 することはできない。)<br />

IV. 同 一 発 明 が 含 まれねばならない<br />

「 同 一 発 明 」とは 出 願 クレームが 外 国 特 許 に 提 示 されている 可 能 性 があることをいう<br />

特 許 法 第 102 条 (d)の 下 で、 外 国 で「 特 許 された・・・ 発 明 」は 合 衆 国 で 特 許 を 受 けようとする<br />

発 明 と 同 一 でなければならない。 外 国 特 許 が 米 国 出 願 と 同 一 のクレームを 含 んでいるとき、<br />

「 当 該 発 明 は 最 初 に・・・ 外 国 で 特 許 された」ことに 疑 問 の 余 地 はない。In re Kathawala, 9 F.3d<br />

942, 945, 28 USPQ2d 1785, 1787 (Fed. Cir. 1993)。しかし、そのクレームは 全 く 同 一 であ<br />

る、 又 は 同 一 法 定 区 分 でさえある 必 要 はない。 出 願 人 が、その 発 明 を 完 全 に 開 示 し、 出 願 人<br />

に 合 衆 国 でいくつかの 異 なるクレームの 選 択 を 与 えている 外 国 特 許 を 付 与 されている 場 合 、<br />

特 許 法 第 102 条 (d)における「 特 許 された・・・ 発 明 」の 引 例 には、 必 ず、その 発 明 の 開 示 され<br />

た 態 様 のすべてを 含 める。<br />

従 って、 第 102 条 (d)の 阻 却 事 由 は、 外 国 特 許 が 当 該 発 明 のすべての 態 様 よりも 少 ないクレー<br />

ムを 含 むか 否 かにかかわらず、 適 用 する。9 F.3d at 946、28 USPQ2d at 1788。 要 するに、<br />

特 許 法 第 102 条 (d) 拒 絶 は、 出 願 人 の 外 国 出 願 が 米 国 クレームの 保 護 対 象 を 裏 付 ける 場 合 に 適<br />

用 する。In re Kathawala, 9 F.3d 942, 28 USPQ2d 1785 (Fed. Cir. 1993)( 出 願 人 は、 組 成<br />

物 製 造 方 法 をクレームするスペイン 特 許 を 付 与 された。その 特 許 は、 組 成 物 、 使 用 方 法 及 び<br />

組 成 物 の 製 造 プロセスを 開 示 した。スペイン 特 許 が 付 与 された 後 、 出 願 人 はその 組 成 物 を 製<br />

造 するプロセスではなくその 組 成 物 に 向 けられたクレームで 米 国 出 願 を 申 請 した。 連 邦 巡 回<br />

控 訴 裁 判 所 は、 米 国 出 願 のクレームがプロセスの 代 わりに 組 成 物 に 向 けられることは 外 国 明<br />

細 書 がその 組 成 物 へのクレームを 裏 付 けるので 問 題 にならないと 判 示 した。その 製 剤 はスペ<br />

125


インで 特 許 性 のない 医 薬 組 成 物 であることは 重 要 でなかった。)<br />

126


2136 特 許 法 第 102 条 (e)<br />

1999 年 の 米 国 発 明 者 保 護 法 (AIPA)(Pub. L. 106-113, 113 Stat. 1501 (1999))で 修 正 され、<br />

さらに 2002 年 の 知 的 所 有 権 及 び 最 先 端 テクノロジー 技 術 的 修 正 法 (Pub. L. 107-273, 116<br />

Stat. 1758 (2002))で 修 正 されたように、 改 正 特 許 法 第 102 条 (e)は, 出 願 の 時 期 を 問 わず 全<br />

ての 出 願 に 関 する 審 査 及 び 全 ての 特 許 の 再 審 査 若 しくは 効 力 を 争 うその 他 の 法 的 手 続 に 適 用<br />

する。 従 って、 審 査 される 出 願 の 提 出 日 は,その 出 願 の 又 はその 出 願 によって 生 じる 特 許 の<br />

特 許 性 を 判 断 する 際 に、どの 版 の 特 許 法 第 102 条 (e)を 適 用 すべきかを 確 認 することにおいて<br />

もはや 関 連 はない。 改 正 法 規 定 は 特 許 法 第 102 条 (e) 及 び 第 374 条 の 全 ての 旧 バージョンに 取<br />

って 代 わる。ただし、 唯 一 の 例 外 となるのは、 潜 在 的 な 引 例 が 2000 年 11 月 29 日 よりも 前 に<br />

行 われた 国 際 出 願 に 基 づく 場 合 である( 以 下 に 詳 述 )。Pub. L. 107-273 において 特 許 法 第 102<br />

条 (e) 及 び 第 374 条 を 修 正 する 規 定 は,AIPA における 関 連 規 定 の 施 行 日 (2000 年 11 月 29 日 )<br />

まで 完 全 に 遡 及 する。 改 正 特 許 法 第 102 条 (e)は 一 定 の 国 際 公 開 及 び 米 国 出 願 公 開 並 びに 一 定<br />

の 米 国 特 許 をそれぞれの 米 国 出 願 日 現 在 で、 一 定 の 国 際 出 願 日 を 含 めて、 特 許 法 第 102 条 (e)<br />

の 下 の 先 行 技 術 として 認 める。 特 許 法 第 102 条 (e)による 引 例 の 先 行 技 術 日 は、 国 際 出 願 の 日<br />

が 2000 年 11 月 29 日 以 降 であって、 国 際 出 願 が 合 衆 国 を 指 定 しており、 及 び 国 際 出 願 は 世 界<br />

知 的 所 有 権 機 関 (WIPO)により 特 許 協 力 条 約 (PTC) 第 21 条 (2)に 基 づき、 英 語 で 公 開 されている<br />

場 合 に、 国 際 出 願 日 とすることができる。 特 許 法 第 102 条 (e)の 適 用 に 関 する 審 査 指 針 につい<br />

ては、MPEP 第 706.02 条 (f)(1)を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(e) その 発 明 が, 次 のものに 記 載 された 場 合 (1) 当 該 特 許 出 願 人 による 発 明 以 前 に 合 衆 国 にお<br />

いて 申 請 された 他 人 による 特 許 出 願 で 第 122 条 (b)に 基 づき 公 開 されたもの。 又 は、(2) 当 該<br />

特 許 出 願 人 による 発 明 以 前 に, 合 衆 国 において 申 請 された 他 人 による 特 許 出 願 に 与 えられた<br />

特 許 。 ただし, 第 351 条 (a)に 規 定 する 条 約 に 基 づいて 申 請 された 国 際 出 願 は, 合 衆 国 にお<br />

いて 申 請 される 出 願 に 関 する 本 項 の 適 用 上 ,その 国 際 出 願 が 合 衆 国 を 指 定 しており,かつ,<br />

英 語 で 当 該 条 約 第 21 条 (2)に 基 づいて 公 開 される 場 合 に 限 り, 効 果 を 有 するものとする。<br />

上 記 の 通 り,2000 年 11 月 29 日 よりも 前 に 行 われた 国 際 出 願 に 基 づく 引 例 は, 下 記 の 特 許 法<br />

第 102 条 (e)の 旧 (AIPA 以 前 の)バージョンの 適 用 を 受 ける。<br />

特 許 法 の 旧 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(e) その 発 明 が, 特 許 出 願 人 による 発 明 の 前 に 合 衆 国 において 他 の 者 により 申 請 された 特 許<br />

出 願 に, 又 は、 特 許 出 願 人 による 発 明 の 前 に 本 章 の 第 371 条 (c)の(1),(2) 及 び(4) 号 の 要 件<br />

を 満 たす 他 の 者 による 国 際 出 願 に、 付 与 された 特 許 に 記 載 されていた。<br />

I. 法 定 発 明 登 録 (SIR)は 特 許 法 第 102 条 (e)の 下 で 先 行 技 術 として 適 格 性 を 有 する<br />

特 許 法 第 157 条 (c)に 従 って、 公 開 された SIR は 全 ての 防 衛 目 的 で 米 国 特 許 と 同 じように 取 り<br />

扱 われ、その 出 願 日 以 降 米 国 特 許 と 同 じように 引 例 として 使 用 できる。SIR は 特 許 法 第 102<br />

条 (e)を 含 めて 特 許 法 第 102 条 の 全 ての 適 用 可 能 な 条 項 の 下 で 先 行 技 術 となる。MPEP 第 1111<br />

条 を 参 照 のこと。<br />

127


II. 防 衛 公 開 は 出 願 日 以 降 先 行 技 術 ではなくなる<br />

防 衛 公 開 プログラムは、1968 年 4 月 から 1985 年 5 月 まで 有 効 であったが、 特 定 の 状 況 下 で<br />

係 属 中 の 出 願 の 技 術 的 開 示 の 要 約 を 任 意 で 公 開 することについて 規 定 していた。 防 衛 公 開 は,<br />

特 許 法 第 122 条 (b) 下 の 特 許 又 は 公 開 出 願 ではなく, 刊 行 物 である。 従 って, 刊 行 日 以 降 に<br />

限 って 先 行 技 術 となる。Ex parte Osmond, 191 USPQ 334 (Bd. App. 1973)。 防 衛 公 開 の 詳 細<br />

については、MPEP 第 711.06 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

2136.01 引 例 としての 米 国 出 願 の 地 位<br />

I. 共 有 の 譲 受 人 又 は 発 明 者 がない 場 合 、 米 国 出 願 は 特 許 として 発 行 する、 又 は SIR 若 しく<br />

は 出 願 公 開 として、それが 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 先 行 技 術 として 利 用 できるようにな<br />

る 前 に 発 表 しなければならない<br />

米 国 特 許 及 び SIR に 加 えて、 特 定 の 米 国 出 願 公 開 及 び 特 定 の 国 際 出 願 公 開 もまた、( 特 定 の 国<br />

際 出 願 日 を 含 む)それらの 有 効 な 米 国 出 願 の 日 以 降 特 許 法 第 102 条 (e)による 先 行 技 術 として<br />

使 用 することができる。MPEP 第 706.02 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

II. 共 通 の 譲 受 人 又 は 発 明 者 がある 場 合 、 未 公 開 先 願 に 基 づき 特 許 法 第 102 条 (e)の 仮 拒 絶<br />

を 行 うことができる<br />

出 願 は 米 国 特 許 (すなわち、 出 願 公 開 )となるとの 想 定 に 基 づき、 共 通 の 譲 受 人 若 しくは 発 明<br />

者 が 存 在 する 場 合 は、 特 許 法 第 102 条 (e)により 未 公 開 の 先 願 に 基 づき、 後 願 について 仮 拒 絶<br />

することが 認 められる。In re Irish, 433 F.2d 1342, 167 USPQ 764 (CCPA 1970)。また,<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 仮 拒 絶 は, 同 時 係 属 中 の 米 国 先 願 が 編 集 された 形 で 公 開 されており( 特<br />

許 法 施 行 規 則 第 1.217 条 ), 拒 絶 において 依 拠 される 保 護 対 象 がその 特 許 出 願 の 編 集 された 公<br />

開 において 裏 付 けられていない 場 合 に 行 うことができる。そのような 仮 拒 絶 は「 同 時 係 属 出<br />

願 間 の 潜 在 的 な 先 行 技 術 との 関 係 についてできるだけ 早 い 時 期 に 出 願 人 に 通 告 」すると 共 に、<br />

補 正 又 は 証 拠 の 提 出 によってその 拒 絶 を 克 服 する 最 大 限 の 機 会 を 出 願 人 に 与 える「のに 役 立<br />

つ」。また、 係 属 中 である 二 つの 出 願 は 同 一 譲 受 人 であることが 普 通 なので、 出 願 人 には 仮<br />

拒 絶 を 克 服 するための 選 択 肢 が、 他 の 出 願 がすでに 発 行 されている 場 合 よりも 多 く 可 能 であ<br />

る。Ex parte Bartfeld, 16 USPQ2d 1714 (Bd. Pat. App. & Int. 1990) aff’d on other<br />

grounds,925 F.2d 1450, 17 USPQ2d 1885 (Fed. Cir. 1991)。 特 許 法 第 102 条 (e)による 仮 拒<br />

絶 は 共 通 の 発 明 者 若 しくは 譲 受 人 が 存 在 する 場 合 にのみ 認 められるのであって、 公 開 前 の 同<br />

時 係 属 出 願 は 秘 密 にしておかねばならないことに 留 意 すること。MPEP 第 706.02 条 (f)(2) 及<br />

び 第 706.02 条 (k)に、 特 許 法 第 102 条 (e) 及 び 第 102 条 (e)/ 第 103 条 による 仮 拒 絶 で 使 用 さ<br />

れる 手 続 きが 詳 述 される。<br />

1999 年 11 月 29 日 以 降 に 申 請 された、 若 しくは 2004 年 12 月 10 日 以 降 に 係 属 中 である 出 願<br />

については、 特 許 法 第 102 条 (e)による 先 行 技 術 を 用 いた 特 許 法 第 103 条 (a)による 仮 拒 絶 は、<br />

その 出 願 に、その 発 明 が 成 功 した 時 にその 出 願 及 び 先 行 技 術 引 例 が 同 一 人 によって 所 有 され<br />

る 若 しくは 同 一 人 への 譲 渡 義 務 を 条 件 とする 証 拠 がある 場 合 、 適 切 ではない。 知 的 財 産 権 及<br />

び 最 先 端 テクノロジー 技 術 的 修 正 法 (Pub. L. 107-273, 116 Stat. 1758 (2002))における 特<br />

許 法 第 102 条 (e)への 変 更 は 1999 年 11 月 29 日 に 変 更 された 特 許 法 第 103 条 (c)に 影 響 を 及 ぼ<br />

さない。 特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 及 び 共 同 所 有 の 証 拠 に 関 する 詳 細 については、MPEP 第<br />

706.02 条 (l)(1) 乃 至 第 706.02 条 (l)(3)を 参 照 のこと。<br />

128


また、 特 定 の 非 共 同 所 有 引 例 は、 特 許 法 第 103 条 (a)による 拒 絶 への 適 用 は、 共 同 研 究 及 び 技<br />

術 強 化 法 (CREATE 法 )(Public Law 108-453; 118 Stat. 3596 (2004))により 不 適 格 とされる<br />

ことがある。この 法 律 は 2004 年 12 月 10 日 に 制 定 され、2004 年 12 月 10 日 以 降 に 付 与 され<br />

た 全 ての 特 許 に 効 力 を 有 する。CREATE 法 は 特 許 法 第 103 条 (c)を、 他 人 によって 開 発 された<br />

保 護 対 象 が 同 一 人 によって 所 有 されるように 取 り 扱 う、 若 しくは 特 定 の 条 件 が 満 たされる 場<br />

合 、 自 明 性 を 判 断 するために 同 一 人 への 譲 渡 義 務 を 付 すように 修 正 した。CREATE 法 により 修<br />

正 されたように、 特 許 法 第 103 条 (c)は 特 許 法 第 102 条 (e)、(f) 又 は(g)に 基 づいて 先 行 技 術<br />

とみなされ、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 に 依 拠 される 保 護 対 象 に 限 って 引 き 続 き 適 用 する。<br />

同 項 は、 特 許 法 第 102 条 による 拒 絶 又 は 二 重 特 許 拒 絶 ( 特 許 法 施 行 規 則 第 1.78 条 (c) 及 び MPEP<br />

第 804 条 を 参 照 )に 適 合 する 保 護 対 象 に 適 用 されたり, 影 響 を 及 ぼしたりすることはない。ま<br />

た,その 保 護 対 象 が 特 許 法 第 102 条 の 他 の 項 ( 例 えば, 特 許 法 第 102 条 (a) 又 は(b))に 基 づく<br />

先 行 技 術 とみなされる 場 合 , 特 許 法 第 103 条 (c)に 基 づく 先 行 技 術 とみなされないことはない。<br />

特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 及 び 共 同 研 究 契 約 の 証 拠 に 関 する 詳 細 については、MPEP 第 706.02<br />

条 (l)(1) 乃 至 第 706.02 条 (l)(3)を 参 照 のこと。<br />

2136.02 クレームに 使 用 できる 先 行 技 術 の 内 容<br />

I. 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 は 特 許 又 は 出 願 の 刊 行 物 開 示 の 任 意 の 部 分 に 依 拠 することがで<br />

きる<br />

特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づき、 米 国 特 許 、 米 国 出 願 公 開 又 は 先 願 の 有 効 な 米 国 出 願 日 ( 特 定 の<br />

国 際 出 願 日 を 含 む)を 有 する 国 際 公 開 の 全 開 示 部 分 は、そのクレームを 拒 絶 するため 依 拠 す<br />

ることができる。Sun Studs, Inc. v. ATA Equip. Leasing, Inc., 872 F.2d 978, 983, 10<br />

USPQ2d 1338, 1342 (Fed. Cir. 1989)。MPEP 第 706.02 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

II. 引 例 はそれ 自 体 に 拒 絶 において 依 拠 された 保 護 対 象 がなければならない<br />

米 国 特 許 、 米 国 出 願 公 開 若 しくは 国 際 公 開 が 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づくクレームの 拒 絶 に<br />

使 われる 場 合 、その 拒 絶 において 依 拠 される 開 示 は 発 行 された 特 許 若 しくは 出 願 公 開 に 含 ま<br />

れていなければならない。それは 引 用 例 の 基 準 日 として 依 拠 されている 米 国 特 許 若 しくは 出<br />

願 公 開 の( 所 定 の 国 際 出 願 日 を 含 む) 米 国 出 願 最 先 有 効 日 であり、その 特 許 若 しくは 出 願 公 開<br />

それ 自 体 に 含 まれていない 保 護 対 象 はその 保 護 対 象 が 公 になってはじめて 使 用 可 能 となる。<br />

取 り 消 された 特 許 出 願 部 分 は 当 該 特 許 もしくは 出 願 公 開 の 一 部 ではなく、 従 って 発 行 された<br />

特 許 又 は 出 願 公 開 によって 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 で 依 拠 することはできない。Ex Parte<br />

Stalego, 154 USPQ 52(Bd. App. 1966)。 同 様 に、 親 出 願 において 開 示 されているが 子 出 願 で<br />

ある 一 部 継 続 出 願 (CIP)に 含 まれていない 保 護 対 象 は 発 行 された 若 しくは 公 開 された CIP に<br />

より 特 許 法 第 102 条 (e) 拒 絶 で 依 拠 することはできない。In re Lund, 376 F.2d 982, 153 USPQ<br />

625 (CCPA 1967)( 審 査 官 は 一 部 継 続 出 願 (CIP)である 発 行 された 米 国 特 許 により 特 許 法 第 102<br />

条 (e)の 拒 絶 を 行 った。 米 国 特 許 文 献 の 親 出 願 には CIP に 引 き 継 がれていない 実 施 例 II があ<br />

った。 裁 判 所 は、 取 り 消 された 実 施 例 II において 具 体 化 された 保 護 対 象 は 親 出 願 日 又 は 子<br />

出 願 日 のいずれにも 依 拠 できないとした。このように、 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づくクレー<br />

ムの 拒 絶 に 実 施 例 II の 保 護 対 象 を 使 用 することは 不 適 切 であった。)<br />

129


III. 最 高 裁 判 所 は 特 許 法 第 102 条 (e)による 特 許 法 第 103 条 の 拒 絶 を 認 めている<br />

米 国 特 許 はそれらの 出 願 日 以 降 、クレームされた 保 護 対 象 は 新 規 性 を 欠 く 若 しくは 自 明 であ<br />

ることを 示 すため 使 用 することができる。 自 明 性 は 特 許 法 第 103 条 の 拒 絶 において、その 他<br />

の 先 行 技 術 を 米 国 特 許 文 献 と 組 み 合 わせて 示 すことができる。Hazeltine Research v.<br />

Brenner, 382 U.S. 252, 147 USPQ 429 (1965)。 同 様 に、 所 定 の 米 国 出 願 公 開 及 び 所 定 の 国<br />

際 公 開 もまた、それらの 最 先 の 有 効 な 米 国 出 願 日 ( 所 定 の 国 際 出 願 日 を 含 む) 以 降 クレームさ<br />

れた 保 護 対 象 は 新 規 性 を 欠 く 若 しくは 自 明 であることを 示 すため 使 用 することができる。<br />

特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 及 び 共 同 所 有 の 証 拠 若 しくは 共 同 研 究 合 意 に 関 する 詳 細 について<br />

は、MPEP 第 706.02 条 (l)(1) 乃 至 第 706.02 条 (l)(3)を 参 照 のこと。<br />

2136.03 引 用 例 の 基 準 日<br />

I. 外 国 優 先 日<br />

特 許 法 第 119 条 (a) 乃 至 (d) 及 び(f)に 基 づく 引 例 の 外 国 優 先 日 は 特 許 法 第 102 条 (e)の 参 照 日<br />

として 使 用 することはできない<br />

特 許 法 第 102 条 (e)は、「 出 願 人 によりその 発 明 の 前 に 米 国 において 出 願 された」 所 定 の 引 例<br />

に 明 示 的 に 制 限 される( 強 調 は 引 用 者 による)。 米 国 若 しくは WIPO 出 願 公 開 として 公 開 された,<br />

又 は 合 衆 国 において 特 許 された 出 願 で( 特 許 法 第 119 条 (a) 乃 至 (d) 及 び(f) 若 しくは 第 365 条<br />

(a)を 介 して)クレームされている 外 国 出 願 の 出 願 日 は、 先 行 技 術 の 目 的 上 特 許 法 第 102 条 (e)<br />

の 日 として 使 用 することができない。これは, 特 許 法 第 365 条 (a)に 基 づき 外 国 優 先 日 として<br />

主 張 される 国 際 出 願 日 を 含 む。 従 って、 特 許 法 第 119 条 (a) 乃 至 (d) 及 び(f) 並 びに 第 365 条 (a)<br />

に 基 づく 引 例 の 外 国 優 先 日 は 出 願 日 に 先 行 するものとして 使 用 することはできない。その 一<br />

方 、 出 願 人 は 引 例 の 米 国 出 願 日 に 先 行 する、 特 許 法 第 119 条 優 先 日 が 自 らに 認 められている<br />

ことを 示 すことで、 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 を 克 服 することができる。In re Hilmer, 359<br />

F.2d 859, 149 USPQ 480 (CCPA 1966) (Hilmer I)( 出 願 人 はドイツ 出 願 に 対 する 優 先 権 をも<br />

って 出 願 した。 審 査 官 は、そのクレームをスイスの 優 先 日 を 根 拠 とする Habicht への 米 国 特<br />

許 に 基 づいて 拒 絶 した。Habicht の 米 国 出 願 日 は 出 願 人 のドイツ 優 先 日 よりも 後 であった。<br />

裁 判 所 は、 当 該 引 例 のスイス 優 先 日 は 特 許 法 第 102 条 (e) 拒 絶 において 依 拠 することはできな<br />

いとした。Habicht の 米 国 出 願 日 は 当 該 出 願 の 最 先 の 有 効 な 出 願 日 (ドイツ 優 先 日 )よりも 後<br />

であったので、その 拒 絶 は 覆 された。) 出 願 人 の 優 先 権 を 検 討 する 上 で 従 うべき 手 順 について<br />

の 詳 細 は、MPEP 第 201.15 条 を 参 照 のこと。<br />

所 定 の 国 際 出 願 (PCT) 申 請 は 出 願 公 開 を 先 行 技 術 として 適 用 する 目 的 上 、「 米 国 において 出 願 」<br />

されているとみなされる。MPEP 第 706.02 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

II. 国 際 出 願 (PCT)、 国 際 公 開<br />

潜 在 的 引 例 が 国 際 出 願 に 由 来 する, 又 はその 利 益 を 主 張 する 場 合 は, 次 に 掲 げる 各 号 を 確 認<br />

しなければならない。<br />

(A) 当 該 国 際 出 願 が 次 に 掲 げる 各 号 を 満 たす 場 合 , 当 該 国 際 出 願 日 は 特 許 法 第 102 条 (e)に 基<br />

づく 先 行 技 術 の 目 的 上 、 米 国 出 願 日 となる。<br />

(1) 国 際 出 願 日 は 2000 年 11 月 29 日 以 降 であること<br />

(2) 合 衆 国 を 指 定 国 としていること<br />

(3) 英 語 により,PCT 第 21 条 (2)に 基 づいて 公 開 されたこと<br />

130


かかる 国 際 出 願 が 先 願 米 国 出 願 若 しくは 国 際 出 願 に 対 して 利 益 を、 又 は 先 願 米 国 仮 出 願 に 対<br />

して 優 先 権 を 正 しく 主 張 している 場 合 , 特 許 法 第 102 条 (e), 第 119 条 (e), 第 120 条 又 は 第<br />

365 条 (c)の 全 ての 条 件 が 満 たされていることを 前 提 として, 先 行 出 願 日 以 降 、 特 許 法 第 102<br />

条 (e)による 引 例 として 適 用 する。さらに、 拒 絶 において 依 拠 される 保 護 対 象 に 特 許 法 第 102<br />

条 (e)に 基 づく 先 願 日 の 利 益 を 付 与 するには,その 保 護 対 象 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 従 っ<br />

て 先 願 において 開 示 されていなければならない。 先 願 が 国 際 出 願 である 場 合 ,その 先 願 され<br />

た 国 際 出 願 が 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 先 行 技 術 の 目 的 上 で 米 国 出 願 日 であるためには, 先<br />

願 国 際 出 願 が 同 様 の 3 条 件 (すなわち,2000 年 11 月 29 日 以 降 の 出 願 であること, 合 衆 国 を<br />

指 定 国 としていること、 及 び PCT 第 21 条 (2)に 基 づいて 英 語 によって 公 開 されたこと)を 満 た<br />

していなければならないことに 留 意 する。<br />

(B) 国 際 出 願 が 2000 年 11 月 29 日 以 降 に 申 請 されたが, 米 国 を 指 定 していなかった, 又 は<br />

PCT 第 21 条 (2)に 基 づいて 英 語 によって 公 開 されていなかった 場 合 ,その 国 際 出 願 日 は 米 国<br />

出 願 日 として 取 り 扱 ってはならない。この 状 況 においては, 国 際 出 願 日 , 特 許 法 第 371 条<br />

(c)(1),(2) 及 び(4)の 要 件 充 当 日 , 又 はかかる 国 際 出 願 が 利 益 若 しくは 優 先 権 を 主 張 してい<br />

る 先 願 日 以 後 の 引 例 として 適 用 してはならない。 当 該 引 例 は, 特 許 法 第 102 条 (a) 又 は(b)に<br />

基 づきその 公 開 日 より, 又 は 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づきその 国 際 出 願 の 利 益 を 正 しくクレー<br />

ムする 出 願 の 米 国 出 願 日 より( 該 当 する 場 合 ) 適 用 することができる。<br />

(C) 国 際 出 願 が 2000 年 11 月 29 日 以 前 の 国 際 出 願 日 を 有 する 場 合 ,AIPA 改 正 以 前 の 特 許 法<br />

第 102 条 及 び 第 374 条 の 規 定 に 基 づき、 次 のとおり 引 例 として 適 用 する。<br />

(1) 米 国 特 許 については 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 引 例 を, 特 許 法 第 371 条 (c)(1),(2) 及<br />

び(4)の 要 件 充 当 日 若 しくは 当 該 国 際 出 願 の 利 益 をクレームする 後 願 申 請 日 の 何 れか 先 行 す<br />

る 日 以 降 適 用 する。<br />

(2) 米 国 出 願 公 開 及 び PCT 第 21 条 (2)に 基 づく 国 際 出 願 に 直 接 由 来 する WIPO 公 開 については,<br />

それらの 引 例 を 決 して 特 許 法 第 102 条 (e)により 適 用 してはならない。これらの 引 例 は, 特 許<br />

法 第 102 条 (a) 又 は(b)に 基 づいてそれらの 公 開 日 から 適 用 することができる。<br />

(3) 2000 年 11 月 29 日 以 前 に 申 請 された 国 際 出 願 の 特 許 法 第 102 条 又 は 第 365 条 (c)に 基 づ<br />

いて 利 益 を 主 張 する 出 願 の 米 国 出 願 公 開 については, 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 引 例 を 当 該<br />

国 際 出 願 の 利 益 を 主 張 して 後 に 申 請 された 米 国 出 願 の 実 際 の 出 願 日 より 適 用 する。<br />

審 査 官 は, 国 際 公 開 又 は 国 際 出 願 に 由 来 する 米 国 特 許 は, 特 許 法 第 102 条 (e)の 日 は 全 くない,<br />

若 しくは 審 査 される 出 願 の 有 効 出 願 日 より 後 にくる 特 許 法 第 102 条 (e)の 日 となり 得 る( 従 っ<br />

て,それは「 先 行 技 術 」ではない)が,それに 対 応 する 国 際 出 願 の WIPO 公 開 は 先 行 する 特 許<br />

法 第 102 条 (a) 又 は(b)の 日 となりうることを 知 っていなければならない。<br />

III. 特 許 法 第 119 条 (e)による 仮 出 願 に 基 づく 優 先 権<br />

米 国 特 許 又 は 米 国 出 願 公 開 及 び 特 許 法 第 119 条 (e)により 仮 出 願 の 申 請 日 の 利 益 を 認 めらる<br />

所 定 の 国 際 公 開 に 関 する 特 許 法 第 102 条 (e)の 引 用 例 の 基 準 日 は、 一 定 の 例 外 を 除 いて 仮 出 願<br />

の 申 請 日 とする。ただし、その 仮 出 願 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 準 じて 拒 絶 を 行 うために<br />

依 拠 される 保 護 対 象 を 正 しく 支 持 している 場 合 とする。MPEP 第 706.02 条 (f)(1) 引 用 例 5 乃<br />

至 9 を 参 照 のこと。(1) 2000 年 11 月 29 日 以 前 に 申 請 された,(2) 合 衆 国 を 指 定 国 としてい<br />

ない、 又 は(3) WIPO による PCT 第 21 条 (2)に 基 づき 英 語 で 公 開 されていない 国 際 出 願 は、 特<br />

許 法 第 102 条 (e)による 先 行 技 術 の 目 的 上 , 優 先 権 又 は 利 益 を 主 張 することによって 先 願 日 に<br />

131


遡 る( 橋 渡 しをする)ために 用 いることができないことに 留 意 。<br />

IV. 引 例 が 親 出 願 の 一 部 継 続 出 願 である 場 合 の 親 出 願 日<br />

米 国 親 出 願 の 出 願 日 は、 特 許 法 第 102 条 (e)としてのみ 使 用 できる。ただし、 子 出 願 におい<br />

て 依 拠 される 保 護 対 象 を 支 持 している 場 合 とする<br />

先 行 技 術 の 目 的 上 、 特 許 法 第 120 条 に 基 づく 非 仮 出 願 以 前 の 先 願 日 の 利 益 を 主 張 する 米 国 特<br />

許 又 は 特 許 出 願 公 開 は、 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 先 行 技 術 日 として 先 願 日 を 認 めることが<br />

できる。ただし、その 先 願 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 準 じてどのような 拒 絶 にせよ 依 拠 す<br />

る 保 護 対 象 を 正 しく 支 持 する 場 合 とする。すなわち、 拒 絶 において 使 用 される 保 護 対 象 が 特<br />

許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 先 願 日 として 認 められるためには, 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 準 ず<br />

る 先 願 でその 保 護 対 象 が 開 示 されていなければならない。<br />

MPEP 第 706.02 条 (f)(1) 引 用 例 2 及 び 5 乃 至 9 も 参 照 のこと。<br />

V. 着 想 又 は 実 施 化 の 日<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 引 例 日 は 出 願 日 であって 発 明 者 の 着 想 又 は 実 施 化 の 日 ではない<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 下 で 利 用 できる 引 例 が 開 示 するけれども、 審 査 される 若 しくは 自 明 の 変<br />

形 であるクレームの 保 護 対 象 をクレームしていない 場 合 、その 引 例 は 特 許 法 第 102 条 (g)に 基<br />

づく 先 行 技 術 とはならない。さらにその 引 例 は、 当 該 保 護 対 象 が 先 行 日 において 本 国 内 で 実<br />

際 に 実 施 化 された 証 拠 がない 限 り、 米 国 特 許 又 は 米 国 特 許 出 願 公 開 において 開 示 される 先 行<br />

する 発 明 活 動 に 基 づいて、 出 願 日 に 先 行 する 日 以 後 の 特 許 法 第 102 条 に 基 づく「 先 行 技 術 」<br />

とみなされない。MPEP 第 2138 条 を 参 照 のこと。 当 該 事 例 がインターフェアレンスにない 場<br />

合 、 先 行 技 術 としての 引 例 の 有 効 日 は 特 許 法 第 102 条 (e)に 規 定 されるとおり 米 国 内 の 出 願 日<br />

( 所 定 の 国 際 出 願 日 を 含 む)とする。MPEP 第 706.02 条 (a)を 参 照 のこと。 先 行 技 術 の 保 護 対 象<br />

が 着 想 された 日 又 は 実 施 化 された 日 は、 特 許 法 第 102 条 (g)が 問 題 とならない 場 合 は 重 要 では<br />

ない。Sun Studs, Inc. v. ATA Equip. Leasing, Inc., 872 F.2d 978, 983, 10 USPQ2d 1338,<br />

1342 (Fed. Cir. 1989)( 被 告 は Mason and Sohn に 発 行 され Sun Studs に 委 譲 された 特 許 を 無<br />

効 にしようとした。これらの 特 許 の 最 先 特 許 は 1973 年 6 月 に 発 行 された。1976 年 3 月 に 発<br />

行 されて Mason 及 び Sohn の 発 明 を 開 示 した Mouat に 対 する 米 国 特 許 が 確 認 された。Mouat へ<br />

の 特 許 は Mason 及 び Sohn の 特 許 以 降 に 発 行 されているが、Mason 及 び Sohn の 特 許 の 最 先 特<br />

許 よりも 7 か 月 先 行 して 出 願 されていた。Sun Studs は 1969 年 の 着 想 及 び 擬 制 的 実 施 化 への<br />

継 続 的 努 力 を 示 す 宣 誓 供 述 書 を 提 出 している。 従 って Mouat への 特 許 にに 先 行 していた。 被<br />

告 は、Mouat が 1966 年 に 発 明 を 着 想 したことを 証 明 しようとした。 裁 判 所 は、その 引 例 の 保<br />

護 対 象 についての 着 想 は、 抵 触 する 特 許 のクレームが 同 一 であるか 互 いに 自 明 である 発 明 に<br />

該 当 する 場 合 に 争 点 となるのみであると 判 示 した。 特 許 法 第 102 条 (e)を 適 用 する 場 合 ( 特 許<br />

法 第 102 条 (g)ではない)、 先 行 技 術 特 許 の 出 願 日 はクレームを 拒 絶 又 は 失 効 させるために 用<br />

いることができる 最 先 日 となる。)<br />

2136.04 異 なる 発 明 主 体 ;「 他 者 による」の 意 味<br />

発 明 主 体 に 何 らかの 違 いが 存 在 する 場 合 、 引 例 は「 他 者 による」となる<br />

「 他 者 」とは 出 願 人 以 外 、In re Land, 368 F.2d 866, 151 USPQ 621 (CCPA 1966)、すなわ<br />

ち 異 なる 発 明 主 体 をいう。 発 明 者 のすべてが 同 一 ではない 場 合 、 発 明 主 体 は 異 なる。 出 願 及<br />

132


び 引 例 が 一 人 以 上 の 共 同 の 発 明 者 を 有 するという 事 実 は 重 要 ではない。Ex parte DesOrmeaux,<br />

25 USPQ2d 2040 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)( 審 査 官 は 3 名 の 発 明 者 に 対 して 発 行 された<br />

米 国 特 許 に 基 づく 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 を 行 った。 拒 絶 された 出 願 は 発 行 された 特 許 に 発<br />

明 者 1 名 を 追 加 した 一 部 継 続 出 願 であった。 審 判 部 は、その 特 許 は「 他 者 による」ものであ<br />

り 特 許 法 第 102 条 (e)/ 第 103 条 の 当 該 出 願 の 拒 絶 に 使 用 できるとした。)<br />

異 なる 発 明 主 体 は 引 例 が「 他 者 による」ものである 一 応 の 証 拠 となる<br />

1952 年 特 許 法 の 一 部 として 特 許 法 第 102 条 (e)を 制 定 する 法 律 について 下 院 及 び 上 院 の 報 告<br />

書 で 述 べられているとおり、 第 102 条 の 本 項 は Milburn v. Davis-Bournonville, 270 U.S. 390<br />

(1926)の Milburn ルールを 成 文 化 したものである。Milburn ルールは、 米 国 特 許 出 願 日 以 降<br />

の 後 願 に 対 して、 発 明 の 開 示 を 含 む 米 国 特 許 の 引 例 としての 使 用 を 認 めたものであった。 審<br />

査 される 出 願 でクレームされる 保 護 対 象 を 含 む 米 国 先 願 の 存 在 は、その 出 願 人 は 最 初 の 発 明<br />

者 ではないことを 示 す。 従 って、 異 なる 発 明 主 体 による 米 国 特 許 、 米 国 特 許 出 願 公 開 若 しく<br />

は 国 際 公 開 は、その 出 願 が 幾 人 かの 発 明 者 で 当 該 特 許 を 共 有 すると 否 とにかかわらず、 当 該<br />

発 明 は 特 許 法 第 102 条 (e)に 定 める「 他 者 によって」 行 われたことの 一 応 の 証 拠 となる。In re<br />

Mathews, 408 F.2d 1393, 161 USPQ 276 (CCPA 1969);In re Facius, 408 F.2d 1396, 161 USPQ<br />

294 (CCPA 1969);Ex parte DesOrmeaux, 25 USPQ2d 2040 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)。<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 を 克 服 する 方 法 の 考 察 については、MPEP 第 706.02 条 (b) 及 び 第<br />

2136.05 条 を 参 照 のこと。<br />

2136.05 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づく 拒 絶 の 克 服<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 は 出 願 日 に 先 行 することによって、 又 は 依 拠 する 開 示 が 出 願 人 自<br />

らの 成 果 であることを 証 明 することによって 克 服 することができる<br />

先 行 米 国 特 許 、 米 国 特 許 出 願 公 開 若 しくは 国 際 公 開 が 法 定 不 特 許 事 由 でない 場 合 、 特 許 法 施<br />

行 規 則 第 1.131 条 による 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 を 提 出 することで、 若 しくは 特 許 法 施 行 規 則<br />

第 1.132 条 による 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 を 提 出 することで 関 連 する 開 示 が 出 願 人 自 らの 成 果<br />

であることを 立 証 し、 引 例 の 出 願 日 ( 特 許 法 第 102 条 (e) 先 行 技 術 の 引 用 例 の 基 準 日 について<br />

は MPEP 第 2136.03 条 を 参 照 )に 先 行 することによって、 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 は 克 服 する<br />

ことができる。In re Mathews, 408 F.2d 1393, 161 USPQ 276 (CCPA 1969)。また、 出 願 日<br />

は 出 願 人 の 外 国 先 願 優 先 権 若 しくは 仮 出 願 によっても 先 行 することができる。ただし、 特 許<br />

法 第 119 条 に 適 合 しかつ 外 国 出 願 若 しくは 仮 出 願 が 米 国 出 願 のすべてのクレームを「 支 持 す<br />

る」( 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 を 満 たす) 場 合 とする。In re Gosteli, 872 F.2d 1008, 10 USPQ2d<br />

1614 (Fed. Cir. 1989)。 問 題 の 出 願 と 同 時 係 属 中 でない 先 行 出 願 は 引 例 に 先 行 するため 使 用<br />

することはできない。In re Costello, 717 F.2d 1346, 219 USPQ 389 (Fed. Cir. 1983)。<br />

また、ターミナルディスクレーマーも 特 許 法 第 102 条 (e) 拒 絶 を 克 服 しない。 参 照 事 例 として、<br />

In re Bartfeld, 925 F.2d 1415, 17 USPQ2d 1885 (Fed. Cir. 1991)。<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 に 基 づく 拒 絶 を 克 服 するために 使 用 できる 方 法 の 一 覧 については、<br />

MPEP 第 706.02 条 (b)を 参 照 のこと。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 の 宣 誓 供 述 書 若 しくは 宣 言 書<br />

について 求 められる 内 容 、 及 びそのような 宣 誓 供 述 書 並 びに 宣 言 書 が 認 められる 状 況 の 詳 細<br />

については、MPEP 第 715 条 を 参 照 のこと。 宣 誓 供 述 書 若 しくは 宣 言 書 は、 当 該 引 例 が 出 願 人<br />

自 らの 成 果 を 記 載 している 場 合 は 適 切 ではない。このような 場 合 、 出 願 人 は 特 許 法 施 行 規 則<br />

133


第 1.132 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 若 しくは 宣 言 書 を 提 出 しなければならない。 特 許 法 施 行 規 則<br />

第 1.132 条 の 宣 誓 供 述 書 及 び 宣 言 書 の 要 件 の 詳 細 については 次 の 段 落 を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 は 当 該 引 例 が 出 願 人 自 らの 成 果 を 記 載 することを 証 明 することに<br />

よって 克 服 することができる<br />

「 出 願 が 異 なる 発 明 主 体 の 名 前 を 挙 げているという 事 実 は 必 ずしも 特 許 がその 特 許 を 先 行 技<br />

術 とするものではない。」Applied Materials Inc. v. Gemini Research Corp., 835 F.2d 279,<br />

15 USPQ2d 1816 (Fed. Cir. 1988)。 論 点 は、 記 録 の 証 拠 がその 保 護 対 象 を 誰 が 発 明 したかに<br />

ついて 何 を 証 明 しているかに 向 けられる。In re Whittle, 454 F.2d 1193, 1195, 172 USPQ 535,<br />

537 (CCPA 1972)。 実 際 、 出 願 人 の 成 果 が 出 願 人 の 出 願 以 前 に 公 に 開 示 されていたとしても、<br />

特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 期 間 の 阻 却 事 由 がない 限 り、 出 願 人 自 らの 成 果 は 出 願 人 に 対 して<br />

使 用 することはできない。In re DeBaun, 687 F.2d 459, 214 USPQ 933 (CCPA 1982) ( 引 用<br />

In re Katz, 687 F.2d 450, 215 USPQ 14 (CCPA 1982))。 従 って、 引 例 のクレームされない<br />

保 護 対 象 が 出 願 人 自 らの 発 明 である 場 合 、 当 該 開 示 が 出 願 人 自 らの 以 前 の 成 果 の 記 載 である<br />

ことを 証 明 することによって、 出 願 人 は 当 該 特 許 、 米 国 特 許 出 願 公 開 若 しくは 国 際 公 開 に 基<br />

づく 一 応 の 証 明 を 克 服 することができる。かかる 証 明 は、 特 許 権 者 又 は 米 国 特 許 公 開 若 しく<br />

は 国 際 公 開 の 発 明 者 が 出 願 人 と 関 連 しており( 例 えば、 同 一 企 業 で 働 いており) 出 願 人 から 出<br />

願 人 の 発 明 について 学 んだことを 提 供 することによって 行 うことができる。In re Mathews,<br />

408 F.2d 1393, 161 USPQ 276 (CCPA 1969)。ある 出 願 が 発 明 者 X によって 最 初 に 申 請 され、<br />

後 の 出 願 が 発 明 者 X と Y によって 申 請 された 場 合 、はじめに 共 同 発 明 が 行 われたこと、その<br />

後 、 単 独 出 願 人 の 米 国 出 願 公 開 又 は 国 際 公 開 において 記 載 され、そして 共 同 出 願 が 申 請 され<br />

たことが 証 明 されなければならない。In re Land, 368 F.2d 866, 151 USPQ 621 (CCPA 1966)。<br />

In re Land 事 例 において Rogers 及 び Land への 米 国 特 許 分 割 が 特 許 法 第 102 条 (e)/ 第 103<br />

条 に 基 づき Rogers 及 び Land に 対 する 共 同 出 願 の 拒 絶 に 用 いられた。 発 明 者 は 同 一 企 業 (ポー<br />

ランド)かつ 同 一 研 究 所 に 勤 務 していた。 当 該 特 許 のすべてがその 同 一 研 究 所 から 出 ていた。<br />

また、 当 該 特 許 出 願 は 同 一 代 理 人 によって 提 出 されており、 相 互 に 関 係 があって 相 互 参 照 が<br />

含 まれていた。 裁 判 所 は(1) 当 該 特 許 ( 一 つは Rogers へ、 一 つは Land へ)の 発 明 主 体 はその 共<br />

同 出 願 (Rogers 及 び Land)の 発 明 主 体 と 異 なっていること、さらに(2)Rogers 及 び Land は 彼<br />

らが 共 同 発 明 を 行 ったとき 彼 らの 個 人 的 成 果 についての 各 自 の 知 識 を 持 っていたことを 理 由<br />

として 拒 絶 を 追 認 した。 引 例 の 部 分 が 彼 らが 共 同 で 行 って 開 示 された 何 かに 依 拠 することを<br />

示 すものは 何 もない。また、 彼 らが 共 同 で 行 ったことは 当 該 引 例 特 許 出 願 の 申 請 前 に 行 われ<br />

たことを 示 すものもなかった。<br />

次 も 参 照 のこと。In re Carreira, 532 F.2d 1356, 189 USPQ 461 (CCPA 1976)( 審 査 官 は、<br />

Tulagin 及 び Carreira に 発 行 された 米 国 特 許 若 しくは Clark に 発 行 された 特 許 を 考 慮 して 特<br />

許 法 第 102 条 (e) 及 び 第 103 条 に 基 づき Carreira、Kyrakakis、Solodar 及 び Labana に 対 し 共<br />

同 出 願 へのクレームを 拒 絶 した。 出 願 人 は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づき Tulagin 及 び<br />

Clark による 宣 言 書 を 提 出 した。 宣 言 書 において 各 宣 言 人 は、 自 分 は「オルト 位 でアゾ 結 合<br />

するヒドロキシル 基 を 有 する 化 合 物 利 用 の 発 明 者 ではない」と 述 べていた。 裁 判 所 は、 宣 言<br />

人 は 彼 らの 特 許 でこの 属 化 合 物 の 利 用 を 開 示 しておらずむしろこの 属 化 合 物 の 種 を 開 示 して<br />

いて、クレームを 満 たすものは 種 であると 判 定 した。 属 化 合 物 の 利 用 を 発 明 していないとす<br />

る 宣 言 書 は Tulagin 及 び Clark が 種 の 利 用 を 発 明 していないことを 立 証 していない。)<br />

134


先 行 引 例 についての 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 及 び 宣 言 書 の 内 容 並 びに<br />

利 用 の 詳 細 について 規 定 している。 特 許 法 第 102 条 (e)/ 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 及 び 特 許 法 第<br />

103 条 (c)の 適 用 可 能 性 の 詳 細 については、MPEP 第 706.02 条 (l)(1)を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 は、 引 例 で 開 示 される 保 護 対 象 が 出 願 人 自 らの 成 果 である 場 合 は、 継 続 的 努 力 若 しく<br />

は 実 施 化 を 示 す 必 要 はない<br />

引 例 が 出 願 人 自 らの 成 果 を 反 映 している 場 合 、 出 願 人 は 自 らがその 引 例 に 開 示 される 保 護 対<br />

象 を 発 明 したことを 立 証 するために 継 続 的 努 力 若 しくは 実 施 化 を 証 明 する 必 要 はない。 引 例<br />

の 開 示 が 出 願 人 の 成 果 により 生 じることの 証 明 は、その 引 例 の 出 願 日 前 の 出 願 人 による 着 想<br />

の 証 明 と 結 び 付 けて 考 えられ、 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 を 克 服 する。その 証 明 は、 特 許 法 施<br />

行 規 則 第 1.132 条 に 基 づき 発 明 者 が 宣 誓 供 述 書 を 提 出 することで 行 うことができる。その 他<br />

の 特 許 権 者 は 発 明 者 名 を 放 棄 する 宣 誓 供 述 書 を 提 出 する 必 要 はないが、 提 出 する 場 合 は 他 の<br />

すべての 特 許 権 者 による 放 棄 が 審 査 官 により 検 討 されねばならない。In re DeBaun, 687 F.2d<br />

459, 214 USPQ 933 (CCPA 1982)(DeBaun により 提 出 された 宣 言 書 は、 自 分 は DeBaun 及 び Noll<br />

の 米 国 特 許 引 例 で 開 示 される 保 護 対 象 の 発 明 者 であることを 述 べていた。 添 付 書 類 が 着 想 を<br />

証 明 する 宣 言 書 に 添 えられており、それには DeBaun が 引 例 特 許 として 発 行 される 出 願 を 準 備<br />

する 目 的 で 準 備 し 助 言 を 与 えた 図 面 が 含 まれていた。 裁 判 所 は、その 証 拠 は 特 許 法 施 行 規 則<br />

第 1.131 条 に 基 づく 先 行 技 術 特 許 より 前 のものであるとするには 十 分 ではないとしても、 継<br />

続 的 努 力 及 び/ 又 は 実 施 化 は DeBaun が 当 該 保 護 対 象 を 発 明 したことをを 証 明 するために 必<br />

要 としないと 判 定 した。 宣 言 人 の 自 分 が 最 初 に 当 該 発 明 を 着 想 したとする 陳 述 は 特 許 法 第<br />

102 条 (e)の 拒 絶 を 克 服 するに 十 分 であった。)<br />

引 例 の 組 合 せクレームの 中 で 個 別 の 要 素 又 はサブコンビネーションをクレームすることその<br />

ものは、 特 許 権 者 がそれらの 要 素 を 発 明 したことの 立 証 とはならない<br />

引 例 に 組 合 せクレームが 存 在 することは、 当 該 要 素 およびサブコンビネーションが 当 該 組 合<br />

せとは 別 にクレームされていない 場 合 、 特 許 権 者 が 個 別 の 要 素 又 はそこに 含 まれるサブコン<br />

ビネーションを 発 明 したことの 証 明 とはならない。In re DeBaun, 687 F.2d 459, 214 USPQ 933<br />

(CCPA 1982) ( 引 用 In re Facius, 408 F.2d 1396, 1406, 161 USPQ 294, 301 (CCPA 1969))。<br />

次 も 参 照 のこと。In re Mathews, 408 F.2d 1393, 161 USPQ 276 (CCPA 1969)(1961 年 9 月<br />

15 日 に Dewey は 電 気 回 路 用 の 時 間 遅 延 保 護 装 置 を 開 示 しクレームする 出 願 を 行 った。その 発<br />

明 の 開 示 において Dewey は、Mathews によって 発 明 された 保 護 装 置 で 利 用 できる「ゲート 装<br />

置 19」を 全 面 的 に 開 示 したがクレームしなかった。Dewey 及 び Mathews は 譲 受 人 である<br />

General Electric Company の 同 僚 であった。Mathews は Dewey の 特 許 が 発 行 される 前 ではあ<br />

るが 出 願 からは 18 月 後 の 1963 年 3 月 7 日 に 自 己 の 出 願 を 行 った。Mathews の 出 願 は「 本 発<br />

明 を 具 体 化 する 回 路 の 1 例 が 同 時 係 属 特 許 出 願 S.N. 138,476-Dewey において 示 されている」<br />

ことを 開 示 した。 審 査 官 は Dewey を 用 いて、 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づき Mathews のクレーム<br />

すべてを 拒 絶 した。それに 応 じて Mathews は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づき Dewey によ<br />

る 宣 誓 供 述 書 を 提 出 した。 宣 誓 供 述 書 で Dewey は、 自 分 はゲート 装 置 19 を 発 明 していないが<br />

Mathews を 介 してそのゲート 装 置 について 学 んだこと、 及 び GE の 代 理 人 がそのゲート 装 置 は<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 適 合 するため Dewey の 出 願 において 開 示 されるよう 助 言 したこと<br />

を 陳 述 した。 審 査 官 は、 特 許 法 第 102 条 (e)の 拒 絶 を 克 服 できる 唯 一 の 方 法 は 特 許 法 施 行 規 則<br />

135


第 1.131 条 に 基 づき、 当 該 引 例 の 出 願 日 より 前 のものとするため 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 を 提<br />

出 することであると 主 張 した。 裁 判 所 は 拒 絶 を 取 り 消 し、 記 録 上 の 証 拠 全 体 は Dewey が 自 己<br />

の 知 識 を「 最 初 にして 初 めての 唯 一 の 発 明 者 」である Mathews から 得 ていることを 示 してい<br />

るとした。)<br />

136


2137 35 U.S.C. 102(f)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

何 人 も, 次 の 場 合 を 除 き, 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(f) 同 人 自 身 は, 特 許 を 得 ようとする 保 護 対 象 を 発 明 していなかった。<br />

出 願 人 が 他 の 者 から 発 明 を「 得 た」ことが 証 明 され 得 る 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づく 拒<br />

絶 が 適 切 である。Ex parte Kusko, 215 USPQ 972, 974 (Bd. App. 1981)(「 第 102 条 (f)に 基<br />

づく 決 定 要 因 の 全 部 とは 言 わなくてもそのほとんどが、 一 方 の 当 事 者 がもう 一 方 から 発 明 を<br />

得 たかどうかの 問 題 を 生 じる」)。<br />

継 承 は 継 承 者 への 特 許 発 行 を 妨 げるが 継 承 者 による 開 示 は 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づく 阻 却<br />

事 由 がない 限 り、 当 該 保 護 対 象 が 継 承 される 当 事 者 への 特 許 の 発 行 を 妨 げない。In re<br />

Costello, 717 F.2d 1346, 1349, 219 USPQ 389, 390-91 (Fed. Cir. 1983)(「 法 定 不 特 許 事<br />

由 とならない 先 行 技 術 の 引 例 は 次 の 2 つの 一 般 に 認 識 されている 方 法 によって 克 服 すること<br />

ができる」、すなわち 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 若 しくは「 当 該 関 連 開<br />

示 は 出 願 人 自 らの 成 果 の 記 述 であることを 示 す」 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づく 宣 誓 供<br />

述 書 である);In re Facius, 408 F.2d 1396, 1407, 161 USPQ 294, 302 (CCPA 1969)( 出 願<br />

人 により 特 許 権 者 の 注 意 を 引 いた 特 許 に 組 み 込 まれた、 従 って 特 許 権 者 により 出 願 人 から 継<br />

承 された 保 護 対 象 は、 出 願 人 がその 特 許 に 入 れられた 保 護 対 象 を 実 際 に 発 明 したのでない 限<br />

り、 出 願 人 に 対 して 使 用 することができる)。<br />

著 者 を 特 定 する 公 開 論 文 (MPEP 第 715.01 条 (c)) 又 は 発 明 者 を 特 定 する 特 許 (MPEP 第 715.01<br />

条 (a))が 存 在 しており、そこに 審 査 係 属 中 の 出 願 でクレームしている 保 護 対 象 が 開 示 されて<br />

いる 場 合 , 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づく 拒 絶 を 正 当 化 させるために、その 著 者 又 は 発 明 者 の 名<br />

称 はその 論 文 に 開 示 された 保 護 対 象 に 関 する 若 しくはその 特 許 に 開 示 されてはいるがクレー<br />

ムされていない 保 護 対 象 に 関 する 発 明 者 の 推 定 をもたらさない。しかし, 特 許 法 第 102 条 (f)<br />

に 基 づく 適 切 な 発 明 者 についての 照 会 に 応 答 して, 又 は 特 許 法 第 102 条 (a) 若 しくは(e)に 基<br />

づく 拒 絶 に 反 論 するために, 当 該 出 願 の 発 明 者 は、 当 該 論 文 の 著 者 若 しくは 当 該 特 許 の 発 明<br />

者 にかかわらず, 引 例 はその 著 者 又 は 特 許 権 者 から 得 られたのではなく 出 願 人 により 発 明 さ<br />

れた 保 護 対 象 を 開 示 するものであることに 間 違 いがないことを 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に<br />

基 づく 宣 誓 供 述 書 によって 納 得 のいく 証 明 を 提 出 するのは、 当 該 出 願 に 名 称 を 挙 げられる 発<br />

明 者 の 責 任 である。In re Katz, 687 F.2d 450, 455, 215 USPQ 14, 18 (CCPA 1982)( 照 会 は<br />

発 明 者 について 論 文 によって 生 じる 曖 昧 さを 明 確 にするために 適 切 であり,そして「[ 出 願<br />

人 ]が 論 文 に 開 示 され 当 該 出 願 にクレームされる 保 護 対 象 の・・・ 発 明 者 であるという 合 理 的 な<br />

結 論 につながる 納 得 のいく 証 明 」を 提 出 するのは 出 願 人 の 責 任 である)。<br />

継 承 は 他 人 による 完 全 な 着 想 及 び 継 承 するとされる 者 への 通 知 を 必 要 とする<br />

「クレームが、それぞれが 既 知 であると 考 えられ 得 るさまざまな 構 成 要 素 の 利 用 を 列 挙 する<br />

という 事 実 だけでは、 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づく 拒 絶 の 適 切 な 理 由 を 提 供 するものではな<br />

い。」Ex parte Billottet, 192 USPQ 413, 415 (Bd. App. 1976)。 継 承 は 他 人 による 完 全 な<br />

着 想 と、 選 ばれた 者 が 当 該 発 明 の 知 識 を 有 する 継 承 を 受 けたことを 証 明 し 得 る 任 意 の 日 以 前<br />

に 継 承 を 受 けた 当 事 者 に 対 し 手 段 のいかんを 問 わずその 着 想 を 通 知 することを 必 要 とする。<br />

Kilbey v. Thiele, 199 USPQ 290, 294 (Bd. Pat. Inter. 1978)。<br />

次 も 参 照 のこと。Price v. Symsek, 988 F.2d 1187, 1190, 26 USPQ2d 1031, 1033 (Fed. Cir.<br />

137


1993);Hedgewick v. Akers, 497 F.2d 905, 908, 182 USPQ 167, 169 (CCPA 1974)。「 完 全<br />

な 着 想 の 通 知 は 当 業 者 が 当 該 発 明 を 構 成 し 首 尾 よく 動 作 させ 得 るに 十 分 でなければならな<br />

い。」Hedgewick, 497 F.2d at908、182 USPQ at 169。 次 も 参 照 のこと。Gambro Lundia AB v.<br />

Baxter Healthcare Corp., 110 F.3d 1573, 1577, 42 USPQ2d 1378, 1383 (Fed. Cir. 1997)( 提<br />

出 された 継 承 における 争 点 は「その 通 知 によって 当 業 者 は 当 該 特 許 発 明 を 作 ることができる<br />

かどうか」にある。)<br />

継 承 を 主 張 する 当 事 者 は 現 実 の 実 施 化 、 公 知 の 継 承 又 は 本 国 内 における 継 承 を 証 明 する 必 要<br />

はない<br />

継 承 を 主 張 する 当 事 者 は「 継 承 を 明 らかにするために 現 実 の 実 施 化 を 証 明 する 必 要 はない」。<br />

Scott v. Brandenburger, 216 USPQ 326, 327 (Bd. App. 1982)。さらに、 第 (f) 項 の 出 願 は<br />

他 人 から 得 た 公 知 に 限 定 されず、また「 継 承 者 が 当 該 保 護 対 象 の 特 許 を 受 けることを 禁 ずる<br />

ためには 継 承 の 場 が 本 国 内 である 必 要 もない」。Ex parte Andresen, 212 USPQ 100, 102 (Bd.<br />

App. 1981)。<br />

発 明 の 優 先 権 と 区 別 される 継 承<br />

継 承 と 発 明 の 優 先 権 はともに 発 明 者 名 に 焦 点 を 合 わせるのであるが、 継 承 はオリジナリティ<br />

(すなわち、 保 護 対 象 を 発 明 した 者 )を 取 り 扱 うのに 対 して、 優 先 権 は 当 該 保 護 対 象 を 最 初 に<br />

発 明 した 当 事 者 に 焦 点 を 合 わせる。Price v. Symsek, 988 F.2d 1187, 1190, 26 USPQ2d 1031,<br />

1033 (Fed. Cir. 1993)<br />

特 許 法 第 102 条 (f)は 特 許 法 第 102 条 (a) 及 び 特 許 法 第 102 条 (e)が 拒 絶 の 法 的 根 拠 を 得 られな<br />

い 場 合 に 適 用 できる<br />

特 許 法 第 102 条 (f)は 引 例 と 出 願 の 日 付 の 関 係 に 対 する 照 会 を 必 要 としない。 従 って、 第 (a)<br />

項 及 び 第 (e) 項 が 調 査 される 出 願 の 有 効 日 の 後 に 有 効 日 を 有 する 引 例 に 適 用 できない 場 合 に<br />

適 用 することができる。しかし、 当 該 出 願 日 以 後 の 日 付 を 有 する 引 例 については、 引 例 の 保<br />

護 対 象 が 日 付 の 関 係 に 照 らして 出 願 人 から 得 られたという 証 拠 が 存 在 し 得 る。Ex parte Kusko,<br />

215 USPQ 972, 974 (Bd. App. 1981)。( 出 来 事 の 日 付 の 関 係 は 継 承 を 明 らかにする 上 で 重 要<br />

である。すなわち、 出 願 人 の 申 請 日 の 1 年 以 上 後 の 出 願 で、 出 願 人 以 外 の 個 人 を 文 筆 上 の 共<br />

著 者 として 挙 げているだけであれば、 唯 一 の 発 明 者 である 出 願 人 による 陳 述 を 無 効 とするに<br />

必 要 な 強 力 な 証 拠 とならない。)<br />

2137.01 発 明 者<br />

特 許 出 願 人 は 発 明 者 とする 要 件 は 米 国 特 許 法 に 特 有 であって 他 の 国 々に 共 通 しない。 従 って、<br />

外 国 の 出 願 人 は 実 際 の 発 明 者 の 名 前 を 挙 げることについて 米 国 の 法 律 を 誤 解 し、 特 許 法 第<br />

119 条 に 基 づき 先 の 外 国 出 願 に 優 先 権 を 主 張 する 米 国 出 願 の 発 明 者 名 に 誤 謬 を 引 き 起 こすこ<br />

とがある。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.48 条 (a)に 基 づく 請 求 は、 米 国 出 願 において 申 請 時 に 発 明 者<br />

の 名 前 を 挙 げる 際 の 誤 謬 の 訂 正 を 求 めるものである。MPEP 第 201.03 条 を 参 照 のこと。 外 国<br />

出 願 は、 米 国 出 願 及 び 特 許 法 第 119 条 の 優 先 出 願 との 間 の 発 明 者 名 特 定 のための 要 件 を 再 認<br />

識 させる 必 要 があるかもしれない。MPEP 第 201.13 条 を 参 照 のこと。<br />

米 国 出 願 に 名 前 を 挙 げられる 発 明 主 体 が、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.48 条 (a)に 基 づく 請 求 が 与 え<br />

138


られていない、 若 しくは 技 術 的 理 由 で 入 力 されていないときなど、 適 切 でないが 発 明 者 名 の<br />

誤 謬 に 関 する 自 認 が 反 駁 されていないと 判 断 された 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づく 拒 絶 を<br />

行 わねばならない。<br />

I. 特 許 法 施 行 規 則 第 1.63 条 に 基 づいて 宣 誓 又 は 宣 言 を 行 う 者 は 発 明 者 であると 推 定 される<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.63 条 に 基 づいて 宣 誓 又 は 宣 言 を 行 う 一 人 又 は 複 数 の 当 事 者 は 発 明 者 で<br />

あると 推 定 される。Driscoll v. Cebalo, 5 USPQ2d 1477, 1481 (Bd. Pat. Inter. 1982);<br />

In re DeBaun, 687 F.2d 459, 463, 214 USPQ 933, 936 (CCPA 1982)( 要 素 それ 自 体 の 発 明 者<br />

及 び 組 合 わせて 使 用 されるその 要 素 の 発 明 者 は 異 なることがある。「 組 合 せクレームの 存 在<br />

は 個 々の 要 素 又 はそのサブコンビネーションの 特 許 権 者 によって 発 明 者 名 を 証 明 するもので<br />

はない。 後 者 は 組 合 せを 別 にして 単 独 でクレームされない 場 合 とする。」( 引 用 In re Facius,<br />

408 F.2d 1396, 1406, 161 USPQ 294, 301 (CCPA 1969)( 強 調 は 原 文 のまま));Brader v.<br />

Schaeffer, 193 USPQ 627, 631 (Bd. Pat. Inter. 1976)( 発 明 者 名 の 訂 正 については、 異 論<br />

がない 場 合 「 誰 が 実 際 の 発 明 者 であるかについては 発 明 者 間 の 言 葉 が 信 じられるので」。)<br />

II. 発 明 者 は 発 明 の 着 想 に 資 さねばならねばならない<br />

発 明 者 名 の 定 義 は 次 のように 簡 潔 に 言 うことができる。<br />

「 発 明 者 名 を 確 認 する 際 に 入 口 となる 質 問 は 誰 が 当 該 発 明 を 考 え 出 したかである。 当 該 発 明<br />

の 着 想 に 資 していないならばその 者 は 発 明 者 ではない・・・。 発 明 者 がかかわる 限 りにおいて 実<br />

施 化 それ 自 体 は 重 要 ではない[ 同 時 の 着 想 及 び 実 施 化 を 除 いて、Fiers v. Revel, 984 F.2d<br />

1164, 1168, 25 USPQ2d 1601, 1604-05 (Fed. Cir. 1993)]。 発 明 者 となるには 着 想 に 資 さね<br />

ばならない。In re Hardee, 223 USPQ 1122, 1123 (Comm fr Pat. 1984)。 次 を 参 照 のこと。<br />

Board of Education ex rel. Board of Trustees of Florida State Univ. v. American<br />

Bioscience Inc., 333 F.3d 1330, 1340, 67 USPQ2d 1252, 1259 (Fed. Cir. 2003)(「 発 明<br />

は 着 想 を 要 す」。 化 合 物 の 発 明 者 名 に 関 して、 発 明 者 はクレームされる 具 体 的 化 合 物 の 着 想<br />

を 有 していなければならない。「 複 雑 な 化 合 物 の 基 に 予 想 される 生 物 学 的 特 性 に 関 する 一 般<br />

的 知 識 は、 具 体 的 にクレームされる 化 合 物 について 発 明 者 の 地 位 を 与 えるには 不 十 分 であ<br />

る。」);Ex parte Smernoff, 215 USPQ 545, 547 (Bd. App. 1982)(「それを 実 現 する 方 法<br />

ではなく、 実 現 される 成 果 の 着 想 を 示 唆 する 者 は 共 同 発 明 者 ではない。」) 着 想 若 しくは 実 施<br />

化 を 立 証 するためにはどのような 証 拠 が 求 められるかの 考 察 についてはMPEP 第 2138.04 条 乃<br />

至 第 2138.05 条 を 参 照 のこと。<br />

III. 発 明 者 が 当 該 発 明 を 行 う 上 でに 知 的 支 配 権 を 有 する 限 り、 着 想 、 示 唆 及 び 材 料 は 他 人<br />

から 採 用 することができる<br />

「 着 想 に 至 る 際 に[ 発 明 者 は] 多 くの 情 報 源 から 得 られる 着 想 及 び 材 料 を 検 討 し 採 用 すること<br />

ができる・・・。[ 例 えば] 従 業 員 からの 示 唆 若 しくは 雇 われたコンサルタントである・・・。 発 明<br />

者 が 自 らの 進 める 試 験 、 選 択 又 は 拒 否 に 至 るまで 発 明 を 行 う 作 業 について 知 的 支 配 権 を 維 持<br />

している 限 り・・・、そのような 示 唆 [ 又 は 材 料 ]が 発 明 者 を 困 難 な 状 況 から 解 き 放 つ 鍵 であるこ<br />

とを 証 明 したとしても。」Morse v. Porter, 155 USPQ 280, 283 (Bd. Pat. Inter. 1965)。<br />

次 も 参 照 のこと。New England Braiding Co. v.A.W. Chesterton Co., 970 F.2d 878, 883, 23<br />

USPQ2d 1622, 1626 (Fed. Cir. 1992)( 他 人 の 着 想 及 び 材 料 の 採 用 は 継 承 となることがある。)<br />

139


IV. 発 明 者 は 当 該 発 明 の 実 施 化 を 求 められない<br />

チームの 各 メンバーが 何 らかの 貢 献 をして 得 られたチームの 成 果 について、 発 明 の 物 理 的 構<br />

造 や 機 能 的 ステップなどの 発 明 の 着 想 に 現 実 に 貢 献 したメンバーと、 単 に 着 想 者 の 指 示 や 監<br />

督 の 下 で 行 動 したメンバーとに 分 けることは 困 難 である。Fritsch v. Lin, 21 USPQ2d 1737,<br />

1739 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)( 発 明 者 は「 哺 乳 類 の 宿 主 細 胞 に EPO 遺 伝 子 を 発 現 させ<br />

て 得 られる EPO 生 成 物 を 単 離 するための 手 順 の 開 発 に 一 切 関 与 しなかった。」しかし、「 発<br />

明 者 にとって 工 程 段 階 の 実 施 に 自 身 でかかわることは 重 要 ではない・・・それらの 段 階 の 実 施<br />

は 発 明 のスキルを 発 揮 する 必 要 がない。」In re DeBaun, 687 F.2d 459, 463, 214 USPQ 933,<br />

936 (CCPA 1982)(「 実 施 化 が 発 明 者 のために 行 われる 限 りにおいて、 発 明 者 が 発 明 を 実 施 化<br />

しなければならないという 要 件 はない。」)<br />

次 も 参 照 のこと。 Mattor v. Coolegem, 530 F.2d 1391, 1395, 189 USPQ 201, 204 (CCPA<br />

1976)( 口 頭 指 示 に 従 う 者 は 単 に 技 術 者 とみなされる。);Tucker v. Naito, 188 USPQ 260, 263<br />

(Bd. Pat. Inter. 1975)( 発 明 者 は「 発 明 を『 自 分 で』 構 築 し 試 験 する」 必 要 はない。);Davis<br />

v. Carrier, 81 F.2d 250, 252, 28 USPQ 227, 229 (CCPA 1936)( 非 発 明 者 の 仕 事 は、 他 人 に<br />

よって 考 案 された 計 画 の 詳 細 を 実 行 する 熟 練 工 の 仕 事 にすぎない。)<br />

V. 共 同 発 明 者 の 要 件<br />

特 定 の 出 願 の 発 明 主 体 は、 名 前 を 挙 げられた 発 明 者 のそれぞれによって 行 われるクレームの<br />

少 なくとも 一 つへの 何 らかの 貢 献 を 根 拠 とする。「 発 明 者 は,(1) 発 明 者 らが 物 理 的 に 一 緒<br />

に 又 は 同 時 に 仕 事 をしなかった,(2) 各 人 が 同 じ 種 類 又 は 同 じ 程 度 の 貢 献 をしなかった, 又 は<br />

(3) 各 人 が 特 許 のすべてのクレームの 保 護 対 象 に 貢 献 しなかったとしても 共 同 して 一 つの 特<br />

許 を 出 願 することができる。 特 許 法 第 116 条 。「 制 定 法 は、2 名 の 発 明 者 が 少 しも 接 触 して<br />

おらずお 互 いの 成 果 にまったく 気 づいていない 場 合 に 彼 らが『 共 同 発 明 者 』となることがで<br />

きると 暗 示 してもいない。」 求 められることは「ある 量 の 協 力 若 しくは 関 係 である。」<br />

すなわち、「 第 116 条 に 基 づく 共 同 発 明 者 となる 者 には 共 同 様 態 の 何 らかの 要 素 がなければ<br />

ならない。 例 えば、 協 働 すなわち 共 通 の 指 示 の 下 で 働 く、 一 方 の 発 明 者 は 関 連 する 報 告 書 を<br />

確 認 してそれをもとに 理 論 を 組 み 立 てる、 若 しくは 会 議 で 他 方 の 提 案 を 聞 くなどである。」<br />

Kimberly-Clark Corp. v. Procter & Gamble Distrib. Co., 973 F.2d 911, 916-17, 23 USPQ2d<br />

1921, 1925-26 (Fed. Cir. 1992);Moler v. Purdy, 131 USPQ 276, 279 (Bd. Pat. Inter.<br />

1960)( 発 明 の 概 念 が 両 者 [ 共 同 発 明 者 ]に 同 時 に 生 ずる 必 要 はない。)<br />

各 共 同 発 明 者 は 当 該 発 明 の 着 想 に 寄 与 しなければならない。 共 同 発 明 者 が 特 許 のすべてのク<br />

レームにかかわる 必 要 はない。 一 つのクレームに 寄 与 すれば 十 分 である。「ミーンズ・プラ<br />

ス・ファンクションクレーム 要 素 のいずれの 開 示 された 手 段 についてもその 貢 献 者 は、その<br />

クレームに 関 して 共 同 発 明 者 となる。ただし、 唯 一 の 発 明 者 名 を 主 張 する 者 がその 手 段 につ<br />

いての 貢 献 が 単 に 唯 一 の 発 明 者 の 幅 広 い 概 念 の 実 施 化 だけであることを 証 明 することができ<br />

ない 場 合 とする。」Ethicon Inc. v. United States Surgical Corp., 135 F.3d 1456, 1460-63,<br />

45 USPQ2d 1545, 1548-1551 (Fed. Cir. 1998)( 明 細 書 の 2 つの 代 替 構 造 のなかの 1 つに 寄 与<br />

し、クレーム 限 定 において「 抑 留 手 段 」を 定 義 した 電 気 技 師 は 共 同 発 明 者 であると 判 示 され<br />

た。)<br />

140


VI. 発 明 者 は、 少 なくとも 1 名 の 発 明 者 を 共 通 にしていても、 異 なる 発 明 主 体 があれば「 他<br />

人 」となる<br />

「 共 同 出 願 又 は 共 有 特 許 及 び 共 同 発 明 者 の 一 人 による 出 願 又 は 特 許 は、 異 なる 法 的 主 体 [に<br />

よるもの]である。 従 って、 先 願 の 特 許 としての 発 行 はそれが 開 示 するすべてについて 引 例<br />

となる」(Ex parte Utschig, 156 USPQ 156, 157 (Bd. App. 1966))。ただし、 次 に 掲 げる 各<br />

号 の 場 合 を 除 く。<br />

(A) 後 願 においてクレームされた 発 明 は 特 許 法 第 120 条 ( 発 明 主 体 が 同 一 であるというより<br />

も 発 明 者 の 重 複 が 許 される)に 基 づく 先 願 の 利 益 が 認 められる。この 場 合 、 特 許 法 第 102 条<br />

(e)に 基 づく 拒 絶 は 排 除 される。 次 を 参 照 のこと。 Applied Materials Inc. v.Gemini<br />

Research Corp., 835 F.2d 279, 281, 15 USPQ2d 1816, 1818 (Fed. Cir. 1988)(「 出 願 が 異<br />

なる 発 明 主 体 の 名 前 を 挙 げているという 事 実 は 必 ずしも 特 許 がその 特 許 を 先 行 技 術 とするも<br />

のではない。」);および、<br />

(B) 他 人 により 開 発 された 保 護 対 象 であってそのクレームされた 保 護 対 象 が、 当 該 発 明 が 行<br />

われた 時 点 で、 同 一 人 物 によって 所 有 されていた、 又 は 同 一 人 物 への 譲 渡 義 務 を 前 提 として<br />

いた、 又 は 特 許 法 第 103 条 (c)(2) 及 び(c)(3)の 要 件 を 満 たす 共 同 研 究 合 意 の 対 象 であった。<br />

この 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (f)/ 第 103 条 又 は 第 102 条 (g)/ 第 103 条 若 しくは 第 102 条 (e)<br />

/ 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 は、 求 められた 証 拠 が 当 該 出 願 に 記 録 された 時 点 で、1999 年 11 月<br />

29 日 以 降 の 出 願 について 又 は 2004 年 12 月 10 日 以 降 係 属 中 である 出 願 について、 特 許 法 第<br />

103 条 (c)により 排 除 される。MPEP 第 706.02 条 (l) 及 び 第 06.02 条 (l)(1)を 参 照 のこと。<br />

少 なくとも 1 名 の 発 明 者 を 共 通 にし、 異 なる 発 明 主 体 を 含 む「 他 人 」による 発 明 に 関 する 判<br />

例 については Ex parte DesOrmeaux, 25 USPQ2d 2040 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992) ( 引<br />

例 特 許 と 係 属 中 の 出 願 に 共 通 した 発 明 者 がいることは、 引 例 の 発 明 主 体 が 特 許 法 第 102 条<br />

(e)の 意 義 における「 他 人 」に 属 するものであるとの 判 断 を 排 除 するものではない)、また MPEP<br />

第 2136.04 条 において、 特 許 法 第 102 条 (e)に 基 づき 利 用 できる 先 行 技 術 の 議 論 を 参 照 のこ<br />

と。<br />

2137.02 特 許 法 第 103 条 (c)の 適 用 可 能 性<br />

特 許 法 第 103 条 (c)は、 他 人 により 開 発 された 保 護 対 象 であって、そうでなければ 特 許 法 第<br />

102 条 (f)に 基 づき 適 格 とされる 場 合 、 審 査 中 の 出 願 のクレームされた 発 明 が、 当 該 発 明 が 行<br />

われた 時 点 で、 同 一 人 物 によって 所 有 されていた、 同 一 人 物 への 譲 渡 義 務 を 前 提 としていた、<br />

又 は 特 許 法 第 103 条 (c)(2) 及 び(c)(3)の 要 件 を 満 たす 共 同 研 究 契 約 の 対 象 であった 場 合 、 特<br />

許 法 第 102 条 第 (f) 項 は 特 許 性 を 排 除 しないことを 規 定 している。MPEP 第 706.02 条 (l) 及 び<br />

2146 条 を 参 照 のこと。<br />

141


2138 特 許 法 第 102 条 (g)<br />

特 許 法 第 102 条 特 許 要 件 ; 新 規 性 及 び 特 許 を 受 ける 権 利 の 喪 失<br />

次 に 該 当 する 場 合 を 除 き, 何 人 も 特 許 を 受 ける 権 利 を 有 する。<br />

(g)(1) 第 135 条 又 は 第 291 条 に 基 づいて 行 われるインターフェアレンス 手 続 において,これ<br />

に 関 与 する 他 の 発 明 者 が, 第 104 条 によって 許 容 される 範 囲 で, 当 該 人 の 発 明 の 前 に,その<br />

発 明 が 当 該 他 の 発 明 者 によって 行 われ,かつ, 放 棄 , 秘 匿 若 しくは 隠 蔽 されていなかった 場<br />

合 , 又 は(2) 当 該 人 の 発 明 の 前 に,その 発 明 が 合 衆 国 において 他 の 発 明 者 によって 行 われ, 同<br />

人 によって 放 棄 , 秘 匿 若 しくは 隠 蔽 されていなかったことが 証 明 される 場 合 。 本 項 に 基 づく<br />

発 明 の 優 先 度 を 判 断 する 際 , 発 明 の 着 想 及 び 実 施 化 それぞれの 日 のみならず, 最 初 に 着 想 し、<br />

最 後 に 実 施 化 したの 者 による、 他 者 による 着 想 よりも 前 の 時 期 からの 合 理 的 な 勤 勉 性 も、 考<br />

慮 されねばならない。<br />

着 想 、 実 施 化 及 び 勤 勉 性 などの 特 許 法 第 102 条 (g)の 論 点 は、インターフェアレンスの 問 題 に<br />

もっと 一 般 的 に 適 用 されるが、これらはその 他 の 文 脈 においても 生 ずる。<br />

特 許 法 第 102 条 (g)は 次 に 掲 げる 場 合 の 査 定 系 拒 絶 の 根 拠 とすることができる。(1) 争 点 とな<br />

る 保 護 対 象 が 出 願 人 の 発 明 の 前 に 他 人 によって 実 際 に 実 施 化 されており、(2) 放 棄 、 秘 匿 又 は<br />

隠 蔽 がない。 次 の 例 を 参 照 のこと。 Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d<br />

1200, 1205, 18 USPQ2d 1016, 1020 (Fed. Cir. 1991);New Idea Farm Equipment Corp. v.<br />

Sperry Corp., 916 F.2d 1561, 1566, 16 USPQ2d 1424, 1428 (Fed. Cir. 1990);E.I. DuPont<br />

de Nemours & Co. v. Phillips Petroleum Co., 849 F.2d 1430, 1434, 7 USPQ2d 1129, 1132<br />

(Fed. Cir. 1988);Kimberly-Clark v. Johnson & Johnson, 745 F.2d 1437, 1444-46, 223 USPQ<br />

603, 606-08 (Fed. Cir. 1984)。 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づき 先 行 技 術 とみなすには、 当 該 保<br />

護 対 象 が 実 際 に 実 施 化 されていた 証 拠 がなければならず、 着 想 のみでは 十 分 でない。<br />

Kimberly-Clark, 745 F.2d at 1445、223 USPQat 607 を 参 照 のこと。 特 許 出 願 は 擬 制 的 実 施<br />

化 であるが、 出 願 はそれ 自 体 がその 出 願 で 開 示 する 保 護 対 象 の、 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づく<br />

査 定 系 拒 絶 の 根 拠 を 提 供 するために 必 要 とされるようには、 現 実 の 実 施 化 を 証 明 するために<br />

必 要 な 証 拠 を 提 供 することはできない。 従 って、 現 実 の 実 施 化 を 証 明 する 証 拠 が 欠 如 ( 査 定 系<br />

審 査 の 間 に 利 用 可 能 とならない)している 場 合 は、 米 国 特 許 出 願 公 開 又 は 特 許 の 開 示 に 特 許 法<br />

第 102 条 (g)ではなく 特 許 法 第 102 条 (e)を 適 用 する。 例 えば、 In re Zletz, 893 F.2d 319,<br />

323, 13 USPQ2d 1320, 1323 (Fed. Cir. 1990)( 引 例 の 米 国 特 許 における 開 示 は 特 許 法 第 102<br />

条 (g)ではなく 特 許 法 第 102 条 (e)を 適 用 する。)<br />

さらに、 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づいてのみ 先 行 技 術 としての 資 格 を 得 る 保 護 対 象 もまた、 特<br />

許 法 第 103 条 に 基 づく 査 定 系 拒 絶 の 根 拠 とすることができる。 次 を 参 照 のこと。In re Bass,<br />

474 F.2d 1276, 1283, 177 USPQ 178, 183 (CCPA 1973)( 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 を 利 用 し<br />

ようとしてうまくいかず、 出 願 人 は 特 許 として 発 行 された 同 時 係 属 出 願 のサブコンビネーシ<br />

ョン 審 査 が 結 合 審 査 よりも 早 いと 考 えた。)しかし、 特 許 法 第 103 条 (c)は、 他 人 により 開 発<br />

された 保 護 対 象 であって、そうでなければ 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づき 適 格 とされる 場 合 、 審<br />

査 中 の 出 願 のクレームされた 発 明 が、 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 で、 同 一 人 物 によって 所 有 さ<br />

れていた、 同 一 人 物 への 譲 渡 義 務 を 前 提 としていた、 又 は 特 許 法 第 103 条 (c)(2) 及 び(c)(3)<br />

の 要 件 を 満 たす 共 同 研 究 契 約 の 対 象 であった 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (f)は 特 許 性 を 排 除 しない<br />

ことを 規 定 している。MPEP 第 706.02 条 (l) 及 び 2146 条 を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 102 条 (g)のインターフェアレンス 問 題 の 文 脈 外 の 着 想 、 実 施 化 及 び 勤 勉 性 などの 争<br />

142


点 に 関 する 追 加 例 については 次 を 参 照 のこと。In re Costello, 717 F.2d 1346, 219 USPQ 389<br />

(Fed. Cir. 1983)( 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 の 文 脈 で 着 想 の 概 念 及 び 擬 制 的 実 施 化 を 考 察 )、<br />

及 び、Kawai v. Metlesics, 480 F.2d 880, 178 USPQ 158 (CCPA 1973)( 特 許 法 第 119 条 に 基<br />

づく 優 先 権 に 関 する 擬 制 的 実 施 化 の 審 決 は 特 許 法 第 101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 の 要 件 を 満 た<br />

すことを 必 要 とする。)<br />

2138.01 インターフェアレンス 手 続 実 務<br />

I. 特 許 法 第 102 条 (g)はインターフェアレンス 手 続 実 務 の 根 拠 をなす<br />

特 許 法 第 102 条 (g)は 両 当 事 者 間 の 発 明 の 優 先 権 を 決 定 するインターフェアレンス 手 続 実 務<br />

の 根 拠 となる。Bigham v. Godtfredsen, 857 F.2d 1415, 1416, 8 USPQ2d 1266, 1267 (Fed.<br />

Cir. 1988)、 特 許 法 第 条 135 条 、 特 許 法 施 行 規 則 第 41 章 D 及 び E、 並 びに MPEP 第 2300 章 を<br />

参 照 のこと。インターフェアレンスは、 手 続 きにかかわる 当 事 者 間 のどちらが 先 発 明 である<br />

かを 決 定 するために 行 われる 当 事 者 系 手 続 であり、 異 なる 発 明 者 の 名 前 を 挙 げる 2 以 上 の 係<br />

属 中 の 出 願 若 しくは 1 以 上 の 係 属 中 の 出 願 及 び 異 なる 発 明 者 の 名 前 を 挙 げる 1 以 上 の 失 効 し<br />

ていない 特 許 が 関 係 する。 合 衆 国 は 先 願 主 義 ではなく 先 発 明 主 義 を 有 する 点 で 諸 外 国 とは 異<br />

なる。Paulik v. Rizkalla, 760 F.2d 1270, 1272, 226 USPQ 224, 225 (Fed. Cir. 1985)(Rich<br />

判 事 による 同 意 意 見 での 同 項 立 法 経 緯 の 確 認 )。 多 くの 中 で 同 じ 頃 に 発 明 を 実 施 化 できた 最 初<br />

の 者 が 特 許 を 得 られる 唯 一 の 当 事 者 となる。Radio Corp. of America v. Radio Eng fg Labs.,<br />

Inc., 293 U.S. 1, 2, 21 USPQ 353, 353-4 (1934)。ただし、 他 の 者 が 最 初 に 着 想 していて、<br />

第 2 の 着 想 者 がその 分 野 に 参 入 する 直 前 から 最 初 の 着 想 者 の 実 施 化 まで 勤 勉 性 をもって 後 で<br />

間 に 合 うような 実 施 化 につなぐ 場 合 を 除 く。Hull v. Davenport, 90 F.2d 103, 105, 33 USPQ<br />

506, 508 (CCPA 1937)この 点 を 解 説 する 下 の 優 先 権 期 間 の 下 図 を 参 照 のこと。インターフェ<br />

アレンスの 結 果 が 決 定 すると、 敗 訴 当 事 者 によりクレームされ、インターフェアレンスの 理<br />

由 となった 保 護 対 象 は 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づき 拒 絶 される。ただし、 発 明 前 に 証 明 された<br />

行 為 が 本 国 内 でなかった 場 合 を 除 く。<br />

特 許 法 第 101 条 は, 何 人 も 発 明 又 は 発 見 をする 者 はその 特 定 の 発 明 又 は 発 見 について 特 許 を<br />

得 ることができる 当 事 者 であることを 求 めていることに 留 意 すること。 特 許 法 第 111 条 ( 単 独<br />

出 願 人 ) 又 は 特 許 法 第 116 条 ( 複 数 出 願 人 )は、 実 際 の 発 明 者 は 特 許 を 申 請 する 当 事 者 であるか、<br />

若 しくは 特 許 はその 発 明 者 のために 申 請 されるという 要 件 を 規 定 している。 出 願 人 が 他 の 者<br />

から 発 明 を「 得 た」ことが 証 明 され 得 る 場 合 、 特 許 法 第 102 条 (f)に 基 づく 拒 絶 が 適 切 である。<br />

Ex parte Kusko, 215 USPQ 972, 974 (Bd. App. 1981)(「 第 102 条 (f)に 基 づく 決 定 要 因 の 全<br />

部 とは 言 わなくてもそのほとんどが、 一 方 の 当 事 者 がもう 一 方 から 発 明 を 得 たかどうかの 問<br />

題 を 生 じる」);Price v. Symsek, 988 F.2d 1187, 1190, 26 USPQ2d 1031, 1033 (Fed. Cir.<br />

1993) 継 承 と 発 明 の 優 先 権 はともに 発 明 者 に 焦 点 を 合 わせるのであるが、 継 承 はオリジナリテ<br />

ィ(すなわち、 保 護 対 象 を 発 明 した 者 )を 取 り 扱 うのに 対 して、 優 先 権 は 当 該 保 護 対 象 を 最 初<br />

に 発 明 した 当 事 者 に 焦 点 を 合 わせる。)<br />

II. 優 先 権 期 間 の 図<br />

次 に 掲 げる 優 先 権 期 間 の 図 でいくつかの 状 況 において 発 明 に 与 えられる 優 先 権 を 示 す。 時 系<br />

列 チャートはインターフェアレンス 手 続 に 適 用 するとともに、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に<br />

基 づき 特 許 法 第 102 条 (a) 又 は 第 102 条 (e)に 基 づく 先 行 技 術 として 利 用 できる 引 例 を 先 行 さ<br />

143


せるために 提 出 される 宣 言 書 若 しくは 宣 誓 供 述 書 にも 適 用 可 能 である。しかし、 特 許 法 施 行<br />

規 則 第 1.131 条 の 文 脈 において 出 願 人 は、 現 実 の 実 施 化 の 後 、 特 許 出 願 をするまでの 期 間 の<br />

長 さはインターフェアレンス 手 続 における 以 外 に 何 の 関 係 もないので、 当 該 発 明 は 現 実 の 実<br />

施 化 の 時 から 擬 制 的 実 施 化 まで 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 されていないことを 証 明 する 必 要 がない<br />

ことに 留 意 すること。Paulik v. Rizkalla, 760 F.2d 1270, 226 USPQ 224 (Fed. Cir. 1985)。<br />

MPEP 第 2138.03 条 における 放 棄 、 秘 匿 及 び 隠 蔽 についての 考 察 を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づく 分 析 の 目 的 上 、 先 行 させるべき 引 例 の 着 想 及 び 実 施 化 は<br />

共 に 国 内 特 許 又 は 外 国 特 許 の 有 効 な 出 願 日 、 若 しくは 印 刷 刊 行 物 の 日 付 であるとみなす。<br />

図 において、C= 着 想 、R= 実 施 化 ( 現 実 又 は 擬 制 的 のいずれか)、Ra= 現 実 の 実 施 化 、Rc= 擬 制 的<br />

実 施 化 、TG= 勤 勉 性 の 開 始<br />

例 1<br />

A はインターフェアレンスにおいて 優 先 権 を 与 えられる。すなわち、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131<br />

条 に 基 づき 提 出 される 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 に 照 らして 引 例 として B に 先 行 する。なぜなら、<br />

A は B の 前 に 当 該 発 明 を 着 想 し、B が 当 該 発 明 を 実 施 化 する 以 前 に 当 該 発 明 を 擬 制 的 に 実 施 化<br />

した。 着 想 日 が 両 発 明 者 A 及 び B について 同 一 である 場 合 、 同 一 の 結 果 となる。<br />

例 2<br />

A はインターフェアレンスにおいて 優 先 権 を 与 えられる。すらわち、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131<br />

条 に 基 づき 提 出 される 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 に 照 らして 引 例 として B に 先 行 する。ただし、A<br />

は B の 前 に 当 該 発 明 を 着 想 したので、B がその 発 明 を 実 施 化 した 後 であったとしても A が TD(B<br />

の 着 想 直 前 の 点 )から Rc まで 合 理 的 勤 勉 性 を 証 明 することができ、かつ、 前 向 きに 熱 心 にそ<br />

の 発 明 を 実 施 化 した 場 合 とする。<br />

例 3<br />

A は Bの 前 に 当 該 発 明 を 着 想 し、B が 当 該 発 明 を 実 施 化 する 以 前 に 当 該 発 明 を 現 実 に 実 施 化 し、<br />

144


当 該 発 明 を 現 実 に 実 施 化 した 後 及 び 当 該 発 明 を 前 向 きに 実 施 化 する 前 に 当 該 発 明 を 放 棄 、 秘<br />

匿 又 は 隠 蔽 しなかったので、A は Ra から Rc まで 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 がない 場 合 インターフ<br />

ェアレンスにおいて 優 先 権 を 与 えられる。<br />

A は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づき 提 出 される 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 に 照 らして 引 例 と<br />

して B に 先 行 する。なぜなら、A は B の 前 に 当 該 発 明 を 着 想 し、B が 当 該 発 明 を 実 施 化 する 以<br />

前 に 当 該 発 明 を 実 施 化 した。<br />

例 4<br />

A は B の 前 に 当 該 発 明 を 着 想 し、(B が 当 該 発 明 を 実 施 化 した 後 ) 熱 心 に 当 該 発 明 を 現 実 に 実 施<br />

化 し、 当 該 発 明 を 実 際 に 実 施 化 した 後 及 び 当 該 発 明 を 前 向 きに 実 施 化 する 前 に 当 該 発 明 を 放<br />

棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 しなかったので、A は、TD(B の 着 想 直 前 の 点 )から Ra まで 合 理 的 勤 勉 性 を<br />

示 すことができ、Ra から Rc まで 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 がない 場 合 インターフェアレンスにお<br />

いて 優 先 権 を 与 えられる。<br />

A は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づき 提 出 される 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 に 照 らして 引 例 と<br />

して B に 先 行 する。なぜなら、A は B の 前 に 当 該 発 明 を 着 想 し、B が 当 該 発 明 を 実 施 化 した 後<br />

であったとしても 熱 心 に 現 実 に 当 該 発 明 を 実 施 化 した。<br />

III. 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 はインターフェアレンス 手 続 に 適 用 しない<br />

インターフェアレンス 手 続 実 務 は、 当 該 特 許 が 同 一 の 特 許 性 のある 発 明 をクレームしている<br />

国 内 特 許 でない 限 り、 特 許 法 第 102 条 (a) 又 は(e)に 基 づき 適 用 される 特 許 若 しくは 引 用 文 献<br />

の 有 効 日 より 前 の 現 実 の 発 明 の 日 を 証 明 することを 出 願 人 に 認 める 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131<br />

条 に 基 づく 査 定 系 手 続 実 務 を 除 外 するように 作 用 する。Ex parte Standish, 10 USPQ2d 1454,<br />

1457 (Bd. Pat. App. & Inter. 1988)( 国 内 特 許 でクレームされる「 同 一 の 特 許 性 のある 発 明 」<br />

に 対 する 出 願 クレームは、 当 該 特 許 に 先 行 するには 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づく 宣 誓<br />

供 述 書 ではなくインターフェアレンスを 要 求 する。「 同 一 の 特 許 性 のある 発 明 」という 用 語<br />

は 当 該 特 許 クレームに 記 載 される 保 護 対 象 によって 新 規 性 を 喪 失 するか、 若 しくは 自 明 であ<br />

るクレームを 網 羅 する。 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づいてのみ 先 行 技 術 として 利 用 できる 保 護 対<br />

象 は、 当 該 出 願 人 が 自 らの 発 明 を 行 う 前 に 行 った 定 義 によるものであり、 従 って 特 許 法 施 行<br />

規 則 第 1.131 条 に 基 づきそれ 以 上 の 審 査 に 開 示 されない。<br />

IV. インターフェアレンスのロスト・カウントそれ 自 体 は 法 定 先 行 技 術 とならない<br />

インターフェアレンス・カウントの 敗 北 のみでその 保 護 対 象 を 敗 訴 当 事 者 の 法 定 先 行 技 術 と<br />

しない。しかし、 特 許 法 第 102 条 に 基 づく 先 行 技 術 として 利 用 可 能 なロスト・カウントの 保<br />

護 対 象 は 単 独 で、 若 しくは 特 許 法 第 103 条 に 基 づくその 他 の 引 例 と 組 み 合 わせて 使 用 するこ<br />

とができる。しかしながら 次 を 参 照 のこと。In re Deckler, 977 F.2d 1449, 24 USPQ2d 1448<br />

(Fed. Cir. 1992)( 既 判 事 項 及 び 争 点 遮 断 効 の 原 則 に 基 づいて Deckler は、ロスト・カウント<br />

145


の 保 護 対 象 が 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 自 明 性 による 拒 絶 に 使 用 できなかったけれども,イン<br />

ターフェアレンスで 敗 訴 したクレームと 特 許 性 では 区 別 がつかないクレームに 権 利 を 与 えら<br />

れなかった。)<br />

2138.02 「 発 明 は 本 国 内 でなされた」<br />

着 想 及 び 実 施 化 が 存 在 する 場 合 に 発 明 はなされる。Dunn v. Ragin, 50 USPQ 472, 474 (Bd. Pat.<br />

Inter. 1941)。 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づく 先 行 技 術 は 完 成 した 発 明 に 限 定 される。In re Katz,<br />

687 F.2d 450, 454, 215 USPQ 14, 17 (CCPA 1982)( 論 文 の 発 表 のみでは 擬 制 的 実 施 化 とは 見<br />

なされず、 従 ってその 開 示 は 特 許 法 第 102 条 (g)の 意 義 において 発 明 が 行 われた 証 拠 とはなら<br />

ない。)<br />

特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づく 保 護 対 象 は 本 国 内 で 行 われた 場 合 に 限 って 利 用 することができ<br />

る。35 U.S.C. 104. Kondo v.Martel, 220 USPQ 47 (Bd. Pat. Inter. 1983)( 着 想 、 実 施 化<br />

及 び 勤 勉 性 の 行 為 は 本 国 内 において 実 証 されねばならない。)Compare Colbert v.Lofdahl, 21<br />

USPQ2d 1068, 1071 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)( 発 明 が 外 国 で 実 施 に 移 され、その 発 明<br />

の 知 識 が 本 国 に 持 ち 込 まれて 他 の 者 に 開 示 される 場 合 、その 発 明 者 は 外 国 で 行 われたその 成<br />

果 から 利 益 を 得 ることはできず、かかる 知 識 はその 発 明 の 単 なる 着 想 の 証 拠 でしかない。)<br />

特 許 法 第 102 条 (g)(1)に 従 って 特 許 法 第 135 条 又 は 第 291 条 に 基 づくインターフェアレンス<br />

手 続 に 係 わる 当 事 者 は、 特 許 法 第 104 条 に 基 づき 発 明 日 を 立 証 することができる。<br />

GATT(Public Law 103-465, 108 Stat. 4809 (1994)) 及 び NAFTA (Public Law 103-182, 107 Stat.<br />

2057 (1993))により 修 正 されたとおり 特 許 法 第 104 条 は、 出 願 人 は NAFTA 加 盟 国 においては<br />

1993 年 12 月 8 日 以 降 、WTO 加 盟 国 においては 1996 年 1 月 1 日 以 降 、 発 明 日 を 立 証 すること<br />

ができる。 従 って、インターフェアレンス・カウントは NAFTA 又 は WTO 加 盟 国 内 の 当 事 者 の<br />

1 つにより 発 明 の 立 証 となる 理 由 に 基 づき 勝 訴 若 しくは 敗 訴 することがあり、それによって、<br />

そのような 保 護 対 象 が 特 許 法 第 102 条 (g)に 基 づく 法 定 先 行 技 術 として 利 用 できないにもか<br />

かわらず、そのカウントの 保 護 対 象 を 既 判 事 項 及 び 争 点 遮 断 効 の 原 則 に 基 づく 他 方 当 事 者 へ<br />

の 特 許 性 のないものとすることがある。 法 定 先 行 技 術 ではないロスト・インターフェアレン<br />

ス・カウントについては MPEP 第 2138.01 条 を 参 照 のこと。<br />

2138.03 「 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 していない 他 人 による」<br />

特 許 法 第 102 条 (g)は 特 許 法 第 103 条 の 意 義 において、 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 していない 他 人 の<br />

従 来 の 発 明 を 先 行 技 術 として 利 用 できるようにする。In re Bass, 474 F.2d 1276, 177 USPQ<br />

178 (CCPA 1973); In re Suska, 589 F.2d 527, 200 USPQ 497 (CCPA 1979)( 秘 匿 及 び 隠 蔽 の<br />

原 則 を 適 用 する 結 果 、 隠 蔽 しなかった(が 事 実 上 の 最 後 の 発 明 者 であった) 発 明 者 が 法 律 的 に<br />

最 初 に 発 明 したとして 扱 われ、また 秘 匿 若 しくは 隠 蔽 した 事 実 上 最 初 の 発 明 者 は 後 の 発 明 者<br />

として 扱 われた。) 事 実 上 の 最 初 の 発 明 者 は 秘 匿 及 び 隠 蔽 によって、 優 先 権 上 の 目 的 のためば<br />

かりでなく 先 行 技 術 としてカウントの 発 明 を 回 避 する 目 的 のためにも、 発 明 の 実 際 の 日 に 依<br />

拠 する 権 利 を 失 った。<br />

「 裁 判 所 は 一 貫 して、 発 明 は 完 成 していたとしても 完 成 後 の 合 理 的 期 間 内 にその 発 明 を 公 的<br />

に 知 らしめる 方 法 が 取 られないならば、 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 されたとみなされると 判 定 して<br />

いる。 従 って、 特 許 出 願 を 行 わない、 当 該 発 明 を 公 に 流 布 される 文 書 で 述 べない、 若 しくは<br />

当 該 発 明 を 公 に 使 用 しないことは 放 棄 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 を 構 成 すると 判 断 されている。」Correge<br />

146


v. Murphy, 705 F.2d 1326, 1330, 217 USPQ 753, 756 (Fed. Cir. 1983)( 引 用 International<br />

Glass Co. v. United States, 408 F.2d 395, 403, 159 USPQ 434, 441 (Ct. Cl. 1968))。<br />

Correge において、 発 明 は 現 実 に 実 施 に 移 され 7 月 後 当 該 発 明 の 公 開 があって、その 8 月 後<br />

に 特 許 出 願 が 行 われた。 裁 判 所 は、 公 開 後 1 年 以 内 に 特 許 出 願 が 行 われたことは 不 当 な 遅 延<br />

ではなく、 従 って 放 棄 の 推 論 を 回 避 するため 合 理 的 勤 勉 性 は 現 実 の 実 施 化 の 日 と 公 開 の 間 に<br />

限 って 証 明 されねばならないと 判 定 した。<br />

インターフェアレンス 手 続 中 、 秘 匿 又 は 隠 蔽 の 推 定 は 特 許 出 願 の 遅 延 から 生 じるかもしれな<br />

い<br />

発 明 が 現 実 に 実 施 に 移 されると、 発 明 者 は 特 許 出 願 の 申 請 を 急 ぐ 必 要 はない。Shindelar v.<br />

Holdeman, 628 F.2d 1337, 1341, 207 USPQ 112, 116 (CCPA 1980)。 現 実 の 実 施 化 の 後 の 特<br />

許 出 願 を 申 請 するためにかかった 時 間 の 長 さはインターフェアレンス 手 続 を 除 いて 重 要 では<br />

ない。Paulik v. Rizkalla, 760 F.2d 1270, 1271, 226 USPQ 225, 226 (Fed. Cir. 1985)( 秘<br />

匿 又 は 隠 蔽 は 意 図 的 であるかもしれず、また 特 許 出 願 申 請 の「 長 過 ぎる」 遅 延 からの 推 論 で<br />

生 じるかもしれない。)Peeler v. Miller, 535 F.2d 647, 656, 190 USPQ 117,124 (CCPA<br />

1976)(「 他 に 何 もない 単 なる 遅 延 だけで 秘 匿 又 は 隠 蔽 を 立 証 するには 十 分 でない。」「ここ<br />

で 判 断 しようとしていることは Monsanto の 遅 延 が『 単 なる 遅 延 』ではないこと、 及 び Monsanto<br />

の 遅 延 の 正 当 化 は 過 剰 な 遅 延 によって 生 まれた 秘 匿 の 推 論 を 克 服 するには 不 十 分 であること<br />

である。」「 単 なる」という 語 は 遅 延 の 長 さに 限 界 が 全 くないと 暗 示 しているのではない。<br />

遅 延 が「 単 なる」ものであるかどうかは 個 別 によってのみ 判 断 される。)<br />

インターフェアレンスの 後 順 位 当 事 者 が、 最 初 の 発 明 者 であることを 実 証 するために 現 実 の<br />

実 施 化 に 依 拠 する 場 合 で、 後 順 位 当 事 者 の 主 張 する 実 施 化 の 日 とその 出 願 との 間 の 時 間 の 空<br />

白 が 不 当 に 長 い 場 合 は、その 空 白 が 後 順 位 当 事 者 は 実 際 に 当 該 発 明 を 秘 匿 又 は 隠 蔽 したとい<br />

う 推 論 を 引 き 起 こすので、 後 順 位 当 事 者 は 先 の 現 実 の 実 施 化 に 依 拠 することができなくなる。<br />

Young v. Dworkin, 489 F.2d 1277, 1280 n.3, 180 USPQ 388, 391 n.3 (CCPA 1974)( 秘 匿 及<br />

び 隠 蔽 の 争 点 は 臨 機 応 変 に 取 り 扱 わねばならない。)<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 が 発 明 者 に 起 因 する 必 要 はない<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 は 発 明 者 に 起 因 する 必 要 はない。Peeler v. Miller, 535 F.2d 647, 653-54, 190<br />

USPQ 117, 122 (CCPA 1976)(「 発 明 者 が・・・ 自 らの 成 果 を 完 成 してから 4 年 遅 れて・・・ 譲 受 人<br />

である 雇 用 者 が 特 許 出 願 を 申 請 する 時 間 は、 最 初 に 出 願 した 当 事 者 とのインターフェアレン<br />

スにおいて、 一 見 したところでは、 不 当 な 長 さである」);Shindelar v. Holdeman, 628 F.2d<br />

1337, 1341-42, 207 USPQ 112, 116-17 (CCPA 1980)( 特 許 代 理 人 の 仕 事 量 は 不 当 な 遅 延 の 判<br />

断 を 排 除 するものとならない― 総 計 3 月 が 出 願 申 請 に 関 する 弁 明 の 可 能 性 として 認 定 され<br />

た。)<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 の 推 論 は 反 論 される<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 の 裁 定 にもかかわらず、 出 願 の 勤 勉 な 申 請 と 相 まって 他 方 当 事 者 の 参 入 直 前 に<br />

更 新 された 活 動 などの 擬 制 的 実 施 化 は、なお 後 順 位 当 事 者 に 勝 利 を 得 させるに 十 分 である。<br />

Lutzker v.Plet, 843 F.2d 1364, 1367-69, 6 USPQ2d 1370, 1371-72 (Fed. Cir. 1988)( 事<br />

業 化 に 向 けられた 活 動 は 推 論 を 退 けるには 十 分 でない);Holmwood v. Cherpeck, 2 USPQ2d<br />

147


1942, 1945 (Bd. Pat. App. & Inter. 1986)( 秘 匿 又 は 隠 蔽 の 推 論 は 当 該 発 明 を 法 的 不 備 のな<br />

いものにする、 出 願 を 準 備 する、 若 しくは 属 発 明 の 範 囲 内 の 他 の 合 成 物 を 準 備 するために 向<br />

けられた 活 動 を 示 して 反 論 することができる。)Engelhardt v. Judd, 369 F.2d 408, 411, 151<br />

USPQ 732, 735 (CCPA 1966)(「 一 連 の 新 たな 合 成 物 の 発 明 者 は、 合 成 され、 特 定 され、 有 用<br />

性 をテストされるので 新 たな 構 成 要 素 ごとに 一 つ 一 つ 出 願 することを 強 いられるべきではな<br />

いと 認 める。 合 理 的 時 間 量 は 一 連 の 多 くの 新 規 合 成 物 の 研 究 プロジェクトの 完 了 に 認 められ<br />

るべきであって、その 後 も 合 理 的 期 間 がそれについての 特 許 出 願 を 起 草 し 申 請 するために 認<br />

められるべきである。」)Bogoslowsky v. Huse, 142 F.2d 75, 77, 61 USPQ 349, 351 (CCPA<br />

1944)( 秘 匿 及 び 隠 蔽 の 原 則 は 現 実 の 実 施 化 のない 着 想 に 適 用 できない。)<br />

放 棄<br />

秘 匿 又 は 隠 蔽 の 認 定 は、 特 許 に 対 する 権 利 が 失 われるような 放 棄 の 認 定 に 相 当 しないかもし<br />

れない。Steierman v. Connelly, 197 USPQ 288, 289 (Comm'r Pat. 1976); Correge v. Murphy,<br />

705 F.2d 1326, 1329, 217 USPQ 753, 755 (Fed. Cir. 1983)( 発 明 はまず 実 施 に 移 されるま<br />

で 放 棄 されることはできない。)<br />

2138.04 「 着 想 」<br />

着 想 は「 発 明 行 為 の 精 神 的 部 分 の 完 成 」として 定 義 されており、「その 後 、それが 実 際 に・・・ 応<br />

用 されるようにつれて 完 全 で 有 効 な 発 明 の 明 確 かつ 不 変 のアイデアが 発 明 者 の 頭 の 中 で 形<br />

成 」される。Townsend v. Smith, 36 F.2d 292, 295, 4 USPQ 269, 271 (CCPA 1930)。「 着<br />

想 は、 当 業 者 が 大 規 模 な 実 験 を 行 う 又 は 発 明 スキルを 使 用 することなく、 当 該 発 明 が 十 分 明<br />

確 に 実 施 できるようにされたとき 立 証 される。」Hiatt v. Ziegler, 179 USPQ 757, 763 (Bd.<br />

Pat. Inter. 1973)。また、 着 想 は、 当 業 者 が「 発 明 の 才 能 を 行 使 する」ことなくその 発 明 を<br />

実 用 的 な 形 にすることができる 発 明 の 開 示 として 定 義 されてもいる。Gunter v. Stream, 573<br />

F.2d 77, 197 USPQ 482 (CCPA 1978)。 次 も 参 照 のこと。Coleman v. Dines, 754 F.2d 353, 224<br />

USPQ 857 (Fed. Cir. 1985)( 着 想 の 確 立 において 当 事 者 は 裁 判 所 で 語 られるすべての 特 徴 の<br />

所 有 を 証 明 しなければならないこと、 及 び 裁 判 所 のすべての 制 限 は 主 張 された 着 想 の 時 点 に<br />

おいて 発 明 者 に 既 知 でなければならないとされた。 着 想 は 裏 付 けとなる 証 拠 によって 証 明 さ<br />

れねばならない。);Hybritech Inc. v. Monoclonal Antibodies Inc., 802 F. 2d 1367, 1376,<br />

231 USPQ 81, 87 (Fed. Cir. 1986)( 着 想 は「 発 明 者 の 頭 の 中 で、 以 後 実 際 に 適 用 されるよう<br />

になるにつれて 完 全 で 有 効 な 発 明 の 明 確 かつ 不 変 の 着 想 が 形 成 」される);Hitzeman v. Rutter,<br />

243 F.3d 1345, 58 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 2001)( 発 明 者 の、 遺 伝 子 組 み 換 えが 行 われた 酵<br />

母 はクレームに 挙 げられる 粒 度 及 び 沈 降 率 を 有 する 抗 原 粒 子 を 作 り 出 すであろうとする「 希<br />

望 」は 着 想 を 立 証 しない。なぜなら、 発 明 者 は、その 酵 母 が 挙 げられた 抗 原 粒 子 を 作 り 出 す<br />

であろうかどうか、 又 はその 方 法 に 関 する「 明 確 かつ 不 変 の 理 解 」 若 しくは 合 理 的 期 待 を 自<br />

らが 有 することを 証 明 していない。)<br />

I. 着 想 は 発 明 者 の 頭 の 中 で 行 われねばならない<br />

発 明 者 は 着 想 を 確 立 するために 完 全 かつ 有 効 な 発 明 の 明 確 かつ 不 変 の 着 想 を 形 成 しなければ<br />

ならない。Bosies v. Benedict, 27 F.3d 539, 543, 30 USPQ2d 1862, 1865 (Fed. Cir. 1994)( 発<br />

明 者 のノートに 記 載 された 一 般 化 合 物 の 意 味 に 関 する 非 発 明 者 の 証 言 は、 変 数 の 意 味 を 確 立<br />

148


するための 法 律 問 題 として 不 十 分 である。なぜなら、その 証 言 は 発 明 者 が 何 を 思 い 付 いたか<br />

の 証 拠 とならない。)<br />

II. 発 明 者 が 当 該 発 明 を 行 う 上 でに 知 的 支 配 権 を 有 する 限 り、 着 想 、 示 唆 及 び 材 料 は 他 人 か<br />

ら 採 用 することができる<br />

発 明 者 は、 多 くの 情 報 源 から 得 た 着 想 、 示 唆 及 び 材 料 を 検 討 し 採 用 することができる。 被 雇<br />

用 者 、 雇 用 したコンサルタント 又 は 友 人 の 示 唆 は、 取 り 入 れた 材 料 が 問 題 を 解 く 鍵 であるこ<br />

とを 証 明 する 場 合 であっても、 発 明 者 が 自 らの 進 める 試 験 、 選 択 又 は 拒 否 に 至 るまで 発 明 を<br />

行 う 作 業 について 知 的 支 配 権 を 維 持 している 限 り、 採 用 できる・・・。」Morse v. Porter, 155<br />

USPQ 280, 283 (Bd. Pat. Inter. 1965);Staehelin v. Secher, 24 USPQ2d 1513, 1522 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1992)(「 実 際 の 発 明 主 体 の 一 人 に 限 って 名 前 を 挙 げる 着 想 の 証 拠 が、 完<br />

全 な 発 明 主 体 のために 効 力 を 生 じ、 完 全 な 発 明 主 体 による 着 想 の 証 拠 となる。」)<br />

III. 着 想 は 発 明 の 同 時 代 の 認 知 及 び 評 価 を 必 要 とする<br />

そこに 着 想 があるためには 発 明 について 同 時 代 の 認 知 及 び 評 価 がなければならない。<br />

Silvestri v. Grant, 496 F.2d 593, 596, 181 USPQ 706, 708 (CCPA 1974)(「 偶 発 的 で 評 価<br />

されない 発 明 の 重 複 は、 最 初 の 者 が 時 間 的 に 遅 れたとしてもどちらが 発 明 の 保 護 対 象 を 構 成<br />

するかを 見 分 けて、その 者 の 特 許 権 を 阻 止 しない。」)Invitrogen, Corp. v. Clontech<br />

Laboratories, Inc., 429 F.3d 1052, 1064, 77 USPQ2d 1161, 1169 (Fed. Cir. 2005) ( 認<br />

識 されていない 偶 発 的 重 複 が 存 在 する 状 況 で 着 想 を 立 証 するには、 発 明 者 が 実 際 にその 発 明<br />

を 行 い、その 発 明 は 争 点 となる 発 明 保 護 対 象 を 成 す 特 徴 を 有 することを 理 解 していることの<br />

証 拠 を 必 要 とする。)Langer v. Kaufman, 465 F.2d 915, 918, 175 USPQ 172, 174 (CCPA<br />

1972)( 触 媒 の 新 しい 形 はそれが 初 めて 作 られたとき 認 識 されていなかった。 着 想 は 過 去 に 遡<br />

って 立 証 することはできない。)しかし、 発 明 者 はその 発 明 がそこで 有 効 であって 完 全 な 着<br />

想 であることを 知 っている 必 要 はない。Burroughs Wellcome Co. v. Barr Labs., Inc., 40<br />

F.3d 1223, 1228, 32 USPQ2d 1915, 1919 (Fed. Cir. 1994)( 投 薬 量 、 形 状 および 投 与 方 法 を<br />

挙 げて AZT と 共 に AIDS の 治 療 法 を 開 示 する 特 許 出 願 は、 発 明 者 がその 発 明 は 初 期 スクリーニ<br />

ング 試 験 に 基 づいて 有 効 であると 信 ずると 否 とを 問 わず 着 想 を 共 同 研 究 するには 十 分 であっ<br />

た。)さらに、 発 明 者 がその 発 明 の 特 許 性 を 評 価 している 必 要 はない。Dow Chem. Co. v.<br />

Astro-Valcour, Inc., 267 F.3d 1334, 1341, 60 USPQ2d 1519, 1523 (Fed. Cir. 2001)。<br />

種 を 考 え 出 す 最 初 の 者 が 必 ずしも 属 発 明 を 考 え 出 す 最 初 の 者 であるとは 限 らない。In re<br />

Jolley, 308 F.3d 1317, 1323 n.2, 64 USPQ2d 1901, 1905 n.2 (Fed. Cir. 2002)。さらに、<br />

1 つの 属 の 1 つの 種 に 関 する 着 想 がその 属 の 着 想 を 構 成 することがある 一 方 で、1 つの 種 及 び<br />

その 属 に 関 する 着 想 がその 属 の 他 の 種 に 関 する 着 想 を 構 成 しないことがある。Oka v.<br />

Youssefyeh, 849 F.2d 581, 7 USPQ2d 1169 (Fed. Cir. 1988)( 化 学 物 質 の 着 想 は 当 該 化 学 物<br />

質 の 構 造 の 着 想 とそれを 製 造 する 有 効 な 方 法 を 有 することの 2 つを 必 要 とする。) 次 も 参 照 の<br />

こと。Amgen v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200, 1206, 18 USPQ2d 1016, 1021<br />

(Fed. Cir. 1991)( 遺 伝 子 の 単 離 においてその 主 要 な 生 物 的 特 性 による 遺 伝 子 の 定 義 は、 詳 細<br />

な 構 造 を 想 定 する 能 力 のほかにもそれを 獲 得 する 方 法 もまたない 限 り、 着 想 には 十 分 でな<br />

い)Fiers v. Revel, 984 F.2d 1164, 1170, 25 USPQ2d 1601, 1605 (Fed. Cir. 1993)(「 実<br />

施 化 前 に 物 質 の 構 造 若 しくはそれに 準 ずる 定 義 の 着 想 がない 場 合 、その 物 質 を 作 るプロセス<br />

149


のみの 着 想 ではせいぜいプロセスとしてクレームされる 物 質 の 着 想 を 構 成 できるだけ」であ<br />

ってその 物 質 の 着 想 を 構 成 することはできない。「 着 想 は 実 施 可 能 でない」ので、 機 能 によ<br />

って 特 異 タンパク 質 をコードする 精 製 された DNA の 配 列 及 び 当 業 者 が 実 施 することのできな<br />

い 単 離 の 方 法 の 着 想 は、その 物 質 の 着 想 ではない。)<br />

ごく 希 にであるが 着 想 と 実 施 化 が 同 時 に 発 生 する。Alpert v. Slatin, 305 F.2d 891, 894, 134<br />

USPQ 296, 299 (CCPA 1962)。「 化 学 及 び 生 物 学 の 予 測 不 可 能 な 分 野 において 発 明 が 実 施 され<br />

るまで 着 想 のないものもある。」MacMillan v. Moffett, 432 F.2d 1237, 1234-40, 167 USPQ<br />

550, 552-553 (CCPA 1970)。 次 も 参 照 のこと。Hitzeman v. Rutter, 243 F.3d 1345, 58 USPQ2d<br />

1161 (Fed. Cir. 2001)( 一 定 の 細 胞 内 プロセスの 酵 母 の 働 きがクレームされた 抗 原 粒 子 をも<br />

たらすであろうという 合 理 的 確 実 性 が 出 願 人 に 欠 ける 場 合 、 着 想 は 実 施 化 と 同 時 となる);<br />

Dunn v. Ragin, 50 USPQ 472, 475 (Bd. Pat. Inter. 1941)( 無 性 的 に 繁 殖 させた 植 物 の 新 し<br />

い 品 種 はそれが 成 長 して 新 しい 品 種 として 認 められるときに 着 想 され 実 施 化 される。)このよ<br />

うな 場 合 には、 後 続 の 試 験 で「それが 実 際 に 使 用 されるような 完 全 な 発 明 の 明 確 かつ 不 変 の<br />

考 えとまだなっていない 発 明 者 の 着 想 の 特 異 性 を 損 なうような」 実 際 的 不 確 実 性 が 明 らかに<br />

なる 場 合 、 着 想 は 完 全 なものではない。Burroughs Wellcome Co. v. Barr Labs., Inc., 40 F.3d<br />

1223, 1229, 32 USPQ2d 1915, 1920 (Fed. Cir. 1994)。<br />

IV. 同 時 係 属 でなかった 従 前 の 放 棄 出 願<br />

後 続 出 願 で 着 想 のみの 証 拠 となる<br />

同 時 係 属 中 の 後 続 出 願 のない 放 棄 された 出 願 は、 擬 制 的 実 施 化 としての 出 願 申 請 の 利 益 を 放<br />

棄 する 働 きをし、その 放 棄 された 出 願 は 着 想 のみの 証 拠 となる。 In re Costello, 717 F.2d<br />

1346, 1350, 219 USPQ 389, 392 (Fed. Cir. 1983).<br />

2138.05 「 実 施 化 」<br />

実 施 化 は 現 実 の 実 施 化 又 はクレームされる 発 明 に 関 する 特 許 出 願 が 申 請 されるときに 発 生 す<br />

る 擬 制 的 実 施 化 がある。 特 許 出 願 の 申 請 は 着 想 及 びその 出 願 に 記 載 される 保 護 対 象 の 擬 制 的<br />

実 施 化 としての 役 割 を 果 たす。 従 って、 発 明 者 は 特 許 出 願 の 内 容 に 依 拠 する 場 合 、 着 想 又 は<br />

現 実 の 実 施 化 の 証 拠 を 提 出 する 必 要 はない。Hyatt v. Boone, 146 F.3d 1348, 1352, 47 USPQ2d<br />

1128, 1130 (Fed. Cir. 1998)。 実 施 化 は 発 明 者 に 代 わり 他 の 者 が 行 うことができる。De Solms<br />

v. Schoenwald, 15 USPQ2d 1507, 1510 (Bd. Pat. App. & Inter. 1990)。「 親 出 願 の 申 請 は<br />

理 論 的 にはその 時 点 で 擬 制 的 実 施 化 を 構 成 するが、その 出 願 の 後 の 放 棄 もまた 擬 制 的 実 施 化<br />

としてのその 申 請 の 利 益 の 放 棄 をもたらす。しかし、 親 出 願 の 申 請 はその 発 明 の 着 想 の 証 拠<br />

となる。In re Costello, 717 F.2d 1346, 1350, 219 USPQ 389, 392 (Fed. Cir. 1983) (も<br />

う 一 つの 出 願 は 親 出 願 との 同 時 係 属 ではなく 親 出 願 に 言 及 していなかった。 特 許 法 第 120 条<br />

の 要 件 を 満 たしていなかったので、 親 出 願 の 申 請 は 当 該 発 明 の 擬 制 的 実 施 化 として 認 められ<br />

なかった。<br />

I. 擬 制 的 実 施 化 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 遵 守 を 必 要 とする<br />

インターフェアレンスの 当 事 者 が 米 国 特 許 先 願 の 利 益 を 求 める 場 合 、 当 該 先 願 はカウントの<br />

保 護 対 象 について 特 許 法 第 120 条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 要 件 を 満 たしていなければ<br />

ならない。 当 該 先 願 は 実 施 可 能 要 件 を 満 たしていなければならず、またインターフェアレン<br />

150


ス・カウントの 保 護 対 象 の 書 面 による 説 明 を 包 含 していなければならない。Hyatt v. Boone,<br />

146 F.3d 1348, 1352, 47 USPQ2d 1128, 1130 (Fed. Cir. 1998)。 擬 制 的 実 施 化 の 証 拠 は 特<br />

許 法 第 112 条 第 1 段 落 の「 使 用 方 法 」 及 び「 製 造 方 法 」の 要 件 に 基 づく 十 分 な 開 示 を 必 要 と<br />

する。Kawai v. Metlesics, 480 F.2d 880, 886, 178 USPQ 158, 163 (CCPA 1973)( 擬 制 的 実<br />

施 化 は、 明 細 書 が 自 明 ではないであろう 実 用 的 有 用 性 を 開 示 していない 場 合 は 証 明 されない。<br />

2 官 能 基 を 連 結 する-CH2- 基 がないとうだけがクレームの 化 合 物 と 異 なる 抗 けいれん 剤 を 開<br />

示 する 先 行 技 術 はクレームの 化 合 物 の 有 用 性 を 立 証 するのに 十 分 ではなかった。なぜなら、<br />

その 化 合 物 は 同 一 有 用 性 を 有 すると 推 定 できるほど 密 接 な 関 係 はなかった。 書 面 記 載 要 件 の<br />

目 的 は「 当 該 発 明 が、 依 拠 される 出 願 の 申 請 日 現 在 で 自 身 により 後 でクレームされる 特 定 の<br />

保 護 対 象 を 所 有 していることを 保 証 する」ことである。In re Edwards, 568 F.2d 1349, 1351-52,<br />

196 USPQ 465, 467 (CCPA 1978)。 書 面 による 明 細 はインターフェアレンス・カウントの 限 定<br />

の 全 てを 含 んでいなければならない。 若 しくは、 出 願 人 は 提 出 されたその 明 細 に 欠 けた 文 章<br />

は 必 然 的 になくその 特 許 出 願 が 申 請 されたその 時 にそのように 理 解 されていたであろうこと<br />

を 証 明 しなければならない。さらに、 書 面 による 明 細 は 明 細 書 全 体 が 検 討 されるとき、 当 業<br />

者 によってそれに 与 えられるであろう「 必 要 かつ 唯 一 妥 当 な 解 釈 」が 明 確 に 当 該 カウントの<br />

疑 問 の 余 地 のないそれぞれの 限 定 を 支 持 するほどに 十 分 でなければならない。Hyatt v. Boone,<br />

146 F.3d at 1354-55、47 USPQ2d at 1130-1132 (Fed. Cir. 1998)(クレームは 当 該 カウント<br />

の 保 護 対 象 以 外 の 保 護 対 象 を 記 載 しているように 読 むことができ、 従 って 出 願 人 は 当 該 カウ<br />

ントの 発 明 を 所 有 していることを 立 証 していなかった。) 次 も 参 照 のこと。Bigham v.<br />

Godtfredsen, 857 F.2d 1415, 1417, 8 USPQ2d 1266, 1268 (Fed. Cir. 1988)(「ハロゲンと<br />

いう 一 般 的 な 用 語 は 限 られた 種 を 含 み、 普 通 、 一 般 的 なハロゲン 種 の 十 分 な 書 面 による 説 明<br />

を 構 成 する。」ただし、そのハロゲン 種 が 特 許 的 に 議 論 の 余 地 がない 場 合 とする。)<br />

II. 現 実 の 実 施 化 を 立 証 するための 要 件<br />

「インターフェアレンス 手 続 において 現 実 の 実 施 化 を 立 証 しようとする 当 事 者 は 次 の 2 要 素<br />

から 成 る 判 定 方 法 を 満 足 させねばならない。(1) 当 該 当 事 者 は 実 施 例 を 構 築 した、 又 はインタ<br />

ーフェアレンス・カウントのすべての 要 素 を 満 たすプロセスを 実 行 した。そして、(2)その 実<br />

施 例 又 はプロセスはその 意 図 した 目 的 のため 作 動 した。Eaton v. Evans, 204 F.3d 1094, 1097,<br />

53 USPQ2d 1696, 1698 (Fed. Cir. 2000)<br />

擬 制 的 実 施 化 に 十 分 な 同 一 証 拠 は 現 実 の 実 施 化 を 立 証 するには 不 十 分 なことがある。 現 実 の<br />

実 施 化 を 立 証 するには、 当 該 説 明 を、 当 該 カウントのすべての 要 素 を 証 明 する 物 理 的 若 しく<br />

は 有 形 の 形 で 示 すことが 求 められる。Wetmore v. Quick, 536 F.2d 937, 942, 190 USPQ 223,<br />

227 (CCPA 1976)。 現 実 の 実 施 化 については、 当 該 発 明 はそれが 意 図 した 目 的 に 有 効 であるこ<br />

とを 実 証 できるように 十 分 に 試 験 されていなければならないが 商 業 的 に 満 足 できる 開 発 段 階<br />

にある 必 要 はない。 参 照 事 例 として、Scott v. Finney, 34 F.3d 1058, 1062, 32 USPQ2d 1115,<br />

1118-19 (Fed. Cir. 1994)( 現 実 の 実 施 化 を 裏 付 けるために 必 要 な 試 験 の 特 性 はその 発 明 の 複<br />

雑 さ 及 びそれが 解 決 する 問 題 によって 異 なる 多 くの 事 例 を 引 用 。) 装 置 が 非 常 に 単 純 でその 目<br />

的 及 び 有 効 性 が 明 白 な 場 合 、 構 造 のみで 実 行 可 能 性 を 実 証 するには 十 分 である。King<br />

Instrument Corp. v. Otari Corp., 767 F.2d 853, 860, 226 USPQ 402, 407 (Fed. Cir. 1985)。<br />

現 実 の 実 施 化 を 立 証 するために 必 要 な 要 件 に 関 する 追 加 事 例 については、DSL Dynamic<br />

Sciences, Ltd. v. Union Switch & Signal, Inc., 928 F.2d 1122, 1126, 18 USPQ2d 1152,<br />

151


1155 (Fed. Cir. 1991)を 参 照 のこと。(「 主 張 された 現 実 の 実 施 化 の 後 に 生 じる 出 来 事 は、<br />

実 施 化 が 実 際 に 生 じたかどうかに 疑 問 を 投 げ 掛 けることができる。」);Fitzgerald v. Arbib,<br />

268 F.2d 763, 765-66, 122 USPQ 530, 531-32 (CCPA 1959)(「 立 体 デザイン 発 明 の 実 施 化 は<br />

『そのデザイン』を『 単 なる 図 面 以 外 』に 具 体 化 する 物 品 の 制 作 を 必 要 とする」);Birmingham<br />

“v. Randall, “171 F.2d 957, 80 USPQ 371, 372 “(CCPA 1948)( 製 品 製 造 方 法 に 向 けられ<br />

た 発 明 の 現 実 の 実 施 化 を 実 証 するには、その 方 法 が 実 行 されたことを 示 すだけでは 十 分 では<br />

ない。「そのような 発 明 は、そのプロセスによって 製 造 される 製 品 が 満 足 できるものである<br />

ことが 立 証 されるまで 実 施 に 移 されない。 従 って、その 製 品 の 試 験 の 成 功 を 求 めることがで<br />

きる。」)<br />

III. 現 実 の 実 施 化 を 立 証 するために 求 められる 試 験<br />

「 実 施 化 を 立 証 するために 必 要 とされる 試 験 の 性 質 はそれぞれの 事 例 の 特 定 の 事 実 、 特 に 発<br />

明 の 性 質 に 依 存 する。」Gellert v. Wanberg, 495 F.2d 779, 783, 181 USPQ 648, 652 (CCPA<br />

1974)(「 発 明 は 十 分 に 試 験 することができる・・・ 実 際 の 使 用 条 件 のすべてが 試 験 によって 再 現<br />

されていない 場 合 には」);Wells v. Fremont, 177 USPQ 22, 24-5 (Bd. Pat. Inter. 1972)(「 試<br />

験 が『ベンチ』 又 は 実 験 室 の 条 件 下 で 行 われている 場 合 でもそれらの 条 件 は『 実 際 の 使 用 の<br />

ありとあらゆる 条 件 を 完 全 に 再 現 』しなければならない。そうでない 場 合 、その 証 拠 は 保 護<br />

対 象 、 試 験 条 件 及 び 当 該 発 明 の 意 図 する 機 能 設 定 との 間 の 関 係 を 立 証 しなければならない。<br />

しかし、 全 ての 実 際 の 使 用 の 全 条 件 を 再 現 する 必 要 はない。 雨 、 雪 、 泥 、 埃 及 び 水 没 などで<br />

ある。」<br />

IV. 実 施 化 は 試 験 の 認 知 及 び 評 価 を 必 要 とする<br />

発 明 は 生 じる 実 施 化 について 認 知 及 び 評 価 されねばならない。 着 想 及 び 実 施 化 は 過 去 に 遡 っ<br />

て 立 証 できないというルールは 単 に 実 験 が 現 実 の 実 施 化 を 構 成 するために 必 要 であって、 発<br />

明 者 による 係 争 中 の 発 明 の 同 時 期 の 評 価 がなければならない。 後 続 の 試 験 又 は 後 になっての<br />

認 知 は、 当 事 者 にその 発 明 について 同 時 期 の 評 価 があることを 示 すために 使 用 してはならな<br />

い。しかし、 後 続 の 試 験 の 証 拠 は 実 施 例 が 示 されたこと、 及 びそれが 当 該 カウントの 限 定 を<br />

満 たすことを 証 明 する 目 的 で 認 めることができる。Cooper v. Goldfarb, 154 F.3d 1321, 1331,<br />

47 USPQ2d 1896, 1904 (Fed. Cir. 1998) ( 引 用 省 略 )。Meitzner v. Corte, 537 F.2d 524, 528,<br />

190 USPQ 407, 410 (CCPA 1976)( 着 想 又 は、 新 しい 形 式 若 しくはそうでなければ 新 しい 形 式<br />

の 存 在 について 認 知 又 は 評 価 が 存 在 しない 古 い 組 成 物 についてそのような 新 しい 形 式 を 用 い<br />

るプロセスの 実 施 化 にはならない);Estee Lauder, Inc. v. L’Oreal S.A., 129 F.3d 588,<br />

593, 44 USPQ2d 1610, 1615 (Fed. Cir. “1997)(「 試 験 が 有 用 性 を 立 証 するために 必 要 な 場<br />

合 、その 試 験 は 実 施 化 が 生 ずるに 十 分 であったという 認 知 及 び 評 価 がなければならない。」<br />

試 験 が 基 準 日 以 前 に 完 了 したこと 及 び 試 験 は 最 終 的 に 成 功 であることを 証 明 したことを 示 す<br />

ことは、 試 験 の 成 功 は 基 準 日 後 まで 評 価 又 は 認 知 されないので、 基 準 日 以 前 の 実 施 化 を 立 証<br />

するには 不 十 分 であるとされた。)Parker v. Frilette, 462 F.2d 544, 547, 174 USPQ 321,<br />

324 (CCPA 1972)(「 発 明 者 は 現 実 の 実 施 化 を 実 現 するために 自 らの 発 明 が 有 効 な 理 由 を 正 確<br />

に 理 解 する 必 要 はない。」)<br />

152


V. 他 人 による 発 明 の 認 知 は 発 明 者 の 利 益 のために 効 力 を 生 じることができる<br />

「 法 律 問 題 として、 他 人 の 行 為 が 発 明 者 の 利 益 を 生 じるという 効 力 の 発 生 は、 発 明 者 による<br />

クレームに 関 わる。は、」Cooper v. Goldfarb, 154 F.3d 1321, 1331, 47 USPQ2d 1896, 1904<br />

“(Fed. Cir. 1998)。 当 該 発 明 の 有 用 性 についての 非 発 明 者 の 認 知 が 発 明 者 の 利 益 のために<br />

効 力 を 生 ずることができる 前 には、 次 に 挙 げる 3 要 素 から 成 る 試 験 が 満 たされねばならない。<br />

(1) 発 明 者 は 発 明 を 考 え 出 していなければならない、(2) 発 明 者 は 試 験 された 実 施 例 が 発 明 の<br />

意 図 した 目 的 のために 有 効 であろうという 期 待 を 持 っていたのでなければならない、 及 び(3)<br />

発 明 者 は 発 明 の 意 図 した 目 的 のために 試 験 を 行 う 実 施 例 を 提 出 していなければならない。<br />

Genentech Inc. v. Chiron Corp., 220 F.3d 1345, 1354, 55 USPQ2d 1636, 1643 (Fed. Cir.<br />

2000)。Genentech において、 発 明 の DNA 構 築 物 によってコードされる 融 合 タンパク 質 の 存 在<br />

について 酵 母 見 本 を 試 験 するため 発 明 者 によって 雇 用 された 非 発 明 者 はその 融 合 タンパク 質<br />

の 成 長 促 進 的 な 性 質 を 確 認 したが、この 認 知 を 発 明 者 に 知 らせなかった。 裁 判 所 は、 発 明 者<br />

は 成 長 促 進 活 動 を 試 験 するために 当 該 見 本 を 提 供 したのではないため 当 該 発 明 の 意 図 される<br />

目 的 、 第 3 の 要 素 は 満 足 されておらず、 非 発 明 者 によって 通 知 されなかった 融 合 タンパク 質<br />

の 活 性 についての 認 知 は 彼 らの 利 益 に 効 力 を 生 じなかったと 判 断 した。 次 も 参 照 のこと。<br />

Cooper v. Goldfarb, 240 F.3d 1378, 1385, 57 USPQ2d 1990, 1995 (Fed. Cir. 2001)(Cooper<br />

は Goldfarb に 人 工 血 管 に 使 用 する 材 料 見 本 を 送 付 した。その 見 本 が 送 られた 時 点 で Cooper<br />

はその 材 料 の 微 小 繊 維 長 さの 重 要 性 には 気 がついていなかった。Cooper はその 後 も 微 小 繊 維<br />

の 長 さに 関 するどのような 情 報 も Goldfarb に 伝 える、 若 しくは 求 めることはなかった。 従 っ<br />

て、Goldfarb のその 材 料 の 微 小 繊 維 長 さに 関 する 決 定 は Cooper の 利 益 のために 効 力 を 生 じ<br />

ることはなかった。)<br />

VI. インターフェアレンス 手 続 においてカウントのすべての 限 定 は 実 施 に 移 されねばならな<br />

い。<br />

実 施 に 移 された 発 明 品 はカウントのすべての 限 定 を 含 んでいなければならない。Fredkin v.<br />

Irasek, 397 F.2d 342, 158 USPQ 280, 285 (CCPA 1968);カウントのすべての 限 定 は 重 要 で<br />

現 実 の 実 施 化 を 立 証 するため 証 明 されねばならない。Meitzner v. Corte, 537 F. 2d 524, 528,<br />

190 USPQ 407, 410。 次 も 参 照 のこと。Hull v. Bonis, 214 USPQ 731, 734 (Bd. Pat. Inter.<br />

1982)( 均 等 の 原 則 はない― 救 済 方 法 は 予 備 申 立 を 行 い 当 該 カウントを 証 拠 に 適 合 するように<br />

修 正 する)。<br />

VII. クレームの 発 明 は 既 知 の 有 用 性 がない 場 合 、 実 際 には 実 施 に 移 されない。<br />

発 明 の 有 用 性 は 実 施 化 の 時 点 で 既 知 でなければならない。Wiesner v. Weigert, 666 F.2d 582,<br />

588, 212 USPQ 721, 726 (CCPA 1981)( 植 物 及 び 意 匠 の 発 明 を 除 く); Azar v.Burns, 188 USPQ<br />

601, 604 (Bd. Pat. Inter. 1975)( 組 成 物 及 び 方 法 は、 当 該 組 成 物 及 び 当 該 方 法 によって 生<br />

産 される 製 品 が 実 用 的 有 用 性 を 有 しない 限 り 現 実 に 実 施 化 することができない);Ciric v.<br />

Flanigen, 511 F.2d 1182, 1185, 185 USPQ 103, 105-6 (CCPA 1975)(「カウントが 何 ら 具 体<br />

的 有 用 性 を 挙 げていない 場 合 、どのような 目 的 にせよ 本 質 的 有 用 性 を 立 証 する 証 拠 は 実 施 化<br />

を 証 明 するために 十 分 である」;「 新 しく 発 見 されたゼオライトと 既 知 の 結 晶 性 ゼオライト<br />

との 間 のイオン 交 換 特 性 及 び 吸 着 性 について 実 証 された 類 似 点 は・・・ 当 該 カウントのゼオラ<br />

イトの 有 用 性 を 立 証 している」);Engelhardt v. Judd, 369 F.2d 408, 411, 151 USPQ 732,<br />

153


735 (CCPA 1966)( 化 合 物 のクレームに 対 する 特 許 性 の 阻 却 事 由 として 現 実 の 実 施 化 を 検 討 す<br />

る 場 合 、ヒトに 対 する 明 細 書 において 主 張 される 製 薬 目 的 とは 若 干 異 なる 目 的 で 動 物 における 当<br />

該 化 合 物 の 有 用 性 をうまく 実 証 することで 十 分 である。);Rey-Bellet v. Engelhardt, 993 F.2d<br />

1380, 1384, 181 USPQ 453, 455 (CCPA 1974)( 実 験 動 物 試 験 の 2 分 類 で 有 用 性 及 び 実 施 化 を 証 明<br />

するために 十 分 と 考 えられた。 第 1 の 試 験 はヒトと 動 物 との 間 に 十 分 な 相 互 関 係 が 存 在 するとこ<br />

ろでヒトにおける 有 用 性 を 証 明 するために 実 行 し、 第 2 の 試 験 は 動 物 の 治 療 に 対 する 有 用 性 を 証<br />

明 するために 実 行 した。)<br />

VIII. 推 定 の 有 用 性 は 有 用 性 の 立 証 に 十 分 であるとは 限 らない<br />

推 定 の 有 用 性 は 実 用 的 有 用 性 を 立 証 しない。 実 用 的 有 用 性 は 実 際 の 試 験 によって、 若 しくは<br />

当 該 有 用 性 が「 確 実 性 をもって 予 想 できる」 場 合 に 立 証 される。Bindra v. Kelly, 206 USPQ<br />

570, 575 (Bd. Pat. Inter. 1979)( 実 施 化 は、 第 2 中 間 体 の 調 合 に 有 用 な 中 間 体 について 薬<br />

剤 調 合 に 周 知 の 有 用 性 をもって 立 証 されない。そこで 立 証 される 記 録 は、 当 業 者 が 特 許 法 第<br />

103 条 の 意 味 で 第 1 の 中 間 体 から 第 2 の 中 間 体 を 調 合 しようとしたかもしれないので、 調 合<br />

がうまくいく 可 能 性 が 高 かった。しかし、 有 用 である 可 能 性 の 高 さは 実 用 的 有 用 性 を 立 証 す<br />

るためには 十 分 でない。);Wu v. Jucker, 167 USPQ 467, 472 (Bd. Pat. Inter. 1968)( 推<br />

定 有 用 性 の 徴 候 がある 場 合 のスクリーニング 試 験 は 実 用 的 有 用 性 を 立 証 するには 不 十 分 であ<br />

る。)しかし、 次 を 参 照 のこと。Nelson v. Bowler, 628 F.2d 853, 858, 206 USPQ 881, 885<br />

(CCPA 1980)( 関 連 証 拠 は、 観 察 された 特 性 を 提 案 される 用 途 に 関 連 付 ける 際 に 全 体 としてそ<br />

の 説 得 力 で 判 断 される。2 者 間 の 合 理 的 相 関 は 現 実 の 実 施 化 に 十 分 である。)<br />

2138.06 「 合 理 的 勤 勉 性 」<br />

特 許 法 第 102 条 (g)の 勤 勉 性 は 合 理 的 な「 代 理 人 の 勤 勉 性 」 及 び「 技 術 的 勤 勉 性 」に 関 する<br />

(Keizer v. Bradley, 270 F.2d 396, 397, 123 USPQ 215, 216 (CCPA 1959))。これは「 発 明<br />

者 又 はその 代 理 人 が・・・ 他 のすべての 仕 事 を 中 断 して 関 係 するその 特 定 の 発 明 に 専 心 するこ<br />

とを 要 求 してはいない・・・。」Emery v. Ronden, 188 USPQ 264, 268 (Bd. Pat. Inter. 1974)。<br />

当 該 発 明 を 最 初 に 着 想 したが 実 施 に 移 すことの 遅 れた 者 が 勤 勉 性 の 立 証 を 要 する 継 続 期 間<br />

最 初 の 着 想 者 であるが 2 番 目 の 実 施 者 が 勤 勉 性 を 要 する 継 続 期 間 は 最 初 の 着 想 者 の 着 想 時 で<br />

はなく、 最 初 に 実 施 に 移 した 当 事 者 がその 分 野 に 参 入 した 直 前 に 始 まり、 最 初 の 着 想 者 が 実<br />

施 に 移 すまで 継 続 する。Hull v. Davenport, 90 F.2d 103, 105, 33 USPQ 506, 508 (CCPA<br />

1937)(「 着 想 の 時 から 第 2 の 着 想 者 の 着 想 日 直 前 の 時 までの 勤 勉 性 の 欠 如 は、 後 の 行 為 に 影<br />

響 を 与 える 場 合 を 除 き、 重 要 とみなされない。」) 何 が 最 初 の 実 施 者 の 当 該 分 野 への 参 入 日 と<br />

なるかは、 例 えば、 着 想 に 加 うるに 実 施 化 に 対 する 合 理 的 勤 勉 性 など、 最 初 の 実 施 者 が 依 拠<br />

するものに 依 存 する(Fritsch v. Lin, 21 USPQ2d 1731, 1734 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)、<br />

Emery v. Ronden, 188 USPQ 264, 268 (Bd. Pat. Inter. 1974)); 米 国 出 願 (Rebstock v. Flouret,<br />

191 USPQ 342, 345 (Bd. Pat. Inter. 1975)) 若 しくは 外 国 出 願 の 特 許 法 第 119 条 に 基 づく 優<br />

先 権 への 依 拠 (Justus v. Appenzeller, 177 USPQ 332, 339 (Bd. Pat. Inter. 1971))のいず<br />

れか 一 方 の 出 願 による 現 実 の 実 施 化 又 は 擬 制 的 実 施 化 ( 特 許 法 第 119 条 及 び 第 120 条 に 基 づく<br />

一 連 の 優 先 権 、 特 許 法 第 119 条 に 基 づく 優 先 権 は 12 月 以 内 に 出 願 された 出 願 の 係 属 中 に 外 国<br />

出 願 の 認 証 謄 本 の 提 出 不 履 行 を 理 由 に 否 認 された。)<br />

154


勤 勉 性 が 求 められる 全 期 間 は 積 極 的 行 為 又 は 容 認 可 能 な 弁 明 のいずれかによって 説 明 されね<br />

ばならない<br />

出 願 人 は 勤 勉 性 が 求 められる 全 期 間 を 説 明 しなければならない。Gould v. Schawlow, 363 F.2d<br />

908, 919, 150 USPQ 634, 643 (CCPA 1966)( 単 に 当 該 発 明 に 取 り 組 まなかった 週 又 は 月 がな<br />

いことを 述 べるだけでは 十 分 でない。)In re Harry, 333 F.2d 920, 923, 142 USPQ 164, 166<br />

(CCPA 1964)( 保 護 対 象 は「 鋭 意 実 施 に 移 された」との 陳 述 は、 証 明 ではなく 単 なる 訴 答 であ<br />

る。) 活 動 のない 2 日 間 が 決 定 的 であると 判 定 されている。In re Mulder, 716 F.2d 1542, 1545,<br />

219 USPQ 189, 193 (Fed. Cir. 1983) (37 CFR 1.131 issue);Fitzgerald v. Arbib, 268 F.2d<br />

763, 766, 122 USPQ 530, 532 (CCPA 1959)( 継 続 期 間 中 の 1 月 に 満 たない 非 活 動 。 商 業 的 に<br />

発 明 を 開 発 しようとする 努 力 は 実 施 化 において 勤 勉 性 を 継 続 していない。 立 体 物 品 の 意 匠 の<br />

場 合 の 現 実 の 実 施 化 は 単 なる 図 面 ではない 何 らかの 構 造 に 具 体 化 することが 求 められる。);<br />

Kendall v. Searles, 173 F.2d 986, 993, 81 USPQ 363, 369 (CCPA 1949)( 勤 勉 性 は 出 願 人<br />

が 日 付 及 び 事 実 について 具 体 的 でなければならないことを 必 要 とする。)<br />

勤 勉 性 が 求 められる 期 間 は 積 極 的 行 為 又 は 容 認 することのできる 弁 明 のいずれかによって 説<br />

明 されねばならない。Rebstock v. Flouret, 191 USPQ 342, 345 (Bd. Pat. Inter. 1975);<br />

Rieser v. Williams, 225 F.2d 419, 423, 118 USPQ 96, 100 (CCPA 1958)( 実 施 に 移 すこと<br />

が 最 後 である 当 事 者 は、 自 らが 最 初 に 着 想 し 対 抗 者 が 当 該 分 野 に 参 入 する 直 前 から 必 要 な 継<br />

続 期 間 合 理 的 勤 勉 性 を 発 揮 していたことを 証 明 しない 限 り 勝 者 となることはできない);<br />

Griffith v. Kanamaru, 816 F.2d 624, 2 USPQ2d 1361 (Fed. Cir. 1987)( 裁 判 所 は 健 康 障 害<br />

による 長 期 休 暇 及 び 日 常 の 業 務 要 請 を 含 む 非 活 動 の 弁 明 に 関 する 事 例 を 見 直 し、 大 学 の 財 源<br />

及 び 人 材 の 不 足 が 容 認 できる 弁 明 ではないと 判 示 した。);Litchfield v. Eigen, 535 F.2d 72,<br />

190 USPQ 113 (CCPA 1976)( 予 算 に 制 限 があり 実 験 動 物 の 利 用 可 能 性 が 十 分 に 記 載 されていな<br />

い);Morway v. Bondi, 203 F.2d 741, 749, 97 USPQ 318, 323 (CCPA 1953)(その 他 のプロ<br />

ジェクトを 追 求 して 発 明 の 概 念 を 意 図 的 に 棚 上 げしたことは、 例 外 となる 状 況 であるとして<br />

も 容 認 できる 弁 明 ではない);Anderson v. Crowther,152 USPQ 504, 512 (Bd. Pat. Inter.<br />

1965)( 勤 勉 性 を 証 明 するには 不 十 分 な 研 究 室 のすべての 成 果 を 網 羅 する 定 期 的 な 通 常 報 告 書<br />

の 作 成 );Wu v. Jucker, 167 USPQ 467, 472-73 (Bd. Pat. Inter. 1968)( 出 願 人 はその 時 点<br />

でもう 一 つのプロジェクトに 用 いられている 設 備 に 干 渉 することを 正 当 化 できる 十 分 な 量 ま<br />

で 試 験 データシートを 蓄 積 することを 不 正 に 認 めた);Tucker v. Natta, 171 USPQ 494,498 (Bd.<br />

Pat. Inter. 1971)(「 属 の 実 施 化 に 向 かう 活 動 は 一 見 したところ 前 記 の 属 に 包 含 される 種 の<br />

実 施 化 への 勤 勉 性 を 立 証 していない」);Justus v. Appenzeller, 177 USPQ 332, 340-1 (Bd.<br />

Pat. Inter. 1971)( 特 許 権 者 がハードウェアウェアの 特 定 部 分 を 設 計 することによるよりも<br />

在 庫 品 に 依 拠 することにより 短 時 間 で 当 該 発 明 を 実 施 化 することは 可 能 であろうが、 特 許 権<br />

者 は 当 該 発 明 を 現 実 に 実 施 化 するため 必 要 なハードウェアウェアを 確 保 しようと 合 理 的 勤 勉<br />

性 を 払 った。「 勤 勉 性 の 問 題 を 判 断 する 際 、 発 明 者 が 迅 速 な 道 を 取 っていないかもしれない<br />

ことは 重 要 ではない・・・。」)<br />

合 理 的 勤 勉 性 を 証 明 するために 依 拠 する 成 果 は 実 施 化 に 直 接 関 係 するものでなければならな<br />

い<br />

合 理 的 勤 勉 性 を 証 明 するために 依 拠 する 成 果 は 争 点 となる 発 明 の 実 施 化 に 直 接 関 係 するもの<br />

でなければならない。Naber v. Cricchi, 567 F.2d 382, 384, 196 USPQ 294, 296 (CCPA 1977),<br />

155


cert. denied, 439 U.S. 826 (1978)。 次 も 参 照 のこと。Scott v. Koyama, 281 F.3d 1243,<br />

1248-49, 61 USPQ2d 1856, 1859 (Fed. Cir. 2002)(テトラフルオロエタンを 大 規 模 に 生 産 す<br />

るクレームのプロセスを 実 施 するためのプラント 建 設 に 向 けられる 活 動 は 現 実 の 実 施 化 に 向<br />

けた 努 力 を 構 成 する。 従 って 勤 勉 性 の 証 拠 となった。 裁 判 所 は、 資 金 調 達 又 はその 他 の 商 業<br />

活 動 を 追 求 しているものの、 発 明 者 が 開 発 を 中 断 した 若 しくは 当 該 発 明 を 完 成 できなかった<br />

という 理 由 で 勤 勉 性 が 確 認 されなかった 事 例 を 区 別 した。In re Jolley, 308 F.3d 1317,<br />

1326-27, 64 USPQ2d 1901, 1908-09 (Fed. Cir. 2002)( 勤 勉 性 はインターフェアレンス・カ<br />

ウントの 保 護 対 象 に 関 する 研 究 及 び 購 買 活 動 により 確 認 された。)「 状 況 によっては、 発 明 者<br />

もまた 争 点 となっている 発 明 の 実 施 化 に 向 けた 勤 勉 性 の 裏 付 けとして 発 明 に 密 接 にかかわる<br />

成 果 に 依 拠 できるはずである。」Ginos v. Nedelec, 220 USPQ 831, 836 (Bd. Pat. Inter.<br />

1983)( 同 一 発 明 の 一 部 と 考 えられ、また 祖 父 出 願 の 一 部 として 含 まれる 他 の 密 接 に 関 係 する<br />

化 合 物 に 関 する 成 果 。)「 依 拠 される 成 果 は 当 該 カウントの 保 護 対 象 の 実 施 化 を 実 現 する 方 向<br />

に 向 けられていなければならない。 活 動 が 保 護 対 象 に 関 連 する 事 柄 に 依 拠 したことは 十 分 で<br />

はない。Gunn v. Bosch, 181 USPQ 758, 761 (Bd. Pat. Inter. 1973) 発 明 者 が 異 なる 発 明 に<br />

取 り 組 んでいるときに 生 じた 争 点 となっている 発 明 の 現 実 の 実 施 化 は「 偶 然 であって 連 続 す<br />

る 意 図 の 若 しくはここで 争 点 となっている 発 明 を 実 施 に 移 すための 努 力 の 結 果 ではなかった。<br />

かかる 偶 然 はその 発 明 の 実 施 化 に 向 けた 勤 勉 性 の 発 揮 と 矛 盾 する。」181 USPQ の 761。さら<br />

に、 着 想 時 にすでに 一 般 的 に 使 用 されていたが 当 該 カウントの 発 振 回 路 の 1 要 素 である 見 本<br />

若 しくは 資 料 の 改 良 に 関 する 成 果 の 方 に 引 き 寄 せられる 証 拠 は、 構 造 及 び 全 体 的 な 結 合 の 試<br />

験 に 向 かう 勤 勉 性 を 証 明 しない。Broos v. Barton, 142 F.2d 690, 691, 61 USPQ 447, 448 (CCPA<br />

1944)( 米 国 における 外 国 出 願 の 準 備 は 勤 勉 性 を 構 成 しない);De Solms v. Schoenwald, 15<br />

USPQ2d 1507 (Bd. Pat. App. & Inter 1990)( 勤 勉 性 の 原 則 はスキル 及 び 時 間 を 含 む 発 明 者 の<br />

状 況 に 対 して 与 えられねばならない。すなわち、 確 証 要 件 は 発 明 者 の 証 言 に 対 してのみ 適 用<br />

する);Huelster v. Reiter, 168 F.2d 542, 78 USPQ 82 (CCPA 1948)( 発 明 者 が 当 該 発 明 の<br />

現 実 の 実 施 化 を 行 うことができなかった 場 合 、 発 明 者 は 出 願 によって 前 向 きに 当 該 発 明 を 実<br />

施 に 移 すことができなかった 理 由 も 示 さねばならない。)<br />

特 許 出 願 の 準 備 及 び 申 請 において 求 められる 勤 勉 性<br />

特 許 出 願 の 準 備 及 び 申 請 において 代 理 人 の 勤 勉 性 が 発 明 者 の 利 益 のために 効 力 を 生 ずる。 着<br />

想 は 少 なくとも 早 ければ、 特 許 出 願 の 草 案 が 発 明 者 に 代 わる 特 許 弁 護 士 により 仕 上 げられた<br />

特 許 出 願 草 稿 の 日 に 確 立 していた。 着 想 は 開 示 事 項 に 比 べると 署 名 事 項 ではない。 特 許 弁 護<br />

士 は 特 定 の 名 前 を 挙 げられた 者 に 代 わって 特 許 出 願 を 準 備 しないが、 真 正 の 発 明 主 体 に 代 わ<br />

って 準 備 する。 実 施 に 6 日 間 でファイル 出 願 は 受 け 入 れられる。Haskell v. Coleburne, 671<br />

F.2d 1362, 213 USPQ 192, 195 (CCPA 1982)。 次 も 参 照 のこと。Bey v. Kollonitsch, 866 F.2d<br />

1024, 231 USPQ 967 (Fed. Cir. 1986)( 合 理 的 勤 勉 性 は 特 許 弁 護 士 に 求 められる 全 てである。<br />

合 理 的 勤 勉 性 は 特 許 弁 護 士 が 連 続 する 必 要 な 継 続 期 間 にわたり、 出 願 について 合 理 的 に 努 力<br />

する 場 合 に 達 成 される。 特 許 弁 護 士 に 発 生 順 に 取 り 上 げる 別 件 の 合 理 的 残 務 があって 速 やか<br />

に 遂 行 する 場 合 、それで 十 分 である。 出 願 の 最 終 的 準 備 に 実 質 的 に 寄 与 する 関 連 事 例 への 取<br />

り 組 みは 勤 勉 性 として 認 められる。<br />

156


勤 勉 を 求 められる 期 間 の 終 わりは 現 実 の 実 施 化 又 は 擬 制 的 実 施 化 のいずれか 一 方 によって 示<br />

される<br />

「その[ 勤 勉 性 が 求 められる] 期 間 の 終 わりが 現 実 の 実 施 化 でなく 擬 制 的 実 施 化 によって 決 定<br />

されることは 全 く 重 要 でない。」Justus v. Appenzeller, 177 USPQ 332, 340-41 (Bd. Pat.<br />

Inter. 1971)。<br />

157


2141 特 許 法 第 103 条 に 基 づいて 自 明 性 を 判 断 するための 審 査 指 針<br />

特 許 法 第 103 条 特 許 要 件 ; 非 自 明 の 保 護 対 象<br />

(a) 特 許 は、 特 許 を 取 得 しようとする 保 護 対 象 と 先 行 技 術 との 違 いは、 保 護 対 象 全 体 として<br />

その 発 明 が 行 われた 時 点 において 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうという 場 合 、 当 該 発<br />

明 が 本 章 第 102 条 に 規 定 されると 全 く 同 じに 開 示 又 は 記 載 されないとしても 取 得 することが<br />

できない。 特 許 性 は, 発 明 のされ 方 によっては 否 定 されない。<br />

(b)(1) (a)の 規 定 に 拘 らず, 本 項 に 基 づき 手 続 を 進 行 させる 特 許 出 願 人 による 時 宜 を 得 た 選<br />

択 により, 第 102 条 に 基 づく 新 規 性 及 び 本 条 の(a)に 基 づく 非 自 明 性 を 有 する 組 成 物 を 使 用 す<br />

る 若 しくは 生 じる 生 物 工 学 的 プロセスは, 次 に 挙 げる 各 号 に 該 当 する 場 合 , 非 自 明 であると<br />

みなされる。<br />

(A) プロセス 及 び 組 成 物 に 対 するクレームが 同 一 の 特 許 出 願 又 は 同 一 の 有 効 出 願 日 を 有 する<br />

別 の 出 願 に 含 まれている。<br />

(B) 当 該 組 成 物 及 び 当 該 プロセスは 発 明 時 点 において 同 一 人 により 所 有 されていた 若 しくは<br />

同 一 人 への 譲 渡 義 務 が 課 せられていた。<br />

(2) (1)のプロセスについて 発 行 される 特 許 は,<br />

(A) 当 該 プロセスにおいて 使 用 される 若 しくは 当 該 プロセスによって 作 られる 組 成 物 に 対 す<br />

るクレームも 含 んでいなければならない。 又 は、<br />

(B) 当 該 組 成 物 が 他 の 特 許 でクレームされている 場 合 , 第 154 条 に 拘 らず,その 他 の 特 許 と<br />

同 じ 日 に 効 力 を 失 うようになっていなければならない。<br />

(3) (1)の 適 用 上 ,「 生 物 工 学 的 方 法 」という 用 語 は 次 に 掲 げる 各 号 を 意 味 する。<br />

(A) 単 細 胞 又 は 多 細 胞 有 機 体 を 遺 伝 学 的 に 改 変 若 しくは 誘 導 するプロセスであって、 次 に 掲<br />

げる 目 的 を 有 するもの。<br />

(i) 外 因 性 ヌクレオチド 配 列 を 発 現 すること。<br />

(ii) 内 在 性 ヌクレオチド 配 列 の 発 現 を 阻 害 , 排 除 , 増 加 又 は 改 変 すること。 又 は、<br />

(iii) 自 然 の 法 則 では 当 該 有 機 物 と 関 連 のない 特 定 の 生 理 学 的 特 徴 を 発 現 すること。<br />

(B) 単 クローン 抗 体 のような 特 定 の 蛋 白 質 を 発 現 する 細 胞 系 を 生 み 出 す 細 胞 融 合 法 。 及 び、<br />

(C) (A) 又 は(B) 若 しくは(A) 及 び(B)の 組 合 せによって 定 義 されるプロセスによって 生 産 され<br />

る 製 品 を 使 用 する 方 法 。<br />

(c)(1) 他 人 によって 開 発 された 保 護 対 象 であって, 本 章 の 第 102 条 (e),(f) 及 び(g)の 1 以<br />

上 に 基 づいてのみ 先 行 技 術 としての 資 格 を 有 するものは,その 保 護 対 象 及 びクレームの 発 明<br />

が,そのクレームの 発 明 が 行 われた 時 点 において 同 一 人 によって 所 有 されていた, 又 は 同 一<br />

人 への 譲 渡 義 務 が 課 せられていた 場 合 , 本 条 に 基 づく 特 許 性 を 排 除 しないものとする。<br />

(2) 本 項 の 適 用 上 , 他 人 によって 開 発 された 保 護 対 象 及 びクレームの 発 明 は 同 一 人 によって<br />

所 有 されている、 若 しくは 同 一 人 への 譲 渡 義 務 が 課 せられているものとみなす。ただし、 次<br />

に 掲 げる 各 号 に 該 当 する 場 合 とする。<br />

(A) クレームの 発 明 はそのクレームの 発 明 が 行 われた 日 以 前 に 有 効 であった 共 同 研 究 合 意 の<br />

当 事 者 により, 又 はその 当 事 者 に 代 わって 行 われた。<br />

(B) クレームの 発 明 は 共 同 研 究 契 約 の 範 囲 内 で 行 われた 活 動 の 結 果 として 行 われた。 及 び、<br />

(C) クレームの 発 明 の 特 許 出 願 は 共 同 研 究 契 約 の 当 事 者 名 を 開 示 している、 若 しくは 開 示 す<br />

るよう 補 正 されている。<br />

(3) (2)の 適 用 上 ,「 共 同 研 究 契 約 」という 用 語 はクレームの 発 明 の 分 野 における 試 験 , 開 発<br />

158


又 は 研 究 上 の 活 動 遂 行 を 目 的 として 2 以 上 の 人 又 は 事 業 体 によって 締 結 された 書 面 による 契<br />

約 , 許 諾 又 は 協 力 の 合 意 をいう。<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づいて 自 明 性 を 判 断 するための 審 査 指 針<br />

これらの 審 査 指 針 は 本 庁 審 査 官 に 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 自 明 性 の 適 切 な 判 断 を 支 援 しよう<br />

と、KSR International Co. v. Teleflex Inc. (KSR), 550 U.S. ___,82 USPQ2d 1385 (2007)<br />

における 最 高 裁 判 所 の 最 近 の 判 決 に 照 らして 適 切 な 裏 付 け 理 由 を 提 供 しようとするものであ<br />

る。 本 審 査 指 針 は 本 庁 の 本 法 に 関 する 現 在 の 理 解 に 基 づくものであって、 最 高 裁 判 所 の 拘 束<br />

力 を 有 する 先 例 と 完 全 な 整 合 性 を 有 すると 信 じられる。KSR 事 例 を 通 して 自 明 性 の 法 則 にさ<br />

らなる 進 展 が 期 待 できるはずである。 従 って、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 のどの 決 定 がそのまま 存<br />

続 するかは 明 確 でない。<br />

これらの 審 査 指 針 は 実 体 法 規 を 制 定 するものではなく、 従 って 法 的 効 力 も 拘 束 力 もない。 内<br />

部 事 務 管 理 の 問 題 として 作 成 したものであり、 何 人 によっても 実 質 的 にせよ 手 続 き 上 にせよ<br />

本 庁 に 対 し 行 使 可 能 な 権 利 若 しくは 利 便 を 与 えようとするものではない。 拒 絶 は 実 体 法 に 基<br />

づいて 行 われるものであり、それは 上 訴 可 能 な 拒 絶 である。 従 って、 本 庁 審 査 官 による 本 審<br />

査 指 針 の 不 遵 守 は 上 訴 することも 嘆 願 することもできない。<br />

I. KSR 判 決 および 自 明 性 の 法 則 の 原 理<br />

KSR 事 例 における 最 高 裁 判 所 は Graham v. John Deere Co. (383 U.S. 1, 148 USPQ 459 (1966))<br />

において 示 された 自 明 性 を 判 断 するためのよく 知 られた 枠 組 みを 再 確 認 し、 連 邦 巡 回 控 訴 裁<br />

判 所 は 厳 格 かつ 形 式 に 過 ぎる 方 法 で TSM( 教 示 ・ 示 唆 ・ 動 機 ) 基 準 を 適 用 して 判 断 を 誤 ったと<br />

した。KSR, 550 U.S. at ___、82 USPQ2d at1391。 具 体 的 には、 最 高 裁 判 所 は、 連 邦 巡 回 控<br />

訴 裁 判 所 は 次 に 掲 げる 4 方 法 で 誤 りを 犯 したとした。(1)「 裁 判 所 及 び 特 許 審 査 官 は 特 許 権 者<br />

が 解 決 しようとしていた 問 題 のみを 調 べるべきと 判 断 することによって」(Id. at ___、82<br />

USPQ2d at 1397);(2)「 問 題 を 解 決 しようとする 当 業 者 は 同 一 の 問 題 を 解 決 することを 目 的<br />

とする 先 行 技 術 のそれらの 要 素 にのみ 導 かれる」と 推 測 することによって( 同 上 );(3) 「 特<br />

許 クレームは、 要 素 の 組 合 せは『 当 然 の 試 行 』であったことを 単 に 示 しただけで 自 明 性 が 証<br />

明 できない」と 結 論 することによって( 同 上 ); 及 び、(4)「 後 知 恵 的 偏 見 の 犠 牲 になる 裁 判 所<br />

及 び 特 許 審 査 官 のリスク」を 過 度 に 強 調 することにより、 従 って「 良 識 に 頼 る 事 実 認 定 者 を<br />

否 定 する 厳 格 な 予 防 的 ルール」を 適 用 することによって( 同 上 )。<br />

KSR 事 例 において 最 高 裁 判 所 は「 先 行 技 術 において 確 認 される 要 素 の 組 合 せに 基 づく 特 許 を<br />

付 与 する 際 に 注 意 が 必 要 なこと」Id. at ___、82 USPQ2d at 1395、を 特 に 強 調 し、 特 許 は 自<br />

明 であると 判 断 されるかもしれない 状 況 を 検 討 した。 重 要 なことは、 最 高 裁 判 所 が「 周 知 の<br />

方 法 によるよく 知 られた 要 素 の 組 合 せは 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずるに 過 ぎない 場 合 、 自 明 とな<br />

りやすい」Id. at ___、82 USPQ2d at 1395 という 先 例 による 法 則 を 再 確 認 したことである。<br />

最 高 裁 判 所 は「この 原 則 を 説 明 した Graham 事 例 の 後 に 判 決 を 下 した 3 事 例 」があることを 述<br />

べている。Id. at ___、82 USPQ2d at 1395。(1)「United States v. Adams の 事 例 において<br />

裁 判 所 は 特 許 が 先 行 技 術 において 周 知 の 構 造 を 単 にその 分 野 で 他 の 者 に 知 られた 1 要 素 を 置<br />

き 換 えるだけの 変 更 でクレームした 場 合 、その 組 合 せは 予 想 通 りの 結 果 以 上 のものを 生 じな<br />

ければならないことを 確 認 した。」Id. at ___、82 USPQ2d at 1395。(2)「Anderson’s-Black<br />

Rock, Inc. v. Pavement Salvage Co. 事 例 において・・・ 組 合 せにおける[ 以 前 から 存 在 してい<br />

159


る]2 要 素 はそれらが 個 別 の 順 次 処 理 であったであろうと 同 じ 程 度 であった。」Id. at ___、<br />

82 USPQ2d at 1395。(3)「Sakraida v. AG Pro, Inc. 事 例 において 裁 判 所 は、 特 許 が 単 に 旧<br />

要 素 を 並 べただけの 場 合 、 各 要 素 がすでに 知 られている 同 一 機 能 を 果 たすものであって 生 み<br />

出 すものはそのような 配 置 から 期 待 されるであろうにすぎない 場 合 、その 組 合 せは 新 規 性 が<br />

ないとする 結 論 ・・・を 導 いた。」Id. at ___、82 USPQ2d at 1395 乃 至 96( 内 部 引 用 省 略 )。こ<br />

れらの 事 例 の 重 要 性 を 示 す 原 則 は、 先 行 技 術 の 要 素 の 組 合 せをクレームする 特 許 出 願 が 自 明<br />

であったであろうか 否 かが 問 題 となる 場 合 に 教 えられることが 多 い。 最 高 裁 判 所 はさらに 次<br />

のように 述 べている。<br />

「ある 成 果 が 努 力 分 野 で 利 用 可 能 となった 場 合 、デザイン・インセンティブ 及 び 他 の 市 場 要<br />

因 が、 同 分 野 異 分 野 を 問 わず、その 変 形 した 形 を 促 すことがある。 当 業 者 が 予 測 可 能 なバリ<br />

エーションの 実 施 が 可 能 な 場 合 、おそらく 第 103 条 がその 特 許 性 の 阻 害 事 由 となる。 同 じ 理<br />

由 で、ある 技 術 がある 装 置 の 改 良 に 使 用 され、そこで 当 業 者 が、それが 同 じ 方 法 で 類 似 装 置<br />

を 改 良 することに 気 づくであろう 場 合 にその 技 術 を 使 用 することはそれの 実 際 の 適 用 が 自 ら<br />

の 技 能 を 超 えたものでない 限 り 自 明 である。」Id. at ___、82 USPQ2d at 1396。<br />

周 知 の 要 素 の 組 合 せの 自 明 性 を 検 討 する 場 合 、 従 って 有 効 な 質 問 は「その 改 良 は 構 築 された<br />

機 能 に 照 らして 先 行 技 術 要 素 の 予 測 可 能 な 使 用 のもの 以 上 であるかどうか」である。Id. at<br />

___、82 USPQ2d at 1396。<br />

II. Graham v. John Deere Co. 事 例 に 関 する 基 本 的 な 事 実 に 基 づく 審 査<br />

発 明 の 時 点 で 当 業 者 に 自 明 であったであろう 発 明 は 特 許 性 がない。 特 許 法 第 103 条 (a)を 参 照<br />

のこと。 最 高 裁 判 所 が KSR の 事 例 において 繰 り 返 しているように、 特 許 法 第 103 条 による 自<br />

明 性 の 判 断 に 関 する 客 観 解 析 の 枠 組 みは Graham v. John Deere Co., 383 U.S. 1, 148 USPQ<br />

459 (1966)に 述 べられている。 自 明 性 は、 根 拠 を 成 す 事 実 審 理 に 基 づく 法 律 の 問 題 である。<br />

裁 判 所 により 明 確 に 述 べられた 事 実 審 理 は 次 のとおり。<br />

(A) クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 違 いを 確 認 すること。<br />

(B) クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 違 いを 確 認 すること。<br />

(C) 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 解 決 すること。<br />

自 明 性 の 問 題 にかかわる 客 観 的 証 拠 が 本 庁 審 査 官 により 評 価 されねばならない。Id. at 17-18、<br />

148 USPQ at 467。かかる 証 拠 には、「 副 次 的 考 察 事 項 」として 言 及 されることがあるが、 商<br />

業 的 な 成 功 、 長 い 間 望 まれている 未 解 決 の 要 望 、 他 人 の 不 履 行 及 び 予 期 せぬ 結 果 の 証 拠 が 含<br />

まれているかもしれない。その 証 拠 は 出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 する、 出 願 の 願 書 に 添 付 する、<br />

又 は 手 続 き 中 の 別 のときに 時 宜 にかなった 方 法 で 提 出 することができる。 任 意 の 客 観 的 証 拠<br />

に 与 えるべき 重 みはその 都 度 に 割 り 出 す。 出 願 人 が 証 拠 を 提 出 したという 単 なる 事 実 は、そ<br />

の 証 拠 が 自 明 性 の 争 点 を 解 決 することを 意 味 するものではない。<br />

自 明 性 の 問 題 はこれらの 事 実 判 定 に 基 づいて 解 決 しなければならない。 事 例 ごとに 異 なって<br />

はいてもそれ 自 体 の 事 実 に 基 づいて 決 定 されねばならない。Graham の 要 因 は 提 出 時 に 副 次 的<br />

考 察 事 項 を 含 んでおり 任 意 の 自 明 性 解 析 における 対 照 審 理 である。Graham 要 因 は KSR, 550<br />

U.S. at ___、82 USPQ2d at 1391 (2007)において 示 された 事 実 関 係 で 自 明 性 の 検 討 及 び 決 定<br />

において 最 高 裁 判 所 により 再 確 認 され 依 拠 された。 最 高 裁 判 所 は Graham の 事 例 以 来 、どの 自<br />

明 性 決 定 においても Graham の 要 因 を 使 用 している。Sakraida v. Ag Pro, Inc., 425 U.S. 273,<br />

189 USPQ 449, reh fg denied, 426 U.S. 955 (1976);Dann v. Johnston, 425 U.S. 219, 189<br />

160


USPQ 257 (1976); 及 び Anderson’s-Black Rock, Inc. v. Pavement Salvage Co., 396 U.S.<br />

57, 163 USPQ 673 (1969)を 参 照 のこと。KSR 事 例 において 最 高 裁 判 所 が 述 べたとおり、「 一<br />

連 のこれらの 問 題 は 任 意 の 特 定 の 事 例 に 記 録 されるかもしれないが、[Graham] 要 因 は 依 然 と<br />

して 照 査 する 審 理 を 定 義 する。」KSR, 550 U.S.at ___、82 USPQ2d at 1391。<br />

事 実 認 定 者 としての 本 庁 審 査 官<br />

本 庁 審 査 官 は Graham 審 理 を 解 決 する 際 に 事 実 認 定 者 として 重 要 な 役 割 を 果 たす。 自 明 性 の 最<br />

終 的 決 定 は 法 的 結 論 であるがその 根 拠 を 成 す Graham 審 理 は 事 実 に 基 づくものであることが<br />

念 頭 になくてはならない。 従 って、 自 明 性 による 拒 絶 を 行 う 場 合 、 本 庁 審 査 官 は 文 書 記 録 に<br />

適 用 される 引 例 の 技 術 の 状 態 及 び 教 示 される 内 容 に 関 する 事 実 認 定 がふくまれていることを<br />

確 認 しなければならない。ある 特 定 の 状 況 では、 当 業 者 が 先 行 技 術 の 教 示 する 内 容 を 理 解 す<br />

る 方 法 、 若 しくは 当 業 者 が 周 知 している 若 しくは 周 知 できたであろうことに 関 し、 明 示 的 認<br />

定 を 含 めることも 重 要 となるかもしれない。 本 庁 審 査 官 により 行 われる 事 実 認 定 は 自 明 性 を<br />

確 立 するために 必 要 な 基 礎 となる。<br />

事 実 認 定 がはっきりと 表 現 された 時 点 で、 本 庁 審 査 官 は 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 自 明 性 によ<br />

る 拒 絶 を 支 持 する 説 明 を 用 意 しなければならない。 特 許 法 第 132 条 は、 出 願 人 が 法 的 手 続 き<br />

を 進 める 最 善 の 方 法 を 決 定 することができるようにクレームの 拒 絶 理 由 を 通 知 されることを<br />

求 めている。 拒 絶 通 知 において 拒 絶 を 支 持 する 事 実 認 定 及 び 理 論 的 根 拠 を 明 確 に 説 明 するこ<br />

とは、 特 許 の 適 格 性 に 関 する 問 題 点 の 早 期 解 決 に 繋 がる。<br />

すなわち、 自 明 性 を 判 断 する 際 の 焦 点 は 当 業 者 が 当 該 発 明 の 時 点 で 何 を 知 っていたか、そし<br />

てそのような 者 がその 知 識 に 照 らして 合 理 的 に 何 にできたであろうことを 期 待 したかでなく<br />

てはならない。その 知 識 及 び 能 力 の 起 源 が 文 書 先 行 技 術 、 当 該 技 術 分 野 の 一 般 知 識 若 しくは<br />

常 識 であったか 否 かにかかわらない。 以 下 は Graham の 事 実 審 理 についての 考 察 である。<br />

A. 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容 を 明 らかにする<br />

先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容 を 明 らかにする 際 、 本 庁 審 査 官 は 最 初 に、 出 願 は 何 を 発 明 した<br />

かを 理 解 するため、クレームを 含 めて 明 細 書 を 読 むことにより、 審 査 中 の 出 願 で 開 示 されク<br />

レームされる 発 明 の 完 全 な 理 解 を 得 なければならない。MPEP 第 904 条 を 参 照 のこと。クレー<br />

ムされた 発 明 の 対 象 範 囲 はクレームに「 明 細 書 と 整 合 性 を 有 する 最 も 広 い 合 理 的 な 解 釈 」を<br />

与 えることにより 明 確 に 判 断 しなければならない。Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303,<br />

1316, 75 USPQ2d 1321, 1329 (Fed. Cir. 2005) 及 び MPEP §2111 を 参 照 のこと。クレーム<br />

された 発 明 の 対 象 範 囲 が 明 らかになった 時 点 で、 本 庁 審 査 官 は 何 を 調 査 しどこを 調 査 するか<br />

を 判 断 しなければならない。<br />

1. 調 査 すべきこと<br />

調 査 はクレームされた 保 護 対 象 を 対 象 とするだけでなく、クレームされることが 合 理 的 に 期<br />

待 される 開 示 された 特 性 も 対 象 としなくてはならない。MPEP 第 904.02 条 を 参 照 のこと。 拒<br />

絶 は 組 み 合 わせるべき 教 示 又 は 示 唆 に 基 づいている 必 要 はないが、 推 奨 される 調 査 はそのよ<br />

うな 教 示 又 は 示 唆 が 存 在 する 場 合 にはそれらを 提 供 する 引 例 を 認 定 する 方 向 に 向 けられるも<br />

のとなる。<br />

2. 調 査 すべき 場 所<br />

本 庁 審 査 官 は、 先 行 技 術 の 調 査 に 関 して MPEP 第 904 条 乃 至 第 904.03 条 に 規 定 される 一 般 調<br />

査 の 指 針 に 従 って 進 めなくてはならない。 本 庁 審 査 官 は、 特 許 法 第 103 条 の 目 的 上 、 先 行 技<br />

161


術 は 出 願 人 の 活 動 分 野 若 しくは 出 願 人 が 関 与 する 特 定 の 問 題 に 合 理 的 に 関 連 する 分 野 のいず<br />

れかとなることに 気 づかされる。さらに、 出 願 人 の 分 野 以 外 の 努 力 分 野 の(KSR 事 例 において<br />

裁 判 者 が 指 摘 しているように「 成 果 が 努 力 分 野 において 利 用 可 能 となった 場 合 、 同 分 野 異 分<br />

野 を 問 わず、デザイン・インセンティブ 及 びその 他 の 市 場 要 因 がその 変 形 した 形 を 促 すこと<br />

がある。」550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1396( 強 調 は 引 用 者 による))、 若 しくは 出 願 人 が<br />

解 決 しようとした 問 題 とは 異 なる 問 題 を 解 決 する 先 行 技 術 もまた 特 許 法 第 103 条 の 目 的 上 検<br />

討 されることがある。(KSR 事 例 において 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。「 本 事 例 におけ<br />

る・・・ 最 初 の 間 違 いは・・・、 裁 判 所 及 び 特 許 審 査 官 は 特 許 権 者 が 解 決 しようとした 問 題 のみを<br />

調 査 すべきとしていたことである。 控 訴 裁 判 所 は 特 許 権 者 が 意 欲 を 燃 やしている 問 題 は 当 該<br />

特 許 の 保 護 対 象 によって 取 り 扱 われる 多 数 のなかのたった 一 つかもしれないことを 認 識 して<br />

いなかった・・・。 二 つ 目 の 間 違 いは・・・、 問 題 を 解 決 しようとする 当 業 者 は 同 一 の 問 題 を 解 決<br />

することを 目 的 とする 先 行 技 術 のそれらの 要 素 にのみ 導 かれるとしたことである。」550 U.S.<br />

at ___、82 USPQ2d at 1397。 最 高 裁 判 所 の KSR 判 決 に 先 立 つ 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 の 判 例 は<br />

KSR 裁 判 によるこれらの 陳 述 とほぼ 一 致 している。 参 照 事 例 として、In re Dillon, 919 F.2d<br />

688, 693, 16 USPQ2d 1897, 1902 (Fed. Cir. 1990)( 大 法 廷 )。(「 自 明 性 の 一 応 の 証 明 をす<br />

るために、クレームされた 化 合 物 と 先 行 技 術 の 化 合 物 ( 若 しくは 組 成 物 の 鍵 となる 化 合 物 )と<br />

の 間 の 構 造 的 類 似 性 が 示 されること、 及 び、クレームされた 化 合 物 又 は 組 成 物 は 出 願 人 によ<br />

って 新 しく 発 見 されたものと 同 一 若 しくは 類 似 の 有 用 性 を 有 するとする 先 行 技 術 の 示 唆 又<br />

は 期 待 が 在 ることは 必 要 としない」);In re Lintner, 458 F.2d 1013, 1018, 173 USPQ 560,<br />

562 (CCPA 1972)(「[ 出 願 人 が] 異 なる 目 的 のために 糖 を 使 用 するという 事 実 は、 先 行 技 術 の<br />

組 成 物 におけるその 使 用 が 引 例 に 開 示 される 目 的 から 一 応 の 自 明 性 となるであろうとの 結 論<br />

を 変 えることはない。」))<br />

先 行 技 術 を 構 成 するものは 何 かの 考 察 については、MPEP 第 901 条 乃 至 第 901.06 条 (d) 及 び 第<br />

2121 条 乃 至 第 2129 条 を 参 照 のこと。<br />

B. クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 違 いを 確 認 する<br />

クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 違 いを 確 認 することはクレームの 文 言 を 解 釈 すること、MPEP<br />

第 2111 条 を 参 照 、 及 び 当 該 発 明 と 先 行 技 術 の 双 方 を 全 体 として 検 討 することが 必 要 とされる。<br />

MPEP 第 2141.02 条 を 参 照 のこと。<br />

C. 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 解 決 する<br />

いずれの 自 明 性 による 拒 絶 も、 適 用 先 行 技 術 から 見 て 明 示 的 黙 示 的 を 問 わず、 当 業 者 レベル<br />

の 表 示 を 含 まなくてはならない。 当 業 者 レベルに 関 する 認 定 は 自 明 性 の 問 題 解 決 の 部 分 的 根<br />

拠 として 使 用 することができる。<br />

当 業 者 とは 当 該 発 明 の 時 点 で 関 連 技 術 を 周 知 すると 推 定 される 仮 想 上 の 人 物 とする。 当 該 技<br />

術 分 野 の 当 業 者 レベル 判 断 する 際 に 検 討 される 要 因 には 次 に 挙 げる 各 号 がある。(1)「 当 該 技<br />

術 分 野 で 遭 遇 する 問 題 類 型 」、(2)「それらの 問 題 に 対 する 先 行 技 術 のソリューション」、(3)<br />

「イノベーションが 起 きる 速 度 」、(4)「 技 術 の 高 度 化 」、 及 び(5)「 当 該 分 野 現 役 労 働 者 の<br />

教 育 レベル。 当 該 事 例 ではすべての 要 因 が 提 示 されないかもしれず、1 以 上 の 要 因 が 支 配 的<br />

であるかもしれない。」In re GPAC, 57 F.3d 1573, 1579, 35 USPQ2d 1116, 1121 (Fed. Cir.<br />

1995);Custom Accessories, Inc. v. Jeffrey-Allan Industries, Inc., 807 F.2d 955, 962,<br />

1 USPQ2d 1196, 1201 (Fed. Cir. 1986);Environmental Designs, Ltd. V. Union Oil Co.,<br />

713 F.2d 693, 696, 218 USPQ 865, 868 (Fed. Cir. 1983)。<br />

162


「 当 業 者 もまた 通 常 的 創 造 性 を 有 する 者 であって 機 械 的 に 行 動 する 者 ではない。」KSR, 550<br />

U.S. at ___、82 USPQ2d at 1397。「 多 くの 事 例 で 当 業 者 はパズルのピースのように 複 数 の<br />

特 許 の 教 示 される 内 容 を 組 み 合 わせることができる。」 同 上 。 本 庁 審 査 官 もまた「 当 業 者 が<br />

用 いるであろう 推 測 及 び 創 造 的 な 手 順 」を 考 慮 することができる。Id. at ___、82 USPQ2d at<br />

1396。<br />

上 記 の 要 因 に 加 えて、 本 庁 審 査 官 は 当 業 者 の 知 識 及 び 技 能 を 記 載 するため 自 らの 技 術 知 見 に<br />

依 拠 することができる。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は、 審 査 官 及 び 審 判 部 の 特 許 審 判 官 は「 自 らが<br />

取 り 組 む 分 野 の 科 学 的 能 力 を 有 する 者 」であるって 彼 らの 認 定 は「 彼 らの 科 学 的 知 識 によっ<br />

て 先 行 技 術 の 引 例 の 意 味 について 当 業 者 へ 伝 えられる」と 述 べている。In re Berg , 320 F.3d<br />

1310, 1315, 65 USPQ2d 2003, 2007 (Fed. Cir. 2003)。<br />

III. 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠<br />

Graham の 事 実 審 理 が 解 決 した 時 点 で 本 庁 審 査 官 はクレームの 発 明 は 当 業 者 にとって 自 明 で<br />

あったであろうかどうかを 判 断 しなければならない。<br />

「 自 明 性 の 分 析 は 刊 行 された 論 文 及 び 発 行 された 特 許 の 明 示 的 内 容 の 重 要 度 を 過 度 に 強 調 し<br />

て・・・ 限 定 してしまうことはできない。・・・ 多 くの 分 野 でもしかすると 自 明 の 技 術 又 は 組 合 せ<br />

についてほとんど 考 察 が 行 われず、また 科 学 文 献 ではなく 市 場 需 要 が 設 計 動 向 を 推 進 する 場<br />

合 が 多 いかもしれない。KSR, 550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1396。」<br />

先 行 技 術 は 適 用 される 引 例 だけに 限 定 されるものでなく 当 業 者 の 理 解 を 含 むものである。 先<br />

行 技 術 の 引 例 ( 組 み 合 わされる 場 合 は 複 数 引 例 )がクレーム 限 定 のすべてを 教 示 若 しくは 示 唆<br />

する 必 要 はないが、 本 庁 審 査 官 は 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 違 いが 当 業 者 にとって 自 明<br />

であったであろう 理 由 を 説 明 しなければならない。「 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 間 に 単<br />

に 違 いが 存 在 するだけでは 当 該 発 明 の 非 自 明 性 の 立 証 とならない。」Dann v. Johnston, 425<br />

U.S. 219, 230, 189 USPQ 257, 261 (1976)。 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 間 のギャップは<br />

「 当 業 者 にとって[クレームが] 非 自 明 となるほど 大 きく」ないかもしれない。 同 上 。 自 明 性<br />

の 判 断 においては、クレームされている 発 明 をしようとする 特 定 の 動 機 も 発 明 者 が 解 決 しよ<br />

うとしている 問 題 も 決 定 的 ではない。 適 切 な 分 析 はクレームの 発 明 は、すべての 事 実 を 検 討<br />

した 後 で 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうかどうかである。 特 許 法 第 103 条 (a)を 参 照 の<br />

こと。 引 用 の 先 行 技 術 の 開 示 以 外 の 要 因 は、ギャップを 埋 めることが 当 業 者 にとって 自 明 で<br />

あったであろうとの 結 論 に 対 して 根 拠 を 提 供 することができる。 以 下 で 検 討 する 理 由 はその<br />

ような 場 合 に 自 明 性 を 証 明 するために 適 用 することのできる 論 拠 を 概 観 するものである。<br />

先 行 技 術 の 調 査 及 び Graham の 事 実 審 理 で 自 明 性 による 拒 絶 が 行 われる 可 能 性 が 明 らかにな<br />

った 場 合 、よく 知 られた TSM( 教 示 ・ 示 唆 ・ 動 機 )の 理 論 的 根 拠 を 用 いてかかる 拒 絶 をおこな<br />

わなくてはならない。 最 高 裁 判 所 は KSR 事 例 において TSM の 過 度 に 厳 格 な 適 用 に 対 して 警 告<br />

をしているが、TSM は 自 明 性 を 判 断 するために 使 用 できる 数 多 い 有 効 な 理 論 的 根 拠 の 一 つで<br />

あることも 認 めている。( 最 高 裁 判 所 によれば、 自 明 性 の 問 題 に 対 する TSM 手 法 の 確 立 は「 役<br />

に 立 つ 洞 察 力 を 獲 得 した」。550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1396 ( 引 用 In re Bergel, 292<br />

F.2d 955, 956-57, 130 USPQ 206, 207-208 (1961))。さらに、 裁 判 所 は「TSM 試 験 の 根 底 を<br />

成 す 着 想 とGraham による 解 析 との 間 に 避 けがたい 矛 盾 はない」と 説 明 した。550 U.S. at ___、<br />

82 USPQ2d at 1396。また、 最 高 裁 判 所 は、 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は「 多 くの 事 例 において[KSR<br />

事 例 で 明 記 された]これらの 原 則 に 従 ってテストを 適 用 していることに 疑 いはない」ともコメ<br />

163


ントした。550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1396)。また、 本 庁 審 査 官 は 下 記 のその 他 の 理 論<br />

的 根 拠 の 1 以 上 が 自 明 性 の 結 論 を 支 持 するかどうかを 検 討 しなくてはならない。KSR 事 例 に<br />

おける 裁 判 所 は Graham 審 理 において 築 かれた 自 明 性 の 判 断 に 適 切 な「 機 能 的 アプローチ」と<br />

整 合 する 自 明 性 の 結 論 を 裏 付 ける 多 くの 理 論 的 根 拠 を 特 定 した。KSR, 550 U.S. at ___、82<br />

USPQ2d at 1395-97。 下 記 に 示 す 理 論 的 根 拠 のリストは 包 括 的 なリストを 意 図 するものではな<br />

い。 自 明 性 の 結 論 を 裏 付 けるその 他 の 理 論 的 根 拠 は 本 庁 審 査 官 によって 依 拠 される 得 る。<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 鍵 は、クレームの 発 明 が 自 明 であったであろう 理 由<br />

の 疑 いのない 明 瞭 度 である。KSR 事 例 の 最 高 裁 判 所 は 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 け<br />

る 解 析 は 明 示 的 にしなくてはならないと 指 摘 している。 最 高 裁 判 所 は In re Kahn, 441 F.3d<br />

977, 988, 78 USPQ2d 1329, 1336 (Fed. Cir. 2006)を 引 用 し、「 自 明 性 による 拒 絶 は 十 分 な<br />

事 実 に 基 づかない 単 なる 陳 述 によって 是 認 することはできない。 自 明 性 の 法 的 結 論 を 裏 付 け<br />

る 何 らかの 合 理 的 支 えを 有 する 明 瞭 な 理 由 がなければならない」と 述 べた。KSR, 550 U.S. at<br />

___、82 USPQ2d at 1396。 自 明 性 の 結 論 を 裏 付 け 得 る 例 示 的 な 論 理 的 根 拠 は 次 に 掲 げるもの<br />

がある。<br />

(A) 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずる 周 知 の 方 法 による 先 行 技 術 要 素 の 結 合<br />

(B) 周 知 の 要 素 の 予 測 可 能 な 結 果 を 得 ることができる 他 の 要 素 との 単 純 な 置 換<br />

(C) 類 似 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )を 改 善 するために 同 一 方 法 で 周 知 の 技 術 を 使 用<br />

(D) 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずることができる 改 善 の 準 備 ができている 周 知 の 考 案 品 ( 方 法 又 は<br />

製 品 )に 周 知 の 技 術 を 応 用<br />

(E) 「 当 然 の 試 行 」― 成 功 の 合 理 的 期 待 をもって 限 定 された 特 定 の 予 測 可 能 な 解 決 策 から 選<br />

択<br />

(F) 一 つの 努 力 分 野 で 周 知 の 成 果 は、 同 一 分 野 異 分 野 を 問 わずデザイン・インセンティブ 若<br />

しくはその 他 の 市 場 要 因 に 基 づき、 使 用 のために 成 果 の 変 形 を 促 進 することができる。ただ<br />

し、その 変 形 したものが 当 業 者 に 推 測 可 能 な 場 合 。<br />

(G) 当 業 者 に 先 行 技 術 の 引 例 を 修 正 させる 若 しくは 先 行 技 術 の 引 例 の 教 示 を 組 み 合 わさせて<br />

クレームの 発 明 に 到 達 させるであろう 先 行 技 術 の 教 唆 、 示 唆 又 は 動 機<br />

上 に 挙 げる 理 論 的 根 拠 について、 理 論 的 根 拠 をどのように 使 用 して 自 明 性 の 認 定 を 裏 付 ける<br />

かの 説 明 例 と 共 に 検 討 するものとして、MPEP 第 2143 条 を 参 照 のこと。また、 自 明 性 の 判 断<br />

の 裏 付 けに 関 する 審 査 指 針 の 詳 細 については、MPEP 第 2144 条 乃 至 第 2144.09 条 を 参 照 のこ<br />

と。<br />

IV. 出 願 人 の 反 論<br />

本 庁 審 査 官 が Graham の 事 実 認 定 を 確 立 してクレームの 発 明 が 自 明 であるとの 結 論 を 出 した<br />

時 点 で(A) 特 許 庁 がこれらの 認 定 で 間 違 いを 犯 したことの 証 明 、 若 しくは(B)クレームの 保 護<br />

対 象 は 非 自 明 であったであろうことを 証 明 するその 他 の 証 拠 の 提 出 を 行 うことの 責 任 は 出 願<br />

人 に 転 換 する。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.111 条 (b)は 出 願 人 に、 当 該 拒 絶 通 知 の 中 の 誤 りとされる<br />

ものをはっきりと 具 体 的 に 指 摘 し、 方 式 不 備 の 拒 絶 及 び 当 該 拒 絶 通 知 のすべての 理 由 に 対 し<br />

て 反 論 することを 求 めている。 反 論 は 適 用 された 引 例 をめぐりクレームに 特 許 性 を 与 えると<br />

信 じられる 具 体 的 特 質 を 挙 げた 主 張 を 提 出 しなければならない。<br />

出 願 人 が 特 許 庁 による 事 実 認 定 に 同 意 できない 場 合 、 全 体 的 部 分 的 を 問 わずかかる 認 定 に 基<br />

づく 拒 絶 の 効 果 的 否 認 答 弁 には 理 由 を 記 載 した 文 書 を 含 めて 出 願 人 が 特 許 庁 は 事 実 認 定 に 関<br />

164


して 実 質 的 に 間 違 いを 犯 したと 信 ずる 理 由 を 説 明 しなければならない。 特 許 庁 は 自 明 性 の 一<br />

応 の 証 明 をしていない、 若 しくは 特 許 庁 の 共 通 の 知 識 への 依 拠 は 証 拠 書 類 によって 裏 付 けら<br />

れていないとする 単 なる 陳 述 又 は 主 張 は 当 該 拒 絶 の 反 論 若 しくは 特 許 法 施 行 規 則 第 1.111 条<br />

(b)に 基 づく 拒 絶 の 効 果 的 否 認 に 適 切 とはみなされない。この 状 況 を 取 り 扱 う 本 庁 審 査 官 は 前<br />

の 拒 絶 通 知 において 行 われた 拒 絶 を 繰 り 返 して 次 の 終 局 的 拒 絶 通 知 とすることができる。<br />

MPEP 第 706.07 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

V. 出 願 人 の 反 証 の 検 討<br />

本 庁 審 査 官 は 自 明 性 の 判 断 を 再 評 価 する 場 合 、 出 願 人 により 適 時 に 提 出 される 反 証 を 検 討 し<br />

なくてはならない。 反 証 には「 商 業 的 な 成 功 、 長 い 間 望 まれている 未 解 決 の 要 望 、[ 及 び] 他<br />

人 の 不 履 行 」(raham v. John Deere Co., 383 U.S. at 17、148 USPQ at 467)などの「 副 次<br />

的 考 察 事 項 」の 証 拠 が 含 まれているかもしれないし、また。 予 期 せぬ 結 果 の 証 拠 を 含 んでい<br />

るかもしれない。 上 記 に 示 すように、 本 庁 審 査 官 は 自 明 性 による 拒 絶 において 依 拠 される 理<br />

論 的 根 拠 の 裏 付 けとなる 事 実 認 定 を 明 確 に 述 べなければならない。 結 果 として、 出 願 人 は 本<br />

庁 審 査 官 によって 行 われた 事 実 認 定 に 反 論 するための 証 拠 を 提 出 しやすくなる。 例 えば、 組<br />

合 せに 対 するクレームの 場 合 、 出 願 人 は 次 の 各 号 を 実 証 するための 証 拠 若 しくは 主 張 を 提 出<br />

することができる。<br />

(A) 当 業 者 は 周 知 の 方 法 によってクレームの 要 素 を 組 み 合 わせることができなかった( 例 えば、<br />

技 術 的 困 難 のため)<br />

(B) 組 合 せ 要 素 は 要 素 ごとに 単 独 で 行 う 機 能 を 単 に 実 行 するのではない<br />

(C)クレームの 組 合 せの 結 果 は 予 期 されなかった<br />

出 願 人 が 反 証 を 提 出 した 時 点 で 本 庁 審 査 官 は 全 体 の 記 録 に 照 らして 当 初 の 自 明 性 の 判 断 を 再<br />

検 討 しなくてはならない。In re Piasecki, 745 F.2d 1468, 1472, 223 USPQ 785, 788 (Fed.<br />

Cir. 1984);In re Eli Lilly & Co., 90 F.2d 943, 945, 14 USPQ2d 1741, 1743 (Fed. Cir.<br />

1990)の 例 を 参 照 のこと。 記 録 の 拒 絶 及 び 提 案 されている 拒 絶 及 びそれらの 根 拠 のすべてを 再<br />

検 討 してそれらの 有 効 性 の 連 続 性 を 確 認 しなくてはならない。 拒 絶 通 知 は 特 許 庁 の 認 定 及 び<br />

結 論 を 明 確 に 伝 え、その 結 論 がその 認 定 によってどのように 裏 付 けられているかを 明 瞭 に 表<br />

現 しなくてはんらない。MPEP 第 706.07 条 (a)に 定 める 手 続 きは 拒 絶 通 知 を 最 終 とするかどう<br />

かを 決 定 する 際 に 従 わねばならない。<br />

出 願 人 の 反 証 に 関 する 検 討 については MPEP 第 2145 条 を 参 照 のこと。 拒 絶 理 由 を 反 論 するた<br />

め、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づいて 提 出 される 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 については MPEP<br />

第 716 条 乃 至 第 716.10 条 も 参 照 のこと。<br />

2141.01 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容<br />

I. 特 許 法 第 102 条 に 基 づき 利 用 できる 先 行 技 術 は 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 利 用 できる<br />

「Graham の「 内 容 」 審 理 に 答 える 前 に、 特 許 又 は 刊 行 物 は 特 許 法 第 102 条 に 基 づく 先 行 技 術<br />

に 存 在 するかどうかが 知 られていなければならない。」Panduit Corp. v. Dennison Mfg. Co.,<br />

810 F.2d 1561, 1568, 1 USPQ2d 1593, 1597 (Fed. Cir.), cert. denied, 481 U.S. 1052 (1987)。<br />

特 許 法 第 102 条 に 基 づく 先 行 技 術 である 保 護 対 象 は 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 支 持 するため 使<br />

用 することができる。Ex parte Andresen, 212 USPQ 100, 102 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1981)(「[35 U.S.C.A.の]MPEP の 解 説 者 及 び[ 議 会 の] 委 員 会 は 第 103 条 を 第 102 条 に 規 定 さ<br />

165


れると 同 じように 特 許 に 対 するさまざまな 阻 却 事 由 のすべてを 含 むと 考 えたように 思 われ<br />

る。」)<br />

さらに、[ 出 願 人 が] 自 ら 認 めた 先 行 技 術 は 特 許 法 第 102 条 の 合 法 的 分 類 により 先 行 技 術 とし<br />

ての 資 格 を 得 るかどうかにかかわらず、 自 ら 認 めた 先 行 技 術 は 新 規 性 の 欠 如 及 び 自 明 性 の 判<br />

断 共 に 依 拠 することができる。Riverwood Int’l Corp. v. R.A. Jones & Co., 324 F.3d 1346,<br />

1354, 66 USPQ2d 1331, 1337 (Fed. Cir. 2003);Constant v. Advanced Micro-Devices Inc.,<br />

848 F.2d 1560, 1570, 7 USPQ2d 1057, 1063 (Fed. Cir. 1988)。 先 行 技 術 としての 自 認 に 関<br />

する 考 察 については、MPEP 第 2129 条 を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 は 使 用 される 先 行 技 術 の 引 例 の 種 類 及 びその 公 開 若 しくは 発 行 日<br />

によって 特 許 法 第 102 条 (a)、 第 102 条 (b)、 第 102 条 (e) 等 に 依 拠 する。 例 えば、 出 願 の 申 請<br />

日 よりも 1 年 以 上 前 に 発 行 された 米 国 特 許 による 自 明 性 の 拒 絶 は 特 許 法 第 102 条 (b)に 基 づき<br />

クレームを 予 見 したかのような 法 定 不 特 許 事 由 であるといわれている。 同 様 に、 第 102 条 (a)<br />

に 基 づいて 適 用 される 刊 行 物 に 依 拠 する 自 明 性 による 拒 絶 は、それが 予 想 した 場 合 、 当 該 ク<br />

レームは 特 許 法 施 行 規 則 第 1.131 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 を 提 出 することで 引 例 の<br />

刊 行 日 に 遅 れて 誓 うことにより 乗 り 越 えることができる。<br />

特 許 法 第 102 条 に 基 づいて 先 行 技 術 を 構 成 するものは 何 かについての 概 説 は、MPEP 第 901 条<br />

乃 至 第 901.06 条 (d) 及 び 第 2121 条 乃 至 第 2129 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 先 行 技 術 の 実 質 的 内 容<br />

先 行 技 術 ( 例 えば、 実 施 不 能 な 装 置 の 利 用 可 能 性 、 先 行 技 術 が 実 施 可 能 でなければならない 範<br />

囲 、 好 ましい 実 施 例 ではない 広 範 な 開 示 、 自 認 等 )の 実 質 的 内 容 に 関 する 判 例 については MPEP<br />

第 2121 条 乃 至 2129 第 条 を 参 照 のこと。<br />

III. 先 行 技 術 の 内 容 は 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 で 判 断 され、 後 知 恵 を 回 避 する<br />

「 当 該 発 明 がおこなわれた 時 点 の」 要 件 は 容 認 できない 後 知 恵 を 回 避 することである。 拒 絶<br />

が 後 知 恵 に 基 づくとする 出 願 人 の 主 張 に 反 論 することの 考 察 については MPEP 第 2145 条 第<br />

X.A. 段 落 を 参 照 のこと。<br />

「 判 定 者 が、クレームの 発 明 について・・・ 教 示 されたことを 忘 れ、 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 に<br />

( 多 くの 場 合 このように 何 年 も) 心 を 戻 して 当 業 者 の 心 になることは 困 難 であるが 必 要 である。<br />

W.L. Gore & Associates, Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 220 USPQ 303, 313 (Fed.<br />

Cir. 1983), cert. denied, 469 U.S. 851 (1984)。<br />

IV. 特 許 法 第 103 条 (c)― 特 許 法 第 103 条 (c) 適 用 の 条 件 を 示 すために 必 要 な 証 拠<br />

特 許 法 第 103 条 (c)の 利 益 を 利 用 したい 出 願 人 は、 特 許 法 第 103 条 (a)に 基 づく 拒 絶 で 使 用 さ<br />

れる 第 102 条 (e)、(f) 又 は(g)に 基 づいてのみ 先 行 技 術 とみなされる 保 護 対 象 、 及 びクレーム<br />

の 発 明 はその 発 明 が 行 われた 時 点 で 同 一 人 によって 所 有 されていたか 同 一 人 への 譲 渡 義 務 が<br />

課 せられていたことを 立 証 する 責 任 を 有 する。Ex parte Yoshino, 227 USPQ 52 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1985)。 同 様 に、 特 許 法 第 103 条 (c)の 共 同 研 究 条 項 の 利 益 (2004 年 12 月 10 日 以 降<br />

の 係 属 中 出 願 )を 利 用 したい 出 願 人 は 次 に 挙 げる 各 号 を 立 証 する 義 務 を 有 する。<br />

(A) クレームの 発 明 はそのクレームの 発 明 が 行 われた 日 以 前 に 有 効 であった 共 同 研 究 契 約 の<br />

当 事 者 により, 又 はその 当 事 者 に 代 わって 行 われた。<br />

166


(B) クレームの 発 明 は 共 同 研 究 契 約 の 範 囲 内 で 行 われた 活 動 の 結 果 として 行 われた。 及 び、<br />

(C) クレームの 発 明 の 特 許 出 願 は 共 同 研 究 契 約 の 当 事 者 名 を 開 示 している、 若 しくは 開 示 す<br />

るよう 補 正 されている。<br />

この 先 行 技 術 欠 格 理 由 は、 特 許 法 第 103 条 (a)に 基 づく 拒 絶 において 使 用 される 特 許 法 第 102<br />

条 (e)、(f) 又 は(g)に 基 づく 先 行 技 術 とされる 保 護 対 象 に 限 って 適 用 できる。<br />

1999 年 11 月 29 日 以 前 に 行 われた 出 願 、 及 び 2004 年 12 月 10 日 以 前 に 特 許 として 付 与 され<br />

た 出 願 については、 特 許 法 第 103 条 (c)は 第 102 条 (f) 又 は(g)に 基 づいてのみ 先 行 技 術 とみな<br />

す、 他 人 により 開 発 された 保 護 対 象 への 適 用 に 限 定 される。MPEP 第 706.02 条 (l)(1)を 参 照<br />

のこと。 次 も 参 照 のこと。In re Bartfeld, 925 F.2d 1450, 1453-54, 17 USPQ2d 1885, 1888<br />

(Fed. Cir. 1991) 出 願 人 は、 特 許 法 第 102 条 (c)の 公 益 的 意 図 が 自 明 性 の 判 断 において「 秘 密<br />

の」 先 行 技 術 使 用 を 禁 止 するものであると 主 張 することによりターミナルディスクレーマー<br />

をもって 特 許 法 第 102 条 (e)/ 第 103 条 を 克 服 しようとした。 裁 判 所 はこの 主 張 を 拒 絶 し、「 法<br />

規 の 目 的 から 第 102 条 (e)の 一 義 的 排 除 を 無 視 してはならない」と 判 示 した。<br />

共 有 若 しくは 共 同 研 究 の 契 約 の 確 立 が 満 たさねばならない 要 件 については MPEP 第 706.02 条<br />

(l)(2)を 参 照 のこと。<br />

2141.01(a) 類 似 及 び 非 類 似 技 術<br />

I. 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 引 例 に 依 拠 するには、 類 似 の 先 行 技 術 でなければならない<br />

審 査 官 は 争 点 となっている 保 護 対 象 の 自 明 性 を 解 析 する 目 的 上 、 何 が「 類 似 先 行 技 術 」であ<br />

るかを 判 断 しなければならない。「 適 切 な 解 析 の 下 で、 当 該 発 明 の 時 点 で 努 力 分 野 において<br />

周 知 される、 及 び 特 許 [ 又 は 争 点 となっている 出 願 ]により 取 り 組 まれる 必 要 性 若 しくは 問 題<br />

は、クレームされる 方 法 で 要 素 を 組 み 合 わす 理 由 を 提 供 することができる。」KSR<br />

International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385, 1397 (2007)。<br />

従 って、 出 願 人 の 努 力 分 野 と 異 なる 分 野 の 引 例 は、 取 り 扱 う 事 項 により、 全 体 として 自 らの<br />

発 明 を 検 討 する 上 で 論 理 的 にそれ 自 体 を 発 明 者 に 配 慮 してもらうようなものである 場 合 、 合<br />

理 的 関 連 を 有 する。<br />

II. 構 造 及 び 機 能 の 類 似 点 及 び 相 違 点 を 検 討 する<br />

特 許 庁 の 区 分 定 義 の 公 式 調 査 注 記 における 引 例 及 び 相 互 参 照 の 分 類 は、それぞれ「 非 類 似 」<br />

若 しくは「 類 似 」の 証 拠 であるが、 裁 判 所 は「 発 明 の 構 造 及 び 機 能 における 類 似 点 及 び 相 違<br />

点 の 方 がずっと 重 要 である」としている。In re Ellis, 476 F.2d 1370, 1372, 177 USPQ 526,<br />

527 (CCPA 1973)( 一 方 の 引 例 によって 示 された 構 造 格 子 ともう 一 方 の 引 例 によって 示 された<br />

靴 拭 いとの 構 造 的 類 似 点 及 び 機 能 的 重 複 は 見 てすぐに 分 かり、 従 って 引 例 特 許 が 属 する 技 術<br />

は 合 理 的 に 上 訴 人 の 発 明 が 扱 う 技 術 ( 歩 行 者 用 床 格 子 )に 該 当 する。)<br />

III. 化 学 に 関 する 技 術 の 類 似 性<br />

参 照 例 として、Ex parte Bland, 3 USPQ2d 1103 (Bd. Pat App. & Inter. 1986)(クレームは、<br />

プロピオン 酸 を 吸 収 させたバーキサイトを 含 む 動 物 性 食 品 の 保 存 ( 又 はそれによって 動 物 性<br />

食 品 中 のカビの 繁 殖 を 抑 制 する 方 法 )に 有 効 な 微 粒 子 組 成 に 対 して 行 われた。 引 例 はすべて 保<br />

持 体 に 吸 収 される 生 物 活 性 物 質 に 関 するもので、さまざまな 引 例 それぞれの 教 示 は 他 の 引 例<br />

および 目 の 前 の 発 明 の 問 題 に 関 連 するものだった。Stratoflex, Inc. v. Aeroquip Corp., 713<br />

167


F.2d 1530, 218 USPQ 871 (Fed. Cir. 1983)( 発 明 者 が 直 面 した 問 題 は、 燃 料 漏 れを 防 ぐ 一 方<br />

で 炭 化 水 素 燃 料 の 流 れによって PTFE 管 内 で 生 ずる 静 電 気 の 発 生 を 防 ぐことであった。2 つの<br />

依 拠 される 先 行 技 術 の 引 例 はゴムホース 技 術 であって、 共 に 燃 料 の 流 れによって 生 ずる 静 電<br />

気 の 問 題 に 言 及 していた。 裁 判 所 は PTFE 及 びゴムは 同 一 ホースメーカーによって 使 用 され、<br />

似 たような 同 じ 問 題 を 経 験 しているので PTFE 又 はゴムのいずれか 一 方 のホースで 経 験 され<br />

た 問 題 に 対 して 見 出 された 解 決 策 も、 他 方 の 問 題 に 直 面 したとき 期 待 されるであろうとした。<br />

In re Mlot-Fijalkowski, 676 F.2d 666, 213 USPQ 713 (CCPA 1982)( 上 訴 人 が 直 面 した 問 題<br />

は 染 色 浸 透 剤 の 表 示 の 向 上 及 び 固 定 であった。 望 ましくは 複 写 用 紙 の 技 術 で(しかしそれに 限<br />

定 されない)カラー 画 像 を 作 り 出 すため 染 料 と 微 粉 化 した 現 像 材 料 の 使 用 を 教 示 する 引 例 は、<br />

裁 判 所 が 上 訴 人 の 問 題 は 染 色 化 学 の 一 つであってその 解 決 策 の 探 求 は 一 般 の 染 色 技 術 を 含 む<br />

としたので、 適 切 に 依 拠 された。<br />

IV. 機 械 に 関 する 技 術 の 類 似 性<br />

参 照 例 として、Stevenson v. International Trade Comm., 612 F.2d 546, 550, 204 USPQ 276,<br />

280 (CCPA 1979)( 単 純 な 機 械 的 発 明 においては 先 行 技 術 の 幅 広 い 試 料 を 調 査 しなければなら<br />

ず、 当 業 者 が 類 似 の 問 題 が 存 在 すると 気 づくであろう 他 分 野 への 調 査 を 認 めることは 合 理 的<br />

である。) 次 も 参 照 のこと。In re Bigio, 381 F.3d 1320, 1325-26, 72 USPQ2d 1209, 1211-12<br />

(Fed. Cir. 2004) 特 許 出 願 は 特 別 な 剛 毛 の 配 置 を 有 する「ヘアブラシ」をクレームした。 審<br />

判 部 は、 歯 ブラシを 開 示 する 先 行 技 術 特 許 に 照 らして 自 明 であるとして 審 査 官 のクレーム 拒<br />

絶 を 追 認 した。381 F.3d at 1323、72 USPQ2d at 1210。 出 願 人 は 特 許 文 献 が 類 似 技 術 を 構 成<br />

することに 異 議 を 唱 えた。 抗 告 審 判 において 裁 判 所 は、クレームの「ヘアーブラシ」という<br />

用 語 について、 顔 の 毛 を 含 めて 身 体 の 毛 に 使 用 することのできるブラシを 含 むとする 審 判 部<br />

の 解 釈 を 支 持 した。381 F.3d at 1323-24、72 USPQ2d at 1211。このクレーム 解 釈 をもって、<br />

裁 判 所 は 類 似 技 術 に 対 して「 努 力 分 野 テスト」を 適 用 し、 当 該 引 例 は 出 願 人 の 努 力 分 野 内 で<br />

あると 判 断 した。 従 って、 類 似 技 術 であり、 歯 ブラシは 構 造 的 にヘアー 用 の 小 型 ブラシに 似<br />

ているので 歯 ブラシは 顔 の 毛 にブラシをかけるために 使 用 できる。381 F.3d at 1326、72<br />

USPQ2d at 1212。<br />

次 も 参 照 のこと。In re Deminski, 796 F.2d 436, 230 USPQ 313 (Fed. Cir. 1986)( 出 願 人<br />

のクレームは、 交 換 のためバルブを 容 易 に 取 り 外 すことのできる 複 動 式 高 圧 ガス 伝 送 路 のコ<br />

ンプレッサーに 関 するものであった。 審 判 部 は 複 動 式 ピストンポンプ 又 は 複 動 式 ピストンコ<br />

ンプレッサーのいずれかを 教 示 する 引 例 に 依 拠 した。 裁 判 所 は 引 用 されたポンプ 及 びコンプ<br />

レッサーは 基 本 的 に 同 一 機 能 及 び 構 造 を 有 するので、 努 力 分 野 は 流 動 体 用 に 双 方 の 複 動 式 ピ<br />

ストン 装 置 を 含 むことを 認 めた。Pentec, Inc. v. Graphic Controls Corp., 776 F.2d 309,<br />

227 USPQ 766 (Fed. Cir. 1985)( 争 点 のクレームは 計 器 用 マーカーのペン 本 体 に 向 けられて<br />

おり、 改 善 点 はペン 本 体 に 折 り 被 せるために 一 体 にモールドされたヒンジ 部 材 を 有 するペン<br />

アーム 保 持 方 法 を 備 えていた。 特 許 権 者 はそのヒンジ 及 び 留 め 具 の 技 術 は 非 類 似 であると 主<br />

張 したが、 裁 判 所 は、 当 該 発 明 者 が 直 面 する 問 題 はマーカーペンをペンアームにしっかりと<br />

取 付 けそして 容 易 に 取 り 外 すことが 頻 繁 にできる 単 純 な 保 持 方 法 を 必 要 とすることであって、<br />

その 問 題 を 解 決 しようとする 当 業 者 はその 留 め 具 及 びヒンジ 技 術 に 期 待 したであろうと 判 示<br />

した。 及 び、Ex parte Goodyear Tire & Rubber Co., 230 USPQ 357 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1985)(クラッチ 技 術 における 引 例 は 出 願 人 が 直 面 する 摩 擦 問 題 に 合 理 的 に 関 連 すると 判 定 さ<br />

168


れた。 出 願 人 のクレームはブレーキ 材 料 に 向 けられていたがブレーキ 及 びクラッチはそれぞ<br />

れの 目 的 を 達 成 するため 界 面 材 料 を 用 いるためであった。)<br />

V. 電 気 に 関 する 技 術 の 類 似 性<br />

次 の 事 例 を 参 照 のこと。Medtronic, Inc. v. Cardiac Pacemakers, 721 F.2d 1563, 220 USPQ<br />

97 (Fed. Cir. 1983)( 特 許 クレームは、いくつかある 部 品 の 中 で 特 に、パルスに 起 因 して 高<br />

すぎる 頻 度 数 で 作 動 されるペースメーカーの 不 具 合 を 防 ぐための 暴 走 抑 制 手 段 から 成 る 心 臓<br />

ペースメーカーに 関 するものであった。2 つの 引 例 はパルス 源 からのパルスの 暴 走 を 抑 制 す<br />

る 高 出 力 、 高 頻 度 の 装 置 で 使 用 される 回 路 を 開 示 していた。 裁 判 所 は、 律 速 問 題 に 直 面 する<br />

ペースメーカー 設 計 技 術 の 当 業 者 は 律 速 問 題 に 直 面 する 他 の 者 の 解 決 策 の 後 を 追 うであろう、<br />

従 ってその 引 例 は 類 似 技 術 となると 判 示 した。)<br />

VI. 意 匠 技 術 における 類 似 性 の 例<br />

意 匠 出 願 における 類 似 技 術 の 一 般 要 件 を 規 定 する 関 連 判 例 の 考 察 については MPEP 第 1504.03<br />

条 を 参 照 のこと。<br />

意 匠 技 術 における 類 似 性 の 例 については In re Rosen, 673 F.2d 388, 213 USPQ 347 (CCPA<br />

1982)を 参 照 のこと。( 争 点 の 意 匠 は 現 代 的 スタイルのコーヒーテーブルであった。 裁 判 所 は、<br />

依 拠 される 該 引 例 の 机 及 び 円 形 ガラスのテープルトップデザインなどコーヒーテーブル 以 外<br />

の 現 代 的 家 具 の 意 匠 は、 合 理 的 に 一 般 的 技 能 のデザイナーの 知 識 範 囲 内 にあると 判 示 した。<br />

Ex parte Pappas, 23 USPQ2d 1636 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)<br />

( 争 点 とされたのは 傾 斜 したコーナー 形 状 を 持 つフィードバンクの 装 飾 的 意 匠 であった。 審 査<br />

官 は、 上 訴 人 によりクレームされた 傾 斜 コーナーのないバンクの 引 例 及 び『Architectural<br />

Precast Concrete Drafting Handbook』に 依 拠 した。 審 判 部 は、『Architectural Precast<br />

Concrete Drafting Handbook』は 類 似 技 術 であると 認 定 し、バンクは 木 製 若 しくはコンクリ<br />

ート 製 ではあるが 依 拠 される 引 用 は 共 に「 少 なくとも 一 本 の 真 っ 直 ぐな 脚 が 基 礎 部 分 にほぼ<br />

垂 直 であってその 脚 と 基 礎 部 分 との 間 のコーナー 形 状 を 特 徴 づけている 構 造 を 開 示 してい<br />

る」ことに 注 目 した。In re Butera, 1 F.3d 1252, 28 USPQ2d 1399 (Fed. Cir. 1993) ( 未<br />

公 表 – 判 例 として 引 用 不 可 )(クレームの 発 明 、 防 虫 剤 と 芳 香 剤 を 組 合 せた 球 形 意 匠 は、 金 属 ボ<br />

ールアノードの 意 匠 に 関 する 一 つの 引 例 について 自 明 であるとして 審 判 部 によって 拒 絶 され<br />

た。 裁 判 所 はこれを 取 消 し、 引 用 意 匠 は 非 類 似 技 術 であると 判 示 した。「 意 匠 特 許 出 願 にお<br />

いてクレームされるものと 同 じ 一 般 使 用 を 有 する 場 合 はクレームのタイプは 従 来 意 匠 であ<br />

る・・・ 防 虫 剤 と 芳 香 剤 との 組 合 せをデザインするものは 金 属 ボールアノードの 意 匠 について<br />

知 る 理 由 はなく 又 関 心 を 向 けることもなかったであろう。」28 USPQ2d at 1400。)<br />

2141.02 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 相 違 点<br />

先 行 技 術 と 争 点 となっているクレームとの 違 いを 確 認 することはクレームの 文 言 を 解 釈 する<br />

こと 及 び 当 該 発 明 と 先 行 技 術 の 引 例 双 方 を 全 体 として 検 討 することが 必 要 とされる。クレー<br />

ム 解 釈 に 関 する 判 例 については MPEP 第 2111 条 乃 至 第 2116.01 条 を 参 照 のこと。<br />

I. クレームの 発 明 は 全 体 として 検 討 しなくてはならない<br />

先 行 技 術 と 当 該 クレームとの 間 の 相 違 点 を 判 断 する 上 で 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 問 題 は 違 い<br />

169


自 体 が 自 明 であったかどうかではなく、クレームの 発 明 が 全 体 として 自 明 であったかどうか<br />

である。Stratoflex, Inc. v. Aeroquip Corp., 713 F.2d 1530, 218 USPQ 871 (Fed. Cir.<br />

1983);Schenck v. Nortron Corp., 713 F.2d 782, 218 USPQ 698 (Fed. Cir. 1983)(クレー<br />

ムは、 保 持 構 造 、 基 礎 構 造 及 び「 一 体 式 で 切 れ 目 なく 続 く 一 片 」を 形 成 する 支 持 方 法 から 成<br />

る 振 動 検 査 器 ( 硬 質 軸 受 ホイール・バランサ)に 向 けられていた。Nortron はその 発 明 はボル<br />

ト 止 めの 4 片 で 作 られていたものを 一 体 型 にしただけであるとして、 先 行 技 術 との 構 造 的 違<br />

いに 焦 点 を 限 定 して 発 明 全 体 として 検 討 していないのは 不 当 であると 主 張 した。 先 行 技 術 は<br />

共 鳴 を 減 衰 させる 機 構 の 必 要 性 を 認 識 していた。ところが 発 明 者 は 一 体 型 でギャップのない<br />

支 持 構 造 により 減 衰 の 必 要 性 を 取 り 除 いた。「 洞 察 力 は 技 術 の 理 解 や 期 待 とは 違 っていたた<br />

めに、それを 達 成 している 構 造 は 当 業 者 にとって 自 明 ではなかった。」713 F.2d at 785、218<br />

USPQ at 700( 引 用 省 略 )。<br />

次 も 参 照 のこと。In re Hirao, 535 F.2d 67, 190 USPQ 15 (CCPA 1976)(クレームは 加 糖 食<br />

品 及 び 甘 味 飲 料 を 用 意 する 3 工 程 のプロセスに 向 けられていた。 最 初 の 2 工 程 は 高 純 度 のマ<br />

ルトース( 甘 味 料 )を 生 産 する 工 程 に 向 けられ、3 番 目 はマルトースを 食 品 及 び 飲 料 に 添 加 す<br />

ることに 向 けられた。 双 方 当 事 者 は、 最 初 の 2 工 程 は 自 明 でないが 周 知 の 製 品 を 形 成 するも<br />

のであり、3 番 目 の 工 程 は 自 明 であることで 一 致 した。 法 務 官 は、 前 提 部 分 は 控 えめに 甘 く<br />

した 食 品 及 び 飲 料 を 準 備 する 工 程 に 向 けられ、 従 って 高 純 度 のマルトースを 作 る 特 定 の 方 法<br />

(クレームされるプロセスの 最 初 の 2 工 程 )に 重 きを 置 くべきではなく、プロダクト・バイ・<br />

プロセス・クレームに 類 似 すると 主 張 した。 裁 判 所 は「クレームされる 工 程 の 組 合 せの 最 初<br />

の 2 工 程 について 認 められた 非 自 明 性 により、 当 該 保 護 対 象 は 全 体 として 発 明 が 行 われた 時<br />

点 で 当 業 者 にとって 自 明 ではなかった」と 判 示 した。535 F.2d at 69、190 USPQat 17( 強 調<br />

は 原 文 のまま)。 前 提 部 分 はプロセスの 目 的 を 掲 げているのみであってクレーム 本 体 部 を 限<br />

定 していなかった。 従 って、クレームのプロセスは 3 工 程 のプロセスであり、そのプロセス<br />

の 中 の 2 工 程 で 形 成 される 製 品 でもその 製 品 を 使 用 する 3 番 目 の 工 程 でもない。)<br />

II. 発 明 を 発 明 の「 要 旨 」 又 は「 要 点 」にまとめることは「 全 体 として」の 要 件 を 無 視 する<br />

発 明 を 発 明 の「 要 旨 」 又 は「 要 点 」にまとめることは 保 護 対 象 を「 全 体 として」 分 析 する 要<br />

件 を 無 視 する。W.L. Gore & Associates, Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 220 USPQ<br />

303 (Fed. Cir. 1983), cert. denied, 469 U.S. 851 (1984)( 未 焼 結 PTFE の 毎 秒 10%の 延<br />

伸 率 のクレームに 考 慮 の 対 象 を 限 定 してその 他 の 限 定 を 無 視 することは、 準 備 されたものと<br />

は 違 った 方 法 で 読 み 取 るかのようにクレームを 扱 うことになった。)Bausch & Lomb v.<br />

Barnes-Hind/Hydrocurve, Inc., 796 F.2d 443, 447-49, 230 USPQ 416, 419-20 (Fed. Cir.<br />

1986), cert. denied, 484 U.S. 823 (1987)( 地 方 裁 判 所 は「レーザービームを 使 用 して 材 料<br />

を 気 化 させ 滑 らかな 丸 いエッジの 畝 のない 凹 部 を 形 成 するという 着 想 」に 焦 点 を 当 てたが「そ<br />

の 製 品 は 透 明 な 架 橋 ポリマーで 形 成 される 眼 科 用 レンスであってそのレーザーマークは 昇 華<br />

されないポリマーの 滑 らかな 表 面 に 取 り 囲 まれるという 明 確 な 限 定 を 無 視 した。」) 次 も 参 照<br />

のこと。Jones v. Hardy, 727 F.2d 1524, 1530, 220 USPQ 1021, 1026 (Fed. Cir. 1984)(「 優<br />

位 性 を 発 明 として 取 り 扱 うことは、 発 明 は『 全 体 として』 考 察 されるとする 法 令 上 の 要 件 を<br />

無 視 する。」)Panduit Corp. v. Dennison Mfg. Co., 810 F.2d 1561, 1 USPQ2d 1593 (Fed.<br />

Cir.), cert. denied, 481 U.S. 1052 (1987)( 地 方 裁 判 所 は 不 適 切 にクレームを 抜 き 出 し、<br />

問 題 に 対 し 一 言 で 答 えてしまった。)<br />

170


III. 問 題 の 起 源 / 原 因 を 明 らかにすることは「 全 体 として」の 審 理 の 一 部 である<br />

「 一 旦 、 問 題 の 源 が 特 定 されると、その 解 決 策 は 自 明 になるとしても、 特 許 性 のある 発 明 は、<br />

問 題 の 源 の 発 見 にあることがある。これは、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 発 明 の 自 明 性 を 判 断 す<br />

る 際 に 必 ず 検 討 すべき『 全 体 としての 保 護 対 象 』の 一 部 である。In re Sponnoble, 405 F.2d<br />

578, 585, 160 USPQ 237, 243 (CCPA 1969)。しかし、「 問 題 の 原 因 の 発 見 が 必 ず 特 許 性 のあ<br />

る 発 明 につながるとは 限 らない・・・。 解 決 策 が 類 似 の 問 題 に 同 一 の 解 決 策 がある 先 行 技 術 から<br />

明 らかな 場 合 、 状 況 は 異 なる。In re Wiseman, 596 F.2d 1019, 1022, 201 USPQ 658, 661 (CCPA<br />

1979) ( 強 調 は 原 文 のまま)。<br />

In re Sponnoble 事 例 においてクレームは 複 数 区 画 の 混 合 小 型 容 器 に 向 けられていた。2 つの<br />

区 画 の 間 には 中 央 シールプラグが 配 置 され、 液 体 を 入 れた 区 画 を、 固 体 を 入 れた 区 画 から 一<br />

時 的 に 分 離 させることができた。クレームは、 天 然 ゴムの 代 わりにプラグ 材 料 としてシリコ<br />

ーン 層 を 持 つブチルゴムを 選 択 する 点 において 先 行 技 術 とは 異 なっていた。 液 体 区 画 から 固<br />

体 区 画 への 漏 出 が 問 題 であることは 先 行 技 術 分 野 において 認 識 されており、その 問 題 は 成 形<br />

ガラス 若 しくは 吹 きガラスに 本 来 的 に 存 在 する 微 小 な 割 れ 目 のため 水 分 がセンタープラグま<br />

わりから 染 み 出 すことであると 考 えられた。 裁 判 所 は、 当 該 発 明 者 は 水 分 透 過 の 原 因 はセン<br />

タープラグによることを 見 つけ 出 したと 認 定 した。また、 先 行 技 術 の 天 然 ゴムプラグより 液<br />

体 に 対 してより 不 浸 透 性 の 高 いプラグ 材 料 を 出 願 人 が 選 択 しなければならないことを 示 唆 す<br />

る 先 行 技 術 における 教 示 はなかった。<br />

In re Wiseman, 596 F.2d at 1022、201 USPQ at 661 において、ブレーキ 動 作 中 のブレーキ<br />

の 衰 退 を 最 小 限 に 押 さえるため、 複 数 の 溝 が 蒸 気 を 放 出 又 は 気 化 させるために 用 意 された 溝<br />

付 炭 素 ディスクブレーキに 向 けられたクレームは、ブレーキ 部 材 面 を 冷 却 し、 埃 を 無 くし、<br />

それによってブレーキの 衰 退 を 抑 制 する 目 的 の 非 炭 素 ディスクブレーキの 溝 を 明 らかにする<br />

引 例 と 組 み 合 わせて 溝 のない 炭 素 ディスクブレーキを 明 らかにする 引 例 により 自 明 として 拒<br />

絶 された。 裁 判 所 は 拒 絶 を 追 認 し、 出 願 人 が 問 題 の 原 因 を 見 つけ 出 したとしても 当 該 解 決 策<br />

は 類 似 問 題 の 同 一 解 決 策 (ディスクブレーキに 複 数 の 溝 を 加 えること)を 有 する 先 行 技 術 から<br />

自 明 であったと 判 示 した。<br />

IV. 問 題 の 原 因 を 発 見 したと 主 張 する 出 願 人 は 実 証 を 提 出 しなくてはならない<br />

自 らが 問 題 の 原 因 を 発 見 したと 主 張 する 出 願 人 は、 宣 誓 供 述 書 若 しくは 宣 言 書 のいずれかで、<br />

又 は 明 細 書 の 明 確 で 説 得 力 のある 主 張 によって 主 張 を 実 証 する 証 拠 を 提 出 しなくてはならな<br />

い。In re Wiseman, 596 F.2d 1019, 201 USPQ 658 (CCPA 1979)( 代 理 人 の 根 拠 のない 陳 述 は<br />

上 訴 人 が 当 該 問 題 の 原 因 を 発 見 したことを 証 明 するには 不 十 分 である。)In re Kaslow, 707<br />

F.2d 1366, 217 USPQ 1089 (Fed. Cir. 1983)(クレームは、UPC の「5x5」バーコードを 記 載<br />

する 商 品 券 の 欠 点 を 補 う 方 法 に 向 けられた。その 方 法 は、 各 スーパーマーケットのメモリが<br />

製 品 によってクーポンを 識 別 し、そのデーターを 中 央 コンピュータに 転 送 して 監 査 人 に 提 出<br />

し、それによって 情 報 センターの 必 要 性 を 無 くすとともに 小 売 店 の 不 正 行 為 を 防 止 するもの<br />

であった。 自 明 性 による 拒 絶 の 正 当 性 に 異 議 を 申 し 立 て、 上 訴 人 は 問 題 の 原 因 ( 小 売 店 の 不<br />

正 行 為 及 び 手 動 による 情 報 センターの 操 作 ) 及 びその 解 決 策 を 見 出 したと 主 張 した。 裁 判 所<br />

は、 上 訴 人 の 明 細 書 は 上 訴 人 が 小 売 店 の 不 正 行 為 に 関 する 問 題 の 原 因 を 発 見 したとする 主 張<br />

を 裏 付 けておらず、 従 ってクレームの 発 明 は 手 動 による 情 報 センター 操 作 の 問 題 を 解 決 して<br />

いないと 認 定 した。)<br />

171


V. 公 開 される 潜 在 的 特 性 は「 全 体 として」の 審 査 の 一 部 である<br />

「 発 明 が 全 体 として 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 自 明 であったかどうかの 判 断 は、 最 初 にその 発<br />

明 を 全 体 として 描 き 出 さねばならない。 発 明 を 全 体 として 描 く 際 には 問 題 のクレームに 文 字<br />

通 りに 挙 げられている 保 護 対 象 だけでなく・・・、その 保 護 対 象 の 明 細 書 に 潜 在 的 に 開 示 される<br />

保 護 対 象 の 特 性 に 注 意 を 向 ける・・・。 組 成 物 クレームの 自 明 性 を 審 査 する 場 合 、 我 々は 化 学 物<br />

質 及 びその 特 性 に 注 意 を 向 けるのと 同 じように、 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 自 明 でなければな<br />

らないものは、そのある 一 部 ではなく 全 体 としてのこの 発 明 である。In re Antonie, 559 F.2d<br />

618, 620, 195 USPQ 6,8 (CCPA 1977)( 強 調 は 原 文 のまま)( 引 用 省 略 )(クレームの 廃 水 処 理 装<br />

置 は 請 負 業 者 領 域 に 対 して 1 平 方 フィート 当 たり 0.12 ガロンのタンク 容 量 があった。 裁 判 所<br />

は、 全 体 として 発 明 は 割 合 0.12 であって、クレームの 装 置 はその 装 置 のその 他 の 変 数 にかか<br />

わらず 処 理 能 力 を 最 大 化 するという 潜 在 的 特 性 であったと 認 定 した。 先 行 技 術 は、 処 理 能 力<br />

は 請 負 業 者 割 合 に 対 するタンク 容 量 の 関 数 であることを 認 知 しておらず、 従 って 最 適 化 され<br />

たパラメータはその 技 術 において 結 果 有 効 変 数 であることは 確 認 されていなかった。 次 も 参<br />

照 のこと。In re Papesch, 315 F.2d 381, 391, 137 USPQ 43, 51 (CCPA 1963)(「 特 許 法 の<br />

見 地 から、 化 合 物 とそのすべての 特 性 は 切 り 離 すことができない。」)<br />

自 明 性 は、ある 潜 在 的 な 特 徴 が 後 になって 立 証 されたとしても、 発 明 が 行 われた 時 点 で 知 ら<br />

れていないものを 前 提 とすることができない。In re Rijckaert, 9 F.2d 1531, 28 USPQ2d 1955<br />

(Fed. Cir. 1993)。 潜 在 的 特 性 に 基 づく 拒 絶 の 要 件 については MPEP 第 2112 条 を 参 照 のこと。<br />

VI 先 行 技 術 はクレームから 外 れたところで 教 示 する 開 示 を 含 めてその 全 体 を 検 討 しなけれ<br />

ばならない<br />

先 行 技 術 の 引 例 はクレームの 発 明 からそれた 部 分 を 含 めてその 全 体 で 検 討 しなくてはならな<br />

い。W.L. Gore & Associates, Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 220 USPQ 303 (Fed.<br />

Cir. 1983), cert. denied, 469 U.S. 851 (1984)(クレームは、 成 形 した、 未 焼 結 の、 高 結<br />

晶 ポリ(テトラクロロエチレン)(PTFE)を、1 秒 当 たり 10%の 割 合 でその PTFE を 元 の 長 さの 5<br />

倍 以 上 に 引 き 延 ばすことによって 拡 大 させ、 多 孔 質 の 物 品 を 生 産 するプロセスに 向 けられて<br />

いた。 先 行 技 術 の 非 焼 結 PTFE について 教 示 される 内 容 は、その 材 料 は 従 来 の 可 塑 材 処 理 方 法<br />

に 対 応 しておらず、 従 ってその 材 料 はゆっくりと 引 き 延 ばされるはずであった。 従 来 の 可 塑<br />

材 ポリプロピレンの 急 速 な 引 き 延 ばしは 結 晶 化 の 縮 小 を 伴 うことを 教 示 する 引 例 は、 非 焼 結<br />

PTFE の 引 き 延 ばしを 教 示 する 引 例 と 併 せて、 当 該 発 明 から 外 れて 教 示 する 技 術 分 野 における<br />

開 示 、すなわち、 従 来 のポリプロピレンは 引 き 延 ばし 前 に 結 晶 化 度 を 弱 めており PTFE はゆっ<br />

くりと 引 き 延 ばされるとする 開 示 に 照 らして、 高 結 晶 PTFE の 急 速 な 引 き 延 ばしを 示 唆 するも<br />

のではない。<br />

しかも、「 先 行 技 術 の 2 つ 以 上 の 単 なる 代 替 例 の 開 示 は、そのような 開 示 がクレームされた<br />

解 決 手 段 を 批 判 する、 信 用 できないものとする 又 は 不 賛 成 の 意 を 表 明 するということをして<br />

いないので、これらの 代 替 例 のいずれからも 外 れたところの 教 示 を 構 成 しない・・・。」In re<br />

Fulton, 391 F.3d 1195, 1201, 73 USPQ2d 1141, 1146 (Fed. Cir. 2004)。MPEP 第 2123 条<br />

も 参 照 のこと。<br />

172


2141.03 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベル<br />

I. 当 業 者 レベルを 判 断 する 際 に 検 討 すべき 要 因<br />

当 業 者 とは 当 該 発 明 の 時 点 で 関 連 技 術 を 周 知 すると 推 定 される 仮 想 上 の 人 物 とする。 当 該 技<br />

術 分 野 の 当 業 者 レベル 判 断 する 際 に 検 討 される 要 因 には 次 に 挙 げる 各 号 がある。(A)「 当 該 技<br />

術 分 野 で 遭 遇 する 問 題 類 型 」、(B)「それらの 問 題 に 対 する 先 行 技 術 のソリューション」、(C)<br />

「イノベーションが 起 きる 速 度 」、(D)「 技 術 の 高 度 化 」、 及 び(E)「 当 該 分 野 現 役 労 働 者 の<br />

教 育 レベル。 当 該 事 例 ではすべての 要 因 が 提 示 されないかもしれず、1 以 上 の 要 因 が 支 配 的<br />

であるかもしれない。」In re GPAC, 57 F.3d 1573, 1579, 35 USPQ2d 1116, 1121 (Fed. Cir.<br />

1995);Custom Accessories, Inc. v. Jeffrey-Allan Industries, Inc., 807 F.2d 955, 962,<br />

1 USPQ2d 1196, 1201 (Fed. Cir. 1986);Environmental Designs, Ltd. V. Union Oil Co.,<br />

713 F.2d 693, 696, 218 USPQ 865, 868 (Fed. Cir. 1983)。<br />

「 当 業 者 もまた 通 常 的 創 造 性 を 有 する 者 であって 機 械 的 に 行 動 する 者 ではない。」KSR<br />

International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385, 1397 (2007)。<br />

「 多 くの 事 例 で 当 業 者 はパズルのピースのように 複 数 の 特 許 の 教 示 される 内 容 を 組 み 合 わせ<br />

ることができる。」 同 上 。 本 庁 審 査 官 もまた「 当 業 者 が 用 いるであろう 推 測 及 び 創 造 的 な 手<br />

順 」を 考 慮 することができる。Id. at ___、82 USPQ2d at 1396。<br />

「 仮 想 の『クレームの 保 護 対 象 が 関 連 する 当 該 技 術 分 野 の 通 常 技 能 を 有 する 人 物 』は、 必 然<br />

的 に、 関 連 技 術 分 野 に 適 用 可 能 な 科 学 的 及 び 工 学 的 原 理 を 理 解 する 能 力 を 備 えている。」Ex<br />

parte Hiyamizu, 10 USPQ2d 1393, 1394 (Bd. Pat. App. & Inter. 1988) 審 判 部 は 審 査 官 の<br />

当 業 者 の 定 義 ( 半 導 体 研 究 又 は 開 発 に 少 なくとも 週 40 時 間 従 事 する 博 士 号 レベルの 技 術 者 又<br />

は 科 学 者 )に 異 議 を 唱 え、 仮 想 の 人 物 は 資 格 といったようなもので 定 義 することはできず、 出<br />

願 に 挙 げられる 証 拠 はそのような 人 物 が 博 士 号 若 しくは 科 学 又 は 工 学 分 野 における 同 等 の 知<br />

識 を 必 要 とするとの 結 論 を 裏 付 けるものではないと 裁 定 した。)<br />

クレームの 発 明 後 であるという 理 由 で 先 行 技 術 として 適 さない 引 例 は、 当 該 技 術 分 野 又 は 当<br />

該 発 明 が 成 された 前 後 の 当 業 者 レベル 示 すために 依 拠 することができる。Ex parte Erlich,<br />

22 USPQ 1463 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)。さらに、 広 く 浸 透 しなかったので 先 行 技 術<br />

として 利 用 することができない 書 類 は 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 実 証 するために 使 用 す<br />

ることができる。 例 えば、「 当 業 者 の 知 識 に 潜 在 する 組 合 せの 動 機 」の 立 証 に 重 要 性 がある<br />

かもしれない。National Steel Car Ltd. v. Canadian Pacific Railway Ltd., 357 F.3d 1319,<br />

1338, 69 USPQ2d 1641, 1656 (Fed. Cir. 2004)(ある 技 術 者 によって 作 成 された 図 面 が 先 行<br />

技 術 ではないにもかかわらず「 当 業 者 の 知 識 に 潜 在 する 組 合 せの 動 機 を 実 証 するため 使 用 で<br />

きる」と 判 断 された。)<br />

II. 特 定 の 技 能 レベルを 指 定 することは、 先 行 技 術 自 体 が 適 切 なレベルを 反 映 している 場 合 、<br />

必 ずしも 必 要 としない<br />

当 該 技 術 分 野 の 技 能 レベルに 関 する 記 録 の 事 実 だけが 記 録 の 先 行 技 術 のなかで 確 認 される 場<br />

合 、 裁 判 所 は、 先 行 技 術 自 体 が 適 切 なレベルを 反 映 している 場 合 、 特 定 の 技 術 レベルを 具 体<br />

的 に 確 認 することなく 発 明 は 自 明 であると 判 定 することができると 判 定 している。<br />

Chore-Time Equipment, Inc. v. Cumberland Corp., 713 F.2d 774, 218 USPQ 673 (Fed. Cir.<br />

1983)。 次 も 参 照 のこと。 Okajima v. Bourdeau, 261 F.3d 1350, 1355, 59 USPQ2d 1795, 1797<br />

(Fed. Cir. 2001)。<br />

173


III. 当 業 者 レベルを 確 定 することは 客 観 性 を 保 持 するために 必 要 である<br />

「 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 解 決 することの 重 要 性 は、 自 明 性 の 審 理 において 客 観 性 を<br />

保 持 することの 必 要 性 にある。」Ryko Mfg. Co. v. Nu-Star, Inc., 950 F.2d 714, 718, 21<br />

USPQ2d 1053, 1057 (Fed. Cir. 1991)。 審 査 官 は、 当 該 発 明 が 行 われたその 時 に、 発 明 者 、<br />

裁 判 官 、 素 人 、 遠 い 技 術 分 野 の 熟 練 者 若 しくは 当 該 技 術 分 野 の 天 才 にとってではなく、 当 該<br />

技 術 分 野 に 熟 練 した 者 にとって 自 明 であったであろうことを 確 定 しなければならない。<br />

Environmental Designs, Ltd. v. Union Oil Co., 713 F.2d 693, 218 USPQ 865 (Fed. Cir.<br />

1983), cert. denied, 464 U.S. 1043 (1984)。<br />

174


2142 一 応 の 自 明 性 の 法 的 概 念<br />

一 応 の 自 明 性 の 法 的 概 念 はすべての 技 術 分 野 に 広 く 適 用 される 審 査 の 手 続 ツールである。 審<br />

査 過 程 の 各 段 階 で 証 拠 の 提 示 を 進 める 責 任 を 有 する 者 を 割 り 当 てる。 参 照 として、In re<br />

Rinehart, 531 F.2d 1048, 189 USPQ 143 (CCPA 1976);In re Linter, 458 F.2d 1013, 173<br />

USPQ 560 (CCPA 1972);In re Saunders, 444 F.2d 599, 170 USPQ 213 (CCPA 1971);In re<br />

Tiffin, 443 F.2d 394, 170 USPQ 88 (CCPA 1971), amended, 448 F.2d 791, 171 USPQ 294 (CCPA<br />

1971);In re Warner, 379 F.2d 1011, 154 USPQ 173 (CCPA 1967), cert. denied, 389 U.S.<br />

1057 (1968)。 審 査 官 は 一 応 の 自 明 性 の 結 論 を 事 実 として 裏 付 ける 最 初 の 責 任 を 負 う。 審 査 官<br />

が 一 応 の 証 明 を 示 さない 場 合 、 出 願 人 は 非 自 明 性 の 証 拠 を 提 出 する 義 務 はない。しかし、 審<br />

査 官 が 一 応 の 証 明 を 提 示 した 場 合 、 証 拠 又 は 意 見 書 を 提 出 する 責 任 は 出 願 人 へ 転 換 し、 出 願<br />

人 はクレームの 発 明 プロセスは 先 行 技 術 によって 期 待 されていなかった 特 性 を 改 良 したこと<br />

を 示 す 比 較 テストなど、 非 自 明 性 に 関 する 新 たな 証 拠 を 提 出 することができる。 一 応 の 自 明<br />

性 の 最 初 の 評 価 は、このように 審 査 官 と 出 願 人 の 双 方 を、 当 該 技 術 がクレームの 発 明 を 自 明<br />

にすることが 証 明 されるまで、 先 行 技 術 及 び 出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 された 証 拠 を 超 えて 証 拠<br />

を 評 価 することから 解 放 する。<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 正 確 な 判 断 に 達 するには、 審 査 官 は、 当 該 発 明 が 知 られていない 発<br />

明 直 前 の 時 間 に 立 ち 戻 って 仮 想 「 当 業 者 」の 立 場 に 身 を 置 いてみなければならない。 審 査 官<br />

はすべての 事 実 に 基 づく 情 報 に 照 らした 後 、その 時 点 でその 当 業 者 にとってクレームの 発 明<br />

が「 全 体 として」 自 明 であったであろうか 否 かを 判 断 しなければならない。 出 願 人 の 開 示 に<br />

関 する 知 識 はこの 判 断 を 行 う 際 にはひとまず 脇 に 置 いておかねばならないが、「 相 違 点 」を<br />

明 らかにし、 調 査 を 行 い、 当 該 発 明 の「 保 護 対 象 を 全 体 として」 評 価 するために 留 意 してお<br />

かねばならない。 出 願 人 の 開 示 に 基 づく「 後 知 恵 」に 訴 える 傾 向 を 回 避 することは、 審 査 過<br />

程 のまさにその 本 質 から 困 難 なことが 多 い。しかし、 後 知 恵 があってはならず 必 ず 回 避 し、<br />

法 的 結 論 は 先 行 技 術 から 収 集 した 事 実 を 根 拠 に 下 されねばならない。<br />

自 明 性 の 一 応 の 証 明 をする<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 鍵 は、クレームの 発 明 が 自 明 であったであろう 理 由<br />

の 疑 いのない 明 瞭 度 である。KSR International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___,<br />

82 USPQ2d 1385, 1396 (2007)において 最 高 裁 判 所 は、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 け<br />

る 解 析 は 明 確 にされなくてはならないことに 言 及 した。 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 は「 自 明 性 によ<br />

る 拒 絶 は 単 なる 推 論 による 陳 述 によって 是 認 することはできない。そこには 自 明 性 について<br />

の 法 的 結 論 を 裏 付 ける 何 らかの 合 理 的 支 えを 有 する 明 瞭 な 理 由 がなければならない」と 述 べ<br />

た。In re Kahn, 441 F.3d 977, 988, 78 USPQ2d 1329, 1336 (Fed. Cir. 2006)。KSR, 550 U.S.<br />

at ___、82 USPQ2d at 1396( 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 の 同 意 意 見 引 用 )も 参 照 のこと。<br />

審 査 官 が 特 許 法 第 103 条 に 基 づきクレームの 発 明 を 拒 絶 するに 足 る 事 実 に 基 づく 裏 付 けがあ<br />

ると 判 断 した 場 合 、 審 査 官 は 次 に、 明 細 書 記 載 の 証 拠 若 しくは 出 願 人 により 提 出 されたその<br />

他 の 証 拠 など、そのクレームの 発 明 の 特 許 性 を 裏 付 ける 証 拠 を 検 討 しなければならない。 特<br />

許 性 の 最 終 決 定 は 証 拠 の 優 越 性 による 記 録 全 体 の 考 察 に 基 づくものであって、 意 見 書 及 び 二<br />

次 的 証 拠 の 説 得 力 の 適 正 な 検 討 を 伴 う。In re Oetiker, 977 F.2d 1443, 24 USPQ2d 1443 (Fed.<br />

Cir. 1992)「 証 拠 の 優 位 性 」に 関 する 法 的 基 準 は、 当 該 証 拠 に 対 する 異 議 申 立 において 提 出<br />

される 証 拠 よりも 説 得 力 のあることを 当 該 証 拠 に 要 求 する。 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 に<br />

175


関 し 審 査 官 は、 証 明 しようとする 法 的 判 断 (すなわち、 引 例 の 教 示 する 内 容 が 一 応 の 自 明 性 を<br />

立 証 する)は 可 能 性 がないよりはあることを 全 体 として 示 している 証 拠 を 提 供 しなければな<br />

らない。<br />

出 願 人 が 証 拠 を 提 出 した 場 合 、 出 願 時 の 明 細 書 においてであるか 拒 絶 に 対 する 反 論 において<br />

であるかどうかを 問 わず、 審 査 官 はクレームの 発 明 の 特 許 性 を 再 検 討 しなければならない。<br />

特 許 性 に 関 する 判 断 は、 審 査 官 により 提 出 された 証 拠 及 び 出 願 人 により 提 出 された 証 拠 を 含<br />

めてすべての 証 拠 の 検 討 に 基 づいて 行 われねばならない。すべての 証 拠 を 前 に 拒 絶 を 行 う 若<br />

しくは 支 持 するとする 決 定 は、 証 拠 の 全 体 に 基 づいたものであることを 証 明 しなくてはなら<br />

ない。 反 証 により 立 証 された 事 実 は, 結 論 そのものに 対 してではなく 自 明 性 の 結 論 が 導 き 出<br />

された 事 実 とともに 評 価 されねばならない。In re Eli Lilly & Co., 902 F.2d 943, 14 USPQ2d<br />

1741 (Fed. Cir. 1990)。<br />

審 査 官 の 一 応 の 証 明 の 正 確 な 役 割 及 び 自 明 性 の 最 終 決 定 における 出 願 人 の 反 証 に 関 する 考 察<br />

については In re Piasecki, 745 F.2d 1468, 223 USPQ 785 (Fed. Cir. 1984)を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 の 正 確 な 内 容 に 関 する 考 察 については MPEP 第 706.02 条 (j)を 参<br />

照 のこと。<br />

176


2143 一 応 の 自 明 性 の 証 明 の 基 本 的 要 件 の 例<br />

最 高 裁 判 所 は KSR International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385,<br />

1395-97 (2007)において、Grahams 審 理 で 決 められたように、 自 明 性 の 判 断 に 適 切 な「 機 能<br />

的 アプローチ」と 整 合 する 自 明 性 の 結 論 を 裏 付 ける 多 くの 理 論 的 根 拠 を 特 定 した。 特 許 法 第<br />

103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 鍵 は、クレームの 発 明 が 自 明 であったであろう 理 由 の 疑 いの<br />

ない 明 瞭 度 である。KSR 事 例 の 最 高 裁 判 所 は 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 解 析 は<br />

明 示 的 にしなくてはならないと 指 摘 している。<br />

理 論 的 根 拠 の 例<br />

自 明 性 の 結 論 を 裏 付 け 得 る 例 示 的 な 論 理 的 根 拠 は 次 に 掲 げるものがある。<br />

(A) 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずる 周 知 の 方 法 による 先 行 技 術 要 素 の 結 合<br />

(B) 周 知 の 要 素 の 予 測 可 能 な 結 果 を 得 ることができる 他 の 要 素 との 単 純 な 置 換<br />

(C) 類 似 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )を 改 善 するために 同 一 方 法 で 周 知 の 技 術 を 使 用<br />

(D) 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずることができる 改 善 の 準 備 ができている 周 知 の 考 案 品 ( 方 法 又 は<br />

製 品 )に 周 知 の 技 術 を 応 用<br />

(E) 「 当 然 の 試 行 」― 成 功 の 合 理 的 期 待 をもって 限 定 された 特 定 の 予 測 可 能 な 解 決 策 から 選<br />

択<br />

(F) 一 つの 努 力 分 野 で 周 知 の 成 果 は、 同 一 分 野 異 分 野 を 問 わずデザイン・インセンティブ 若<br />

しくはその 他 の 市 場 要 因 に 基 づき、 使 用 のために 成 果 の 変 形 を 促 進 することができる。ただ<br />

し、その 変 形 したものが 当 業 者 に 推 測 可 能 な 場 合<br />

(G) 当 業 者 に 先 行 技 術 の 引 例 を 修 正 させる 若 しくは 先 行 技 術 の 引 例 の 教 示 を 組 み 合 わせてク<br />

レームの 発 明 に 到 達 させるであろう 先 行 技 術 の 教 唆 、 示 唆 又 は 動 機<br />

提 示 する 理 論 的 根 拠 のリストは 包 括 的 なリストを 意 図 するものではない。 自 明 性 の 結 論 を 裏<br />

付 けるその 他 の 理 論 的 根 拠 は 本 庁 審 査 官 によって 依 拠 される 得 る。<br />

以 下 の 各 号 で 理 論 的 根 拠 ごとに 考 察 し、 自 明 性 の 認 定 を 裏 付 けるために 引 用 された 理 由 をど<br />

のように 使 用 できるかの 例 を 挙 げて 説 明 する。 引 用 事 例 (そこから 事 実 を 引 き 出 した)は、そ<br />

の 特 定 の 理 由 が 裁 判 所 の 自 明 性 についての 判 定 根 拠 であるという 考 えを 必 ずしも 支 持 してい<br />

るわけではない。 場 合 によっては 単 一 の 事 例 が 複 数 項 で 使 われ、 自 明 性 の 認 定 を 裏 付 けるた<br />

め 2 以 上 の 理 論 的 根 拠 の 利 用 を 説 明 している。Graham 審 理 が 納 得 できるように 解 決 されると<br />

自 明 性 の 結 論 が 2 以 上 の 論 理 の 筋 道 によって 裏 付 けられる 場 合 が 多 い。<br />

A. 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずる 周 知 の 方 法 による 先 行 技 術 要 素 の 結 合<br />

この 理 由 に 基 づきクレームを 拒 絶 するには、 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 先 行 技 術 が、 必 ずしも 単 一 の 引 例 においてというわけではないが、クレームされる 各 要<br />

素 を 含 んでおり、クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 間 の 唯 一 の 違 いが 単 一 の 先 行 技 術 の 引 例 に<br />

おいてその 要 素 の 実 際 の 組 合 せがないことという 認 定<br />

(2) 当 業 者 は 既 存 の 方 法 でクレームされた 時 点 の 要 素 を 組 み 合 わすことができ、 組 合 せにお<br />

いて 各 要 素 は 単 独 で 果 たすと 同 じ 機 能 を 単 に 果 たすという 認 定<br />

(3) 当 業 者 は 組 合 せの 結 果 は 予 測 可 能 であることを 認 識 していたという 認 定<br />

(4) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

177


クレームが 自 明 であるとの 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、すべてのクレームの 要 素 が 先 行 技<br />

術 において 周 知 であって 当 業 者 がクレームの 時 点 でその 要 素 を 既 知 の 手 法 でその 要 素 それぞ<br />

れの 機 能 を 変 えることなく 組 み 合 わせることができ、その 組 合 せは 当 業 者 に 対 して 予 測 可 能<br />

な 結 果 以 上 のものを 生 じさせないことである。KSR, 550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1395;<br />

Sakraida v. AG Pro, Inc., 425 U.S. 273, 282, 189 USPQ 449, 453 (1976);Anderson’s-Black<br />

Rock, Inc. v. Pavement Salvage Co., 396 U.S. 57, 62-63, 163 USPQ 673, 675 (1969);<br />

Great Atlantic & P. Tea Co. v. Supermarket Equipment Corp., 340 U.S. 147, 152, 87 USPQ<br />

303, 306 (1950)。「クレームの 新 たな 発 明 が 行 っている 方 法 で 当 該 要 素 を 組 み 合 わせるよう<br />

当 業 者 を 促 したであろう 理 由 を 特 定 することが 重 要 になることがある。」KSR, 550 U.S.の ___、<br />

82 USPQ2d at 1396。これらの 認 定 のいずれも 行 われない 場 合 、この 理 論 的 根 拠 はそのクレー<br />

ムが 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けるために 使 用 することはでき<br />

ない。<br />

例 1<br />

Anderson’s-Black Rock, Inc. v. Pavement Salvage Co., 396 U.S. 57, 163 USPQ 673 (1969)<br />

においてクレームされた 発 明 は、いくつかのよく 知 られた 要 素 を 単 一 の 筐 体 に 組 み 入 れた 舗<br />

装 機 械 であった。 標 準 的 な 先 行 技 術 の 舗 装 機 械 は 一 般 的 にアスファルトを 単 一 の 筐 体 に 広 げ<br />

て 成 形 するために 装 置 を 組 み 合 わせていた。 特 許 クレームは、 連 続 的 に 帯 状 舗 装 をする 間 の<br />

固 着 防 止 のため 舗 装 機 の 片 側 に 取 り 付 けられた 放 射 熱 バーナーから 成 るよく 知 られた 要 素 を<br />

含 んでいた。 先 行 技 術 は 放 射 熱 をアスファルトを 軟 化 させて 断 片 を 作 るために 用 いたが、 連<br />

続 帯 状 舗 装 を 実 現 させるためには 放 射 熱 バーナーを 使 用 していなかった。 構 成 部 品 のすべて<br />

は 先 行 技 術 において 周 知 であった。 唯 一 の 違 いは「 古 い 要 素 」を 組 み 合 わせてそれらを 単 一<br />

の 筐 体 に 取 り 付 けることにより 単 一 装 置 にしたことであった。 裁 判 所 はヒーターの 機 能 は 他<br />

の 装 置 の 機 能 に 全 く 依 存 せず、 単 一 のヒーターも 標 準 的 舗 装 機 と 併 せて 同 一 の 結 果 を 得 るた<br />

めに 使 用 することができると 認 定 した。 裁 判 所 は、バーナーを 他 の 要 素 と 併 せて 一 つの 機 械<br />

に 搭 載 することの 利 便 性 は、おそらく 非 常 に 利 便 性 は 高 いのだが、「 新 規 」 若 しくは「 異 な<br />

る 機 能 」を 生 み 出 すものではなく、 当 業 者 にとって 古 い 要 素 を 組 み 合 わせて 使 用 することは<br />

自 明 であったであろうと 結 論 した。Id. at 60、163 USPQ at 674。<br />

周 知 の 先 行 技 術 要 素 の 組 み 合 わせは、その 結 果 が 当 業 者 にとって 予 測 可 能 でない 場 合 、クレ<br />

ームの 発 明 を 自 明 であったとするには 十 分 でないことに 留 意 。United States v. Adams, 383<br />

U.S. 39, 51-52, 148 USPQ 479, 483-84 (1966)。Adams の 事 例 においてクレームの 発 明 は 一<br />

つのマグネシウム 電 極 及 び 一 つの 塩 化 第 一 銅 電 極 を 有 するバッテリーに 対 してであって、 乾<br />

燥 状 態 で 保 管 することができ、 淡 水 若 しくは 塩 水 を 加 えることによって 始 動 させることがで<br />

きた。マグネシウムと 塩 化 第 一 銅 は 個 々にはバッテリーの 部 品 として 知 られていたが、 裁 判<br />

所 はクレームのバッテリーは 非 自 明 であると 結 論 した。 裁 判 所 は、「Adams のバッテリーの<br />

それぞれの 要 素 は 先 行 技 術 において 周 知 であったという 事 実 にかかわらず、それらを Adams<br />

が 行 ったように 組 み 合 わせるためには 当 業 者 はそのようなバッテリーは 現 実 性 がないとする<br />

先 行 技 術 の 離 れた 教 示 を 無 視 しなければならないことが 必 要 であった」とし、また、 水 始 動<br />

のバッテリーはマグネシウム 電 極 の 使 用 に 有 害 になる 電 解 液 と 組 み 合 わせたときのみ 成 功 を<br />

収 めたとした。Id. at 42-43、50-52、148 USPQ at 480、483。「 先 行 技 術 が 一 定 の 既 存 要 素<br />

の 組 合 せから 外 れた 教 示 をしている 場 合 、それらを 組 み 合 わせて 成 果 を 上 げる 方 法 を 発 見 す<br />

ることは 非 自 明 である 可 能 性 が 高 い。」KSR, 550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1395。<br />

178


例 2<br />

Ruiz v. AB Chance Co.,357 F.3d 1270, 69 USPQ2d 1686 (Fed. Cir. 2004)においてクレー<br />

ムされた 発 明 は、スクリューアンカーを 用 いて 建 築 物 の 負 荷 をそのスクリューアンカーに 移<br />

転 させ、 既 存 の 基 礎 と 金 属 ブラケットを 支 えるための 機 構 に 向 けられていた。 先 行 技 術<br />

(Fuller)は 既 存 の 構 造 基 礎 を 支 えるためにスクリューアンカーを 用 いていた。Fuller は 基 礎<br />

の 負 荷 をそのスクリューアンカーに 移 転 させるためコンクリートハンチを 用 いていた。 先 行<br />

技 術 (Gregory)は 既 存 の 構 造 基 礎 を 支 えるためにプッシュピアを 用 いていた。Gregory はブラ<br />

ケットを 用 いて 負 荷 を 移 転 する 方 法 、 具 体 的 には 金 属 ブラケットが 基 礎 負 荷 をプッシュピア<br />

へ 移 転 する 方 法 を 教 示 していた。そのピアは 負 荷 を 支 持 するため 地 面 に 打 ち 込 まれる。どち<br />

らの 引 例 もクレームの 発 明 の 2 要 素 、スクリューアンカー 及 び 金 属 ブラケットが 併 せて 使 わ<br />

れることは 示 していなかった。 裁 判 所 は「 当 業 者 は 基 礎 支 持 機 構 には 基 礎 を 耐 力 部 材 に 接 続<br />

する 方 法 が 必 要 であることが 分 かっていた」と 認 定 した。Id. at 1276、69 USPQ2d at 1691。<br />

解 決 されるべき 問 題 の 性 質 、 不 安 定 な 基 礎 を 支 持 することとこの 目 的 を 達 成 するためにその<br />

基 礎 に 部 材 を 接 続 することの 必 要 性 が、 当 業 者 を 適 切 な 耐 力 部 材 及 び 適 合 するアタッチメン<br />

トを 選 ばせることになったであろう。 従 って、 不 安 定 な 基 礎 を 支 持 するためにスクリューア<br />

ンカー(Fuller のように)と 組 み 合 わせて 金 属 ブラケット(Gregory のように)を 使 用 すること<br />

は 自 明 であったであろう。<br />

B. 周 知 の 要 素 の 予 測 可 能 な 結 果 を 得 ることができる 他 の 要 素 との 単 純 な 置 換<br />

この 理 由 に 基 づくクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 先 行 技 術 は 一 部 の 構 成 部 品 ( 工 程 、 要 素 等 )が 他 の 構 成 部 品 と 置 き 換 えられたことでクレ<br />

ームの 考 案 品 ( 方 法 、 製 品 等 )と 異 なる 考 案 品 を 含 むことの 認 定<br />

(2) 置 き 換 えられた 部 品 及 びそれらの 機 能 は 先 行 技 術 において 周 知 されていたことの 認 定<br />

(3) 当 業 者 は 他 の 要 素 を 既 知 の 要 素 で 置 換 することができ、 置 換 結 果 は 予 測 可 能 であったこ<br />

との 認 定<br />

(4) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

クレームが 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、 既 知 の 要 素 の 他 の 要<br />

素 への 置 き 換 えは 当 業 者 にとって 予 測 可 能 な 結 果 を 生 み 出 すことである。これらの 認 定 のい<br />

ずれも 行 われない 場 合 、この 理 論 的 根 拠 はそのクレームが 当 業 者 にとって 自 明 であったであ<br />

ろうとする 結 論 を 裏 付 けるために 使 用 することはできない。<br />

例 1<br />

In re Fout, 675 F.2d 297, 213 USPQ 532 (CCPA 1982)でクレームされる 発 明 はコーヒー 又<br />

は 紅 茶 からカフェインを 抜 く 方 法 に 向 けられていた。 先 行 技 術 (Pagliaro)の 方 法 はカフェイ<br />

ン 抜 きの 植 物 質 を 造 り 出 し、 脂 肪 質 (オイル 等 )にカフェインを 閉 じ 込 めた。カフェインはそ<br />

の 後 、 水 抽 出 法 によって 脂 肪 質 から 取 り 出 された。 出 願 人 (Fout)は 水 抽 出 工 程 の 代 わりに 蒸<br />

留 工 程 を 用 いた。 従 来 の 技 術 (Waterman)はオイルの 中 にコーヒーを 浮 遊 させた 後 、オイルか<br />

らカフェインを 直 接 蒸 留 した。 裁 判 所 は、「Pagliaro と Waterman は 共 にオイルからカフェ<br />

インを 分 離 する 方 法 を 教 示 しているので、 一 方 の 方 法 で 他 方 の 方 法 を 置 換 できることは 一 応<br />

の 自 明 性 があったであろうと 認 定 した。 別 のものの 代 わりにある 同 等 物 を 使 うという 明 確 な<br />

示 唆 が、そのような 置 換 を 自 明 とするには 存 在 する 必 要 がない。Id. at 301、213 USPQat 536。<br />

179


例 2<br />

In re O’Farrell, 853 F.2d 894, 7 USPQ2d 1673 (Fed. Cir. 1988)における 発 明 は、 宿 主<br />

種 本 来 の 遺 伝 子 に 代 えて 異 種 遺 伝 子 を 使 うことで 形 質 転 換 したバクテリア 宿 主 種 内 でタンパ<br />

ク 質 を 合 成 する 方 法 に 向 けられていた。 一 般 的 に、 体 内 のタンパク 質 合 成 は DNA から RNA へ<br />

さらにタンパク 質 への 経 路 をたどる。 先 行 技 術 Polisky 論 文 ( 出 願 3 名 の 発 明 者 の 2 名 によっ<br />

て 著 された)はタンパク 質 合 成 のために 描 写 される 方 法 の 利 用 を 示 唆 していたが、その 論 文 で<br />

実 証 された 挿 入 異 種 遺 伝 子 は 一 般 的 にタンパク 質 生 成 工 程 まで 進 まず RNA で 終 了 するもので<br />

あった。Bahl に 関 する 第 2 の 引 例 は 化 学 的 に 合 成 された DNA をプラスミドに 挿 入 する 一 般 的<br />

方 法 を 記 載 していた。 従 って、 従 来 の 遺 伝 子 を、タンパク 質 生 成 につながることが 知 られて<br />

いる 他 の 遺 伝 子 と 置 き 換 えることは、 当 業 者 はそのような 置 換 を 実 行 することができその 結<br />

果 を 合 理 的 に 予 測 することができたので、 当 業 者 にとって 自 明 であったであろう。<br />

発 明 時 点 の 分 子 生 物 学 分 野 において 顕 著 な 予 測 不 可 能 性 があったとする 出 願 人 の 反 論 に 応 じ<br />

て 裁 判 所 は、 技 能 レベルは 極 めて 高 く Polisky の 教 示 はそれだけであったとしても 詳 細 で 使<br />

用 可 能 な 手 順 を 記 載 しており、 修 正 すればタンパク 質 の 合 成 に 成 功 するだろうとの 示 唆 が 含<br />

まれていると 述 べた。<br />

これは、 拒 絶 が、それ 以 上 のものがなければ「やってみるのが 当 然 」であったであろうと 述<br />

べている 状 況 ではない。ここでは 成 功 の 合 理 的 な 期 待 が 存 在 した。「 自 明 性 は 成 功 の 完 全 な<br />

予 測 可 能 性 を 必 要 としない。」Id. at 903、73 USPQ2d at 1681。<br />

例 3<br />

Ruiz v. AB Chance Co., 357 F.3d 1270, 69 USPQ2d 1686 (Fed. Cir. 2004)における 事 例 は<br />

上 記 第 A 項 の 例 2 に 記 載 される。<br />

先 行 技 術 は 異 なる 耐 力 部 材 及 び 基 礎 を 部 材 に 取 り 付 ける 異 なる 方 法 を 示 していた。 従 って、<br />

負 荷 を 移 転 させる 予 測 可 能 な 結 果 を 求 めて Fuller のコンクリートハンチの 代 わりに Gregory<br />

で 教 示 された 金 属 ブラケットを 用 いることは 当 業 者 にとって 自 明 であったであろう。<br />

例 4<br />

Ex parte Smith, 83 USPQ2d 1509 (Bd. Pat. App. & Int. 2007)においてクレームされた 発<br />

明 は、 閉 じられたポケットの 形 を 決 める 連 続 する 二 重 の 綴 じ 目 を 形 成 するように、 紙 のベー<br />

スシート 及 びポケットシートを 貼 り 合 わせて 作 る 製 本 簿 のポケットインサートであった。 先<br />

行 技 術 (Wyant)は、 一 枚 のシートを 折 り 畳 み、 周 知 の 接 着 法 を 用 いて「のどあき」に 沿 ってフ<br />

ォルダー 部 分 を 固 定 することによって 形 成 する 少 なくとも 一 つのポケットを 開 示 した。 先 行<br />

技 術 (Wyant)は 連 続 する 二 重 の 綴 じ 目 を 形 成 するためシートを 接 着 することを 開 示 していな<br />

かった。 先 行 技 術 (Dick)は 四 番 目 の 縁 に 開 口 部 を 有 する 閉 じたポケットを 形 作 るため 4 つの<br />

縁 の 3つに 沿 って 2 枚 のシートを 縫 合 して、または 固 定 させて 作 られるポケットを 開 示 した。<br />

Wyant 及 び Dick の 教 示 内 容 を 検 討 し、 審 判 部 は「(1)クレームの 各 要 素 は 先 行 技 術 の 対 象 範<br />

囲 であり 内 容 であると 認 定 される、(2) 当 業 者 はクレームの 時 点 でその 要 素 を 当 該 発 明 が 行 わ<br />

れた 時 点 に 周 知 されていた 方 法 によって 組 み 合 わせることができた、そして(3) 当 業 者 は 発 明<br />

が 行 われた 時 点 で 組 合 せの 性 能 又 は 機 能 が 予 測 可 能 であると 認 識 していたであろうと 認 定 し<br />

た。」KSR の 事 例 を 引 用 して 審 判 部 は、Dick の 連 続 の 二 重 の 綴 じ 目 を Wyant の 畳 んだ 綴 じ 目<br />

の 代 わりに 使 うことは、 単 純 に 既 存 の 要 素 を 他 のものの 代 わりに 使 うことにすぎず、 改 良 準<br />

備 ができている 先 行 技 術 の 一 部 に 対 する 既 存 技 術 の 単 なる 適 用 であると 結 論 した。<br />

180


C. 類 似 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )を 改 善 するために 同 一 方 法 で 周 知 の 技 術 を 使 用<br />

この 理 由 に 基 づくクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 先 行 技 術 は、クレームの 発 明 を「 改 良 」とみなすことができる「ベース」 考 案 品 ( 方 法 又<br />

は 製 品 )を 含 むことの 認 定<br />

(2) 先 行 技 術 は、クレームの 発 明 と 同 一 の 方 法 で 改 良 された「 同 等 の」 考 案 品 (ベース 考 案 品<br />

と 同 一 でない 方 法 又 は 製 品 )を 含 むことの 認 定<br />

(3) 当 業 者 が「ベース」 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )に 同 一 方 法 で 周 知 の「 改 良 」 技 術 を 適 用 する<br />

ことができ、その 結 果 は 当 業 者 にとって 予 測 可 能 であったとする 認 定<br />

(4) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

クレームが 自 明 であったとする 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )の 特 定<br />

のクラスを 強 化 する 方 法 が、その 他 の 状 況 においてそのような 改 良 の 教 示 を 根 拠 に 当 業 者 の<br />

通 常 能 力 にそなわっていたとすることにある。 当 業 者 は 先 行 技 術 の「ベース」 考 案 品 ( 方 法 又<br />

は 製 品 )にこの 周 知 の 強 化 方 法 を 適 用 することができ、その 結 果 は 当 業 者 にとって 予 測 可 能 で<br />

あったであろう。 最 高 裁 判 所 は KSR の 事 例 において 技 術 の 実 際 の 適 用 が 当 業 者 の 技 能 を 超 え<br />

るものであった 場 合 その 技 術 を 利 用 することは 自 明 とはならないとした。KSR, 550 U.S. at<br />

___、82 USPQ2d at 1396。これらの 認 定 のいずれも 行 われない 場 合 、この 理 論 的 根 拠 はその<br />

クレームが 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けるために 使 用 すること<br />

はできない。<br />

例 1<br />

In re Nilssen, 851 F.2d 1401, 7 USPQ2d 1500 (Fed. Cir. 1988)においてクレームされた<br />

発 明 は、「パワーライン 作 動 式 インバータタイプ 蛍 光 灯 安 定 器 の 自 励 発 振 インバータでイン<br />

バータからの 出 力 電 流 が 万 一 瞬 間 を 超 えて 所 定 のしきい 値 以 上 になった 場 合 、 停 止 する 方 法 」<br />

に 向 けられていた。Id. at 1402、7 USPQ2d at 1501。それは、 電 流 出 力 はモニターされてい<br />

て 電 流 出 力 が 規 定 の 短 い 時 間 にあるしきい 値 を 超 えた 場 合 に 作 動 信 号 が 送 られ、インバータ<br />

は 停 止 して 損 傷 から 守 られることである。<br />

先 行 技 術 (USSR 認 定 )は 制 御 方 法 を 介 して 未 開 示 の 方 法 でインバータ 回 路 を 保 護 する 考 案 品<br />

を 記 述 していた。その 考 案 品 は 制 御 方 法 によって 高 負 荷 条 件 を 表 示 していたが 過 負 荷 防 止 の<br />

具 体 的 方 法 は 表 示 していなかった。 先 行 技 術 (Kammiller)はインバータ 回 路 を 保 護 するために<br />

高 負 荷 電 流 条 件 の 場 合 にインバータを 停 止 することを 開 示 していた。これは、 過 負 荷 防 止 が<br />

遮 断 スイッチでインバータを 停 止 させることによって 達 成 されたということである。<br />

裁 判 所 は、「 当 業 者 にとって Kammiller によって 教 示 されるように、インバータを 動 作 不 能<br />

とするため、USSR 考 案 品 において 生 成 したしきい 値 信 号 を 使 って 遮 断 スイッチを 作 動 させた<br />

ことは 自 明 であったであろう」と 認 定 した。Id. at 1403、7 USPQ2d at 1502。これは、USSR<br />

文 書 のインバータ 回 路 に 望 みの 保 護 を 提 供 するため 回 路 保 護 用 の 遮 断 スイッチという 周 知 の<br />

技 術 を 使 用 することは、 当 業 者 にとって 自 明 であったということである。<br />

例 2<br />

Ruiz v. AB Chance Co., 357 F.3d 1270, 69 USPQ2d 1686 (Fed. Cir. 2004)における 事 例 は、<br />

上 記 第 A 項 の 例 2 に 記 載 されている。<br />

解 決 すべき 問 題 の 性 質 上 、 発 明 者 はその 問 題 について 考 えられる 解 決 策 にかかわる 引 例 を 調<br />

181


べることになる。Id.at 1277、69 USPQ2d at 1691。 従 って、 不 安 定 な 基 礎 を 支 持 するために<br />

スクリューアンカー(Fuller のように)と 組 み 合 わせて 金 属 ブラケット(Gregory のように)を<br />

使 用 することは 自 明 であったであろう。<br />

D. 予 測 可 能 な 結 果 を 生 ずることができる 改 善 の 準 備 ができている 周 知 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製<br />

品 )に 周 知 の 技 術 を 応 用<br />

この 理 由 に 基 づきクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 先 行 技 術 はクレームの 発 明 を「 改 良 」とみなすことができる「ベース」 考 案 品 ( 方 法 又 は<br />

製 品 )を 含 むことの 認 定<br />

(2) 先 行 技 術 はベース 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )に 適 用 可 能 である 周 知 の 技 術 を 含 むことの 認 定<br />

(3) 当 業 者 は 周 知 の 技 術 が 予 測 可 能 な 結 果 を 生 みまた 改 良 されたシステムとなることを 認 識<br />

していたであろうことの 認 定<br />

(4) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

クレームは 自 明 であったとする 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、 特 定 の 周 知 の 技 術 が 当 業 者 の<br />

通 常 能 力 の 一 部 として 認 識 されていたであろうということである。 当 業 者 は 改 善 の 準 備 がで<br />

きていた 周 知 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )にこの 周 知 の 技 術 を 適 用 することができ、その 結 果 は<br />

当 業 者 にとって 予 測 可 能 であったであろう。これらの 認 定 のいずれも 行 われない 場 合 、この<br />

理 論 的 根 拠 はそのクレームが 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けるた<br />

めに 使 用 することはできない。<br />

例 1<br />

Dann v. Johnston, 425 U.S. 219, 189 USPQ 257 (1976)においてクレームされた 発 明 は 銀 行<br />

小 切 手 及 び 預 入 金 の 自 動 記 録 管 理 システム(すなわち、コンピュータ)に 向 けられていた。こ<br />

のシステムにおいて 顧 客 は 小 切 手 又 は 預 入 金 伝 票 ごとに 数 値 区 分 コードを 記 入 する。 小 切 手<br />

処 理 システムはこれらを、 金 額 及 び 口 座 データと 全 く 同 じように 小 切 手 上 に 磁 気 インクで 記<br />

録 する。このシステムを 所 定 の 場 所 に 備 えることによって 銀 行 は、 分 類 される 顧 客 に 区 分 ご<br />

との 小 計 を 与 えることができる。また、そのクレームのシステムによって 銀 行 は 顧 客 が 依 頼<br />

する 形 式 に 従 って 報 告 書 を 印 刷 することができる。 裁 判 所 によって 特 徴 付 けられたように、<br />

「 被 上 訴 人 の 発 明 により、その 後 、 汎 用 コンピュータは 銀 行 顧 客 に 問 題 の 期 間 の 取 引 の 個 別<br />

かつ 分 類 された 明 細 を 提 供 できるようにプログラムされている。」Id. at 222、189 USPQat 259。<br />

基 本 システム― 銀 行 業 界 のデータ 処 理 装 置 及 びコンピュータソフトウェア 利 用 の 特 性 上 、 銀<br />

行 は 日 常 的 に 多 くの 記 録 管 理 を 自 動 的 に 行 っていた。 日 常 の 小 切 手 処 理 において、システム<br />

は 磁 気 インク 文 字 を 読 み 取 り 口 座 及 び 経 路 を 特 定 した。システムはまた 小 切 手 の 金 額 も 読 み<br />

取 り、 小 切 手 の 所 定 部 分 にその 金 額 を 印 字 した。その 後 、 小 切 手 は 磁 気 インク 情 報 を 用 いる<br />

さらなるデータ 処 理 工 程 を 通 して、 取 引 及 び 適 切 な 口 座 への 転 記 を 行 うために 適 切 な 記 録 を<br />

生 成 するため 送 られた。これらのシステムには、 当 座 預 金 の 顧 客 に 送 られる 月 次 報 告 書 など、<br />

口 座 ごとの 定 期 計 算 書 の 作 成 が 含 まれていた。<br />

改 良 されたシステム―クレームの 発 明 は 区 分 ごとの 支 払 額 追 跡 に 用 いることができる 区 分 コ<br />

ードを 記 録 することで、このシステムを 補 完 した。この 場 合 も、 区 分 コードは 小 切 手 ( 又 は 預<br />

入 金 伝 票 ) 上 に 記 録 される、 読 み 取 り、 磁 気 インク 記 録 へ 変 換 される 数 字 であって、その 後 区<br />

分 コードを 含 めるためデータシステムで 処 理 される。これによって 口 座 番 号 によるレポート<br />

182


だけしかできなかったのとは 対 照 的 に 区 分 によるデータレポートが 可 能 となった。<br />

周 知 の 技 術 ―これは 先 行 技 術 のテクニックの 適 用 である― 予 算 のより 詳 細 な 計 上 支 出 の 区 分<br />

をどのように 追 跡 するかという 問 題 を 解 決 するために 口 座 番 号 を 使 用 する( 通 常 は 個 人 の 総<br />

取 引 を 追 跡 するために 使 用 される)。すなわち、 口 座 番 号 ( 自 動 データ 処 理 システムで 処 理 が<br />

可 能 なデータを 特 定 する)が 異 なる 顧 客 間 の 識 別 に 使 用 される。さらに、 銀 行 はどの 別 口 の 口<br />

座 においても 手 数 料 に 起 因 する 引 き 落 としをずっと 分 離 しており、それらの 料 金 の 顧 客 小 計<br />

を 出 していた。これまでは、 区 分 ごとに 別 口 の 口 座 を 設 定 する 必 要 があるのなら 別 個 のレポ<br />

ートを 受 け 取 る。 新 たな 桁 数 ( 区 分 コード)を 用 いて 口 座 情 報 を 補 足 することは、 追 跡 及 び 報<br />

告 サービス 用 の 別 個 の 口 座 として 取 り 扱 うことのできる 単 一 の 口 座 を 効 果 的 に 作 ることによ<br />

ってその 問 題 を 解 決 した。すなわち、 区 分 コードは 単 に、 以 前 は 別 口 の 口 座 であったかもし<br />

れないものを、レポートに 示 されるサブ 口 座 番 号 を 付 けてはいるが、 単 一 の 口 座 として 取 り<br />

扱 うことができるようにした。<br />

データにしるしをつけ、その 後 に 標 準 的 なソート、 検 索 及 びレポートを 可 能 とする 基 本 技 術<br />

は 単 に 予 測 可 能 な 成 果 を 出 すにすぎず、 当 業 者 がこの 取 引 の 一 般 ツールで 達 成 することを 期<br />

待 できたであろう、 従 って 自 明 の 手 段 であった。 裁 判 所 は「 先 行 技 術 と 被 上 訴 人 のシステム<br />

との 差 は、そのシステムが 当 業 者 にとって 非 自 明 であるとするほどではない」と 判 定 した。<br />

Id.at 230、189 USPQ at 261。<br />

例 2<br />

In re Nilssen, 851 F.2d 1401, 7 USPQ2d 1500 (Fed. Cir. 1988)における 事 例 は、 上 記 第<br />

C 項 の 例 1 に 記 載 される。<br />

裁 判 所 は、「 当 業 者 にとって Kammiller によって 教 示 されるように、インバータを 動 作 不 能<br />

とするため、USSR 考 案 品 において 生 成 したしきい 値 信 号 を 使 って 遮 断 スイッチを 作 動 させた<br />

ことは 自 明 であったであろう」と 認 定 した。Id. at 1403、7 USPQ2d at 1502。 遮 断 スイッチ<br />

を 用 いる 既 存 技 術 は 予 測 通 りインバータ 回 路 を 保 護 することになったであろう。 従 って、 作<br />

動 信 号 に 応 答 する 遮 断 スイッチを 使 用 してインバータを 保 護 することは 当 業 者 の 技 能 の 範 囲<br />

内 であったであろう。<br />

E. 「 当 然 の 試 行 」― 成 功 の 合 理 的 期 待 をもって 限 定 された 特 定 の 予 測 可 能 な 解 決 策 から 選 択<br />

この 理 由 に 基 づくクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 発 明 の 時 点 において 認 識 される 問 題 若 しくは 当 該 技 術 分 野 における 必 要 性 があって、 問<br />

題 を 解 決 するための 設 計 需 要 又 は 市 場 圧 力 があることの 認 定<br />

(2) 認 識 される 必 要 性 若 しくは 問 題 に 対 して 有 限 な 数 が 特 定 され、 予 測 可 能 で 可 能 性 のある<br />

解 決 法 が 存 在 することの 認 定<br />

(3) 当 業 者 が 成 功 の 合 理 的 期 待 を 持 って 既 存 の 可 能 性 のある 解 決 策 を 持 ちうることの 認 定 、<br />

及 び<br />

(4) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

当 該 クレームは 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けるための 理 論 的 根 拠 は、「 当 業 者<br />

が 自 らの 技 術 的 に 理 解 できる 周 知 の 選 択 肢 を 求 めるのは 当 然 なことである。このことが 予 想<br />

される 成 功 につながる 場 合 、その 製 品 は 発 明 ではなく 通 常 の 技 能 であり 常 識 であると 思 われ<br />

る。その 場 合 、 組 合 せが 当 然 の 試 行 であったという 事 実 が 第 103 条 に 基 づく 自 明 であったこ<br />

183


とを 証 明 できるかもしれない。」KSR, 550 U.S. at ___、82 USPQ2d at 1397。これらの 認 定<br />

のいずれも 行 われない 場 合 、この 理 論 的 根 拠 はそのクレームが 当 業 者 にとって 自 明 であった<br />

であろうとする 結 論 を 裏 付 けるために 使 用 することはできない。<br />

例 1<br />

Pfizer, Inc. v. Apotex, Inc., 480 F.3d 1348, 82 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 2007)におい<br />

てクレームされた 発 明 はアムロジピンベシレート 製 剤 に 向 けられていた。この 製 剤 は 米 国 内<br />

で Norvasc® 商 標 の 錠 剤 で 販 売 されている。 発 明 の 時 点 でアムロジピンはベシレートアニオン<br />

の 使 用 であるとして 知 られていた、アムロジピンはアムロジピンベシレートにクレームされ<br />

ていると 同 一 の 治 療 特 性 を 有 することが 知 られていたが、Pfizer はベシレート 形 態 ではより<br />

良 好 な 製 造 特 性 ( 例 えば、「 粘 着 性 」の 低 下 )を 有 することを 発 見 した。<br />

Pfizer はアムロジピンベシレートを 形 成 する 成 果 は 予 測 不 可 能 であったであろうので 自 明<br />

でないと 主 張 した。 裁 判 所 は、 非 予 測 可 能 性 をここで 非 自 明 性 と 同 等 とすることができると<br />

する 意 見 を、 改 良 された 特 性 を 試 験 するために 薬 学 的 に 受 容 可 能 な 塩 が 僅 かな 有 限 数 (53)し<br />

かないことを 理 由 に 拒 絶 した。<br />

裁 判 所 は、アムロジピンの 機 械 加 工 性 の 問 題 を 持 つ 当 業 者 は 化 合 物 の 塩 の 形 成 に 注 目 してお<br />

り、 塩 を 作 る 可 能 性 のあるものの 基 を 薬 学 的 に 受 容 可 能 な 塩 を 形 成 することが 知 られている<br />

53 のアニオン 基 まで 範 囲 を 狭 めることに 成 功 しており、「 成 功 の 合 理 的 期 待 」があるとする<br />

許 容 可 能 な 数 となっていたことを 認 めた。<br />

例 2<br />

Alza Corp. v. Mylan Laboratories, Inc., 464 F.3d 1286, 80 USPQ2d 1001 (Fed. Cir. 2006)<br />

においてクレームされた 発 明 は、 薬 剤 がそこで 24 時 間 にわたって 所 定 の 割 合 で 放 出 される、<br />

その 薬 剤 のオキシブチニンの 徐 放 製 剤 に 関 するものであった。オキシブチニンは 水 に 非 常 に<br />

易 溶 性 であることが 知 られており、 明 細 書 はそのような 薬 剤 の 徐 放 製 剤 の 開 発 に 特 定 の 問 題<br />

があることを 指 摘 していた。<br />

Morella の 先 行 技 術 特 許 は、モルヒネの 徐 放 製 剤 などの 水 に 非 常 に 易 溶 性 である 薬 剤 の 徐 放<br />

製 剤 を 教 示 していた。また、Morella は 水 に 非 常 に 易 溶 性 である 薬 剤 の 区 分 に 属 するとして<br />

オキシブチニンを 特 定 していた。Baichwal の 先 行 技 術 特 許 はクレームの 発 明 とは 異 なる 放 出<br />

率 を 持 つオキシブチニンの 徐 放 製 剤 を 教 示 していた。 最 後 に、Wong の 先 行 技 術 特 許 は 一 般 的<br />

に 許 容 可 能 な 24 時 間 にわたる 薬 剤 の 放 出 方 法 を 教 示 していた。Wong はオキシブチニンが 入<br />

っている 薬 剤 のいくつかの 区 分 に 開 示 される 方 法 の 適 用 性 に 言 及 しているが、Wong はオキシ<br />

ブチニンに 対 してその 適 用 性 に 特 には 言 及 していない。<br />

裁 判 所 はオキシブチニンの 吸 収 特 性 が 発 明 の 時 点 で 合 理 的 に 予 測 可 能 であったことを 理 由 に、<br />

クレームの 時 点 でオキシブチニン 徐 放 製 剤 の 成 功 する 開 発 の 合 理 的 期 待 は 存 在 していただろ<br />

うと 判 断 した。 先 行 技 術 は 明 細 書 で 証 明 されるとおり、 水 に 非 常 に 易 溶 性 である 薬 剤 の 徐 放<br />

製 剤 の 開 発 において 乗 り 越 えるべき 障 害 を 認 識 しており、これらの 障 害 を 乗 り 越 える 有 限 の<br />

数 の 方 法 を 示 唆 していた。クレームは、 成 功 の 合 理 的 期 待 を 持 って 徐 放 製 剤 を 着 想 するため<br />

の 既 存 方 法 を 試 みることは 明 らかであったであろうから 自 明 であった。 裁 判 所 は 絶 対 的 予 測<br />

可 能 性 に 欠 けるとする 主 張 によって 意 見 を 変 えることはなかった。<br />

例 3<br />

Ex parte Kubin, 83 USPQ2d 1410 (Bd. Pat. App. & Int. 2007)においてクレームされた 発<br />

明 は 単 離 核 酸 分 子 であった。クレームは 核 酸 が 特 定 のポリペプチドをコード 化 すると 記 載 し<br />

184


ていた。コード 化 されたポリペプチドは 部 分 的 な 特 定 の 配 列 により、 及 び 特 定 のタンパク 質<br />

に 対 する 結 合 能 によりクレームで 特 定 された。<br />

Valiante の 先 行 技 術 特 許 はクレームの 核 酸 によってコード 化 されたポリペプチドは 教 示 さ<br />

れたが、ポリペプチドの 配 列 若 しくはクレームの 単 離 核 酸 分 子 のいずれも 開 示 されなかった。<br />

しかし、Valiante は Sambrook による 先 行 技 術 の 研 究 所 マニュアルによって 開 示 されたよう<br />

な 従 来 手 法 を 用 いることによって、ポリペプチドの 配 列 は 特 定 することができ、 核 酸 分 子 を<br />

単 離 できることを 開 示 した。Valiante のポリペプチドの 開 示 及 びポリペプチドの 配 列 決 定 と<br />

核 酸 分 子 の 単 離 化 の 従 来 の 常 法 に 照 らして 審 判 部 は、 当 業 者 はクレームの 対 象 範 囲 内 で 核 酸<br />

分 子 は 首 尾 よく 得 ることができたであろうと 判 定 した。<br />

In re Deuel, 51 F.3d 1552, 34 USPQ2d 1210 (Fed. Cir. 1995)に 依 拠 して 上 訴 人 は、 構 造<br />

的 に 同 じ 核 酸 分 子 を 示 す 若 しくは 示 唆 する 引 例 を 提 示 することなく 特 定 の 核 酸 分 子 に 関 する<br />

クレームを 拒 絶 するため、Sambrook に 記 載 される 方 法 と 併 せて Valiante 特 許 のポリペプチ<br />

ドを 使 うことは 特 許 庁 にとって 不 適 切 であると 主 張 した。KSR 事 例 を 引 用 して 審 判 部 は 次 の<br />

ように 述 べた。「 問 題 を 解 決 するための 動 機 があって、さらに 有 限 数 の 特 定 された 予 測 可 能<br />

な 解 決 策 がある 場 合 、 当 業 者 は 自 らが 技 術 的 に 理 解 できる 周 知 の 選 択 肢 を 求 めることは 当 然<br />

である。このことが 予 想 される 成 功 につながる 場 合 、その 製 品 は 発 明 ではなく 通 常 の 技 能 で<br />

あり 常 識 であると 思 われる。」 審 判 部 は 当 業 者 が 直 面 していた 問 題 は 特 定 の 核 酸 を 単 離 する<br />

ことであってそれを 可 能 にできる 限 られた 数 の 方 法 が 存 在 したことに 注 目 した。 審 判 部 は、<br />

当 業 者 は 少 なくとも 一 つは 成 功 するという 合 理 的 期 待 を 持 ってこれらの 方 法 を 試 みる 理 由 を<br />

有 していたであろうと 結 論 した。 従 って、クレームの 特 定 の 核 酸 分 子 を 単 離 することは「 新<br />

しい 手 法 ではなく、 通 常 技 能 かつ 常 識 の 製 品 」であった。<br />

F. 一 つの 努 力 分 野 で 周 知 の 成 果 は、 同 一 分 野 異 分 野 を 問 わずデザイン・インセンティブ 若<br />

しくはその 他 の 市 場 要 因 に 基 づき、 使 用 のために 成 果 の 変 形 を 促 進 することができる。ただ<br />

し、その 変 形 したものが 当 業 者 に 推 測 可 能 な 場 合<br />

この 理 由 に 基 づきクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容 は、 出 願 人 の 発 明 のそれと 同 一 努 力 分 野 にある 又 は 異 なる<br />

努 力 分 野 にあるとを 問 わず、 同 等 若 しくは 類 似 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )を 含 むことの 認 識<br />

(2) 周 知 の 考 案 品 ( 方 法 又 は 製 品 )の 適 合 を 促 したであろうデザイン・インセンティブ 若 しく<br />

は 市 場 要 因 が 存 在 したことの 認 定<br />

(3) クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 間 の 相 違 点 は 周 知 の 変 形 の 中 に 含 まれる 若 しくは 先 行 技<br />

術 において 知 られる 本 質 であることの 認 定<br />

(4) 当 業 者 は 特 定 されるデザイン・インセンティブ 若 しくはその 他 の 市 場 要 因 に 照 らして 先<br />

行 技 術 のクレームの 変 形 を 実 施 することができ、そのクレームの 変 形 は 当 業 者 にとって 予 測<br />

可 能 であっただろうことの 認 定<br />

(5) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は、どのようなものであっても、 検 討 中 の 事 例 の 事<br />

実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を 説 明 するために 必 要 とされる。<br />

クレームの 発 明 は 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、デザイン・イ<br />

ンセンティブ 又 は 市 場 要 因 が 当 業 者 にクレームの 発 明 となることが 予 測 可 能 な 方 法 で 先 行 技<br />

術 を 変 化 させるように 促 した 可 能 性 があることである。これらの 認 定 のいずれも 行 われない<br />

場 合 、この 理 論 的 根 拠 はそのクレームが 当 業 者 にとって 自 明 であったであろうとする 結 論 を<br />

185


裏 付 けるために 使 用 することはできない。<br />

例 1<br />

Dann v. Johnston, 425 U.S. 219, 189 USPQ 257 (1976)の 事 例 は、 上 記 第 D 項 の 例 1に 記 載<br />

されている。<br />

裁 判 所 は、 出 願 人 により 述 べられた 問 題 、 取 引 区 分 により 詳 細 な 分 析 結 果 を 与 える 必 要 性 、<br />

は 個 々の 業 務 単 位 の 取 引 ファイルの 記 録 をつけるタスクに 近 似 すると 判 定 した。Id. at 229、<br />

189 USPQat 261。 上 に 述 べたように、データ 処 理 分 野 の 当 業 者 は 問 題 の 類 似 区 分 及 び 先 行 技<br />

術 の 周 知 の 解 決 策 を 認 識 しており、 異 なる 環 境 において 当 該 システムを 実 行 できる 当 業 者 レ<br />

ベル 内 に 十 分 あったであろう。 裁 判 所 は「 先 行 技 術 と 被 上 訴 人 のシステムとの 差 は、そのシ<br />

ステムが 当 業 者 にとって 非 自 明 であるとするほどではない」と 判 示 した。Id. at 230、189<br />

USPQat 261。<br />

例 2<br />

Leapfrog Enterprises, Inc. v. Fisher-Price, Inc., 485 F.3d 1157, 82 USPQ2d 1687 (Fed.<br />

Cir. 2007)においてクレームされた 発 明 は、 幼 児 が 発 音 通 りに 読 むことを 支 援 する 学 習 装 置<br />

に 関 するものであった。クレームは 次 の 通 りであった。<br />

複 数 のスイッチを 含 むハウジングと、 前 記 スイッチに 連 通 しプロセッサ 及 びメモリを 含 む 音<br />

生 成 装 置 と、 各 文 字 がスイッチと 関 連 づけらている 少 なくとも 1 つの 文 字 配 列 の 表 示 と、 前<br />

記 プロセッサへ 前 記 表 示 の 同 一 性 を 通 知 するために 構 成 されたリーダーとから 成 る 対 話 型 学<br />

習 装 置 。<br />

そこでは、 表 示 される 文 字 を 選 択 すると 関 連 するスイッチを 作 動 させてプロセッサと 通 信 し、<br />

音 生 成 装 置 に 選 択 された 文 字 に 関 連 する 音 に 対 応 する 信 号 を 生 成 させる。 音 は 文 字 配 列 中 の<br />

文 字 の 位 置 によって 決 定 される。<br />

裁 判 所 は、クレームの 発 明 は 先 行 技 術 の 2 つ(1)Bevan( 音 声 学 習 用 の 電 子 機 械 式 おもちゃを 示<br />

した)(2)スーパースピーク&リード 装 置 (SSR)(おもちゃの 電 子 読 本 )の 組 合 せと 当 業 者 の 知<br />

識 を 考 慮 して 自 明 であったであろうと 結 論 づけた。<br />

裁 判 所 は SSR 装 置 に 示 された 技 能 以 上 の 技 術 的 進 歩 はないことを 明 確 にした。 裁 判 所 は 次 の<br />

ように 述 べている。「 子 供 の 学 習 おもちゃ 分 野 の 当 業 者 は、Bevan 装 置 を SSR と 組 み 合 わせ、<br />

サイズの 縮 小 、 信 頼 性 の 強 化 、 操 作 の 単 純 化 、 費 用 の 削 減 などそのような 応 用 から 一 般 的 に<br />

理 解 されているメリットを 得 るために 最 新 電 子 部 品 を 使 用 してそれをアップデートすること<br />

は 自 明 であると 気 付 いていたであろう。SSR は 言 葉 の 最 初 の 文 字 に 対 応 する 音 を 生 成 できる<br />

のみであるが、 電 子 的 方 法 を 用 いてそれを 行 っている。 従 って、 組 合 せは、 当 該 技 術 分 野 (SSR)<br />

で 一 般 的 に 利 用 可 能 で 理 解 されているよりも 新 しい 技 術 を 用 いて 古 い 着 想 又 は 発 明 (Bevan)<br />

を 取 り 入 れたののである。<br />

裁 判 所 はクレームの 発 明 はすでに 知 られている 子 供 のおもちゃの 変 形 であるとした。この 変<br />

形 はその 他 のおもちゃ 以 上 の 非 自 明 の 前 進 はない。 裁 判 所 は SSR 装 置 に 示 された 技 能 以 上 の<br />

技 術 的 進 歩 はないことを 明 確 にした。 裁 判 所 は 次 のように 判 示 した。「 従 来 の 機 械 的 装 置 を<br />

調 製 して 最 新 電 子 工 学 というその 目 標 を 達 成 することは、 子 供 の 学 習 装 置 を 設 計 する 当 業 者<br />

にとって 合 理 的 に 自 明 であったであろう。 最 新 電 子 技 術 を 従 来 の 機 械 的 装 置 に 適 用 すること<br />

は 近 年 普 通 に 行 われている。」<br />

例 3<br />

KSR International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, 82 USPQ2d 1385 (2007)において<br />

186


クレームされた 発 明 は、 固 定 回 転 軸 と 組 立 品 支 持 体 に 取 り 付 けたペダル 位 置 センサーを 備 え<br />

た 調 整 可 能 なペダル 組 立 品 であった。 固 定 回 転 軸 であることは、ペダルが 調 製 されても 中 心<br />

点 は 変 わらないことをいう。 組 立 品 支 持 体 のセンサー 位 置 はペダルが 調 整 されてもセンサー<br />

を 固 定 していた。<br />

従 来 のガスペダルは、 設 定 位 置 からペダルのストロークに 基 づいてスロットルを 調 整 する 機<br />

械 的 連 結 によって 作 動 した。スロットルは 燃 焼 過 程 及 びエンジンが 生 み 出 す 力 を 制 御 した。<br />

新 しい 車 は、センサがペダルの 動 きを 検 出 しエンジンに 信 号 を 送 ってしかるべくスロットル<br />

を 調 整 するコンピュータ 制 御 のスロットルを 使 用 した。 発 明 の 時 点 で 市 場 には 機 械 的 ペダル<br />

を 電 子 ペダルに 変 換 するという 強 いインセンティブがあり、 先 行 技 術 はそのようにするため<br />

の 多 くの 方 法 を 教 示 していた。 先 行 技 術 (Asano)は 機 械 的 スロットル 制 御 の 固 定 回 転 軸 を 持 つ<br />

調 整 可 能 なペダルを 教 示 していた。 先 行 技 術 (Byler 特 許 ‘936)はペダル 組 立 品 の 回 転 軸 上 に<br />

配 置 した 電 子 ペダルセンサと、エンジンでなくペダル 機 構 内 のペダル 位 置 を 検 出 することが<br />

望 ましいことを 教 示 していた。 先 行 技 術 (Smith)は、センサをコンピュータに 接 続 するワイヤ<br />

を 擦 過 及 び 磨 耗 から 守 るにはセンサーをペダルの 足 パッドの 中 又 は 上 ではなくペダル 組 立 品<br />

の 固 定 部 におくべきことを 教 示 していた。 先 行 技 術 (Rixon)はスロットル 制 御 用 の 電 子 センサ<br />

を 有 する 調 整 可 能 なペダル 組 立 品 ( 足 パッド 内 センサ)を 教 示 していた。ペダルを 調 整 すると<br />

きに 回 転 軸 を 固 定 しておくペダル 組 立 品 と 組 み 合 わせた 従 来 技 術 の 電 子 スロットル 制 御 装 置<br />

は 存 在 していなかった。<br />

裁 判 所 は「 従 来 技 術 のペダル 設 計 者 が 努 力 分 野 における 開 発 によって 創 造 される 必 要 性 の 広<br />

い 領 域 に 直 面 して、センサ 付 きの Asano をアップグレードすることにメリットを 感 じたかど<br />

うかであろう」とした。Id. at ___、82 USPQ2d at 1399。 裁 判 所 は、 自 動 車 設 計 における 技<br />

術 的 発 展 は 電 子 センサを 備 える Asano をアップグレードするように 設 計 者 を 促 したであろう<br />

とした。 次 の 問 題 はセンサを 付 ける 場 所 であった。 先 行 技 術 に 基 づき、 設 計 者 はペダル 構 造<br />

の 移 動 しない 部 分 にセンサを 設 置 することが 分 かっていたであろう。そしてセンサがそこか<br />

らペダル 位 置 を 容 易 に 検 出 できる 構 造 上 で 最 も 明 らかな 移 動 しない 点 は 回 転 軸 であった。 裁<br />

判 所 は、 機 械 的 組 立 品 を 電 子 スロットル 制 御 の 付 いたスロットル 制 御 装 置 に 交 換 することに<br />

よって Asano の 固 定 旋 回 軸 調 整 可 能 ペダルをアップグレードすること、そして、ペダル 支 持<br />

構 造 体 上 に 電 子 センサを 取 付 けることは 自 明 であったであろうと 結 論 した。<br />

例 4<br />

Ex parte Catan, 83 USPQ2d 1568 (bd. Pat. App. & Int. 2007)においてクレームされた 発<br />

明 は、 通 信 ネットワークを 通 じて 所 定 のサブクレジット 限 度 額 まで 注 文 を 行 うことのできる<br />

認 証 された 掛 売 口 座 のサブユーザを 認 証 するため 生 物 認 証 システムを 使 用 する 家 庭 用 電 子 機<br />

器 であった。<br />

先 行 技 術 (Nakano)は、セキュリティが 生 物 認 証 装 置 ではなくパスワード 認 証 によって 提 供 さ<br />

れたことを 除 いてクレームの 発 明 のような 家 庭 用 電 子 機 器 を 開 示 した。ただし、 先 行 技 術<br />

(Harada)は 生 物 認 証 情 報 ( 指 紋 )を 提 供 する 家 庭 用 電 子 機 器 ( 遠 隔 操 作 )での 生 物 認 証 装 置 の 使<br />

用 は 発 明 の 時 点 で 先 行 技 術 において 周 知 であったことを 開 示 した。また、 先 行 技 術 (Dethloff)<br />

は、ユーザが 家 庭 用 電 子 機 器 を 介 してクレジットにアクセスできるようにするため 生 物 認 証<br />

を PIN 認 証 の 代 わりに 使 用 できることは 発 明 の 時 点 で 当 該 技 術 分 野 において 知 られていたこ<br />

とを 開 示 した。<br />

審 判 部 は、 先 行 技 術 は「 発 明 の 時 点 で 家 庭 用 電 子 機 器 技 術 分 野 の 当 業 者 はユーザ 認 証 に PIN<br />

187


と 共 に、 若 しくは PIN に 代 えて 生 物 認 証 情 報 をほとんど 同 じ 意 味 で 使 用 することになじんで<br />

いたであろうことを 示 している」と 判 断 した。 審 判 部 は、 家 庭 用 電 子 機 器 の 当 業 者 は 従 来 の<br />

パスワード 装 置 を 最 新 の 生 物 認 証 部 品 でアップデートすること、それによって、 予 測 通 りに<br />

そのような 適 用 から 一 般 的 に 理 解 されるメリット、すなわち 安 全 かつ 信 頼 できる 認 証 手 順 を<br />

得 られることは 自 明 であることが 分 かっていたであろうと 結 論 した。<br />

(G) 当 業 者 に 先 行 技 術 の 引 例 を 修 正 させる 若 しくは 先 行 技 術 の 引 例 の 教 示 を 組 み 合 わさせて<br />

クレームの 発 明 に 到 達 させるであろう 先 行 技 術 の 教 唆 、 示 唆 又 は 動 機<br />

この 理 由 に 基 づくクレームを 拒 絶 するには 本 庁 審 査 官 は Graham の 事 実 審 理 を 解 決 しなけれ<br />

ばならない。その 後 、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 を 明 らかにしなければならない。<br />

(1) 引 用 それ 自 体 に、 又 は、 引 例 を 修 正 する 若 しくは 引 例 の 技 術 を 組 み 合 わせることが 一 般<br />

的 に 当 業 者 にとって 可 能 な 知 識 に、 教 示 、 示 唆 若 しくは 動 機 が 存 在 することの 認 定<br />

(2) 成 功 の 合 理 的 期 待 が 存 在 することの 認 定<br />

(3) Graham の 事 実 認 定 に 基 づく 追 加 認 定 は 検 討 中 の 事 例 の 事 実 に 照 らして、 自 明 性 の 結 論 を<br />

説 明 するために 必 要 とされるかもしれない。<br />

クレームが 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、「 当 業 者 はクレーム<br />

の 発 明 を 達 成 するために 先 行 技 術 を 組 み 合 わせるよう 動 機 付 けられていたであろうこと、そ<br />

して 成 功 の 合 理 的 期 待 があったであろうこと」である。DyStar Textilfarben GmbH & Co.<br />

Deutschland KG v. C.H. Patrick Co., 464 F.3d 1356, 1360, 80 USPQ2d 1641, 1645 (Fed.<br />

Cir. 2006)。これらの 認 定 のいずれも 行 われない 場 合 、この 理 論 的 根 拠 はそのクレームが 当<br />

業 者 にとって 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けるために 使 用 することはできない。<br />

裁 判 所 は 教 示 、 示 唆 又 は 動 機 テストは 柔 軟 性 が 高 く、 先 行 技 術 を 組 み 合 わせる 明 示 的 示 唆 を<br />

必 ずしも 必 要 としないことを 明 確 にした。 組 合 せへの 動 機 は 黙 示 的 な 場 合 があり、 当 業 者 の<br />

知 識 と、 場 合 によっては 解 決 すべき 問 題 の 本 質 から 判 断 されることがある。Id. at 1366、80<br />

USPQ2d at 1649。「 組 合 せの 黙 示 的 動 機 は、 示 唆 が 先 行 技 術 全 体 から 集 められる 場 合 だけで<br />

なく、「 改 良 」が 技 術 に 依 存 せず 引 例 の 組 合 せによって 例 えば、 強 さ、 安 さ、 明 瞭 さ、 速 さ、<br />

軽 さ、 小 型 化 、 堅 牢 化 、 有 効 化 が 増 すのでより 望 ましい 製 品 若 しくはプロセスをもたらす 場<br />

合 にも 存 在 する。 製 品 又 はプロセスを 改 良 することによって 商 業 的 な 機 会 を 高 めようと 望 む<br />

ことは 誰 にも 共 通 で 普 遍 的 かつ 常 識 的 でさえあるので、これらの 状 況 にあって 先 行 技 術 の 引<br />

例 をくみあわせようとする 動 機 は 存 在 する。 例 え 引 例 それ 自 体 においてはいかなる 示 唆 のヒ<br />

ントもないとしても。そのような 状 況 において 適 切 な 質 問 は、 当 業 者 は 自 身 が 先 行 技 術 の 引<br />

例 を 組 み 合 わせることができるようになる 知 識 及 び 技 能 を 有 しているか 否 かである。」Id. at<br />

1368、80 USPQ2d at 1651。<br />

2143.01 引 例 を 修 正 するための 示 唆 又 は 動 機<br />

I. クレームされる 発 明 の 望 ましさに 関 する 先 行 技 術 の 示 唆<br />

自 明 性 は、そのようにすることについて 何 らかの 教 示 、 示 唆 又 は 動 機 が 存 在 する 場 合 、クレ<br />

ームの 発 明 を 生 み 出 すための 先 行 技 術 の 教 示 を 組 合 せ 若 しくは 修 正 することによって 立 証 す<br />

ることができる。In re Kahn, 441 F.3d 977, 986, 78 USPQ2d 1329, 1335 (Fed. Cir. 2006)( 自<br />

明 性 の 解 析 において 後 知 恵 利 用 の 防 止 として 動 機 ・ 示 唆 ・ 教 示 のテストに 依 拠 する 理 論 的 根<br />

拠 を 考 察 )<br />

In re Fulton, 391 F.3d 1195, 73 USPQ2d 1141 (Fed. Cir. 2004)において 実 用 特 許 出 願 の<br />

188


クレームは、「 面 方 向 」に 六 角 形 の 突 起 を 付 け 静 止 摩 擦 を 強 化 した 靴 底 に 向 けられていた。<br />

391 F.3d at 1196-97、73 USPQ2d at 1142。 審 判 部 は、 面 方 向 に 六 角 形 の 突 起 を 持 つ 意 匠 特<br />

許 と 独 立 クレームのその 他 の 限 定 を 持 つ 実 用 特 許 を 組 み 合 わせた。391 F.3d at 1199、73<br />

USPQ2d at 1144。 出 願 人 は、(1) 先 行 技 術 は 面 (「とがらせること」の 対 語 として) 方 向 に 六 角<br />

形 の 突 起 を 持 つことがその 突 起 に「 最 も 好 ましい」 配 置 であると 示 唆 していないこと、また<br />

(2) 先 行 技 術 は「とがらせた 方 向 」の 好 ましさを 示 すことによって「 外 れたところを 教 示 」し<br />

ていることによって、その 組 合 せは 不 適 切 であると 主 張 した。391 F.3d at 1200-01、73 USPQ2d<br />

at 1145-46。 裁 判 所 は、「 先 行 技 術 の 2 つ 以 上 の 単 なる 代 替 例 の 開 示 は、そのような 開 示 が<br />

クレームされた 解 決 手 段 を 批 判 する、 信 用 できないものとする 又 は 不 賛 成 の 意 を 表 明 すると<br />

いうことをしていないので、これらの 代 替 例 のいずれからも 外 れたところの 教 示 を 構 成 しな<br />

い・・・」とした。 同 上 。<br />

審 判 部 の 自 明 性 による 拒 絶 の 支 持 において 裁 判 所 は、 先 行 技 術 は 全 体 としてクレームされる<br />

靴 底 の 限 定 の 組 合 せの 好 ましさを 示 唆 しており、 従 って、 組 合 せの 動 機 を 提 供 している。こ<br />

のことは 出 願 人 によってクレームされる 組 合 せがその 他 のものよりも 望 ましい、もしくは 最<br />

も 好 ましい 組 合 せであることを 先 行 技 術 が 示 唆 していることを 認 定 して 裏 付 ける 必 要 はない。<br />

同 上 。<br />

Ruiz v. A.B. Chance Co., 357 F.3d 1270, 69 USPQ2d 1686 (Fed. Cir. 2004)において 特 許<br />

は、 金 属 ブラケットで 基 礎 に 取 り 付 けたスクリューアンカーを 用 いて 沈 みこんでいる 建 物 の<br />

基 礎 を 支 えることをクレームした。1 つの 先 行 技 術 の 引 例 はコンクリート 製 のブラケットを<br />

用 いるスクリューアンカーを 教 示 しており、2 つ 目 の 先 行 技 術 の 引 例 は 金 属 ブラケットを 用<br />

いるピアアンカーを 開 示 していた。 裁 判 所 は、それぞれの 引 例 は「 沈 みこんでいる 基 礎 を 支<br />

えるまさに 同 一 の 問 題 に」 向 けられているので、「 解 決 すべき 問 題 の 本 質 」において 引 例 を<br />

組 み 合 わせてクレームの 発 明 にたどり 着 く 動 機 を 確 認 した。Id. at 1276、69 USPQ2d at 1690。<br />

また、 裁 判 所 は「 組 合 せへの 明 確 な 書 面 による 動 機 が 先 行 技 術 の 引 例 になければならない・・・」<br />

とする 意 見 を 却 下 した。Id.at 1276、69 USPQ2d at 1690。<br />

II. 先 行 技 術 の 教 示 が 矛 盾 する 場 合 、 審 査 官 は 各 引 例 の 示 唆 能 力 を 評 価 しなければならない<br />

自 明 性 の 基 準 は 引 例 の 組 み 合 わされた 教 示 が 当 業 者 に 何 を 示 唆 しているかであって、 先 行 技<br />

術 のすべての 教 示 をそれらが 類 似 技 術 に 存 在 する 範 囲 で 検 討 しなくてはならない。2 以 上 の<br />

先 行 技 術 の 引 例 の 教 示 が 矛 盾 する 場 合 、 審 査 官 は、 一 方 の 引 例 が 正 確 に 他 方 を 信 用 できない<br />

ものとする 程 度 を 検 討 し、 各 引 例 が 当 業 者 に 対 して 解 決 策 を 示 唆 する 力 を 評 価 しなければな<br />

らない。In re Young, 927 F.2d 588, 18 USPQ2d 1089 (Fed. Cir. 1991)(Carlisle の 先 行<br />

技 術 特 許 は 海 洋 地 震 探 査 において 使 用 される 化 学 爆 薬 の 気 泡 振 動 を、 気 泡 が 最 大 半 径 に 達 す<br />

る 前 に 交 差 することができて 第 2 の 圧 力 パルスが 低 下 するほど 震 源 の 間 隔 を 近 づけることに<br />

よって、 抑 制 し 最 小 化 することを 開 示 した。Knudsen によりその 数 年 後 に 刊 行 された 論 文 は、<br />

Carlisle の 技 術 は 気 泡 振 動 にそれとわかるほどの 改 良 を 生 じないとする 考 えを 述 べた。しか<br />

し、その 論 文 は 比 較 可 能 な 条 件 で Carlisleの 技 術 を 試 験 していなかった。KnudsenはCarlisle<br />

の 間 隔 若 しくは 震 源 を 用 いていなかったからである。さらに、Knudsen のモデルをその 特 許<br />

技 術 に 最 も 近 づけてみた 場 合 、 第 2 の 圧 力 パルスは 30% 減 少 する。これらの 事 実 に 基 づき、<br />

裁 判 所 は Knudsen の 論 文 は 当 業 者 に Carlisleの 特 許 技 術 の 使 用 を 思 いとどませることはなか<br />

ったであろうと 認 定 した。<br />

189


III. 引 例 が 組 合 せ 又 は 修 正 できるという 事 実 は、 一 応 の 自 明 性 を 証 明 するのに 十 分 として<br />

はならない<br />

引 例 を 組 合 せ 又 は 修 正 できるという 単 なる 事 実 は、その 結 果 が 当 業 者 にとって 予 測 可 能 でな<br />

い 限 り、 結 果 として 得 られる 組 合 せを 自 明 とするものではない。KSR International Co. v.<br />

Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385, 1396 (2007)(「 当 業 者 が 予 測 可 能 な<br />

バリエーションの 実 施 が 可 能 な 場 合 、おそらく 第 103 条 がその 特 許 性 の 阻 害 事 由 となる。 同<br />

じ 理 由 で、ある 技 術 がある 装 置 の 改 良 に 使 用 され、そこで 当 業 者 が、それが 同 じ 方 法 で 類 似<br />

装 置 を 改 良 することに 気 づいた 場 合 にその 技 術 を 使 用 することはそれの 実 際 の 適 用 が 自 らの<br />

技 能 を 超 えたものでない 限 り 自 明 である。」)<br />

IV. クレームの 発 明 が 当 業 者 の 能 力 内 にあるとする 単 なる 記 述 は、 一 応 の 自 明 性 の 証 明 には<br />

それだけでは 十 分 ではない<br />

クレームの 発 明 を 達 成 するための 先 行 技 術 の 修 正 が「クレームの 発 明 が 行 われた 時 点 で 当 業<br />

者 の 間 に 十 分 」あったであろうとする 陳 述 は、その 引 例 はクレームの 発 明 のすべての 側 面 が<br />

当 該 技 術 分 野 で 個 々に 周 知 されていたとの 教 示 に 依 拠 するため、その 引 例 の 教 示 内 容 を 組 み<br />

合 わせるためのなんらかの 客 観 的 理 由 がなければ、 一 応 の 自 明 性 を 証 明 するには 十 分 でない。<br />

Ex parte Levengood, 28 USPQ2d 1300 (Bd. Pat. App. & Inter. 1993)。<br />

「 自 明 性 による 拒 絶 は 単 なる 推 論 による 陳 述 によって 是 認 することはできない。そこには 自<br />

明 性 についての 法 的 結 論 を 裏 付 ける 何 らかの 合 理 的 支 えを 有 する 明 瞭 な 理 由 がなければなら<br />

ない。」KSR, 550 U.S.at ___、82 USPQ2d at 1396 引 用 In re Kahn, 441 F.3d 977, 988, 78<br />

USPQ2d 1329, 1336 (Fed. Cir. 2006)。<br />

V. 提 案 された 修 正 は 先 行 技 術 を 意 図 した 目 的 に 不 十 分 とすることはできない<br />

提 案 された 修 正 が 先 行 発 明 をその 意 図 した 目 的 にとって 修 正 不 十 分 であるとするなら、 提 案<br />

された 修 正 を 行 う 示 唆 又 は 動 機 は 存 在 しない。In re Gordon, 733 F.2d 900, 221 USPQ 1125<br />

(Fed. Cir. 1984)(クレームの 考 案 品 は 医 学 的 処 置 で 使 用 される 血 液 フィルター 組 立 品 であっ<br />

て、その 中 には 血 液 の 出 入 口 ともにフィルター 組 立 品 の 底 端 部 に 配 置 されおり、またその 中<br />

にはガス 通 気 孔 がフィルター 組 立 品 の 上 部 に 存 在 した。 先 行 技 術 の 引 例 は、ガソリン 及 びそ<br />

の 他 の 軽 油 から 汚 れ 及 び 水 分 を 取 り 除 くための 液 体 ストレーナを 教 示 しており、その 中 で 出<br />

入 り 口 はその 装 置 の 上 部 にあり、 豆 コック(ストップコック)は 集 められた 汚 れ 及 び 水 分 を 定<br />

期 的 に 取 り 除 くためその 装 置 の 底 部 に 配 置 されていた。さらにその 引 例 は、 分 離 が 重 力 の 力<br />

を 借 りることを 教 示 していた。 審 判 部 は、その 引 例 の 装 置 を 上 下 逆 にすることは 自 明 であっ<br />

たであろうことを 理 由 に、クレームは 一 応 の 自 明 性 があると 結 論 した。 裁 判 所 は、 先 行 技 術<br />

の 装 置 が 上 下 逆 さにされた 場 合 、 濾 過 するガソリンは 上 部 に 閉 じ 込 められ、 分 離 しようとす<br />

る 水 と 重 い 油 は 精 製 されたガソリンに 代 わって 出 口 から 流 出 し、フィルターは 詰 まってしま<br />

うことになって、 意 図 した 目 的 を 実 施 することはできないであろうと 認 定 し、 審 決 を 取 り 消<br />

した。<br />

「 先 行 技 術 装 置 の 機 能 又 は 性 能 を 限 定 する 陳 述 は 公 正 な 検 討 を 必 要 とするが、 先 行 技 術 の 平<br />

易 さが、 追 加 機 能 を 有 するさらに 複 雑 な 装 置 の 自 明 性 に 対 して 重 きを 置 かれる 特 性 であるこ<br />

とはめったにない。」In re Dance, 160 F.3d 1339, 1344, 48 USPQ2d 1635, 1638 (Fed. Cir.<br />

1998)( 裁 判 所 は、 血 管 中 の 障 害 物 を 取 り 除 くクレームのカテーテルは、「 体 液 及 び 細 片 を 回<br />

190


収 する 方 法 」を 除 きその 回 収 方 法 クレームの 要 素 のすべてを 教 示 する 最 初 の 引 例 に 照 らし、<br />

回 収 方 法 を 含 めてカテーテルを 記 載 する 第 2 の 引 例 と 組 み 合 わせて、 自 明 であったであろう<br />

と 判 示 した。、 裁 判 所 は 最 初 の 引 例 (これは 構 造 の 平 易 さを 強 調 して 細 片 の 乳 化 を 教 示 してい<br />

る)は 細 片 の 回 収 のチャンネルの 追 加 から 外 れて 教 示 していないことには 同 意 した。)<br />

VI. 提 案 された 修 正 は 引 例 の 動 作 原 理 を 変 更 することはできない<br />

先 行 技 術 の 提 案 された 修 正 又 は 組 合 せが 修 正 される 先 行 技 術 発 明 の 動 作 原 理 を 変 えてしまう<br />

のであれば、その 引 例 の 教 示 は 当 該 クレームを 一 応 の 自 明 性 があるとするのに 十 分 ではない。<br />

In re Ratti, 270 F.2d 810, 123 USPQ 349 (CCPA 1959)(クレームは、 弾 性 シール 部 材 に 挿<br />

入 され 外 向 きにバイアスされる 弾 性 バネ 指 を 持 つボア 係 合 部 分 を 備 えるオイルシールに 向 け<br />

られていた。 最 初 の 引 例 は、ボア 係 合 部 分 は 円 筒 状 薄 板 金 ケーシングで 強 化 されたオイルシ<br />

ールを 開 示 する 引 例 の 組 合 せに 裏 付 けられた 拒 絶 で 依 拠 された。 特 許 権 者 が 運 転 に 剛 性 を 必<br />

要 とする 装 置 を 教 示 していたのに 対 してクレームの 発 明 は 弾 力 性 を 求 めていた。 裁 判 所 は「 示<br />

唆 される 引 例 の 組 合 せは、[ 第 1 の 引 例 ]に 示 される 要 素 の 実 質 的 再 構 成 及 び 再 設 計 を 必 要 と<br />

するほかに[ 第 1 の 引 例 ]の 構 造 がそれに 基 づいて 作 動 するように 設 計 された 基 本 原 則 に 変 更<br />

を 必 要 とする」と 判 定 し 拒 絶 を 取 り 消 した。270 F.2d at 813、123 USPQ at 352。)<br />

2143.02 成 功 の 合 理 的 期 待 が 必 要 とされる<br />

クレームが 自 明 であったであろうとの 結 論 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、すべてのクレームの 要<br />

素 が 先 行 技 術 において 周 知 であって 当 業 者 がクレームの 時 点 でその 要 素 を 既 知 の 手 法 でその<br />

要 素 それぞれの 機 能 を 変 えることなく 組 み 合 わせることができ、その 組 合 せは 当 業 者 に 対 し<br />

て 予 測 可 能 な 結 果 以 上 のものを 生 じさせていなかったであろうことである。KSR<br />

International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385, 1395 (2007);<br />

Sakraida v. AG Pro, Inc., 425 U.S. 273, 282, 189 USPQ 449, 453 (1976);Anderson’s-Black<br />

Rock, Inc. v. Pavement Salvage Co., 396 U.S. 57, 62-63, 163 USPQ 673, 675 (1969);<br />

Great Atlantic & P. Tea Co. v. Supermarket Equipment Corp., 340 U.S. 147, 152, 87 USPQ<br />

303, 306 (1950)。<br />

I. 自 明 性 は 成 功 の 合 理 的 期 待 のみを 必 要 とする<br />

成 功 の 合 理 的 期 待 が 存 在 する 限 りにおいて、 先 行 技 術 を 修 正 又 は 組 み 合 わせれば、 一 応 の 自<br />

明 性 があるとしてクレームを 拒 絶 することができる。In re Merck & Co., Inc., 800 F.2d 1091,<br />

231 USPQ 375 (Fed. Cir. 1986)(アミトリプチリン( 又 はその 非 毒 性 塩 )で 鬱 病 を 治 療 する 方<br />

法 に 関 するクレームは、アミトリプチリンは 向 精 神 特 性 を 有 することが 知 られる 化 合 物 であ<br />

ること、イミプラミンは 抗 抑 鬱 特 性 を 有 することが 知 られる 構 造 的 に 類 似 の 向 精 神 化 合 物 で<br />

あるとする 先 行 技 術 開 示 があり、 前 記 の 化 合 物 は、 化 合 物 間 の 構 造 的 相 違 点 に 周 知 の 生 物 学<br />

的 等 価 性 置 換 を 含 むので、また、これら 2 化 合 物 の 薬 理 学 的 特 性 を 比 較 している 研 究 論 文 は<br />

アミトリプチリンの 臨 床 試 験 を 抗 抑 鬱 として 示 唆 しているので、 同 様 の 活 性 を 有 することが<br />

期 待 されるであろうことを 示 唆 していることを 考 慮 し、 一 応 の 自 明 性 があるとして 拒 絶 され<br />

た。 裁 判 所 は、 先 行 技 術 の 教 示 は 成 功 の 合 理 的 期 待 に 十 分 な 根 拠 を 提 供 していると 判 断 して<br />

拒 絶 を 支 持 した。Ex parte Blanc, 13 USPQ2d 1383 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)(クレー<br />

ムは、ポリオレフィンの 変 色 又 は 劣 化 を 防 止 するためフェノール 系 ポリエステル 酸 化 防 止 剤<br />

191


の 存 在 下 で 高 エネルギー 放 射 のポリオレフィン 組 成 物 を 殺 菌 するプロセスに 向 けられていた。<br />

上 訴 人 は、 特 定 の 酸 化 防 止 剤 は 変 色 又 は 劣 化 の 問 題 を 解 決 するかどうか 予 測 不 可 能 であると<br />

主 張 した。しかし、 審 判 部 は、 先 行 技 術 は 上 訴 人 の 望 ましい 酸 化 防 止 剤 は 非 常 に 効 果 的 であ<br />

って、その 他 の 先 行 技 術 酸 化 防 止 剤 と 比 べてより 良 い 結 果 を 示 すと 教 示 していたので、 成 功<br />

の 合 理 的 期 待 があったであろうと 判 断 した。<br />

II. 少 なくともある 程 度 の 予 測 可 能 性 を 必 要 とする。 出 願 人 は 成 功 の 合 理 的 期 待 がないこと<br />

を 示 す 証 拠 を 提 示 することができる<br />

自 明 性 は 絶 対 的 な 予 測 可 能 性 は 必 要 としないが、 少 なくともある 程 度 の 予 測 可 能 性 は 必 要 と<br />

する。 成 功 の 合 理 的 期 待 が 存 在 しないことを 示 す 証 拠 は 非 自 明 性 の 結 論 を 裏 付 けることがで<br />

きる。In re Rinehart, 531 F.2d 1048, 189 USPQ 143 (CCPA 1976)( 過 圧 溶 媒 の 存 在 下 でポ<br />

リエステルの 商 業 規 模 での 生 産 を 行 う 方 法 に 向 けられたクレームは、 溶 剤 の 存 在 を 除 いてク<br />

レームのプロセスを 教 示 する 引 例 に 照 らし、 大 気 圧 でクレームされた 方 法 を 教 示 する 引 例 に<br />

より 自 明 であるとして 拒 絶 された。 裁 判 所 は、 個 々の 先 行 技 術 プロセスは、 商 業 的 に 首 尾 良<br />

く 拡 大 できないことを 示 す 確 固 たる 証 拠 に 照 らし、 先 行 技 術 の 方 法 を 結 合 するプロセスが 首<br />

尾 良 く 拡 大 できるとする 合 理 的 期 待 はないと 判 断 し、 審 決 を 覆 した。 次 も 参 照 のこと。Amgen,<br />

Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200, 1207-08, 18 USPQ2d 1016, 1022-23 (Fed.<br />

Cir.), cert. denied, 502 U.S. 856 (1991)(バイオ 技 術 の 事 例 において、 証 人 の 供 述 は、 当<br />

該 引 例 は 成 功 の 合 理 的 期 待 が 存 在 することを 示 していないとする 結 論 を 支 持 した。)In re<br />

O fFarrell, 853 F.2d 894, 903, 7 USPQ2d 1673, 1681 (Fed. Cir. 1988)( 裁 判 所 は、1 つ<br />

の 引 例 が 詳 細 な 実 現 手 順 、クレームの 発 明 を 生 み 出 すために 先 行 技 術 を 修 正 することの 示 唆 、<br />

及 びその 修 正 は 成 功 するであろうことを 示 唆 する 証 拠 を 含 んでいたので、クレームの 方 法 は<br />

先 行 技 術 により 自 明 であったであろうと 判 示 した。)<br />

III. 予 測 可 能 性 は 発 明 が 行 われた 時 点 で 判 断 される<br />

技 法 が 予 測 可 能 であるかどうか、 若 しくは 提 案 される 先 行 技 術 の 修 正 又 は 組 合 せは 成 功 の 合<br />

理 的 期 待 があるかどうかは、 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 で 判 断 される。Ex parte Erlich, 3<br />

USPQ2d 1011 (Bd. Pat. App. & Inter. 1986)(モノクローナル 抗 体 の 分 野 における 予 測 不 可<br />

能 性 から 先 の 事 例 は 拒 絶 査 定 を 取 り 消 したが、 裁 判 所 ( 訳 注 : 原 文 ママ。 本 件 は 審 決 である。)<br />

は「 本 件 において 本 発 明 が 行 われた 時 点 では、 当 業 者 は 成 功 の 合 理 的 期 待 を 持 って[ 先 行 技 術 ]<br />

の 手 法 を 用 いてヒト 繊 維 プラストインターフェロンに 特 異 的 なモノクローナル 抗 体 を 作 り 出<br />

そうとしていたであろう」と 認 定 した。3 USPQ2dat 1016 ( 強 調 は 原 文 のまま)。)<br />

2143.03 すべてのクレーム 限 定 は 検 討 されねばならない<br />

「クレーム 内 のすべての 言 葉 はそのクレームの 特 許 要 件 を 先 行 技 術 に 照 らして 判 定 する 際 に<br />

検 討 しなければならない。」In re Wilson, 424 F.2d 1382, 1385, 165 USPQ 494, 496 (CCPA<br />

1970)。 独 立 クレームが 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 非 自 明 であるならばそれに 従 属 するいずれの<br />

クレームも 非 自 明 である。In re Fine, 837 F.2d 1071, 5 USPQ2d 1596 (Fed. Cir. 1988)。<br />

I. 不 定 限 定 は 検 討 されねばならない<br />

限 定 されていないとみなされるクレーム 限 定 は 無 視 することはできない。クレームが 2 以 上<br />

192


に 解 釈 されて、 少 なくともその 1 つによれば、そのクレームは 先 行 技 術 により 特 許 性 がない<br />

場 合 、 審 査 官 はそのクレームを 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 (MPEP 第 706.03 条 (d)を 参 照 )に 基 づ<br />

き、 限 定 されていないとして 拒 絶 しなくてはならず、かつ、その 先 行 技 術 を 適 用 可 能 とする<br />

クレームの 解 釈 に 基 づき、その 先 行 技 術 により 当 該 クレームを 拒 絶 しなくてはならない。Ex<br />

parte Ionescu, 222 USPQ 537 (Bd. Pat. App. & Inter. 1984)( 審 判 請 求 されたクレームは、<br />

不 確 定 性 のみを 理 由 として 拒 絶 されており、その 拒 絶 は 取 り 消 され、 関 連 先 行 技 術 の 検 討 の<br />

ため 審 査 官 に 差 し 戻 された。)Compare In re Wilson, 424 F.2d 1382, 165 USPQ 494 (CCPA<br />

1970)( 合 理 的 に 明 確 な 意 味 が 所 定 のクレームの 文 言 のものとされないならば、そのクレーム<br />

は 不 確 定 なのであって、 自 明 ということではない) 及 び In re Steele, 305 F.2d 859,134 USPQ<br />

292 (CCPA 1962)(クレームの 意 味 に 関 して 推 論 的 想 定 に 依 拠 し、その 後 これらの 推 定 に 基 づ<br />

き 特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 に 根 拠 を 置 くことは 不 適 切 である。)<br />

II. 原 明 細 書 に 裏 付 けのない 限 定 は 検 討 しなくてはならない<br />

特 許 法 第 103 条 による 自 明 性 についてクレームを 評 価 する 場 合 、 当 該 クレームの 限 定 すべて<br />

が、 出 願 当 初 の 明 細 書 に 裏 付 けが 記 載 されていない 限 定 (すなわち、 新 たな 事 柄 )も 含 めて、<br />

検 討 され 重 視 されねばならない。Ex parte Grasselli, 231 USPQ 393 (Bd. App. 1983) aff’d<br />

mem. 738 F.2d 453 (Fed. Cir. 1984)( 触 媒 に 対 するクレームは 硫 黄 、ハロゲン、ウラニウム<br />

及 びバナジウムとリンの 化 合 物 の 存 在 を 明 示 的 に 除 外 した。これらの 要 素 を 除 外 する 否 定 限<br />

定 は 出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 されていないが、クレームの 発 明 が 先 行 技 術 に 照 らして 自 明 であ<br />

ったかどうかを 判 断 する 場 合 にこれらの 限 定 を 無 視 することは 間 違 いである。)<br />

193


2144 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける<br />

I. 理 論 的 根 拠 は 引 例 又 は 当 該 技 術 分 野 の 共 通 の 知 識 、 科 学 的 原 則 、 当 該 技 術 分 野 において<br />

認 められている 等 価 物 若 しくは 法 的 先 例 に 存 在 するかもしれない<br />

先 行 技 術 を 修 正 又 は 組 合 せる 理 論 的 根 拠 は 先 行 技 術 に 明 示 的 に 記 載 されている 必 要 はない。<br />

理 論 的 根 拠 は 明 示 黙 示 を 問 わず 先 行 技 術 に 含 まれているかもしれないし、 当 業 者 が 一 般 的 に<br />

入 手 できる 知 識 、 確 立 された 科 学 的 原 則 若 しくは 判 例 によって 確 立 された 法 的 先 例 から 推 論<br />

されるかもしれない。In re Fine, 837 F.2d 1071, 5 USPQ2d 1596 (Fed. Cir. 1988);In re<br />

Jones, 958 F.2d 347, 21 USPQ2d 1941 (Fed. Cir. 1992)。 次 も 参 照 のこと。In re Kotzab,<br />

217 F.3d 1365, 1370, 55 USPQ2d 1313, 1317 (Fed. Cir. 2000)( 黙 示 的 教 示 テストの 説 明 );<br />

In re Eli Lilly & Co., 902 F.2d 943, 14 USPQ2d 1741 (Fed. Cir. 1990) ( 法 的 先 例 への<br />

依 存 の 検 討 );In re Nilssen, 851 F.2d 1401, 1403, 7 USPQ2d 1500, 1502 (Fed. Cir. 1988)<br />

( 引 例 は 明 示 的 に 教 示 の 組 合 せを 示 唆 する 必 要 はない);Ex parte Clapp, 227 USPQ 972 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1985)( 審 査 官 は 拒 絶 を 裏 付 ける 論 拠 の 説 得 力 のある 筋 道 を 提 示 しなけれ<br />

ばならない。)Ex parte Levengood, 28 USPQ2d 1300 (Bd. Pat. App. & Inter. 1993)( 論 理<br />

的 及 び 妥 当 な 科 学 的 推 論 への 依 存 )。<br />

II. 優 位 性 の 期 待 は 引 例 を 組 合 せる 最 も 強 力 な 理 論 的 根 拠 である<br />

引 例 組 合 せの 最 も 強 力 な 理 論 的 根 拠 は、 明 示 黙 示 を 問 わない 先 行 技 術 や、 確 立 された 科 学 的<br />

原 則 若 しくは 法 的 先 例 に 基 づく 論 拠 の 説 得 力 のある 筋 道 から 得 られるところの、 優 位 性 又 は<br />

期 待 される 有 益 な 結 果 がそれらの 組 合 せによって 産 み 出 されるであろうという 認 識 である。<br />

In re Sernaker, 702 F.2d 989, 994-95, 217 USPQ 1, 5-6 (Fed. Cir. 1983)。 次 も 参 照 の<br />

こと。Dystar Textilfarben GmbH & Co. Deutschland KG v. C.H. Patrick, 464 F.3d 1356,<br />

1368, 80 USPQ2d 1641, 1651 (Fed. Cir. 2006)( 我 々は 実 際 に、 組 合 せの 黙 示 的 動 機 は、 示<br />

唆 が 先 行 技 術 全 体 から 集 められる 場 合 だけでなく、「 改 良 」が 技 術 に 依 存 せず、 引 例 の 組 合<br />

せによって 例 えば、 強 さ、 安 さ、 明 瞭 さ、 速 さ、 軽 さ、 小 型 化 、 堅 牢 化 、 有 効 化 が 増 すとい<br />

ったより 望 ましい 製 品 若 しくはプロセスをもたらす 場 合 にも 存 在 すると、 繰 り 返 し 判 示 して<br />

きた。 製 品 又 はプロセスを 改 良 することによって 商 業 機 会 の 強 化 を 望 むことは 誰 にも 共 通 で<br />

普 遍 的 かつ 常 識 的 でさえあるので、これらの 状 況 にあって 先 行 技 術 の 引 用 をくみあわせよう<br />

とする 動 機 は 存 在 する。 例 え 引 例 それ 自 体 において 何 らの 示 唆 のヒントもないとしても。<br />

III. 法 的 先 例 は、 事 例 の 事 実 が 出 願 の 事 例 に 十 分 類 似 する 場 合 に 限 り、 自 明 性 を 裏 付 ける<br />

理 論 的 根 拠 とすることができる<br />

審 査 官 は 関 連 事 実 のすべてを 検 討 した 後 、 各 出 願 に 一 貫 して 法 を 適 用 しなければならない。<br />

従 前 の 法 的 決 定 における 事 実 が 審 査 中 の 出 願 の 事 実 と 十 分 に 類 似 する 場 合 、 審 査 官 は 裁 判 所<br />

によって 用 いられた 理 論 的 根 拠 を 使 用 することができる。 出 願 人 が 特 定 の 限 定 の 臨 界 を 実 証<br />

している 場 合 、 裁 判 所 が 自 明 性 による 拒 絶 を 裏 付 けるために 用 いた 理 論 的 根 拠 にのみ 依 拠 す<br />

ることは 適 切 ではない。「 代 々の 法 廷 及 び 本 法 廷 が 特 定 の 事 実 に 対 し、そこで 自 明 性 に 関 す<br />

る 法 を 適 用 し、 極 めて 大 量 に 下 してきた 先 決 例 の 価 値 は、 多 岐 にわたる 事 実 に 対 してかなり<br />

一 貫 性 のある 法 を 適 用 することに 融 合 してきた、 広 範 囲 の 実 例 とそれに 付 随 する 論 拠 が 構 築<br />

されていることである。」In re Eli Lilly & Co., 902 F.2d 943, 14 USPQ2d 1741 (Fed. Cir.<br />

1990)。<br />

194


IV. 出 願 人 のものと 異 なる 理 論 的 根 拠 は 容 認 できる<br />

引 例 を 修 正 する 理 由 又 は 動 機 は、 異 なる 目 的 のため 若 しくは 異 なる 問 題 を 解 決 するための 理<br />

由 又 は 動 機 ではなく 当 該 発 明 者 が 何 をしたかを 示 唆 することが 多 い。 先 行 技 術 が、 同 一 の 優<br />

位 性 又 は 出 願 人 により 発 見 された 結 果 を 達 成 するために 組 合 せを 示 唆 していることは 必 ずし<br />

も 必 要 でない。 参 照 事 例 として、In re Kahn, 441 F.3d 977, 987, 78 USPQ2d 1329, 1336 (Fed.<br />

Cir. 2006)( 動 機 の 問 題 は、 当 該 発 明 によって 解 決 される 特 定 の 問 題 ではなく、 発 明 者 が 直<br />

面 する 一 般 的 問 題 との 関 連 で 生 じている);Cross Med. Prods., Inc. v. Medtronic Sofamor<br />

Danek, Inc., 424 F.3d 1293, 1323, 76 USPQ2d 1662, 1685 (Fed. Cir. 2005)(「 当 業 者 が、<br />

教 示 内 容 の 採 用 を 動 機 付 けられるために 先 行 技 術 の 引 例 で 取 り 組 まれる 同 一 問 題 を 見 ている<br />

必 要 はない。」)In re Linter, 458 F.2d 1013, 173 USPQ 560 (CCPA 1972)( 後 述 );In re Dillon,<br />

919 F.2d 688, 16 USPQ2d 1897 (Fed. Cir. 1990), cert. denied, 500 U.S. 904 (1991)( 後<br />

述 )。<br />

In re Linter 事 例 においてクレームされた 発 明 は、 実 質 的 に 所 定 割 合 の 分 散 剤 、 陽 イオン 性<br />

衣 料 用 柔 軟 剤 、 糖 、 封 鎖 リン 酸 塩 及 び 光 沢 剤 のみからなる 洗 濯 組 成 物 であった。 当 該 クレー<br />

ムは、 糖 の 存 在 を 除 きクレーム 限 定 すべてを 教 示 する 第 1 の 引 用 の 組 合 せ 及 び、フィルター<br />

として 糖 の 追 加 を 教 示 し、 陽 イオン 性 衣 料 用 を 含 む 組 成 物 の 化 学 物 質 に 重 きを 置 く 柔 軟 剤 第<br />

2 の 引 例 に 基 づいて 拒 絶 された。 上 訴 人 は、クレームの 発 明 において 糖 は 他 の 洗 浄 剤 成 分 と<br />

ともに 陽 イオン 性 柔 軟 剤 の 親 和 性 に 関 与 すると 主 張 した。 裁 判 所 は 拒 絶 を 支 持 し、「 出 願 人<br />

が 異 なる 目 的 のために 糖 を 使 用 するという 事 実 は、 先 行 技 術 の 組 成 物 においてこれを 使 用 す<br />

ることは、 引 例 に 開 示 された 目 的 からすると 一 応 の 自 明 性 があった[ 原 文 のまま、なってい<br />

た]だろうとの 結 論 を 変 えることはない」とした。173 USPQat 562。<br />

In re Dillon 事 例 において、 出 願 人 は 炭 化 水 素 燃 料 及 びその 燃 料 の 燃 焼 から 粒 子 状 物 質 の 排<br />

出 を 削 減 させるに 十 分 な 量 の 特 定 の 分 子 式 を 持 つテトラオルトエステルから 成 る 組 成 物 をク<br />

レームした。 当 該 クレームは、 油 圧 油 ( 非 炭 化 水 素 )の 水 分 補 足 剤 としてトリオルトエステル<br />

及 びテトラオルトエステルの 等 価 性 を 教 示 する 引 例 とともに、 脱 水 燃 料 用 のトリオルトエス<br />

テルを 含 む 炭 化 水 素 燃 料 組 成 物 を 教 示 する 引 例 に 基 づいて 自 明 として 拒 絶 された。 審 判 部 は<br />

「トリ 及 びテトラオルトエステル 燃 料 組 成 物 は、トリ 及 びテトラオルトエステル 間 の『 構 造<br />

的 化 学 的 酷 似 』による 類 似 特 性 を 有 するであろうという『 合 理 的 期 待 』が 存 在 し、また、 先<br />

行 技 術 と Dillon の 双 方 が『 燃 料 添 加 剤 として』これらの 化 合 物 を 使 用 するという 事 実 」を 認<br />

定 しその 拒 絶 を 追 認 した。919 F.2dat 692、16 USPQ2dat 1900。 裁 判 所 は「クレームの[ 発 明 ]<br />

が、 出 願 人 により 新 規 に 発 明 されたものと 同 一 若 しくは 類 似 の 有 用 性 を 有 するであろうとい<br />

う、 従 来 の 技 術 からの 示 唆 又 は 期 待 が 存 在 することは、 一 応 の 自 明 性 を 確 立 するために 必 ず<br />

しも 必 要 ではない」と 判 示 し、ここで 一 応 の 証 明 は「 先 行 技 術 が、それらは 類 似 特 性 を 有 す<br />

るだろうとする 期 待 でクレームの 組 成 物 を 作 る 動 機 を 提 供 した」ので 立 証 されたと 結 論 した。<br />

919 F.2dat 693、16 USPQ2dat 1901( 強 調 は 原 文 のまま)。<br />

先 行 技 術 において 認 識 されていない 付 加 的 利 点 又 は 潜 在 的 特 性 の 存 在 に 関 する 判 例 について<br />

は、MPEP 第 2145 条 第 2 段 落 を 参 照 のこと。<br />

2144.01 黙 示 的 開 示<br />

「 引 例 の 開 示 を 検 討 する 際 、 当 該 引 例 の 具 体 的 教 示 のみでなく 当 業 者 が 合 理 的 にそこからる<br />

であろう 推 論 も 考 慮 することが 適 切 である。」In re Preda, 401 F.2d 825, 826, 159 USPQ 342,<br />

195


344 (CCPA 1968)( 温 度 「 約 750~830℃」で 炭 の 存 在 下 で 硫 黄 蒸 気 とメタンを 反 応 させて 二 硫<br />

化 炭 素 を 触 媒 的 に 生 成 させるプロセスは、 同 一 プロセスを 700℃で 明 確 に 教 示 する 引 例 と 一<br />

致 すると 認 定 された。なぜならその 引 例 は 750℃よりも 高 い 温 度 を 使 用 する 可 能 性 を 認 めて<br />

いるためである。その 引 例 は 硫 黄 蒸 気 を 用 いて 750℃ 以 上 の 温 度 で( 炭 なしではあるが)メタ<br />

ンを 二 硫 化 炭 素 に 転 化 させる 触 媒 プロセスが 知 られていること、 及 び 700℃は「 以 前 に 実 現<br />

可 能 であるとされた 温 度 よりもずっと 低 い」ことを 開 示 していた。)In re Lamberti, 545 F.2d<br />

747, 750, 192 USPQ 278, 280 (CCPA 1976)(R-S-Rȼ 部 分 が「 硫 黄 原 子 に 結 合 する 少 なくとも<br />

1 つのメチレン 基 」を 有 する 化 合 物 に 関 する 引 例 の 開 示 には、 硫 黄 原 子 に 結 合 する 他 の R 基<br />

がメチレン 以 外 である 可 能 性 が 暗 示 され、 従 って 非 対 称 のジアルキル 基 部 分 を 示 唆 する。)<br />

2144.02 科 学 的 理 論 への 依 存<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 は、 論 理 的 かつ 妥 当 な 科 学 的 原 則 に 依 拠<br />

することができる。In re Soli, 317 F.2d 941, 137 USPQ 797 (CCPA 1963)。しかし、 審 査<br />

官 が 科 学 的 理 論 に 依 拠 する 場 合 、その 理 論 の 存 在 及 び 意 義 に 関 する 証 拠 の 裏 付 けを 提 示 しな<br />

ければならない。In re Grose, 592 F.2d 1161, 201 USPQ 57 (CCPA 1979)( 裁 判 所 は、ゼオ<br />

ライトの 異 なる 結 晶 形 は、そのような 結 論 を 裏 付 ける 化 学 的 理 論 は 存 在 しないので、 互 いに<br />

構 造 的 に 自 明 でなかったであろうと 判 示 した。 構 造 的 に 類 似 する 化 合 物 ( 同 族 体 、 類 似 体 、 異<br />

性 体 ) 間 に 周 知 される 化 学 的 関 係 は、 先 行 技 術 についてクレームのゼオライトの 一 応 の 自 明 性<br />

の 認 定 を 裏 付 けなかった。なぜなら、ゼオライトは 特 定 の 結 晶 構 造 により 互 いに 関 連 のある<br />

化 合 物 の 混 合 物 ではあるが、 化 合 物 ではないからである。<br />

2144.03 当 該 技 術 分 野 の 共 通 の 知 識 又 は「 周 知 」 先 行 技 術 への 依 存<br />

一 定 の 状 況 において 適 切 な 場 合 には、 審 査 官 は 記 録 には 存 在 しないが 当 局 に 知 られた 事 実 を<br />

採 用 し、あるいは、「 共 通 の 知 識 」に 依 拠 して、 拒 絶 を 行 うことができる。しかし、かかる<br />

拒 絶 は 慎 重 に 適 用 しなくてはならない。<br />

共 通 の 知 識 に 依 拠 する、 又 は 公 知 を 採 用 するための 手 続<br />

事 実 の 認 知 に 適 用 する 審 査 基 準 は 行 政 手 続 法 (APA)による「 実 質 的 証 拠 」 基 準 である。In re<br />

Gartside, 203 F.3d 1305, 1315, 53 USPQ2d 1769, 1775 (Fed. Cir. 2000)を 参 照 のこと。<br />

MPEP 第 1216.01 条 も 参 照 のこと。 後 述 する 最 近 の 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 の 判 決 及 び 現 在 米 国<br />

特 許 商 標 庁 審 判 部 の 審 決 に 適 用 される 審 査 の 実 質 的 証 拠 基 準 に 照 らし、 裏 付 ける 証 拠 書 類 な<br />

しに 事 実 の 公 知 を 採 用 すること、 又 は 拒 絶 を 行 う 際 に 当 該 技 術 分 野 の 共 通 の 知 識 に 依 拠 する<br />

ことが 適 切 なのはいつか、またかかる 公 知 を 採 用 した 場 合 に 当 該 技 術 分 野 における 共 通 知 識<br />

に 関 する 審 査 官 の 結 論 を 裏 付 けるためにどのような 証 拠 が 必 要 か、を 決 める 際 に 審 査 官 を 支<br />

援 するため 次 の 指 針 が 用 意 されている。<br />

A. 審 査 官 の 結 論 を 裏 付 ける 証 拠 書 類 なしに 公 知 を 採 用 することが 適 切 なのはいつかを 決 定<br />

する<br />

審 査 官 の 結 論 を 裏 付 ける 証 拠 書 類 がない 場 合 の 公 知 は、ある 状 況 においてのみ 容 認 される。<br />

「 公 知 」に 依 拠 できるとはいえ、そのような 状 況 は 希 であって、 出 願 が 最 終 拒 絶 若 しくは 特<br />

許 法 施 行 規 則 第 1.113 条 に 基 づく 最 終 処 分 を 受 けた 場 合 である。 証 拠 書 類 による 裏 付 けのな<br />

い 公 知 は、よく 知 られている、 若 しくは 当 該 技 術 分 野 の 共 通 の 知 識 であると 主 張 される 事 実<br />

196


が、 即 時 に 疑 う 余 地 なくよく 知 られているものと 実 証 できる 場 合 にのみ、 審 査 官 によって 採<br />

用 されるべきである。In re Ahlert, 424 F.2d 1088, 1091, 165 USPQ 418, 420 (CCPA 1970)<br />

において 裁 判 所 により 指 摘 されたとおり、 審 査 官 が 採 用 することのできる 記 録 にない 事 実 の<br />

評 価 は「 即 時 に 疑 う 余 地 無 く 異 議 を 唱 えることが 不 可 能 であると 実 証 でき」なければならな<br />

い( 引 用 In re Knapp Monarch Co., 296 F.2d 230, 132 USPQ 6 (CCPA 1961))。Ahlert 事 件<br />

において 裁 判 所 は、 審 判 部 は「 熱 要 件 に 従 って 炎 の 大 きさを 調 節 することは 既 知 である」と<br />

する 公 知 の 事 実 を 適 切 に 採 用 したと 判 示 した。 次 も 参 照 のこと。In re Fox, 471 F.2d 1405,<br />

1407, 176 USPQ 340, 341 (CCPA 1973)( 裁 判 所 は「テープレコーダーは 通 常 、すでに 録 音 さ<br />

れているテープに 新 たな『 音 声 情 報 』が 記 録 される 場 合 、 自 動 的 にテープを 消 すという 公 知<br />

の 事 実 」を 採 用 した。) 適 切 な 状 況 においては、 証 拠 書 類 の 具 体 的 裏 付 けがなくとも、 何 かを<br />

より 迅 速 に、 安 価 に、 有 効 に、 又 は 強 固 に 行 うことが 好 ましいということは、 公 知 の 事 実 で<br />

あるとして 採 用 することは 不 当 でないかもしれない。さらに、 証 拠 書 類 の 裏 付 けなしに、 従<br />

属 クレームの 所 定 の 限 定 は 既 知 であって 当 該 技 術 分 野 においてよく 知 られた 手 法 であること<br />

を 主 張 して 最 初 の 拒 絶 通 知 において 事 実 の 公 知 を 採 用 することは 審 査 官 にとって 不 当 でない<br />

かもしれない。ただし、そのように 公 知 であるとされた 事 実 は 周 知 の 特 性 であって、 審 査 官<br />

が 拒 絶 の 特 定 の 根 拠 を 裏 付 けるために 行 う 証 拠 の 立 証 に 存 在 しうる「ギャップを 埋 める」だ<br />

けに 用 いられるものとする。In re Zurko, 258 F.3d 1379, 1385, 59 USPQ2d 1693, 1697 (Fed.<br />

Cir. 2001);Ahlert, 424 F.2d at 1092, 165 USPQ at 421。<br />

審 査 官 が、 先 行 技 術 の 引 例 を 引 用 することなく、よく 知 られていると 主 張 される 事 実 が 即 時<br />

に 疑 う 余 地 無 くよく 知 られているものと 実 証 できない 事 実 の 公 知 を 採 用 することは、 適 切 で<br />

はないであろう。 例 えば、 先 行 技 術 の 難 解 な 技 術 分 野 、 若 しくは 特 定 知 識 分 野 の 技 術 的 事 実<br />

の 主 張 は 必 ず、 関 連 技 術 分 野 の 標 準 として 認 められる 何 らかの 参 考 文 献 を 引 用 して 裏 付 けら<br />

れなければならない。In re Ahlert, 424 F.2d at 1091, 165 USPQ at 420-21。 次 も 参 照 の<br />

こと。In re Grose, 592 F.2d 1161, 1167-68, 201 USPQ 57, 63 (CCPA 1979)(「 特 許 商 標 庁<br />

が 一 応 の 自 明 性 を 立 証 する 際 に 化 学 理 論 に 依 拠 しようとする 場 合 、その 理 論 の 存 在 及 び 意 味<br />

の 証 拠 の 裏 付 けを 提 出 しなければならない。」);In re Eynde, 480 F.2d 1364, 1370, 178 USPQ<br />

470, 474 (CCPA 1973)(「 我 々は 裁 判 上 又 は 行 政 上 の 評 価 がその 技 術 水 準 についてなされると<br />

する 意 見 を 拒 絶 する。その 技 術 水 準 を 構 成 する 事 実 については、 通 常 人 の 間 では 意 見 が 一 致<br />

しないことが 合 理 的 に 予 想 され、そのように 評 価 することになじまない。)<br />

拒 絶 が 裏 付 けられる 主 たる 証 拠 として 記 録 において 証 拠 が 裏 付 けられない 限 り、 当 該 技 術 分<br />

野 の「 共 通 の 知 識 」のみに 依 拠 することは 決 して 適 切 ではない。Zurko, 258 F.3dat 1385、<br />

59 USPQ2dat 1697(「 審 判 部 は 自 身 の 理 解 若 しくは 経 験 に 基 づいて―すなわち、 自 身 が 基 本 知<br />

識 又 は 常 識 であろうとするものの 評 価 に 基 づいてのみ 結 論 に 達 することはできない。 正 しく<br />

は、 審 判 部 はこれらの 認 定 の 裏 付 けとして 何 らかの 具 体 的 証 拠 を 挙 げなければならない。」)<br />

裁 判 所 は「 行 政 審 判 として、 審 判 部 は 管 轄 権 を 行 使 する 保 護 対 象 についてしっかりとした 専<br />

門 知 識 を 持 つ」と 説 明 すると 同 時 に、かかる「 専 門 知 識 は 周 縁 部 の 問 題 に 関 する 結 論 [に 限 っ<br />

て] 十 分 な 裏 付 けを 挙 げることができる」ことを 明 確 にした。Id. at 1385-86、59 USPQ2dat 1697。<br />

裁 判 所 が Zurko 事 例 において 判 決 を 出 したように、 記 録 の 証 拠 に 基 づかない 基 礎 知 識 及 び 常<br />

識 についての 評 価 は 実 質 的 な 証 拠 の 裏 付 けがない。Id. at 1385、59 USPQ2dat 1697。<br />

197


B. 公 知 が 事 実 に 由 来 するものであるが 証 拠 書 類 による 裏 付 けがない 場 合 、かかる 評 価 を 採<br />

用 する 決 定 の 合 理 的 根 拠 を 成 す 技 術 的 基 準 は 明 確 かつ 間 違 いのないものでなければならない<br />

古 い 事 例 において 公 知 は、 記 録 の 他 の 引 例 が 評 価 される 事 実 を 裏 付 ける 場 合 、 若 しくはそれ<br />

を 否 定 する 記 録 が 全 くない 場 合 など、 評 価 された 事 実 が 容 易 に 立 証 できる、 証 拠 書 類 への 具<br />

体 的 に 依 拠 しない「 公 知 」であると 主 張 される 事 実 について 採 用 されることがあった。 次 を<br />

参 照 のこと。In re Soli, 317 F.2d 941, 945-46, 137 USPQ 797, 800 (CCPA 1963)( 容 易 に<br />

立 証 でき、 特 許 商 標 庁 が 引 用 しない 記 録 の 引 例 に 開 示 されているので「 対 照 の 使 用 は 細 菌 学<br />

の 全 分 野 を 通 じて 標 準 手 順 である」との 審 査 官 の 主 張 を 採 用 );In re Chevenard, 139 F.2d 711,<br />

713, 60 USPQ 239, 241 (CCPA 1943)(その 逆 を 示 す 記 録 がなく、また、 出 願 人 が、 審 査 官 が<br />

その 陳 述 を 裏 付 ける 証 拠 を 提 出 するよう 請 求 したこともない 場 合 で、 高 温 で 短 時 間 熱 するこ<br />

とは 低 温 で 長 時 間 熱 することに 等 しいとする 審 査 官 の 認 定 を 採 用 )。かかる 評 価 を 採 用 する 場<br />

合 、かかる 論 理 的 思 考 の 根 拠 を 明 示 的 に 示 さなければならない。 審 査 官 は 共 通 の 知 識 に 関 す<br />

る 自 らの 結 論 を 裏 付 けるため、 妥 当 な 技 術 的 及 び 科 学 的 論 拠 を 前 提 として、 具 体 的 な 事 実 に<br />

基 づく 認 定 を 提 示 しなければならない。Soli, 317 F.2dat 946, 37 USPQat 801;Chevenard,<br />

139 F.2dat 713, 60 USPQ at 241 を 参 照 のこと。 出 願 人 には、 共 通 の 認 識 の 記 載 が 行 われた<br />

拒 絶 通 知 の 次 の 応 答 でその 拒 絶 に 適 切 に 反 論 できるよう、 審 査 官 がその 事 項 が 公 知 であると<br />

した 根 拠 が、 明 示 的 に 示 されねばならない。<br />

C. 出 願 人 が、 公 知 又 は 共 通 の 知 識 による 認 定 が 適 切 ではないとして 事 実 に 基 づく 主 張 に 異<br />

議 を 申 し 立 てる 場 合 、 審 査 官 は 十 分 な 証 拠 をもって 当 該 認 定 を 裏 付 けねばならない<br />

かかる 認 定 に 適 切 に 反 論 するには、 出 願 人 は 審 査 官 の 通 知 の 誤 りと 考 えるものを 具 体 的 に 指<br />

摘 しなければならない。それには 通 知 された 事 実 が 当 該 技 術 分 野 において 共 通 の 知 識 又 は 周<br />

知 であるとは 考 えられない 理 由 を 述 べることがあるであろう。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.111 条<br />

(b)を 参 照 のこと。 次 も 参 照 のこと。Chevenard, 139 F.2d at 713, 60 USPQ at 241(「 審 査<br />

官 に 対 し 陳 述 の 根 拠 を 示 すことの 出 願 人 による 請 求 がない 限 り、 我 々はこの 論 点 を 考 慮 しな<br />

い。」) 審 査 官 の 公 知 に 関 する 主 張 に 対 して 何 ら 言 及 せずに、 当 該 クレームが 特 許 性 のある 発<br />

明 を 定 義 すると 一 般 的 に 主 張 するのでは 不 十 分 であろう。 出 願 人 が 審 査 官 の 公 知 に 関 する 主<br />

張 に 適 切 に 反 論 する 場 合 に、 審 査 官 は、その 拒 絶 を 維 持 すべき 場 合 、 次 の 拒 絶 通 知 において<br />

証 拠 書 類 を 提 示 しなければならない。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.104 条 (c)(2)を 参 照 のこと。 次 も<br />

参 照 のこと。Zurko, 258 F.3d at 1386, 59 USPQ2d at 1697(「 審 判 部 [ 又 は 審 査 官 ]はこれら<br />

の 認 定 (が 実 質 的 な 証 拠 基 準 を 満 たすことの) 裏 付 けとして 記 録 の 何 らかの 具 体 的 証 拠 を 挙 げ<br />

なくてはならない。」) 審 査 官 が 当 該 技 術 分 野 において 周 知 されているものの 認 定 を 裏 付 ける<br />

ため 個 人 的 知 識 に 依 拠 する 場 合 、 審 査 官 はその 認 定 を 裏 付 けるため 具 体 的 事 実 に 基 づく 陳 述<br />

若 しくは 説 明 を 記 載 する 宣 誓 供 述 書 若 しくは 宣 言 書 を 提 出 しなければならない。 特 許 法 施 行<br />

規 則 第 1.104 条 (d)(2)を 参 照 のこと。<br />

出 願 人 が 審 査 官 の 公 知 に 関 する 主 張 に 反 論 しない、 若 しくは 出 願 人 の 反 論 が 適 切 でない 場 合 、<br />

審 査 官 は 次 の 拒 絶 通 知 において、 出 願 人 が 審 査 官 の 公 知 に 関 する 主 張 に 反 論 できない、 若 し<br />

くは 反 論 は 不 適 切 であったため、 当 該 技 術 陳 述 における 共 通 の 知 識 又 はよく 知 られているこ<br />

とは 承 認 された 先 行 技 術 であることを、 明 確 に 記 載 しなくてはならない。 反 論 が 不 適 切 であ<br />

った 場 合 、 審 査 官 はそれが 不 適 切 であった 理 由 について 説 明 を 記 載 しなくてはならない。<br />

D. 次 の 拒 絶 通 知 は 最 終 とすべきかどうかの 判 断<br />

審 査 官 が 出 願 人 の 反 論 の 後 の 拒 絶 通 知 に 引 例 を 追 加 し、その 新 しく 追 加 された 引 例 が 先 の 共<br />

198


通 の 知 識 の 認 定 を 裏 付 けるために 直 接 関 係 する 証 拠 としてのみ 追 加 され、 新 たな 争 点 をもた<br />

らす、 若 しくは 拒 絶 の 新 たな 根 拠 を 構 成 するものではない 場 合 、その 拒 絶 通 知 は 最 終 とする<br />

ことができる。クレームに 補 正 が 行 われない 場 合 、 審 査 官 は 当 該 引 例 のその 他 のいかなる 教<br />

示 にも 依 拠 してはならない。ただし、 当 該 拒 絶 が 最 終 である 場 合 とする。 新 たに 引 用 される<br />

引 例 が 先 の 共 通 の 知 識 の 陳 述 を 裏 付 ける 以 外 の 理 由 で 追 加 され、 出 願 人 のクレーム 補 正 によ<br />

って 必 然 的 に 生 じるものではない 拒 絶 の 新 たな 理 由 が 審 査 官 によって 導 入 される 場 合 、 当 該<br />

拒 絶 を 最 終 とすることができない。MPEP 第 706.07 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

E. 要 約<br />

審 査 官 の 結 論 を 裏 付 ける 証 拠 書 類 がない 限 り、 事 実 が 当 該 技 術 分 野 におけるよく 知 られた 又<br />

は 共 通 の 知 識 であることの 主 張 に 基 づく 拒 絶 は、 慎 重 に 適 用 しなくてはならない。さらに、<br />

Ahlert 事 件 で 裁 判 所 により 指 摘 されたように、そのように 評 価 された 事 実 は 周 知 の 特 性 であ<br />

って 審 査 官 が 拒 絶 の 特 定 の 根 拠 を 裏 付 けるために 行 う 証 拠 の 立 証 に 存 在 するかもしれない<br />

「ギャップを( 実 質 的 ではない 方 法 で) 埋 める」だけに 用 いられるものとする。 記 録 における<br />

証 拠 の 裏 付 けなく、 拒 絶 の 根 拠 となる 主 要 な 証 拠 として 当 該 技 術 分 野 の「 共 通 の 知 識 」のみ<br />

に 依 拠 することは、 決 して 適 切 ではない。Zurko, 258 F.3dat 1386, 59 USPQ2dat 1697;Ahlert,<br />

424 F.2dat 1092, 165 USPQ 421 を 参 照 のこと。<br />

2144.04 理 論 的 根 拠 を 裏 付 ける 資 料 としての 法 的 先 例<br />

MPEP 第 2144 条 で 考 察 されるとおり、 従 前 の 法 的 決 定 における 事 実 が 審 査 中 の 出 願 の 事 実 と<br />

十 分 に 類 似 する 場 合 、 審 査 官 は 裁 判 所 によって 用 いられた 理 論 的 根 拠 を 使 用 することができ<br />

る。 裁 判 所 が、 通 常 は 当 該 技 術 分 野 の 普 通 の 技 術 であって、 慣 例 的 手 段 であると 考 えられる<br />

と 判 示 してきた 様 々なありふれた 実 務 の 例 を、 以 下 で 検 討 する。 出 願 人 が 特 定 の 限 定 の 臨 界<br />

を 実 証 している 場 合 、 自 明 性 による 拒 絶 を 裏 付 けるための 理 論 的 根 拠 として 判 例 だけに 依 拠<br />

することは 適 切 ではない。<br />

I. 美 感 設 計 の 変 更<br />

In re Seid, 161 F.2d 229, 73 USPQ 431 (CCPA 1947)(クレームはボトル 及 び 前 記 ボトルの<br />

首 にぴったりはまって 覆 うようになっている 腰 から 上 の 人 間 の 形 をした 中 空 部 材 から 成 り、<br />

前 記 中 空 部 材 及 び 前 記 ボトルは 合 わせて 人 間 の 体 の 印 象 を 与 える 広 告 表 示 装 置 に 向 けられて<br />

いた。 上 訴 人 は 前 記 人 体 の 上 部 の 一 定 の 制 限 は 腕 の 構 成 を 含 めて 従 来 の 技 術 により 教 示 され<br />

ていないと 主 張 した。 裁 判 所 は 機 械 的 機 能 がない 装 飾 にのみかかわる 事 項 は、クレームの 発<br />

明 を 従 来 技 術 から 特 許 性 に 関 して 区 別 することに 依 ることはできないと 判 断 した。)しかし、<br />

次 を 参 照 のこと。Ex parte Hilton, 148 USPQ 356 (Bd. App. 1965)(クレームは、 特 定 の 水<br />

分 及 び 脂 肪 量 を 有 するフライドポテトチップスに 向 けられていたのに 対 して、 先 行 技 術 はそ<br />

れよりも 水 分 量 の 多 いフレンチフライに 向 けられていた。いくつかの 事 例 においては、 製 品<br />

の 特 定 の 形 状 は 特 許 性 に 関 しては 意 味 のないものもあることが 認 識 されてはいるが、 本 件 の<br />

場 合 、 審 判 部 は 形 状 (チップス)は 引 例 製 品 (フレンチフライ)と 異 なる 製 品 が 得 られるので 重<br />

要 であると 判 定 した。)<br />

199


II. 工 程 又 は 要 素 及 びその 機 能 の 削 除<br />

A. 要 素 及 びその 機 能 の 削 除 はその 要 素 の 機 能 が 希 望 されない 場 合 は 自 明 である<br />

Ex parte Wu, 10 USPQ 2031 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)( 問 題 のクレームはエポキシ 樹<br />

脂 、 石 油 スルホン 酸 塩 及 び 炭 化 水 素 希 釈 剤 からのみ 成 る 組 成 物 を 用 いて 金 属 面 の 腐 食 を 防 止<br />

する 方 法 に 向 けられていた。 当 該 クレームは、 腐 食 阻 害 組 成 物 への 石 油 スルホン 酸 塩 の 添 加<br />

を 明 確 に 示 唆 する 第 2 の 引 例 を 踏 まえて、エポキシ 樹 脂 、 炭 化 水 素 希 釈 剤 及 び、 淡 水 環 境 に<br />

おける 使 用 時 に 効 果 があることが 教 示 されていた 当 該 塩 を 特 徴 とする 多 塩 基 酸 塩 から 成 る 防<br />

食 性 組 成 物 を 開 示 していた 第 1 の 引 例 に 基 づいて、 拒 絶 された。 審 判 部 は、かかる 塩 に 起 因<br />

する 機 能 が 望 ましくない、 若 しくは 必 要 でない 場 合 、 例 えば 組 成 物 において 淡 水 との 接 触 が<br />

ない 環 境 において 耐 腐 食 性 をもたらすなど、 第 1 の 引 例 の 他 塩 基 酸 塩 を 除 外 することは 自 明<br />

であったであろうと 判 定 してその 拒 絶 を 追 認 した。) 次 も 参 照 のこと。In re Larson, 340 F.2d<br />

965, 144 USPQ 347 (CCPA 1965)( 先 行 技 術 の 移 動 式 流 体 搬 送 装 置 の 積 荷 運 搬 能 力 を 増 大 させ<br />

るために 使 う 追 加 の 枠 及 び 心 棒 の 脱 落 は、この 特 性 が 求 められていない 場 合 、 自 明 であった<br />

であろう。); 及 び、In re Kuhle, 526 F.2d 553, 188 USPQ 7 (CCPA 1975)( 従 来 技 術 のスイ<br />

ッチ 部 材 を 除 去 したこと、 及 びそれによってその 機 能 が 削 除 されたことは、 自 明 の 手 段 であ<br />

った。)<br />

B. 要 素 の 機 能 が 維 持 されたままの 要 素 の 脱 落 は 自 明 でないことの 証 拠 である<br />

要 素 の 脱 落 及 びその 機 能 の 維 持 は 非 自 明 性 の 証 拠 である。In re Edge, 359 F.2d 896, 149 USPQ<br />

556 (CCPA 1966)( 問 題 のクレームは、シートに 直 接 接 着 された 消 去 可 能 な 金 属 薄 膜 を 有 する<br />

印 刷 シートに 向 けられており、 前 記 の 薄 膜 は 消 去 によって 取 り 除 かれるまで 元 の 印 刷 を 見 え<br />

なくしていた。 先 行 技 術 は、 最 上 部 の 層 が 消 去 された 場 合 に 印 字 の 消 去 を 防 ぐ 中 間 の 透 明 な<br />

耐 消 去 保 護 層 をさらに 備 える 類 似 の 印 刷 シートを 開 示 していた。クレームは、 上 訴 人 の 金 属<br />

層 は 印 刷 された 証 拠 が 消 去 されることなく 消 去 することができるので、 先 行 技 術 の 透 明 層 が<br />

削 除 されてもその 透 明 層 の 機 能 は 維 持 されるため、 先 行 技 術 に 基 づいて 非 自 明 とされた。<br />

III. 手 動 による 働 きを 自 動 化 する<br />

In re Venner, 262 F.2d 91, 95, 120 USPQ 193, 194 (CCPA 1958)( 上 訴 人 は、クレームの 発<br />

明 は「 既 知 の 永 久 鋳 型 構 造 を、 所 定 の 時 間 が 経 過 すると 内 側 の 核 を 放 出 する 既 知 の 圧 力 弁 装<br />

置 を 自 動 的 に 作 動 させるタイマー 及 びソレノイドに 接 続 させるので」 成 形 筒 形 ピストン 用 の<br />

永 久 鋳 型 鋳 造 装 置 に 対 するクレームは 先 行 技 術 があっても 特 許 できると 主 張 した。 裁 判 所 は、<br />

同 一 の 結 果 が 達 成 される、 手 動 による 働 きに 置 き 換 える 自 動 又 は 機 械 的 方 法 を 幅 広 く 提 供 す<br />

ることは、 先 行 技 術 から 区 別 するのに 十 分 ではないと 判 示 した。<br />

IV. 大 きさ、 形 状 又 は 追 加 成 分 の 配 列 の 変 化<br />

A. 大 きさ/ 比 率 の 変 化<br />

In re Rose, 220 F.2d 459, 105 USPQ 237 (CCPA 1955)(クレームは、 手 によって 持 ち 上 げる<br />

ことのできる 先 行 技 術 の 木 材 梱 包 について、その 梱 包 サイズに 関 する 限 定 が 先 行 技 術 と 特 許<br />

性 に 関 して 区 別 するのに 十 分 ではないとして 特 許 性 が 無 いと 判 定 された「リフトトラックに<br />

よる 取 扱 いを 必 要 とするほどの 大 きさ 及 び 重 さ」の 木 材 梱 包 に 向 けられた。);In re Rinehart,<br />

531 F.2d 1048, 189 USPQ 143 (CCPA 1976)(「 拡 大 することができる 先 行 技 術 プロセスにつ<br />

いて 単 に 拡 大 することは、もし 本 件 がそうであるならば、そのように 拡 大 される 既 知 のプロ<br />

200


セスに 対 するクレームに 特 許 性 は 確 立 できないであろう。」531 F.2dat 1053、189 USPQat 148。)<br />

Gardner v. TEC Systems, Inc., 725 F.2d 1338, 220 USPQ 777 (Fed. Cir. 1984), cert. denied,<br />

469 U.S. 830, 225 USPQ 232 (1984)において、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 先 行 技 術 とクレー<br />

ムとの 唯 一 の 相 違 点 がクレームの 装 置 の 相 対 寸 法 の 列 挙 であって、クレームの 相 対 寸 法 を 有<br />

する 装 置 が 先 行 技 術 の 装 置 と 異 なる 性 能 ではないであろう 場 合 、クレームの 装 置 は 先 行 技 術<br />

の 装 置 と 特 許 性 に 関 して 異 ならないと 判 示 した。<br />

B. 形 状 の 変 化<br />

In re Dailey, 357 F.2d 669, 149 USPQ 47 (CCPA 1966)( 裁 判 所 は、クレームのほ 乳 用 の 使<br />

い 捨 てプラスチック 容 器 の 構 造 は、クレームの 容 器 の 特 定 の 構 造 が 重 要 であるとする 説 得 力<br />

のある 証 拠 がないので、 当 業 者 が 自 明 であるとしたであろう 選 択 できる 問 題 であったと 判 示<br />

した。)<br />

C. 追 加 成 分 の 配 列 の 変 化<br />

Ex parte Rubin, 128 USPQ 440 (Bd. App. 1959)( 下 地 材 がはじめに 金 属 膜 で 覆 われその 後 に<br />

熱 硬 化 性 材 料 で 含 浸 される、 積 層 板 の 制 作 プロセスを 開 示 する 先 行 技 術 の 引 例 により、 先 行<br />

技 術 プロセスの 工 程 順 序 を 逆 転 することによって 積 層 板 を 制 作 するプロセスに 向 けたクレー<br />

ムは、 一 応 の 自 明 性 のあるものになると 判 示 した。) 次 も 参 照 のこと。In re Burhans, 154 F.2d<br />

690, 69 USPQ 330 (CCPA 1946)(プロセスの 工 程 を 行 う 順 序 の 選 択 は、 新 規 若 しくは 予 想 外 の<br />

結 果 がなければ 一 応 の 自 明 性 がある);In re Gibson, 39 F.2d 975, 5 USPQ 230 (CCPA 1930)( 材<br />

料 を 混 合 する 順 序 の 選 択 は 一 応 の 自 明 性 がある。)<br />

V. 運 搬 可 能 、 一 体 化 、 分 離 可 能 、 調 整 可 能 又 は 連 続 可 能 にする<br />

A. 運 搬 可 能 にする<br />

In re Lindberg, 194 F.2d 732, 93 USPQ 23 (CCPA 1952)(クレームの 装 置 が 携 帯 又 は 移 動 可<br />

能 であるという 事 実 それだけでは、 新 たな 若 しくは 予 想 外 の 結 果 がない 場 合 、そうでない 既<br />

知 の 装 置 と 特 許 性 に 関 して 区 別 するには 十 分 ではない。)<br />

B. 一 体 化 する<br />

In re Larson, 340 F.2d 965, 968, 144 USPQ 347, 349 (CCPA 1965)( 流 体 輸 送 車 両 に 対 する<br />

クレームは、クランプ 手 段 と 一 体 になったブレーキドラムをクランプする 点 で 先 行 技 術 と 異<br />

なるが、 先 行 技 術 の 引 例 に 基 づいて 自 明 であるとして 拒 絶 された。 先 行 技 術 のブレーキディ<br />

スク 及 びクランプは 単 一 ユニットとして 共 にしっかり 固 定 されたいくつもの 部 品 で 構 成 され<br />

ていた。 裁 判 所 は 多 くの 理 由 の 中 で、「[ 先 行 技 術 ]において 開 示 される 構 造 に 代 えて 一 体 型<br />

構 造 を 利 用 したことは、 単 に 自 明 の 技 術 的 選 択 の 問 題 に 過 ぎないであろう」と 判 示 してその<br />

拒 絶 を 支 持 した。しかしながら、Schenck v. Nortron Corp., 713 F.2d 782, 218 USPQ 698 (Fed.<br />

Cir. 1983)(クレームは、 保 持 構 造 、 基 礎 構 造 及 び「 一 体 式 で 切 れ 目 なく 続 く 一 片 」を 形 成 す<br />

る 支 持 方 法 から 成 る 振 動 検 査 器 ( 硬 質 軸 受 ホイール・バランサ)に 向 けられていた。Nortron<br />

は、 当 該 発 明 は 4 個 のボルト 留 めされた 部 品 で 作 られた 一 体 形 成 のものを 製 造 しているだけ<br />

であると 主 張 した。 裁 判 所 はこの 主 張 は 説 得 力 がないと 認 定 し、 先 行 技 術 は 共 鳴 を 減 衰 する<br />

ための 機 構 が 必 要 であるのに 対 して、 発 明 者 は 一 体 で 切 れ 目 のない 支 持 構 造 を 介 して 減 衰 の<br />

必 要 性 を 排 除 し、 当 該 技 術 分 野 の 理 解 及 び 期 待 に 反 する 洞 察 を 示 したので、 当 該 クレームは<br />

特 許 性 があると 判 示 した。<br />

201


C. 分 離 可 能 にする<br />

In re Dulberg, 289 F.2d 522, 523, 129 USPQ 348, 349 (CCPA 1961)(クレームされた 構 造<br />

である、 取 外 し 可 能 なキャップ 付 きの 口 紅 ホルダーは、 先 行 技 術 においてはキャップが「プ<br />

レスフィット」であって 手 で 取 り 外 すことができないことを 除 いて 先 行 技 術 により 完 全 に 達<br />

成 されていた。 裁 判 所 は「キャップがそこに 当 てられる[ 先 行 技 術 の]ホルダーの 先 まで 届 く<br />

ことが 何 らかの 理 由 で 望 ましいと 考 えられていたなら、その 目 的 のためにキャップを 取 り 外<br />

すことは 自 明 であったであろう」と 判 示 した。<br />

D. 調 整 可 能 にする<br />

In re Stevens, 212 F.2d 197, 101 USPQ 284 (CCPA 1954)(クレームは 釣 り 竿 のハンドルに<br />

向 けられており、そのハンドルは 縦 方 向 に 調 整 可 能 なフィンガーフックを 備 え、そのハンド<br />

ルのハンドグリップは 自 在 継 手 によって 本 体 部 分 に 繋 がっていることを 特 徴 とした。 裁 判 所<br />

は、 調 整 機 能 ( 必 要 な 場 合 )は 特 許 性 のある 進 歩 ではないと 判 示 した。 釣 り 竿 には 当 該 技 術 分<br />

野 において 認 められている 調 整 の 必 要 性 があったので、 先 行 技 術 の 単 一 ピボットを 自 在 継 手<br />

に 置 き 換 えることは 自 明 であったであろう。<br />

E. 連 続 可 能 にする<br />

In re Dilnot, 319 F.2d 188, 138 USPQ 248 (CCPA 1963)(クレームは、 安 定 したエアフォー<br />

ムが、フォームの 添 加 を 連 続 されることを 必 要 とする 場 合 に 限 り、 先 行 技 術 と 異 なるセメン<br />

ト 材 料 のスラリーに 添 加 されるセメント 構 造 物 の 製 造 方 法 に 向 けられていた。 裁 判 所 は、ク<br />

レームの 連 続 作 動 は 先 行 技 術 のバッチプロセスに 照 らして 自 明 であったであろうと 判 示 し<br />

た。)<br />

VI. 部 品 の 転 換 、 複 製 又 は 再 配 置<br />

A. 部 品 の 転 換<br />

In re Gazda, 219 F.2d 449, 104 USPQ 400 (CCPA 1955)( 先 行 技 術 は 自 動 車 の 固 定 ステアリ<br />

ングホイールカラムに 固 定 される 速 度 計 を 開 示 したのだが、その 速 度 計 を 回 転 させるギアは<br />

ステアリングホイールとともに 動 く。かかる 動 きの 単 なる 転 換 、つまりその 速 度 計 がホイー<br />

ルとともに 動 くということは 自 明 の 方 法 であると 判 示 された。)<br />

B. 部 品 の 複 製<br />

In re Harza, 274 F.2d 669, 124 USPQ 378 (CCPA 1960)( 問 題 のクレームは、 軟 質 材 料 でで<br />

きたウォータシールでコンクリートの 注 入 直 前 直 後 にできるジョイントを 埋 める 耐 水 組 積 構<br />

造 体 に 向 けられていた。クレームのウォータシールにはジョイントに 潜 る「ウェブ」 及 びそ<br />

のウェブの 両 側 から 外 側 へ、 隣 接 するコンクリートスラブの 一 方 へと 突 き 出 る 複 数 の「リブ」<br />

がある。 先 行 技 術 はプラス 記 号 (+)の 形 状 のコンクレート 塊 の 間 の 水 の 通 過 を 防 ぐための 軟<br />

質 水 止 めを 開 示 した。 引 例 は 複 数 のリブを 開 示 していないが、 裁 判 所 は、 部 品 の 単 なる 複 製<br />

は 新 規 かつ 予 想 外 の 結 果 が 生 まれなければ 特 許 性 に 関 して 意 味 がないと 判 示 した。<br />

C. 部 品 の 再 配 置<br />

In re Japikse, 181 F.2d 1019, 86 USPQ 70 (CCPA 1950)( 起 動 スイッチの 位 置 に 関 する 以 外<br />

は 先 行 技 術 に 読 める 油 圧 式 パワープレスに 対 するクレームは、 起 動 スイッチの 位 置 を 移 動 す<br />

ることは 当 該 装 置 の 作 動 を 変 更 しないので、 特 許 性 がないと 判 定 された。);In re Kuhle, 526<br />

F.2d 553, 188 USPQ 7 (CCPA 1975)( 導 電 率 測 定 装 置 の 接 点 の 特 定 の 置 き 換 えは、デザイン 上<br />

の 選 択 の 自 明 の 事 柄 であると 判 示 された。)しかし、「 当 業 者 が 審 判 請 求 に 係 るクレーム 条 件<br />

202


を 満 たす 引 例 の 装 置 の 部 品 を 再 配 置 できるという 単 なる 事 実 は、それだけで 自 明 性 の 認 定 を<br />

裏 付 けるには 十 分 でない。 先 行 技 術 は 当 業 者 が、 請 求 人 の 明 細 書 の 助 けを 借 りずに、 当 該 引<br />

例 の 装 置 に 必 要 な 変 更 を 加 える 動 機 若 しくは 理 由 を 提 示 しなければならない。Ex parte<br />

Chicago Rawhide Mfg. Co., 223 USPQ 351, 353 (Bd. Pat. App. & Inter. 1984)。<br />

VII. 既 知 の 製 品 を 洗 練 する<br />

純 粋 な 物 質 は、それよりも 純 粋 でない 物 質 若 しくは 不 純 な 物 質 と 比 べて 新 規 である。なぜな<br />

ら 純 粋 な 物 質 と 不 純 な 物 質 との 間 には 相 違 点 があるからである。 従 って、 争 点 は 純 粋 な 物 質<br />

に 対 するクレームは、 先 行 技 術 に 基 づいて 自 明 でないかどうかである。In re Bergstrom, 427<br />

F.2d 1394, 166 USPQ 256 (CCPA 1970)。 既 存 の 製 品 のより 純 度 の 高 い 形 は 特 許 性 があるが、<br />

製 品 の 単 なる 純 度 それのみで 製 品 を 自 明 でないとするものではない。Ex parte Gray, 10<br />

USPQ2d 1922 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)。<br />

既 知 の 製 品 の 純 化 された 形 態 が、 先 行 技 術 に 基 づいて 自 明 であるかどうかを 判 断 する 際 に 検<br />

討 すべき 要 因 は、クレームの 化 合 物 又 は 組 成 物 が、 先 行 技 術 と 密 接 に 関 係 する 物 質 と 同 一 の<br />

有 用 性 を 有 するかどうか、さらにその 先 行 技 術 はクレームの 物 質 の 特 定 の 形 態 若 しくは 構 造 、<br />

又 はその 形 態 若 しくは 構 造 を 入 手 する 適 切 な 方 法 を 示 唆 しているかどうかを 含 む。In re<br />

Cofer, 354 F.2d 664, 148 USPQ 268 (CCPA 1966)( 化 合 物 の 自 由 流 体 の 結 晶 形 に 対 するクレ<br />

ームは、 同 一 化 合 物 の 粘 性 液 状 形 態 を 開 示 している 引 例 について、 記 録 の 先 行 技 術 はクレー<br />

ムの 結 晶 形 の 化 合 物 又 はそのような 結 晶 を 得 る 方 法 を 示 唆 していなかったので、 自 明 でない<br />

と 判 示 された。)<br />

次 も 参 照 のこと。Ex parte Stern, 13 USPQ2d 1379 (Bd. Pat. App. & Inter. 1987) 均 一 に<br />

精 製 されたインターロイキン 2( 分 子 重 量 12,000 超 のタンパク 質 )に 対 するクレームは、イン<br />

ターロイキン 2 を 均 一 質 に 精 製 することが 望 ましいと 認 識 される 引 例 について、 先 行 技 術 の<br />

方 法 がインターロイキン 2 の 精 製 に 関 して 請 求 人 が 開 示 する 方 法 に 類 似 し、12,000 超 の 分 子<br />

量 を 有 するタンパク 質 を 精 製 して 均 一 化 する 方 法 を 教 示 した 引 例 に 照 らし、 特 許 性 がないと<br />

判 定 された。<br />

次 と 比 較 すること。 Ex parte Gray, 10 USPQ2d 1922 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)(クレ<br />

ームはヒト 起 源 の 他 のタンパク 質 を 含 有 しないヒト 神 経 成 長 因 子 b-NGF に 向 けられており、<br />

その 明 細 書 は 組 換 え DNA 技 術 の 使 用 を 介 してクレームの 因 子 を 作 り 出 すことを 開 示 していた。<br />

当 該 クレームはヒト 胎 盤 組 織 から 単 離 される b-NGF を 開 示 している 2 引 例 に 照 らして 一 応 の<br />

自 明 性 があるとして 拒 絶 された。 審 判 部 は、 先 行 技 術 の 因 子 は 当 該 因 子 を 獲 得 する 方 法 にお<br />

いてのみクレームの 因 子 と 異 なるようであることを 理 由 に、プロダクト・バイ・プロセス・<br />

クレームに 該 当 する 判 例 を 適 用 した。 審 判 部 は、クレームの 製 品 は 先 行 技 術 の 特 性 と 比 べて<br />

予 想 されない 特 性 を 持 つことを 立 証 する 責 任 は 請 求 人 にあると 判 定 した。 審 判 部 はさらに「ク<br />

レームの 物 質 を 合 成 することができたとする 方 法 は 当 業 者 に 知 られていなかったことを 立 証<br />

する 物 的 証 拠 は 何 ら 提 示 されていない」と 指 摘 した。10 USPQ2dat 1926。)<br />

2144.05 範 囲 に 関 する 自 明 性<br />

特 許 法 第 102 条 及 び 特 許 法 第 102 条 / 第 103 条 による 範 囲 の 新 規 性 欠 如 に 基 づく 拒 絶 に 関 す<br />

る 判 例 については、MPEP 第 2131.03 条 を 参 照 のこと。<br />

203


I. 範 囲 の 重 複<br />

クレームの 範 囲 が 先 行 技 術 によって 開 示 された 範 囲 内 である、 又 は 重 複 する 場 合 は、 自 明 性<br />

の 一 応 の 証 明 が 存 在 する。In re Wertheim, 541 F.2d 257, 191 USPQ 90 (CCPA 1976);In re<br />

Woodruff, 919 F.2d 1575, 16 USPQ2d 1934 (Fed. Cir. 1990)( 先 行 技 術 は「1~5%」の 一 酸<br />

化 炭 素 濃 度 を 教 示 しており、 一 方 で 当 該 クレームは「5% 超 」に 限 定 されていた。 裁 判 所 は「 約<br />

1~5%」は 5%をわずかに 超 える 濃 度 を 許 容 しており、 従 って 当 該 範 囲 は 重 複 していると 判<br />

示 した。);In re Geisler, 116 F.3d 1465, 1469-71, 43 USPQ2d 1362, 1365-66 (Fed. Cir.<br />

1997)(「50 から 100 オングストロームまで」の 範 囲 内 にある 保 護 層 の 厚 さを 挙 げるクレーム<br />

は、「 適 切 な 保 護 について 保 護 層 の 厚 みは 少 なくとも 約 10nm[すなわち 100 オングストロー<br />

ム]でなくてはならない」と 教 示 している 先 行 技 術 の 引 例 に 照 らして 一 応 の 自 明 性 があると 考<br />

えられた。 裁 判 所 は「『 適 切 な 保 護 』が 用 意 されると 述 べることによって 保 護 層 が『 約 』100<br />

オングストローム 厚 さである 場 合 に[ 先 行 技 術 の 引 例 は][ 出 願 人 の]クレームの 範 囲 内 の 厚 み<br />

の 使 用 を 直 接 教 示 している」と 述 べた。) 同 様 に、クレームの 範 囲 及 び 先 行 技 術 の 範 囲 は 重 複<br />

しないが、 当 業 者 がそれらは 同 一 特 性 を 有 すると 考 えるほどに 十 分 近 接 している 場 合 は、 一<br />

応 の 自 明 性 が 存 在 する。Titanium Metals Corp. of America v. Banner, 778 F.2d 775, 227<br />

USPQ 773 (Fed. Cir. 1985)( 裁 判 所 は、ニッケル 0.75%、モリブデン 0.25%、 残 りチタンの<br />

合 金 と、ニッケル 0.94%、モリブデン 0.31%、 残 りチタンの 合 金 を 開 示 する 引 例 に 基 づいて<br />

自 明 として、「ニッケル 0.8%、モリブデン 0.3%、 鉄 0.1% 以 下 、 残 りチタンを 有 する」 合<br />

金 にに 向 けられたクレームの 拒 絶 を 正 しいと 判 示 した。)<br />

「いくらかそれよりも 狭 いクレームの 範 囲 を 含 む 範 囲 を 開 示 している 先 行 技 術 の 引 例 は、 一<br />

応 の 自 明 性 を 立 証 するに 十 分 である。」In re Peterson, 315 F.3d 1325, 1330, 65 USPQ2d 1379,<br />

1382-83 (Fed. Cir. 2003)。 次 も 参 照 のこと。In re Harris, 409 F.3d 1339, 74 USPQ2d 1951<br />

(Fed. Cir. 2005) (クレームの 合 金 は、 重 量 パーセントの 範 囲 がクレームの 範 囲 と 重 複 して<br />

いること、ほとんどの 事 例 で 完 全 に 包 含 していることを 教 示 する 先 行 技 術 の 合 金 に 基 づいて<br />

自 明 であると 判 示 された。さらに、 引 例 によって 教 示 されるさらに 狭 い 範 囲 はクレームの 発<br />

明 の 1 範 囲 を 除 きすべてが 重 複 した。)しかし、 引 例 の 開 示 範 囲 が 非 常 にたくさんの 予 測 され<br />

る 異 なる 組 成 物 を 包 括 するほど 広 範 な 場 合 、 先 行 技 術 が 属 を 広 範 に 開 示 する 場 合 の 種 の 自 明<br />

性 に 類 似 した 状 況 を 呈 することがある。 同 上 。 次 も 参 照 のこと。In re Baird, 16 F.3d 380,<br />

29 USPQ2d 1550 (Fed. Cir. 1994);In re Jones, 958 F.2d 347, 21 USPQ2d 1941 (Fed. Cir.<br />

1992);MPEP §2144.08.<br />

範 囲 は、 当 該 事 例 の 個 別 の 事 実 に 応 じて 単 一 の 先 行 技 術 の 引 例 に 代 わり 複 数 の 先 行 技 術 の 引<br />

例 で 開 示 することができる。Iron Grip Barbell Co., Inc. v. USA Sports, Inc., 392 F.3d<br />

1317, 1322, 73 USPQ2d 1225, 1228 (Fed. Cir. 2004)。 問 題 の 特 許 クレームは、 加 重 プレー<br />

トを 運 ぶための 取 っ 手 として 機 能 する 細 長 い 開 口 部 3 個 を 備 える 加 重 プレートに 向 けられて<br />

いた。 複 数 の 先 行 技 術 の 特 許 はそれぞれに 1、2 又 は 4 個 の 細 長 い 開 口 部 を 有 する 加 重 プレー<br />

トを 開 示 していた。392 F.3dat 1319、73 USPQ2dat 1226。 裁 判 所 は、クレームの 3 個 の 細 長<br />

い 開 口 部 を 有 する 加 重 プレートは 先 行 技 術 の「 範 囲 」 内 に 該 当 する。 従 って、 自 明 であると<br />

推 定 されるとした。392 F.3dat 1322、73 USPQ2dat 1228。 裁 判 所 はさらに、「 先 行 技 術 は 加<br />

重 プレートの 多 数 の 細 長 いグリップは 効 果 があるとを 示 唆 していること・・・ 従 って、 当 業 者 は<br />

先 行 技 術 に 見 られる 範 囲 に 目 を 向 けていることを 明 確 に 示 唆 している」ので、 複 数 の 先 行 技<br />

術 の 特 許 で 開 示 される「 範 囲 」は 単 一 特 許 で 開 示 される 範 囲 を 含 む 従 前 の 範 囲 の 事 例 と「 名<br />

204


ばかりの 区 別 」であるとした。」 同 文 献 。<br />

II. 範 囲 の 最 適 化<br />

A. 先 行 技 術 の 条 件 内 又 は 日 常 的 実 験 を 通 じての 最 適 化<br />

濃 度 又 は 温 度 の 違 いが 先 行 技 術 によって 包 含 される 保 護 対 象 の 特 許 性 を 裏 付 けることは、そ<br />

のような 濃 度 又 は 温 度 が 決 定 的 に 重 要 な 意 味 を 持 つことを 示 す 証 拠 が 無 い 限 り、ほぼない。<br />

「クレームの 一 般 条 件 が 先 行 技 術 において 開 示 されている 場 合 、 日 常 的 実 験 により 最 適 な 又<br />

は 有 効 な 範 囲 を 発 見 することに 発 明 性 はない」In re Aller, 220 F.2d 454, 456, 105 USPQ 233,<br />

235 (CCPA 1955)( 温 度 40℃と 80℃との 間 、 酸 濃 度 25%と 70%との 間 で 実 施 されるクレーム<br />

のプロセスは、 引 例 のプロセスが 温 度 100℃ 及 び 酸 濃 度 10%で 実 施 されることにおいてのみ<br />

当 該 クレームと 異 なる 引 例 プロセスに 基 づいて 一 応 の 自 明 性 があると 判 示 された。); 次 も 参<br />

照 のこと。Peterson, 315 F.3d at 1330, 65 USPQ2d at 1382(「すでに 一 般 に 知 られている<br />

ものを 改 良 したいとする 科 学 者 又 は 当 業 者 の 一 般 的 望 みにより、パーセントの 最 適 な 組 合 せ<br />

が 一 連 の 開 示 されたパーセントの 範 囲 のどこにあるかを 決 めるという 動 機 が 生 じる。」);In<br />

re Hoeschele, 406 F.2d 1403, 160 USPQ 809 (CCPA 1969)( 引 例 の 広 い 範 囲 に 該 当 するクレ<br />

ームの 弾 性 ポリウレタンは、 中 でも、 分 子 重 量 若 しくはモル 比 のクレーム 範 囲 の 臨 界 の 証 明<br />

がないので、それについて 特 許 性 がないと 判 示 された。) 本 原 則 を 適 用 する 最 近 の 事 例 につい<br />

ては 次 を 参 照 のこと。Merck & Co. Inc. v. Biocraft Laboratories Inc., 874 F.2d 804, 10<br />

USPQ2d 1843 (Fed. Cir.), cert. denied, 493 U.S. 975 (1989);In re Kulling, 897 F.2d<br />

1147, 14 USPQ2d 1056 (Fed. Cir. 1990); 及 び In re Geisler, 116 F.3d 1465, 43 USPQ2d<br />

1362 (Fed. Cir. 1997)。<br />

B. 結 果 有 効 変 数 のみ 最 適 化 することができる<br />

特 定 のパラメータはまず 結 果 有 効 変 数 として、すなわち、 評 価 される 結 果 を 達 成 する 変 数 と<br />

して 認 識 されねばならない。 前 記 変 数 の 最 適 な 若 しくは 有 効 な 範 囲 の 決 定 が 日 常 的 実 験 であ<br />

るとされる 前 にである。In re Antonie, 559 F.2d 618, 195 USPQ 6 (CCPA 1977)(クレーム<br />

の 廃 水 処 理 装 置 は 請 負 業 者 領 域 に 対 して 1 平 方 フィート 当 たり 0.12ガロンのタンク 容 量 があ<br />

った。 先 行 技 術 は、 処 理 能 力 は 請 負 業 者 割 合 に 対 するタンク 容 量 の 関 数 であることを 認 知 し<br />

ておらず、 従 って 最 適 化 されたパラメータはその 技 術 において 結 果 有 効 変 数 であることは 確<br />

認 されていなかった。 次 も 参 照 のこと。In re Boesch, 617 F.2d 272, 205 USPQ 215 (CCPA<br />

1980)( 先 行 技 術 は、 合 金 の 形 成 において 望 みの 成 果 を 達 成 できる 比 率 の 釣 合 せを 示 唆 してい<br />

た。)<br />

III. 自 明 性 の 一 応 の 証 明 に 反 論 する<br />

出 願 人 は、クレームの 範 囲 の 臨 界 を 示 すことによって、 重 複 する 範 囲 に 基 づく 一 応 の 自 明 性<br />

の 証 明 に 反 論 することができる。「 判 例 法 では、クレームの 発 明 と 先 行 技 術 との 間 の 違 いが、<br />

ある 範 囲 である、 若 しくはクレーム 内 の 他 の 変 数 である 事 例 が 豊 富 である。・・・そのような 場<br />

合 、 出 願 人 はクレームの 範 囲 は 先 行 技 術 の 範 囲 と 比 べて 予 想 外 の 結 果 を 達 成 することを 示 す<br />

ことにより、 特 定 の 範 囲 が 決 定 的 に 重 要 な 意 味 を 持 つことを 示 さねばならない。In re<br />

Woodruff, 919 F.2d 1575, 16 USPQ2d 1934 (Fed. Cir. 1990)。 臨 界 及 び 予 想 外 の 結 果 に 関<br />

する 考 察 については MPEP 第 716.02 条 乃 至 第 716.02 条 (g)を 参 照 のこと。<br />

また、 一 応 の 自 明 性 の 証 明 は、 当 該 技 術 は 何 らかの 重 要 な 点 について、クレームの 発 明 から<br />

205


外 れたところで 教 示 していることを 示 すことによって 反 論 することもできる。In re Geisler,<br />

116 F.3d 1465, 1471, 43 USPQ2d 1362, 1366 (Fed. Cir. 1997)( 出 願 人 は、 先 行 技 術 は「50<br />

から 100 オングストロームまで」のクレームの 範 囲 内 の 厚 みを 有 する 反 射 品 の 保 護 層 の 利 用<br />

から 外 れて 教 示 していると 主 張 した。 具 体 的 には Zehender への 特 許 は、 出 願 人 のクレームを<br />

拒 絶 するため 依 拠 されているが、 保 護 層 の 厚 みは「 約 [100 オングストローム] 以 上 でなくて<br />

はならない」との 一 文 を 含 んでいた。 裁 判 所 は、 当 該 特 許 はクレームの 発 明 から 外 れて 教 示<br />

するものではないと 判 示 した。「Zehender は 保 護 層 をできる 限 り 薄 くすることから 得 られる<br />

利 点 があると 示 唆 しており、 適 切 な 保 護 を 達 成 できることと 一 致 する。より 薄 い 層 は 光 の 吸<br />

収 量 を 減 少 させ、 製 造 時 間 及 び 費 用 を 最 小 化 する。 従 って、Zehender は 200~300 オングス<br />

トロームのより 厚 い 保 護 層 を 選 好 している 一 方 で、 同 時 に 当 業 者 に 対 して Zehender の『 適 切<br />

な』 範 囲 ― 約 100 オングストローム―の 最 も 低 い 厚 みレベルに 焦 点 を 合 わせ、さらにその 範<br />

囲 よりも 下 の 厚 みレベルを 開 発 しようとする 動 機 を 提 供 している。Zehender における『 一 般<br />

的 に 保 護 層 の 厚 みは[100]オングストローム 以 上 とすべてきである』という 一 文 は 当 業 者 に<br />

100 オングストローム 以 下 の 保 護 層 を 作 ろうとする 思 いをとどまらせるであろうような 教 示<br />

とは 程 遠 い。 従 って、 我 々は Zehender によって 主 張 されたように、『 自 明 性 の 強 力 な 事 例 を<br />

克 服 するに 十 分 な 当 該 技 術 分 野 から 外 れたところの 教 示 が 存 在 すると 確 信 していない』。」<br />

「 外 れたところの 教 示 」の 引 例 に 関 する 考 察 については MPEP 第 2145 条 第 X.D. 段 落 を 参 照 の<br />

こと。<br />

出 願 人 は、「(1) 先 行 技 術 はクレームの 発 明 から 外 れたところを 教 示 していること、 若 しくは<br />

(2) 先 行 技 術 に 対 して 新 規 かつ 予 想 外 の 結 果 があること」を 示 すことにより 先 行 技 術 範 囲 内 に<br />

該 当 するクレームの 発 明 による 自 明 性 の 推 定 に 反 論 することができる。Iron Grip Barbell<br />

Co., Inc. v. USA Sports, Inc., 392 F.3d 1317, 1322, 73 USPQ2d 1225, 1228 (Fed. Cir.<br />

2004)。 裁 判 所 は、 特 許 権 者 は 先 行 技 術 から 外 れたところを 教 示 する 証 拠 も、3 つの 細 長 いハ<br />

ンドル 開 口 部 を 有 する 加 重 プレートに 関 するクレームの 発 明 について 新 規 かつ 予 想 外 の 結 果<br />

も 提 示 していないと 判 断 した。392 F.3dat 1323、73 USPQ2dat 1229。 次 に 裁 判 所 は、 商 業 的<br />

な 成 功 、 以 前 からの 必 要 性 の 充 足 及 び 他 の 者 による 複 製 など 特 許 性 を 裏 付 けることができる<br />

かもしれない、 関 連 のある 副 次 的 要 因 についての 証 拠 もまた 検 討 し 始 めた。 同 文 献 。しかし<br />

ながら、 裁 判 所 は、Iron Grip は 次 に 掲 げる 理 由 により 商 業 的 な 成 功 、 他 の 者 による 複 製 又<br />

は 以 前 からの 必 要 性 の 充 足 についての 証 拠 を 示 すことができないと 判 断 した。(A)Iron Grip<br />

の 3 競 争 相 手 に 対 する 特 許 のライセンス 供 与 は「 当 該 発 明 のメリットとライセンス」 間 のつ<br />

ながりを 示 すには 不 十 分 であり、 従 って 商 業 的 成 功 の 副 次 的 考 察 事 項 を 確 立 していない。<br />

(B)Iron Grip の 競 争 相 手 の 3 穴 プレートの 生 産 は 複 製 の 証 拠 であるとする 主 張 に 対 して、 裁<br />

判 所 は「 特 許 範 囲 内 に 該 当 するすべての 競 合 製 品 が 複 製 の 証 拠 となるわけではない」「そう<br />

でなければすべての 侵 害 訴 訟 が 自 動 的 に 当 該 特 許 の 非 自 明 性 を 裏 付 けるであろう」から、と<br />

述 べている。(C)Iron Grip は、 同 社 の 特 許 以 前 には 市 場 に 3 グリップのプレートは 無 かった<br />

ことは、 当 該 発 明 は 非 自 明 であることを 示 していることを 証 拠 として 提 示 しているが、 裁 判<br />

所 は「 以 前 からの 必 要 性 又 は 他 人 の 失 敗 の 証 明 が 無 い 限 り、クレームの 発 明 のない 単 なる 時<br />

の 経 過 は 非 自 明 性 の 証 拠 にならない」と 述 べている。392 F.3dat 1324-25、73 USPQ2dat 1229-30。<br />

2144.06 同 一 の 目 的 のために 等 価 であると 認 められる 技 術<br />

I. 同 一 目 的 で 知 られる 等 価 物 の 組 合 せ<br />

206


「 全 く 同 じ 目 的 のために 使 用 される 第 3 の 組 成 物 を 形 成 するために、それぞれが 同 一 目 的 で<br />

有 用 であることが 先 行 技 術 によって 教 示 される 2 組 成 物 を 組 合 せることは 一 応 の 自 明 性 の 証<br />

明 がある・・・。それらを 組 みあわせる 着 想 は 先 行 技 術 においてそれらの 個 々に 教 示 されること<br />

から 論 理 的 に 生 じる。」In re Kerkhoven, 626 F.2d 846, 850, 205 USPQ 1069, 1072 (CCPA<br />

1980)( 引 用 省 略 )( 従 来 の 噴 霧 乾 燥 洗 剤 2 種 を 混 合 することによって 1 つの 噴 霧 乾 燥 洗 剤 を 調<br />

合 するプロセスに 対 するクレームは 一 応 の 自 明 性 があると 判 示 された。) 次 も 参 照 のこと。In<br />

reCrockett, 279 F.2d 274, 126 USPQ 186 (CCPA 1960) 炭 化 カルシウムと 酸 化 マグネシウム<br />

から 成 る 混 合 物 を 使 用 して 鋳 鉄 を 処 理 する 方 法 及 び 材 料 に 向 けられたクレームは、 前 述 の 構<br />

成 要 素 は 個 々に 鋳 鉄 における 小 結 節 構 造 の 形 成 を 促 進 するとする 先 行 技 術 の 開 示 に 基 づいて<br />

特 許 性 がないと 判 示 された。);Ex parte Quadranti, 25 USPQ2d 1071 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1992)(2 種 の 既 知 の 除 草 剤 の 混 合 物 は 一 応 の 自 明 性 があると 判 断 された。)<br />

II. 同 一 目 的 で 知 られる 等 価 物 の 置 換<br />

自 明 性 による 拒 絶 を 裏 付 ける 理 論 的 根 拠 として 等 価 性 に 依 拠 するためには、その 等 価 性 は 先<br />

行 技 術 において 認 知 されていなければならず、 出 願 人 の 開 示 又 は 問 題 とされる 構 成 要 素 が 機<br />

能 的 若 しくは 機 械 的 に 等 価 物 であるという 単 なる 事 実 を 根 拠 とすることはできない。In re<br />

Ruff, 256 F.2d 590, 118 USPQ 340 (CCPA 1958)( 構 成 要 素 が Markush 群 の 選 択 肢 としてクレ<br />

ームされているという 単 なる 事 実 にこれらの 構 成 要 素 の 等 価 性 を 立 証 するため 依 拠 すること<br />

はできない。しかし、 当 該 技 術 分 野 において 認 められている 若 しくは 自 明 の 等 価 物 であると<br />

の 出 願 人 の 認 識 表 明 は、かかる 等 価 性 が 存 在 しないとする 主 張 に 反 論 するために 使 用 するこ<br />

とができる。);Smith v. Hayashi, 209 USPQ 754 (Bd. of Pat. Inter. 1980)(フタロシア<br />

ニン 及 びセレンはクレームの 環 境 において 光 伝 導 体 と 同 じ 役 割 を 果 たすという 単 なる 事 実 は、<br />

一 方 が 他 方 について 自 明 であったであろうと 立 証 するには 十 分 でなかった。しかし、フタロ<br />

シアニンもセレンも 電 子 写 真 術 の 当 該 技 術 分 野 において 既 知 の 光 伝 導 体 であるという 証 拠 が<br />

あった。「 我 々の 見 解 では、これは 電 子 写 真 術 環 境 で 光 伝 導 体 として 一 方 を 他 方 に 置 き 換 え<br />

ることの 自 明 性 の 強 固 な 証 拠 である。」209 USPQat 759。)<br />

一 方 の 等 価 の 構 成 要 素 又 はプロセスを 他 方 のものと 置 換 することの 明 確 な 示 唆 は、かかる 置<br />

換 を 自 明 とするために 必 要 ではない。In re Fout, 675 F.2d 297, 213 USPQ 532 (CCPA 1982)。<br />

2144.07 意 図 した 目 的 のために 適 合 すると 認 められる 技 術<br />

目 的 用 途 の 適 合 性 に 基 づく 既 知 の 材 料 の 選 択 は Sinclair & Carroll Co. v. Interchemical<br />

Corp., 325 U.S. 327, 65 USPQ 297 (1945)において 一 応 の 自 明 性 の 判 断 を 裏 付 けた。(ブチ<br />

ルカルビトールの 蒸 気 圧 特 性 を 有 する 溶 剤 から 成 り、 従 ってそのインクは 室 温 で 乾 燥 しない<br />

が 熱 すると 直 ぐに 乾 く 印 刷 インクに 対 するクレームは、 印 刷 インク 用 溶 剤 の 望 ましい 沸 騰 点<br />

及 び 蒸 気 圧 特 性 を 教 示 している 論 文 及 びブチルカルビトールの 沸 騰 点 及 び 蒸 気 圧 特 性 を 教 示<br />

しているカタログに 照 らし、 室 温 で 不 揮 発 性 であるが 熱 せられると 揮 発 性 が 高 い 異 なる 溶 剤<br />

で 作 られる 印 刷 インクを 教 示 する 引 例 に 基 づいて 無 効 であると 判 示 された。「リストを 読 ん<br />

で 既 知 の 要 件 を 満 たす 既 知 の 化 合 物 を 選 択 することが 独 創 的 でないのはジグソーパズルの 最<br />

後 の 穴 を 埋 める 最 後 のピースを 選 択 することが 独 創 的 でないのと 同 じである。」325 U.S.at<br />

335、65 USPQat 301。)<br />

次 も 参 照 のこと。In re Leshin, 227 F.2d 197, 125 USPQ 416 (CCPA 1960)( 発 明 より 前 に 存<br />

207


在 したプラスチックで 作 られるタイプの 容 器 を 作 るための 既 知 のプラスチックの 選 択 は 自 明<br />

であると 判 示 された。);Ryco, Inc. v. Ag-Bag Corp., 857 F.2d 1418, 8 USPQ2d 1323 (Fed.<br />

Cir. 1988)(クレームの 農 業 用 袋 詰 機 ( 先 行 技 術 の 機 械 とブレーキ 方 法 が 機 械 的 作 動 ではなく<br />

油 圧 で 作 動 することだけが 異 なっていた)は 異 なる 環 境 においてではあるが 同 一 機 能 を 行 う<br />

油 圧 ブレーキを 開 示 する 引 例 に 照 らして 先 行 技 術 の 機 械 に 基 づいて 自 明 であると 判 示 され<br />

た。)<br />

2144.08 先 行 技 術 が 属 を 教 示 する 場 合 の 種 の 自 明 性<br />

I. 単 一 の 先 行 技 術 の 引 例 に 基 づく 化 学 成 分 の 種 に 向 けられたクレームの 審 査<br />

単 一 の 先 行 技 術 の 引 例 がクレームの 種 又 は 亜 属 を 包 含 する 属 を 開 示 しているが 特 定 のクレー<br />

ムの 種 又 は 亜 属 を 明 示 的 に 開 示 していない 場 合 、 本 庁 審 査 官 は 先 行 技 術 の 第 1 の 引 例 とクレ<br />

ームの 発 明 全 体 との 相 違 点 が 自 明 であったであろうことを 示 す 新 たな 先 行 事 例 を 見 つけよう<br />

と 試 みなければならない。かかる 新 たな 先 行 技 術 が 見 つからない 場 合 、 本 庁 審 査 官 は 単 一 の<br />

引 例 に 基 づく 特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 が 適 切 であるかどうかを 判 断 するため 後 述 の 要 因 を<br />

検 討 しなくてはならない。<br />

II. クレームの 種 又 は 亜 属 は 発 明 が 行 われた 時 点 において 当 業 者 に 自 明 であったか 否 かの 判<br />

断<br />

先 行 技 術 の 属 に 包 含 される 特 定 の 化 合 物 又 は 亜 属 に 対 するクレームの 特 許 性 は 特 許 法 第 103<br />

条 の 目 的 上 、 他 のクレームと 何 ら 変 わることなく 分 析 しなくてはならない。「 第 103 条 の 非<br />

自 明 性 に 関 する 要 件 は 化 学 の 事 例 においても 特 許 性 のある 発 明 のその 他 のカテゴリーについ<br />

て 全 く 同 様 である。」In re Papesch, 315 F.2d 381, 385, 137 USPQ 43, 47 (CCPA 1963)。<br />

特 許 法 第 103 条 に 基 づく 特 許 性 の 判 断 は 状 況 の 全 体 性 に 照 らして 特 定 の 事 例 の 事 実 に 基 づき<br />

行 われねばならない。 参 照 事 例 として、In re Dillon, 919 F.2d 688, 692-93, 16 USPQ2d 1897,<br />

1901 (Fed. Cir. 1990)( 大 法 廷 )。 本 庁 審 査 官 による「 事 実 自 体 」のルールの 使 用 はクレームの<br />

対 象 が 特 許 法 第 103 条 により 自 明 であるかどうかを 判 断 する 上 で 不 適 切 である。 参 照 事 例 と<br />

して、In re Brouwer, 77 F.3d 422, 425, 37 USPQ2d 1663, 1666 (Fed. Cir. 1996);In re<br />

Ochiai, 71 F.3d 1565, 1572, 37 USPQ2d 1127, 1133 (Fed. Cir. 1995);In re Baird, 16 F.3d<br />

380, 382, 29 USPQ2d 1550, 1552 (Fed. Cir. 1994)。クレームの 種 又 は 亜 属 が 先 行 技 術 の 属<br />

に 包 含 されているという 事 実 それだけでは、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 をするには 不 十 分 である。<br />

In re Baird, 16 F.3d 380, 382, 29 USPQ2d 1550, 1552 (Fed. Cir. 1994)(「クレームの 化<br />

合 物 が 開 示 された 一 般 式 に 包 含 されているかもしれないという 事 実 それだけでその 化 合 物 を<br />

自 明 とはしない」);In re Jones, 958 F.2d 347, 350, 21 USPQ2d 1941, 1943 (Fed. Cir.<br />

1992)( 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は「Merck[& Co. v. Biocraft Laboratories Inc., 874 F.2d 804,<br />

10 USPQ2d 1843 (Fed. Cir. 1989)]から 広 さにかかわらず、 化 学 属 の 開 示 はその 範 囲 内 に 該<br />

当 すればいずれの 種 も 自 明 とする・・・というルールを 引 き 出 していない。」) 次 も 参 照 のこと。<br />

In re Deuel, 51 F.3d 1552, 1559, 34 USPQ2d 1210, 1215 (Fed. Cir. 1995)。<br />

A. 自 明 性 の 一 応 の 証 明 をする<br />

正 しい 自 明 性 の 分 析 は 3 工 程 のプロセスを 踏 む。 第 1 に、 本 庁 審 査 官 は Graham v. John Deere<br />

の 事 例 において 最 高 裁 判 所 が 明 確 化 した 要 因 を 検 討 し、 特 許 性 欠 如 の 一 応 の 証 明 をしなくて<br />

はならない。 参 照 事 例 として、In re Bell, 991 F.2d 781, 783, 26 USPQ2d 1529, 1531 (Fed.<br />

208


Cir. 1993)(「 特 許 商 標 庁 は 一 応 の 自 明 性 を 立 証 する 責 任 を 担 う。);In re Rijckaert, 9 F.3d<br />

1531, 1532, 28 USPQ2d 1955, 1956 (Fed. Cir. 1993);In re Oetiker, 977 F.2d 1443, 1445,<br />

24 USPQ2d 1443, 1444 (Fed. Cir. 1992)。Graham v. John Deere Co., 383 U.S. 1, 17-18 (1966)<br />

は 自 明 性 を 立 証 することを 求 めており、 次 に 掲 げる 各 号 を 行 わねばならない。<br />

(A) 先 行 技 術 の 範 囲 及 び 内 容 を 決 定 すること<br />

(B) 先 行 技 術 と 問 題 となっているクレームとの 相 違 点 を 確 認 すること<br />

(C) 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 明 らかにすること<br />

(D) 副 次 的 考 察 事 項 の 証 拠 を 評 価 すること<br />

一 応 の 証 明 がされると、その 一 応 の 証 明 を 克 服 するための 反 証 をする、 若 しくは 反 論 する 責<br />

任 は 出 願 人 に 転 換 する。 参 照 事 例 として、Bell, 991 F.2d at 783-84, 26 USPQ2d at 1531;<br />

Rijckaert, 9 F.3d at 1532, 28 USPQ2d at 1956;Oetiker, 977 F.2d at 1445, 24 USPQ2d at<br />

1444。 最 終 的 に、 本 庁 審 査 官 は 当 該 事 実 の 全 体 及 び 証 拠 のすべてを 評 価 し、クレームの 発 明<br />

がその 発 明 が 行 われた 時 点 において 当 業 者 に 自 明 であったであろうとする 結 論 を 依 然 として<br />

支 持 するかどうかを 決 定 しなくてはならない。 同 文 献 。<br />

1. 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容 を 明 らかにする<br />

始 めに、 本 庁 審 査 官 は 関 連 する 先 行 技 術 の 対 象 範 囲 及 び 内 容 を 明 らかにしなくてはならない。<br />

各 引 例 は 特 許 法 第 102 条 に 基 づく 先 行 技 術 として 有 効 でなければならず( 例 えば、Panduit<br />

Corp. v. Dennison Mfg. Co., 810 F.2d 1561, 1568, 1 USPQ2d 1593, 1597 (Fed. Cir.<br />

1987)(「Graham の『 内 容 』 審 理 に 答 える 前 に、 特 許 又 は 刊 行 物 は 特 許 法 第 102 条 に 基 づく 先<br />

行 技 術 に 存 在 するかどうかが 知 られていなければならない。」))、かつ 類 似 技 術 でなければ<br />

ならない。MPEP 第 2141.01 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

属 を 開 示 している 先 行 技 術 の 引 例 の 事 例 において、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 各 号 に 関 して 認<br />

定 を 行 わなくてはならない。<br />

(A) 開 示 された 先 行 技 術 の 属 の 構 造 及 び 明 示 的 に 開 示 されたその 属 内 の 種 又 は 亜 属 の 構 造<br />

(B) 当 該 属 について 開 示 された 物 理 的 又 は 化 学 的 特 性 及 び 有 用 性 、 及 び 当 該 属 の 有 用 性 に 示<br />

唆 された 限 定 並 びに 当 該 属 が 対 応 すべき 申 し 立 てられた 問 題<br />

(C) 技 術 の 予 測 可 能 性<br />

(D) 考 えられる 変 数 のすべてを 考 慮 する 属 によって 包 含 される 種 の 数<br />

2. 記 録 上 の 最 も 近 い 開 示 された 先 行 技 術 の 種 又 は 亜 属 と、クレームの 種 又 は 亜 属 間 の 相 違<br />

点 を 確 定 する<br />

開 示 された 先 行 技 術 の 属 の 構 造 とその 属 内 の 明 示 的 に 開 示 された 種 又 は 亜 属 の 構 造 が 特 定 さ<br />

れた 時 点 で、 本 庁 審 査 官 は 相 違 点 を 決 定 するためにそれをクレームの 種 又 は 亜 属 と 比 較 しな<br />

くてはならない。この 比 較 を 介 して、 先 行 技 術 の 引 例 で 最 も 近 い 開 示 された 種 又 は 亜 属 がそ<br />

のクレームされたものに 対 して 特 定 され 比 較 されなくてはならない。 本 庁 審 査 官 は、 記 録 上<br />

の 最 も 近 い 開 示 された 先 行 技 術 の 種 又 は 亜 属 と、クレームの 種 又 は 亜 属 間 の 類 似 点 及 び 相 違<br />

点 について、 明 示 的 認 定 を 行 わねばならない。これには 構 造 、 化 学 的 特 性 及 び 有 用 性 の 類 似<br />

点 に 関 する 認 定 を 含 める。Stratoflex, Inc. v. Aeroquip Corp., 713 F.2d 1530, 1537, 218<br />

USPQ 871, 877 (Fed. Cir. 1983)において 裁 判 所 は「 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 問 題 は[クレー<br />

ムの 発 明 と 先 行 技 術 間 の] 相 違 点 が 自 明 であったであろうか 否 か」ではなく「クレームの 発 明<br />

全 体 が 自 明 であったであろうか 否 か」である」と 指 摘 した。( 強 調 は 原 文 のまま)<br />

3. 当 該 技 術 分 野 のレベルを 明 らかにする<br />

209


本 庁 審 査 官 は、クレームの 発 明 が 行 われた 時 点 の 当 該 技 術 分 野 の 架 空 の 当 業 者 の 立 場 から 先<br />

行 技 術 を 評 価 しなくてはならない。 参 照 として、Ryko Mfg. Co. v. Nu-Star Inc., 950 F.2d<br />

714, 718, 21 USPQ2d 1053, 1057 (Fed. Cir. 1991)(「 当 該 技 術 分 野 の 当 業 者 レベルを 解 決<br />

することの 重 要 性 は、 自 明 性 の 審 理 において 客 観 性 を 保 持 することの 必 要 性 にある。」);<br />

Uniroyal Inc. v. Rudkin-Wiley Corp., 837 F.2d 1044, 1050, 5 USPQ2d 1434, 1438 (Fed.<br />

Cir. 1988)( 証 拠 は 熟 練 者 の 立 場 からではなく 通 常 の 技 術 を 有 する 者 の 立 場 から 見 なくては<br />

ならない)。ほとんどの 場 合 、 当 該 技 術 分 野 の 熟 練 度 に 関 する 記 録 の 事 実 のみが 先 行 技 術 の 引<br />

例 で 確 認 されるであろう。しかし、 出 願 人 により 提 示 されるいかなる 追 加 の 証 拠 も 評 価 され<br />

なくてはならない。<br />

4. 当 業 者 がクレームの 種 又 は 亜 属 を 選 択 するよう 動 機 付 けられたであろうか 否 かを 判 断 す<br />

る<br />

Graham の 3 要 因 に 関 して 成 された 認 定 に 照 らして、 本 庁 審 査 官 はそれが 当 業 者 にとってクレ<br />

ームの 発 明 全 体 を 行 うために、すなわち、 開 示 された 先 行 技 術 の 属 からクレームの 種 又 は 亜<br />

属 を 選 択 するために 自 明 であったであろうか 否 を 判 断 しなくてはならない。この 重 要 な 論 点<br />

を 取 り 扱 うため、 本 庁 審 査 官 は 次 に 掲 げる 事 項 ( 該 当 する 場 合 )に 焦 点 を 合 わせ、 関 連 する 先<br />

行 技 術 の 教 示 すべてを 検 討 しなくてはならない。<br />

(a) 属 の 大 きさを 検 討 する<br />

大 きさのみで 自 明 性 による 拒 絶 を 裏 付 けることはできないことを 念 頭 に 置 いて、 先 行 技 術 の<br />

属 の 大 きさを 検 討 する。 参 照 事 例 として、Baird, 16 F.3d at 383, 29 USPQ2d at 1552(「こ<br />

こで 重 要 なことは、この 限 定 されたクラスの 単 なる 化 合 物 の 数 ではなく、むしろ 関 係 する 状<br />

況 全 体 である」ことに 注 意 すること。) 先 行 技 術 の 属 の 大 きさと 自 明 性 の 結 論 との 間 に 完 全 な<br />

相 関 は 存 在 しない。 同 文 献 。 従 って、 先 行 技 術 の 属 が 少 数 の 選 択 肢 を 含 むという 単 なる 事 実<br />

は 自 明 性 について「 事 実 自 体 」のルールを 作 らない。しかし、 状 況 の 全 体 に 照 らして 検 討 す<br />

る 場 合 、 属 が 小 さいのでクレームの 種 又 は 亜 属 を 予 想 できるかもしれない。 例 えば、わずか<br />

20 の 化 合 物 及 び 一 般 化 学 式 において 限 られた 数 の 変 形 物 を 含 む 先 行 技 術 の 属 により、「 当 業<br />

者 は・・・ 各 選 択 肢 を 予 想 するであろう」ことを 理 由 に、その 属 内 のクレームの 種 は 本 質 的 に 新<br />

規 性 を 喪 失 している 判 示 されている。In re Petering, 301 F.2d 676, 681, 133 USPQ 275, 280<br />

(CCPA 1962)( 強 調 は 原 文 のまま)。Petering 事 件 において 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。<br />

「 単 純 な 計 算 で R 基 の 一 定 のものの 中 から 異 性 体 を 取 り 除 くと Karrer の 中 で 我 々が 確 認 する<br />

限 られたクラスはわずか 20 の 化 合 物 であることがわかるであろう。しかし、ここで 重 要 なこ<br />

とは、この 限 られたクラスの 単 なる 化 合 物 の 数 ではなく、Y 及 び Z についてわずか 2 つの 変<br />

形 例 でその 他 の 環 ポジションには 変 形 例 がなく、 大 きな 不 変 の 親 構 造 核 という、R の 変 形 物<br />

の 限 られた 数 のような 要 因 を 含 めて、 関 係 する 全 体 の 状 況 であることを 指 摘 したい。これら<br />

の 状 況 を 念 頭 に 置 いて、Karrer はまるですっかり 自 分 がそれぞれの 構 造 式 を 描 いた 若 しくは<br />

それぞれの 名 前 を 書 いたかのようにここに 関 係 するさまざまな 置 換 のそれぞれを 当 業 者 に 対<br />

して 記 載 したとするのが 我 々の 意 見 である。」<br />

同 文 献 。( 強 調 は 原 文 のまま)Accord In re Schaumann, 572 F.2d 312, 316, 197 USPQ 5, 9 (CCPA<br />

1978)( 低 級 第 2 アミンの 好 ましさとクレームの 化 合 物 が 有 する 特 性 を 開 示 する、クレームの<br />

種 を 包 含 する 先 行 技 術 の 属 は、 特 許 法 第 102 条 (b)の 目 的 上 、クレームされる 化 合 物 の 明 細 書<br />

を 構 成 する。)C.f., In re Ruschig, 343 F.2d 965, 974, 145 USPQ 274, 282 (CCPA 1965)( 先<br />

行 技 術 が 共 通 特 性 を 有 する 化 合 物 の 小 さな 認 識 できるクラスを 開 示 していない 場 合 、<br />

210


Petering に 基 づく 先 行 技 術 の 属 に 照 らしてクレームの 化 合 物 の 拒 絶 することは 適 切 ではな<br />

い。)<br />

(b) 明 示 的 教 示 を 検 討 する<br />

先 行 技 術 の 引 例 が 明 確 にクレームの 種 又 は 亜 属 を 選 択 する 特 定 の 理 由 を 教 示 している 場 合 、<br />

本 庁 審 査 官 はその 明 確 な 開 示 を 指 摘 し、クレームの 発 明 を 選 択 することが 自 明 であったであ<br />

ろう 理 由 を 当 業 者 に 対 して 説 明 しなくてはならない。 明 確 な 教 示 は、 当 該 技 術 分 野 において<br />

認 められている 等 価 性 などの 先 行 技 術 の 引 例 における 一 文 に 基 づくものかもしれない。 例 え<br />

ば、 参 照 として、Merck & Co. v. Biocraft Labs., 874 F.2d 804, 807, 10 USPQ2d 1843, 1846<br />

(Fed. Cir. 1989)(アミロリドとヒドロクロロチアジドの 特 定 混 合 物 を 含 む 利 尿 組 成 物 に 向 け<br />

られたクレームは、アミロリドは、 望 ましいナトリウムとカリウムの 排 せつ 特 性 を 有 する 利<br />

尿 剤 を 作 るため 例 として 名 前 を 挙 げられたヒドロクロロチアジドを 含 む、カリウム 排 出 利 尿<br />

剤 と 併 用 可 能 なピラジノイルグアニジンであることを 明 示 的 に 教 示 する 先 行 技 術 の 引 例 に 基<br />

づいて 自 明 と 判 示 された。) 次 も 参 照 のこと。In re Kemps, 97 F.3d 1427, 1430, 40 USPQ2d<br />

1309, 1312 (Fed. Cir. 1996)( 一 方 の 引 例 が 他 方 に 具 体 的 に 言 及 する 場 合 、クレームの 発 明<br />

を 達 成 するために 先 行 技 術 の 教 示 を 組 みあわせることは 自 明 であったであろうと 判 示 した。)<br />

(c) 構 造 的 類 似 性 に 関 する 教 示 を 検 討 する<br />

開 示 された 属 の「 代 表 的 な」、「 望 ましい」 又 は「 最 適 な」 種 若 しくは 亜 属 に 関 する 教 示 を<br />

検 討 する。かかる 種 又 は 亜 属 がクレームのものと 構 造 的 に 同 等 な 場 合 、 構 造 的 に 同 等 の 種 は<br />

一 般 に 同 等 の 特 性 を 有 するという 合 理 的 期 待 に 基 づき、その 開 示 は 当 業 者 にその 属 からのク<br />

レームの 種 又 は 亜 属 の 選 択 を 提 供 することができる。 参 照 事 例 として、Dillon, 919 F.2d at<br />

693, 696, 16 USPQ2d at 1901, 1904。 次 も 参 照 のこと。Deuel, 51 F.3d at 1558, 34 USPQ2d<br />

at 1214(「 構 造 的 関 係 は 既 知 の 化 合 物 を 修 正 して 新 しい 化 合 物 を 手 に 入 れようとするために<br />

不 可 欠 の 動 機 若 しくは 示 唆 を 提 供 することができる。 例 えば、 同 族 体 は 同 等 の 特 性 を 有 する<br />

ことが 多 く、 従 って 当 業 者 である 化 学 者 はそれらから 改 良 された 特 性 を 持 つ 化 合 物 を 手 に 入<br />

れようと 考 えるので、 先 行 技 術 の 化 合 物 は、その 同 族 体 を 示 唆 することができる。」)<br />

自 明 性 の 決 定 を 行 うに 当 たって 本 庁 審 査 官 は 選 択 又 は 修 正 されるに 違 いない 変 動 要 素 の 数 、<br />

及 び 先 行 技 術 とクレームの 発 明 との 間 の 相 違 点 の 性 質 並 びに 重 要 性 を 検 討 しなくてはならな<br />

い。 参 照 事 例 として、In re Jones, 958 F.2d 347, 350, 21 USPQ2d 1941, 1943 (Fed. Cir.<br />

1992)(クレームの 塩 を 含 む 幅 広 い 先 行 技 術 の 属 に 基 づく、 非 環 式 構 造 を 有 する 新 たなジカン<br />

バ 塩 の 自 明 性 による 拒 絶 を 取 り 消 した。ここで、 開 示 された 属 の 例 はエーテル 結 合 が 欠 けて<br />

いる 若 しくは 環 式 であって 構 造 が 異 なっていた);In re Susi, 440 F.2d 442, 445, 169 USPQ<br />

423, 425 (CCPA 1971)( 先 行 技 術 の 特 定 の 望 ましい 亜 属 の 相 違 点 はヒドロキシル 基 であって、<br />

相 違 点 は「ほとんど 重 要 ではない」ことが 出 願 人 により 認 められた。)バイオテクノロジーの<br />

分 野 において 例 証 される 種 は 保 守 的 置 換 (「あるアミノ 酸 のタンパク 質 の 化 学 的 に 同 質 な 他 の<br />

アミノ 酸 による 置 換 であって、・・・ 一 般 にそのタンパク 質 の 特 性 に 変 化 をもたらさないか、あ<br />

ってもわずかであるとされるもの」Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology 97<br />

(John Wiley & Sons, 2d ed. 1989))によってクレームの 種 と 異 なることがある」)。タンパ<br />

ク 質 の 機 能 についての 保 守 的 置 換 の 影 響 は、 置 換 の 性 質 及 び 鎖 の 位 置 によって 変 わる。 保 守<br />

的 置 換 はいくつかの 場 所 で 無 害 ではあるが、いくつかのタンパク 質 の 中 の 1 つのアミノ 酸 に<br />

限 って 所 定 の 位 置 で 認 められる。 例 えば、たとえ 1 つのメチル 基 の 増 減 であっても、 密 接 な<br />

充 填 がドメイン 内 部 に 要 求 される 場 合 、 構 造 の 安 定 性 を 損 なうことがある。James Darnell et<br />

211


al., Molecular Cell Biology 51 (2d ed. 1990)。<br />

クレームの 種 又 は 亜 属 と 先 行 技 術 に 開 示 され 例 示 されている 種 又 は 亜 属 との 間 の 物 理 的 及 び<br />

化 学 的 類 似 性 が 近 いほど、クレームの 保 護 対 象 がその 属 に 対 すると 同 じやり 方 で 機 能 すると<br />

の 期 待 が 大 きくなる。 参 照 事 例 として、Dillon, 919 F.2d at 696, 16 USPQ2d at 1904( 及 び<br />

そこに 引 用 される 事 例 )。Cf. Baird, 16 F.3d at 382-83, 29 USPQ2d at 1552( 似 ていない 種<br />

の 開 示 は 外 れた 教 示 を 提 示 することができる。)<br />

同 様 に、クレームの 種 又 は 亜 属 と 構 造 的 に 著 しく 異 なる 望 ましい 種 又 は 亜 属 の 引 例 の 教 示 又<br />

は 示 唆 を 検 討 する。かかる 教 示 はクレームの 種 又 は 亜 属 の 選 択 及 び 自 明 性 の 判 断 に 不 利 にな<br />

るかもしれない。Baird, 16 F.3d at 382-83, 29 USPQ2d at 1552( 大 型 の 属 及 びクレームの<br />

種 と 大 きく 異 なり、かつ、より 複 雑 な 開 示 された「 最 適 な」 種 を 考 慮 した、 種 の 自 明 性 によ<br />

る 拒 絶 の 取 り 消 し);Jones, 958 F.2d at 350, 21 USPQ2d at 1943(クレームの 塩 を 含 む 幅 広<br />

い 先 行 技 術 の 属 に 基 づく、 非 環 式 構 造 を 有 する 新 たなジカンバ 塩 の 自 明 性 による 拒 絶 の 取 り<br />

消 し。ここで、 開 示 された 属 の 例 はエーテル 結 合 が 欠 けている 若 しくは 環 式 であって 構 造 が<br />

異 なっていた。) 例 えば、 開 示 された 属 内 の 複 雑 な 性 質 の 望 ましい 種 についての 教 示 は、 当 業<br />

者 に 同 じように 複 雑 な 種 を 作 る 意 欲 を 起 こさせ、したがって、その 属 内 の 単 純 な 種 を 作 るこ<br />

とからは 外 れたところを 教 示 するる 可 能 性 がある。Baird, 16 F.3d at 382, 29 USPQ2d at 1552。<br />

次 も 参 照 のこと。Jones, 958 F.2d at 350, 21 USPQ2d at 1943( 属 の 開 示 された 塩 はクレー<br />

ムの 種 を 一 応 の 自 明 性 があるとするには 構 造 の 同 等 性 が 十 分 でないと 判 定 した。)<br />

化 学 事 例 の 他 のタイプの 化 合 物 の 構 造 的 同 等 性 を 分 析 するために 使 われた 概 念 は、 属 と 種 の<br />

事 例 の 分 析 におけるものと 同 様 に 有 用 である。 例 えば、クレームのテトラオルトエステル 燃<br />

料 組 成 物 は、 構 造 及 び 化 学 的 同 等 性 と 燃 料 添 加 剤 としての 類 似 使 用 に 基 づき 先 行 技 術 のトリ<br />

オルトエステル 燃 料 組 成 物 に 照 らして 自 明 であると 判 示 された。Dillon, 919 F.2dat 692-93、<br />

16 USPQ2dat 1900-02。 同 様 に、 抗 抑 鬱 として 使 用 されるアミトリプチリンへのクレームは、<br />

周 知 の 抗 鬱 の 先 行 技 術 の 化 合 物 、イミプラミンへの 構 造 的 類 似 性 に 照 らして 自 明 と 判 示 され<br />

た。ここで、2 つの 化 合 物 は 三 環 ジベンゾ 化 合 物 であって、アミトリプチリンの 中 央 環 の 不<br />

飽 和 炭 素 原 子 の 置 換 においてのみ 構 造 的 にイミプラミンの 窒 素 原 子 と 異 なっていた。In re<br />

Merck & Co., 800 F.2d 1091, 1096-97, 231 USPQ 375, 378-79 (Fed. Cir. 1986)。その 他<br />

の 構 造 的 同 等 性 は 自 明 性 の 一 応 の 証 明 を 裏 付 けると 認 定 されている。 参 照 事 例 として、In re<br />

May, 574 F.2d 1082, 1093-95, 197 USPQ 601, 610-11 (CCPA 1978)( 立 体 異 性 体 );In re Wilder,<br />

563 F.2d 457, 460, 195 USPQ 426, 429 (CCPA 1977)( 隣 接 同 族 体 及 び 構 造 異 性 体 );In re Hoch,<br />

428 F.2d 1341, 1344, 166 USPQ 406, 409 (CCPA 1970)( 酸 及 びエチルエステル);In re Druey,<br />

319 F.2d 237, 240, 138 USPQ 39, 41 (CCPA 1963)(ピラゾール 環 からのメチル 基 の 脱 落 )。<br />

一 般 的 に、 構 造 的 類 似 性 の 教 示 にはクレームの 種 又 は 亜 属 の 選 択 を 示 唆 することが 必 要 とな<br />

る。 同 文 献 。<br />

(d) 同 等 の 特 性 又 は 利 用 の 教 示 を 検 討 する<br />

構 造 的 に 同 等 の 先 行 技 術 の 種 又 は 亜 属 の 特 性 及 び 有 用 性 を 検 討 する。 現 実 の 世 界 で 当 業 者 に 構 造<br />

的 に 先 行 技 術 の 種 に 同 等 のものを 作 る 動 機 を 与 えるものは 特 性 及 び 有 用 性 である。Dillon, 919<br />

F.2d at 697, 16 USPQ2d at 1905; In re Stemniski, 444 F.2d 581, 586, 170 USPQ 343, 348 (CCPA<br />

1971)。 反 対 に、 周 知 の 有 用 な 特 性 がないことは 種 又 は 亜 属 を 作 ること 若 しくは 選 択 することへ<br />

の 動 機 を 見 つけることに 不 利 になる。In re Albrecht, 514 F.2d 1389, 1392, 1395-96, 185 USPQ<br />

585, 587, 590 (CCPA 1975)( 皮 膚 をひどく 刺 激 する 先 行 技 術 の 化 合 物 は、それによって 開 示 され<br />

212


た 麻 酔 剤 の 目 的 で 有 用 とはみなされなかった。 従 って 当 業 者 は 関 連 化 合 物 を 作 るよう 動 機 付 けさ<br />

れていなかったであろう。);Stemniski, 444 F.2dat 586、170 USPQat 348( 引 例 の 化 合 物 が 有 用<br />

性 に 欠 ける 場 合 、 近 似 する 構 造 的 同 等 性 だけで 自 明 性 の 一 応 の 証 明 があるとするのに 十 分 ではな<br />

い。 従 って、 関 連 化 合 物 を 作 るという 動 機 付 けは 存 在 しない。)しかし、 先 行 技 術 は、そこに 自<br />

明 性 の 一 応 の 証 明 があるとするために、 新 たに 発 見 された 特 性 を 開 示 する 必 要 はない。Dillon,<br />

919 F.2d at 697, 16 USPQ2d at 1904-05( 及 びそこに 引 用 される 事 例 )。クレームの 発 明 及 び 構 造<br />

的 に 同 等 の 先 行 技 術 の 種 が 有 用 な 特 性 を 共 有 する 場 合 、 一 般 に、 当 業 者 がクレームの 種 を 作<br />

ることへの 動 機 を 与 えるのに 十 分 であろう。 例 えば、 同 上 文 献 。 例 えば、トリオルトエステルと<br />

テトラオルトエステルが 一 定 の 化 学 反 応 で 同 等 の 振 る 舞 いをするとの 知 見 に 基 づき、 当 業 者 はど<br />

ちらの 構 造 でも 選 択 できると 動 機 付 けられていたであろうと 判 示 されている。919 F.2dat 692、<br />

16 USPQ2dat 1900-01。 実 際 に、 化 合 物 が 構 造 的 に 非 常 に 近 い 場 合 、 一 般 的 に 同 等 の 特 性 を 推 定 す<br />

ることができる。Dillon, 919 F.2dat 693, 696, 16 USPQ2dat 1901, 1904。 次 も 参 照 のこと。In<br />

re Grabiak, 769 F.2d 729, 731, 226 USPQ 870, 871 (Fed. Cir. 1985)(「 化 合 物 が『 非 常 に 近<br />

似 する』 構 造 的 同 等 性 と 同 等 の 有 用 性 を 有 している 場 合 、それ 以 上 のものがなくても 一 応 の 証 明<br />

があるとすることができる。」) 従 って、 同 等 の 特 性 の 証 拠 又 はクレームの 発 明 によって 共 有 され<br />

ることが 期 待 されるであろう 先 行 技 術 で 開 示 された 有 用 な 特 性 は、クレームの 発 明 が 自 明 であっ<br />

たであろうとする 結 論 に 有 利 となる。Dillon, 919 F.2dat 697-98、16 USPQ2dat 1905;In re<br />

Wilder, 563 F.2d 457, 461, 195 USPQ 426, 430 (CCPA 1977);In re Linter, 458 F.2d 1013, 1016,<br />

173 USPQ 560, 562 (CCPA 1972)。<br />

(e) 技 術 の 予 測 可 能 性 を 検 討 する<br />

技 術 の 予 測 可 能 性 を 検 討 する。 参 照 事 例 として、Dillon, 919 F.2dat 692-97、16 USPQ2dat<br />

1901-05;In re Grabiak, 769 F.2d 729, 732-33, 226 USPQ 870, 872 (Fed. Cir. 1985)。<br />

技 術 が 予 測 不 可 能 な 場 合 、 同 等 の 特 性 を 共 有 するであろうと 推 測 することが 合 理 的 とは 限 ら<br />

ないため、 構 造 的 に 同 等 の 種 はクレームの 種 を 自 明 とする 可 能 性 が 低 くなる。<br />

参 照 事 例 として、In re May, 574 F.2d 1082, 1094, 197 USPQ 601, 611 (CCPA 1978)( 構 造<br />

的 に 同 等 の 先 行 技 術 の 異 性 体 に 基 づくクレームの 鎮 痛 化 合 物 についての 一 応 の 自 明 性 は、 鎮<br />

痛 及 び 習 慣 性 の 特 性 は 化 学 構 造 ベースで 確 実 に 予 測 できないことを 実 証 する 証 拠 をもって 反<br />

論 された。)In re Schechter, 205 F.2d 185, 191, 98 USPQ 144, 150 (CCPA 1953)( 殺 虫 剤<br />

分 野 における 予 測 不 可 能 性 は、 有 効 であることが 知 られている 殺 虫 剤 の、 殺 虫 剤 として 非 効<br />

果 的 なことが 証 明 されている 同 族 体 、 異 性 体 及 び 類 似 体 があって、クレームの 化 合 物 に 関 す<br />

る 自 明 性 の 結 論 に 影 響 を 与 える 要 因 として 考 えられた。)しかし、 自 明 性 は 絶 対 的 予 測 可 能 性<br />

を 必 要 とせず、 成 功 の 合 理 的 期 待 すなわち 同 等 の 特 性 を 取 得 する 合 理 的 期 待 しか 必 要 としな<br />

い。 参 照 事 例 として、In re O’Farrell, 853 F.2d 894, 903, 7 USPQ2d 1673, 1681 (Fed. Cir.<br />

1988)。<br />

(f) 種 又 は 亜 属 の 選 択 を 支 持 するその 他 の 教 示 を 検 討 する<br />

前 記 に 列 挙 した 教 示 に 関 連 するカテゴリーは、ほとんどの 場 合 が 属 と 種 の 事 例 に 入 るもので<br />

あるがそれだけには 限 らない。 本 庁 審 査 官 は 事 例 ごとに 証 拠 の 全 体 性 を 検 討 しなくてはなら<br />

ない。 希 な 事 例 では、 他 の 関 連 教 示 が 種 又 は 亜 属 の 選 択 を 支 持 するに 十 分 なこと、 従 って 自<br />

明 の 結 論 に 十 分 であることがある。<br />

5. 明 示 的 事 実 認 定 を 行 い、それが 自 明 性 の 一 応 の 証 明 を 裏 付 けるか 否 かを 判 定 する<br />

全 体 としての 証 拠 に 基 づき(In re Bell, 991 F.2d 781,784, 26 USPQ2d 1529, 1531 (Fed. Cir.<br />

213


1993);In re Kulling, 897 F.2d 1147, 1149, 14 USPQ2d 1056, 1057 (Fed. Cir. 1990))<br />

本 庁 審 査 官 は 上 記 で 論 じた 先 行 技 術 の 教 示 に 主 に 焦 点 を 当 て、Graham 要 因 について 明 示 的 事<br />

実 認 定 を 行 わなくてはならない。 事 実 認 定 は、 先 行 技 術 のどの 教 示 又 は 示 唆 が 当 業 者 をクレ<br />

ームの 種 又 は 亜 属 の 選 択 への 動 機 付 けとなっていたかを 具 体 的 に 述 べなくてはならない。<br />

Kulling, 897 F.2dat 1149、14 USPQ2dat 1058;Panduit Corp. v. Dennison Mfg. Co., 810<br />

F.2d 1561, 1579 n.42, 1 USQP2d 1593, 1606 n.42 (Fed. Cir. 1987)。その 後 は、これらの<br />

認 定 を 全 体 として 検 討 し、クレームの 発 明 が 当 業 者 にとって 発 明 がなされた 時 点 において 自<br />

明 であったであろうという 一 応 の 証 明 を 裏 付 けているか 否 かを 判 断 しなくてはならない。<br />

2144.09 化 合 物 ( 同 族 体 、 類 似 体 、 異 性 体 ) 間 の 構 造 的 同 等 性<br />

I. 構 造 的 同 等 性 による 拒 絶 は、 同 じような 構 造 の 化 合 物 が 同 じような 特 性 を 有 することの<br />

期 待 により 認 定 される<br />

自 明 性 の 一 応 の 証 明 があるとすることができるのは、 化 合 物 が 非 常 に 近 い 構 造 的 同 等 性 及 び<br />

同 等 の 有 用 性 を 有 する 場 合 である。「 化 学 構 造 及 び 機 能 の 同 等 性 に 基 づく 自 明 性 による 拒 絶<br />

は、 同 じような 構 造 の 化 合 物 が 同 等 の 特 性 を 有 するであろうと 期 待 してクレームの 化 合 物 を<br />

作 ろうとする 当 業 者 の 意 欲 を 必 要 とする。」In re Payne, 606 F.2d 303, 313, 203 USPQ 245,<br />

254 (CCPA 1979)。 参 照 として、In re Papesch, 315 F.2d 381, 137 USPQ 43 (CCPA 1963)( 以<br />

下 で 詳 細 に 検 討 ) 及 び In re Dillon, 919 F.2d 688, 16 USPQ2d 1897 (Fed. Cir. 1991) 化 合<br />

物 の 構 造 的 同 等 性 に 基 づく 自 明 性 に 関 する 判 例 の 詳 細 な 検 討 については( 後 述 及 び MPEP 第<br />

2144 条 )。MPEP 第 2144.08 条 第 II 段 落 A.4.(c)も 参 照 のこと。<br />

II. 同 族 体 及 び 異 性 体 は 自 明 性 の 判 断 において 他 のすべての 関 連 事 実 をもって 検 討 しなけれ<br />

ばならない 事 実 である<br />

位 置 異 性 体 ( 同 一 核 上 の 物 理 的 に 異 なる 位 置 に 同 一 基 を 有 する 化 合 物 ) 又 は 同 族 体 ( 同 一 化 学<br />

基 の 連 続 添 加 によって、 例 えば-CH2- 基 によって 規 則 正 しく 異 なる 化 合 物 )である 化 合 物 は 一<br />

般 に 十 分 な 構 造 的 同 等 性 があってそのような 化 合 物 は 同 等 の 特 性 を 有 すると 予 測 される 期 待<br />

が 存 在 する。In reWilder, 563 F.2d 457, 195 USPQ 426 (CCPA 1977)。In re May, 574 F.2d<br />

1082, 197 USPQ 601 (CCPA 1978)( 立 体 異 性 体 の 一 応 の 自 明 性 )も 参 照 のこと。<br />

同 一 の 実 験 式 を 有 するが 構 造 の 異 なる 異 性 体 は 当 該 技 術 分 野 の 熟 練 した 化 学 者 によって 必 ず<br />

しも 同 等 とはみなされない。 従 って、 必 ずしも 互 いに 示 唆 しない。Ex parte Mowry, 91 USPQ<br />

219 (Bd. App. 1950)( 先 行 技 術 のアイソヘキシルスチレンについて 一 応 の 自 明 性 のないクレ<br />

ームのサイクロヘキシルスチレン) 同 様 に、 隣 接 同 族 体 から 遠 く 離 れた 同 族 体 は 同 等 の 特 性 を<br />

有 することが 期 待 されるとは 限 らない。In re Mills, 281 F.2d 218, 126 USPQ 513 (CCPA<br />

1960)(C 8 から C 12 までのアルキル 硫 酸 塩 の 先 行 技 術 の 開 示 はクレームの C 1 のアルキル 硫 酸 塩<br />

を 一 応 の 自 明 性 があるとするのに 十 分 ではない。)<br />

同 族 体 及 び 異 性 体 は、 自 明 性 についての 論 点 を 決 定 する 際 にその 他 すべての 関 連 する 事 実 を<br />

検 討 しなければならない 構 造 的 同 等 性 を 伴 う。In re Mills, 281 F.2d 218, 126 USPQ 513 (CCPA<br />

1960);In re Wiechert, 370 F.2d 927, 152 USPQ 247 (CCPA 1967)。 同 族 体 はクレームの 発<br />

明 と 先 行 技 術 をそれぞれ「 全 体 として」 考 えねばならないため、 自 動 的 に 一 応 自 明 であるよ<br />

うに 扱 ってはならない。In re Langer, 465 F.2d 896, 175 USPQ 169 (CCPA 1972)( 立 体 障 害<br />

アミンを 用 いる 重 合 プロセスに 対 するクレームは、 当 該 先 行 技 術 は 大 量 の 非 障 害 アミン 及 び<br />

214


唯 一 の 立 体 障 害 アミン(クレームのアミンと 3 炭 素 原 子 が 異 なる)を 開 示 しており、 従 って、<br />

引 例 全 体 はクラスとして 障 害 アミンの 重 要 性 を 当 業 者 に 知 らせていないことを 理 由 に、 同 等<br />

の 先 行 技 術 のプロセスに 基 づいて 自 明 でないと 判 示 された。)<br />

III. 真 の 同 族 体 又 は 異 性 体 の 関 係 の 存 在 は 対 照 とならない<br />

先 行 技 術 の 構 造 は 構 造 的 に 同 等 の 化 合 物 を 一 応 の 自 明 性 があるとするのに 真 の 同 族 体 又 は 異<br />

性 体 である 必 要 はない。In re Payne, 606 F.2d 303, 203 USPQ 245 (CCPA 1979)(クレーム<br />

の 化 合 物 及 び 先 行 技 術 の 化 合 物 は 共 に 殺 虫 作 用 を 有 する 複 素 環 カルバモイルオキシイミノ 化<br />

合 物 に 向 けられていた。クレームの 化 合 物 及 び 先 行 技 術 の 化 合 物 との 間 の 唯 一 の 構 造 的 相 違<br />

点 は、クレームの 化 合 物 の 環 構 造 は 2 つの 硫 黄 原 子 の 間 に 2 つの 炭 素 原 子 を 有 したのに 対 し<br />

て、 先 行 技 術 の 環 構 造 は 2 つの 硫 黄 原 子 の 間 に 1 つ 又 は 3 ついずれかの 炭 素 原 子 を 有 したこ<br />

とであった。 裁 判 所 は、 先 行 技 術 の 化 合 物 はクレームの 化 合 物 の 真 の 同 族 体 又 は 異 性 体 では<br />

ないが、 化 学 構 造 及 び 特 性 間 の 同 等 性 は、 当 業 者 が 新 たな 殺 虫 剤 を 探 求 する 際 にクレームの<br />

化 合 物 を 作 る 気 にさせたであろう、 十 分 に 近 似 するものであると 判 示 した。)<br />

次 も 参 照 のこと。In re Mayne, 104 F.3d 1339, 41 USPQ2d 1451 (Fed. Cir. 1997)(クレー<br />

ムのタンパク 質 は、Ile 及 び Lev の 既 存 の 構 造 的 同 等 性 を 含 む 先 行 技 術 の 構 造 的 同 等 性 に 照<br />

らして 自 明 であると 判 示 された。);In re Merck & Co., Inc., 800 F.2d 1091, 231 USPQ 375<br />

(Fed. Cir. 1986)(クレームの 化 合 物 と 鬱 病 治 療 方 法 に 使 用 される 先 行 技 術 の 化 合 物 は、 既 存<br />

の 生 物 学 的 等 価 性 置 換 を 含 む 化 合 物 間 の 構 造 的 相 違 のため 同 様 の 活 性 を 有 すると 期 待 されて<br />

いたであろう。)(Mayne 及 び Merck の 事 例 における 事 実 に 関 する 詳 細 な 検 討 については MPEP<br />

第 2144.08 条 第 II 段 落 A.4(c)を 参 照 のこと。);In re Dillon, 919 F.2d 688, 16 USPQ2d 1897<br />

(Fed. Cir. 1991)( 先 行 技 術 のトリオルトエステル 燃 料 組 成 物 とクレームのテトラオルトエス<br />

テル 燃 料 組 成 物 は、それらのオルトエステル 間 の 構 造 的 及 び 化 学 的 同 等 性 と 先 行 技 術 及 び 出<br />

願 人 が 燃 料 添 加 剤 としてそれらのオルトエステルを 使 用 したという 事 実 に 基 づき、 同 等 の 特<br />

性 を 有 すると 期 待 されていたであろう。)(Dillon 事 例 の 事 実 に 関 する 詳 細 な 検 討 については<br />

MPEP 第 2144 条 を 参 照 のこと。)<br />

次 を 比 較 のこと。In re Grabiak, 769 F.2d 729, 226 USPQ 871 (Fed. Cir. 1985)( 除 草 剤 の<br />

毒 性 緩 和 化 合 物 のエステル 基 のチオエステル 基 による 置 換 は、 先 行 技 術 によって 示 唆 されて<br />

いなかった);In re Bell, 991 F.2d 781, 26 USPQ2d 1529 (Fed. Cir. 1993)( 核 酸 とそれが<br />

遺 伝 子 コードにコードするタンパク 質 との 間 に 確 立 された 関 係 は、 化 学 分 野 で 密 接 に 関 連 す<br />

る 構 造 が 一 応 の 証 明 をもたらすのと 同 じ 方 法 で、 対 応 するタンパク 質 について 遺 伝 子 を 一 応<br />

の 自 明 性 があるとしない。なぜなら、 遺 伝 子 コードの 縮 重 の 結 果 として 特 定 のタンパク 質 を<br />

コードできる 膨 大 な 数 のヌクレオチド 配 列 が 存 在 するからである。)In re Deuel, 51 F.3d<br />

1552, 1558-59, 34 USPQ2d 1210, 1215 (Fed. Cir. 1995)(「タンパク 質 のアミノ 酸 配 列 の 先<br />

行 技 術 の 開 示 は、 必 ずしもそのタンパク 質 をコードする 特 定 の DNA 分 子 を 自 明 としない。な<br />

ぜなら、 遺 伝 子 コードの 冗 長 性 によりそのタンパク 質 をコードする 膨 大 な 数 の DNA 配 列 を 仮<br />

定 することができる。」 先 行 技 術 の 遺 伝 子 コードに 一 般 的 方 法 が 存 在 しても、それ 以 上 のも<br />

のがなければ 特 定 の cDNA 分 子 を 自 明 とするのに 十 分 ではない。)<br />

IV. クレームの 化 合 物 の 作 成 方 法 についての 先 行 技 術 の 示 唆 の 有 無 は、 一 応 の 自 明 性 を 判 断<br />

する 上 で 重 要 性 があるかもしれない<br />

215


「 適 切 に 作 動 し 自 明 である、 組 成 物 の 作 成 方 法 の 有 無 は、その 組 成 物 が 特 許 法 第 103 条 に 基<br />

づき 自 明 であるか 否 かに 最 終 的 に 影 響 を 与 えることがある。」In re Maloney, 411 F.2d 1321,<br />

1323, 162 USPQ 98, 100 (CCPA 1969)。<br />

「 記 録 の 先 行 技 術 がクレームの 化 合 物 を 製 造 する 方 法 を、 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 で 開 示 又<br />

は 自 明 にすることができない 場 合 、その 化 合 物 自 体 は 公 衆 の 手 にあると 法 的 に 結 論 してはな<br />

らない。このような 状 況 において 我 々は、クレームの 化 合 物 を 製 造 する 既 知 若 しくは 自 明 の<br />

方 法 が 無 いことは、それらの 構 造 と 先 行 技 術 の 化 合 物 の 構 造 との 密 接 な 関 係 に 基 づき、その<br />

化 合 物 が 自 明 であるとする 推 定 を 克 服 すると 判 断 する。In re Hoeksema, 399 F.2d 269, 274-75,<br />

158 USPQ 597, 601 (CCPA 1968)。<br />

先 行 技 術 が、 先 行 技 術 において 周 知 の 化 合 物 と 構 造 的 に 同 等 である 新 規 の 化 合 物 を 作 成 する<br />

方 法 を 示 唆 している 状 況 についての 一 般 的 検 討 については、In re Payne, 606 F.2d 303, 203<br />

USPQ 245 (CCPA 1979)を 参 照 のこと。「 事 例 の 特 定 事 実 、 方 法 論 を 適 用 する 方 法 及 び 状 況 、<br />

及 び 拒 絶 の 全 体 的 論 理 に 応 じて、 特 許 法 第 103 条 に 基 づき 製 品 クレームを 拒 絶 する 際 の 方 法<br />

論 」を 適 用 することが 適 切 であることがある。Ex parte Goldgaber, 41 USPQ2d 1172, 1176 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1996)。<br />

V. 構 造 的 同 等 性 に 基 づく 自 明 の 推 定 は、 同 等 の 特 性 の 合 理 的 期 待 が 存 在 しない 場 合 に 克 服<br />

される<br />

構 造 的 に 同 等 の 化 合 物 を 開 示 する 引 例 に 基 づく 自 明 性 の 推 定 は、 構 造 的 に 同 等 の 化 合 物 にお<br />

いて 同 等 の 特 性 について 合 理 的 期 待 が 存 在 しないことを 立 証 する 証 拠 が 存 在 する 場 合 に 克 服<br />

される。In re May, 574 F.2d 1082, 197 USPQ 601 (CCPA 1978)( 請 求 人 は、 該 当 する 技 術 分<br />

野 において 予 測 不 可 能 性 の 実 質 的 な 程 度 を 立 証 するに 十 分 な 証 拠 を 提 出 し、それによって 構<br />

造 的 に 同 等 の 化 合 物 が 同 等 の 特 性 を 有 するとする 推 定 に 反 論 した);In re Schechter, 205<br />

F.2d 185, 98 USPQ 144 (CCPA 1953)。 次 も 参 照 のこと。Ex parte Blattner, 2 USPQ2d 2047<br />

(Bd. Pat. App. & Inter. 1987)(7 員 環 を 有 する 化 合 物 に 向 けられたクレームは、クレーム<br />

の 化 合 物 の 5 及 び 6 員 環 の 同 族 体 を 教 示 する 引 例 に 基 づいて 一 応 の 自 明 性 があるとして 拒 絶<br />

された。7 員 環 を 含 むクレームの 化 合 物 に 同 等 の 成 果 を 期 待 することによって 一 応 の 証 明 が<br />

あるとする 審 査 官 の 主 張 を、 審 判 部 は 切 り 崩 し、 先 行 技 術 は、5 員 環 を 有 する 化 合 物 は 6 員<br />

環 を 有 する 化 合 物 の 反 対 の 有 用 性 を 有 することを 教 示 していることを 理 由 にその 拒 絶 を 取 り<br />

消 した。)<br />

VI. 先 行 技 術 の 化 合 物 が 有 用 性 を 有 しない 又 は 中 間 物 としてのみ 有 効 性 を 有 する 場 合 、クレ<br />

ームの 構 造 的 に 同 等 な 化 合 物 は 先 行 技 術 に 基 づいて 一 応 の 自 明 性 があるとは 限 らない<br />

先 行 技 術 が 開 示 された 化 合 物 について 何 らの 具 体 的 又 は 重 要 な 有 用 性 を 教 示 していない 場 合 、<br />

当 業 者 が 引 例 の 化 合 物 又 は 構 造 的 な 関 連 化 合 物 を 作 る 何 らの 理 由 もなく、その 先 行 技 術 が 構<br />

造 的 に 同 等 のクレームを 一 応 の 自 明 性 があるとすることはありそうにない。In re Stemniski,<br />

444 F.2d 581, 170 USPQ 343 (CCPA 1971)。<br />

次 も 参 照 のこと。In re Albrecht, 514 F.2d 1389, 1396, 185 USPQ 585, 590 (CCPA 1975)( 先<br />

行 技 術 の 引 例 はさまざまな 化 合 物 の 局 所 麻 酔 薬 の 活 性 を 研 究 し、クレームの 化 合 物 に 構 造 的<br />

に 同 等 の 化 合 物 はヒトの 皮 膚 を 刺 激 すること、 従 って「 有 用 な 麻 酔 薬 と 見 なすことができな<br />

い」ことを 教 示 した。514 F.2dat 1393、185 USPQat 587)。<br />

216


同 様 に、 先 行 技 術 が 単 に 最 終 製 品 生 産 の 中 間 物 としての 化 合 物 を 開 示 しているだけの 場 合 、<br />

当 業 者 は 通 常 、 引 例 の 合 成 を 停 止 して、 異 なる 用 途 を 有 するクレームの 化 合 物 に 到 達 すると<br />

いう 期 待 を 持 ってその 中 間 化 合 物 を 調 べようとはしない。In re Lalu, 747 F.2d 703, 223 USPQ<br />

1257 (Fed. Cir. 1984)。<br />

VII. 優 れた 又 は 予 想 外 の 結 果 の 証 拠 によって 反 論 できる 一 応 の 証 明<br />

構 造 的 同 等 性 に 基 づく 自 明 性 の 一 応 の 証 明 は、クレームの 化 合 物 が 予 想 外 に 優 位 な 若 しくは<br />

優 れた 特 性 を 有 することの 証 拠 によって 反 論 することができる。In re Papesch, 315 F.2d 381,<br />

137 USPQ 43 (CCPA 1963)(クレームのトリエチレート 化 した 化 合 物 が 不 燃 性 活 性 を 有 す 一 方<br />

で、 先 行 技 術 のトリエチレート 化 した 化 合 物 は 有 しないことを 示 した 宣 誓 供 述 書 の 証 拠 は、<br />

その 先 行 技 術 とクレームの 化 合 物 との 同 族 体 関 係 に 基 づく 自 明 性 による 拒 絶 を 克 服 するには<br />

十 分 ではなかった。);In re Wiechert, 370 F.2d 927, 152 USPQ 247 (CCPA 1967)( 先 行 技<br />

術 に 対 して 7 倍 の 活 性 の 改 善 がされていることは、 構 造 的 同 等 性 に 基 づく 一 応 の 自 明 性 を 退<br />

けるのに 十 分 であると 判 示 された。)<br />

しかし、クレームの 化 合 物 は、 特 許 権 者 によって 主 張 されるクレームの 化 合 物 の 特 定 の 利 点<br />

が 明 示 的 に 先 行 技 術 において 開 示 されていないにもかかわらず、 先 行 技 術 の 化 合 物 によって、<br />

若 しくは 構 造 的 に 同 等 であることによって 示 唆 されるために 自 明 であるかもしれない。それ<br />

は、 非 自 明 性 を 決 定 するそれぞれの 特 性 における 事 実 の 違 いにある。 先 行 技 術 の 化 合 物 が 実<br />

際 に 特 定 の 利 点 を 有 している 場 合 、その 利 点 が 先 行 技 術 において 認 識 されていないとは 言 い<br />

ながら 出 願 人 のその 利 点 の 認 識 それ 自 体 はクレームの 化 合 物 を 先 行 技 術 と 区 別 するには 十 分<br />

ではない。In re Dillon, 919 F.2d 688, 16 USPQ2d 1897 (Fed. Cir. 1991)。<br />

予 想 外 の 優 位 な 又 は 優 れた 結 果 を 主 張 する 証 拠 に 関 する 考 察 については MPEP 第 716.02 条 乃<br />

至 第 716.02 条 (g)を 参 照 のこと。<br />

217


2145 出 願 人 の 反 論 理 由 の 検 討<br />

自 明 性 の 一 応 の 証 明 がされると、その 一 応 の 証 明 に 反 証 するための 主 張 及 び/ 又 は 証 拠 を 提<br />

出 する 責 任 は 出 願 人 に 転 換 する。 参 照 事 例 として、In re Dillon, 919 F.2d 688, 692, 16 USPQ2d<br />

1897, 1901 (Fed. Cir. 1990)。 反 論 の 証 拠 及 び 主 張 は、 明 細 書 中 に 示 すことができるし、In<br />

re Soni, 54 F.3d 746, 750, 34 USPQ2d 1684, 1687 (Fed. Cir. 1995)、 弁 護 士 により 主 張<br />

することもできるし、In re Chu, 66 F.3d 292, 299, 36 USPQ2d 1089, 1094-95 (Fed. Cir.<br />

1995) 又 は、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 による 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 により 示 すこともできる。<br />

例 えば、Soni, 54 F.3dat 750、34 USPQ2dat 1687;In re Piasecki, 745 F.2d 1468, 1474,<br />

223 USPQ 785, 789-90 (Fed. Cir. 1984)。しかし、 弁 護 士 の 主 張 は 事 実 により 裏 付 けられた<br />

客 観 的 証 拠 の 代 わりとなることはできない。 参 照 事 例 として、In re Huang, 100 F.3d 135,<br />

139-40, 40 USPQ2d 1685, 1689 (Fed. Cir. 1996);In re De Blauwe, 736 F.2d 699, 705, 222<br />

USPQ 191, 196 (Fed. Cir. 1984)。<br />

本 庁 審 査 官 はすべての 反 論 理 由 及 び 出 願 人 により 提 示 された 証 拠 を 検 討 しなくてはならない。<br />

参 照 事 例 として、Soni, 54 F.3dat 750、34 USPQ2dat 1687( 明 細 書 に 提 示 された 証 拠 を 検 討<br />

しない 誤 謬 )。C.f., In re Alton, 76 F.3d 1168, 37 USPQ2d 1578 (Fed. Cir. 1996)( 特 許<br />

法 第 112 条 の 拒 絶 に 反 論 するため 提 出 された 事 実 に 基 づく 証 拠 を 検 討 しない 誤 謬 );In re<br />

Beattie, 974 F.2d 1309, 1313, 24 USPQ2d 1040, 1042-43 (Fed. Cir. 1992)( 本 庁 審 査 官 は<br />

クレームの 発 明 をたたえる、また、 当 該 技 術 が 当 該 発 明 から 外 れたところを 教 示 するとの 考<br />

えを 述 べる 当 業 者 の 陳 述 を 検 討 しなくてはならない。);Piasecki, 745 F.2dat 1472、223<br />

USPQat 788(「[ 反 論 の 証 拠 ]はいわゆる 副 次 的 考 察 事 項 を 含 む Graham 要 因 の 何 れかに 関 連 す<br />

るかもしれない。」)<br />

反 論 の 証 拠 は、「 商 業 的 な 成 功 、 長 らく 待 たれる 未 解 決 の 要 望 [ 又 は] 他 人 の 失 敗 」などの「 副<br />

次 的 考 察 事 項 」の 証 拠 を 含 むことができる。Graham v. John Deere Co., 383 U.S.at 17、148<br />

USPQat 467。 次 も 参 照 のこと。In re Piasecki, 745 F.2d 1468, 1473, 223 USPQ 785, 788 (Fed.<br />

Cir. 1984)( 商 業 的 な 成 功 )。 反 論 の 証 拠 はまた、クレームの 発 明 が 予 想 外 の 改 善 された 特 性<br />

又 は 先 行 技 術 に 見 られない 特 性 を 生 み 出 すという 証 拠 を 含 むこともできる。 反 論 の 証 拠 はク<br />

レームの 化 合 物 が 予 想 外 の 特 性 を 有 することの 立 証 で 構 成 されるかもしれない。Dillon, 919<br />

F.2dat 692-93、16 USPQ2dat 1901。 予 想 外 の 結 果 の 立 証 は 主 張 若 しくは 推 論 ではなく 証 拠 に<br />

基 づいていなければならない。In re Mayne, 104 F.3d 1339, 1343-44, 41 USPQ2d 1451, 1455-56<br />

(Fed. Cir. 1997)(クレームの 化 合 物 は 非 常 に 低 い 免 疫 反 応 若 しくは 比 較 データによって 裏 付<br />

けられない 予 想 外 の 生 物 活 性 を 有 するとする 推 論 による 陳 述 は、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 を 克 服<br />

するには 不 十 分 であると 判 示 された。) 反 論 の 証 拠 はクレームの 発 明 が 他 人 によりコピーされ<br />

たとする 証 拠 を 含 むこともできる。 参 照 事 例 として、In re GPAC, 57 F.3d 1573, 1580, 35<br />

USPQ2d 1116, 1121 (Fed. Cir. 1995);Hybritech Inc. v. Monoclonal Antibodies, 802 F.2d<br />

1367, 1380, 231 USPQ 81, 90 (Fed. Cir. 1986)。また、 当 該 技 術 水 準 の 証 拠 、 当 該 技 術 分<br />

野 のレベル 及 び 当 業 者 の 確 信 を 含 むこともできる。 参 照 事 例 として、In re Oelrich, 579 F.2d<br />

86, 91-92, 198 USPQ 210, 214 (CCPA 1978)( 当 該 技 術 分 野 のレベルに 関 する 専 門 家 の 意 見 は<br />

クレームの 発 明 の 非 自 明 性 の 証 拠 となった);Piasecki, 745 F.2dat 1471、1473-74、223 USPQat<br />

790( 非 技 術 的 性 質 の 証 拠 は 自 明 性 の 結 論 に 関 係 する。その 発 明 の 必 要 性 と 当 該 技 術 分 野 によ<br />

る 受 容 に 関 する 当 業 者 の 陳 述 を、 審 判 部 が 軽 視 したことは 不 適 切 であった。);Beattie, 974<br />

F.2dat 1313、24 USPQ2dat 1042-43( 当 該 技 術 はクレームの 発 明 から 外 れたところを 教 示 する<br />

218


との 考 えを 述 べる 音 楽 教 師 によって 提 出 された 7 通 の 宣 誓 書 は 事 実 を 記 載 しておらず、また<br />

当 該 拒 絶 の 対 象 である 具 体 的 先 行 技 術 を 取 り 扱 っていなかったので、 検 討 されねばならなか<br />

ったが 証 拠 とならなかった。) 例 えば、 反 論 の 証 拠 は、 先 行 技 術 が 当 該 化 合 物 を 作 成 する 方 法<br />

を 開 示 できず、 又 は 自 明 なものにできないことを 示 すような、 当 該 化 合 物 の 自 明 性 の 結 論 を<br />

不 可 能 にする 証 明 を 含 むことができる。 自 明 性 の 結 論 は、 依 拠 される 引 例 により、 公 衆 がク<br />

レームの 発 明 を 所 有 できることを 必 要 とする。In re Hoeksema, 399 F.2d 269, 274, 158 USPQ<br />

596, 601 (CCPA 1968)において 裁 判 所 は 次 のように 述 べている。<br />

「 従 って、 慎 重 に 再 審 理 を 行 った 結 果 、 我 々の 見 解 は、 記 録 の 先 行 技 術 がクレームの 化 合 物<br />

を 製 造 する 方 法 を 当 該 発 明 が 行 われた 時 点 で 開 示 又 は 自 明 にすることができない 場 合 、その<br />

化 合 物 自 体 は 公 衆 の 手 にあると 法 的 に 結 論 してはならないとする。[ 脚 注 略 ]このような 状 況<br />

において 我 々は、クレームの 化 合 物 を 製 造 する 既 知 若 しくは 自 明 の 方 法 が 無 いことは、それ<br />

らの 構 造 と 先 行 技 術 の 化 合 物 の 構 造 との 密 接 な 関 係 に 基 づき、その 化 合 物 が 自 明 であるとす<br />

る 推 定 を 克 服 すると 判 断 する。」<br />

さらに Hoeksema 判 決 は、 引 例 を 介 し 特 許 商 標 庁 により 一 旦 、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 があるとさ<br />

れると、 依 拠 される 引 例 が 当 業 者 にクレームと 異 なる 化 合 物 を 生 産 する 可 能 性 を 与 えないこ<br />

とを 立 証 する 反 対 証 拠 を 提 示 する 責 任 は 出 願 人 にあると 指 摘 した。Id. at 274-75、158 USPQat<br />

601。 次 も 参 照 のこと。Ashland Oil, Inc. v. Delta Resins & Refractories, Inc., 776 F.2d<br />

281, 295, 297, 227 USPQ 657, 666, 667 (Fed. Cir. 1985)( 上 記 意 見 については Hoeksema<br />

事 例 を 引 用 );In re Grose, 592 F.2d 1161, 1168, 201 USPQ 57, 63-64 (CCPA 1979)( 隣 接<br />

同 族 体 のような 化 合 物 の 間 の 構 造 的 関 係 に 基 づく 一 応 の 自 明 性 に 内 在 する 想 定 の 1 つが、 一<br />

方 の 生 産 のために 開 示 された 方 法 は 他 方 を 生 産 するための 方 法 を 当 業 者 に 提 供 するというこ<br />

とである。 先 行 技 術 が、 化 合 物 にしろゼオライトのような 化 合 物 の 混 合 物 にしろ、 組 成 物 を<br />

製 造 する 方 法 を 開 示 若 しくは 自 明 とすることができない 場 合 、 当 該 組 成 物 は 自 明 であったで<br />

あろうとする 結 論 は 排 除 される。<br />

反 論 の 証 拠 及 び 主 張 の 検 討 は、 本 庁 審 査 官 に 差 し 出 された 証 拠 及 び 主 張 を 慎 重 に 考 慮 するこ<br />

とを 要 求 する。 本 庁 審 査 官 はまれな 状 況 の 場 合 を 除 いて 証 拠 に 重 きを 置 かないことを 回 避 し<br />

なくてはならない。 同 文 献 。 次 も 参 照 のこと。In re Alton, 76 F.3d 1168, 1174-75, 37 USPQ2d<br />

1578, 1582-83 (Fed. Cir. 1996)。しかし、 実 質 的 に 重 きを 置 いてもらうためには、 出 願 人<br />

は 反 論 の 証 拠 とクレームの 発 明 との 間 の 結 び 付 きを 立 証 しなくてはならない。すなわち、 非<br />

自 明 性 の 客 観 的 証 拠 はクレームの 発 明 に 結 びつけられていなければならない。 連 邦 巡 回 区 裁<br />

判 所 は, 出 願 人 が 関 連 性 を 立 証 する 責 任 を 負 う 旨 を 確 認 し, 次 のように 述 べている。<br />

「 特 許 出 願 審 査 の 査 定 系 手 続 きにおいて, 特 許 商 標 庁 は 販 売 が 商 業 的 成 功 を 成 すとする 出 願<br />

人 の 主 張 を 裏 付 ける 又 は 反 証 する 証 拠 を 収 集 するための 手 段 又 は 情 報 源 が 欠 けている。C.f.<br />

Ex parte Remark, 15 USPQ2d 1498, 1503 ([BPAI] 1990)( 民 事 訴 訟 手 続 きの 立 証 責 任 転 換 の<br />

慣 例 は, 審 査 官 は 証 拠 を 提 示 できる 手 段 を 有 していないため 査 定 系 手 続 きにおいては 不 適 切<br />

である。)そこで, 特 許 商 標 庁 は 商 業 的 な 成 功 の 確 実 な 証 拠 の 提 出 を 出 願 人 に 頼 らなければな<br />

らない。」<br />

In re Huang, 100 F.3d 135, 139-40, 40 USPQ2d 1685, 1689 (Fed. Cir. 1996)。 次 も 参 照<br />

のこと。GPAC, 57 F.3dat 1580、35 USPQ2dat 1121;In re Paulsen, 30 F.3d 1475, 1482, 31<br />

USPQ2d 1671, 1676 (Fed. Cir. 1994)( 特 許 法 第 103 条 による 拒 絶 の 対 象 となるクレームがカ<br />

バーしない 物 品 の 商 業 的 な 成 功 の 証 拠 は, 非 自 明 性 の 証 拠 とならなかった。) 加 えて、その 証<br />

219


拠 は 合 理 的 にそのクレームの 発 明 にふさわしい 範 囲 になければならない。 参 照 事 例 として、<br />

In re Kulling, 897 F.2d 1147, 1149, 14 USPQ2d 1056, 1058 (Fed. Cir. 1990);In re Grasselli,<br />

713 F.2d 731, 743, 218 USPQ 769, 777 (Fed. Cir. 1983)。In re Soni, 54 F.3d 746, 34 USPQ2d<br />

1684 (Fed. Cir. 1995)はこの 分 析 を 変 更 しなかった。 Soni 事 件 において 裁 判 所 は、 非 自 明<br />

性 の 証 拠 はクレームに 相 応 する 範 囲 にないとする 特 許 庁 の 主 張 の 検 討 を、 審 査 官 により 提 示<br />

されていないことを 理 由 に 拒 絶 した(54 F.3d at 751, 34 USPQ2d at 1688)。<br />

差 し 出 された 証 拠 がクレームの 発 明 に 相 応 する 範 囲 にあるかどうかを 検 討 する 場 合 、 本 庁 審<br />

査 官 は 化 合 物 若 しくは 組 成 物 が 保 持 する 特 性 の 全 領 域 について 予 想 外 の 結 果 を 証 明 するよう<br />

出 願 人 に 求 めてはならない。 参 照 事 例 として、In re Chupp, 816 F.2d 643, 646, 2 USPQ2d 1437,<br />

1439 (Fed. Cir. 1987)。 化 合 物 若 しくは 組 成 物 が 一 連 の 周 知 の 特 性 の 1 つに 優 れて 不 測 の 特<br />

性 を 有 するとする 証 拠 は、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 への 反 論 に 十 分 なものとなり 得 る。 同 文 献 。<br />

例 えば、クレームの 亜 属 の 一 つの 選 択 肢 又 はクレームの 領 域 の 狭 い 部 分 に 関 する 予 想 外 の 結<br />

果 を 証 明 することは、 当 業 者 が「その 証 明 力 を 合 理 的 に 拡 大 することができるであろう 実 証<br />

されたデータの 傾 向 を 確 認 することができる」 場 合 、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 の 反 論 に 十 分 なも<br />

のとなるであろう。In re Clemens, 622 F.2d 1029, 1036, 206 USPQ 289, 296 (CCPA 1980)( 幅<br />

広 い 領 域 の 非 自 明 性 の 証 拠 は 当 業 者 がその 証 明 力 を 合 理 的 に 拡 大 することができるであろう<br />

傾 向 を 確 認 することができる 場 合 、より 狭 い 領 域 により 証 明 されることができる。)しかし、<br />

次 を 参 照 のこと。Grasselli, 713 F.2dat 743、218 USPQat 778( 触 媒 技 術 分 野 で 異 なるアル<br />

カリ 金 属 に 互 換 性 のないことが 周 知 されており、 出 願 人 がナトリウム 含 有 材 料 に 限 って 予 想<br />

外 の 結 果 を 証 明 していた 場 合 、ナトリウム 含 有 組 成 物 の 優 れた 特 性 の 証 拠 は、「アルカリ 金<br />

属 」を 含 む 触 媒 に 対 する 広 い 特 許 請 求 の 範 囲 の 非 自 明 性 を 立 証 するには 不 十 分 である。);In<br />

re Greenfield, 571 F.2d 1185, 1189, 197 USPQ 227, 230 (CCPA 1978)(1 種 における 優 れ<br />

た 特 性 の 証 拠 は、 多 くの 化 合 物 を 含 む 亜 属 の 非 自 明 性 を 立 証 するには 不 十 分 である。);In re<br />

Lindner,457 F.2d 506, 508, 173 USPQ 356, 358 (CCPA 1972)( 一 つのテストでは、 他 のクレ<br />

ームの 化 合 物 が 同 一 の 方 法 で 振 る 舞 うと 結 論 付 ける 十 分 な 根 拠 がなく 十 分 ではない。)。しか<br />

し、 代 表 的 な 証 明 は 熟 練 当 事 者 が 見 ればその 証 明 とクレームの 全 範 囲 との 合 理 的 相 関 を 立 証<br />

するのに 十 分 であるかもしれない。 参 照 事 例 として、Chupp, 816 F.2dat 646, 2 USPQ2dat<br />

1439;Clemens, 622 F.2d at 1036、206 USPQat 296。その 一 方 で、 予 想 外 の 特 性 の 証 拠 は 証<br />

明 の 範 囲 にかかわらず 十 分 でないかもしれない。 一 般 的 に 予 想 外 の 結 果 の 証 明 は 自 明 性 の 一<br />

応 の 証 明 を 克 服 するのに 十 分 である。 参 照 事 例 として、In re Albrecht, 514 F.2d 1389, 1396,<br />

185 USPQ 585, 590 (CCPA 1975)しかし、クレームが 特 定 の 使 用 に 限 定 されていない 場 合 で 先<br />

行 技 術 が 特 定 の 種 又 は 亜 属 を 選 択 する 他 の 動 機 を 与 えている 場 合 、 新 たな 使 用 の 証 明 は 特 許<br />

性 を 与 えるのに 十 分 でないかもしれない。Dillon, 919 F.2dat 692、16 USPQ2dat 1900-01<br />

を 参 照 のこと。 従 って、 事 例 ごとに 状 況 の 全 体 性 に 基 づき 個 別 に 評 価 しなくてはならない。<br />

副 次 的 考 察 事 項 に 関 する 証 拠 は、 提 示 されるときはいつでも 考 慮 しなければならない。しか<br />

し、 自 明 性 の 結 論 を 必 ずしも 止 めるとは 限 らない 参 照 事 例 として、Pfizer, Inc. v. Apotex,<br />

Inc., 480 F.3d 1348, 1372, 82 USPQ2d 1321, 1339 (Fed. Cir. 2007)(「 当 該 記 録 は 自 明 性<br />

を 強 力 に 確 立 していたので、」 予 想 外 の 優 れた 結 果 を 主 張 しても、 最 終 的 に 自 明 性 の 結 論 を<br />

克 服 するのに 不 十 分 であるとされた。「);Leapfrog Enterprises Inc. v. Fisher-Price Inc.,<br />

485 F.3d 1157, 1162, 82 USPQ2d 1687, 1692 (Fed. Cir. 2007)( 一 応 の 自 明 性 の 証 明 の 程 度<br />

を 考 慮 すると、 副 次 的 考 察 事 項 の 証 拠 は 自 明 性 の 最 終 結 論 を 克 服 するには 不 十 分 であった);<br />

220


及 び、Newell Cos., Inc. v. Kenney Mfg. Co., 864 F.2d 757, 768, 9 USPQ2d 1417, 1426 (Fed.<br />

Cir. 1988)。 本 庁 審 査 官 は 一 応 の 証 明 に 対 する「ノックダウン」 値 としての 反 論 証 拠 を 評 価<br />

すべきではなく、Piasecki, 745 F.2d at 1473, 223 USPQ at 788、また、 説 得 力 がない 若 し<br />

くは 不 十 分 であるとしてそれを 即 座 に 退 けてはならない。 当 該 証 拠 が 自 明 性 の 一 応 の 証 明 に<br />

反 論 するには 不 十 分 と 考 える 場 合 、 本 庁 審 査 官 はこの 結 論 を 正 当 化 する 事 実 及 び 論 拠 を 具 体<br />

的 に 説 明 しなくてはならない。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 に 基 づき 提 出 された 反 論 証 拠 の 評<br />

価 に 関 する 詳 細 については、MPEP 第 716 条 乃 至 第 716.10 条 を 参 照 のこと。<br />

I. 証 拠 が 必 要 な 場 合 に、 反 論 は 証 拠 に 代 えられない<br />

代 理 人 の 反 論 は 証 拠 とはならない。ただし、それが 自 認 であって、その 場 合 に 審 査 官 が 拒 絶<br />

を 行 う 際 にその 自 認 を 使 用 できる 場 合 を 除 く。 先 行 技 術 としての 自 認 に 関 する 考 察 について<br />

は MPEP 第 2129 条 及 び 第 2144.03 条 を 参 照 のこと。<br />

弁 護 士 による 意 見 書 は, 記 録 証 拠 に 代 わるものとならない。In re Schulze, 346 F.2d 600,<br />

602, 145 USPQ 716, 718 (CCPA 1965);In re Geisler, 116 F.3d 1465, 43 USPQ2d 1362 (Fed.<br />

Cir. 1997)(「 共 通 の 体 験 から 得 られるとみられるものについての 主 張 は、 単 なる 代 理 人 の 意<br />

見 であって、 自 明 性 の 一 応 の 証 明 の 反 論 に 必 要 な 事 実 に 基 づく 証 拠 のようなものではな<br />

い。」) 証 拠 とならず、 適 切 な 宣 誓 供 述 書 又 は 宣 言 書 によって 裏 付 けられねばならない 代 理 人<br />

の 陳 述 の 例 については MPEP 第 716.01 条 (c)を 参 照 のこと。<br />

II. 付 加 的 利 点 又 は 潜 在 的 特 性 の 主 張<br />

一 応 の 自 明 性 は 単 に 付 加 的 利 点 又 は 潜 在 的 特 性 の 先 行 技 術 での 存 在 を 認 定 することでは 反 論<br />

されない<br />

潜 在 的 特 性 を 先 行 技 術 に 認 定 したというだけで、それ 以 外 には 周 知 である 発 明 は 非 自 明 とは<br />

ならない In re Wiseman, 596 F.2d 1019, 201 USPQ 658 (CCPA 1979)(クレームは、 溝 がブ<br />

レーキ 動 作 時 にスチーム 又 はベーパーを 放 出 するために 用 意 されたカーボンディスクブレー<br />

キに 向 けられていた。 先 行 技 術 の 引 例 はブレーキ 部 材 の 表 面 の 冷 却 及 び 粉 塵 削 減 の 目 的 で 溝<br />

が 切 られたノンカーボンディスクブレーキを 教 示 していた。 裁 判 所 は、 先 行 技 術 の 引 例 は 組<br />

み 合 わせると 先 行 技 術 によって 解 決 された 粉 塵 とオーバーヒートの 問 題 を 克 服 するであろう、<br />

従 って 出 願 人 が 特 許 性 に 関 し 依 拠 する、 問 題 のスチーム 又 はベーパーの 原 因 を 克 服 するであ<br />

ろうと 判 示 した。 知 られていないが 本 質 的 な 機 能 (ここではスチーム 又 はベーパーの 放 出 )の<br />

発 見 に 関 して 特 許 を 与 えることは「 先 行 技 術 にそれが 含 まれる 若 しくは 自 明 であるとの 理 由<br />

で 公 知 に 供 されている 公 開 機 能 を 取 り 去 ることになる。」596 F.2dat 1022、201 USPQat 661。)In<br />

re Baxter Travenol Labs., 952 F.2d 388, 21 USPQ2d 1281 (Fed. Cir. 1991)( 請 求 人 は、<br />

血 液 採 集 バッグの 可 塑 剤 としての DEHP の 存 在 は、 予 想 外 に 溶 血 を 抑 えると 主 張 して 自 明 性 の<br />

一 応 の 証 明 に 反 論 したが、DEHP 可 塑 化 血 液 採 集 バッグを 使 用 する 直 近 の 先 行 技 術 では、 成 果<br />

達 成 の 事 実 が 知 られていなかったものの、 潜 在 的 に 同 一 成 果 を 達 成 していた。)<br />

出 願 人 が 先 行 技 術 の 示 唆 に 従 うことで 当 然 に 生 まれるもう 一 つの 利 点 を 認 知 したという 事 実<br />

は, 相 違 点 がそれ 以 外 は 自 明 である 場 合 、 特 許 性 の 根 拠 とすることはできない。Ex parte<br />

Obiaya, 227 USPQ 58, 60 (Bd. Pat. App. & Inter. 1985)( 先 行 技 術 は 迷 路 状 ヒーターを 用<br />

いて 見 本 を 均 一 温 度 に 保 持 する 燃 焼 流 体 分 析 器 を 教 示 していた。 請 求 人 は 迷 路 状 ヒーターを<br />

用 いると 予 想 外 に 短 い 応 答 時 間 を 得 られることを 示 していたが、 審 判 部 はこの 利 点 は 先 行 技<br />

221


術 の 示 唆 に 従 うことで 当 然 に 生 まれるものであると 判 定 した。 次 も 参 照 のこと。Lantech Inc.<br />

v. Kaufman Co. of Ohio Inc., 878 F.2d 1446, 12 USPQ2d 1076, 1077 (Fed. Cir. 1989), cert.<br />

denied, 493 U.S. 1058 (1990)( 未 公 表 ― 先 例 として 引 用 不 可 )( 先 行 技 術 が 示 唆 していること<br />

をすることに 付 随 する 付 加 的 利 点 の 記 載 は、 特 許 性 のない 発 明 に 特 許 性 を 与 えるものではな<br />

い。)<br />

MPEP 第 2144 条 において 考 察 される In re Lintner, 458 F.2d 1013, 173 USPQ 560 (CCPA 1972)<br />

及 び In re Dillon, 919 F.2d 688, 16 USPQ2d 1897 (Fed. Cir. 1990)は 本 論 点 にも 関 係 す<br />

る。<br />

予 想 外 の 結 果 を 主 張 する 宣 言 的 証 拠 に 関 する 考 察 については MPEP 第 716.02 条 乃 至 第 716.02<br />

条 (g)を 参 照 のこと。<br />

III. 先 行 技 術 の 考 案 品 は 物 理 的 に 結 合 できないとする 主 張<br />

「 自 明 性 のテストは、 第 2 の 引 例 の 特 性 が 第 1 の 引 例 の 構 造 に 有 形 的 に 具 体 化 され 得 るかど<br />

うかではない・・・。もっと 正 確 に 言 えば、テストは、それらの 引 例 から 組 み 合 わされた 教 示 が<br />

当 業 者 に 何 を 示 唆 したであろうかである。In re Keller, 642 F.2d 413, 425, 208 USPQ 871,<br />

881 (CCPA 1981)。 次 も 参 照 のこと。In reSneed, 710 F.2d 1544, 1550, 218 USPQ 385, 389<br />

(Fed. Cir. 1983)(「 引 例 の 発 明 は 必 ずしも 検 討 中 の 発 明 を 自 明 にするため 物 理 的 に 結 合 可 能<br />

である 必 要 はない。」); 及 び、In re Nievelt, 482 F.2d 965, 179 USPQ 224, 226 (CCPA 1973)(「 引<br />

例 の 教 示 を 組 み 合 わせることはそれらの 個 別 の 構 造 を 結 合 できる 能 力 を 含 むものではな<br />

い。」)<br />

しかし、クレームの 結 合 は、 第 1 の 引 例 の 動 作 原 理 を 変 えること 若 しくは 当 該 引 例 をその 意<br />

図 した 目 的 について 実 施 不 能 とすることはできない。MPEP 第 2143.01 条 を 参 照 のこと。<br />

IV. 引 例 に 対 する 個 別 の 主 張<br />

拒 絶 が 引 例 の 組 み 合 わせに 基 づいている 場 合 、 引 例 を 個 別 に 攻 撃 することにより 非 自 明 性 を<br />

証 明 することはできない。In re Keller, 642 F.2d 413, 208 USPQ 871 (CCPA 1981);In re<br />

Merck & Co., Inc., 800 F.2d 1091, 231 USPQ 375 (Fed. Cir. 1986)<br />

V. 組 み 合 わされた 引 例 の 数 についての 主 張<br />

拒 絶 において 多 数 の 引 例 への 依 存 は、それ 以 上 のものがなければ、クレームの 発 明 の 自 明 性<br />

に 不 利 にならない。In re Gorman, 933 F.2d 982, 18 USPQ2d 1885 (Fed. Cir. 1991)( 裁 判<br />

所 は 先 行 技 術 の 13 の 引 例 に 裏 付 けられた 棒 に 付 けた 親 指 状 のキャンディー 吸 い 口 に 対 する<br />

詳 細 なクレームの 拒 絶 を 追 認 した。)<br />

VI. クレームされていない 限 定 の 主 張<br />

クレームは 明 細 書 に 照 らして 解 釈 されるのであるが, 明 細 書 の 限 定 はクレームに 読 み 込 まれ<br />

ない。In re Van Geuns, 988 F.2d 1181, 26 USPQ2d 1057 (Fed. Cir. 1993)(「 均 一 の 磁 場 」<br />

を 作 る 超 電 導 磁 石 に 対 するクレームは、 核 磁 気 共 鳴 (NMR) 画 像 に 必 要 な 磁 場 均 一 性 の 程 度 に 限<br />

定 されていなかった。 明 細 書 はクレームの 磁 石 が NMR 装 置 に 使 用 され 得 ることを 開 示 しては<br />

いたがクレームはそのように 限 定 されていなかった。)Constant v. Advanced Micro-Devices,<br />

Inc., 848 F.2d 1560, 1571-72, 7 USPQ2d 1057, 1064-1065 (Fed. Cir.), cert. denied, 488<br />

222


U.S. 892 (1988)( 請 求 人 が 依 拠 するさまざまな 限 定 はクレームに 記 載 されていなかった。す<br />

なわち、その 明 細 書 はこれらの 限 定 は 争 点 となっている 言 葉 に 意 味 を 与 えるためクレームに<br />

読 み 込 まれなければならないことを 示 す 証 拠 を 提 示 しなかった。);Ex parte McCullough, 7<br />

USPQ2d 1889, 1891 (Bd. Pat. App. & Inter. 1987)(「 実 証 された 結 果 は 請 求 人 の 電 極 を 含<br />

む 電 池 の 特 許 性 に 密 接 な 関 係 があるかもしれないが、 審 判 においてクレームされる 発 明 の 特<br />

許 性 とは 密 接 な 関 係 がない」ので、 電 極 は 非 水 電 池 に 使 用 されると 予 想 とは 異 なって 機 能 す<br />

るとの 主 張 にもかかわらず、クレームの 電 極 は 自 明 であるとして 拒 絶 された。)<br />

クレーム 解 釈 に 関 する 追 加 判 例 については MPEP 第 2111 条 乃 至 第 2116.01 条 を 参 照 のこと。<br />

VII. 経 済 的 実 行 不 可 能 の 主 張<br />

組 み 合 わせが 経 済 的 な 理 由 で 実 業 家 により 行 われないという 事 実 は、 当 業 者 が 何 らかの 技 術<br />

的 不 適 合 により 組 み 合 わせを 行 わないということではない。In re Farrenkopf, 713 F.2d 714,<br />

219 USPQ 1 (Fed. Cir. 1983)。( 先 行 技 術 の 引 例 は、ラジオイムノアッセイへのインヒビタ<br />

ーの 追 加 が 最 も 好 都 合 であるが 安 定 化 に 最 も 費 用 のかかる 解 決 法 であることを 教 示 していた。<br />

裁 判 所 は、インヒビターの 追 加 によって 加 わる 費 用 は 当 業 者 にそれから 期 待 される 利 便 性 の<br />

追 求 を 思 いとどまらせるものではないと 判 示 した。)<br />

VIII. 引 例 の 時 代 についての 主 張<br />

「 引 例 の 単 なる 時 代 は、 引 例 の 知 識 にもかかわらず 当 該 技 術 がその 問 題 を 解 決 しようとして<br />

できなかった 証 拠 がない 限 り、それらの 教 示 の 組 み 合 わせの 非 自 明 性 について 説 得 力 がな<br />

い。」In re Wright, 569 F.2d 1124, 1127, 193 USPQ 332, 335 (CCPA 1977)(100 年 前 の 特<br />

許 を、 引 例 の 組 み 合 わせに 基 づいて 拒 絶 する 際 に 依 拠 することは 正 当 であるとされた。) 次 も<br />

参 照 のこと。Ex parte Meyer, 6 USPQ2d 1966 (Bd. Pat. App. & Inter. 1988)( 依 拠 される<br />

2 先 行 技 術 特 許 の 発 行 間 の 時 間 的 長 さ(1920 年 と1976 年 )は 非 自 明 性 について 説 得 力 を 有 しな<br />

かった。)<br />

IX. 先 行 技 術 は 非 類 似 であるとの 主 張<br />

類 似 技 術 に 関 する 判 例 については MPEP 第 2141.01 条 (a)を 参 照 のこと。<br />

X. 引 例 の 組 み 合 わせに 関 する 不 適 切 な 理 由 の 主 張<br />

A. 許 されない 後 知 恵<br />

出 願 人 は、 審 査 官 の 自 明 性 の 結 論 は 不 適 切 な 後 知 恵 的 推 論 に 基 づくものと 主 張 することがで<br />

きる。しかし、「 自 明 性 についての 判 断 はある 意 味 で 後 知 恵 的 推 論 に 基 づく 必 要 な 再 構 築 で<br />

あるが、クレームの 発 明 が 行 われた 時 点 の 当 業 者 レベル 内 の 知 識 のみを 考 慮 に 入 れ、 出 願 人<br />

の 開 示 からしか 得 られない 知 識 を 含 めない 限 り、このような 再 構 築 は 適 切 である。」In re<br />

McLaughlin 443 F.2d 1392, 1395, 170 USPQ 209, 212 (CCPA 1971)。また、 出 願 人 は、2 以<br />

上 の 引 例 の 組 み 合 わせはその 引 例 を 組 み 合 わせる「 明 確 な」 動 機 が 欠 落 しているので「 後 知<br />

恵 」であると 主 張 することができる。しかし、「 明 確 な 書 面 による 組 み 合 わせ 動 機 が 自 明 性<br />

の 認 定 以 前 に 先 行 技 術 の 引 例 に 記 載 されていなければならない」との 要 件 は 存 在 しない。Ruiz<br />

v. A.B. Chance Co., 357 F.3d 1270, 1276, 69 USPQ2d 1686, 1690 (Fed. Cir. 2004)を 参<br />

照 のこと。 自 明 性 の 一 応 の 証 明 に 関 する 指 針 については MPEP 第 2141 条 及 び 第 2143 条 を 参 照<br />

223


のこと。<br />

B. 当 然 の 試 行 理 由<br />

出 願 人 は、 審 査 官 は 自 明 性 による 拒 絶 の 裏 付 けとして 不 適 切 な「 当 然 の 試 行 」 理 由 を 適 用 し<br />

ようとしていると 主 張 することができる。<br />

「 当 然 の 試 行 」 理 由 は、 当 業 者 が 有 限 数 の 特 定 され 予 測 可 能 な 解 決 策 から 成 功 の 合 理 的 期 待<br />

をもって 選 択 する 場 合 、クレームは 自 明 であったであろうとする 結 論 を 裏 付 けることができ<br />

る。「 当 業 者 がみずからの 技 術 的 理 解 内 で 既 知 の 選 択 肢 を 達 成 しようとするのは 当 然 である。<br />

このことが 予 想 される 成 功 につながる 場 合 、その 製 品 は 発 明 ではなく 通 常 の 技 能 であり 常 識<br />

であると 思 われる。その 場 合 、 組 合 せが 当 然 の 試 行 であったという 事 実 が 第 103 条 に 基 づく<br />

自 明 であったことを 証 明 できるかもしれない。」KSR International Co. v. Teleflex Inc.,<br />

550 U.S. ___, ___, 82 USPQ2d 1385, 1397 (2007)。<br />

「『 当 然 の 試 行 』は 第 103 条 に 基 づく 基 準 ではないとする 勧 告 は 主 に 2 種 類 の 誤 謬 に 向 けら<br />

れてきた。ある 場 合 には、 先 行 技 術 がどのパラメータが 決 定 的 に 重 要 な 意 味 を 持 つであるか<br />

を 示 していない、 若 しくは 多 くの 可 能 な 選 択 肢 のどれが 成 功 しそうであるかを 示 していない<br />

場 合 、『 当 然 の 試 行 』とされるであろうことは、すべてのパラメータを 変 化 させる、 又 は 恐<br />

らく 良 い 結 果 が 出 るまでおびただしい 数 の 可 能 な 選 択 肢 の 1 つ 1 つを 試 行 させることになっ<br />

てしまうであろう。・・・ 別 の 場 合 には、 先 行 技 術 がクレームの 発 明 の 特 定 の 形 に 関 して、 又 は<br />

それをどのように 達 成 するかに 関 して 一 般 的 な 指 針 しか 与 えていない 場 合 、『 当 然 の 試 行 』<br />

とされるものは、 将 来 有 望 な 実 験 分 野 であると 思 われる 新 たな 技 術 若 しくは 一 般 的 方 法 を 開<br />

発 することになってしまう。」In re O’Farrell, 853 F.2d 894, 903, 7 USPQ2d 1673, 1681<br />

(Fed. Cir. 1988)( 引 用 省 略 )( 裁 判 所 は、1 つの 引 例 が 詳 細 な 実 現 手 順 、クレームの 発 明 を 生<br />

み 出 すために 先 行 技 術 を 修 正 することの 示 唆 、 及 びその 修 正 は 成 功 するであろうことを 示 唆<br />

する 証 拠 を 含 んでいたので、クレームの 方 法 は 先 行 技 術 について 自 明 であったであろうと 判<br />

示 した。)<br />

C. 引 例 を 組 み 合 わせる 示 唆 の 欠 如<br />

引 例 を 組 み 合 わせる 示 唆 又 は 動 機 は 自 明 性 を 判 断 するための 適 切 な 方 法 であるが、それはそ<br />

うすることが 有 効 なたくさんの 理 由 のうちの 1 つでしかない。KSR 事 例 における 裁 判 所 は<br />

Graham 審 理 において 築 かれた 自 明 性 の 判 断 に 適 切 な「 機 能 的 アプローチ」と 整 合 する 自 明 性<br />

の 結 論 を 裏 付 けるいくつもの 例 を 特 定 した。KSR, 550 U.S.at ___、82 USPQ2dat1395-97。MPEP<br />

第 2141 条 及 び 第 2143 条 を 参 照 のこと。<br />

D. 引 例 は 発 明 から 外 れたところを 教 示 する、 又 は 先 行 技 術 について 意 図 した 目 的 を 満 たさ<br />

ない<br />

後 述 資 料 に 加 えて MPEP 第 2141.02 条 を 参 照 のこと。( 先 行 技 術 は 当 該 クレームから 外 れたと<br />

ころを 教 示 している 開 示 を 含 めてその 全 体 を 検 討 しなくてはならない) 及 び MPEP 第 2143.01<br />

条 ( 提 案 された 修 正 は、 先 行 技 術 について 意 図 した 目 的 を 満 たす 又 は 引 例 の 作 動 原 理 を 変 える<br />

ことができない)<br />

1. 教 示 の 性 質 が 大 きく 関 連 する<br />

クレームの 発 明 から「 外 れたところを 教 示 する」 先 行 技 術 の 引 例 は 自 明 性 を 判 断 する 際 に 検<br />

討 すべき 重 要 な 要 因 ではあるが、「その 教 示 の 性 質 は 大 きく 関 連 するので 実 質 的 に 考 慮 され<br />

ねばならない。 既 知 の 又 は 自 明 の 組 成 物 は、それが 同 一 用 途 の 他 の 何 らかの 製 品 よりも 少 し<br />

劣 っていると 記 載 されていたという 理 由 だけで 特 許 を 受 けることができなくなる。」In re<br />

224


Gurley, 27 F.3d 551, 554, 31 USPQ2d 1130, 1132 (Fed. Cir. 1994)(クレームはエポキシ<br />

樹 脂 ベースのプリント 回 路 材 料 に 向 けられていた。 先 行 技 術 の 引 例 はポリエステルイミド 樹<br />

脂 ベースのプリント 回 路 材 料 を 開 示 し、エポキシ 樹 脂 ベースの 材 料 は 容 認 できる 安 定 性 とあ<br />

る 程 度 の 柔 軟 性 を 有 するがポリエステルイミド 樹 脂 ベースの 材 料 よりは 劣 ることを 教 示 した。<br />

裁 判 所 は、 引 例 はエポキシ 樹 脂 ベースの 材 料 は 出 願 人 の 目 的 に 有 用 であることを 教 示 してい<br />

ること、 出 願 人 はクレームのエポキシを 先 行 技 術 のエポキシと 区 別 していないこと、 及 び 出<br />

願 人 は 当 該 技 術 分 野 に 知 られているものを 超 える 何 の 発 見 も 主 張 していないことを 理 由 に、<br />

そのクレームは 先 行 技 術 について 自 明 であったであろうと 判 示 した。)<br />

さらに、「2 つ 以 上 の 代 替 例 についての 先 行 技 術 の 単 なる 開 示 は、これらの 代 替 例 のいずれ<br />

からも 外 れたところの 教 示 を 構 成 してない。なぜなら、そのような 開 示 はクレームされた 解<br />

決 策 を 批 判 することも、 信 用 できないものとすることも、そうでないにしても 不 賛 成 の 意 を<br />

表 明 するということをしていない・・・。」In re Fulton, 391 F.3d 1195, 1201, 73 USPQ2d 1141,<br />

1146 (Fed. Cir. 2004)。<br />

2. 引 例 は、 引 例 の 組 み 合 わせから 外 れたところを 教 示 している 場 合 は 組 み 合 わせることが<br />

できない<br />

引 例 がそれらの 組 み 合 わせから 外 れたところを 教 示 している 場 合 、 組 み 合 わせることは 不 適<br />

切 である。In re Grasselli, 713 F.2d 731, 743, 218 USPQ 769, 779 (Fed. Cir. 1983)( 鉄<br />

もアルカリ 金 属 も 含 むクレームの 触 媒 は、 触 媒 からアンチモンを 明 示 的 に 排 除 している、 及<br />

び 触 媒 に 鉄 を 加 えている、 引 例 と 組 み 合 わされる、アンチモンと 同 一 の 有 益 な 結 果 を 有 する<br />

アルカリ 金 属 の 互 換 性 を 教 示 する 引 例 の 組 み 合 わせによって 示 唆 されていなかった。)<br />

3. 一 般 常 識 に 反 する 手 続 きは 非 自 明 性 の 証 拠 である<br />

先 行 技 術 全 体 が 検 討 されねばならず、 当 該 技 術 分 野 の 一 般 常 識 に 反 する 手 続 きは 非 自 明 性 の<br />

証 拠 である。In re Hedges, 783 F.2d 1038, 228 USPQ 685 (Fed. Cir. 1986)( 出 願 人 の 127℃<br />

超 温 度 のジフェニルスルホンのスフホン 化 に 関 するクレームのプロセスは、 先 行 技 術 は 全 体<br />

としてチャーリング、 分 解 又 は 高 温 時 の 収 率 減 少 からも 明 らかなように 最 善 の 結 果 を 求 める<br />

には 低 温 を 用 いることを 示 唆 していたので、 一 般 常 識 に 反 していた。)<br />

さらに「 新 たな 発 明 への 探 求 を 当 然 に 思 いとどまらせるであろう 既 知 の 装 置 に 知 られている<br />

デメリットは、 自 明 性 を 判 断 する 際 に 考 慮 することができる。United States v. Adams, 383<br />

U.S. 39, 52, 148 USPQ 479, 484 (1966)。<br />

XI. 様 式 文 例<br />

出 願 人 の 主 張 に 説 得 力 がない 又 は 疑 わしい 場 合 に 使 用 することができる 様 式 文 例 7.37 乃 至<br />

7.38 については MPEP 第 707.07 条 (f)を 参 照 のこと。<br />

225


2146 特 許 法 第 103 条 (c)<br />

特 許 法 第 103 条 特 許 性 要 件 ; 非 自 明 の 保 護 対 象<br />

(c)(1) 他 人 によって 開 発 された 保 護 対 象 であって、 本 章 の 第 102 条 (e)、(f) 及 び(g)の 1 以<br />

上 に 基 づいてのみ 先 行 技 術 としての 資 格 を 有 するものは、その 保 護 対 象 及 びクレームの 発 明<br />

が、そのクレームの 発 明 が 行 われた 時 点 において 同 一 人 によって 所 有 されていた、 又 は 同 一<br />

人 への 譲 渡 義 務 が 課 せられていた 場 合 、 本 条 に 基 づく 特 許 性 を 排 除 しないものとする。<br />

(2) 本 項 の 適 用 上 、 次 の 各 号 に 該 当 する 場 合 は、 他 人 によって 開 発 された 保 護 対 象 及 びクレー<br />

ムの 発 明 は 同 一 人 によって 所 有 されている、 若 しくは 同 一 人 への 譲 渡 義 務 が 課 せられている<br />

ものとみなす。<br />

(A) クレームの 発 明 はそのクレームの 発 明 が 行 われた 日 以 前 に 有 効 であった 共 同 研 究 契 約 の<br />

当 事 者 により、 又 はその 当 事 者 のために 行 われた。<br />

(B) クレームの 発 明 は 共 同 研 究 契 約 の 範 囲 内 で 行 われた 活 動 の 結 果 として 行 われた。 及 び、<br />

(C) クレームの 発 明 の 特 許 出 願 は 共 同 研 究 契 約 の 当 事 者 名 を 開 示 している、 若 しくは 開 示 す<br />

るよう 補 正 されている。<br />

(3) 第 (2) 段 落 の 適 用 上 、「 共 同 研 究 契 約 」という 用 語 は、クレームの 発 明 の 分 野 における 実<br />

験 、 開 発 又 は 研 究 上 の 活 動 遂 行 を 目 的 として 2 以 上 の 人 又 は 事 業 体 によって 締 結 された 書 面<br />

による 契 約 、 許 諾 又 は 協 力 の 合 意 をいう。<br />

1999 年 11 月 29 日 からの 施 行 として、 旧 特 許 法 第 103 条 に 基 づいて 先 行 技 術 であった 保 護 対<br />

象 は、 特 許 法 第 102 条 (e)を 経 由 して、クレームされた 発 明 に 対 する 先 行 技 術 としての 資 格 を<br />

失 ったが、ただし、その 保 護 対 象 及 びクレームされた 発 明 が、「その 発 明 がされたときに、<br />

同 一 人 によって 所 有 されていた、 又 は 同 一 人 に 対 する 譲 渡 義 務 の 適 用 対 象 であったこと」が<br />

条 件 とされている。 特 許 法 第 103 条 (c)に 関 する 本 改 正 は、1999 年 のアメリカ 発 明 者 保 護 法<br />

(AIPA) 第 4807 条 に 従 って 行 われた。Pub. L. 106-113, 113 Stat. 1501, 1501A-591 (1999)<br />

を 参 照 のこと。 知 的 財 産 権 及 び 先 端 テクノロジー 技 術 改 良 法 (Pub. L. 107-273, 116 Stat.<br />

1758 (2002))における 特 許 法 第 102 条 (e)の 変 更 は 1999 年 11 月 29 日 に 変 更 された 特 許 法 第<br />

103 条 (c)による 適 用 除 外 に 影 響 を 及 ぼさなかった。 次 の 2004 年 共 同 研 究 及 び 技 術 強 化 法<br />

(CREATE 法 、 以 下 、「CREATE 法 」と 表 記 する)(Pub. L. 108-453, 118 Stat. 3596 (2004))<br />

は 特 許 法 第 103 条 (c)をさらに 修 正 し、 自 明 性 決 定 の 目 的 上 次 の 3 条 件 が 満 たされている 場 合<br />

は、 他 人 によって 開 発 された 保 護 対 象 は 同 一 人 によって 所 有 されるとして、 又 は 同 一 人 への<br />

譲 渡 義 務 を 条 件 として 取 り 扱 われるものとすると 定 めた。<br />

(A) クレームの 発 明 はそのクレームの 発 明 が 行 われた 日 以 前 に 有 効 であった 共 同 研 究 契 約 の<br />

当 事 者 により、 又 はその 当 事 者 のために 行 われた。<br />

(B) クレームの 発 明 は 共 同 研 究 契 約 の 範 囲 内 で 行 われた 活 動 の 結 果 として 行 われた。 及 び、<br />

(C) クレームされた 発 明 についての 特 許 出 願 が、 共 同 研 究 契 約 当 事 者 の 名 称 を 開 示 している<br />

か、 又 は 開 示 するよう 補 正 されていること( 以 下 、「 共 同 研 究 契 約 資 格 喪 失 事 由 」)。<br />

特 許 法 第 103 条 (c)の 変 更 は、2004 年 12 月 10 日 以 後 に 付 与 された 全 ての( 再 発 行 特 許 を 含 む)<br />

特 許 に 適 用 される。「(f) 又 は(g)」を「(e)、(f)、 又 は(g)の 1 又 はそれ 以 上 」に 変 更 するた<br />

めに AIPA によってなされた 特 許 法 第 103 条 (c)の 修 正 は、1999 年 11 月 29 に 以 後 の 出 願 に 適<br />

用 される。 留 意 すべきは、( 再 発 行 出 願 を 含 む) 全 ての 出 願 に 対 し、 出 願 が 2004 年 12 月 10<br />

日 以 後 に 係 属 している 場 合 は、1999 年 変 更 を 有 効 に 含 む 特 許 法 第 103 条 (c)についての 変 更<br />

が 適 用 される。 従 って、 特 許 法 第 103 条 (c)についての 先 の 改 訂 による 1999 年 11 月 29 日 の<br />

226


日 付 は、 今 では 関 係 がないということである。ただし、 再 審 査 手 続 においては、CREATE 法 に<br />

よって 修 正 された 特 許 法 第 103 条 (c)が 適 用 されるか 否 かを 決 定 するために、 再 審 査 される 特<br />

許 が 2004 年 12 月 10 日 以 後 に 付 与 されたものか 否 かが 調 べられなければならない。1999 年<br />

11 月 29 日 以 降 の 出 願 で 2004 年 12 月 10 日 以 前 に 付 与 された 特 許 の 再 審 査 手 続 に 関 しては、<br />

特 許 法 第 103 条 (c)の 同 一 人 に 譲 渡 された/ 所 有 された 先 行 技 術 に 関 する 欠 格 条 項 に 適 用 で<br />

きる 特 許 法 第 103 条 (c)の 1999 年 改 正 である。 特 許 法 第 102 条 (c)/ 第 103 条 に 基 づいて 不 適<br />

格 とされた 先 行 技 術 についての 詳 細 は MPEP 第 706.02 条 (l)(1)を 参 照 のこと。1999 年 11 月<br />

29 日 以 前 の 出 願 で 2004 年 12 月 10 日 以 前 に 付 与 された 特 許 の 再 審 査 手 続 に 関 しては、 特 許<br />

法 第 103 条 (c)の 1999 年 改 正 も 2004 年 改 正 も 適 用 されない。 従 って、 特 許 法 第 103 条 (a)に<br />

基 づく 拒 絶 において 使 用 された 特 許 法 第 102 条 (f) 又 は(g)に 基 づく 先 行 技 術 に 限 り、 特 許 法<br />

第 103 条 (c)の 同 一 人 に 譲 渡 された/ 所 有 された 先 行 技 術 に 関 する 規 定 に 基 づき 不 適 格 とさ<br />

れ 得 る。<br />

CREATE 法 により 修 正 されたように、 特 許 法 第 103 条 (c)は 特 許 法 第 102 条 (e)、(f) 又 は(g)に<br />

基 づく 先 行 技 術 とみなし、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 において 依 拠 される 保 護 対 象 に 限 っ<br />

て 引 き 続 き 適 用 する。 当 該 拒 絶 が 特 許 法 第 102 条 (e)、(f) 又 は(g)による 新 規 性 の 欠 如 である<br />

場 合 、 特 許 法 第 103 条 (c)に 依 拠 して 新 規 性 の 欠 如 による 拒 絶 を 克 服 する 又 は 防 止 しようとす<br />

る 保 護 対 象 を 不 適 格 とすることはできない。 同 様 に、 特 許 法 第 103 条 (c)は、 二 重 特 許 拒 絶 を<br />

克 服 する 又 は 防 止 するために 依 拠 することができない。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.78 条 (c) 及 び<br />

MPEP 第 804 条 を 参 照 のこと。MPEP 第 706.02 条 (l) 乃 至 第 706.02 条 (l)(3)を 参 照 のこと。<br />

227


2161 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 明 細 書 の 独 立 3 要 件<br />

明 細 書 には 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 説 明 、 実 施 可 能 性 及 びクレームの 発 明 を 実 施 する 最 良 の<br />

態 様 (ベストモード)を 含 まねばならない<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 は 次 のことを 規 定 している。<br />

明 細 書 は、その 発 明 が 属 する 又 はその 発 明 が 極 めて 密 接 に 関 係 している 分 野 の 技 術 に 熟 達 し<br />

た 者 がその 発 明 を 製 造 し、 使 用 することができるような 完 全 、 明 瞭 、 簡 潔 かつ 正 確 な 用 語 で、<br />

その 発 明 及 びその 発 明 を 製 造 し 使 用 する 方 法 並 びにプロセスの 書 面 による 説 明 を 含 まなけれ<br />

ばならず、また、 発 明 者 が 考 える 発 明 実 施 の 最 良 の 態 様 を 記 載 していなければならない。[ 強<br />

調 は 引 用 者 による]。<br />

本 法 の 本 条 は、 明 細 書 には 次 に 掲 げる 各 項 が 含 まれることを 求 める。<br />

(A) 当 該 発 明 の 書 面 による 説 明<br />

(B) 当 該 発 明 を 製 造 し 使 用 する 方 法 及 びプロセス<br />

(C) 発 明 者 が 考 える 自 己 の 発 明 実 施 の 最 良 の 態 様<br />

3 要 件 はそれぞれが 別 個 のものであって 明 確 に 区 別 される<br />

書 面 記 載 要 件 は 実 施 可 能 要 件 とは 別 で 明 確 に 区 別 される。In re Barker, 559 F.2d 588, 194<br />

USPQ 470 (CCPA 1977), cert. denied, 434 U.S. 1064 (1978);Vas-Cath, Inc. v.Mahurkar,<br />

935 F.2d 1555, 1562, 19 USPQ2d 1111, 1115 (Fed. Cir. 1991)( 事 例 によっては、 書 面 記 載<br />

要 件 と 実 施 可 能 性 要 件 を 混 同 していることを 認 める 一 方 で、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 特 許<br />

法 第 112 条 第 1 段 落 において、 書 面 記 載 要 件 は 実 施 可 能 要 件 とは 別 個 のものであって 明 確 に<br />

区 別 されることを 再 確 認 し、その 例 を 示 した。) 発 明 はその 開 示 が 実 施 可 能 でなくとも 記 載 す<br />

ることができ( 例 えば、 一 切 開 示 されていない 化 合 物 又 は 見 掛 けの 製 造 方 法 )、 開 示 はその 発<br />

明 を 記 載 することなく 実 施 可 能 にすることもできる( 例 えば、 製 造 方 法 を 記 載 する 明 細 書 であ<br />

って 広 範 囲 に 及 び 機 能 的 に 定 義 された 成 分 で 作 られる 塗 料 組 成 物 を 使 用 しており、その 記 述<br />

の 範 囲 内 に 入 る 処 方 は 実 施 可 能 ではあるが 何 らの 具 体 的 処 方 も 記 載 しない)。 次 を 参 照 のこと。<br />

In re Armbruster, 512 F.2d 676, 677, 185 USPQ 152, 153 (CCPA 1975)(「『 記 載 する』 明<br />

細 書 は、 必 ずしも 当 業 者 がクレームの 発 明 を 製 造 又 は 使 用 することが『できる』ことを 必 要<br />

としない。」) 最 良 の 態 様 は 実 施 可 能 要 件 とは 別 の 明 確 に 区 別 される 要 件 である。In re Newton,<br />

414 F.2d 1400, 163 USPQ 34 (CCPA 1969)。<br />

2161.01 コンピュータプログラミングと 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落<br />

コンピュータプログラミングを 含 む 発 明 の 十 分 な 開 示 要 件 は、 特 許 を 得 ようとするすべての<br />

発 明 に 対 するものと 同 一 である。すなわち、 適 切 な 書 面 による 説 明 がなければならず、 原 開<br />

示 はクレーム 時 の 発 明 を 製 造 及 び 使 用 できるよう 十 分 に 実 施 可 能 でなければならず、 当 該 発<br />

明 を 実 施 するための 最 良 の 態 様 の 提 示 でなければならない。<br />

次 の 審 査 指 針 は 技 術 の 広 範 囲 に 適 用 可 能 であるが、コンピュータプログラム、ソフトウェア、<br />

ファームウェア、 又 は「ブロック 図 」 要 素 の 1 つ 以 上 が 少 なくとも 部 分 的 にコンピュータソ<br />

フトウェア 構 成 要 素 から 成 るブロック 図 の 事 案 を 含 む 出 願 の 問 題 において、 特 許 法 第 112 条<br />

第 1 段 落 を 分 析 するため 指 針 を 提 供 することを 目 的 とする。コンピュータ 事 案 において 開 示<br />

の 十 分 性 の 問 題 は、コンピュータハードウェアとソフトウェアの 相 互 関 係 及 び 相 互 依 存 性 の<br />

理 由 から 開 示 されたハードウェアと 開 示 されたソフトウェア 両 方 の 十 分 性 への 審 査 を 必 要 と<br />

228


する。<br />

I. 詳 細 な 書 面 による 説 明<br />

書 面 記 載 要 件 の 機 能 は、 当 該 発 明 者 が、 依 拠 する 出 願 の 申 請 日 現 在 で 自 身 により 後 でクレー<br />

ムされる 特 定 の 保 護 対 象 を 所 有 していることを 保 証 することであって、その 明 細 書 がこれを<br />

達 成 する 方 法 は 重 要 ではない。In re Herschler, 591 F.2d 693, 700-01, 200 USPQ 711, 717<br />

(CCPA 1979)、さらに 繰 り 返 して In re Kaslow, 707 F.2d 1366, 707 F.2d 1366, 217 USPQ 1089<br />

(Fed. Cir. 1983)。MPEP 第 2163 条 乃 至 第 2163.04 条 も 参 照 のこと。<br />

II. 最 良 の 態 様<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 の 目 的 は「 発 明 者 が 特 許 を 申 請 すると 同 時 に 実 際 に 着 想 した 発 明 の 望 まし<br />

い 実 施 形 態 を 公 衆 に 秘 密 にすることがないようにする」である。In re Gay, 309 F.2d 769, 772,<br />

135 USPQ 311, 315 (CCPA 1962)。 隠 蔽 の 証 拠 のみが「 意 図 するとしないにかかわらず」 最 良<br />

実 施 態 様 要 件 の 遵 守 のために 開 示 が 十 分 かどうか 判 断 する 際 に 考 慮 される。Spectra-Physics,<br />

Inc. v. Coherent, Inc.,827 F.2d 1524, 1535, 3 USPQ 2d 1737, 1745 (Fed. Cir. 1987)。<br />

その 証 拠 は、 最 良 の 態 様 による 拒 絶 の 確 認 につなげるためには、 出 願 人 の 最 良 の 態 様 の 開 示<br />

の 質 は、 事 実 上 隠 蔽 という 結 果 になるほど 悪 いことを 示 す 傾 向 がなければならない。In re<br />

Sherwood, 613 F.2d 809, 816-817, 204 USPQ 537, 544 (CCPA 1980)。さらに、 次 を 参 照 の<br />

こと。White Consol. Indus. v. Vega Servo-Control Inc., 214 USPQ 796, 824 (S.D. Mich.<br />

1982), aff’d on related grounds, 713 F.2d 788, 218 USPQ 961 (Fed. Cir. 1983)。MPEP<br />

第 2165 条 乃 至 第 2165.04 条 も 参 照 のこと。<br />

明 細 書 が 最 良 の 態 様 要 件 を 満 たしているかどうかを 判 断 する 際 に 行 うべき 2 つの 事 実 審 理 が<br />

ある。 第 1 に、 当 該 出 願 が 行 われた 時 点 で 発 明 者 は 当 該 発 明 を 実 施 する 最 良 の 態 様 を 知 って<br />

いたか 否 かについて 主 観 的 決 定 要 因 がなければならない。 第 2 に、 発 明 者 が 当 該 発 明 を 実 施<br />

する 最 良 の 態 様 を 念 頭 に 置 いていた 場 合 、 最 良 の 態 様 が 当 業 者 がそれを 実 施 することができ<br />

るほどの 詳 細 さで 開 示 されていたか 否 かについて 客 観 的 決 定 要 因 がなければならない。Fonar<br />

Corp. v. General Electric Co., 107 F.3d 1543, 41 USPQ2d 1801, 1804 (Fed. Cir. 1997);<br />

Chemcast Corp. v. Arco Industries, 913 F.2d 923, 927-28, 16 USPQ2d 1033, 1036 (Fed.<br />

Cir. 1990)。「 一 般 に、ソフトウェアが 発 明 実 施 の 最 良 の 態 様 の 一 部 を 構 成 する 場 合 、その<br />

ような 最 良 の 態 様 の 記 述 はソフトウェアの 機 能 の 開 示 によって 満 たされる。これは 通 常 、か<br />

かるソフトウェアの 記 述 コードは 当 該 技 術 分 野 の 技 能 の 内 にあってその 機 能 が 一 旦 開 示 され<br />

た 時 点 で 過 度 の 実 験 を 必 要 としないためである・・・。フローチャート 又 はソースコートの 列 挙<br />

はソフトウェアの 機 能 を 適 切 に 開 示 することの 要 件 とはならない。Fonar Corp., 107 F.3dat<br />

1549, 41 USPQ2dat 1805( 引 用 省 略 )。<br />

III. 実 施 可 能 性<br />

出 願 人 の 開 示 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 性 の 規 定 を 満 たさないことに 基 づく 拒 絶<br />

の 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 は、 当 業 者 がクレームの 発 明 を 過 度 の 実 験 に 頼 ることなく 製<br />

造 使 用 することができるようにする 開 示 の 妥 当 性 に 対 して 疑 問 を 持 つことの 合 理 的 基 準 を 記<br />

録 にはっきりさせなければならない。 参 照 として、In re Brown, 477 F.2d 946, 177 USPQ 691<br />

(CCPA 1973);In re Ghiron, 442 F.2d 985, 169 USPQ 723 (CCPA 1971)。 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

229


査 官 が 開 示 の 妥 当 性 に 対 して 疑 問 を 持 つことの 合 理 的 根 拠 を 提 示 できると、 異 議 を 申 し 立 て<br />

て 出 願 の 開 示 は 実 際 に 十 分 であることを 事 実 上 実 証 するとして 反 論 することは、 出 願 人 の 責<br />

任 となる。 参 照 として、In re Doyle, 482 F.2d 1385, 1392, 179 USPQ 227, 232 (CCPA 1973);<br />

In re Scarbrough, 500 F.2d 560, 566, 182 USPQ 298, 302 (CCPA 1974);In re Ghiron,<br />

supra.MPEP 第 2106 条 第 V.B.2 段 落 及 び 第 2164 条 乃 至 第 2164.08 条 (c)を 参 照 のこと。<br />

230


2162 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 根 拠 を 成 す 方 針<br />

有 効 な 特 許 を 取 得 するには、 特 許 出 願 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 定 められる 方 法 で 当 該 発<br />

明 の 完 全 かつ 明 確 な 開 示 を 含 めて 申 請 しなくてはならない。 十 分 な 開 示 を 求 める 要 件 は、 特<br />

許 によって 発 明 者 に 付 与 される 排 他 的 権 利 と 引 き 換 えに 公 衆 は 何 かを 受 け 取 ることを 保 証 す<br />

る。 特 許 の 付 与 は 新 たな 着 想 の 開 発 と 開 示 及 び 科 学 的 知 識 の 進 歩 を 促 進 し 強 化 するのに 役 立<br />

つ。 米 国 内 で 特 許 が 付 与 されると、 当 該 特 許 の 期 間 中 、 他 人 を 排 除 する 特 許 権 者 の 権 利 のみ<br />

を 条 件 として、その 特 許 に 含 まれる 情 報 はさらなる 研 究 開 発 のため 公 衆 が 利 用 できる 情 報 の<br />

一 部 となる。<br />

付 与 される 特 許 権 と 引 き 換 えに、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 は 付 与 を 正 当 化 するため 特 許 に 含<br />

まれなければならない 情 報 の 質 と 量 について 最 小 限 の 要 件 を 定 めている。 以 下 で 詳 細 に 検 討<br />

するとおり、 特 許 権 者 は 当 該 特 許 が 保 有 する 公 知 とすべきであって 当 業 者 が 当 該 発 明 を 製 造<br />

使 用 することのできる 十 分 な 情 報 を 当 該 特 許 に 開 示 しなければならない。 出 願 人 は 特 許 出 願<br />

の 申 請 時 点 において 特 許 権 者 に 既 知 であった 発 明 を 実 施 する 最 善 の 方 法 を 公 衆 に 秘 密 にして<br />

はならない。 開 示 要 件 が 完 全 に 遵 守 されないことは 特 許 の 拒 絶 若 しくは 発 行 された 特 許 の 無<br />

効 の 判 決 につながり 得 る。<br />

231


2163 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 「 書 面 による 記 載 」 要 件 に 基 づく 特 許 出 願 の 審 査 指 針<br />

次 の 審 査 指 針 は 特 許 法 第 112 条 の 書 面 記 載 要 件 に 適 合 する 特 許 出 願 を 評 価 する 際 に 本 庁 審 査<br />

官 が 遵 守 すべき 方 針 及 び 手 順 を 設 定 するものである。これらの 審 査 指 針 は 本 庁 の 本 法 に 関 す<br />

る 現 在 の 理 解 に 基 づくものであって、 最 高 裁 判 所 及 び 合 衆 国 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 並 びにそ<br />

の 先 行 裁 判 所 の 拘 束 力 を 有 する 先 決 例 と 完 全 な 整 合 性 を 有 すると 信 じられる。<br />

本 審 査 指 針 は 実 体 法 規 を 制 定 するものではなく、 従 って 法 的 効 力 も 拘 束 力 もない。それらは<br />

クレームされた 保 護 対 象 は 実 体 法 に 適 合 しているかを 分 析 する 上 で 本 庁 審 査 官 を 支 援 するこ<br />

とを 目 的 とする。 拒 絶 は 実 体 法 に 基 づくものであり、それは 上 訴 可 能 な 拒 絶 である。 従 って、<br />

本 庁 審 査 官 による 本 審 査 指 針 の 不 遵 守 は 上 訴 することも 嘆 願 することもできない。<br />

これらの 審 査 指 針 は 通 常 の 審 査 過 程 の 一 部 となることを 目 的 として 作 られている。 従 って、<br />

本 庁 審 査 官 がクレームの 書 面 による 記 載 の 不 足 について 一 応 の 証 明 があることを 立 証 した 場<br />

合 、 先 行 技 術 の 徹 底 的 な 見 直 し 並 びに 特 許 法 第 101 条 、 第 102 条 、103 条 及 び 第 112 条 の 要<br />

件 を 含 めたその 他 の 法 令 上 の 要 件 の 遵 守 についての 実 体 審 査 を、 書 面 による 記 載 の 不 足 によ<br />

る 拒 絶 を 含 む 拒 絶 通 知 を 仕 上 げる 前 に、 実 施 しなくてはならない。<br />

I. 出 願 の「 書 面 による 記 載 」 要 件 遵 守 を 律 する 一 般 原 則<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 は「 明 細 書 は 当 該 発 明 の 詳 細 な 書 面 による 記 載 を 含 むものとする」<br />

ことを 求 めている。この 要 件 は 実 施 可 能 要 件 とは 別 で 明 確 に 区 別 される。 参 照 事 例 として、<br />

Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1560, 19 USPQ2d 1111, 1114 (Fed. Cir. 1991)。<br />

次 も 参 照 のこと。Univ. of Rochester v. G.D. Searle & Co., 358 F.3d 916, 920-23, 69 USPQ2d<br />

1886, 1890-93 (Fed. Cir. 2004)( 書 面 記 載 要 件 の 経 緯 及 び 目 的 を 考 察 );In re Curtis, 354<br />

F.3d 1347, 1357, 69 USPQ2d 1274, 1282 (Fed. Cir. 2004)(「クレームの 実 施 可 能 性 につい<br />

ての 決 定 的 な 証 拠 はそのクレームの 満 足 できる 書 面 による 記 載 について 等 しく 決 定 的 ではな<br />

い」)。 書 面 記 載 要 件 にはいくつもの 政 策 目 標 がある。「 当 該 発 明 要 件 の 明 細 書 の『 不 可 欠 の<br />

目 標 』は 出 願 人 がクレームされる 保 護 対 象 を 発 明 したという 情 報 を 明 確 に 伝 えることであ<br />

る。」In re Barker, 559 F.2d 588, 592 n.4, 194 USPQ 470, 473 n.4 (CCPA 1977)。もう<br />

一 つの 目 的 は 出 願 人 が 発 明 としてクレームするものを 公 知 とすることである。Regents of the<br />

University of California v. Eli Lilly, 119 F.3d 1559, 1566, 43 USPQ2d 1398, 1404 (Fed.<br />

Cir. 1997), cert. denied, 523 U.S. 1089 (1998)を 参 照 のこと。「『 書 面 記 載 』 要 件 は、<br />

特 許 が 特 許 を 求 める 技 術 を 記 載 しなければならないという 原 則 を 実 施 する。すなわちこの 要<br />

件 は、 特 許 が 基 礎 を 置 く 技 術 的 知 識 を 開 示 し、 特 許 権 者 がクレームされる 発 明 を 所 有 するこ<br />

とを 実 証 するという 2 つの 発 明 者 の 責 任 を 満 足 させる 働 きをする。」Capon v. Eshhar, 418<br />

F.3d 1349, 1357, 76 USPQ2d 1078, 1084 (Fed. Cir. 2005)。さらに、 書 面 記 載 要 件 は、 当<br />

該 特 許 の 期 間 中 は 発 明 の 実 施 から 他 人 を 排 除 する 権 利 と 引 き 換 えに、 特 許 権 者 がその 特 許 明<br />

細 書 において 自 らの 発 明 を 適 切 に 記 載 することを 保 証 することによって 有 用 な 技 術 の 進 歩 を<br />

促 進 する。<br />

書 面 記 載 要 件 を 満 足 するには、 特 許 明 細 書 はクレームの 発 明 を 当 業 者 が 発 明 者 はクレームの<br />

発 明 を 所 有 すると 合 理 的 に 結 論 することができる 十 分 な 詳 細 さをもって 記 述 しなければなら<br />

ない。 参 照 事 例 として、Moba, B.V. v. Diamond Automation, Inc., 325 F.3d 1306, 1319, 66<br />

USPQ2d 1429, 1438 (Fed. Cir. 2003);Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d at 1563, 19<br />

USPQ2d at 1116。ただし、 所 有 することだけを 示 すことで 書 面 による 記 載 の 不 足 は 是 正 され<br />

232


ない。Enzo Biochem, Inc. v. Gen-Probe, Inc., 323 F.3d 956, 969-70, 63 USPQ2d 1609, 1617<br />

(Fed. Cir. 2002)。 書 面 による 記 載 の 判 例 の 多 くが、 最 初 に 提 出 されたときの 明 細 書 が 出 願<br />

時 のものではないクレームを 裏 付 けているか 否 かを 取 り 扱 っている。 当 該 事 例 において 生 じ<br />

た 争 点 はほとんどの 場 合 、 親 出 願 は 係 属 中 のクレームに「 適 切 な 裏 付 け」を 用 意 しているか<br />

否 か、 若 しくは 当 該 明 細 書 に 付 加 された 材 料 は 特 許 法 第 132 条 の 違 反 に「 新 たな 事 項 」を 包<br />

含 しているか 否 かのように 表 現 されている。「 書 面 による 記 載 」の 問 題 は 同 様 に 抵 触 審 査 の<br />

中 で 発 生 する。ここで、 争 点 は 抵 触 に 対 する 一 方 当 事 者 の 明 細 書 は 係 属 中 のカウントに 対 応<br />

する 新 たな 追 加 クレームを 裏 付 けることができるか 否 か、すなわちその 当 事 者 は 抵 触 カウン<br />

トに 対 応 して「クレームする」ことができるか 否 である。 参 照 事 例 として、Martin v. Mayer,<br />

823 F.2d 500, 503, 3 USPQ2d 1333, 1335 (Fed. Cir. 1987)。さらに 以 前 の 見 解 では、 特 許<br />

商 標 庁 は 唯 一 の 記 載 が 当 該 クレームに 認 められる 場 合 に 書 面 による 記 載 の 裏 付 けと 認 めたが<br />

らないことを 示 している。ただし、 本 見 解 は 否 定 された。 参 照 として、In re Koller, 613 F.2d<br />

819, 204 USPQ 702 (CCPA 1980)( 原 クレームは 自 らの 発 明 の 説 明 を 構 成 している);accord In<br />

re Gardner, 475 F.2d 1389, 177 USPQ 396 (CCPA 1973);accord In re Wertheim, 541 F.2d<br />

257, 191 USPQ 90 (CCPA 1976)。 十 分 な 発 明 の 記 載 をクレーム 若 しくは 最 初 に 提 出 された 明<br />

細 書 の 任 意 の 他 の 部 分 に 記 入 することが 今 では 十 分 に 認 められている。これら 以 前 の 見 解 で<br />

は 明 細 書 に 求 められる 特 定 性 の 性 質 又 は 特 異 性 を、すなわち 必 要 な 発 明 の 記 載 量 を 述 べてい<br />

なかった。<br />

出 願 人 は、 言 葉 、 構 造 、 図 、ダイアグラム 及 び 数 式 などクレームの 発 明 を 完 全 に 述 べる 記 述<br />

的 方 法 を 用 いて、クレームの 発 明 の 限 定 のすべてをもってこれを 記 述 することにより、クレ<br />

ームの 発 明 の 所 有 を 証 明 する。Lockwood v. American Airlines, Inc., 107 F.3d 1565, 1572,<br />

41 USPQ2d 1961, 1966 (Fed. Cir. 1997)。 所 有 は、 当 該 発 明 は 完 成 していることを 示 す 図 面<br />

若 しくは 構 造 化 学 式 の 開 示 などによって 当 該 発 明 は「いつでも 特 許 を 受 けられる 状 態 」であ<br />

ることを 示 すことによって、 又 は 出 願 人 はクレームの 発 明 を 所 有 していることを 示 すために<br />

十 分 な、 特 徴 的 に 識 別 する 特 性 を 記 述 することによって、 現 実 の 実 施 化 を 記 述 することを 含<br />

めてさまざまな 方 法 で 証 明 することができる。 参 照 事 例 として、Pfaff v. Wells Elecs., Inc.,<br />

525 U.S. 55, 68, 119 S.Ct. 304, 312, 48 USPQ2d 1641, 1647 (1998); Eli Lilly, 119 F.3dat<br />

1568, 43 USPQ2dat 1406;Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical, 927 F.2d 1200, 1206, 18<br />

USPQ2d 1016, 1021 (Fed. Cir. 1991)( 化 合 物 は「 特 性 の 如 何 を 問 わずそれを 十 分 に 区 別 する<br />

ことによって」 定 義 しなければならない。)「 書 面 記 載 要 件 への 適 合 は 実 質 的 に『クレームさ<br />

れる 発 明 の 性 質 によって 必 然 的 に 変 わる』 事 実 に 基 づく 審 理 である。」Enzo Biochem, 323<br />

F.3dat 963, 63 USPQ2dat 1613。 出 願 明 細 書 はクレームの 発 明 の 試 験 を 記 載 することによっ<br />

て、 又 は 生 物 学 的 材 料 の 場 合 は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.801 条 以 下 に 従 って 行 われる 寄 託 を 具 体<br />

的 に 記 載 することによって、 現 実 の 実 施 化 を 証 明 することができる。 参 照 として、Enzo<br />

Biochem, 323 F.3dat 965, 63 USPQ2dat 1614(「 寄 託 に 関 する 明 細 書 の 引 例 もクレームの 材<br />

料 に 関 する 書 面 記 載 要 件 を 満 たすことができる」); 特 許 目 的 に 関 する 生 物 学 的 材 料 の 寄 託 、<br />

最 終 規 則 54 FR 34,864(1989 年 8 月 22 日 )も 参 照 のこと。(「 具 体 的 特 定 についての 要 件 は、<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 記 載 要 件 と 一 致 しており 特 許 が 付 与 される 前 に 寄 託 された 若 しく<br />

は 寄 託 される 生 物 学 的 材 料 の 先 行 根 拠 を 提 供 するものである。」Id. at 34,876。「 発 明 の 記<br />

載 は、 寄 託 された 生 物 学 的 材 料 は 実 際 に 開 示 されたものであることが 十 分 に 照 合 できるもの<br />

でなければならない。 特 許 が 発 行 されると、その 説 明 は 侵 害 の 問 題 解 決 に 十 分 役 立 たねばな<br />

233


らない。」Id. at 34,880。)かかる 寄 託 はクレームの 発 明 の 書 面 による 記 載 の 代 用 とはなら<br />

ない。 寄 託 された 材 料 の 書 面 による 記 載 は、 特 許 の 適 格 性 に 関 する 審 査 はもっぱら 書 面 によ<br />

る 記 載 に 基 づいて 進 むため、できる 限 り 完 全 である 必 要 がある。 参 照 事 例 として、In re Lundak,<br />

773 F.2d 1216, 227 USPQ 90 (Fed. Cir. 1985)。 次 も 参 照 のこと。54 FRat 34,880(「 一 般<br />

に、 特 定 の 寄 託 された 生 物 学 的 材 料 について 提 供 される 情 報 が 多 いほど、 審 査 官 は 寄 託 され<br />

た 生 物 学 的 材 料 の 同 一 性 及 び 特 性 を 先 行 技 術 とより 良 く 比 較 することができるであろう。」)<br />

明 細 書 が 適 切 な 書 面 による 発 明 の 記 載 を 提 出 しているか 否 かに 関 する 問 題 は、 十 分 に 記 載 さ<br />

れていない 原 クレームを 検 討 する 中 で 生 ずることがある。( 参 照 事 例 として、LizardTech, Inc.<br />

v. Earth Resource Mapping, Inc., 424 F.3d 1336, 1345, 76 USPQ2d 1724, 1733 (Fed. Cir.<br />

2005);Enzo Biochem, 323 F.3dat 968, 63 USPQ2dat 1616 (Fed. Cir. 2002);Eli Lilly, 119<br />

F.3d 1559, 43 USPQ2d 1398)、クレームの 限 定 が 付 加 された 若 しくは 削 除 された 新 規 の 又 は<br />

補 正 されたクレーム、 又 は 特 許 法 第 119 条 、 第 120 条 若 しくは 第 365 条 (c)により 先 行 優 先 日<br />

又 は 有 効 出 願 日 を 付 与 されるクレームにおいて 生 ずることもある。 一 般 的 にこの 争 点 は 次 の<br />

事 項 を 判 定 する 中 で 生 ずる。 新 規 の 又 は 補 正 されたクレームは 申 請 時 の 出 願 に 記 載 される 発<br />

明 の 記 載 によって 裏 付 けられているか 否 か( 参 照 事 例 として、In re Wright, 866 F.2d 422, 9<br />

USPQ2d 1649 (Fed. Cir. 1989))、クレームの 発 明 が 特 許 法 第 119 条 、 第 120 条 若 しくは 第<br />

365 条 (c)により 先 行 優 先 日 又 は 有 効 出 願 日 の 利 益 を 与 えられるか 否 か( 参 照 事 例 として、New<br />

Railhead Mfg. L.L.C. v. Vermeer Mfg. Co., 298 F.3d 1290, 63 USPQ2d 1843 (Fed. Cir.<br />

2002);Tronzo v. Biomet, Inc., 156 F.3d 1154, 47 USPQ2d 1829 (Fed. Cir. 1998);Fiers<br />

v. Revel, 984 F.2d 1164, 25 USPQ2d 1601 (Fed. Cir. 1993);In re Ziegler, 992 F.2d 1197,<br />

1200, 26 USPQ2d 1600, 1603 (Fed. Cir. 1993)) 又 は、 明 細 書 は 抵 触 審 査 のカウントに 対 応<br />

してクレームに 裏 付 けを 提 示 するか 否 か( 参 照 事 例 として、Fields v. Conover, 443 F.2d 1386,<br />

170 USPQ 276 (CCPA 1971))。 書 面 記 載 要 件 への 適 合 は 個 別 に 解 決 しなければならない 事 実 に<br />

関 する 争 点 である。Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d at 1563, 19 USPQ2d at 1116 (Fed.<br />

Cir. 1991)。<br />

A. 原 クレーム<br />

クレームされた 発 明 の 適 切 な 書 面 による 記 載 は、 出 願 が 申 請 されたときに 存 在 しているとい<br />

う 強 力 な 前 提 が 存 在 する。In re Wertheim, 541 F.2d 257, 263, 191 USPQ 90, 97 (CCPA<br />

1976)(「 我 々は、 特 許 商 標 庁 は、 当 業 者 がそのクレームによって 定 義 される 発 明 の 書 面 によ<br />

る 記 載 を 当 該 開 示 において 認 識 しないであろう 証 拠 若 しくは 理 由 を 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有<br />

すると 考 える。」)ただし 第 1 段 落 ( 上 掲 )の 考 察 の 如 く、 適 切 な 書 面 による 記 載 の 不 足 に 関 す<br />

る 争 点 は、クレームの 発 明 が、 当 業 者 が 出 願 人 はクレームの 発 明 を 所 有 していたことを 認 識<br />

するに 十 分 な 特 定 性 を 持 って 記 載 されていなかった 場 合 、 原 クレームについてさえ 生 ずるこ<br />

とがある。 当 該 クレームが、 明 細 書 に 適 切 に 記 載 されておらず 当 該 技 術 分 野 で 一 般 的 に 行 わ<br />

れていない 若 しくは 当 業 者 に 周 知 されていない 重 要 な 又 は 決 定 的 な 特 徴 を 必 要 とする 場 合 、<br />

当 該 クレームは 全 体 として 適 切 に 記 載 されていないかもしれない。 例 えば、「SEQ ID NO:1<br />

から 成 る 遺 伝 子 」クレームを 考 えてみる。クレーム 全 体 として 何 を 対 象 としているかの 判 断<br />

は、プロモーター、コード 化 領 域 若 しくはその 他 の 要 素 など 具 体 的 な 構 造 が 含 まれるという<br />

結 論 につながることがある。 本 クレームによって 包 含 されるすべての 遺 伝 子 は SEQ ID NO:1<br />

から 成 る 特 性 を 共 有 するが、これもまた 包 含 されるそれらの 具 体 的 構 造 ( 例 えば、プロモータ<br />

ー、エンハンサー、コード 化 領 域 及 びその 他 の 調 節 エレメント)について 発 明 の 記 載 が 不 十 分<br />

234


であるかもしれない。<br />

発 明 がもっぱらその 機 能 に 加 えてその 製 造 方 法 の 観 点 からのみ 記 載 されており、 当 該 発 明 の<br />

構 造 とその 機 能 との 相 関 又 は 関 係 を 記 載 していない 若 しくは 当 該 技 術 分 野 において 認 められ<br />

ていない 場 合 、クレームの 発 明 全 体 として 適 切 に 記 載 されていないかもしれない。 機 能 的 特<br />

性 によってのみ 記 載 され、その 機 能 と 配 列 の 構 造 との 間 に 周 知 若 しくは 開 示 された 相 関 がな<br />

い 生 体 分 子 配 列 は、 一 般 に、クレームの 配 列 を 入 手 する 方 法 を 伴 っていたとしても、 発 明 の<br />

書 面 による 記 載 目 的 で 特 性 を 識 別 するには 十 分 なものではない。 例 えば、 遺 伝 コード 表 が 周<br />

知 のアミノ 酸 配 列 をコード 化 する 核 酸 の 属 と 相 関 させるとしてもその 同 一 の 表 は 天 然 に 存 在<br />

する mRNA 若 しくはそれに 対 応 する cDNA の 自 然 の、 天 然 に 存 在 する 核 酸 配 列 を 予 測 すること<br />

はできない。 次 を 参 照 のこと。In re Bell, 991 F.2d 781, 26 USPQ2d 1529 (Fed. Cir. 1993)<br />

及 び In re Deuel, 51 F.3d 1552, 34 USPQ2d 1210 (Fed. Cir. 1995)(プロセスはそのプロ<br />

セスの 製 品 を 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 自 明 とすることはできないとする 判 決 )。 連 邦 巡 回 区 控<br />

訴 裁 判 所 は 合 衆 国 法 に 基 づき、クレームの 発 明 を 自 明 としない 発 明 の 記 載 は 特 許 法 第 112 条<br />

の 書 面 記 載 要 件 の 目 的 上 、 当 該 発 明 を 十 分 に 記 載 することはできないことを 指 摘 している。<br />

Eli Lilly, 119 F.3dat 1567, 43 USPQ2dat 1405。 次 を 比 較 のこと。Fonar Corp. v. General<br />

Electric Co., 107 F.3d 1543, 1549, 41 USPQ2d 1801, 1805 (Fed. Cir. 1997)(「 一 般 に、<br />

ソフトウェアが 発 明 実 施 の 最 良 の 態 様 の 一 部 を 構 成 する 場 合 、そのような 最 良 の 態 様 の 記 述<br />

はソフトウェアの 機 能 の 開 示 によって 満 たされる。これは 通 常 、かかるソフトウェアの 記 述<br />

コードは 当 該 技 術 分 野 の 技 能 の 内 にあって、その 機 能 が 一 旦 開 示 された 時 点 で 過 度 の 実 験 を<br />

必 要 としないためである。 従 って、フローチャート 又 はソースコートの 列 挙 はソフトウェア<br />

の 機 能 を 適 切 に 開 示 することの 要 件 とはならない。」)<br />

また、 適 切 な 書 面 による 発 明 の 記 載 の 不 足 は、 当 該 技 術 分 野 の 知 識 及 び 技 能 レベルが 当 業 者<br />

にクレームされた 製 品 を 開 示 のプロセスから 直 ちに 予 測 させることができない 場 合 に 係 争 が<br />

生 ずる。 参 照 事 例 として、Fujikawa v. Wattanasin, 93 F.3d 1559, 1571, 39 USPQ2d 1895,<br />

1905 (Fed. Cir. 1996)( 起 こり 得 るすべての 部 分 を 書 き 並 べた「 長 いリスト」は 属 内 のすべ<br />

ての 種 の 書 面 による 記 載 を 構 成 しない。なぜなら、それは 当 業 者 を 特 定 の 種 へと「 合 理 的 に<br />

導 」かない。);In re Ruschig, 379 F.2d 990, 995, 154 USPQ 118, 123 (CCPA 1967)(「n-<br />

プロピルアミンが n-ブチルアミンに 代 えて 化 合 物 の 製 造 に 使 用 されていたら、クレーム 13<br />

の 化 合 物 がもたらされていた。 請 求 人 は 審 判 部 に 対 するように 我 々に 対 して 前 記 のブチル 化<br />

合 物 が 作 られた 具 体 的 な 実 施 例 6 に 基 づいてパターン 化 された 仮 想 の 具 体 的 実 施 例 を 提 出 し<br />

たので、 我 々は 単 純 な 変 更 が 本 明 細 書 に 含 まれる 具 体 的 裏 付 けとなる 開 示 へつながるかを 理<br />

解 することができる。 問 題 は、それを 想 像 することは 容 易 であるとはいえ、かかる 開 示 がな<br />

いことである。)( 強 調 は 原 文 のまま);Purdue Pharma L.P. v. Faulding Inc., 230 F.3d 1320,<br />

1328, 56 USPQ2d 1481, 1487 (Fed. Cir. 2000)(「 明 細 書 は 当 業 者 に 対 して 発 明 者 が・・・ 割 合<br />

を・・・ 自 らの 発 明 の 一 部 であると 考 えたことを 明 確 に 開 示 していない・・・。 従 って、その 開 示<br />

は[ 後 願 ]クレームがそこから 特 許 性 のある 部 分 を 切 り 取 った 広 範 な 発 明 を 公 開 したので、 書<br />

面 記 載 要 件 は 満 たされたと Purdue が 主 張 する 力 はない。<br />

B. 新 規 の 又 は 補 正 されたクレーム<br />

特 許 出 願 の 新 規 事 項 導 入 の 禁 止 ( 特 許 法 第 132 条 及 び 第 251 条 )は 出 願 人 が 最 初 に 提 出 された<br />

保 護 対 象 の 範 囲 を 超 えて 情 報 を 追 加 できないように 作 用 する。In re Rasmussen, 650 F.2d<br />

1212, 1214, 211 USPQ 323, 326 (CCPA 1981)を 参 照 のこと。 書 面 記 載 要 件 及 び 新 規 事 項 に 対<br />

235


するその 関 係 に 関 する 詳 細 考 察 については MPEP 第 2163.06 条 乃 至 第 2163.07 条 を 参 照 のこと。<br />

原 明 細 書 で 提 出 されたときのクレームは 開 示 の 一 部 である。 従 って、 最 初 の 申 請 時 の 出 願 が<br />

その 明 細 書 の 残 りの 部 分 に 記 載 されていない 材 料 を 開 示 しているクレームを 含 んでいる 場 合 、<br />

出 願 人 はその 明 細 書 を 修 正 してそのクレームの 保 護 対 象 を 含 めることができる。In re Benno,<br />

768 F.2d 1340, 226 USPQ 683 (Fed. Cir. 1985)。 従 って、 書 面 記 載 要 件 は 出 願 人 が 申 請 時<br />

の 明 細 書 に 適 切 に 記 載 されていない 保 護 対 象 をクレームできないようにする。 出 願 時 の 開 示<br />

によって 裏 付 けられない 要 素 又 は 限 定 を 導 入 する 新 規 の 又 は 補 正 されたクレームは 書 面 記 載<br />

要 件 に 違 反 する。 参 照 事 例 として、In re Ludtke, 442 F.2d 967, 169 USPQ 795 (CCPA 1971)( 亜<br />

属 領 域 は 属 の 開 示 及 び 亜 属 領 域 内 の 具 体 的 な 実 施 例 によって 裏 付 けされていない);In re<br />

Smith, 458 F.2d 1389, 1395, 173 USPQ 679, 683 (CCPA 1972)( 亜 属 は 必 ずしもそれを 包 含<br />

する 属 及 びそれが 読 める 種 によって 記 述 される 必 要 はない)。<br />

in haec verba(この 言 葉 で) 要 件 はないが、 新 規 に 追 加 されたクレーム 制 限 は 明 細 書 において<br />

明 示 的 、 黙 示 的 若 しくは 本 質 的 な 開 示 により 裏 付 けられていなければならない。 明 らかな 誤<br />

謬 を 修 正 するための 補 正 は、 当 業 者 が 当 該 明 細 書 にその 誤 謬 が 存 在 することを 認 識 している<br />

ばかりでなく 正 当 な 補 正 と 認 めるであろう 場 合 は 新 規 事 項 を 構 成 しない。In re Oda, 443 F.2d<br />

1200, 170 USPQ 268 (CCPA 1971)。 核 酸 及 び/ 又 はアミノ 酸 の 配 列 を 開 示 する 出 願 における<br />

配 列 の 誤 りに 関 する 補 正 について、 配 列 の 誤 りは 分 子 生 物 学 に 一 般 的 な 問 題 であることはよ<br />

く 知 られている。 参 照 事 例 として、Peter Richterich, Estimation of Errors in ‘Raw’ DNA<br />

Sequences: A Validation Study, 8 Genome Research 251-59 (1998)。 申 請 時 の 出 願 が 配 列<br />

データ 及 び 引 例 、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.801 条 以 下 に 従 って 行 われた 配 列 材 料 の 寄 託 を 含 んで<br />

いる 場 合 、 補 正 は 容 認 され 得 る。 出 願 日 以 降 に 行 われた 寄 託 は 出 願 時 の 出 願 の 情 報 への 追 加<br />

若 しくは 補 正 を 裏 付 けるために 依 拠 することはできない。 軽 度 の 配 列 エラーの 補 正 は、 当 業<br />

者 が 寄 託 された 材 料 を 再 配 列 し、かつ、その 軽 度 のエラーを 即 時 に 認 識 したであろうとする<br />

反 論 に 基 づくものであると 思 われる 可 能 性 がある。 出 願 日 以 降 に 行 われる 寄 託 は、 出 願 人 が<br />

特 許 法 施 行 規 則 第 1.804 条 に 適 合 して 寄 託 される 生 物 学 的 材 料 は 申 請 時 の 出 願 において 具 体<br />

的 に 定 義 される 生 物 学 的 材 料 である 旨 の 陳 述 書 を 提 出 した 場 合 、 配 列 データの 補 正 の 裏 付 け<br />

を 提 出 する 場 合 に 限 って 依 拠 することができる。<br />

特 定 の 状 況 下 において 限 定 の 脱 落 は、 発 明 者 がより 範 囲 の 広 いさらなる 属 発 明 を 所 有 するか<br />

否 かに 関 する 争 点 をもたらす。 参 照 事 例 として、PIN/NIP, Inc. v. Platte Chem. Co., 304 F.3d<br />

1235, 1248, 64 USPQ2d 1344, 1353 (Fed. Cir. 2002)( 間 隔 を 置 いて 順 次 に 2 化 学 物 質 を 適<br />

用 することにより 塊 茎 の 発 芽 を 抑 制 する 方 法 についてのクレームは、 発 明 が 2 化 学 物 質 の「 組<br />

成 物 」すなわち 混 合 物 であることを 明 細 書 が 示 している 点 で 適 切 な 書 面 による 記 載 の 不 足 に<br />

より 無 効 と 判 示 された);Gentry Gallery, Inc. v. Berkline Corp., 134 F.3d 1473, 45 USPQ2d<br />

1498 (Fed. Cir. 1998)(とりわけ 制 御 装 置 及 び 制 御 方 法 から 成 るユニット 式 のソファに 対 す<br />

るクレームは、 当 該 クレームは 制 御 方 法 の 場 所 を 移 動 することによって 範 囲 が 拡 大 する 点 で<br />

書 面 記 載 要 件 を 満 たさないため 無 効 と 判 示 された。);Johnson Worldwide Associates v. Zebco<br />

Corp., 175 F.3d 985, 993, 50 USPQ2d 1607, 1613 (Fed. Cir. 1999)Gentry Gallery 事 件<br />

において、「 当 該 特 許 開 示 は 係 争 中 のクレーム 用 語 の 幅 広 い 意 味 を 裏 付 けないとする 裁 判 所<br />

の 決 定 は、『 唯 一 可 能 な 位 置 』としてのクレーム 要 素 の 位 置 --『 制 御 方 法 』-- 及 びその 変 動<br />

は『 当 該 発 明 が 表 明 する 目 的 外 』であると 記 載 している 明 細 書 の 明 確 な 記 述 を 前 提 としてい<br />

た。Gentry Gallery, 134 F.3dat 1479, 45 USPQ2dat 1503。その 後 、Gentry Gallery は、<br />

236


特 許 の 開 示 はクレーム 用 語 の 特 定 の(すなわち、 狭 小 な) 理 解 が『[ 発 明 者 の] 発 明 の 重 要 な 要<br />

素 』であることを 明 確 にさせる 状 況 を 検 討 している。」);Tronzo v. Biomet, 156 F.3dat<br />

1158-59, 47 USPQ2dat 1833 (Fed. Cir. 1998)( 一 般 的 なカップ 形 状 に 対 するクレームは、 円<br />

錐 形 の 優 位 性 及 び 重 要 性 を 述 べる 特 許 出 願 の 開 示 の 点 から 見 て「 円 錐 形 カップ」を 開 示 した<br />

親 出 願 日 が 認 められなかった。) 出 願 が 最 初 に 開 示 された 発 明 の 重 要 な 若 しくは 必 須 の 機 能 と<br />

して 記 載 している 要 素 を 懈 怠 するクレームは 書 面 記 載 要 件 に 適 合 していない。 参 照 として、<br />

Gentry Gallery, 134 F.3dat 1480, 45 USPQ2dat 1503;In re Sus, 306 F.2d 494, 504, 134<br />

USPQ 301, 309 (CCPA 1962)(「 当 業 者 は、『アリール 基 又 は 置 換 アリール 基 』は 当 該 発 明 の<br />

目 的 に 適 している、というよりむしろ 特 定 のアリール 基 及 び 特 定 の 特 別 に 置 換 されたアリー<br />

ル 基 [すなわち、アリールアジド]だけがかかる 目 的 に 適 しているとする 明 細 書 での 当 該 発 明<br />

の 書 面 による 記 載 によって 教 示 されないであろう。」)( 強 調 は 原 文 のまま) 明 細 書 又 は 記 録 の<br />

その 他 の 陳 述 書 において 記 載 されているように、 発 明 にとって 重 要 であるために 開 示 された<br />

事 項 を 懈 怠 しているクレームは、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき、 実 施 可 能 でないとして、<br />

若 しくは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づき 拒 絶 される 可 能 性 もある。 参 照 として、In re Mayhew,<br />

527 F.2d 1229, 188 USPQ 356 (CCPA 1976);In re Venezia, 530 F.2d 956, 189 USPQ 149 (CCPA<br />

1976); 及 び In re Collier, 397 F.2d 1003, 158 USPQ 266 (CCPA 1968)。MPEP 第 2172.01<br />

条 も 参 照 のこと。<br />

基 本 的 事 実 審 理 は、 明 細 書 は、 出 願 人 が 現 在 出 願 されているとおりの 当 該 発 明 を 出 願 日 現 在<br />

において 所 有 していたことを 当 業 者 に 合 理 的 な 明 確 さで 伝 えているか 否 かである。 参 照 事 例<br />

として、Vas-Cath, Inc., 935 F.2dat 1563-64, 19 USPQ2dat 1117。<br />

II. 発 明 の 書 面 による 記 載 の 妥 当 性 を 判 断 する 方 法<br />

A. 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 遵 守 について 明 細 書 を 読 込 み 分 析 する<br />

本 庁 審 査 官 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 への 遵 守 について 特 許 出 願 を 審 査 する<br />

場 合 、 次 に 掲 げる 手 順 を 忠 実 に 守 らなくてはならない。 審 査 官 は 出 願 の 内 容 を 通 読 し 評 価 し<br />

た 後 、 当 業 者 は 当 該 発 明 の 書 面 による 記 載 が 当 該 クレームの 裏 付 けを 提 供 すると 認 めないで<br />

あろう 証 拠 若 しくは 理 由 を 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。クレームされる 発 明 の 適 切 な 書 面<br />

による 記 載 は 出 願 時 の 明 細 書 に 存 在 する(Wertheim, 541 F.2d at 262, 191 USPQ at 96)とす<br />

る 強 力 な 推 定 の 根 拠 が 存 在 する。ただし、 新 規 に 追 加 若 しくは 補 正 されたクレームに 関 して<br />

出 願 人 は 原 開 示 において 新 規 又 は 補 正 されたクレームの 裏 付 けを 示 さねばならない。MPEP 第<br />

714.02 条 及 び 第 2163.06 条 (「 出 願 人 は・・・ 当 該 開 示 になされた 補 正 の 裏 付 けを 具 体 的 に 挙 げ<br />

なければならない」); 並 びに MPEP 第 2163.04 条 を 参 照 のこと。(「 出 願 人 がクレームを 補 正<br />

して 当 初 に 提 出 された 開 示 がその 補 正 をどこでどのように 裏 付 けているかを 指 摘 し、 審 査 官<br />

がその 開 示 は 発 明 者 が 当 該 出 願 の 提 出 された 時 点 において 補 正 の 保 護 対 象 を 所 有 していたこ<br />

とを 合 理 的 に 伝 えていないと 判 断 した 場 合 、 審 査 官 は 当 業 者 がそのクレームによって 定 義 さ<br />

れる 発 明 の 書 面 による 記 載 を 当 該 開 示 において 認 識 しないであろうことを 説 明 する 証 拠 若 し<br />

くは 理 由 を 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。」) 従 って、 書 面 による 記 載 の 不 足 による 原 クレー<br />

ムの 拒 絶 はまれなはずである。 記 載 要 件 が 満 たされているか 否 かの 審 査 は、 個 別 に 判 断 され<br />

ねばならない 事 実 に 関 する 問 題 となる。 参 照 として、In re Smith, 458 F.2d 1389, 1395, 173<br />

USPQ 679, 683 (CCPA 1972)(「 発 明 の 記 載 が、 第 112 条 に 適 合 するには 正 確 にどれほど[クレ<br />

ームの 発 明 に] 近 くなければならないかに 関 しては、ケースバイケースの 判 断 に 委 ねられねば<br />

237


ならない。」);In re Wertheim, 541 F.2dat 262, 191 USPQat 96( 審 査 は 主 に 事 実 に 基 づく<br />

ものであって 発 明 の 性 質 及 び 開 示 によって 当 業 者 に 知 らせられる 知 識 量 に 依 存 する。)<br />

1. クレームごとにそのクレーム 全 体 としてカバーしていることを 判 断 する<br />

クレーム 解 釈 は 審 査 過 程 の 重 要 部 分 である。 各 クレームは 個 別 に 分 析 され、 発 明 の 書 面 によ<br />

る 記 載 に 照 らしながら 整 合 性 を 有 する 最 も 広 く 合 理 的 な 解 釈 が 与 えられねばならない。 参 照<br />

事 例 として、In re Morris, 127 F.3d 1048, 1053-54, 44 USPQ2d 1023, 1027 (Fed. Cir. 1997)。<br />

全 体 のクレームが 前 提 部 分 の 用 語 及 び 移 行 句 を 含 めて 検 討 されねばならない。「 前 提 部 分 の<br />

用 語 」は 移 行 句 の 前 に、 例 えば「comprising(よりなる)」、「consisting essentially of( 実<br />

質 的 に~のみからなる)」 又 は「consisting of(のみからなる)」の 前 に 記 載 されるクレーム<br />

内 の 用 語 である。 移 行 句 「comprising」( 及 びその 他 の 相 当 句 、 例 えば「containing( 包 含 す<br />

る)」 及 び「including( 含 む)」)は「 非 限 定 」である― 明 示 的 に 挙 げられた 保 護 対 象 を 単 独 に<br />

若 しくは 挙 げられていない 保 護 対 象 と 組 み 合 わせて 対 象 に 含 める。 参 照 事 例 として、<br />

Genentech, Inc. v. Chiron Corp., 112 F.3d 495, 501, 42 USPQ2d 1608, 1613 (Fed. Cir.<br />

1997)(「Comprising」は 指 定 された 要 素 は 必 須 であるがその 他 の 要 素 を 加 えることができる<br />

ことを 意 味 するクレームの 文 言 に 使 用 される 専 門 用 語 であるにもかかわらず、 当 該 クレーム<br />

の 範 囲 内 で 構 成 概 念 を 形 成 する。);Ex parte Davis, 80 USPQ 448, 450 (Bd. App.<br />

1948)(「comprising」は「 大 量 であったとしても 特 定 されていない 構 成 要 素 を 包 含 するため<br />

に 当 該 クレームをオープンのままとする。」)MPEP 第 2111.03 条 も 参 照 のこと。「『consisting<br />

essentially of』の 言 葉 を 使 用 することによって 起 草 者 は、 当 該 発 明 は 必 然 的 に 記 載 された<br />

構 成 要 素 を 含 みながら 当 該 発 明 の 基 本 的 かつ 新 規 な 特 性 に 実 質 的 には 影 響 を 与 えない 掲 載 さ<br />

れない 構 成 要 素 に 対 して 開 かれていることを 示 唆 している。『consisting essentially of』<br />

クレームは『consisting of』」 方 式 で 書 かれるクローズド( 限 定 )クレームと『comprising』<br />

方 式 で 起 草 される 完 全 オープン( 非 限 定 )クレームとの 中 間 的 立 場 を 占 める。」PPG Industries<br />

v. Guardian Industries, 156 F.3d 1351, 1354, 48 USPQ2d 1351, 1353-54 (Fed. Cir. 1998)。<br />

特 許 法 第 102 条 及 び 第 103 条 に 基 づく 先 行 技 術 の 検 索 及 び 適 用 の 目 的 上 、 実 際 的 に 基 本 的 か<br />

つ 新 規 な 特 性 は 何 であるかについて 当 該 明 細 書 又 はクレームに 明 快 な 指 示 がない 場 合 、<br />

「consisting essentially of」は「comprising」に 相 当 すると 解 釈 される。 参 照 事 例 として、<br />

PPG, 156 F.3dat 1355、48 USPQ2dat 1355(「PPG は、その 明 細 書 で 当 該 発 明 の 基 本 的 かつ 新<br />

規 な 特 性 の 重 大 な 変 化 を 構 成 するとみなされるものを 明 確 にすることによって、その 特 許 の<br />

目 的 に『consisting essentially of』という 表 現 の 範 囲 を 定 義 することができた。」) 次 も<br />

参 照 のこと。AK Steel Corp. v. Sollac, 344 F3.d 1234, 1239-1240, 68 USPQ2d 1280, 1283-84<br />

(Fed. Cir. 2003);In re Janakirama-Rao, 317 F.2d 951, 954, 137 USPQ 893, 895-96 (CCPA<br />

1963)。 出 願 人 が、 先 行 技 術 の 追 加 工 程 又 は 材 料 が「consisting essentially of」の 記 載 に<br />

よって 排 除 されることに 甘 んずる 場 合 、 出 願 人 は、 追 加 工 程 又 は 構 成 要 素 の 採 用 が 出 願 人 の<br />

発 明 特 性 を 大 きく 変 えることになることを 証 明 する 責 任 を 有 する。In re De Lajarte, 337<br />

F.2d 870, 143 USPQ 256 (CCPA 1964)。MPEP 第 2111.03 条 も 参 照 のこと。クレーム 全 体 とし<br />

て、 前 提 部 分 に 記 載 されるすべての 限 定 を 含 めて(Pac-Tec Inc. v. Amerace Corp., 903 F.2d<br />

796, 801, 14 USPQ2d 1871, 1876 (Fed. Cir. 1990)( 構 造 的 限 定 を 構 成 する 前 提 部 分 の 文 言<br />

が、 実 際 にクレームされた 発 明 の 部 分 であることの 判 断 )を 参 照 )、 移 行 句 及 び 本 体 部 は 書 面<br />

記 載 要 件 を 満 足 していることを 十 分 に 裏 付 けられねばならない。 出 願 人 はクレームの 発 明 の<br />

限 定 のすべてをもってクレームの 発 明 を 記 載 することによりそれを 有 することを 証 明 する。<br />

238


Lockwood, 107 F.3dat 1572, 41 USPQ2dat 1966。<br />

審 査 官 はクレームごとに 評 価 を 行 い、クレームの 範 囲 及 び 意 味 を 明 確 にするため、 十 分 な 構<br />

造 、 行 為 又 は 機 能 が 前 提 部 分 の 主 張 を 含 めて、 挙 げられているかどうかを 判 断 しなくてはな<br />

らない。 参 照 事 例 として、Bell Communications Research, Inc. v. Vitalink Communications<br />

Corp., 55 F.3d 615, 620, 34 USPQ2d 1816, 1820 (Fed. Cir. 1995)(「クレーム 前 提 部 分 は<br />

当 該 クレーム 全 体 としてそのために 示 す 趣 旨 が 書 かれる。」)Corning Glass Works v. Sumitomo<br />

Elec. U.S.A., Inc., 868 F.2d 1251, 1257, 9 USPQ2d 1962, 1966 (Fed. Cir. 1989)( 前 提<br />

部 分 の 記 載 が 構 造 的 限 定 であるかどうかの 判 定 は、「 当 該 発 明 者 が 何 を 実 際 に 発 明 し、 当 該<br />

クレームによって 包 含 することを 意 図 したかの 理 解 を 得 るため」の 当 該 出 願 全 体 の 審 査 に 基<br />

づいてのみ 決 定 することができる。); 定 義 又 は 十 分 に 確 立 された 用 語 若 しくは 手 順 の 不 在 は、<br />

適 切 な 発 明 の 書 面 による 記 載 に 関 する 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 の 理 由 であっては<br />

ならない。ただし、 限 定 は 明 細 書 からクレームに 持 ち 込 んではならない。<br />

2. 全 体 の 出 願 を 検 討 し、 出 願 人 がクレームの 発 明 の 裏 付 けを 各 要 素 及 び/ 又 は 工 程 を 含 め<br />

てどのように 提 示 しているかを 理 解 する<br />

当 該 開 示 がクレームされた 保 護 対 象 の 書 面 記 載 要 件 を 満 たしているか 否 かを 判 断 する 前 に 審<br />

査 官 は、クレーム 及 び 全 体 の 明 細 書 を 具 体 的 な 実 施 例 、 図 及 び 配 列 リストを 含 めて 審 査 し、<br />

出 願 人 はクレームの 発 明 のさまざまな 特 徴 の 裏 付 けをどのように 提 示 しているかを 理 解 しな<br />

くてはならない。 要 素 は、 出 願 人 が 当 該 発 明 を 所 有 することを 確 認 するために 当 業 者 が 必 要<br />

とする 点 において 決 定 的 に 重 要 な 意 味 を 持 つことがある。 次 を 比 較 のこと。Rasmussen, 650<br />

F.2dat 1215, 211 USPQat 327(「Rasmussen の 明 細 書 を 読 んだ 当 業 者 はレイヤーが 接 着 する<br />

限 り 接 着 方 法 は 重 要 でないと 考 えるであろう」)( 強 調 は 原 文 のまま) 及 び Amgen, Inc. v.<br />

Chugai Pharmaceutical Co., Ltd., 927 F.2d 1200, 1206, 18 USPQ2d 1016, 1021 (Fed. Cir.<br />

1991)(「 化 合 物 の 着 想 には 発 明 者 がそれを 他 の 材 料 から 区 別 し、かつ、それを 入 手 する 方 法<br />

を 記 載 できるように 定 義 できることが 必 要 であることが、 我 々の 法 則 において 十 分 に 確 立 さ<br />

れている。」) 明 細 書 が 書 面 記 載 要 件 に 適 合 しているか 否 かの 分 析 では 審 査 官 に、クレームの<br />

範 囲 と 発 明 の 記 載 の 範 囲 とを 比 較 して 出 願 人 はクレームの 発 明 の 所 有 を 実 証 しているか 否 か<br />

を 判 断 することが 求 められる。かかる 審 査 は 出 願 が 提 出 された 時 点 における 当 業 者 の 立 場 か<br />

ら 実 施 されなければならず( 参 照 事 例 として、Wang Labs. v. Toshiba Corp., 993 F.2d 858,<br />

865, 26 USPQ2d 1767, 1774 (Fed. Cir. 1993))、また 当 該 発 明 分 野 の 決 定 要 因 及 び 当 該 技 術<br />

分 野 の 技 能 並 びに 知 識 水 準 を 含 めねばならない。 一 般 に 当 該 技 術 分 野 の 技 能 及 び 知 識 水 準 と<br />

書 面 記 載 要 件 を 満 足 するために 必 要 な 開 示 の 特 異 性 との 間 に 逆 相 関 関 係 は 存 在 しない。 当 該<br />

技 術 分 野 においてよく 知 られている 情 報 は 明 細 書 に 詳 細 に 記 載 する 必 要 はない。 参 照 事 例 と<br />

して、Hybritech, Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc., 802 F.2d 1367, 1379-80, 231 USPQ<br />

81, 90 (Fed. Cir. 1986)。<br />

3. 出 願 の 時 点 において 出 願 人 がクレームの 発 明 全 体 を 所 有 していたことを 当 業 者 に 通 知 す<br />

るに 十 分 な 書 面 による 記 載 があるか 否 かを 判 断 する<br />

(a) 原 クレーム<br />

所 有 はさまざまな 方 法 で 証 明 することができる。 例 えば、 所 有 はクレームの 発 明 の 現 実 の 実<br />

施 化 を 記 述 することにより 証 明 することができる。 所 有 はまた、 出 願 人 がクレームの 発 明 を<br />

所 有 していたことを 当 業 者 が 明 確 に 認 識 できる 詳 細 な 図 面 若 しくは 構 造 化 学 式 で 当 該 発 明 を<br />

明 確 に 描 写 することによって 証 明 することもできる。 当 該 発 明 の 適 切 な 書 面 による 記 載 は、<br />

239


発 明 者 がクレームの 発 明 を 所 有 していたことを 当 業 者 が 認 識 するであろう 限 りにおいて、 十<br />

分 で 関 連 性 のある 特 定 された 性 質 を 記 述 することによって 証 明 することができる。 参 照 事 例<br />

として、Purdue Pharma L.P. v. Faulding Inc., 230 F.3d 1320, 1323, 56 USPQ2d 1481, 1483<br />

(Fed. Cir. 2000)( 発 明 の 書 面 による 記 載 の「 審 理 は 事 実 に 基 づくものであって 個 別 に 評 価 さ<br />

れねばならない。」); 次 も 参 照 のこと。Pfaff v. Wells Electronics, Inc., 55 U.S.at 66,<br />

119 S.Ct.at 311, 48 USPQ2dat 1646(「『 発 明 』という 語 は、 単 に『 実 質 的 に 完 成 』してい<br />

る 概 念 ではなく、 完 成 している 概 念 を 示 さねばならない。 実 施 化 は 通 常 、 発 明 が 完 成 してい<br />

る 最 良 の 証 拠 を 提 示 するということは 事 実 である。ただし、 実 施 化 は 完 成 の 十 分 な 証 拠 であ<br />

るという 理 由 だけで 実 施 化 の 証 拠 がすべての 場 合 に 必 要 であるとするわけではない。 実 際 に、<br />

電 話 の 事 例 及 び 本 件 の 事 実 ともに、 発 明 は 完 成 しており 実 際 に 実 施 に 移 される 前 に 特 許 を 受<br />

けられる 状 態 であることが 証 明 可 能 であることを 実 証 している。」)<br />

明 細 書 は 発 明 者 が 実 施 例 を 構 築 し、 若 しくは 当 該 クレームのすべての 限 定 を 満 たすプロセス<br />

を 実 行 し、 当 該 発 明 は 意 図 した 目 的 のために 有 効 であろうことを 明 らかにしたことを 証 明 す<br />

ることにより 現 実 の 実 施 化 を 記 載 することができる。Cooper v. Goldfarb, 154 F.3d 1321,<br />

1327, 47 USPQ2d 1896, 1901 (Fed. Cir. 1998)。 次 も 参 照 のこと。UMC Elecs. Co. v. United<br />

States, 816 F.2d 647, 652, 2 USPQ2d 1465, 1468 (Fed. Cir. 1987)( 当 該 クレームのすべ<br />

ての 限 定 を 含 む 物 理 的 実 施 例 が 無 い 限 り・・・ 発 明 の 実 施 化 はあり 得 ない);Estee Lauder Inc.<br />

v. L fOreal, S.A., 129 F.3d 588, 593, 44 USPQ2d 1610, 1614 (Fed. Cir. 1997)(「 実 施<br />

化 は 発 明 者 が 当 該 発 明 はその 意 図 した 目 的 に 有 効 であると 確 認 するまで 生 じない。」);<br />

Mahurkar v. C.R. Bard, Inc., 79 F.3d 1572, 1578, 38 USPQ2d 1288, 1291 (Fed. Cir. 1996)( 当<br />

該 発 明 が 意 図 した 目 的 に 有 効 であるとの 確 認 は 当 該 発 明 及 びそれが 解 決 する 問 題 の 性 質 によ<br />

って 試 験 を 必 要 とする 場 合 がある。) 生 物 学 的 材 料 の 現 実 の 実 施 化 の 説 明 は 特 許 法 施 行 規 則 第<br />

1.801 条 以 下 の 要 件 に 従 って 行 われる 寄 託 を 具 体 的 に 記 載 することによって 証 明 することが<br />

できる。 特 に 特 許 法 施 行 規 則 第 1.804 条 及 び 第 1.809 条 を 参 照 のこと。 第 1 段 落 ( 上 掲 )も 参<br />

照 のこと。<br />

出 願 人 がクレームの 発 明 全 体 を 所 有 することを 証 明 することができる 十 分 に 詳 細 な 図 面 又 は<br />

構 造 的 化 学 式 を 開 示 することによって、 出 願 人 は 発 明 の 所 有 を 証 明 することができる。 参 照<br />

事 例 として、Vas-Cath, 935 F.2dat 1565, 19 USPQ2dat 1118(「 図 面 単 独 で 第 112 条 により<br />

求 められる 発 明 の『 書 面 による 説 明 』を 提 示 することができる」);In re Wolfensperger, 302<br />

F.2d 950, 133 USPQ 537 (CCPA 1962)( 出 願 人 の 明 細 書 の 図 面 は 係 争 中 のクレーム 限 定 に 対 す<br />

る 十 分 な 書 面 による 記 載 の 裏 付 けを 提 示 した);Autogiro Co. of America v. United States,<br />

384 F.2d 391, 398, 155 USPQ 697, 703 (Ct. Cl. 1967)(「 視 覚 的 表 示 が 言 葉 に 肉 付 けする<br />

ことができるそのような 事 例 において、 図 面 は 明 細 書 と 同 様 に 同 一 限 定 をもって 使 用 するこ<br />

とができる。」);Eli Lilly, 119 F.3dat 1568, 43 USPQ2dat 1406(「 化 学 物 質 を 含 むクレ<br />

ームにおいて 一 般 式 は 通 常 、 属 クレームが 何 を 包 含 するかを 特 異 性 で 示 す。 当 業 者 はかかる<br />

数 式 を 他 のものから 区 別 することができ、 当 該 クレームが 包 含 する 種 の 多 くを 特 定 すること<br />

ができる。 従 って、かかる 数 式 は 一 般 的 にクレームの 属 について 適 切 な 発 明 の 記 載 となる。<br />

その 発 明 の 記 載 は 新 規 若 しくは 従 来 のものではないことの 詳 細 記 述 だけしか 必 要 としない。<br />

参 照 として、Hybritech v. Monoclonal Antibodies, 802 F.2dat 1384, 231 USPQ at 94;Fonar<br />

Corp. v. General Electric Co., 107 F.3dat 1549, 41 USPQ2d at 1805(ソースコード 記 載<br />

不 要 )。このことはクレームの 発 明 が 製 品 に 向 けられていようがプロセスに 向 けられていよう<br />

240


が 同 様 に 当 てはまる。<br />

出 願 人 はまた、クレームの 発 明 、すなわち、 完 成 又 は 部 分 構 造 、その 他 の 物 理 的 及 び/ 又 は<br />

化 学 的 特 性 、 機 能 及 び 構 造 間 に 周 知 された 又 は 開 示 された 相 互 関 係 と 結 び 付 いたときの 機 能<br />

特 性 、 若 しくはかかる 特 性 のある 組 み 合 わせを 出 願 人 が 所 有 していたことの 証 拠 を 提 供 する<br />

十 分 に 詳 細 な 関 連 性 のある 識 別 特 性 を 開 示 することによって 発 明 が 完 成 していることを 証 明<br />

することもできる。Enzo Biochem, 323 F.3dat 964, 63 USPQ2dat 613。 例 えば、 遺 伝 子 の 制<br />

限 酵 素 地 図 の 存 在 は 遺 伝 子 が 単 離 されていることの 陳 述 に 適 切 な 場 合 がある。 当 業 者 は、 開<br />

示 された 遺 伝 子 が 他 者 によって 単 離 された 遺 伝 子 と 同 一 であるか 又 は 異 なるかを 制 限 酵 素 地<br />

図 の 比 較 によって 判 断 することができる 場 合 がある。その 一 方 、 遺 伝 子 がヌクレアーゼによ<br />

って 消 化 される 得 るかもしれないとする 証 拠 は、 任 意 の 遺 伝 子 がヌクレアーゼによって 消 化<br />

されるであろうので 一 般 的 には 関 連 特 性 を 示 すものとならないであろう。 同 様 に、mRNA の 単<br />

離 及 び 標 的 とするタンパク 質 を 生 じるその 発 現 は、そのタンパク 質 に 対 する mRNA を 有 するこ<br />

との 強 力 な 証 拠 となる。<br />

生 体 分 子 によっては、 識 別 特 性 の 例 に 配 列 、 構 造 、 結 合 親 和 力 、 結 合 特 異 性 、 分 子 重 量 及 び<br />

長 さを 含 める。 構 造 式 は 特 異 的 な 分 子 を 持 つことを 実 証 する 便 利 な 方 法 を 提 供 するが、その<br />

他 の 識 別 特 性 若 しくは 特 性 の 組 み 合 わせが 必 要 な 所 有 を 実 証 するかもしれない。 連 邦 巡 回 区<br />

控 訴 裁 判 所 の 説 明 のとおり、「(1) 実 施 例 はその 発 明 の 書 面 による 記 載 の 妥 当 性 を 裏 付 ける 必<br />

要 はない。(2) 書 面 による 記 載 の 基 準 は 発 明 の 現 実 の 実 施 化 がないとしても・・・ 満 たされてい<br />

るかもしれない。 及 び、(3) 生 体 高 分 子 を 含 む 発 明 の 適 切 な 書 面 による 記 載 は 既 存 構 造 の 説 明<br />

を 含 まねばならないとする『それ 自 体 の』ルールは 存 在 しない。」Falkner v. Inglis, 448 F.3d<br />

1357, 1366, 79 USPQ2d 1001, 1007 (Fed. Cir. 2006)。 次 も 参 照 のこと。Capon v. Eshhar,<br />

418 F.3dat 1358, 76 USPQ2dat 1084(「 審 判 部 は、 遺 伝 子 が 既 存 の DNA 断 片 の 新 規 組 み 合 わ<br />

せであるクレームのキメラ 遺 伝 子 のヌクレオチド 配 列 について 構 造 又 は 式 若 しくは 化 学 名 を<br />

あらためて 表 明 していないことを 理 由 に 当 該 明 細 者 は 書 面 記 載 要 件 を 満 たしていないと 判 定<br />

して 判 断 を 誤 った。) 例 えば、その 構 造 、 式 、 化 学 名 、 物 理 的 特 性 又 は 公 の 保 管 場 所 への 寄 託<br />

によって 十 分 に 特 徴 付 けられた 抗 原 の 開 示 は、その 抗 原 への 結 合 親 和 力 によってクレームさ<br />

れた 抗 原 の 適 切 な 書 面 による 記 載 を 提 供 している。Noelle v. Lederman, 355 F.3d 1343, 1349,<br />

69 USPQ2d 1508, 1514 (Fed. Cir. 2004)(それ 自 体 が 適 切 に 記 載 されていない 抗 原 への 結 合<br />

親 和 力 によって 定 義 される 抗 原 に 対 して、 書 面 による 記 載 の 裏 付 けが 欠 如 しているとの 判<br />

示 。)さらに、 特 定 の 酵 素 による 特 異 的 な 切 断 、 断 片 の 等 電 点 、 詳 細 な 制 限 酵 素 地 図 、 酵 素 活<br />

性 の 比 較 、 又 は 抗 体 の 交 差 反 応 性 はクレームの 発 明 の 所 有 を 当 業 者 に 対 して 証 明 するに 十 分<br />

なものとなり 得 る。 参 照 として、Lockwood, 107 F.3d at 1572, 41 USPQ2d at 1966(「 発 明<br />

の 書 面 による 記 載 」 要 件 は「クレームの 発 明 を 十 分 に 規 定 する 語 、 構 造 、 形 状 、ダイアグラ<br />

ム、 式 等 の 記 述 的 手 段 」を 用 いることによって 満 たされ 得 る)。<br />

機 能 単 独 での 定 義 は、「 当 該 遺 伝 子 は 何 であるかではなく、 何 をするかの 表 示 でしかない」<br />

との 理 由 からコード 配 列 を 十 分 に 記 載 するには「 足 りない」。Eli Lilly, 119 F.3at 1568, 43<br />

USPQ2dat 1406。 次 も 参 照 のこと。Fiers, 984 F.2dat 1169-71, 25 USPQ2dat 1605-06(Amgen<br />

Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200, 18 USPQ2d 1016 (Fed. Cir. 1991)<br />

を 考 察 )。 化 学 発 明 の 適 切 な 書 面 による 記 載 もまた、クレームされた 化 学 発 明 を 入 手 すること<br />

の 単 なる 望 み 若 しくは 計 画 ではなく、 構 造 、 式 、 化 学 名 又 は 物 質 的 特 性 などの 正 確 な 定 義 を<br />

必 要 とする。 参 照 事 例 として、Univ. of Rochester v. G.D. Searle & Co., 358 F.3d 916, 927,<br />

241


69 USPQ2d 1886, 1894-95 (Fed. Cir. 2004)( 係 争 中 の 特 許 は PGHS-2 遺 伝 子 製 品 の 活 性 を 選<br />

択 的 に 抑 制 する 非 ステロイド 系 化 合 物 を 投 与 することにより PGHS-2 の 活 性 を 選 択 的 に 抑 制<br />

する 方 法 をクレームした。ただし、 当 該 特 許 はそのクレーム 方 法 で 使 用 可 能 な 化 合 物 を 何 ら<br />

開 示 していなかった。PGHS-2 遺 伝 子 製 品 の 発 現 又 は 活 性 を 抑 制 するものを 特 定 するために 化<br />

合 物 をスクリーニングする 検 定 についての 記 述 は 存 在 していたが、ペプチド、ポリヌクレオ<br />

チド 及 び 有 機 小 分 子 が PGHS-2 を 選 択 的 に 抑 制 することに 関 する 開 示 は 存 在 しなかった。 裁 判<br />

所 は、「かかる 開 示 なくしてクレームの 方 法 は 記 述 されていたと 言 うことはできない」と 判<br />

示 した。)<br />

クレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 を 行 使 する 場 合 、それは 明 細 書 及 び「その 等 価 物 」<br />

の 対 応 する 構 造 、 材 料 若 しくは 行 為 に 及 ぶと 解 釈 されねばならない。 特 許 法 第 112 条 第 6 段<br />

落 を 参 照 のこと。 次 も 参 照 のこと。B. Braun Medical, Inc. v. Abbott Lab., 124 F.3d 1419,<br />

1424, 43 USPQ2d 1896, 1899 (Fed. Cir. 1997)。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 、ミーンズ( 又 は<br />

ステップ)プラス・ファンクション・クレーム 限 定 の 裏 付 けが 存 在 するか 否 かの 検 討 において、<br />

審 査 官 は 当 該 明 細 書 の 発 明 部 分 の 概 要 並 びに 詳 細 説 明 に 記 載 される 原 開 示 のみならず 原 クレ<br />

ーム、 要 約 及 び 図 面 も 検 討 しなくてはならない。ミーンズ( 又 はステップ)プラス・ファンク<br />

ション・クレーム 限 定 は、 次 に 掲 げる 各 号 を 満 たしている 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に<br />

基 づき 適 切 に 記 載 されている。(1) 発 明 の 書 面 による 記 載 は、 適 切 に 記 載 された 特 定 の 構 造 、<br />

材 料 若 しくは 行 為 をミーンズ( 又 はステップ)プラス・ファンクション・クレーム 限 定 に 挙 げ<br />

られる 機 能 に 適 切 に 結 び 付 けている 又 は 関 連 付 けている。 又 は、(2) 当 業 者 はどのような 構 造 、<br />

材 料 又 は 行 為 がミーンズ( 又 はステップ)プラス・ファンクション・クレーム 限 定 に 挙 げられ<br />

る 機 能 を 実 行 するかを 周 知 していたであろうことが、 出 願 の 事 実 に 基 づき 明 確 である。 次 に<br />

事 項 にも 注 意 のこと。 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 拒 絶 は、「 明 細 書 に 特 許 法 第 112 条<br />

第 1 段 落 を 満 足 する 適 切 な 記 述 がある 場 合 、 明 確 さに 欠 けるとしてそれ 自 体 に 異 議 を 申 し 立<br />

てられていないミーンズ・プラス・ファンクション 記 載 に 関 して、 有 効 にすることができな<br />

い。」In re Noll, 545 F.2d 141, 149, 191 USPQ 721, 727 (CCPA 1976)。 特 許 法 第 112 条<br />

第 6 段 落 の 適 用 性 の 判 断 については 補 足 的 審 査 指 針 を 参 照 のこと。 連 邦 公 報 65 巻 38510 頁<br />

(2000 年 6 月 21 日 )MPEP 第 2181 条 も 参 照 のこと。<br />

当 業 者 にとって 何 が 従 来 型 若 しくは 周 知 であるかは 詳 細 に 開 示 される 必 要 はない。 参 照 とし<br />

て、Hybritech Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc., 802 F.2dat 1384, 231 USPQat 94。<br />

次 も 参 照 のこと。Capon v. Eshhar, 418 F.3d 1349, 1357, 76 USPQ2d 1078, 1085 (Fed. Cir.<br />

2005)(「『 書 面 による 記 載 』 要 件 は 特 定 の 発 明 及 び 知 識 の 状 態 を 検 討 する 中 で 適 用 されねば<br />

ならない・・・。 各 分 野 が 進 展 するにつれて、 知 られていることと、 各 発 明 の 寄 与 によって 付 加<br />

されることとの 間 の 均 衡 も 進 化 する。」) 当 業 者 がその 発 明 者 が 出 願 時 にクレームの 発 明 を 所<br />

有 していたことを 理 解 していただろう 場 合 、そのクレームのあらゆるニュアンスが 明 細 書 に<br />

明 示 的 に 記 載 されていないとしても 適 切 な 発 明 の 記 載 要 件 は 満 たされる。 参 照 事 例 として、<br />

Vas-Cath, 935 F.2dat 1563, 19 USPQ2dat 1116; Martin v. Johnson, 454 F.2d 746, 751, 172<br />

USPQ 391, 395 (CCPA 1972)(「 発 明 の 説 明 は 十 分 であるために ipsis verbis [すなわち、「 同<br />

一 語 で」]ある 必 要 はない。」)<br />

単 一 の 開 示 された 実 施 例 又 は 種 に 限 定 されるクレームは 単 一 の 実 施 例 又 は 種 に 関 するクレー<br />

ムとして 分 析 されるのに 対 して、 当 該 クレームの 対 象 範 囲 内 において 2 以 上 の 実 施 例 又 は 種<br />

を 包 含 するクレームは 属 に 関 するクレームとして 分 析 される。MPEP 第 806.04 条 (e)を 参 照 の<br />

242


こと。<br />

i) 単 一 の 実 施 例 又 は 種 に 関 する 各 クレームについて<br />

(A) 当 該 出 願 がクレームの 発 明 の 現 実 の 実 施 化 を 記 載 しているか 否 かを 判 断 する。<br />

(B) 当 該 出 願 が 実 際 の 発 明 の 実 施 化 を 記 載 していない 場 合 、 当 該 発 明 は、 出 願 人 がクレーム<br />

の 発 明 全 体 を 所 有 していたことを 証 明 するのに 十 分 に 詳 細 な 図 面 の 具 体 化 又 は 構 造 的 化 学 式<br />

によって 証 拠 立 てられるように 完 成 していたか 否 かを 判 断 する。<br />

(C) 出 願 が 上 記 で 考 察 するように 実 際 の 発 明 の 実 施 化 又 は 図 面 の 具 体 化 又 は 構 造 的 化 学 式 を<br />

記 載 していない 場 合 、 当 該 発 明 は、 出 願 人 がクレームの 発 明 を 所 有 していたことを 証 明 でき<br />

る 十 分 に 詳 細 な 当 該 発 明 のその 他 の 記 述 によって 証 拠 立 てられるように 特 徴 的 に 識 別 する 特<br />

性 について 明 確 に 述 べられていたか 否 かを 判 断 する。<br />

(1) 出 願 時 の 出 願 がクレームの 発 明 全 体 の 完 成 構 造 ( 又 はプロセスの 行 為 )を 記 載 しているか<br />

否 かを 判 断 する。 種 又 は 実 施 例 の 完 成 構 造 は 通 常 、 発 明 の 記 載 は、クレームの 発 明 の 所 有 を<br />

証 明 できる「 十 分 な、 明 確 、 簡 潔 かつ 正 確 な 言 葉 で」 明 記 されることという 要 件 を 満 たして<br />

いる。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 。 次 を 参 照 のこと。Fields v. Conover, 443 F.2d 1386, 1392,<br />

170 USPQ 276, 280 (CCPA 1971)( 明 細 書 はクレームの 発 明 を 裏 付 けるために 必 要 な「 十 分 な、<br />

明 確 、 簡 潔 かつ 正 確 な 書 面 による 記 載 」を 欠 いていたため、 書 面 による 記 載 が 不 足 している<br />

と 認 定 した)。 完 成 構 造 が 開 示 される 場 合 、 書 面 記 載 要 件 はその 種 又 は 実 施 例 について 満 たさ<br />

れており、 書 面 による 記 載 の 不 足 に 関 する 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 をすべきでは<br />

ない。<br />

(2) 出 願 時 の 出 願 がクレームの 発 明 全 体 の 完 成 構 造 ( 又 はプロセスの 行 為 )を 開 示 していない<br />

場 合 、 当 該 明 細 書 は、 当 業 者 が 出 願 人 はクレームの 発 明 を 所 有 していたことを 認 識 するであ<br />

ろう、 十 分 な、 明 確 、 簡 潔 かつ 正 確 な 言 葉 で、クレームの 発 明 を 記 載 できるのに 十 分 なその<br />

他 の 関 連 性 のある 識 別 特 性 を 開 示 しているか 否 かを 判 断 する。 例 えば、 当 該 技 術 が 構 造 と 機<br />

能 との 間 に 強 力 な 相 関 関 係 を 構 築 していた 場 合 、 当 業 者 はその 機 能 の 説 明 から 合 理 的 信 頼 度<br />

でクレームの 発 明 の 構 造 を 予 想 できたであろう。 従 って、 書 面 記 載 要 件 は、 構 造 と 機 能 との<br />

間 に 十 分 に 確 立 された 相 互 関 係 が 存 在 する 場 合 、 機 能 と 最 小 限 の 構 造 の 開 示 によって 満 たさ<br />

れる 可 能 性 がある。その 一 方 でこのような 相 関 関 係 が 無 い 場 合 、 機 能 と 最 小 限 の 構 造 の 単 な<br />

る 説 明 から 当 該 構 造 を 認 識 若 しくは 理 解 できる 可 能 性 は 極 めて 低 い。 後 者 の 場 合 、 機 能 単 独<br />

の 開 示 は 所 有 に 対 する 望 みに 過 ぎず、 書 面 記 載 要 件 を 満 たさない。 参 照 として、Eli Lilly, 119<br />

F.3dat 1568, 43 USPQ2dat 1406(「 発 明 を 行 ったとして 達 成 できるかもしれない 成 果 」を 単<br />

に 提 供 しただけでは 書 面 記 載 要 件 は 満 たされない);In re Wilder, 736 F.2d 1516, 1521, 222<br />

USPQ 369, 372-73 (Fed. Cir. 1984)( 明 細 書 は「クレームの 発 明 は、 成 功 を 収 めてその 発 明<br />

がうまくいけば 問 題 を 改 善 するとする 出 願 人 が 望 む 目 標 を 述 べているに 過 ぎない」ことを 理<br />

由 として、 書 面 による 記 載 の 不 足 による 拒 絶 を 支 持 )Fonar, 107 F.3d at 1549, 41 USPQ2d at<br />

1805(その 技 術 分 野 において 十 分 なソフトウェア 機 能 の 開 示 )を 比 較 のこと。<br />

明 細 書 が 出 願 人 はクレームの 発 明 を 所 有 していたことを 証 明 しているか 否 かは 単 独 の 単 純 な<br />

判 断 ではなく、むしろ 数 多 くの 要 因 を 検 討 することによって 得 られる 事 実 認 定 である。 所 有<br />

の 十 分 な 証 拠 が 存 在 するか 否 かを 判 断 するための 要 因 は、 当 該 技 術 分 野 の 技 能 及 び 知 識 水 準 、<br />

部 分 構 造 、 物 理 的 及 び/ 又 は 化 学 特 性 、 機 能 的 特 性 単 独 で、 若 しくは 構 造 と 機 能 間 の 周 知 の<br />

又 は 開 示 された 相 関 関 係 と 連 動 して、 及 びクレームの 発 明 を 製 造 する 方 法 を 含 む。クレーム<br />

の 発 明 をその 他 の 材 料 から 区 別 し、 当 業 者 を 出 願 人 はクレームの 種 を 所 有 していたとの 結 論<br />

243


に 導 くであろうような 識 別 特 性 の 任 意 の 組 合 せの 開 示 は 十 分 である。Eli Lilly, 119 F.3dat<br />

1568, 43 USPQ2dat 1406 を 参 照 のこと。 特 許 法 第 112 条 の 要 件 を 満 たすために 必 要 とされる<br />

発 明 の 記 載 は、「 問 題 となっている 発 明 の 性 質 及 び 範 囲 によって、すでに 存 在 している 科 学<br />

的 及 び 技 術 的 知 識 によって 異 なる。」Capon v. Eshhar, 418 F.3d at 1357, 76 USPQ2d at 1084。<br />

特 許 及 び 当 該 技 術 分 野 の 印 刷 刊 行 物 は 技 術 が 成 熟 しているか 否 か 並 びに 知 識 及 び 技 能 の 水 準<br />

は 当 該 技 術 分 野 においてどうかを 判 断 するために 依 拠 されるべきである。 成 熟 した 技 術 のほ<br />

とんどで、またそこにおいて 当 該 技 術 分 野 における 知 識 及 び 技 能 水 準 が 高 いところでは、 書<br />

面 による 記 載 の 問 題 は、 明 細 書 が 発 明 の 製 造 方 法 及 び 発 明 の 機 能 のみを 開 示 していたとして<br />

も、 当 初 に 提 出 された 出 願 に 記 載 されるクレームについて 提 起 されるべきではない。 参 照 事<br />

例 として、In re Hayes Microcomputer Products, Inc. <strong>Patent</strong> Litigation, 982 F.2d 1527,<br />

1534-35, 25 USPQ2d 1241, 1246 (Fed. Cir. 1992)(「 当 業 者 はその 明 細 書 に 記 載 される 必 要<br />

工 程 を 実 行 するためのマイクロプロセッサをプログラムする 方 法 を 周 知 しているであろう。<br />

従 って、 発 明 者 は 自 らの 発 明 について 細 部 まで 記 載 する 必 要 はない。 出 願 人 の 開 示 義 務 は 発<br />

明 が 関 係 する 技 術 分 野 によって 変 化 する。 一 定 の 機 能 を 実 行 できるマイクロプロセッサを 開<br />

示 することは、 当 業 者 が、 何 が 意 図 されており、かつ、それを 実 行 する 方 法 を 周 知 している<br />

場 合 、 第 112 条 第 1 段 落 の 要 件 を 満 たすために 十 分 である。」)<br />

その 一 方 で、 新 たに 起 こりつつある 予 測 不 可 能 な 技 術 分 野 における 発 明 、 若 しくは 当 業 者 に<br />

とって 周 知 であるが 合 理 的 に 予 測 できない 要 因 によって 特 徴 付 けられる 発 明 については、 所<br />

有 を 証 明 するためにより 多 くの 証 拠 が 求 められる。 例 えば、 当 該 発 明 及 び 当 該 機 能 を 製 造 す<br />

る 方 法 のみの 開 示 はプロダクト・バイ・プロセス・クレーム 以 外 の 製 品 クレームを 裏 付 ける<br />

ことは 十 分 でないかもしれない。 参 照 事 例 として、Fiers v. Revel, 984 F.2dat 1169, 25<br />

USPQ2dat 1605;Amgen, 927 F.2dat 1206, 18 USPQ2dat 1021。 当 該 プロセスが 実 際 に 当 該 製<br />

品 を 生 産 するために 使 用 されていた 場 合 、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの 書 面 記<br />

載 要 件 は 明 らかに 満 たされる。ただし、その 要 件 は 当 該 明 細 書 に 記 載 される 行 為 を 実 施 する<br />

ことが 可 能 である、 若 しくは 当 該 製 品 はそのプロセスによって 生 産 されることが 明 確 でない<br />

場 合 は 満 たされないかもしれない。さらに、 当 該 製 品 に 新 たな 特 性 が 無 い 場 合 の 部 分 構 造 の<br />

開 示 はクレームの 発 明 の 所 有 を 証 明 するには 十 分 でないかもしれない。 参 照 事 例 として、<br />

Amgen, 927 F.2d at 1206, 18 USPQ2d at 1021(「 遺 伝 子 は 複 雑 であるが 化 合 物 であって、 化<br />

合 物 の 着 想 には 発 明 者 がそれを 他 の 材 料 から 区 別 し、かつ、それを 入 手 する 方 法 を 記 載 でき<br />

るように 定 義 できることが 必 要 であることが、 我 々の 法 則 において 十 分 に 確 立 されている。<br />

化 学 物 質 の 構 造 を 頭 の 中 に 描 かない 限 り、 又 はその 製 造 方 法 、その 物 理 的 若 しくは 化 学 的 な<br />

特 性 、 若 しくは 何 であれそれを 十 分 に 区 別 する 特 性 によってそれを 定 義 できない 限 り、 着 想<br />

は 生 まれない。 例 えばヒトエリスロポイエチンをコードするなど、その 主 要 な 生 物 学 的 特 性<br />

だけによってそれを 特 定 することは 十 分 ではない。 主 張 される 着 想 がそれ 以 外 の 特 異 性 を 有<br />

しないことは、その 生 物 学 的 特 性 を 有 する 任 意 の 材 料 の 同 一 性 を 知 ろうとする 望 みに 過 ぎな<br />

い。 発 明 者 が、それを 入 手 する 方 法 とともにそれを 他 の 材 料 から 区 別 できるように 遺 伝 子 の<br />

詳 細 な 構 成 を 想 定 できない 場 合 、 実 施 化 が 生 ずるまで、すなわちその 遺 伝 子 が 単 離 されるま<br />

での 間 、 着 想 は 達 成 されていないと 判 定 した。」)( 引 用 省 略 )このような 事 例 において 主 張 さ<br />

れる 着 想 が 不 合 格 になるのは、 単 にその 分 野 が 予 測 不 可 能 であるから、 又 は 実 験 化 学 を 取 り<br />

巻 く 一 般 不 確 定 性 のためではなく、その 着 想 が 発 明 者 の 発 明 の 着 想 の 特 異 性 を 損 なう 事 実 の<br />

不 確 実 性 によって 完 了 していないからである。Burroughs Wellcome Co. v. Barr Laboratories<br />

244


Inc., 40 F.3d 1223, 1229, 32 USPQ2d 1915, 1920 (Fed. Cir. 1994)。 有 効 な 実 施 化 は 当 該<br />

発 明 の 着 想 ( 従 って、 所 有 )を 確 証 する 証 拠 のみを 提 供 する。 同 文 献 。<br />

(a)、(b) 又 は(c)の 少 なくとも 1 つにより 記 載 される 基 準 を 満 たさない 種 に 対 するいずれのク<br />

レームも、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 適 切 な 書 面 による 記 載 が 不 足 するとして 拒 絶 さ<br />

れねばならない。<br />

ii) 属 に 関 する 各 クレームについて<br />

クレームの 属 に 対 する 書 面 記 載 要 件 は、 実 際 の 発 明 の 実 施 化 ( 上 記 i)(A) 参 照 )、 図 面 の 具 体<br />

化 ( 上 記 i)(B) 参 照 )によって、 若 しくは 関 連 性 のある 識 別 特 性 すなわち 構 造 又 はその 他 の 物<br />

理 的 及 び/ 又 は 化 学 的 特 性 の 開 示 によって、 機 能 と 構 造 との 間 の 周 知 又 は 開 示 された 相 関 関<br />

係 と 結 び 付 いた 機 能 特 性 によって、 若 しくは 出 願 人 がクレームの 属 を 所 有 していたことを 証<br />

明 するに 十 分 である 認 定 特 性 の 組 み 合 わせによって、 種 の 代 表 的 な 数 の 十 分 な 説 明 を 介 して<br />

満 たされる 可 能 性 がある。Eli Lilly, 119 F.3dat 1568, 43 USPQ2dat 1406 を 参 照 のこと。<br />

「 種 の 代 表 的 な 数 」とは 適 切 に 記 載 される 種 は 属 全 体 を 代 表 することをいう。 従 って、 当 該<br />

属 内 に 相 当 な 変 化 が 存 在 する 場 合 は 当 該 属 内 の 変 化 を 反 映 するに 十 分 な 種 の 種 類 を 記 載 しな<br />

ければならない。 属 内 に 包 含 される 1 種 のみの 開 示 は、その 開 示 が「 特 許 権 者 はその 属 を 構<br />

成 するために 十 分 な 種 を 意 図 していると 表 明 している」 場 合 に 限 り、その 属 に 向 けられたク<br />

レームを 適 切 に 記 載 する。 参 照 として、Enzo Biochem, 323 F.3d at 966, 63 USPQ2dat<br />

1615;Noelle v. Lederman, 355 F.3d 1343, 1350, 69 USPQ2d 1508, 1514 (Fed. Cir. 2004)(Fed.<br />

Cir. 2004) (「バイオ 技 術 発 明 の 特 許 権 者 は、 具 体 的 に 列 挙 されたもの 以 外 に 種 から 得 られ<br />

る 結 果 に 予 測 不 可 能 性 があるかもしれないという 理 由 で、 限 られた 数 の 種 を 記 載 しただけの<br />

後 で 必 ずしも 属 をクレームできないというわけではない。)「 特 許 権 者 は、 証 拠 が 当 業 者 は 開<br />

示 されたもの 以 外 の 任 意 の 種 の 発 明 に 実 用 可 能 性 を 予 測 することができなかったであろうこ<br />

とを 示 している 場 合 、・・・ 単 一 の 種 を 開 示 したことに 基 づきその 属 を 構 成 するに 十 分 な 種 を 発<br />

明 したとは 見 なされないであろう。」In re Curtis, 354 F.3d 1347, 1358, 69 USPQ2d 1274,<br />

1282 (Fed. Cir. 2004) ( 摩 擦 を 増 進 するコーティングを 施 した PTFE デンタルフロスに 向 け<br />

られたクレームは、 微 結 晶 性 ワックスコーティングの 開 示 によって 裏 付 けられておらず、 当<br />

該 開 示 にも、 当 該 記 録 の 他 のどこにも 出 願 人 がその 他 のコーティングが PTFE デンタルフロス<br />

に 適 していることを 伝 えていることを 示 している 証 拠 は 無 かった。)その 一 方 で、1 種 が 1 属<br />

を 適 切 に 裏 付 ける 状 況 が 存 在 するかもしれない。 参 照 事 例 として、Rasmussen, 650 F.2dat<br />

1214, 211 USPQat 326-27( 一 方 のレイヤーを 他 方 に 適 切 に 貼 り 付 ける 単 一 の 方 法 の 開 示 は、<br />

当 該 明 細 書 を 読 む 当 業 者 はレイヤーが 接 着 される 限 りにおいてそれらがどのように 接 着 され<br />

るかは 重 要 でないことを 理 解 したであろうという 理 由 で、「 貼 り 付 けること」に 対 する 属 ク<br />

レームを 裏 付 けるために 十 分 であった。)In re Herschler, 591 F.2d 693, 697, 200 USPQ 711,<br />

714 (CCPA 1979)(「 生 理 学 的 に 活 性 なステロイド」と DMSO の 混 合 物 を 使 用 する 方 法 に 対 して<br />

書 かれたクレームを 裏 付 けるに 十 分 な DMSO のコルチコステロイドの 開 示 。なぜなら「 既 知 の<br />

化 合 物 の 当 該 発 明 にとって 補 助 的 な 方 法 での 使 用 は、 当 業 者 を 化 合 物 のそのクラスに 導 くこ<br />

ととなるほど 具 体 的 である 限 りにおいて 対 応 する 書 面 による 記 載 がなければならない。 当 該<br />

明 細 書 のそれら 既 知 の 化 合 物 の 機 能 的 説 明 はその 発 明 の 記 載 として 十 分 であるかもしれな<br />

い。」);In re Smythe, 480 F.2d 1376, 1383, 178 USPQ 279, 285 (CCPA 1973)(「 液 体 に<br />

対 して 不 活 性 である 空 気 又 はその 他 の 気 体 」という 表 現 は、 空 気 又 はその 他 の 気 体 細 分 化 媒<br />

体 の 特 性 及 び 機 能 の 記 載 は 出 願 人 の 発 明 が 広 く「 不 活 性 液 体 」の 使 用 を 含 むことを 当 業 者 に<br />

245


示 唆 していたであろうので、「 不 活 性 液 状 媒 体 」に 対 するクレームを 裏 付 けるのに 十 分 であ<br />

った。)<br />

連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 明 細 書 がクレームされる 物 の 実 施 例 を 明 確 に 記 載 することで、 必<br />

ずしも 包 括 的 なクレームの 文 言 を 裏 付 けて 特 許 法 第 112 条 の 要 件 を 満 たすことができるとは<br />

限 らないと 説 明 している。LizardTech v. Earth Resource Mapping, Inc., 424 F.3d 1336, 1346,<br />

76 USPQ2d 1731, 1733 (Fed. Cir. 2005) 論 点 は、 当 業 者 が 出 願 人 が 幅 広 くクレームされたよ<br />

うに 当 該 発 明 を 発 明 し、かつ、 所 有 していたことを 理 解 できたであろうか 否 かである。<br />

LizardTech 事 例 においてシームレスな 離 散 ウェーブレット 変 換 (DWT)を 起 こす 一 般 的 方 法 に<br />

対 するクレームは、 当 該 明 細 書 はシームレスな DWT を 起 こす 1 特 定 方 法 だけを 教 示 したので<br />

あって 当 該 明 細 書 がそれ 以 上 の 一 般 的 方 法 を 意 図 していた 証 拠 は 存 在 しないことを 理 由 とし<br />

て 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 無 効 と 判 示 された。Tronzo v. Biomet, 156 F.3dat 1159,<br />

47 USPQ2dat 1833 (Fed. Cir. 1998)も 参 照 のこと。ここにおいては、 親 出 願 における 種 の 開<br />

示 は 子 出 願 の 属 の 書 面 による 説 明 を 提 供 するのに 十 分 でなかった。<br />

「 代 表 的 な 数 」を 構 成 するものと 当 該 技 術 分 野 における 技 能 及 び 知 識 は 逆 比 例 の 関 係 になる。<br />

「 代 表 的 な 数 」の 十 分 な 開 示 は、 当 業 者 が、 出 願 人 が 開 示 された 種 に 照 らして 当 該 属 の 構 成<br />

員 が 有 する 要 素 の 必 要 共 通 属 性 又 は 特 徴 を 所 有 していたことを 認 識 するであろうか 否 かによ<br />

って 変 わる。 予 測 不 可 能 な 技 術 分 野 における 発 明 については、 広 く 変 種 を 包 含 する 属 の 適 切<br />

な 書 面 による 記 載 は、 当 該 属 の 単 一 種 のみを 開 示 することで 達 成 することはできない。 例 え<br />

ば Eli Lilly 事 件 を 参 照 のこと。 種 の 代 表 的 な 数 の 発 明 の 記 載 はその 記 載 が、 当 該 属 が 包 含<br />

する 各 種 に 対 して 個 々に 裏 付 けを 提 供 するであろうような 特 異 性 についての 記 載 を 要 求 する<br />

ものではない。 例 えば、 分 子 生 物 学 の 技 術 分 野 において 出 願 人 がアミノ 酸 配 列 を 開 示 した 場<br />

合 、 当 該 アミノ 酸 配 列 をコードする 核 酸 配 列 の 明 示 的 開 示 を 提 供 する 必 要 はないであろう。<br />

当 該 遺 伝 子 コードは 広 く 知 られているので、アミノ 酸 配 列 の 開 示 は、 出 願 人 が 必 ずしも 特 定<br />

の 種 ではなく 所 定 のアミノ 酸 配 列 をコードする 核 酸 の 全 属 を 所 有 していたことを 認 めるのに<br />

十 分 な 情 報 を 提 供 したであろう。 次 を 参 照 のこと。In re Bell, 991 F.2d 781, 785, 26 USPQ2d<br />

1529, 1532 (Fed. Cir. 1993) and In re Baird, 16 F.3d 380, 382, 29 USPQ2d 1550, 1552<br />

(Fed. Cir. 1994)。 適 切 に 記 載 された 種 の 代 表 的 な 数 が 属 について 開 示 されない 場 合 、その<br />

属 に 対 するクレームは 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 適 切 な 発 明 の 書 面 による 記 載 の 不 足<br />

として 拒 絶 されねばならない。<br />

(b) 新 規 クレーム、 補 正 クレーム 又 は 特 許 法 第 119 条 、 第 120 条 又 は 第 365 条 (c)に 基 づき<br />

先 行 優 先 日 若 しくは 出 願 日 の 利 益 を 受 ける 権 利 を 主 張 するクレーム<br />

審 査 官 は、 当 業 者 がそのクレームによって 定 義 される 発 明 の 書 面 による 記 載 を 原 開 示 におい<br />

て 認 識 しないであろうことを 説 明 する 証 拠 若 しくは 理 由 を 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。」)<br />

参 照 として、Wertheim, 541 F.2dat 263, 191 USPQat 97(「 特 許 商 標 庁 は、 当 業 者 がそのク<br />

レームによって 定 義 される 発 明 の 書 面 による 記 載 を 当 該 開 示 において 認 識 しないであろう 証<br />

拠 若 しくは 理 由 を 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。」)ただし、 補 正 を 提 出 した 場 合 、 出 願 人 は<br />

新 規 の 又 は 補 正 されたクレームの 原 開 示 の 裏 付 けを 証 明 しなくてはならない。MPEP 第 714.02<br />

条 及 び 第 2163.06 条 (「 出 願 人 は・・・ 当 該 開 示 になされた 補 正 の 裏 付 けを 具 体 的 に 挙 げなけれ<br />

ばならない」)を 参 照 のこと。<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 による 記 載 要 件 に 適 合 する、 若 しくは 特 許 法 第 119 条 、 第 120<br />

条 又 は 第 365 条 (c)に 基 づく 先 行 優 先 日 又 は 出 願 日 を 享 受 するには、 各 クレーム 限 定 は 初 めに<br />

246


提 出 された 開 示 において 明 示 的 、 暗 示 的 若 しくは 本 質 的 に 裏 付 けされていなければならない。<br />

クレームの 明 示 的 限 定 が「その 利 益 が 求 められる 発 明 の 書 面 による 記 載 に 存 在 しない」 場 合 、<br />

「 当 業 者 が 当 該 特 許 出 願 が 提 出 された 時 点 においてその 書 面 による 記 載 がその 限 定 を 求 めて<br />

いると 理 解 していたであろうことが 証 明 されねばならない。」Hyatt v. Boone, 146 F.3d 1348,<br />

1353, 47 USPQ2d 1128, 1131 (Fed. Cir. 1998)。 次 も 参 照 のこと。In re Wright, 866 F.2d<br />

422, 425, 9 USPQ2d 1649, 1651 (Fed. Cir. 1989)(マイクロカプセルの 表 面 からの 取 り 外 し<br />

を 記 載 しており、かつ 像 形 成 前 に 阻 害 されないようにそのカプセルに 警 告 する、 感 光 性 マイ<br />

クロカプセルを 用 いて 画 像 を 形 成 する 方 法 の 原 明 細 書 は、 恒 久 的 に 固 定 されたマイクロカプ<br />

セルが 存 在 しないことを 明 白 に 教 示 しており、かつそのマイクロカプセルを 支 持 構 造 の 表 面<br />

に「 恒 久 的 に 固 定 されない」ことを 求 めているクレームの 補 正 文 言 を 支 持 しているので、 特<br />

許 法 第 112 条 の 発 明 の 書 面 による 記 載 要 件 を 満 たしている。);In re Robins, 429 F.2d 452,<br />

456-57, 166 USPQ 552, 555 (CCPA 1970)(「 属 発 明 の 明 示 的 な 書 面 による 記 載 が 当 該 明 細 書<br />

に 記 載 されていない 場 合 、・・・ 代 表 的 な 化 合 物 に 関 する 記 載 は 基 礎 となる 一 般 的 なクレームの<br />

文 言 で 間 接 的 記 載 を 提 出 することができる);In re Smith, 458 F.2d 1389, 1395, 173 USPQ<br />

679, 683 (CCPA 1972)( 亜 属 は 必 ずしもそれを 包 含 する 属 及 びそれが 読 める 種 によって 黙 示 的<br />

に 記 載 される 必 要 はない)。In re Robertson, 169 F.3d 743, 745, 49 USPQ2d 1949, 1950-51<br />

(Fed. Cir. 1999)(「 潜 在 的 特 性 を 立 証 するには、 外 的 証 拠 が『 不 足 している 記 載 事 項 が 引 例<br />

に 記 載 されたものに 必 然 的 に 存 在 すること、そして、それは 当 業 者 によってそのように 認 識<br />

されるであろうことを 明 確 にしなくてはならない。しかし、 潜 在 的 特 性 は 蓋 然 性 若 しくは 可<br />

能 性 により 立 証 されてはならない。 所 定 のことが 与 えられた 状 況 によって 生 じる 可 能 性 があ<br />

るという 単 なる 事 実 では 十 分 でない。』」)( 引 用 省 略 )さらに、 各 クレームは 出 願 人 が 重 要 で<br />

あるとして 記 載 しているすべての 要 素 を 含 まねばならない。 参 照 事 例 として、Johnson<br />

Worldwide Associates Inc. v. Zebco Corp., 175 F.3dat 993, 50 USPQ2dat 1613; Gentry<br />

Gallery, Inc. v. Berkline Corp., 134 F.3dat 1479, 45 USPQ2dat 1503; Tronzo v. Biomet,<br />

156 F.3dat 1159, 47 USPQ2dat 1833。<br />

初 めに 提 出 された 開 示 が 各 クレーム 限 定 に 裏 付 けを 提 供 していない 場 合 、 若 しくは 出 願 人 が<br />

重 要 又 は 必 須 であるとして 記 載 している 要 素 がクレームされていない 場 合 、 新 規 の 又 は 補 正<br />

されたクレームは 適 切 な 書 面 による 記 載 に 欠 けるとして 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 拒<br />

絶 されなければならず、 特 許 法 第 119 条 、 第 120 条 又 は 第 365 条 (c)に 基 づき 優 先 権 を 求 める<br />

クレームの 場 合 はそのクレームは 拒 絶 されねばならない。<br />

III. すべての 法 定 要 件 に 基 づき 特 許 性 についての 判 断 を 完 了 し、 認 定 、 結 論 及 びそれらの<br />

根 拠 を 明 確 に 通 知 する<br />

上 記 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 が 満 たされているか 否 かの 判 断 方 法 を 記 載 し<br />

ているのみである。その 判 断 の 結 果 にかかわらず、 本 庁 審 査 官 は 特 許 性 についての 判 断 を 合<br />

衆 国 法 典 第 35 巻 のすべての 関 連 法 規 定 に 基 づいて 完 了 しなければならない。<br />

本 庁 審 査 官 は 特 許 法 第 101 条 、 第 112 条 、 第 102 条 及 び 第 103 条 を 含 めてすべての 法 規 定 に<br />

基 づきクレームの 発 明 について 分 析 を 完 了 した 時 点 で 予 想 される 拒 絶 並 びにそれらの 正 しさ<br />

を 確 認 するためにそれらの 根 拠 をすべて 再 検 討 しなくてはならない。そうすることによって<br />

初 めて 拒 絶 は 特 許 商 標 庁 の 拒 絶 通 知 に 組 付 けなくてはならない。 特 許 商 標 庁 拒 絶 通 知 は 明 確<br />

に 認 定 、 終 結 及 びそれらを 裏 付 ける 理 由 を 通 知 しなくてはならない。 可 能 な 場 合 、その 拒 絶<br />

247


通 知 は 拒 絶 を 克 服 する 方 法 について 役 立 つ 提 案 を 与 えるべきである。<br />

A. 発 明 の 書 面 による 記 載 の 裏 付 けに 欠 ける 各 クレームについて、 適 切 な 書 面 による 記 載 の<br />

不 足 を 理 由 として 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づきクレームを 拒 絶 する<br />

出 願 時 の 発 明 の 記 載 は、 十 分 な 証 拠 又 は 反 対 理 由 が 審 査 官 により 提 出 されてその 前 提 が 退 け<br />

られない 限 り、 若 しくは 退 けられるまで 適 切 であると 推 定 される。 参 照 事 例 として、In re<br />

Marzocchi, 439 F.2d 220, 224, 169 USPQ 367, 370. (CCPA 1971) 従 って、 審 査 官 は 発 明 の<br />

書 面 による 記 載 の 妥 当 性 に 異 議 を 申 し 立 てる 合 理 的 根 拠 を 有 しなくてはならない。 審 査 官 は、<br />

当 業 者 がそのクレームによって 定 義 される 発 明 の 書 面 による 記 載 を 出 願 人 の 開 示 において 認<br />

識 しないであろうとする 優 位 な 証 拠 によって 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。Wertheim, 541<br />

F.2dat 263, 191 USPQat 97。クレームを 拒 絶 する 際 、 審 査 官 は 書 面 による 記 載 の 不 足 とする<br />

結 論 を 裏 付 ける 上 記 分 析 について 明 確 な 事 実 認 定 を 明 記 しなければならない。これらの 認 定<br />

は 次 に 掲 げる 各 号 とする。<br />

(A) 問 題 となっているクレーム 限 定 を 特 定 する。 及 び、<br />

(B) 当 業 者 が 当 該 出 願 が 行 われた 時 点 において、 発 明 者 が 出 願 時 の 出 願 の 開 示 に 照 らしてク<br />

レーム 時 の 発 明 を 所 有 していたと 認 めなかったであろう 理 由 を 提 示 することにより、 一 応 の<br />

証 明 をする。「 当 該 技 術 分 野 における 予 測 不 可 能 性 」の 一 般 的 主 張 は 適 切 な 書 面 による 記 載<br />

の 不 足 による 拒 絶 を 裏 付 ける 十 分 な 理 由 とならない。<br />

適 切 な 場 合 、 出 願 人 の 書 面 による 記 載 により 裏 付 けることのできないクレームに 対 して 補 正<br />

を 示 唆 する。このとき、 当 該 クレーム 又 は 明 細 書 に 新 たな 事 項 を 追 加 することは 禁 じられて<br />

いることに 留 意 する。Rasmussen, 650 F.2dat 1214, 211 USPQat 326 を 参 照 のこと。<br />

B. 出 願 人 による 反 論 があり 次 第 、 記 録 全 体 を 考 慮 して 上 述 の 分 析 を 再 実 施 することにより<br />

クレームの 発 明 の 特 許 性 を 書 面 記 載 要 件 が 満 たされるか 否 かを 含 めて 再 判 断 する<br />

出 願 人 による 反 論 があり 次 第 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 書 面 による 記 載 の 不 足 を 理<br />

由 に 拒 絶 を 繰 り 返 す 前 に、 記 録 全 体 を 出 願 人 により 提 出 された 補 正 、 反 論 及 び 証 拠 を 含 めて<br />

考 慮 してその 拒 絶 の 根 拠 を 再 検 討 する。 全 記 録 が 書 面 記 載 要 件 を 満 たしていることが 実 証 さ<br />

れた 場 合 は、 次 の 拒 絶 通 知 において 当 該 拒 絶 を 繰 り 返 してはならない。 記 録 が 発 明 の 書 面 に<br />

よる 記 載 は 当 該 クレームを 裏 付 けるのに 妥 当 であることを 実 証 していない 場 合 、 特 許 法 第<br />

112 条 第 1 段 落 に 基 づき 当 該 拒 絶 を 繰 り 返 し、 出 願 人 の 反 論 理 由 に 十 分 答 え、 出 願 人 が 反 論<br />

において 提 出 したさらなる 提 示 を 適 切 に 取 り 扱 う。 拒 絶 を 主 張 する 場 合 、 第 112 条 第 1 段 落<br />

の 書 面 記 載 要 件 に 関 する 宣 誓 供 述 書 は 全 面 的 に 分 析 し、 次 の 拒 絶 通 知 において 考 察 しなけれ<br />

ばならない。In re Alton, 76 F.3d 1168, 1176, 37 USPQ2d 1578, 1584 (Fed. Cir. 1996)<br />

を 参 照 のこと。<br />

2163.01 開 示 におけるクレームされた 保 護 対 象 の 支 持<br />

書 面 記 載 要 件 の 争 点 は 一 般 にクレームの 保 護 対 象 は 出 願 時 の 出 願 の 開 示 によって 裏 付 けられ<br />

ている[ 開 示 に 一 致 する]か 否 かの 問 題 を 含 む。 審 査 官 がクレームの 保 護 対 象 は 出 願 時 の 出 願<br />

において 裏 付 けられて[ 記 載 されて]いないと 結 論 する 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づ<br />

く 発 明 の 書 面 による 記 載 の 不 足 又 は 先 に 提 出 された 出 願 の 出 願 日 の 利 益 の 拒 否 を 理 由 とする<br />

拒 絶 という 結 果 になるであろう。 当 該 クレームは 新 規 事 項 を 理 由 に 拒 絶 されてはならない。<br />

In re Rasmussen, 650 F.2d 1212, 211 USPQ 323 (CCPA 1981)において 裁 判 所 が 枠 組 みを 示<br />

したように、 新 規 事 項 の 概 念 は、 最 初 に 提 出 された 開 示 に 新 たな 開 示 を 加 えようとする、 要<br />

248


約 、 明 細 書 又 は 図 面 への 補 正 に 対 する 方 式 拒 絶 の 根 拠 として 適 切 に 使 用 される。 記 載 要 件 及<br />

び 新 規 事 項 問 題 点 の 基 準 又 は 分 析 は 同 一 ではあるが、これらの 問 題 点 を 取 り 扱 う 審 査 手 順 及<br />

び 法 的 根 拠 は 異 なる。MPEP 第 2163.06 条 を 参 照 のこと。<br />

2163.02 書 面 記 載 要 件 適 合 を 判 断 するための 基 準<br />

裁 判 所 は、 書 面 記 載 要 件 の 争 点 において 取 り 扱 われるべき 主 要 な 問 題 点 をさまざまな 方 法 で<br />

記 述 している。 書 面 記 載 要 件 への 適 合 を 判 断 するための 客 観 的 基 準 は、「 当 該 発 明 の 記 載 は<br />

当 業 者 にクレームされたものをその 者 が 発 明 したと 明 確 に 認 識 させるか」である。In re<br />

Gosteli, 872 F.2d 1008, 1012, 10 USPQ2d 1614, 1618 (Fed. Cir. 1989)。Vas-Cath, Inc.<br />

v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1563-64, 19 USPQ2d 1111, 1117 (Fed. Cir. 1991)を 受 けて、<br />

書 面 記 載 要 件 を 満 たすため 出 願 人 は、 出 願 日 現 在 において、 自 身 が 当 該 発 明 を 所 有 していた<br />

こと 及 び 当 該 発 明 は、そのために、 何 であれ 現 在 クレームされているものであることを 当 業<br />

者 に 対 して 合 理 的 明 瞭 さをもって 伝 えねばならない。 親 出 願 における 裏 付 けの 十 分 性 の 基 準<br />

は、 依 拠 される 出 願 の 開 示 が「 当 業 者 に 対 して 発 明 者 は 後 にクレームされた 保 護 対 象 の 時 点<br />

において 所 有 していたことを 合 理 的 に 伝 える」か 否 かである。Ralston Purina Co. v.<br />

Far-Mar-Co., Inc., 772 F.2d 1570, 1575, 227 USPQ 177, 179 (Fed. Cir. 1985)( 引 用 In re<br />

Kaslow, 707 F.2d 1366, 1375, 217 USPQ 1089, 1096 (Fed. Cir. 1983))。<br />

争 点 が 生 じたときはいつも、 基 本 的 事 実 審 理 は、 明 細 書 は 出 願 人 が 現 在 出 願 されているとお<br />

りの 当 該 発 明 を 出 願 日 現 在 において 所 有 していたことを 当 業 者 に 合 理 的 な 明 確 さで 伝 えてい<br />

るか 否 かである。 参 照 事 例 として、Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1563-64,<br />

19 USPQ2d 1111, 1117 (Fed. Cir. 1991)。 出 願 人 は、 言 葉 、 構 造 、 図 、ダイアグラム 及 び 数<br />

式 などクレームの 発 明 を 完 全 に 述 べる 記 述 的 方 法 を 用 いて、クレームの 発 明 の 限 定 のすべて<br />

を 記 述 することによりクレームの 発 明 の 所 有 を 証 明 する。Lockwood v. American Airlines,<br />

Inc., 107 F.3d 1565, 1572, 41 USPQ2d 1961, 1966 (Fed. Cir. 1997)。 所 有 は、 当 該 発 明<br />

は 完 成 していることを 示 す 図 面 若 しくは 構 造 化 学 式 の 開 示 などによって 当 該 発 明 は「いつで<br />

も 特 許 を 受 けられる 状 態 」であることを 示 すことによって、 又 は 出 願 人 はクレームの 発 明 を<br />

所 有 していることを 示 すために 十 分 な、 特 徴 的 に 識 別 する 特 性 を 記 述 することによって、 現<br />

実 の 実 施 化 を 記 述 することを 含 めてさまざまな 方 法 で 証 明 することができる。 参 照 事 例 とし<br />

て、Pfaff v. Wells Elecs., Inc., 525 U.S. 55, 68, 119 S.Ct. 304, 312, 48 USPQ2d 1641,<br />

1647 (1998);Regents of the University of California v. Eli Lilly, 119 F.3d 1559, 1568,<br />

43 USPQ2d 1398, 1406 (Fed. Cir. 1997);Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical, 927 F.2d<br />

1200, 1206, 18 USPQ2d 1016, 1021 (Fed. Cir. 1991)( 化 合 物 は「 特 性 の 如 何 を 問 わずそれ<br />

を 十 分 に 区 別 することによって」 定 義 しなければならない。)<br />

クレームの 保 護 対 象 は 開 示 が 記 載 要 件 を 満 たすことができるように 逐 語 的 に(すなわち、 同 一<br />

用 語 を 用 いて 若 しくはこの 言 葉 で) 記 述 する 必 要 はない。クレームが 提 出 時 の 出 願 に 記 載 され<br />

ていない 保 護 対 象 、 限 定 又 は 用 語 を、 提 出 時 の 出 願 の 開 示 からの 逸 脱 、 追 加 又 は 欠 失 を 含 め<br />

て 補 正 される 場 合 、 審 査 官 は、クレームの 保 護 対 象 はその 出 願 に 記 載 されていないと 結 論 し<br />

なくてはならない。 本 結 論 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 記 載 要 件 の 影 響 を 受 けるクレームの<br />

拒 絶 、もしくは 該 当 する 場 合 、 以 前 に 提 出 された 出 願 の 出 願 日 の 利 益 の 拒 否 という 結 果 にな<br />

るであろう。<br />

書 面 記 載 要 件 に 関 する 審 査 指 針 については MPEP 第 2163 条 を 参 照 のこと。<br />

249


2163.03 書 面 記 載 の 十 分 性 が 問 題 になる 典 型 的 状 況<br />

記 載 要 件 の 争 点 は、クレームの 保 護 対 象 が 提 出 時 の 出 願 において 裏 付 けされているか 否 かを<br />

判 断 しなければならないさまざまに 異 なる 状 況 において 生 ずる 可 能 性 がある。 書 面 記 載 要 件<br />

に 関 する 審 査 指 針 については MPEP 第 2163 条 を 参 照 のこと。 明 細 書 が 適 切 な 発 明 の 書 面 によ<br />

る 記 載 を 提 供 しているか 否 かに 関 する 問 題 は 十 分 に 記 載 されていない( 参 照 事 例 として、<br />

Regents of the University of California v. Eli Lilly, 119 F.3d 1559, 43 USPQ2d 1398<br />

(Fed. Cir. 1997)) 原 クレームの 文 脈 において 生 ずることがある 一 方 で、クレームの 発 明 の 適<br />

切 な 書 面 による 記 載 は 出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 されているとする 強 い 推 定 根 拠 が 存 在 する。In<br />

re Wertheim, 541 F.2d 257, 262, 191 USPQ 90, 96 (CCPA 1976)。 従 って、 書 面 による 記 載<br />

の 不 足 による 原 クレームの 拒 絶 はまれなはずである。 最 も 一 般 的 には、 争 点 は 次 に 掲 げる 状<br />

況 において 生 ずるであろう。<br />

I. クレームに 影 響 を 与 える 補 正<br />

クレームへの 補 正 又 は 新 規 クレームの 追 加 は 出 願 時 の 出 願 の 発 明 の 説 明 によって 裏 付 けられ<br />

ねばならない。In re Wright, 866 F.2d 422, 9 USPQ2d 1649 (Fed. Cir. 1989)。 明 細 書 へ<br />

の 補 正 ( 例 えば、 明 細 書 及 びクレームの 双 方 に 使 用 される 言 葉 の 定 義 の 変 更 )は 実 際 の 補 正 が<br />

当 該 クレームに 対 して 何 ら 行 われなくとも 間 接 的 にクレームに 影 響 を 与 えることがある。<br />

II. 特 許 法 第 120 条 に 基 づく 親 出 願 の 出 願 日 への 依 存<br />

特 許 法 第 120 条 に 基 づき 米 国 出 願 のクレームは、 当 該 クレームの 保 護 対 象 が 先 に 提 出 された<br />

出 願 で 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 規 定 される 方 法 で 開 示 されている 場 合 、 先 に 提 出 された 米<br />

国 出 願 の 出 願 日 の 利 益 を 与 えられる。 参 照 事 例 として、Tronzo v. Biomet, Inc., 156 F.3d 1154,<br />

47 USPQ2d 1829 (Fed. Cir. 1998);In reScheiber, 587 F.2d 59, 199 USPQ 782 (CCPA 1978)。<br />

III. 特 許 法 第 119 条 に 基 づく 優 先 権 への 依 存<br />

特 許 法 第 119 条 (a) 又 は(e)に 基 づき 米 国 出 願 のクレームは、 対 応 する 外 国 出 願 又 は 仮 出 願 が<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 により 求 められる 方 法 で 当 該 クレームを 裏 付 けている 場 合 、 外 国 優<br />

先 日 又 は 仮 出 願 の 出 願 日 の 利 益 を 与 えられる。In re Ziegler, 992 F.2d 1197, 1200, 26 USPQ2d<br />

1600, 1603 (Fed. Cir. 1993);Kawai v. Metlesics, 480 F.2d 880, 178 USPQ 158 (CCPA 1973);<br />

In re Gosteli, 872 F.2d 1008, 10 USPQ2d 1614 (Fed. Cir. 1989)。<br />

IV. インターフェアレンスのカウントに 対 応 するクレームの 裏 付 け<br />

インターフェアレンス 手 続 においてカウントに 対 応 するクレームは 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落<br />

に 規 定 される 方 法 で 明 細 書 により 裏 付 けられていなければならない。Fields v. Conover, 443<br />

F.2d 1386, 170 USPQ 276 (CCPA 1971)( 化 合 物 のクラスに 対 する 幅 広 い 属 の 開 示 は、 当 該 ク<br />

ラス 内 の 特 定 化 合 物 の 十 分 な 書 面 による 開 示 ではない。)さらに、インターフェアレンスの 当<br />

事 者 が 米 国 特 許 先 願 の 利 益 を 求 める 場 合 、その 先 願 はカウントの 保 護 対 象 について 特 許 法 第<br />

112 条 第 1 段 落 の 要 件 を 満 たしていなければならない。Hyatt v. Boone, 146 F.3d 1348, 1352,<br />

47 USPQ2d 1128, 1130 (Fed. Cir. 1998)。<br />

250


2163.04 書 面 記 載 要 件 に 関 する 審 査 官 の 責 任<br />

記 載 要 件 が 満 たされているか 否 かの 審 査 は 個 別 に 判 断 されねばならず、 事 実 に 関 する 争 点 で<br />

ある。In re Wertheim, 541 F.2d 257, 262, 191 USPQ 90, 96 (CCPA 1976)。 出 願 時 の 発 明<br />

の 記 載 は、 十 分 な 証 拠 又 は 反 対 理 由 が 審 査 官 により 提 出 されてその 前 提 が 退 けられない 限 り、<br />

若 しくは 退 けられるまで 適 切 であると 推 定 される。 参 照 事 例 として、In re Marzocchi, 439<br />

F.2d 220, 224, 169 USPQ 367, 370. (CCPA 1971)。 従 って、 審 査 官 は 発 明 の 書 面 による 記 載<br />

の 妥 当 性 に 異 議 を 申 し 立 てる 合 理 的 根 拠 を 有 しなくてはならない。 審 査 官 は、 当 業 者 がその<br />

クレームによって 定 義 される 発 明 の 書 面 による 記 載 を 出 願 人 の 開 示 において 認 識 しないであ<br />

ろうとする 優 位 な 証 拠 によって 提 示 する 最 初 の 責 任 を 有 する。Wertheim, 541 F.2dat 263, 191<br />

USPQat 97。<br />

I. 拒 絶 要 件 の 陳 述<br />

クレームの 拒 絶 に 際 して 審 査 官 は、 発 明 の 書 面 による 記 載 の 不 足 とする 結 論 を 裏 付 ける 事 実<br />

の 明 示 的 認 定 を 記 載 しなければならない( 書 面 記 載 要 件 に 関 する 審 査 指 針 については MPEP 第<br />

2163 条 を 参 照 のこと。)これらの 認 定 は 次 に 掲 げる 各 号 とする。<br />

(A) 問 題 となっているクレーム 限 定 を 特 定 する。 及 び、<br />

(B) 当 業 者 が 当 該 出 願 が 行 われた 時 点 において、 発 明 者 が 出 願 時 の 出 願 の 開 示 に 照 らしてク<br />

レーム 時 の 発 明 を 所 有 していたと 認 めなかったであろう 理 由 を 提 示 することにより、 一 応 の<br />

証 明 をする。「 当 該 技 術 分 野 における 予 測 不 可 能 性 」の 一 般 的 主 張 は 適 切 な 書 面 による 記 載<br />

の 不 足 による 拒 絶 を 裏 付 ける 十 分 な 理 由 とならない。「 出 願 人 が 新 規 の( 又 は 補 正 された)ク<br />

レームを 裏 付 けている 個 所 を 指 摘 していない、 若 しくはクレーム 限 定 の 書 面 による 記 載 を 出<br />

願 時 の 出 願 に『____』で 表 していない」ような 単 純 文 は、そのクレームが 新 規 又 は 修 正 クレ<br />

ームである 場 合 は 十 分 である 可 能 性 があり、 限 定 の 裏 付 けは 容 易 に 見 えず、さらに 出 願 人 は<br />

限 定 が 裏 付 けられている 個 所 を 指 摘 していない。<br />

参 照 として、Hyatt v. Dudas, 492 F.3d 1365, 1370, 83 USPQ2d 1373, 1376 (Fed. Cir.<br />

2007)(「 記 載 通 り[MPEP] 第 2163.04 条 (I)(B)は、 発 明 の 書 面 による 記 載 不 足 による 拒 絶 に 関<br />

する 一 応 の 基 準 の 法 的 表 現 である」との 判 断 )<br />

適 切 な 場 合 、 出 願 人 の 書 面 による 記 載 により 裏 付 けることのできないクレームに 対 して 補 正<br />

を 示 唆 する。このとき、 当 該 クレーム 又 は 明 細 書 に 新 たな 事 項 を 追 加 することは 禁 じられて<br />

いることに 留 意 する。Rasmussen, 650 F.2dat 1214, 211 USPQat 326 を 参 照 のこと。<br />

II. 出 願 人 の 反 論 に 対 する 応 答<br />

出 願 人 による 反 論 があり 次 第 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 書 面 による 記 載 の 不 足 を 理<br />

由 に 拒 絶 を 繰 り 返 す 前 に、 記 録 全 体 を 出 願 人 により 提 出 された 補 正 、 反 論 及 び 証 拠 を 含 めて<br />

考 慮 してその 拒 絶 の 根 拠 を 再 検 討 する。 全 記 録 が 書 面 記 載 要 件 を 満 たしていることが 実 証 さ<br />

れた 場 合 は、 次 の 拒 絶 通 知 において 当 該 拒 絶 を 繰 り 返 してはならない。 記 録 が 発 明 の 書 面 に<br />

よる 記 載 は 当 該 クレームを 裏 付 けるのに 妥 当 であることを 実 証 していない 場 合 、 特 許 法 第<br />

112 条 第 1 段 落 に 基 づき 当 該 拒 絶 を 繰 り 返 し、 出 願 人 の 反 論 理 由 に 十 分 答 え、 出 願 人 が 反 論<br />

において 提 出 したさらなる 提 示 を 適 切 に 取 り 扱 う。 拒 絶 を 主 張 する 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第<br />

1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 に 関 する 宣 誓 供 述 書 は 全 面 的 に 分 析 し、 次 の 拒 絶 通 知 において 考 察 し<br />

なければならない。In re Alton, 76 F.3d 1168, 1176, 37 USPQ2d 1578, 1584 (Fed. Cir. 1996)<br />

251


を 参 照 のこと。<br />

2163.05 クレームの 範 囲 への 変 更<br />

当 該 クレームが 出 願 後 にクレーム 限 定 幅 の 拡 大 若 しくは 狭 小 、 又 は 数 値 範 囲 限 定 の 変 更 、 又<br />

は 原 開 示 で 使 用 された 用 語 と 同 義 ではないクレーム 文 言 を 使 用 するように 変 更 された 場 合 、<br />

一 般 的 に 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 を 満 たすことができない 場 合 が 生 ずる。 特<br />

許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 による 記 載 要 件 に 適 合 する、 若 しくは 特 許 法 第 119 条 、 第 120<br />

条 又 は 第 365 条 (c)に 基 づく 先 行 優 先 日 又 は 出 願 日 を 享 受 するには、 各 クレーム 限 定 は 初 めに<br />

提 出 された 開 示 において 明 示 的 、 暗 示 的 若 しくは 本 質 的 に 裏 付 けされていなければならない。<br />

書 面 記 載 要 件 に 関 する 審 査 指 針 については MPEP 第 2163 条 を 参 照 のこと。<br />

I. 拡 大 クレーム<br />

限 定 の 脱 漏<br />

特 定 の 状 況 下 において 限 定 の 脱 落 は、 発 明 者 がより 範 囲 の 広 いさらなる 属 発 明 を 所 有 するか<br />

否 かに 関 する 争 点 をもたらす。 参 照 事 例 として、Gentry Gallery, Inc. v. Berkline Corp.,<br />

134 F.3d 1473, 45 USPQ2d 1498 (Fed. Cir. 1998)(とりわけ 制 御 装 置 及 び 制 御 方 法 から 成 る<br />

ユニット 式 のソファに 対 するクレームは、 当 該 クレームは 制 御 方 法 の 場 所 を 移 動 することに<br />

よって 範 囲 が 拡 大 する 点 で 書 面 記 載 要 件 を 満 たさないため 無 効 と 判 示 された。);Johnson<br />

Worldwide Associates v. Zebco Corp., 175 F.3d 985, 993, 50 USPQ2d 1607, 1613 (Fed. Cir.<br />

1999)Gentry Gallery 事 件 において、「 当 該 特 許 開 示 は 係 争 中 のクレーム 用 語 の 幅 広 い 意 味<br />

を 裏 付 けないとする 裁 判 所 の 決 定 は、『 唯 一 可 能 な 位 置 』としてのクレーム 要 素 の 位 置 --『 制<br />

御 方 法 』-- 及 びその 変 動 は『 当 該 発 明 が 表 明 する 目 的 外 』であると 記 載 している 明 細 書 の 明<br />

確 な 記 述 を 前 提 としていた。Gentry Gallery, 134 F.3dat 1479, 45 USPQ2dat 1503。その 後 、<br />

Gentry Gallery は、 特 許 の 開 示 はクレーム 用 語 の 特 定 の(すなわち、 狭 小 な) 理 解 が『[ 発 明<br />

者 の] 発 明 の 重 要 な 要 素 』であることを 明 確 にさせる 状 況 を 検 討 している。」);Tronzo v.<br />

Biomet, 156 F.3d at 1158-59, 47 USPQ2d at 1833 (Fed. Cir. 1998)( 一 般 的 なカップ 形 状<br />

に 対 するクレームは、 円 錐 形 の 優 位 性 及 び 重 要 性 を 述 べる 特 許 出 願 の 開 示 の 点 から 見 て「 円<br />

錐 形 カップ」を 開 示 した 親 出 願 日 が 認 められなかった。);In re Wilder, 736 F.2d 1516, 222<br />

USPQ 369 (Fed. Cir. 1984)( 走 査 手 段 及 び 索 引 付 与 手 段 に 関 し「 同 期 して」という 限 定 を 脱<br />

漏 する 再 発 行 クレームは、 属 発 明 の、 最 初 の 出 願 現 在 で、 所 有 を 示 すような 方 法 での 原 特 許<br />

の 開 示 によって 裏 付 けられない。)<br />

出 願 が 最 初 に 開 示 された 発 明 の 重 要 な 若 しくは 必 須 の 機 能 として 記 載 している 要 素 を 懈 怠 す<br />

るクレームは 書 面 記 載 要 件 に 適 合 していない。 参 照 として、Gentry Gallery, 134 F.3d at 1480,<br />

45 USPQ2d at 1503;In re Sus, 306 F.2d 494, 504, 134 USPQ 301, 309 (CCPA 1962)(「 当<br />

業 者 は、『アリール 基 又 は 置 換 アリール 基 』は 当 該 発 明 の 目 的 に 適 している、というよりむ<br />

しろ 特 定 のアリール 基 及 び 特 定 の 特 別 に 置 換 されたアリール 基 [すなわち、アリールアジド]<br />

だけがかかる 目 的 に 適 しているとする 明 細 書 での 当 該 発 明 の 書 面 による 記 載 によって 教 示 さ<br />

れないであろう。」)( 強 調 は 原 文 のまま) 次 を 比 較 のこと。In re Peters, 723 F.2d 891, 221<br />

USPQ 952 (Fed. Cir. 1983)( 再 発 行 出 願 において 表 示 装 置 に 対 するクレームは、 書 面 記 載 要<br />

件 に 違 反 することなく 先 端 の 特 定 テーパー 形 状 に 向 けられた 限 定 を 削 除 することにより 拡 大<br />

されていた。 形 状 限 定 は、 出 願 時 の 明 細 書 で、そのテーパー 形 状 を 動 作 又 は 当 該 クレームの<br />

252


特 許 性 にとって 重 要 若 しくは 必 須 として 記 載 していなかったので 不 要 であると 見 なされた。<br />

明 細 書 又 は 記 録 のその 他 の 陳 述 書 において 記 載 されているように、 発 明 にとって 重 要 である<br />

ために 開 示 された 事 項 を 懈 怠 しているクレームは、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき、 実 施<br />

可 能 でないとして、 若 しくは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づき 拒 絶 される 可 能 性 もある。 参<br />

照 として、In re Mayhew, 527 F.2d 1229, 188 USPQ 356 (CCPA 1976);In re Venezia, 530<br />

F.2d 956, 189 USPQ 149 (CCPA 1976); 及 び In re Collier, 397 F.2d 1003, 158 USPQ 266<br />

(CCPA 1968)。MPEP 第 2172.01 条 も 参 照 のこと。<br />

属 クレームの 追 加<br />

クレームされた 属 の 書 面 記 載 要 件 は 種 の 代 表 的 な 数 の 十 分 な 書 面 による 記 載 により 満 たすこ<br />

とができる。「 種 の 代 表 的 な 数 」とは 適 切 に 記 載 される 種 は 属 全 体 を 代 表 することをいう。<br />

従 って、 当 該 属 内 に 相 当 な 変 化 が 存 在 する 場 合 は 当 該 属 内 の 変 化 を 反 映 するに 十 分 な 種 の 種<br />

類 を 記 載 しなければならない。 属 内 に 包 含 される 1 種 のみの 開 示 は、その 開 示 が「 特 許 権 者<br />

はその 属 を 構 成 するために 十 分 な 種 を 意 図 していると 表 明 している」 場 合 に 限 り、その 属 に<br />

向 けられたクレームを 適 切 に 記 載 する。 参 照 として、Enzo Biochem, 323 F.3d at 966, 63<br />

USPQ2d at 1615「 特 許 権 者 は、 証 拠 が、 当 業 者 は 開 示 されたもの 以 外 の 任 意 の 種 の 発 明 に 実<br />

用 可 能 性 を 予 測 することができなかったであろうことを 示 している 場 合 、・・・ 単 一 の 種 を 開 示<br />

したことに 基 づきその 属 を 構 成 するに 十 分 な 種 を 発 明 したとは 見 なされないであろう。」In<br />

re Curtis, 354 F.3d 1347, 1358, 69 USPQ2d 1274, 1282 (Fed. Cir. 2004)( 摩 擦 を 増 進 す<br />

るコーティングを 施 した PTFE デンタルフロスに 向 けられたクレームは 微 結 晶 性 ワックスコ<br />

ーティングの 開 示 によって 裏 付 けられておらず、 当 該 開 示 にも、 当 該 記 録 の 他 のどこにも 出<br />

願 人 がその 他 のコーティングが PTFE デンタルフロスに 適 していることを 伝 えていることを<br />

示 している 証 拠 は 無 かった。)その 一 方 で、1 種 が 1 属 を 適 切 に 裏 付 ける 状 況 が 存 在 するかも<br />

しれない。 参 照 事 例 として、In re Rasmussen, 650 F.2d 1212, 1214, 211 USPQ 323, 326-27<br />

(CCPA 1981)( 一 方 のレイヤーを 他 方 に 適 切 に 貼 り 付 ける 単 一 の 方 法 の 開 示 は、 当 該 明 細 書 を<br />

読 む 当 業 者 はレイヤーが 接 着 される 限 りにおいてそれらがどのように 接 着 されるかは 重 要 で<br />

ないことを 理 解 したであろうという 理 由 で、「 貼 り 付 けること」に 対 する 属 クレームを 裏 付<br />

けるために 十 分 であった。)In re Herschler, 591 F.2d 693, 697, 200 USPQ 711, 714 (CCPA<br />

1979)(「 生 理 学 的 に 活 性 なステロイド」と DMSO の 混 合 物 を 使 用 する 方 法 に 対 して 書 かれたク<br />

レームを 裏 付 けるに 十 分 な DMSO のコルチコステロイドの 開 示 。なぜなら「 既 知 の 化 合 物 の 当<br />

該 発 明 にとって 補 助 的 な 方 法 での 使 用 は、 当 業 者 を 化 合 物 のそのクラスに 導 くこととなるほ<br />

ど 具 体 的 である 限 りにおいて、 対 応 する 書 面 による 記 載 がなければならない。 当 該 明 細 書 の<br />

それら 既 知 の 化 合 物 の 機 能 的 説 明 はその 発 明 の 説 明 として 十 分 であるかもしれない。」);In<br />

re Smythe, 480 F.2d 1376, 1383, 178 USPQ 279, 285 (CCPA 1973)(「 液 体 に 対 して 不 活 性<br />

である 空 気 又 はその 他 の 気 体 」という 表 現 は、 空 気 又 はその 他 の 気 体 細 分 化 媒 体 の 特 性 及 び<br />

機 能 の 記 載 は 出 願 人 の 発 明 が 広 く「 不 活 性 液 体 」の 使 用 を 含 むことを 当 業 者 に 示 唆 していた<br />

であろうので、「 不 活 性 液 状 媒 体 」に 対 するクレームを 裏 付 けるのに 十 分 であった。)ただし、<br />

Tronzo v. Biomet, 156 F.3d 1154, 1159, 47 USPQ2d 1829, 1833 (Fed. Cir. 1998)におい<br />

ては、 親 出 願 における 種 の 開 示 は 子 出 願 の 属 の 書 面 による 記 載 を 提 供 するのに 十 分 でなかっ<br />

た。 同 様 に 次 を 参 照 のこと。In re Gosteli, 872 F.2d 1008, 10 USPQ2d 1614 (Fed. Cir.<br />

1989)( 米 国 出 願 の 属 及 び 亜 属 クレームは、 外 国 出 願 が 幅 広 い 属 クレーム 及 び 21 化 合 物 を 包 含<br />

253


する 亜 属 Markush クレームにより 包 含 される 種 の 2 に 限 って 開 示 している 場 合 には 外 国 優 先<br />

権 の 利 益 を 与 えられなかった。)<br />

II. 狭 小 化 又 は 亜 属 クレーム<br />

出 願 時 の 要 件 によって 裏 付 けられていない 要 素 又 は 限 定 を 述 べることによって 当 該 クレーム<br />

を 狭 小 化 することを 含 むクレーム 変 更 の 導 入 は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 の<br />

違 反 となる。 参 照 事 例 として、Fujikawa v. Wattanasin, 93 F.3d 1559, 1571, 39 USPQ2d 1895,<br />

1905 (Fed. Cir. 1996)( 起 こり 得 るすべての 部 分 を 書 き 並 べた「 長 いリスト」は 属 内 のすべ<br />

ての 種 の 書 面 による 記 載 を 構 成 しない。なぜなら、それは 当 業 者 を 特 定 の 種 へと「 合 理 的 に<br />

導 」かない。);In re Ruschig, 379 F.2d 990, 995, 154 USPQ 118, 123 (CCPA 1967)(「n-<br />

プロピルアミンが n-ブチルアミンに 代 えて 化 合 物 の 製 造 に 使 用 されていたら、クレーム 13<br />

の 化 合 物 がもたらされていた。 請 求 人 は 審 判 部 に 対 するように 我 々に 対 して 前 記 のブチル 化<br />

合 物 が 作 られた 具 体 的 な 実 施 例 6 に 基 づいてパターン 化 された 仮 想 の 具 体 的 実 施 例 を 提 出 し<br />

たので、 我 々は 単 純 な 変 更 が 本 明 細 書 に 含 まれる 具 体 的 裏 付 けとなる 開 示 へつながるかを 理<br />

解 することができる。 問 題 は、それを 想 像 することは 容 易 であるとはいえ、かかる 開 示 がな<br />

いことである。)( 強 調 は 原 文 のまま)Ex parte Ohshiro 事 例 , 14 USPQ2d 1750 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1989)において 審 判 部 は、「 前 記 ピストンと 引 っ 込 んだ 溝 を 持 つ 前 記 シリンダー(ヘ<br />

ッド)の 少 なくとも 1 つ」を 記 載 した 内 燃 機 関 に 対 するクレームの 拒 絶 を、 特 許 法 第 112 条 第<br />

1 段 落 に 基 づき 追 認 した。 審 判 部 は、 引 っ 込 んだ 溝 を 有 するシリンダーヘッドと 引 っ 込 んだ<br />

溝 を 有 しないピストンを 開 示 する 出 願 は 溝 を 切 ったピストンの「 種 」を 具 体 的 には 開 示 して<br />

いないと 判 断 した。<br />

これらと 他 の 事 例 は 開 示 されていない 種 の 列 挙 が 記 載 要 件 に 反 する 可 能 性 を 確 認 したとはい<br />

え、 亜 属 用 語 を 含 む 変 更 は 容 認 されることもあり、 容 認 されないこともある。 親 出 願 が 属 開<br />

示 及 び 記 載 された 範 囲 内 に 該 当 する 具 体 的 な 実 施 例 を 含 んでいる 場 合 、 裁 判 所 が 亜 属 範 囲 は<br />

親 出 願 に 記 載 されていないと 判 断 したので、 当 該 クレームが 亜 属 ( 分 子 重 量 比 の 指 定 範 囲 )に<br />

向 けられていたとき 親 出 願 日 の 利 益 を 与 えられなかった。In re Lukach, 442 F.2d 967, 169<br />

USPQ 795 (CCPA 1971)。 一 方 、Ex parte Sorenson 事 件 , 3 USPQ2d 1462 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1987)において「 脂 肪 族 カルボン 酸 」 及 び「アリールカルボン 酸 」の 亜 属 用 語 は 各 亜 属 に 該 当<br />

しない 種 が 一 般 のカルボン 酸 と 同 様 に 開 示 されているという 理 由 から 書 面 記 載 要 件 に 違 反 し<br />

なかった。 次 も 参 照 のこと。In re Smith, 458 F.2d 1389, 1395, 173 USPQ 679, 683 (CCPA<br />

1972)(「クレームの 亜 属 に 到 達 できる 帰 納 的 演 繹 的 アプローチの 実 現 可 能 性 がどのようなも<br />

のであれ、 当 該 亜 属 は 必 ずしもそれを 包 含 する 属 及 びそれが 読 む 種 によって 記 載 されるとは<br />

言 えない。( 強 調 は 引 用 者 による)。 各 事 例 は、 当 業 者 に 対 して 合 理 的 に 伝 えられるものの 観<br />

点 からそれ 自 身 の 事 実 について 判 断 されねばならない。In re Wilder, 736 F.2d 1516, 1520,<br />

222 USPQ 369, 372 (Fed. Cir. 1984)。<br />

III. 範 囲 限 定<br />

数 値 範 囲 限 定 を 変 更 するに 関 して、 分 析 は、 当 業 者 が 原 開 示 における 考 察 により 本 質 的 に 裏<br />

付 けられるとみなすであろう 範 囲 を 考 慮 に 入 れねばならない。In re Wertheim 事 件 , 541 F.2d<br />

257, 191 USPQ 90 (CCPA 1976)における 審 決 において 原 明 細 書 に 記 載 された 範 囲 は「25% 乃<br />

至 60%」の 範 囲 及 び「36%」と「50%」の 具 体 的 実 施 例 を 含 んでいた。「 少 なくとも 35%」<br />

254


に 対 応 する 新 規 クレーム 限 定 は、「35%と 60% 間 」に 対 する 限 定 は 記 載 要 件 を 満 たしている<br />

にしても、「 少 なくとも」の 表 現 に 上 限 がなく 逐 語 的 に 当 該 クレームを「25%」から「60%」<br />

までの 範 囲 外 の 実 施 例 に 読 ませるため、 記 載 要 件 を 満 たしていなかった。<br />

次 も 参 照 のこと。Purdue Pharma L.P. v. Faulding Inc., 230 F.3d 1320, 1328, 56 USPQ2d<br />

1481, 1487 (Fed. Cir. 2000)(「 明 細 書 は 当 業 者 に 対 して 発 明 者 が 割 合 を 自 らの 発 明 の 一 部<br />

であると 考 えたこと・・・を 明 確 に 開 示 していない・・・。 従 って、その 開 示 は[ 後 願 ]クレームが<br />

そこから 特 許 性 のある 部 分 を 切 り 取 った 広 範 な 発 明 を 公 開 したので、 書 面 記 載 要 件 は 十 分 で<br />

あると Purdue が 主 張 する 力 はない。 次 を 比 較 のこと。Union Oil of Cal. v. Atlantic<br />

Richfield Co., 208 F.3d 989, 997, 54 USPQ2d 1227, 1232-33 (Fed. Cir. 2000)( 排 気 を 抑<br />

える 自 動 車 用 ガソリンを 生 産 する 他 の 化 学 特 性 の 範 囲 と 組 み 合 わせて 作 用 する 化 学 特 性 の 範<br />

囲 という 観 点 からの 記 載 は、 各 組 み 合 わせの 正 確 な 化 学 成 分 は 開 示 されておらず、さらに 明<br />

細 書 は 発 行 時 点 のクレームに 対 応 するどのように 確 かな 実 施 例 も 開 示 していないけれども、<br />

適 切 な 発 明 の 書 面 による 記 載 を 提 供 していると 認 定 された。「 特 許 法 及 び 本 法 廷 の 判 例 は 当<br />

該 発 明 者 が 出 願 時 にクレームの 発 明 を 所 有 していたことを・・・ 当 業 者 に 証 明 するために 十 分<br />

なだけの 発 明 の 記 載 を 求 めるものである。」)<br />

2163.06 書 面 記 載 要 件 と 新 規 事 項 との 関 係<br />

発 明 の 詳 細 な 書 面 による 記 載 の 不 足 は、ほとんどの 場 合 クレームの 保 護 対 象 に 関 係 して 生 ず<br />

る 争 点 となる。 出 願 人 が 出 願 の 要 約 、 明 細 書 又 は 図 面 を 補 正 する 若 しくは 補 正 しようとする<br />

とき、その 補 正 の 内 容 が 出 願 時 の 出 願 に 記 載 されていない 場 合 に 新 規 事 項 の 争 点 が 生 ずるで<br />

あろう。 言 い 方 を 変 えると、 出 願 時 の 出 願 の 明 細 書 、クレーム 又 は 図 面 のいずれにしろ 記 載<br />

された 情 報 は 新 規 事 項 を 付 け 加 えることなく 当 該 出 願 の 任 意 の 他 の 部 分 に 付 加 することがで<br />

きる。<br />

新 規 事 項 の 挿 入 を 禁 止 する 次 に 掲 げる 2 項 の 法 規 定 が 存 在 する。 特 許 法 第 132 条 ― 何 れの 補<br />

正 も 当 該 発 明 の 開 示 に 新 規 事 項 を 挿 入 してはならない。 並 びに、 再 発 行 出 願 に 対 して 同 様 に<br />

規 定 している 特 許 法 第 251 条 ―いずれの 新 規 事 項 も 再 発 行 の 出 願 に 挿 入 してはならない。<br />

I. 新 規 事 項 の 取 扱 い<br />

新 規 保 護 対 象 が 当 該 開 示 に 追 加 される 場 合 、それが 要 約 、 明 細 書 又 は 図 面 にであるが 否 かに<br />

かかわらず、 審 査 官 は 新 規 事 項 の 挿 入 を 必 要 に 応 じて 特 許 法 第 132 条 若 しくは 第 251 条 に 基<br />

づいて 拒 絶 し、 出 願 人 に 当 該 新 規 事 項 を 放 棄 するよう 求 めなくてはならない。 新 規 事 項 が 当<br />

該 クレームに 追 加 される 場 合 、 審 査 官 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 に 基 づき 当<br />

該 クレームを 拒 絶 しなくてはならない。In re Rasmussen, 650 F.2d 1212, 211 USPQ 323 (CCPA<br />

1981)。 審 査 官 はそれでも、 当 該 新 規 事 項 の 拒 絶 が 出 願 人 により 克 服 される 可 能 性 があるので、<br />

先 行 技 術 に 基 づき 拒 絶 を 行 うに 当 たって 当 該 クレームに 追 加 された 保 護 対 象 を 考 慮 しなくて<br />

はならない。<br />

当 該 クレームそれ 自 体 は 補 正 されなかったが 明 細 書 が 新 規 事 項 を 追 加 するように 変 更 された<br />

事 例 で、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 当 該 クレームの 拒 絶 は、クレーム 限 定 のいずれに<br />

しろ 追 加 された 材 料 によって 影 響 を 受 けるときはいつでも 行 わなくてはならない。<br />

補 正 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 形 式 違 反 又 は 拒 絶 への 反 論 で 補 正 が 提 出 された 場 合 、<br />

当 該 出 願 全 体 の 調 査 は「 新 規 事 項 」が 含 まれるか 否 かを 問 わず 判 断 することが 必 要 になるこ<br />

255


とが 多 い。 従 って、 出 願 人 は 開 示 についてされた 補 正 の 裏 付 けを 具 体 的 に 指 摘 しなければな<br />

らない。<br />

II. 新 規 事 項 による 形 式 違 反 及 び/ 又 は 拒 絶 の 審 査<br />

クレームの 拒 絶 は、 拒 絶 及 び 新 規 事 項 の 削 除 要 件 が 特 許 法 施 行 規 則 第 1.181 条 に 基 づく 請 願<br />

書 により 監 督 官 の 審 査 を 受 ける 場 合 には、 特 許 審 判 インターフェアランス 部 による 再 審 査 が<br />

可 能 である。 当 該 クレーム 及 び 明 細 書 が 共 に 直 接 間 接 を 問 わず 新 規 事 項 を 含 んでいる 場 合 で<br />

あって 審 査 官 による 拒 絶 及 び 形 式 違 反 の 両 方 が 存 在 している 場 合 、 当 該 争 点 は 上 訴 可 能 とな<br />

るので 請 願 書 により 判 断 してはならない。<br />

III. 明 細 書 の 残 りの 部 分 に 開 示 されていないクレームの 保 護 対 象<br />

原 明 細 書 において 提 出 されたときのクレームは 開 示 の 一 部 である。 従 って、 最 初 に 申 請 され<br />

たときの 出 願 がその 明 細 書 の 残 りの 部 分 に 開 示 されていない 材 料 を 開 示 しているクレームを<br />

含 んでいる 場 合 、 出 願 人 はその 明 細 書 を 修 正 してそのクレームの 保 護 対 象 を 含 めることがで<br />

きる。In re Benno, 768 F.2d 1340, 226 USPQ 683 (Fed. Cir. 1985)。 様 式 文 例 第 7.44 条<br />

は 初 めにクレームされた 保 護 対 象 が 当 該 明 細 書 において 適 切 な 先 行 根 拠 を 欠 いている 場 合 に<br />

使 用 することができる。MPEP 第 608.01 条 (o)を 参 照 のこと。<br />

2163.07 原 明 細 書 本 文 において 裏 付 けられる 出 願 への 補 正<br />

原 明 細 書 本 文 において 裏 付 けられている 出 願 への 補 正 は 新 規 事 項 とならない。<br />

I. 書 き 換 え<br />

語 句 の 単 なる 書 き 換 えは 新 規 事 項 を 構 成 しない。 従 って、 同 一 意 味 が 元 のままである 語 句 の<br />

言 い 換 えは 容 認 される。In re Anderson, 471 F.2d 1237, 176 USPQ 331 (CCPA 1973)。 辞 書 、<br />

又 は 当 該 技 術 分 野 において 認 められており 出 願 提 出 時 に 知 られていた 定 義 の 単 なる 挿 入 は 新<br />

規 事 項 とはみなされないことになる。1 つの 言 葉 に 複 数 の 定 義 があり、1 つの 定 義 が 当 該 出 願<br />

に 付 加 されている 場 合 、 新 規 事 項 の 発 行 及 び/ 又 は 書 面 による 記 載 の 不 足 を 回 避 するため、<br />

出 願 人 が 特 定 の 定 義 を 意 図 した 出 願 時 の 出 願 から 明 確 にされねばならない。 参 照 事 例 として、<br />

Scarring Corp. v. Megan, Inc., 222 F.3d 1347, 1352-53, 55 USPQ2d 1650, 1654 (Fed. Cir.<br />

2000)。Scarring 事 件 において 組 換 え DNA 分 子 に 関 する 原 開 示 は「 白 血 球 インターフェロン」<br />

という 言 葉 を 使 用 した。 出 願 日 間 もなく 科 学 委 員 会 はその 言 葉 を 廃 止 して「IFN-(a)」を 支 持<br />

した。なぜなら、 後 者 の 言 葉 は 特 定 ポリペプチドを 識 別 し、かつ、 当 該 委 員 会 は 白 血 球 もま<br />

たインターフェロンの 他 の 型 を 作 り 出 すことを 見 出 したからである。 裁 判 所 は、「 白 血 球 イ<br />

ンターフェロン」の 代 わりに「IFN-(a)」の 言 葉 を 使 うという 明 細 書 及 びクレームへの 後 の 補<br />

正 は、 単 に 当 該 発 明 の 名 前 を 変 えただけであって 新 規 事 項 を 構 成 しないと 判 示 した。 当 該 ク<br />

レームは 当 該 発 明 者 の 原 寄 託 によりコード 化 されたインターフェロン 亜 型 に 限 って 適 用 する<br />

よう 限 定 されていた。<br />

II. 明 らかな 誤 謬<br />

明 らかな 誤 謬 を 修 正 するための 補 正 は、 当 業 者 が 当 該 明 細 書 に 誤 謬 が 存 在 することを 認 識 し<br />

ているばかりでなく 正 当 な 補 正 と 認 めるであろう 場 合 は 新 規 事 項 を 構 成 しない。In re Odd,<br />

256


443 F.2d 1200, 170 USPQ 268 (CCPA 1971)。 特 許 法 第 119 条 に 基 づく 外 国 優 先 権 文 書 が 米 国<br />

出 願 ファイルの 記 録 である 場 合 、 出 願 人 はその 文 書 の 開 示 に 依 拠 して 係 属 中 の 米 国 出 願 の 誤<br />

謬 の 補 正 を 裏 付 けることはできない。Ex parte Bondiou, 132 USPQ 356 (Bd. App. 1961)。<br />

本 禁 止 は 外 国 優 先 権 文 書 の 文 言 にかかわらず 適 用 する。その 理 由 は、 優 先 権 を 求 めるクレー<br />

ムは 2 以 上 の 出 願 に 共 通 する 保 護 対 象 について 先 願 日 の 利 益 を 求 めるクレームにすぎず、 優<br />

先 権 を 求 めるクレームがなされる 出 願 に 優 先 権 文 書 の 内 容 を 組 み 込 む 働 きをしないことによ<br />

る。 本 禁 止 は、 参 照 することにより 米 国 出 願 が 明 示 的 に 外 国 優 先 権 文 書 を 取 り 込 む 場 合 は 適<br />

用 しない。2004 年 9 月 21 日 以 降 に 提 出 された 出 願 について、 明 細 書 又 は 図 面 の 全 部 若 しく<br />

は 一 部 が 米 国 出 願 から 何 かの 事 情 で 削 除 される 場 合 、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.55 条 に 基 づき 当 該<br />

出 願 の 出 願 日 に 存 在 する 先 願 外 国 出 願 の 優 先 権 を 求 めるクレームは、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.57<br />

条 (a)の 条 件 及 び 要 件 を 前 提 として、 明 細 書 又 は 図 面 から 何 らかの 事 情 で 削 除 された 部 分 につ<br />

いて 先 願 外 国 出 願 を 参 照 することにより 組 み 込 むものとみなす。 特 許 法 施 行 規 則 第 1.57 条<br />

(a) 及 び MPEP 第 201.17 条 を 参 照 のこと。<br />

最 初 に 提 出 された 米 国 出 願 が 非 英 語 であってその 英 語 訳 が 特 許 法 施 行 規 則 第 1.52 条 (d)に 従<br />

って 提 出 された 場 合 でその 英 語 訳 に 誤 謬 が 存 在 する 場 合 、 出 願 人 は 最 初 に 提 出 された 非 英 語<br />

の 米 国 出 願 に 依 拠 して 英 語 訳 文 書 の 誤 謬 の 補 正 を 裏 付 けることができる。<br />

2163.07(a) 潜 在 的 な 機 能 、 理 論 又 は 利 点<br />

特 許 出 願 において 潜 在 的 に 機 能 する 又 は 特 性 を 有 する、 理 論 に 従 って 機 能 する 又 は 利 点 を 有<br />

する 考 案 品 を 開 示 することにより、それについて 明 示 的 に 言 及 していなくとも 特 許 出 願 はそ<br />

の 機 能 、 理 論 又 は 利 点 を 必 然 的 に 開 示 する。 出 願 は 後 に 補 正 を 行 い、 禁 止 された 新 規 事 項 を<br />

組 み 込 まなければ、 機 能 、 理 論 または 利 点 を 列 挙 することができる。In re Reynolds, 443 F.2d<br />

384, 170 USPQ 94 (CCPA 1971);In re Smythe, 480 F. 2d 1376, 178 USPQ 279 (CCPA 1973)。<br />

「 潜 在 的 特 性 を 立 証 するには、 外 的 証 拠 が『 不 足 している 説 明 事 項 が 引 例 に 記 載 されたもの<br />

に 必 然 的 に 存 在 すること、そして、それは 当 業 者 によってそのように 認 識 されるであろうこ<br />

とを 明 確 にしなくてはならない。しかし、 潜 在 的 特 性 は 蓋 然 性 若 しくは 可 能 性 により 立 証 さ<br />

れてはならない。 所 定 のことが 与 えられた 状 況 によって 生 じる 可 能 性 があるという 単 なる 事<br />

実 では 十 分 でない。』」In re Robertson, 169 F.3d 743, 745, 49 USPQ2d 1949, 1950-51 (Fed.<br />

Cir. 1999)( 引 用 省 略 )<br />

2163.07(b) 出 典 明 示 による 記 載<br />

もう 1 つの 文 書 に 記 載 される 何 らかの 情 報 を 繰 り 返 す 代 わりに、 明 細 書 の 本 文 において 当 該<br />

文 書 へ 言 及 することにより、 出 願 はもう 1 つの 文 書 若 しくはその 一 部 の 内 容 を 組 み 込 むよう<br />

努 めることができる。 組 み 込 まれる 情 報 は、まるで 当 該 出 願 において 繰 り 返 されるかのよう<br />

に 出 願 時 の 出 願 の 一 部 となり、 出 願 時 の 出 願 本 文 の 一 部 として 取 り 扱 わねばならない。 参 照<br />

によって 組 み 込 まれた 特 定 された 材 料 を 実 際 の 本 文 と 置 き 換 えることは 新 規 事 項 とはならな<br />

い。 参 照 による 組 み 込 みに 関 する 特 許 商 標 庁 の 方 針 については、 特 許 法 施 行 規 則 第 1.57 条 及<br />

び MPEP 第 608.01 条 (p)を 参 照 のこと。 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 行 使 される 場 合 の 出 願 人 が<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 を 遵 守 しているか 否 かの 判 断 に 対 する、 参 照 による 組 み 込 み<br />

の 影 響 については、MPEP 第 2181 条 を 参 照 のこと。<br />

257


2164 実 施 可 能 要 件<br />

実 施 可 能 要 件 は、 明 細 書 が 発 明 をどのように 製 造 しどのように 使 用 するかを 記 載 する 特 許 法<br />

第 112 条 第 1 段 落 の 要 件 をいう。 当 業 者 が 製 造 し 使 用 することができねばならない 発 明 は、<br />

特 定 の 出 願 又 は 特 許 のクレームによって 定 義 されるものである。<br />

明 細 書 は 当 業 者 がクレームの 発 明 を 製 造 し 使 用 することができるような 言 葉 で 当 該 発 明 を 記<br />

載 するとする 要 件 の 目 的 は、 当 該 発 明 が 意 味 のある 方 法 で 関 心 のある 公 衆 に 伝 えられること<br />

を 保 証 することである。 出 願 の 開 示 に 記 載 される 情 報 は、クレームの 発 明 の 製 造 方 法 及 び 使<br />

用 方 法 の 両 方 を 当 業 者 に 伝 えるために 十 分 なものでなければならない。ただし、 特 許 法 第 112<br />

条 第 1 段 落 を 遵 守 しても、「 当 業 者 が、 完 成 され 商 業 的 に 実 現 可 能 な 実 施 例 を 製 造 し 使 用 す<br />

ることは、そのような 効 果 についてクレームの 限 定 がない 限 りは、 必 ずしもできるようにな<br />

る」ものではない。CFMT, Inc. v. Yieldup Int’l Corp., 349 F.3d 1333, 1338, 68 USPQ2d<br />

1940, 1944 (Fed. Cir. 2003)( 半 導 体 ウエハーの 洗 浄 工 程 を 改 良 するための 一 般 システムに<br />

向 けられた 発 明 は、システム 全 体 の 改 良 を 示 す 開 示 によって 実 施 可 能 になった。) 当 該 発 明 を<br />

製 造 及 び 使 用 する 詳 細 手 順 は、 当 該 発 明 自 体 の 記 述 が 当 業 者 に 当 該 発 明 を 製 造 し 使 用 させる<br />

に 十 分 なものである 場 合 、 必 要 とは 限 らない。 特 許 クレームは、 実 施 可 能 な 程 度 の 開 示 によ<br />

って 裏 付 けられない 場 合 、 無 効 である。<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 要 件 は 独 立 しており、 記 載 要 件 とは 明 確 に 区 別 される。<br />

Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1563, 19 USPQ2d 1111, 1116-17 (Fed. Cir.<br />

1991)(「『 発 明 の 書 面 による 記 載 』 要 件 の 目 的 は『 製 造 及 び 使 用 』 方 法 の 単 なる 記 載 よりも<br />

幅 広 い」。)MPEP 第 2161 条 も 参 照 のこと。 従 って、クレームへの 追 加 限 定 が 初 めに 出 願 され<br />

た 時 の 開 示 において 記 述 的 裏 付 けに 欠 けるかもしれないという 事 実 は、 必 ずしも 当 該 限 定 が<br />

実 施 可 能 でもないというわけではない。すなわち、 新 規 限 定 の 陳 述 それ 自 体 は、その 限 定 が<br />

原 開 示 に 記 載 されていないかもしれないとしても、その 限 定 を 含 むクレームの 製 造 及 び 使 用<br />

を 当 業 者 に 実 施 可 能 にできる 可 能 性 がある。 従 って、 当 該 限 定 はそれらの 単 独 かつ 明 確 な 基<br />

準 を 用 いて 実 施 例 及 び 明 細 書 本 文 の 両 方 について 分 析 しなければならない。<br />

さらに、 保 護 対 象 が 出 願 時 の 出 願 の 明 細 書 部 分 にはないがクレームにはある 場 合 、 限 定 それ<br />

自 体 は 当 業 者 にその 限 定 を 含 むクレームを 製 造 及 び 使 用 できるようにする 可 能 性 がある。ク<br />

レームの 保 護 対 象 がクレームのみに 記 載 され 出 願 の 明 細 書 部 分 に 記 載 されていない 場 合 、 当<br />

該 明 細 書 は、 様 式 文 例 第 7.44 条 を 用 いるクレームの 保 護 対 象 に 不 可 欠 な 裏 付 けが 欠 けること<br />

を 理 由 に 拒 絶 されねばならない。MPEP 第 2163.06 条 を 参 照 のこと。これは 明 細 書 のみに 対 す<br />

る 方 式 拒 絶 であって、 実 施 可 能 性 の 争 点 は 別 に 取 り 扱 わねばならない。<br />

2164.01 実 施 可 能 性 の 基 準<br />

特 定 のクレームが 出 願 の 開 示 によって 裏 付 けられているか 否 かの 分 析 には、その 開 示 が、 出<br />

願 時 に、 当 業 者 がクレームされる 発 明 を 製 造 及 び 使 用 することができることに 関 して、 当 該<br />

クレームの 保 護 対 象 について 十 分 な 情 報 を 含 んでいたか 否 かの 判 断 を 必 要 とする。 明 細 書 が<br />

実 施 可 能 要 件 を 満 たしているか 否 かの 判 断 基 準 は、 当 該 発 明 を 実 施 するために 必 要 とされる<br />

実 験 は 過 度 若 しくは 不 当 であるか、という 質 問 をとった Mineral Separation v. Hyde 事 件 ,<br />

242 U.S. 261, 270 (1916)に 関 する 最 高 裁 判 所 の 判 決 において 固 められた。その 基 準 は 今 も<br />

なお 適 用 されるべきものである。In re Wands, 858 F.2d 731, 737, 8 USPQ2d 1400, 1404 (Fed.<br />

Cir. 1988)。 従 って、 本 法 が「 過 度 の 実 験 」という 言 葉 を 使 用 していないとしてもクレーム<br />

258


の 発 明 は 当 業 者 が 過 度 の 実 験 をせずに 当 該 発 明 を 製 造 及 び 使 用 することができるよう 実 施 可<br />

能 にすることを 必 要 としていると 解 釈 されている。In re Wands, 858 F.2dat 737, 8 USPQ2d<br />

at 1404 (Fed. Cir. 1988)。 次 も 参 照 のこと。 United States v. Telectronics, Inc.,857 F.2d<br />

778, 785, 8 USPQ2d 1217, 1223 (Fed. Cir. 1988)。(「 実 施 可 能 性 の 基 準 は、 当 業 者 が 当 該<br />

特 許 の 開 示 から 過 度 の 実 験 をすることなく 当 該 技 術 分 野 において 周 知 の 情 報 と 結 びつけて 当<br />

該 発 明 を 製 造 又 は 使 用 することができたか 否 かである。」) 特 許 は 当 該 技 術 分 野 において 周 知<br />

されていることを 教 示 する 必 要 はなく、また 削 除 することが 望 ましい。In re Buchner, 929<br />

F.2d 660, 661, 18 USPQ2d 1331, 1332 (Fed. Cir. 1991); Hybritech, Inc. v. Monoclonal<br />

Antibodies, Inc., 802 F.2d 1367, 1384, 231 USPQ 81, 94 (Fed. Cir. 1986), cert. denied,<br />

480 U.S. 947 (1987); 及 び Lindemann Maschinenfabrik GMBH v. American Hoist & Derrick<br />

Co., 730 F.2d 1452, 1463, 221 USPQ 481, 489 (Fed. Cir. 1984)。 当 該 明 細 書 のいずれの<br />

部 分 も、そこに 開 示 される 保 護 対 象 を 考 察 する 若 しくは 非 難 していさえする 背 景 部 分 であっ<br />

ても、 実 施 を 可 能 にする 開 示 を 裏 付 けることができる。Callicrate v. Wadsworth Mfg., Inc.,<br />

427 F.3d 1361, 77 USPQ2d 1041 (Fed. Cir. 2005)( 先 行 技 術 の 特 徴 を 有 する 問 題 の 考 察 は、<br />

当 業 者 がこの 特 徴 の 製 造 及 び 使 用 方 法 を 知 らないであろうことをいうものではない。) 実 施 可<br />

能 性 を 判 断 することは、 根 拠 を 成 す 事 実 認 定 に 基 づく 法 律 の 問 題 である。In re Vaeck, 947<br />

F.2d 488, 495, 20 USPQ2d 1438, 1444 (Fed. Cir. 1991);Atlas Powder Co. v. E.I. du Pont<br />

de Nemours & Co., 750 F.2d 1569, 1576, 224 USPQ 409, 413 (Fed. Cir. 1984)。<br />

過 度 の 実 験<br />

実 験 が 複 雑 かもしれないという 事 実 は、 当 該 技 術 が 当 該 実 験 に 一 般 的 に 携 わっている 場 合 、<br />

必 ずしもそれを 過 度 にするとは 限 らない。In re Certain Limited-Charge Cell Culture<br />

Microcarriers, 221 USPQ 1165, 1174 (Int’l Trade Comm'n 1983), aff fd. sub nom.,<br />

Massachusetts Institute of Technology v. A.B. Fortia, 774 F.2d 1104, 227 USPQ 428 (Fed.<br />

Cir. 1985)。 次 も 参 照 のこと。In re Wands, 858 F.2dat 737, 8 USPQ2dat 1404 実 施 可 能 性<br />

の 基 準 は 実 験 が 必 要 であるか 否 かではなく、 実 験 が 必 要 な 場 合 それが 過 度 であるか 否 かであ<br />

る。In re Angstadt, 537 F.2d 498, 504, 190 USPQ 214, 219 (CCPA 1976)<br />

2164.01(a) 過 度 の 実 験 の 要 因<br />

開 示 が 実 施 可 能 要 件 を 満 たしていないとする 判 断 を 裏 付 ける 十 分 な 証 拠 があるか 否 か、 及 び<br />

必 要 な 実 験 は「 過 度 」であるか 否 かを 判 断 する 場 合 に 検 討 すべき 要 因 は 数 多 い。これらの 要<br />

因 は 次 に 掲 げる 項 目 を 含 むがこれに 限 定 されない。<br />

(A) クレームの 広 さ<br />

(B) 発 明 の 性 質<br />

(C) 先 行 技 術 の 状 態<br />

(D) 当 業 者 レベル<br />

(E) 先 行 技 術 分 野 の 予 測 可 能 性 レベル<br />

(F) 発 明 者 が 与 える 指 示 量<br />

(G) 実 践 的 な 実 施 例 の 存 在<br />

(H) 開 示 内 容 に 基 づいて 当 該 発 明 を 製 造 又 は 使 用 するために 必 要 な 実 験 の 量<br />

In re Wands, 858 F.2d 731, 737, 8 USPQ2d 1400, 1404 (Fed. Cir. 1988)(B 型 肝 炎 表 面 抗<br />

259


原 の 検 出 方 法 に 向 けられたクレームは 実 施 可 能 要 件 を 満 たしていないとする 特 許 商 標 庁 の 判<br />

断 の 無 効 。)Wands 事 件 において 裁 判 所 は、 事 実 に 関 して 何 も 意 見 の 相 違 はないが、データの<br />

解 釈 及 びその 事 実 から 引 き 出 される 結 論 に 関 してのみ 意 見 の 相 違 があることを 指 摘 した。In<br />

re Wands, 858 F.2dat 736-40, 8 USPQ2dat 1403-07。 裁 判 所 は、 明 細 書 は 係 争 中 のクレーム<br />

に 関 して 実 施 可 能 であると 判 示 し、その 明 細 書 に「かなりの 指 示 及 び 指 針 が 存 在 する」、す<br />

なわち、「 当 該 出 願 が 提 出 された 当 時 に 当 該 技 術 分 野 に 高 い 技 能 レベル」が 存 在 したこと 及<br />

び「 当 該 発 明 を 実 施 するために 必 要 なすべての 方 法 は 知 られていたこと」ことを 確 認 した。<br />

858 F.2dat 740、8 USPQ2dat 1406。 実 施 可 能 性 の 争 点 に 関 する 要 因 すべてを 検 討 した 後 、 裁<br />

判 所 は「クレームの 発 明 を 実 施 するために 必 要 な 抗 体 を 入 手 するための 過 度 の 実 験 は 必 要 と<br />

しないであろう」と 結 論 した。 同 上 、8 USPQ2dat 1407。<br />

上 記 要 因 の 1 のみの 分 析 に 基 づき、その 他 の 1 以 上 を 無 視 して 開 示 は 実 施 可 能 性 がないと 結<br />

論 することは 正 しくない。 審 査 官 の 分 析 はこれらの 要 因 のそれぞれについてすべての 証 拠 を<br />

検 討 しなければならず、 実 施 不 可 能 性 の 結 論 はその 証 拠 全 体 に 基 づくものでなければならな<br />

い。858 F.2dat 737, 740, 8 USPQ2dat 1404, 1407。<br />

実 施 可 能 性 の 欠 如 の 結 論 は、 上 記 の 要 因 のそれぞれに 関 する 証 拠 に 基 づき、 出 願 時 において、<br />

当 該 明 細 書 が 当 業 者 に 過 度 の 実 験 を 行 うことなくクレームの 発 明 の 全 範 囲 を 製 造 及 び/ 又 は<br />

使 用 する 方 法 を 教 示 していなかったであろうことをいうものである。In re Wright, 999 F.2d<br />

1557,1562, 27 USPQ2d 1510, 1513 (Fed. Cir. 1993)。<br />

クレームの 発 明 を 製 造 及 び 使 用 するために「 過 度 の 実 験 」が 必 要 とされたとする 判 断 は 単 一<br />

の、 単 純 な 事 実 判 定 ではない。むしろ、 上 記 に 言 及 された 事 実 に 基 づく 検 討 すべてを 比 較 検<br />

討 することによって 達 せられる 結 論 である。In re Wands,858 F.2dat 737, 8 USPQ2dat 1404。<br />

これらの 事 実 に 基 づく 検 討 は、MPEP 第 2164.08 条 (クレームな 範 囲 又 は 広 さ)、 第 2164.05 条<br />

(a)( 発 明 の 性 質 及 び 先 行 技 術 分 野 の 状 態 )、 第 2164.05 条 (b)( 当 業 者 レベル) 第 2164.03 条 ( 先<br />

行 技 術 分 野 の 予 測 可 能 性 レベル 及 び 発 明 者 が 与 える 指 示 量 )、 第 2164.02 条 ( 実 践 的 な 実 施 例<br />

の 存 在 ) 及 び 第 2164.06 条 ( 開 示 内 容 に 基 づいて 当 該 発 明 を 製 造 又 は 使 用 するために 必 要 な 実<br />

験 の 量 )においてさらに 十 分 に 考 察 されている。<br />

2164.01(b) クレーム 発 明 の 製 造 方 法<br />

明 細 書 が 当 該 クレームの 全 範 囲 と 合 理 的 相 関 関 係 を 有 するクレームの 発 明 を 製 造 及 び 使 用 す<br />

る 方 法 の 少 なくとも 1 を 開 示 している 限 り、 特 許 法 第 112 条 の 実 施 可 能 要 件 は 満 足 される。<br />

In re Fisher, 427 F.2d 833, 839, 166 USPQ 18, 24 (CCPA 1970)。クレームの 発 明 が 製 造<br />

され 得 るその 他 の 方 法 を 開 示 しなかったことは、クレームを 特 許 法 第 112 条 に 基 づく 無 効 と<br />

するものではない。Spectra-Physics, Inc. v. Coherent, Inc., 827 F.2d 1524, 1533, 3 USPQ2d<br />

1737, 1743 (Fed. Cir.), cert. denied, 484 U.S. 954 (1987)。<br />

当 然 ながら、 不 安 定 かつ 過 渡 的 な 化 学 中 間 体 について、「 製 造 方 法 」 要 件 は 出 願 人 がクレー<br />

ムの 製 品 を 安 定 した 永 久 的 若 しくは 分 離 可 能 な 状 態 で 製 造 する 方 法 を 教 示 することを 要 求 し<br />

ない。In re Breslow, 616 F.2d 516, 521, 205 USPQ 221, 226 (CCPA 1980)。<br />

当 該 明 細 書 が 実 施 可 能 であるか 否 かを 判 断 する 場 合 に 生 ずる 可 能 性 のある 重 要 な 論 点 は、 発<br />

明 を 製 造 するために 必 要 な 開 始 材 料 又 は 装 置 を 入 手 できるか 否 かである。バイオ 技 術 分 野 に<br />

おいてこのことは、 製 品 又 はプロセスが 特 定 の 微 生 物 菌 株 を 必 要 とする 場 合 、またその 微 生<br />

物 が 広 範 囲 に 及 ぶ 検 査 を 行 って 初 めて 入 手 できる 場 合 にあてはまることが 多 い。<br />

260


裁 判 所 は In re Ghiron 事 件 , 442 F.2d 985, 991, 169 USPQ 723, 727 (CCPA 1971)において、<br />

方 法 の 実 施 が 特 定 の 装 置 を 必 要 とする 場 合 、 出 願 はその 装 置 がすぐに 入 手 できない 場 合 はそ<br />

の 装 置 について 十 分 な 開 示 を 提 供 しなければならないことを 明 確 にした。 同 じことは、 特 定<br />

の 化 学 物 質 が 化 合 物 の 製 造 又 は 化 学 プロセスの 実 施 に 必 要 な 場 合 に 言 えよう。In re Howarth,<br />

654 F.2d 103, 105, 210 USPQ 689, 691 (CCPA 1981)。<br />

2164.01(c) クレーム 発 明 の 使 用 方 法<br />

明 細 書 の 有 用 性 についての 陳 述 がそこに 使 用 方 法 の 含 意 を 含 んでいる、 及 び/ 又 は 当 該 技 術<br />

分 野 において 投 与 の 標 準 モードが 周 知 であり 予 想 されていると 認 められている 場 合 、 特 許 法<br />

第 112 条 は 満 たされる。In re Johnson, 282 F.2d 370, 373, 127 USPQ 216, 219 (CCPA 1960);<br />

In re Hitchings, 342 F.2d 80, 87, 144 USPQ 637, 643 (CCPA 1965)。 次 も 参 照 のこと。In<br />

re Brana, 51 F.2d 1560, 1566, 34 USPQ2d 1437, 1441 (Fed. Cir. 1993)。<br />

例 えば、 当 業 者 に 当 該 情 報 が 過 度 の 実 験 を 行 うことなく 入 手 できるであろうことが 知 られて<br />

いる 場 合 、 必 ずしも 投 薬 量 若 しくは 使 用 方 法 を 特 定 する 必 要 はない。 当 業 者 が 同 等 の 生 理 又<br />

は 生 物 活 性 を 有 する 化 合 物 の 知 識 に 基 づき 過 度 の 実 験 を 行 うことなく 適 切 な 投 薬 量 又 は 使 用<br />

方 法 を 見 分 けることができるであろう 場 合 、このことは 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 を 満 たすの<br />

に 十 分 であろう。 出 願 人 は 当 該 発 明 が 完 全 に 安 全 であることを 実 証 する 必 要 はない。MPEP 第<br />

2107.01 条 及 び 第 2107.03 条 を 参 照 のこと。<br />

化 合 物 又 は 組 成 物 クレームが 特 定 の 使 用 により 限 定 されている 場 合 、そのクレームの 実 施 可<br />

能 性 はその 限 定 に 基 づいて 評 価 されねばならない。In re Vaeck, 947 F.2d 488, 495, 20 USPQ2d<br />

1438, 1444 (Fed. Cir. 1991)( 任 意 のシアノバクテリア 内 で 発 現 し 得 るキメラ 遺 伝 子 をクレ<br />

ームし、その 使 用 によってクレームの 遺 伝 子 を 特 定 )を 参 照 のこと。<br />

その 一 方 、 化 合 物 又 は 組 成 物 クレームは 使 用 を 列 挙 して 限 定 することができない 場 合 、その<br />

クレームの 全 範 囲 と 合 理 的 に 相 関 するであろう 実 施 可 能 な 使 用 は、 使 用 方 法 に 基 づく 使 用 不<br />

可 能 性 による 拒 絶 を 排 除 するに 十 分 である。クレームの 化 合 物 又 は 組 成 物 について 複 数 の 利<br />

用 が 出 願 において 開 示 されている 場 合 、 実 施 可 能 性 による 拒 絶 は、 当 該 明 細 書 がなぜ 各 開 示<br />

された 使 用 を 実 施 可 能 にできないか、 証 拠 によって 十 分 に 裏 付 けられた 説 明 を 含 まなくては<br />

ならない。 言 い 換 えれば、 複 数 の 使 用 が 開 示 されておりいずれかの 使 用 が 実 施 可 能 な 場 合 、<br />

出 願 はクレームの 発 明 について 実 施 可 能 である。<br />

2164.02 実 践 的 な 実 施 例<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 要 件 への 適 合 は 実 施 例 が 開 示 されているか 否 かに 依 存 し<br />

ない。 実 施 例 は「 実 践 的 な」 又 は「 机 上 の」ものであることができる。 実 践 的 な 実 施 例 は 実<br />

際 に 実 施 される 作 業 結 果 に 基 づいている。 机 上 の 実 施 例 は、 実 際 に 行 われる 作 業 又 は 実 際 に<br />

達 成 される 結 果 ではなく 予 測 可 能 な 結 果 に 基 づいて 当 該 発 明 の 実 施 例 を 記 載 する。<br />

出 願 人 は 出 願 前 に 実 際 に 当 該 発 明 を 実 施 に 移 している 必 要 はない。Gould v. Quigg 事 件 , 822<br />

F.2d 1074, 1078, 3 USPQ 2d 1302, 1304 (Fed. Cir. 1987)において Gould の 出 願 日 現 在 、<br />

何 人 も 光 増 幅 器 を 作 り 上 げていなかった。 若 しくはガス 放 電 の 反 転 分 布 を 測 定 していなかっ<br />

た。 裁 判 所 は、「 何 かが 明 らかに 以 前 に 成 されていないという 単 なる 事 実 、それ 自 体 では、<br />

その 方 法 を 開 示 すると 主 張 するすべての 出 願 を 拒 絶 する 十 分 な 理 由 とはならない」と 判 定 し<br />

た。822 F.2d at 1078, 3 USPQ2d at 1304( 引 用 In re Chilowsky, 229 F.2d 457, 461, 108<br />

261


USPQ 321, 325 (CCPA 1956))。<br />

明 細 書 は 当 該 発 明 が 他 に、 当 業 者 が 過 度 の 実 験 を 行 うことなくそれを 実 施 することができる<br />

ような 方 法 で 開 示 されている 場 合 、 実 施 例 を 記 載 する 必 要 はない。In reBorkowski, 422 F.2d<br />

904, 908, 164 USPQ 642, 645 (CCPA 1970)。<br />

ただし、 実 践 的 な 実 施 例 は 特 に 予 測 不 可 能 な 十 分 に 発 達 していない 技 術 分 野 の 場 合 に 検 討 さ<br />

れるべき 要 因 となる。しかし、 実 施 可 能 な 開 示 が 要 求 されることだけのために、 出 願 者 が 実<br />

際 の 実 施 例 すべてを 記 載 する 必 要 はない。<br />

実 践 的 な 実 施 例 が 無 い 又 は 1 例<br />

非 実 施 可 能 性 の 判 断 に 関 する 要 因 を 検 討 する 際 にその 他 の 要 因 すべてが 実 施 可 能 性 の 方 向 を<br />

指 している 場 合 、 実 践 的 な 実 施 例 が 存 在 しないこと 自 体 は 当 該 発 明 を 非 実 施 可 能 にするもの<br />

ではない。すなわち、 実 践 的 な 実 施 例 の 欠 如 又 はクレームの 発 明 が 記 載 通 りに 働 くことの 証<br />

拠 の 欠 如 は、 実 施 可 能 性 の 欠 如 を 理 由 としてクレームの 発 明 を 拒 絶 する 単 独 理 由 に 決 してし<br />

てはならない。クレームの 発 明 の 明 細 書 の 単 一 の 実 践 的 な 実 施 例 は、 少 なくともその 実 施 例<br />

が 実 施 可 能 であろうので、 何 も 実 施 可 能 でないとする 拒 絶 を 排 除 するのに 十 分 である。ただ<br />

し、 実 施 可 能 性 は 特 定 の 範 囲 に 限 定 されるとする 拒 絶 は 適 切 である 可 能 性 がある。<br />

実 践 的 な 実 施 例 1 例 のみの 存 在 は、その 他 の 要 因 すべてとともに 検 討 されるべき 要 因 である<br />

としても、 実 施 可 能 な 開 示 よりも 広 範 であるとしてクレームを 拒 絶 する 単 一 理 由 に 決 してし<br />

てはならない。 有 効 な 拒 絶 を 行 うためにはすべての 事 実 及 び 証 拠 を 評 価 し、その 1 例 から、<br />

当 該 クレームの 全 範 囲 にわたって 推 定 することができると 期 待 しないであろう 理 由 を 述 べな<br />

ければならない。<br />

相 互 関 係 :インビトロ/インビボ<br />

「 相 互 関 係 」の 論 点 は 実 践 的 な 実 施 例 の 有 無 の 論 点 に 関 係 する。そこで 用 いられる「 相 互 関<br />

係 」とは、インビトロ 又 はインビボ 動 物 モデル 分 析 と 使 用 の 開 示 又 はクレームの 方 法 との 間<br />

の 関 係 をいう。 明 細 書 のインビトロ 又 はインビボ 動 物 モデル 実 施 例 は、その 実 施 例 が 開 示 又<br />

はクレームの 方 法 発 明 と「 相 関 関 係 を 持 つ」 場 合 、 事 実 上 「 実 践 的 な 実 施 例 」を 構 成 する。<br />

何 の 相 互 関 係 もない 場 合 、その 実 施 例 は「 実 践 的 な 実 施 例 」を 構 成 しない。そういう 意 味 で<br />

は、「 相 関 関 係 」に 関 する 論 点 も 先 行 技 術 の 状 態 に 依 存 する。 言 い 換 えると、 当 該 技 術 が、<br />

特 定 のモデルが 具 体 的 条 件 と 関 連 すると 認 識 されるようなものである 場 合 、 審 査 官 がそのモ<br />

デルは 相 関 しない 証 拠 を 有 さない 限 り、 相 関 するとして 認 められるべきである。 当 該 証 拠 が<br />

あるとしても、 審 査 官 は 相 互 関 係 を 示 す 証 拠 及 び 示 さない 証 拠 を 比 較 検 討 し、 当 業 者 はその<br />

モデルを 当 該 条 件 に 合 理 的 に 相 関 するとして 認 めるであろうか 否 かを 判 断 しなければならな<br />

い。In re Brana, 51 F.3d 1560, 1566, 34 USPQ2d 1436, 1441 (Fed. Cir. 1995)(インビト<br />

ロデータはインビボ 出 願 を 裏 付 けないとする 認 定 に 基 づく 特 許 商 標 庁 の 判 定 の 無 効 )。<br />

実 施 可 能 性 の 欠 如 の 理 由 を 説 明 する 当 初 の 責 任 は 審 査 官 にあるので、 審 査 官 もまたインビト<br />

ロ 又 はインビボ 動 物 モデル 実 施 例 について 相 互 関 係 の 欠 如 とする 結 論 の 理 由 を 説 明 しなけれ<br />

ばならない。Cross v. Iizuka 事 件 , 753 F.2d 1040, 1050, 224 USPQ 739, 747 (Fed. Cir.<br />

1985)で 述 べるとおり、 厳 密 な 又 は 不 変 の 正 確 な 相 関 関 係 は 要 求 されない。<br />

「 関 連 証 拠 全 体 に 基 づき、 開 示 されたインビトロ 有 用 性 とインビボ 活 性 との 間 に 合 理 的 相 関<br />

関 係 が 存 在 する、 従 って、 薬 理 学 的 活 性 の 開 示 が 十 分 な 証 拠 に 基 づいて 合 理 的 である 場 合 に<br />

262


厳 密 な 相 互 関 係 は 必 要 ない。( 引 用 省 略 )」<br />

実 践 的 な 実 施 例 及 びクレームの 属<br />

クレームの 属 について、 当 該 属 全 体 に 適 用 可 能 な 陳 述 と 合 わせた 代 表 的 実 施 例 は、 当 業 者 が<br />

( 技 能 レベル、 当 該 技 術 の 状 態 及 び 明 細 書 の 情 報 を 考 慮 して)クレームの 属 は 過 度 の 実 験 を 行<br />

うことなくその 方 法 で 使 用 できると 期 待 するであろう 場 合 、 通 常 、 十 分 であろう。 実 施 可 能<br />

性 の 証 明 は、 当 業 者 が 過 度 の 実 験 を 行 うことなく 当 該 属 を 全 体 として 使 用 できなかったこと<br />

を 立 証 する 適 切 な 理 由 が 審 査 官 によって 提 示 される 場 合 に 限 り、クレームの 属 のその 他 の 構<br />

成 物 について 求 められるであろう。<br />

2164.03 当 該 技 術 の 予 測 可 能 性 と 実 施 可 能 要 件 との 関 係<br />

当 該 発 明 を 実 施 可 能 にするために 必 要 な 指 針 又 は 指 示 の 量 は、 当 該 技 術 の 状 態 における 知 識<br />

の 量 とともに 当 該 技 術 分 野 の 予 測 可 能 性 に 反 比 例 する。In re Fisher, 427 F.2d 833, 839, 166<br />

USPQ 18, 24 (CCPA 1970)。「 指 針 又 は 指 示 の 量 」とは、 当 該 発 明 を 製 造 又 は 使 用 する 方 法 を<br />

正 確 に 教 示 する、 最 初 に 提 出 されたときの 出 願 に 記 載 される 情 報 をいう。 当 該 発 明 の 性 質 、<br />

当 該 発 明 の 製 造 方 法 及 び 使 用 方 法 について 先 行 技 術 で 周 知 されているほど、そして 当 該 技 術<br />

が 予 測 可 能 であるほど、 当 該 明 細 書 に 明 示 的 に 記 載 する 必 要 のある 情 報 は 少 なくなる。その<br />

一 方 、 当 該 発 明 の 性 質 について 先 行 技 術 で 周 知 されていないほど、そして 当 該 技 術 が 予 測 不<br />

能 であるほど、 明 細 書 は 当 該 発 明 の 製 造 方 法 及 び 使 用 方 法 について 実 施 可 能 なものとするた<br />

めにより 詳 細 であることが 必 要 となろう。 参 照 事 例 として、Chiron Corp. v. Genentech Inc.,<br />

363 F.3d 1247, 1254, 70 USPQ2d 1321, 1326 (Fed. Cir. 2004)(「ただし、 発 生 期 の 技 術 は<br />

『 具 体 的 かつ 有 用 な 教 示 』をもって 実 施 可 能 でなければならない。 当 業 者 は 特 許 権 者 の 説 明<br />

に 依 存 しない 知 識 をほとんど 持 たない 若 しくは 全 く 持 たないため、 本 法 は 発 生 期 の 技 術 に 実<br />

施 可 能 な 開 示 を 求 めている。このように、 特 許 制 度 によって 公 衆 側 が 得 るものはクレームさ<br />

れる 技 術 の 十 分 実 施 可 能 な 開 示 である。」( 引 用 省 略 ))。<br />

当 該 技 術 分 野 における「 予 測 可 能 性 又 はその 欠 如 」とは、 開 示 された 若 しくは 既 知 の 結 果 を<br />

基 にクレームの 発 明 の 場 合 を 推 定 する 当 業 者 の 能 力 をいう。 当 業 者 がクレームの 発 明 が 関 係<br />

する 保 護 対 象 中 の 変 更 の 結 果 を 容 易 に 予 見 することができる 場 合 、 当 該 技 術 分 野 に 予 測 可 能<br />

性 が 存 在 する。その 一 方 、 当 業 者 がそのクレームの 発 明 が 関 係 する 保 護 対 象 中 の 変 更 の 結 果<br />

を 容 易 に 予 見 することができない 場 合 、 当 該 技 術 分 野 に 予 測 可 能 性 の 欠 如 が 存 在 する。 従 っ<br />

て、 当 該 技 術 分 野 において 周 知 されるものが 予 測 可 能 性 の 問 題 に 関 する 証 拠 を 提 供 する。 具<br />

体 的 には、 裁 判 所 は In re Marzocchi 事 件 , 439 F.2d 220, 223-24, 169 USPQ 367, 369-70 (CCPA<br />

1971)において 次 のように 述 べている。<br />

「 化 学 の 分 野 においては 一 般 に、クレームへの 裏 付 けを 可 能 にするとして 提 出 される 特 定 の<br />

広 い 陳 述 の 精 度 に 関 して、 化 学 反 応 の 周 知 の 予 測 不 可 能 性 のみが 合 理 的 な 疑 いを 引 き 起 こす<br />

のに 十 分 である 時 があるかもしれない。これは 特 にその 陳 述 が、 文 言 上 、 一 般 に 認 められて<br />

いる 科 学 的 原 則 に 反 する 場 合 であろう。ほとんどの 場 合 、 関 連 引 例 の 教 示 などの 追 加 要 因 を<br />

利 用 し、 客 観 的 実 施 可 能 性 について 主 張 される 範 囲 は 実 際 に 保 護 を 求 める 範 囲 にふさわしい<br />

ことへの 疑 義 を 立 証 し、それによって 証 拠 を 求 める 要 求 を 裏 付 けることができる。[ 脚 注 略 ]」<br />

求 められる 実 施 可 能 性 の 範 囲 はかかわる 予 測 可 能 性 の 程 度 に 逆 比 例 して 変 化 するが、 予 測 不<br />

可 能 な 技 術 分 野 においてさえも、すべての 動 作 可 能 な 種 は 求 められない。 単 一 実 施 例 は 機 械<br />

263


的 又 は 電 気 的 要 素 などの 予 測 可 能 な 要 因 に 対 する 場 合 に 広 い 実 施 可 能 性 を 提 供 することがで<br />

きる。In re Vickers, 141 F.2d 522, 526-27, 61 USPQ 122, 127 (CCPA 1944);In re Cook,<br />

439 F.2d 730, 734, 169 USPQ 298, 301 (CCPA 1971)。ただし、 結 果 が 予 測 不 可 能 な 技 術 分<br />

野 の 発 明 に 向 けられた 出 願 において 単 一 の 種 の 開 示 は 一 般 に 属 クレームを 裏 付 けるための 適<br />

切 な 根 拠 を 提 供 しない。In re Soll, 97 F.2d 623, 624, 38 USPQ 189, 191 (CCPA 1938)。<br />

大 部 分 の 化 学 反 応 及 び 生 理 学 的 活 性 などの 予 測 不 可 能 な 要 因 を 含 む 場 合 、より 多 く 求 められ<br />

る 可 能 性 がある。In re Fisher, 427 F.2d 833, 839, 166 USPQ 18, 24 (CCPA 1970)( 機 械 的<br />

及 び 電 気 的 要 素 と 化 学 反 応 及 び 生 理 学 的 活 性 を 対 比 )。 次 も 参 照 のこと。In re Wright, 999<br />

F.2d 1557, 1562, 27 USPQ2d 1510, 1513 (Fed. Cir. 1993);In re Vaeck, 947 F.2d 488, 496,<br />

20 USPQ2d 1438, 1445 (Fed. Cir. 1991)。これは、1 種 の 開 示 からその 他 の 種 がどのように<br />

働 くかは 明 らかにされないためである。<br />

2164.04 実 施 可 能 要 件 に 基 づく 審 査 官 の 責 任<br />

実 施 可 能 性 の 分 析 を 行 う 前 に 審 査 官 はクレームを 解 釈 することが 必 要 である。 当 該 技 術 分 野<br />

において 周 知 されていない 言 葉 について、 又 は 1 以 上 の 意 味 を 有 するかもしれない 言 葉 につ<br />

いて、 審 査 官 は、 出 願 人 はそれが 何 を 意 味 することを 意 図 しているかの 理 解 に 基 づき、 出 願<br />

の 審 査 時 使 用 しようとする 定 義 を 選 択 し、また 拒 絶 通 知 を 記 載 する 場 合 のその 言 葉 の 意 味 及<br />

びクレームの 範 囲 を 明 示 的 に 規 定 する 必 要 がある。See Genentech v. Wellcome Foundation,<br />

29 F.3d 1555, 1563-64, 31 USPQ2d 1161, 1167-68 (Fed. Cir. 1994)。<br />

拒 絶 を 行 うために 審 査 官 は、クレームの 発 明 に 用 意 された 実 施 可 能 性 を 疑 問 視 する 合 理 的 理<br />

由 を 立 証 する 最 初 の 責 任 を 有 する。In re Wright, 999 F.2d 1557, 1562, 27 USPQ2d 1510, 1513<br />

(Fed. Cir. 1993)( 審 査 官 は、クレームに 記 載 される 保 護 の 範 囲 は 開 示 により 適 切 に 実 施 可 能<br />

とされていない 理 由 について、 合 理 的 説 明 を 用 意 しなければならない。) 特 許 出 願 された 保 護<br />

対 象 を 記 述 し 定 義 する 際 に 用 いられた 言 葉 の 範 囲 に 合 致 する 言 葉 を 使 った 当 該 発 明 の 製 造 及<br />

び 使 用 方 法 の 教 示 を 含 む 明 細 書 の 開 示 は、 第 112 条 の 第 1 段 落 の 実 施 可 能 要 件 に 適 合 してい<br />

るとしなければならない。ただし、 実 施 可 能 性 の 裏 付 けに 信 頼 に 足 るものでなければならな<br />

いものであるその 中 に 記 載 される 記 述 について 客 観 的 真 実 を 疑 う 理 由 がない 場 合 とする。 当<br />

該 疑 義 に 十 分 な 理 由 が 存 在 するのであれば、 製 造 及 び/ 又 は 使 用 方 法 の 教 示 がないことによ<br />

る 拒 絶 はその 理 由 に 基 づき 適 切 となる。In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 224, 169 USPQ 367,<br />

370 (CCPA 1971)。 裁 判 所 が 述 べているとおり、「 本 理 由 に 基 づき 拒 絶 が 行 われる 場 合 はいつ<br />

でも、 裏 付 けとなる 開 示 の 陳 述 の 真 正 又 は 正 確 さを 疑 う 理 由 を 説 明 すること、 満 足 できる 証<br />

拠 又 は 正 当 性 を 疑 う 陳 述 と 相 反 する 理 由 を 持 って 自 らの 主 張 を 裏 付 けることは 特 許 庁 の 責 任<br />

である。 言 い 換 えると、 出 願 人 は 正 確 とみなされる 開 示 を 裏 付 けるために 労 力 と 費 用 を 費 や<br />

す 必 要 はない。439 F.2dat 224、169 USPQat 370。<br />

In re Bowen, 492 F.2d 859, 862-63, 181 USPQ 48, 51 (CCPA 1974)によれば、 審 査 官 に 対<br />

する 最 低 限 の 要 件 は、 実 施 可 能 性 の 疑 念 に 関 する 理 由 を 与 えることである。 本 基 準 は、 開 示<br />

実 施 例 以 上 に、 過 度 の 実 験 をすることなく 実 用 可 能 であるという 記 録 上 の 証 拠 が 存 在 しない<br />

場 合 でさえも 適 用 可 能 である。 次 も 参 照 のこと。In re Brana, 51 F.3d 1560, 1566, 34 USPQ2d<br />

1436, 1441 (Fed. Cir. 1995)( 引 用 In re Bundy, 642 F.2d 430, 433, 209 USPQ 48, 51 (CCPA<br />

1981))( 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 に 対 する 実 施 可 能 要 件 の 関 係 については MPEP 第<br />

2164.07 条 で 考 察 。)<br />

264


実 施 可 能 性 の 欠 如 についての 分 析 及 び 結 論 は MPEP 第 2164.01 条 (a)において 考 察 される 要 因<br />

及 び 証 拠 全 体 に 基 づくものではあるが、 書 面 による 実 施 可 能 性 の 拒 絶 において 各 要 因 を 考 察<br />

する 必 要 はない。 文 言 は、 当 該 明 細 書 は 過 度 の 実 験 を 行 うことなくクレームの 発 明 を 製 造 及<br />

び 使 用 する 方 法 を 教 示 していない、 若 しくは 当 業 者 に 提 供 される 実 施 可 能 性 の 範 囲 はクレー<br />

ムによって 求 められる 保 護 の 範 囲 にふさわしくないとする 結 論 に 審 査 官 を 導 くそれらの 要 因 、<br />

理 由 及 び 証 拠 に 焦 点 を 合 わせなくてはならない。これは、 証 拠 によって 裏 付 けられる 事 実 の<br />

具 体 的 認 定 を 行 い、 次 にそれらの 事 実 の 認 定 に 基 づいて 結 論 を 引 き 出 すことによって 行 うこ<br />

とができる。 例 えば、 情 報 が、1 以 上 の 重 要 な 部 分 若 しくは 当 業 者 が 過 度 の 実 験 を 行 う 事 な<br />

く 明 らかにすることができない 部 分 の 関 係 について 欠 落 しているために、 実 施 可 能 性 につい<br />

て 疑 義 が 生 ずるかもしれない。このような 場 合 、 審 査 官 はどの 情 報 が 欠 落 しているか、 当 業<br />

者 はなぜ 過 度 の 実 験 を 行 うことなくその 情 報 を 供 給 できないのであろうかを 具 体 的 に 特 定 し<br />

なくてはならない。MPEP 第 2163.06 条 (a)を 参 照 のこと。 引 例 は、できれば、 実 施 可 能 性 の<br />

欠 如 について 一 応 の 証 明 を 裏 付 けられるように 提 供 すべきであるが 必 ずしも 必 要 とされるも<br />

のではない。In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 224, 169 USPQ 367, 370 (CCPA 1971)。ただ<br />

し、 専 門 的 な 技 術 的 理 由 は 必 ず 必 要 とされる。<br />

手 続 きはきめ 細 かくという 原 則 に 従 って、 実 施 可 能 性 による 拒 絶 が 適 切 である 場 合 、 初 回 の<br />

実 体 についての 拒 絶 通 知 は、 出 願 人 が 適 切 な 説 得 力 のある 反 論 及 び/ 又 は 反 論 証 拠 を 提 出 し<br />

た 場 合 にはすべての 当 該 拒 絶 は 撤 回 されるようにすべての 関 連 する 理 由 、 論 点 及 び 証 拠 を 添<br />

えて 最 高 の 状 態 で 提 示 しなければならない。 最 初 の 拒 絶 通 知 において 最 良 の 状 態 で 提 示 する<br />

ということは、 出 願 人 が 適 切 な 説 得 力 のある 反 論 及 び/ 又 は 証 拠 を 提 出 できない 場 合 2 度 目<br />

の 拒 絶 通 知 を 最 終 のものとすることができるということでもある。2 番 目 の 拒 絶 通 知 で 新 た<br />

な 引 例 を 引 くこと 及 び/ 又 は 反 論 を 拡 大 することはその 拒 絶 通 知 を 最 終 のものとすることを<br />

妨 げるものとなろう。また、 手 続 きはきめ 細 かくという 原 則 は、 実 施 可 能 性 による 拒 絶 が 適<br />

切 で 審 査 官 が 当 該 クレームを 実 施 可 能 にするであろう 限 定 を 認 識 している 場 合 、 審 査 官 はで<br />

きる 限 り 手 続 処 理 において 早 期 に 出 願 人 に 当 該 限 定 を 通 知 すべきであることを 指 示 してもい<br />

る。<br />

すなわち、 審 査 官 は 常 に 実 施 可 能 な 許 可 できる 保 護 対 象 を 探 し 求 め、 出 願 手 続 き 処 理 のでき<br />

るだけ 早 い 時 点 で 保 護 対 象 は 何 かを 出 願 人 に 通 知 すべきである。<br />

2164.05 証 拠 全 体 に 基 づく 実 施 可 能 性 の 判 断<br />

審 査 官 がすべての 証 拠 を 比 較 検 討 してクレームの 発 明 に 提 示 された 実 施 可 能 性 を 疑 問 視 する<br />

合 理 的 理 由 を 立 証 した 時 点 で、 当 業 者 は 指 針 に 従 って 出 願 を 用 いクレームの 発 明 を 製 造 及 び<br />

使 用 することが 可 能 であるとする、 必 要 に 応 じて 適 切 な 証 拠 によって 裏 付 けられた、 説 得 力<br />

のある 反 論 を 提 示 する 責 任 は 出 願 人 のものとなる。In re Brandstadter, 484 F.2d 1395,<br />

1406-07, 179 USPQ 286, 294 (CCPA 1973)。 出 願 人 によって 提 出 される 証 拠 は 決 定 的 である<br />

必 要 はないが、 当 業 者 に 対 して 説 得 力 だけは 必 要 である。<br />

出 願 人 は 特 許 法 施 行 規 則 第 1.132 条 により 事 実 に 基 づく 宣 誓 供 述 書 を 提 出 する、 若 しくは 当<br />

業 者 が 当 該 出 願 の 提 出 時 点 において 周 知 であったことを 証 明 できる 引 例 を 挙 げることができ<br />

る。 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 はそれ 自 体 が 検 討 しなくてはならない 証 拠 となる。 宣 言 書 又 は 宣<br />

誓 供 述 書 に 与 える 重 要 性 は、その 宣 言 書 又 は 宣 誓 供 述 書 が 実 施 可 能 性 の 結 論 を 裏 付 けるため<br />

に 含 んでいる 事 実 に 基 づく 証 拠 量 に 依 存 する。In re Buchner, 929 F.2d 660, 661, 18 USPQ2d<br />

265


1331, 1332 (Fed. Cir. 1991)(「 最 終 的 な 法 的 結 論 についての 専 門 家 の 意 見 は、 推 論 による<br />

陳 述 以 上 のものによって 裏 付 けられねばならない。」); 次 を 参 照 のこと。In re Alton, 76 F.3d<br />

1168, 1174, 37 USPQ2d 1578, 1583 (Fed. Cir. 1996)( 書 面 記 載 要 件 に 関 する 宣 言 書 は 検 討<br />

されるべきであった。)<br />

出 願 人 は 当 該 開 示 がクレームの 発 明 を 実 施 可 能 にすることを 実 証 する 証 拠 を 提 出 するよう 推<br />

奨 されるべきである。 化 学 及 びバイオ 技 術 出 願 において、 実 際 には、 臨 床 試 験 の 認 証 を 取 得<br />

するため 食 品 医 薬 品 局 に 提 出 される 証 拠 を 提 出 することができる。ただし、 臨 床 試 験 を 認 証<br />

するため 食 品 医 薬 品 局 が 行 う 審 査 は、クレームが 実 行 可 能 であるか 否 かを 判 断 する 特 許 商 標<br />

庁 による 審 査 とは 異 なる。See Scott v. Finney, 34 F.3d 1058, 1063, 32 USPQ2d 1115, 1120<br />

(Fed. Cir. 1994)(「 人 工 器 官 の 十 分 な 安 全 性 及 び 有 効 性 に 対 する 検 査 はより 正 確 には[ 食 品<br />

医 薬 品 局 ]に 委 ねられる。」)その 証 拠 が 提 出 された 時 点 で、 当 該 開 示 はクレームの 発 明 を 実<br />

施 可 能 にするか 否 かについての 判 断 に 達 することができるように 上 記 に 定 められた 基 準 に 従<br />

ってその 他 すべての 証 拠 と 合 わせて 比 較 検 討 しなくてはならない。<br />

実 施 可 能 性 の 欠 如 の 一 応 の 証 明 を 克 服 するには、 出 願 人 は 反 論 及 び/ 又 は 出 願 時 の 開 示 が 出<br />

願 の 時 点 において 当 業 者 がクレームの 発 明 を 実 施 できるようにしたであろう 証 拠 によって 実<br />

証 しなくてはならない。これは、 出 願 人 が、 出 願 日 以 降 、クレームの 発 明 が 作 動 することを<br />

実 証 する 宣 言 書 を 提 出 することを 排 除 するものではない。ただし 審 査 官 は 宣 言 書 の 実 験 に 使<br />

用 される 工 程 、 材 料 及 び 要 件 を、それらが 範 囲 においてふさわしいこと、すなわち、 出 願 時<br />

の 明 細 書 の 指 針 に 使 われた 実 験 及 び 当 業 者 に 周 知 されていたことを 確 認 するために 当 該 出 願<br />

に 開 示 されるそれらのものと 慎 重 に 比 較 しなくてはならない。こうした 提 示 もまたクレーム<br />

の 発 明 の 範 囲 にふさわしくなくてはならない。すなわち、クレームの 発 明 の 範 囲 と 合 理 的 相<br />

関 がなければならない。<br />

次 に 審 査 官 は 提 示 されたすべての 証 拠 を、 当 該 明 細 書 並 びに 証 拠 及 び/ 又 は 当 該 拒 絶 におい<br />

て 先 に 提 示 した 理 にかなった 科 学 的 論 理 的 思 考 とともに 出 願 人 により 提 供 された 新 たな 証 拠<br />

を 含 めて 比 較 検 討 し、クレームの 発 明 が 実 施 可 能 であるか 否 かを 判 断 しなければならない。<br />

審 査 官 は 決 して 個 人 的 な 意 見 に 基 づいて 判 断 を 行 ってはならない。 判 断 は 常 にすべての 証 拠<br />

の 重 要 性 に 基 づいていなくてはならない。<br />

2164.05(a) 明 細 書 は 出 願 日 現 在 で 実 施 可 能 でなければならない<br />

明 細 書 が 出 願 日 現 在 で 実 施 可 能 であったであろうか 否 かは、 当 該 発 明 の 性 質 、 先 行 技 術 の 状<br />

態 及 び 当 該 技 術 分 野 の 技 能 レベルについての 検 討 を 含 む。 最 初 の 審 査 は 当 該 発 明 の 性 質 、す<br />

なわちクレームの 発 明 が 関 係 する 保 護 対 象 に 対 するものとなる。 当 該 発 明 の 性 質 は、 当 該 技<br />

術 の 状 態 及 び 当 業 者 が 有 する 技 能 レベルを 判 断 するための 背 景 となる。<br />

先 行 技 術 の 状 態 とは、 当 業 者 が 当 該 出 願 が 提 出 された 時 点 でクレームの 発 明 が 関 係 する 保 護<br />

対 象 について 周 知 であったであろうことである。 当 業 者 の 関 連 技 能 とは、 当 該 出 願 が 提 出 さ<br />

れた 時 点 のクレームの 発 明 が 関 係 する 保 護 対 象 に 関 係 する 当 業 者 の 技 能 をいう。MPEP 第<br />

2164.05 条 (b)を 参 照 のこと。<br />

先 行 技 術 の 状 態 は、 当 該 技 術 分 野 における 予 測 可 能 性 の 程 度 に 関 する 証 拠 を 提 供 すると 同 時<br />

に 出 願 時 の 明 細 書 において 実 施 可 能 要 件 を 満 たすために 必 要 とされる 指 示 及 び 指 針 の 量 に 関<br />

係 する。また、 先 行 技 術 の 状 態 は 当 該 明 細 書 の 実 践 的 な 実 施 例 の 必 要 性 にも 関 係 する。<br />

所 定 の 技 術 に 関 する 当 該 技 術 分 野 の 状 態 は 時 間 の 中 で 静 止 していない。1990 年 1 月 2 日 に 出<br />

266


願 された 開 示 が、 実 施 可 能 でなかったであろうことは 全 く 可 能 であるただし、 同 一 の 開 示 が<br />

1996 年 1 月 2 日 に 出 願 されていた 場 合 、 当 該 クレームは 実 施 可 能 であった 可 能 性 がある。 従<br />

って、 先 行 技 術 の 状 態 は 出 願 日 に 基 づき 出 願 ごとに 評 価 しなくてはならない。<br />

特 許 法 第 112 条 は、 当 該 明 細 書 に「 当 業 者 若 しくは 当 該 技 術 分 野 に 極 く 近 い 専 門 家 」に 対 し<br />

てのみ 実 施 可 能 となることを 要 求 している。 一 般 に、 関 連 技 術 は 当 該 発 明 が 使 用 される 技 術<br />

分 野 、 産 業 、 取 引 などの 観 点 からではなく 解 決 すべき 問 題 の 観 点 から 定 義 されねばならない。<br />

明 細 書 は 当 業 者 に 周 知 であるものを 開 示 する 必 要 はなく、 当 業 者 に 周 知 であってすでに 公 衆<br />

に 利 用 可 能 であるものは 省 略 することが 好 ましい。In re Buchner, 929 F.2d 660, 661, 18<br />

USPQ2d 1331, 1332 (Fed. Cir. 1991); Hybritech, Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc.,<br />

802 F.2d 1367, 1384, 231 USPQ 81, 94 (Fed. Cir. 1986), cert. denied, 480 U.S. 947 (1987);<br />

及 び Lindemann Maschinenfabrik GMBH v. American Hoist & Derrick Co., 730 F.2d 1452,<br />

1463, 221 USPQ 481, 489 (Fed. Cir. 1984)。<br />

当 該 出 願 の 出 願 日 に 既 存 する 技 術 の 状 態 は、 特 定 の 開 示 が 出 願 日 現 在 で 実 施 可 能 であるか 否<br />

かを 判 断 するために 使 用 される。Chiron Corp. v. Genentech Inc., 363 F.3d 1247, 1254, 70<br />

USPQ2d 1321, 1325-26 (Fed. Cir. 2004)(「 特 許 文 書 は 出 願 日 の 後 に 生 ずる 技 術 を 実 施 可 能<br />

にすることはできない。」) 出 願 日 後 に 初 めて 公 開 される 情 報 を 提 供 する 出 願 日 後 の 日 付 の 刊<br />

行 物 は、 出 願 の 時 点 で 周 知 であったことを 実 証 するために 使 用 することはできない。In re<br />

Gunn, 537 F.2d 1123, 1128, 190 USPQ 402,405-06 (CCPA 1976);In re Budnick, 537 F.2d<br />

535, 538, 190 USPQ 422, 424 (CCPA 1976)( 一 般 に、 出 願 人 が 実 施 可 能 要 件 の 目 的 で 当 該 技<br />

術 の 状 態 を 証 明 するため 特 許 を 利 用 しようとする 場 合 、その 特 許 は 出 願 の 有 効 出 願 日 以 前 の<br />

発 行 でなければならない。) 後 の 日 付 の 刊 行 物 は 前 の 日 付 の 出 願 の 不 十 分 な 開 示 を 補 足 してそ<br />

れを 実 施 可 能 にすることはできないものの、 出 願 人 は 出 願 が 提 出 された 時 点 における 当 該 技<br />

術 分 野 の 技 能 レベルの 証 拠 として 当 該 刊 行 物 に 基 づく 専 門 家 の 証 言 を 提 示 することができる。<br />

Gould v.Quigg, 822 F.2d 1074, 1077, 3 USPQ2d 1302, 1304 (Fed. Cir. 1987)。<br />

一 般 に、 審 査 官 は 当 該 特 許 が 実 施 不 可 能 であることを 実 証 するために 出 願 後 の 日 付 の 引 例 を<br />

使 用 すべきではない。 本 条 規 則 の 例 外 は、 後 日 付 の 引 例 が 特 許 出 願 の 有 効 出 願 日 以 前 に 当 業<br />

者 が 周 知 していたことの 証 拠 を 提 出 する 場 合 に 生 ずる 可 能 性 が 考 えられる。In re Hogan, 559<br />

F.2d 595, 605, 194 USPQ 527, 537 (CCPA 1977)。 当 業 者 が 特 定 の 発 明 は 当 該 出 願 日 の 何 年<br />

も 後 に 不 可 能 であると 述 べている 場 合 、それは、 開 示 された 発 明 は 出 願 の 時 点 において 不 可<br />

能 であったことの 証 拠 となるであろうし、 考 慮 に 値 する。In re Wright 事 件 , 999 F.2d 1557,<br />

1562, 27 USPQ2d 1510, 1513-14 (Fed. Cir. 1993)において、 出 願 の 出 願 日 の 5 年 後 に 刊 行<br />

された 論 文 は、 所 定 のウイルスの 生 理 学 的 活 性 は 当 業 者 が 1 種 のウイルスと 1 種 の 動 物 での<br />

成 功 はすべての 生 命 体 とすべてのウイルスに 対 して 十 分 に 推 定 できるとは 信 じていなかった<br />

であろうことを 十 分 に 予 測 できないとする 審 査 官 の 見 解 を 十 分 に 裏 付 けた。 特 定 のウイルス<br />

と 特 定 の 動 物 に 向 けられていなかったクレームは 実 施 不 可 能 と 判 定 された。<br />

2164.05(b) 明 細 書 は 当 業 者 に 実 施 可 能 でなければならない<br />

当 業 者 の 関 連 する 技 能 とは、 当 該 出 願 が 提 出 された 時 点 のクレームの 発 明 が 関 係 する 保 護 対<br />

象 に 関 係 する 当 業 者 の 技 能 をいう。 異 なる 技 術 が 当 該 発 明 に 含 まれる 場 合 は、それぞれの 技<br />

術 分 野 の 当 業 者 が 自 らの 専 門 分 野 に 適 用 できる 当 該 発 明 の 態 様 を 実 施 可 能 にできる 場 合 に 当<br />

該 明 細 書 は 実 施 可 能 となる。In re Naquin, 398 F.2d 863, 866, 158 USPQ 317, 319 (CCPA 1968)。<br />

267


発 明 がその 異 なる 態 様 において 明 確 に 区 別 できる 技 術 を 含 む 場 合 、 当 該 明 細 書 が 各 技 術 分 野<br />

の 当 業 者 に 自 らの 専 門 分 野 に 固 有 の 態 様 を 実 施 可 能 にできる 場 合 に、 当 該 明 細 書 は 実 施 可 能<br />

となる。「 明 確 に 区 別 できる 2 種 類 の 技 術 が 1 発 明 に 関 係 している 場 合 、その 2 種 類 の 技 術<br />

のそれぞれの 当 業 者 が 当 該 開 示 から 当 該 発 明 を 実 施 することができる 可 能 性 が 考 えられる 場<br />

合 に 当 該 開 示 は 適 切 となるであろう。」Technicon Instruments Corp. v. Alpkem Corp., 664<br />

F. Supp. 1558, 1578, 2 USPQ2d 1729, 1742 (D. Ore. 1986), 一 部 追 認 、 一 部 無 効 、 一 部 破<br />

棄 , 837 F. 2d 1097 (Fed. Cir. 1987)( 未 公 表 意 見 )、 差 し 戻 し 後 の 上 訴 、866 F. 2d 417, 9<br />

USPQ 2d 1540 (Fed. Cir. 1989)。Ex parte Zechnall 事 例 , 194 USPQ 461 (Bd. App. 1973)<br />

において 審 判 部 は「 審 判 請 求 人 の 開 示 は 電 子 計 算 機 技 術 分 野 の 当 業 者 が 燃 料 噴 射 技 術 分 野 の<br />

当 業 者 と 協 力 して 請 求 人 の 発 明 を 製 造 及 び 使 用 することを 可 能 にするであろう 場 合 は 十 分 と<br />

判 定 されるに 違 いない」と 述 べている。194 USPQat 461。<br />

2164.06 実 験 の 数<br />

当 業 者 が 実 施 する 必 要 な 実 験 の 数 は、 発 明 を 作 成 し 使 用 するために「 過 度 の 実 験 」が 要 求 さ<br />

れていないかを 判 断 する 要 因 の 一 つにすぎない。「 熟 練 した 技 能 者 が 十 分 な 指 示 と 指 導 を 受<br />

けるなら、 実 験 期 間 の 延 長 は 過 度 ではない」In re Colianni, 561 F.2d 220, 224, 195 USPQ<br />

150, 153 (CCPA 1977)。「 試 験 が 単 なる 日 常 的 なものである 場 合 、 或 いは 問 題 となる 明 細 書<br />

が 実 験 を 続 けさせる 指 示 に 関 して 妥 当 な 量 の 指 導 をしている 場 合 は、 考 えられる 実 験 量 は 許<br />

容 範 囲 であるため、 試 験 は 単 に 数 で 計 られるものではない。」858 F.2d 731, 737, 8 USPQ2d<br />

1400, 1404 (Fed. Cir. 1988) ( 引 用 In re Angstadt, 537 F.2d 489, 502-04, 190 USPQ 214,<br />

217-19 (CCPA 1976))。 時 間 と 費 用 はこの 審 理 において 単 なる 要 因 であって 支 配 的 要 因 ではな<br />

い。United States v. Telectronics Inc., 857 F.2d 778, 785, 8 USPQ2d 1217, 1223 (Fed.<br />

Cir. 1988), cert. denied, 490 U.S. 1046 (1989).<br />

化 学 技 術 の 場 合 、 指 導 及 び 請 求 目 的 を 達 成 するための 評 価 を 実 施 する 上 で、 容 易 さというも<br />

のが 必 要 な 実 験 の 数 を 決 定 する 中 で 考 慮 されるべき 問 題 である。 例 えば、クレームの 範 囲 に<br />

ある 化 合 物 を 確 認 することが 非 常 に 難 しく 時 間 のかかる 評 価 を 要 する 場 合 、このような 膨 大<br />

な 数 の 実 験 は 全 体 的 な 分 析 において 考 慮 されるべきである。 実 験 の 難 しさと 時 間 は、それが<br />

単 なる 日 常 的 なものである 場 合 は 決 定 因 とはならない。サンプルの 数 は 単 なる 一 つの 要 因 で、<br />

過 度 の 実 験 が 要 求 されるかといいう 最 終 結 論 に 達 する 前 に 考 慮 されるべきものである。In re<br />

Wands, 858 F.2d at 737, 8 USPQ2d at 1404。<br />

I. 適 切 な 実 験 の 例<br />

United States v. Telectronics, Inc., 857 F.2d 778, 8 USPQ2d 1217 (Fed. Cir. 1988), cert.<br />

denied, 490 U.S. 1046 (1989)において、 裁 判 所 は、 過 度 の 実 験 が 必 要 であるという 明 確 で<br />

説 得 力 のある 証 拠 が 欠 如 しているとして、 地 方 裁 判 所 の 認 定 を 覆 した。ひとつの 具 体 例 (ステ<br />

ンレス 鋼 電 極 )と 投 与 反 応 の 決 定 方 法 が 明 細 書 の 中 に 述 べられていたために、 裁 判 所 は、 明 細<br />

書 は 実 施 可 能 であると 判 示 した。6〜12 ヶ 月 に 約 50,000 ドルという 研 究 の 費 用 と 時 間 の 問 題<br />

は、それだけでは、 過 度 の 実 験 を 立 証 できなかった。<br />

II. 妥 当 でない 実 験 の 例<br />

In re Ghiron, 442 F.2d 985, 991-92, 169 USPQ 723, 727-28 (CCPA 1971)では、 機 能 的 な<br />

268


「ブロック 図 」は、クレームされている 発 明 を 当 業 者 がある 程 度 の 実 験 だけで 実 施 するには<br />

不 十 分 である。なぜなら、クレームされている 発 明 は「 先 行 技 術 にオーバーラップするコン<br />

ピュータの 修 正 」を 要 求 しており、 部 品 の 多 くは 出 願 人 が 必 要 な 図 の 中 で 描 いた 長 方 形 が 複<br />

雑 に 集 まったものであるからである。・・・ 最 初 の 試 作 品 が 利 用 可 能 となるころには、 新 しいコ<br />

ンピュータの 発 表 から 長 い 歳 月 が 経 っていることは 周 知 のことである。これは、 日 常 的 な 作<br />

業 の 準 備 ではなく 広 範 囲 な 実 験 と 開 発 的 な 仕 事 である。・・・”<br />

2164.06(a) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ― 情 報 の 欠 如<br />

当 業 者 が 過 度 の 実 験 なしに 開 発 することができないような、 一 つ 又 は 複 数 の 本 質 的 部 分 につ<br />

いて、あるいは 部 品 間 の 関 係 についての 情 報 が 欠 如 していると、その 実 施 可 能 性 に 疑 いを 抱<br />

くようになるのは 当 然 のことである。そのような 場 合 、 審 査 官 はとりわけ、どの 情 報 が 無 い<br />

のか、 承 認 のためにはなぜその 情 報 が 必 要 なのかを 明 確 にしなければならない。<br />

I. 電 子 及 び 機 械 機 器 又 は 過 程<br />

一 例 として、 機 能 ラベルのブロック 図 で 図 解 された 電 子 回 路 装 置 の 開 示 は、 実 施 可 能 性 がな<br />

いと 判 示 されている。In re Gunn, 537 F.2d 1123, 1129, 190 USPQ 402, 406 (CCPA 1976)。<br />

四 角 で 表 された 部 品 が「 在 庫 あり」かどうか、 或 いは 出 願 人 のシステムを 特 別 に 構 成 又 は 修<br />

正 しなければならないかどうかについて 明 細 書 に 指 示 がない。また、 部 品 をどのように 相 互<br />

接 続 するのか、 出 願 人 が 希 望 する 特 定 の 操 作 を 得 るためにはどのような 制 御 をするのか、ど<br />

れぐらい 時 間 がかかるのか、 明 細 書 に 説 明 がない。In re Donohue, 550 F.2d 1269, 193 USPQ<br />

136 (CCPA 1977)。 実 施 可 能 性 の 欠 落 は、 図 面 に「LOGIC」と 書 かれた 単 一 のブロックについ<br />

て 明 細 書 に 情 報 がないことから 起 こる。Union Pacific Resources Co. v. Chesapeake Energy<br />

Corp., 236 F.3d 684, 57 USPQ2d 1293 (Fed. Cir. 2001) も 参 照 のこと。 ( 地 球 の 水 平 ボア<br />

ホールの 位 置 を 決 定 する 方 法 が 示 されたクレームは、 特 許 法 第 112 条 の 実 施 可 能 要 件 を 満 た<br />

さない。その 理 由 は、クレームされている 方 法 を 実 施 するためのあるコンピュータプログラ<br />

ムの 説 明 が 明 細 書 の 中 に 開 示 されておらず、 記 録 では、クレームされている 方 法 を 実 施 する<br />

ためにクレームに 記 述 されているようなデータをどのように「 比 べる」のか 或 いは「 計 り 直<br />

す」のか、 技 術 を 持 つ 技 能 者 が 理 解 できないことが 示 されているからである。)<br />

In re Ghiron, 442 F.2d 985, 169 USPQ 723 (CCPA 1971)は、プログラム 解 説 の 一 つのサブ<br />

セットから 別 のサブセットへのの 移 行 を 容 易 化 する 方 法 であって、コンピュータの「オーバ<br />

ーラップモード」の 先 行 技 術 の 修 正 を 要 するものに 関 する。その 開 示 が 特 許 法 第 112 条 第 1<br />

段 落 の 要 件 を 満 たすために 不 十 分 であること 等 に 基 づき、 審 決 はクレームを 拒 絶 し、 裁 判 所<br />

はこれを 維 持 した。 審 決 は、 図 が「ブロック 図 、すなわち、システムの 要 素 を 表 した 長 方 形<br />

の 集 まり、 機 能 ラベル、 線 の 相 互 接 続 」であるという 事 実 に 焦 点 を 当 てた。442 F.2d at 991,<br />

169 USPQ at 727。 明 細 書 はブロックやその 関 係 性 によって 特 に 各 要 素 を 特 定 してはいないし、<br />

各 機 能 の 実 施 を 目 的 とした 装 置 を 特 に 指 定 してはいない。 審 決 はさらに、 要 求 されている 部<br />

品 の 選 別 と 組 立 が 当 業 者 による 日 常 的 な 実 施 によりなし 得 たかどうかを 問 題 とした。<br />

機 器 の 十 分 な 開 示 には、いかに 複 雑 な 部 品 が 組 み 込 まれているか、いかに 望 む 機 能 を 実 施 す<br />

るかの 説 明 を 要 求 できる。In re Scarbrough, 500 F.2d 560, 182 USPQ 298 (CCPA 1974)に<br />

あるように、 裁 判 所 に 提 訴 されたクレームは、 単 なる 属 名 と 全 ての 根 本 的 な 機 能 による、 数<br />

個 の 組 立 部 品 から 構 成 されるシステムが 示 されている( 例 :コンピュータ、タイミング 及 び 制<br />

269


御 機 構 、A/D コンバータ 等 )。 裁 判 所 は、そこには 実 施 可 能 性 のある 開 示 はないと 結 論 づけた。<br />

その 理 由 は、いかにして「 説 明 された 機 能 を 広 く 実 施 することが 周 知 の 複 雑 な 要 素 が、 違 う<br />

システムにおいて、 妥 当 な 実 験 量 においてのみ、 審 判 請 求 人 の 特 別 なシステムにおける 使 用<br />

に 適 応 可 能 となるか」を 明 細 書 は 記 載 していなかったこと、 及 び「 審 判 請 求 人 が 解 決 したと<br />

いう 細 部 にわたる 関 係 に 行 き 着 くために 考 えられない 仕 事 量 が 必 要 だった」からである。500<br />

F.2d at 566, 182 USPQ at 302.<br />

II. 微 生 物<br />

微 生 物 のような 生 きている 生 物 学 的 生 産 物 を 含 む 特 許 出 願 は、 発 明 を 作 成 する 過 程 における<br />

重 大 な 要 素 として、 入 手 の 可 能 性 に 関 する 特 異 な 問 題 を 提 示 している。 特 別 な 微 生 物 を 使 う<br />

二 つの 新 しい 抗 生 物 質 を 生 む 発 酵 の 方 法 に 対 するクレームと、そこで 製 造 された 新 しい 抗 生<br />

物 質 に 対 するクレームを 含 む 事 案 で 問 題 が 起 こった。In re Argoudelis, 434 F.2d 1390, 168<br />

USPQ 99 (CCPA 1970)。 裁 判 所 が 述 べているように、「 出 発 物 質 として 微 生 物 を 使 うことの 特<br />

異 な 点 は、いかにして 自 然 界 からその 微 生 物 を 獲 るのかという 十 分 な 説 明 をすることができ<br />

ないことである。」434 F.2d at 1392, 168 USPQ at 102。 生 物 学 的 生 産 物 が 公 的 寄 託 所 を 通<br />

じて 入 手 可 能 となるということが、 特 許 法 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 と 実 施 可 能 要 件 を<br />

満 たすと 認 められる 手 段 を 提 供 したと 裁 判 所 は 判 示 した。<br />

実 施 可 能 要 件 を 満 たすため、「 発 行 前 に」 寄 託 されなければならないが、 出 願 提 出 に 先 立 っ<br />

て 行 う 必 要 はない。In re Lundak, 773 F.2d 1216, 1223, 227 USPQ 90, 95 (Fed. Cir. 1985)。<br />

入 手 可 能 性 という 実 施 可 能 要 件 はまた、クレーム 制 限 の 範 囲 又 は 広 さを 踏 まえて 考 慮 されな<br />

ければならない。 審 判 は 種 に 属 する 微 生 物 を 使 った 発 酵 方 法 をクレームする 出 願 に 関 してこ<br />

の 問 題 を 考 慮 した。 出 願 人 は、 微 生 物 の 新 しい 種 、 株 より 広 い 分 類 に 入 る 種 を 確 立 するため<br />

の 方 法 に 関 する 微 生 物 の 3 つの 新 しい 独 立 した 株 を 同 定 した。3 つの 具 体 的 な 株 は 適 切 に 寄<br />

託 されている。 問 題 は、 当 業 者 が、その 明 細 書 を 見 て 寄 託 されている 3 つの 種 以 外 の 他 の 種<br />

を 作 ることができるかという 点 にある。 審 判 は、 当 業 者 がクレームされた 種 をすべてつくる<br />

ためには、 言 語 による 種 の 記 載 は 不 十 分 であると 結 論 づけた。Ex parte Jackson, 217 USPQ 804,<br />

806 (Bd. App. 1982)。<br />

寄 託 規 則 の 詳 細 な 考 察 のため MPEP § 2402 - § 2411.03 を 参 照 のこと。 寄 託 問 題 に 基 づく<br />

特 許 法 112 条 に 基 づいた 拒 絶 のための MPEP § 2411.01 を 参 照 のこと。<br />

III. 医 薬 品 の 場 合<br />

医 薬 品 の 場 合 、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 有 効 要 件 の 考 察 のため MPEP § 2107 - § 2107.03<br />

を 参 照 のこと。<br />

2164.06(b) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ― 化 学 物 質 の 場 合<br />

事 例 をよく 読 まずに 実 施 可 能 性 の 欠 如 の 事 例 を 裏 付 けるために 次 の 要 約 に 依 拠 するべきではな<br />

い。<br />

実 施 不 能 な 開 示 であると 判 示 した 裁 判 例<br />

(A) Enzo Biochem, Inc. v. Calgene, Inc., 188 F.3d 1362, 52 USPQ2d 第 112 条 9 (Fed. Cir.<br />

1999)において、 裁 判 所 は、 遺 伝 子 アンチセンス 技 術 を 管 理 する 二 つの 特 許 におけるクレーム<br />

270


( 特 別 な 有 機 体 の 中 における 遺 伝 子 発 見 を 制 御 することが 目 的 )を 無 効 と 判 示 した。その 理 由<br />

は、 実 施 可 能 性 の 幅 がクレームの 範 囲 と 等 しくないからである。 両 明 細 書 が、 大 腸 菌 の 中 に<br />

ある 3 つの 遺 伝 子 に 関 係 したアンチセンス 技 術 の 応 用 を 開 示 した。 限 定 開 示 にもかかわらず、<br />

「この 発 明 の 実 施 は、 発 現 する 可 能 性 がある・・・バクテリアや 酵 母 菌 や 他 の 細 胞 生 物 のような、<br />

遺 伝 物 質 を 含 む 有 機 体 に 関 して 一 般 的 に 応 用 可 能 である」ということを 明 細 書 は 主 張 する。<br />

特 許 のクレームは 有 機 体 の 幅 広 い 範 囲 におけるアンチセンス 方 法 論 の 出 願 を 網 羅 した。 結 局 、<br />

裁 判 所 は 次 の 事 実 に 依 拠 した。(1) 示 された 指 示 の 数 と 明 細 書 にある 実 施 したサンプルの 数 は、<br />

係 争 中 のクレームに 比 べて 非 常 に 少 ない。(2)アンチセンス 遺 伝 子 技 術 は 非 常 に 予 測 困 難 であ<br />

る。(3) 大 腸 菌 からアンチセンス DNA を 作 る 作 業 を 他 種 の 細 胞 にあわせるために 要 求 される 実<br />

験 の 数 は 非 常 に 多 い。 特 に 記 録 を 考 慮 すると、 大 腸 菌 と 他 種 の 細 胞 の 発 現 を 照 査 することに<br />

発 明 者 が 失 敗 した 重 要 なサンプルが 含 まれている。このように、 明 細 書 に 述 べられた 教 示 は、<br />

他 種 の 細 胞 においてその 技 術 を 使 う 実 験 に 対 する 当 業 者 の「 計 画 」 或 いは「 誘 因 」にすぎな<br />

い。<br />

(B)In re Wright, 999 F.2d 1557, 27 USPQ2d 1510 (Fed. Cir. 1993)において、1983 年 出<br />

願 はラウス 関 連 ウイルス 科 の 一 つであるプラハトリ 肉 腫 ウイルスとして 知 られる RNA 腫 瘍 ウ<br />

イルスに 対 抗 するワクチンを 開 示 した。 機 能 的 な 用 語 を 使 い、Wright はウイルス 発 見 の「 免<br />

疫 学 的 な 有 効 量 を 構 成 する」ワクチンをクレームした。Id., at 1559, 27 USPQ2d at 1511。<br />

拒 絶 されたクレームはトリ RNA ウイルスと 同 様 に 全 ての RNA ウイルスを 網 羅 していた。 審 査<br />

官 は、1988 年 に 他 のレトロウイルス( 例 えば AIDS)に 対 するワクチンが 困 難 な 問 題 を 残 したと<br />

いう 教 訓 を 提 示 した。この 証 拠 と、RNA ウイルスが 多 種 多 様 で 複 雑 な 属 であるという 証 拠 を<br />

合 わせて、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 発 明 が 全 てのレトロウイルスやトリレトロウイルスに<br />

有 効 であるわけではないことを 認 めたした。<br />

(C)In re Goodman, 11 F.3d 1046, 29 USPQ2d 2010 (Fed. Cir. 1993)において、1985 年 の<br />

出 願 が、 外 来 遺 伝 子 発 現 により 植 物 細 胞 内 にタンパク 質 を 生 成 する 方 法 を、 機 能 的 にクレー<br />

ムした。 裁 判 所 は「 当 然 、 明 細 書 は 当 業 者 に 対 して『クレームされているように 出 来 る 限 り<br />

広 く、 発 明 をどのように 作 りどのように 使 うか』を 教 示 しなければならない」と 述 べた。Id.<br />

at 1050, 29 USPQ2d at 2013。また、 双 子 葉 植 物 細 胞 におけるタンパク 質 発 現 が 実 施 可 能 で<br />

あったが、クレームは 全 ての 植 物 細 胞 をカバーしていた。 審 査 官 は、1987 年 になってでさえ、<br />

の 単 子 葉 植 物 細 胞 におけるクレームされた 方 法 の 使 用 羽 実 施 可 能 でなかったという 証 拠 を 提<br />

供 した。Id. at 1051, 29 USPQ2d at 2014。<br />

(D) In re Vaeck, 947 F.2d 488, 495, 20 USPQ2d 1438, 1444 (Fed. Cir. 1991)において、<br />

裁 判 所 は、「 出 願 人 の 出 願 日 時 点 でのシアノバクテリアの 生 物 学 における 比 較 的 不 十 分 な 理<br />

解 と、クレームされた 発 明 における 特 定 のシアノバクテリア 属 の 活 性 についての 出 願 人 の 限<br />

定 された 開 示 を 考 慮 すると・・・」いくつかのクレームは、 実 施 可 能 な 開 示 に 裏 付 けられていな<br />

いと 判 示 した。 問 題 のクレームは、シアノバクテリアの 特 定 の 属 や 種 には 限 定 されておらず、<br />

明 細 書 は 9 の 属 とシアノバクテリアの 一 つの 種 を 用 いた 実 際 の 例 に 言 及 していた。(E)In re<br />

Colianni, 561 F.2d 220, 222-23, 195 USPQ 150, 152 (CCPA 1977)において、 裁 判 所 は 特 許<br />

法 第 112 条 の 第 一 段 落 に 基 づく 拒 絶 審 決 を 支 持 した。その 理 由 は、 骨 に「 十 分 な」 超 音 波 エ<br />

ネルギーを 適 用 することにより 骨 折 を 治 す 方 法 を 示 す 明 細 書 は、「 十 分 な」 適 量 を 定 義 して<br />

おらず、 超 音 波 エネルギーの 適 切 な 強 さ、 頻 度 又 は 期 間 をいかにして 選 ぶかの 通 常 技 能 の 一<br />

つを 教 示 していなかったからである。<br />

271


実 施 可 能 な 開 示 であると 判 示 した 裁 判 例<br />

(A)PPG Ind. v. Guardian Ind., 75 F.3d 1558, 1564, 37 USPQ2d 1618, 1623 (Fed. Cir. 1996)<br />

において、 裁 判 所 は、 例 えば 透 過 率 制 限 を 満 たすセリウム 無 酸 化 物 ガラスの 生 産 は 難 しいと<br />

いうことをいう 明 細 書 の 実 施 例 の 中 で 紫 外 線 透 過 率 データの 計 算 にソフトウエアエラーがあ<br />

ったとしても、そのようなガラスを 作 ることができたと 明 細 書 が 示 したという 判 決 を 下 した。<br />

明 細 書 は、 紫 外 線 透 過 率 を 低 く 抑 えながらいかにしてセリウムの 含 有 を 最 小 にするかを 示 し<br />

ていると 認 定 された。<br />

(B)In re Wands, 858 F.2d 731, 8 USPQ2d 1400 (Fed. Cir. 1988)において、 裁 判 所 は、 発<br />

明 を 実 施 するために 過 度 の 実 験 が 要 求 されていないと 結 論 づけ、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に<br />

基 づく 実 施 可 能 性 の 欠 如 を 理 由 とする 拒 絶 を 破 棄 した。モノクローナル 抗 体 技 術 の 性 質 は、<br />

求 めている 特 徴 がある 抗 体 を 分 泌 するものを 決 めるため、 実 験 はまずモノクローナルハイブ<br />

リドーマを 産 生 するためのすべての 試 みを 行 う。 裁 判 所 は、 明 細 書 において 実 際 の 実 施 例 と<br />

クレームされた 発 明 をどのように 実 施 するかということ、 発 明 を 実 施 するために 必 要 なすべ<br />

ての 方 法 が 周 知 されていること、 出 願 が 提 出 された 時 点 で 技 術 的 に 高 い 技 能 が 存 在 するとい<br />

うことについて、 相 当 量 の 指 示 及 び 指 導 が 提 供 されていると 認 定 した。さらに、 出 願 人 は<br />

HBsAg に 対 するモノクローナル 抗 体 を 作 るすべての 過 程 を 3 回 実 行 し、 過 程 においてクレー<br />

ムの 範 囲 を 満 たす 少 なくとも 1 抗 体 を 産 生 することに 毎 回 成 功 した。<br />

(C)In re Bundy, 642 F.2d 430, 434, 209 USPQ 48, 51-52 (CCPA 1981)において、 裁 判 所 は、<br />

明 細 書 が 特 定 の 投 薬 の 例 を 欠 いているとしても、その 明 細 書 には 新 しいプロスタグランジン<br />

が 周 知 のプロスタグランジン E に 類 似 する 確 実 な 薬 理 学 的 特 性 を 持 ち 活 動 していることを 説<br />

いているゆえに、 出 願 人 の 開 示 は 当 業 者 がクレームにある 自 然 に 起 こるプロスタグランジン<br />

の 抗 体 を 使 用 するに 十 分 であると 判 示 した。<br />

2164.06(c) 実 施 可 能 性 問 題 の 例 ―コンピュータプログラミングの 場 合<br />

開 示 の 妥 当 性 の 問 題 に 対 して 理 論 的 な 基 礎 を 確 立 するため、 審 査 官 は、 当 業 者 が 過 度 の 実 験<br />

に 頼 ることなく 発 明 を 実 施 し 使 用 することができないことを 示 すような 開 示 の 事 実 分 析 を 示<br />

さなければならない。<br />

コンピュータのアプリケーションにおいては、 例 えばプログラムされたコンピュータと 当 該<br />

コンピュータのアプリケーションといった 先 行 技 術 の 2 つの 分 野 又 は 1 以 上 の 技 術 を 含 める<br />

クレームされた 発 明 にとって、これは 珍 しいことではない。White Consol. Indus. v. Vega<br />

Servo-Control, Inc., 214 USPQ 796, 821 (S.D.Mich. 1982)。「 当 業 者 」の 基 準 に 関 して、<br />

コンピュータプログラミングと 他 の 技 術 の 両 方 を 含 む 場 合 、 両 方 の 技 術 分 野 の 専 門 家 の 知 識<br />

が 十 分 性 を 判 断 するための 適 切 な 基 準 であることを 審 査 官 は 認 めるべきである。In re Naquin,<br />

398 F.2d 863, 158 USPQ 317 (CCPA 1968) 及 び In re Brown, 477 F.2d 946, 177 USPQ 691 (CCPA<br />

1973) 及 び White ConsolIndus.214 USPQ at 822、 関 係 理 由 を 支 持 、713 F.2d 788, 218 USPQ<br />

961 (Fed. Cir. 1983)を 参 照 のこと。<br />

典 型 的 なコンピュータ 出 願 において、システム 部 品 の 多 くは「ブロック 図 」 形 式 で 示 される。<br />

すなわち、 凹 んだ 長 方 形 の 集 まりがシステムの 要 素 を 表 し、 機 能 的 に 分 類 され、 線 で 互 いが<br />

結 ばれている。このようなブロック 図 によるコンピュータの 事 例 は、(A)コンピュータを 含 む<br />

がコンピュータより 包 括 的 なシステム、 及 び、(B)ブロックの 要 素 が 全 体 的 にコンピュータの<br />

範 囲 内 に 入 るシステムに 分 類 することができる。<br />

272


I. コンピュータより 包 括 的 なブロック 要 素<br />

このようなブロック 図 の 最 初 のカテゴリーの 事 例 は、コンピュータやその 他 のシステムハー<br />

ドウエア 及 び/ 又 はソフトコンポーネントを 含 むシステムを 伴 う。かかる 開 示 の 妥 当 性 を 問<br />

題 視 するための 理 論 的 な 根 拠 立 証 する 責 任 を 果 たすために、 審 査 官 は 個 々のブロック 要 素 の<br />

組 合 せに 焦 点 を 当 てたシステムの 実 際 の 分 析 を 始 めなければならない。 具 体 的 には、このよ<br />

うな 審 査 は、 各 ブロック 要 素 が 有 する 様 々な 機 能 とともに、かかる 構 成 要 素 がいかにして 実<br />

行 されるかについての 明 細 書 の 教 示 にもに 焦 点 を 当 てなければならない。このような 分 析 を<br />

基 に、その 構 成 要 素 を 実 行 するため 当 業 者 に 日 常 の 実 験 以 上 の 実 験 が 要 求 されていることを<br />

審 査 官 が 合 理 的 に 主 張 できる 場 合 、その 構 成 要 素 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき、 審 査<br />

官 により 拒 絶 される。 加 えて、 審 査 官 は、ブロック 要 素 として 表 現 されているいくつかのハ<br />

ードウエア 又 はソフトウエアの 構 成 要 素 が 互 いに 複 雑 に 組 み 合 わさっているものを 査 定 しな<br />

ければならない。このような 組 合 せは、 幅 広 い 様 々な 特 徴 を 持 ち 複 雑 な 組 合 せによって 正 確<br />

に 配 置 されていなければならない。こうした 環 境 の 下 で、 開 示 におけるそのような 機 能 的 ブ<br />

ロック 図 への 異 議 のための 理 論 的 な 根 拠 が 存 在 しうる。In re Ghiron, 442 F.2d 985, 169 USPQ<br />

723 (CCPA 1971) 及 び In re Brown, supra を 参 照 。さらに、たとえ 特 定 のブロック 図 のハ<br />

ードウエア 又 はソフトウエアの 構 成 要 素 が 古 いことを 示 すために 先 行 技 術 特 許 又 は 出 版 物 を<br />

出 願 人 が 引 用 したとしても、そのような 構 成 要 素 が 開 示 される 複 雑 な 方 法 で 機 能 に 相 互 接 続<br />

される 方 法 を、 常 に 自 明 のこととしては 考 慮 すべきではない。 参 照 として In re Scarbrough,<br />

500 F.2d 560, 566, 182 USPQ 298, 301 (CCPA 1974) 及 び In re Forman, 463 F.2d 1125, 1129,<br />

175 USPQ 12, 16 (CCPA 1972)。その 上 、デジタルコンピュータ、マイクロプロセッサー 或 い<br />

は 数 多 くのブロック 図 要 素 のひとつである 複 雑 なコントロールユニット 等 の 複 雑 なシステム<br />

においては、 様 々なシステム 要 素 間 のタイミングが 重 要 とすることができ、 各 要 素 の 時 間 配<br />

列 に 関 するタイミングチャートなしでは、 出 願 人 が 解 決 したと 主 張 している 詳 細 な 関 係 を 引<br />

き 出 すためには、 妥 当 でない 仕 事 の 量 が 要 求 される 場 合 がある。 参 照 として、In re Scarbrough、<br />

500 F.2d at 566、182 USPQ at 302。<br />

たとえば、マイクロプロセッサー 及 びマイクロプロセッサーによってコントロールされるそ<br />

の 他 のシステム 構 成 要 素 を 含 む 複 雑 にクレームされたシステムのブロック 図 の 開 示 において、<br />

単 なる 先 行 技 術 の 引 例 や、 商 業 的 に 入 手 できるマイクロプロセッサーでは、マイクロプロセ<br />

ッサーで 実 行 するための 正 確 な 操 作 説 明 なしで、 開 示 及 びクレームされた 機 能 を 実 行 するた<br />

めに 適 切 に 計 られた 時 間 配 列 において 要 求 される 計 算 を 実 行 するため 或 いは 他 のシステム 構<br />

成 要 素 と 組 み 合 わせるためにいかにしてそのようなマイクロプロセッサーが 適 切 にプログラ<br />

ムされるかという 開 示 が 欠 落 しているという 例 がある。このようなシステムにおいて 特 定 の<br />

プログラムが 開 示 されるなら、こうしたプログラムはその 範 囲 がクレームにあるプログラム<br />

に 起 因 する 機 能 の 範 囲 と 等 しいことを 保 証 するために 注 意 深 く 審 査 しなければならない。 参<br />

照 として In re Brown,477 F.2d at 951、177 USPQ at 695。なんらかのプログラムの 開 示 を<br />

怠 り、 当 業 者 がそのプログラムを 作 成 するために 日 常 的 な 実 験 以 上 のものが 要 求 された 場 合 、<br />

審 査 官 はそのような 開 示 の 十 分 性 に 対 して 異 議 を 述 べるための 合 理 的 な 根 拠 を 明 確 に 有 する。<br />

日 常 的 なものと 考 えられる 実 験 の 量 は、 個 々のケースの 状 況 や 事 実 に 依 存 するであろう。 裁<br />

判 所 が 定 めた 正 確 な 数 値 基 準 はないが、「 要 求 される 実 験 の 量 は 妥 当 なものでなければなら<br />

ない」とする。White Consol. Indus., 713 F.2d at 791, 218 USPQ at 963。ある 裁 判 所 で<br />

は、 熟 練 したプログラマーが 具 体 化 したフォームを 使 って 4 時 間 以 内 に 一 般 的 なコンピュー<br />

273


タプログラムを 書 くことができる 場 合 に、 含 まれる 実 験 の 量 は 妥 当 だと 判 断 したようであっ<br />

た。Hirschfield v. Banner, 462 F. Supp. 135, 142, 200 USPQ 276, 279 (D.D.C. 1978), aff’d,<br />

615 F.2d 1368 (D.C. Cir. 1986), cert. denied, 450 U.S. 994 (1981)。 別 の 裁 判 所 では、<br />

熟 練 したプログラマーが 特 定 のプログラムを 開 発 するために 要 求 される 実 験 期 間 が 1 から 2<br />

人 年 とされている 場 合 、これは「 明 らかに 妥 当 でない 要 求 」と 判 断 した。(White Consol. Indus.,<br />

713 F.2d at 791, 218 USPQ at 963).<br />

II. コンピュータのブロック 要 素<br />

ブロック 図 事 案 の 2 つ 目 のカテゴリーは、ノーマル 入 力 出 力 機 器 以 外 に 外 部 装 置 と 結 合 されてい<br />

ない 状 態 で、ブロック 要 素 の 組 合 せはすべてがコンピュータ 範 囲 内 である 場 合 、アプリケーショ<br />

ンを 処 理 する 純 データにおいて 最 も 頻 繁 に 起 こる。<br />

場 合 によっては、ブロック 図 開 示 の 特 定 の 種 類 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 要 件 を 十 分<br />

満 たしていることが 確 認 される。 参 照 として、In re Knowlton, 481 F.2d 1357, 178 USPQ 486 (CCPA<br />

1973), In re Comstock, 481 F.2d 905, 178 USPQ 616 (CCPA 1973).しかし 最 も 意 義 深 く、Comstock<br />

と Knowlton の 両 方 の 事 案 において、 判 決 は 請 求 人 の 次 の 開 示 へと 方 向 転 換 した。(A) 周 知 先 行 技<br />

術 のコンピュータシステムへの 依 存 或 いは 言 及 、 及 び(B) 言 及 した 先 行 技 術 コンピュータシステ<br />

ムに 関 する 操 作 可 能 なコンピュータプログラム。さらに、Knowlton においては、 個 々のプログラ<br />

ムのステップが 先 行 技 術 のコンピュータシステムを 参 照 することで 操 作 可 能 な 構 造 的 要 素 と 十<br />

分 相 互 に 関 係 づけられているという 細 かい 方 法 で 開 示 された。 開 示 が 流 れ 図 の 大 まかな 説 明 や、<br />

自 分 で 操 作 可 能 であると 考 える 自 分 が 所 有 するコンピュータを 参 照 して 集 めたプログラムリス<br />

トの 単 なるグループではないことを、Knowlton の 裁 判 所 は 示 した。 開 示 は、 開 示 されたハードウ<br />

エアとソフトウエア 要 素 間 の 相 互 関 係 のかなり 細 かい 説 明 に 立 ち 入 ると 特 徴 付 けられる。この 状<br />

況 下 で、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 文 言 を 満 たすための 十 分 なレベルを 要 求 し、 明 確 にし、これ<br />

を 満 たすと 共 に、 簡 潔 にするための 開 示 を 裁 判 所 は 考 慮 した。リストしたプログラムの 重 要 性 と<br />

確 認 された 先 行 技 術 コンピュータシステムに 依 存 または 言 及 することが 理 由 で、これらの 要 素 が<br />

ない 場 合 は、コンピュータ 範 囲 内 でのブロック 要 素 開 示 は、 上 述 のブロック 図 事 案 の 最 初 のカテ<br />

ゴリーと 同 じ 方 法 で 精 査 されるべきであるということが 強 調 されなければならない。<br />

開 示 が、コンピュータより 包 括 的 なブロック 要 素 を 含 んでいるか、 又 はブロック 要 素 がすべてコ<br />

ンピュータ 範 囲 内 であるか 否 かにかかわらず、 方 法 クレームを 分 析 する 場 合 、 米 国 特 許 商 標 庁 審<br />

査 官 は、 明 細 書 はクレームされた 方 法 をどのように 実 施 するかを 教 示 するために 十 分 でなければ<br />

ならないことを 認 められなければならない。このような 実 施 が 特 定 の 装 置 を 要 求 する 場 合 、それ<br />

がまだ 利 用 可 能 でないなら、 出 願 は 十 分 なその 装 置 の 開 示 を 提 供 しなければならない。In re<br />

Ghiron, 442 F.2d 985, 991, 169 USPQ 723, 727 (CCPA 1971) 及 び In re Gunn, 537 F.2d 1123,<br />

1128, 190 USPQ 402, 406 (CCPA 1976)を 参 照 。 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 がコンピュータシステム<br />

またはコンピュータプログラミング 開 示 の 妥 当 性 を 問 う 場 合 、 明 細 書 が 実 施 可 能 でないことを 認<br />

める 理 由 は、 記 録 全 体 に 裏 づけされたものでなければならない。この 点 において、 出 願 人 から 提<br />

出 された 証 拠 に 正 当 に 異 議 を 唱 えることも 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 にとって 重 要 である。たとえば、<br />

Naquin 事 件 においては、 平 均 的 なプログラマーがクレームされたプロセス 実 行 に 必 要 になるサブ<br />

ルーチンを 熟 知 しているという 宣 誓 供 述 人 の 声 明 は、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 に 異 議 を 唱 えられる<br />

ことがないようにした 事 実 の 声 明 とされる。いいかえれば、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 が 全 体 として<br />

記 録 を 考 慮 して 開 示 に 異 議 を 唱 える 合 理 的 な 根 拠 を 示 さない 限 り、コンピュータシステムまたは<br />

274


コンピュータプログラミング 出 願 における 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 は、 上 訴 において<br />

維 持 できない。In re Naquin, supra, 及 び In re Morehouse, 545 F.2d 162, 165-66, 192 USPQ<br />

29, 32 (CCPA 1976)を 参 照 。<br />

コンピュータプログラムに 関 し 出 願 の 開 示 が 不 十 分 であると 認 めるために 明 確 に 普 遍 的 で 準 用<br />

可 能 な 規 則 が 存 在 しない 場 合 は、コンピュータプログラム 自 体 またはプログラムが 実 行 するべき<br />

操 作 の 流 れを 説 明 する 合 理 的 に 詳 しいフローチャートのいずれをも 欠 いているような 開 示 の 十<br />

分 性 に 対 して、 一 般 的 に 従 う 審 査 ガイドラインが 異 議 を 唱 える。プログラミング 出 願 において、<br />

機 能 の 複 雑 さと 増 加 するフローチャートの 個 々の 組 合 せの 一 般 性 のような、 単 にフローチャート<br />

を 含 むだけのソフトウエアの 開 示 の 場 合 、そのようなフローチャートの 重 要 性 に 対 する 異 議 の 根<br />

拠 はより 妥 当 性 のあるものになる。その 理 由 は、そのような 増 加 するフローチャートからプログ<br />

ラムの 作 業 を 産 出 することを 要 求 している 実 験 は 日 常 業 務 以 上 のものになる 可 能 性 があるから<br />

である。<br />

先 に 述 べたように、ひとたび 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 がコンピュータシステムまたはコンピュータ<br />

プログラム 開 示 の 十 分 性 を 問 うための 合 理 的 な 根 拠 や 証 拠 を 提 示 する 場 合 は、 出 願 人 は、 当 業 者<br />

が 過 度 な 実 験 に 頼 ることなくクレームされた 発 明 を 実 施 し 使 用 するために 自 己 の 明 細 書 が 有 効<br />

であることを 提 示 しなければならない。 多 くの 場 合 、この 責 任 を 果 たすための 努 力 には、 供 述 書<br />

の 提 出 、 先 行 技 術 特 許 または 技 術 刊 行 物 の 参 照 、 弁 護 士 の 議 論 を 提 示 、あるいはそれらの 組 み 合<br />

わせによるアプローチを 含 む。<br />

III. 供 述 書 の 実 施 (37 CFR 1.132)<br />

コンピュータの 事 例 では 供 述 書 が 詳 しく 分 析 される。 最 初 の 宣 誓 供 述 書 の 実 施 は 通 常 、 技 能<br />

のレベル 及 び/ 又 は 宣 誓 供 述 人 の 資 格 の 分 析 を 含 む。この 宣 誓 供 述 人 は 当 該 技 術 において 通<br />

常 の 当 業 者 ( 以 下 、「ルーティナー」という)でなければならない。 宣 誓 供 述 人 の 技 術 レベル<br />

が 出 願 のためにルーティナーが 求 めているレベルより 高 い 場 合 、それでは 当 該 技 術 分 野 のル<br />

ーティナーが 実 施 できず 発 明 を 実 施 するためにルーティナーが 求 める 実 験 量 の 証 拠 が 示 せな<br />

いゆえ、 審 査 官 は 宣 誓 供 述 人 に 異 議 を 唱 えることができる。ルーティナーより 高 い 技 術 レベ<br />

ル 又 は 資 格 を 持 つ 宣 誓 供 述 人 は、ルーティナーがクレームされた 発 明 を 実 施 するために 必 要<br />

とする 実 験 量 より 少 ない 実 験 量 を 要 求 する。 同 様 に、ルーティナーより 低 い 技 術 レベル 又 は<br />

資 格 を 持 つ 宣 誓 供 述 人 は、ルーティナーがクレームされた 発 明 を 実 施 するために 必 要 とする<br />

実 験 量 より 多 くの 実 験 量 を 要 求 する。いずれの 場 合 も 当 該 技 術 分 野 のルーティナ-の 基 準 と 合<br />

致 することはできない。<br />

コンピュータシステム 又 はプログラミングにおいて、 開 示 問 題 の 重 要 性 に 係 る 宣 誓 供 述 書 の<br />

問 題 は、 結 論 又 は 見 解 を 裏 付 けるわずかな 事 実 を 提 出 する 宣 誓 供 述 人 を 一 般 的 に 巻 き 込 むこ<br />

とになる。 宣 誓 供 述 書 は 十 分 性 についての 究 極 的 な 法 的 問 題 に 対 して 結 論 を 呈 することさえ<br />

できるものもある。In re Brandstadter, 484 F.2d 1395,179 USPQ 286 (CCPA 1973)は、 宣<br />

誓 供 述 人 の 結 論 又 は 見 解 に 潜 在 する 事 実 的 根 拠 に 対 する 調 査 の 範 囲 を 示 している。<br />

Brandstadter 事 件 においては、 発 明 は、コミュニケーションシステムにおけるメッセージの<br />

転 送 、 回 復 、 保 存 をコントロールするためのプログラム、 保 存 されたプログラムコントロー<br />

ラ(コンピュータ)に 係 るとされている。 開 示 は、 発 明 の 構 造 のおおまかに 定 義 されたブロッ<br />

クから 成 り、コントローラプログラムのプログラムリスト 又 はフローチャートではない。 開<br />

示 が 無 数 の 要 求 結 果 の 陳 述 に 沿 ったラベル 付 ブロック 図 で 構 成 されている 単 なる 幅 広 いシス<br />

275


テム 図 であることを、 審 査 官 が 首 尾 一 貫 して 論 争 したことが 明 らかである 場 合 、 裁 判 所 はそ<br />

の 見 解 を 審 査 官 の 拒 絶 通 知 と 審 査 官 答 弁 から 広 く 引 用 した。ブロック 図 においてシステム 回<br />

路 要 素 の 全 て 又 はいくつかがその 技 術 において 周 知 であるか 技 術 を 持 った 設 計 技 師 によって<br />

「 構 成 できる」かのいずれか 一 方 であるということ、 明 記 された 機 能 をコントローラーが 実<br />

施 するために「プログラムできる」こと、 当 該 技 術 分 野 のルーティナ-が「 設 計 又 は 構 成 で<br />

きる 或 いはプログラムすることが 出 来 る」システムであることを 宣 誓 供 述 人 が 述 べた 様 々な<br />

供 述 書 が 提 出 された。 裁 判 所 は、 実 施 可 能 性 の 究 極 的 な 法 的 問 題 に 対 するいくつかの 証 拠 と<br />

して 宣 誓 供 述 人 の 陳 述 を 検 討 したが、 結 論 を 裏 付 け 強 化 するためのわずかな 事 実 により 結 論<br />

や 見 解 を 述 べているので、その 陳 述 は 目 的 を 果 たしていないと 結 論 づけた。 開 示 されたコン<br />

ピュータプログラム 或 いはメッセージスイッチシステムをコントロールするためのプログラ<br />

ムのフローチャートさえも 欠 落 していたことを 参 照 して、その 記 録 には 多 くのコンピュータ<br />

が 必 要 とする 証 拠 及 び 多 くの 人 時 間 と 発 明 を 実 施 するために 要 求 されたプログラムを 制 作 す<br />

るためのプログラマーの 技 術 レベルが 含 まれていなかった。<br />

これはまた、これが 実 施 可 能 性 の 究 極 的 な 法 的 問 題 を 示 す 意 見 の 証 拠 ではないが、むしろ、<br />

開 示 のみから 発 明 の 実 施 に 要 求 される 所 用 時 間 と 尽 くした 努 力 量 及 び 知 識 のレベルを 示 す 事<br />

実 証 拠 であって、 実 施 不 可 能 であるという 一 応 の 証 明 に 反 論 することが 期 待 できるものであ<br />

ることに 注 意 しなければならない。Hirschfield, 462 F. Supp. at 143, 200 USPQ at 281<br />

を 参 照 。 発 明 者 が 宣 誓 供 述 人 に 解 決 すべき 問 題 を 説 明 し、それゆえ 供 述 者 が 問 題 を 解 決 する<br />

ためのコンピュータプログラムを 作 成 できる 場 合 、この 宣 誓 供 述 書 は 出 願 のみによって 技 術<br />

的 に 通 常 の 技 能 者 がクレームされた 発 明 を 実 施 し 使 用 する 方 法 を 指 示 できることを 示 せてい<br />

ないことになる。In re Brown, 477 F.2d at 951, 177 USPQ at 695 を 参 照 。 裁 判 所 は、 出<br />

願 人 が 宣 誓 供 述 人 に 対 して、 何 度 かの 会 合 において 出 願 に 盛 り 込 まれたものに 追 加 する 不 可<br />

欠 かつ 追 加 的 な 情 報 を 伝 達 しなかったということは 事 実 上 成 立 しないと 表 明 した。 実 施 可 能<br />

性 の 決 定 に 関 連 する 宣 誓 供 述 書 の 重 要 性 も、 出 願 人 が 出 願 した 時 点 でのルーティナーの 技 術<br />

的 技 能 レベルの 証 拠 となるべきである。In re Gunn, 537 F.2d 1123, 1128, 190 USPQ 402, 406<br />

(CCPA 1976)を 参 照 。ここでは、 宣 誓 供 述 書 を 実 施 した 時 点 で 周 知 されていたものは 何 か、 出<br />

願 人 が 出 願 した 時 点 で 周 知 されていないものは 何 かを 各 宣 誓 供 述 人 が 述 べた。<br />

IV. 先 行 技 術 書 類 の 引 用<br />

同 一 の 先 行 技 術 コンピュータシステムの 商 業 利 用 可 能 性 は 実 施 可 能 性 の 問 題 に 非 常 に 関 連 性<br />

がある。しかしいくつかの 事 案 では、このアプローチは 出 願 人 の 責 任 を 十 分 満 たしていると<br />

していない。クレームされた 装 置 を 構 築 できるのは、 引 用 した 回 路 のどの 部 分 であるのか、<br />

或 いは 求 める 結 果 を 産 出 する 組 合 せにおいてどのように 接 続 すればいいかを 当 業 者 が 知 って<br />

いることが 明 確 になっていないなら、 実 施 可 能 性 要 件 を 満 たすとする 宣 誓 供 述 書 の 技 術 文 献<br />

からの 抜 粋 の 単 なる 引 用 は 十 分 ではない。In re Forman, 463 F.2d 1125, 1129, 175 USPQ 12,<br />

16 (CCPA 1972)を 参 照 。 出 願 人 のシステムから 構 築 する 回 路 が 本 質 的 に 先 行 技 術 コンピュー<br />

タシステムと 同 一 の 基 本 部 品 であり、それらに 接 続 する 基 本 装 置 となっている 場 合 、この 分<br />

析 は 批 判 がより 少 ないと 考 えられる。<br />

実 施 可 能 性 要 件 を 証 明 する 目 的 で 技 術 の 状 態 を 示 すために、 出 願 人 はしばしば 先 行 技 術 特 許<br />

に 依 存 する。しかし、これらの 特 許 は、 検 討 中 の 出 願 の 有 効 出 願 日 より 早 い 発 行 日 のもので<br />

なければならない。In re Budnick, 537 F.2d 535, 538, 190 USPQ 422, 424 (CCPA 1976)<br />

276


を 参 照 。 類 似 の 論 点 は、 上 述 の In re Gunn において、 保 護 対 象 は 特 許 権 者 及 び 特 許 商 標 庁 の<br />

みが 知 っていたがゆえに、 審 査 中 の 出 願 の 出 願 日 後 に 発 行 された 特 許 は、 当 業 者 の 誰 もが 知<br />

る 内 容 の 証 拠 ではないことを 裁 判 所 は 示 した。たとえそれぞれの 列 挙 された 装 置 又 はブロッ<br />

ク 図 においてラベル 付 ブロックの 開 示 が 古 かったとしても、 本 質 的 にこれは 開 示 された 複 雑<br />

な 組 合 せ 方 法 においてそれぞれにどのように 機 能 を 連 結 するかを 自 明 のものとしないという<br />

理 由 から、 反 論 された 構 成 部 品 が 古 いことを 説 明 するための 単 なる 先 行 技 術 特 許 の 引 用 は 十<br />

分 な 証 拠 としてはならない。したがって、 有 効 な 明 細 書 では 先 行 技 術 の 統 合 を 述 べなければ<br />

ならない。そうでなければ、クレームされた 発 明 を 実 施 するために 過 度 な 実 験 又 は 日 常 業 務<br />

以 上 の 実 験 が 要 求 されるようなことが 生 ずるおそれがある。In re Scarbrough, 500 F.2d 560,<br />

565, 182 USPQ 298, 301 (CCPA 1974)を 参 照 。 裁 判 所 はまた、 特 定 の 長 方 形 を 使 う 図 のハー<br />

ドウエア 及 びソフトウエアの 組 み 合 わせが 古 いことを 説 明 するために、 出 願 人 によって 使 用<br />

された 引 用 特 許 について、そのような 特 許 が 本 発 明 と 密 接 な 関 係 があるかどうか、そのよう<br />

な 特 許 が 出 願 人 自 身 の 開 示 よりその 部 品 のより 詳 細 なものを 提 供 しているかどうかが 分 析 さ<br />

れなければならないことを 注 意 した。また、 特 定 のプログラミング 技 術 がプログラミング 技<br />

術 分 野 において 周 知 である 証 拠 を 提 供 するために 引 用 された 特 許 又 は 出 版 物 は、 通 常 の 技 術<br />

の 一 つが 開 示 されたプログラミング 技 術 に 応 じて 実 施 し 使 用 できる。ただし、 両 方 のプログ<br />

ラミング 技 術 は 複 雑 さの 度 合 いがほぼ 同 じである 場 合 を 除 く。 次 を 参 照 、In re Knowlton, 500<br />

F.2d 566, 572, 183 USPQ 33, 37 (CCPA 1974)。<br />

V. 弁 護 士 の 議 論<br />

審 査 官 が 自 己 の 責 任 を 適 切 に 果 たしていない、 或 いは 自 己 の 職 務 において 他 の 過 ちを 犯 して<br />

いることを 確 定 する 上 で 弁 護 士 の 議 論 が 有 効 となる。しかし、 審 査 官 が 問 題 の 開 示 に 対 して<br />

合 理 的 根 拠 を 提 案 して 一 旦 前 進 させると、 弁 護 士 の 理 論 が 単 独 で 記 録 上 の 証 拠 に 代 わること<br />

はできないということが 強 調 されなければならない。In re Budnick, 537 F.2d at 538, 190<br />

USPQ at 424; In re Schulze, 346 F.2d 600, 145 USPQ 716 (CCPA 1965); In re Cole, 326<br />

F.2d 769, 140 USPQ 230 (CCPA 1964)を 参 照 。たとえば、 記 録 の 大 部 分 が 出 願 人 の 弁 護 士 の<br />

意 見 及 び 議 論 である 場 合 は、 実 際 の 宣 誓 供 述 書 が 実 施 可 能 性 の 問 題 において 重 要 な 証 拠 とな<br />

ると 裁 判 所 は 示 している。In re Knowlton, 500 F.2d at 572, 183 USPQ at 37; In re Wiseman,<br />

596 F.2d 1019, 201 USPQ 658 (CCPA 1979)を 参 照 。<br />

2164.07 実 施 可 能 性 要 件 と 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件 との 関 係<br />

発 明 の 使 用 の 方 法 についての 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 要 件 は 特 許 法 第 101 条 の 有 用 性 要 件<br />

とは 異 なる。 特 許 法 第 101 条 の 要 件 は、 発 明 に 対 して 特 定 の 実 在 し、 且 つ、 信 憑 性 のある 一<br />

定 の 使 用 が 明 記 されることである。 反 対 に、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 は、( 特 許 法 第 101 条 に<br />

よって 要 求 される) 当 該 使 用 がどのように 実 施 できるか、 即 ち、 発 明 がどのように 使 用 できる<br />

かを 指 示 することを 求 めている。<br />

出 願 人 が 発 明 の 特 定 の 実 在 する 有 用 性 を 開 示 し、 且 つ、 当 該 有 用 性 を 裏 付 ける 信 憑 性 ある 理<br />

由 を 提 供 した 場 合 であっても、このことのみでは、クレームが 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 のす<br />

べての 要 件 に 適 合 すると 結 論 づける 根 拠 を 提 供 するものではない。 例 えば、 出 願 人 がある 化<br />

合 物 で 所 定 の 病 態 を 治 療 するプロセスをクレームし、 化 合 物 がその 点 に 関 して 有 用 なことを<br />

主 張 するために 信 憑 性 ある 根 拠 を 提 供 したが、 当 業 者 がクレームされた 発 明 を 実 際 に 実 施 す<br />

277


るために 過 度 の 実 験 に 従 事 しなくてはならないであろうならば、クレームは 特 許 法 第 101 条<br />

ではなく 特 許 法 第 112 条 により 不 備 となる 可 能 性 がある。 審 査 時 の 混 同 を 回 避 するため、「 有<br />

用 性 の 欠 如 」 以 外 の 理 由 に 基 づく 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 によるあらゆる 拒 絶 は、 特 許 法 第<br />

101 条 及 び 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による「 有 用 性 の 欠 如 」に 基 づいて 課 されるあらゆる 拒<br />

絶 とは、 別 に 課 されなければならない。<br />

I. 有 用 性 要 件 が 満 たされないとき<br />

A. 有 用 又 は 実 施 可 能 でない<br />

クレームが 有 用 性 がない 又 は 実 施 可 能 でないと 証 明 されたことを 理 由 に 特 許 法 第 101 条 の 有<br />

用 性 要 件 を 満 たすことができないならば、クレームは 必 然 的 に、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の<br />

実 施 可 能 性 要 件 の「 使 用 方 法 」の 態 様 を 満 たすことができない。In re Fouche, 439 F.2d 1237,<br />

169 USPQ 429 (CCPA 1971) に 指 摘 されているとおり「 組 成 物 が 実 際 には 役 に 立 たない」なら<br />

ば、「 請 求 人 の 明 細 書 は 組 成 物 の 使 用 方 法 を 教 示 できなかったはずである。」439 F.2dat 1243、<br />

169 USPQat 434。クレームの 保 護 対 象 の 非 有 用 性 又 は 非 実 施 可 能 性 が 証 明 された 場 合 は、 審<br />

査 官 は 両 方 の 拒 絶 ( 即 ち、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 、 及 び、 特 許 法 第 101 条 による<br />

拒 絶 )を 行 うべきである。<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 は、クレームされた 発 明 は 有 用 性 を 有 していないので 当 業 者<br />

はクレームされた 発 明 を 使 用 できないであろうこと、 及 びこのため、クレームは 特 許 法 第 112<br />

条 第 1 段 落 により 不 備 であることを 示 すべきである。 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 を 課 す 適 切<br />

な 理 由 が 存 在 しない 限 りは、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 を 課 したり 又 は 維 持 したりする<br />

べきではない。 即 ち、 本 庁 審 査 官 は、 特 許 法 第 101 条 拒 絶 が 適 切 でない 限 りは、「 有 用 性 の<br />

欠 如 」を 理 由 とする 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 拒 絶 を 課 してはならない。 特 に、 特 許 法 第 112<br />

条 第 1 段 落 の 拒 絶 が「 有 用 性 の 欠 如 」を 理 由 に 課 されることとなるならば、 特 許 法 第 101 条<br />

による 拒 絶 を 課 すのに 必 要 な 事 実 に 基 づいた 証 明 が 提 示 されなければならない。 特 許 法 第<br />

101 条 及 び 第 112 条 第 1 段 落 の 有 用 性 要 件 についてのより 詳 細 な 議 論 は MPEP 第 2107 条 乃 至<br />

第 2107.03 条 を 参 照 のこと。<br />

B. 審 査 官 の 責 任<br />

審 査 官 が、 出 願 に 有 用 性 がない、 実 施 可 能 でない、 又 は、 既 知 の 科 学 的 原 理 と 矛 盾 する 発 明<br />

を 記 載 していると 結 論 づける 場 合 、この 結 論 を 裏 付 ける 合 理 的 理 由 を 提 示 する 責 任 は 審 査 官<br />

にある。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 及 び 特 許 法 第 101 条 に 基 づく 拒 絶 がなされるべきである。<br />

審 査 官 は、 主 張 される 有 用 性 に 対 し 当 業 者 が 合 理 的 疑 問 を 持 つであろうことを 証 明 する 最 初<br />

の 責 任 を 負 う<br />

審 査 官 は 主 張 される 有 用 性 に 異 議 を 申 し 立 てる 最 初 の 責 任 を 負 う。 審 査 官 が、 主 張 される 有<br />

用 性 に 対 し 当 業 者 が 合 理 的 疑 問 を 持 つであることの 証 明 を 提 示 した 後 に 初 めて、 発 明 の 主 張<br />

される 有 用 性 を 当 業 者 に 納 得 させる 十 分 な 反 証 を 提 示 する 責 任 が、 出 願 人 に 転 換 する。In re<br />

Swartz, 232 F.3d 862, 863, 56 USPQ2d 1703, 1704 (Fed. Cir. 2000);In re Brana, 51 F.3d<br />

1560, 1566, 34 USPQ2d 1436, 1441 (Fed. Cir. 1995) (In re Bundy, 642 F.2d 430, 433, 209<br />

USPQ 48, 51 (CCPA 1981)を 引 用 )。<br />

C. 出 願 人 による 反 論<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 対 応 する 拒 絶 とともに 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 が 適 切 に 課<br />

278


されたならば、 一 応 の 証 明 に 反 論 する 責 任 は 出 願 人 に 転 換 する。In re Oetiker, 977 F.2d 1443,<br />

1445, 24 USPQ2d 1443, 1444 (Fed. Cir. 1992)。 主 張 される 有 用 性 を 裏 付 けるために 出 願 人<br />

により 提 示 されなければならない 証 拠 の 既 定 の 量 又 は 性 質 は 存 在 しない。むしろ、 主 張 され<br />

る 有 用 性 を 裏 付 けるのに 必 要 な 証 拠 の 質 と 量 は、 何 がクレームされるか (Ex parte Ferguson,<br />

117 USPQ 229, 231 (Bd. App. 1957))、ならびに、 主 張 された 有 用 性 が 確 立 された 科 学 的 原<br />

理 及 び 思 想 と 矛 盾 するように 見 えるか 否 かによって 変 わるであろう。In re Gazave, 379 F.2d<br />

973, 978, 154 USPQ 92, 96 (CCPA 1967);In re Chilowsky, 229 F.2d 457, 462, 108 USPQ<br />

321, 325 (CCPA 1956)。さらに 出 願 人 は、 主 張 される 有 用 性 が「 合 理 的 疑 義 の 余 地 なく」 真<br />

正 であることを 確 立 する 十 分 な 証 拠 を 提 示 する 必 要 は 必 ずしもない。In re Irons, 340 F.2d<br />

974, 978, 144 USPQ 351, 354 (CCPA 1965)。それどころか、 証 拠 が、 全 体 として 考 慮 して、<br />

主 張 される 有 用 性 がどちらかと 言 えば 真 正 であるとの 結 論 に 当 業 者 を 導 くならば、それで 十<br />

分 である。 有 用 性 の 欠 如 を 理 由 とする 一 応 の 拒 絶 に 対 する 応 答 の 考 慮 及 び 有 用 性 に 関 する 証<br />

拠 の 評 価 についてのより 詳 細 な 議 論 は MPEP 第 2107.02 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 有 用 性 要 件 が 満 たされる 場 合<br />

場 合 によっては、 用 途 が 提 示 されているが、 熟 練 当 業 者 は 当 該 用 途 を 実 行 する 方 法 を 知 らな<br />

いであろう。このような 場 合 には、 特 許 法 第 101 条 による 拒 絶 は 行 われないものとするが、<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 拒 絶 が 行 われるものとする。Mowry v. Whitney, 81 U.S. (14<br />

Wall.) 620 (1871)に 指 摘 されるように、 発 明 は 実 際 には 大 きな 有 用 性 を 有 しうる、 即 ち、「 高<br />

度 に 有 用 な 発 明 」でありうるが、 明 細 書 はそれでも「 当 業 者 又 は 科 学 に 熟 練 したいかなる 者 」<br />

の 発 明 の 使 用 も「 実 施 可 能 にする」ことができないかもしれない。81 U.S. (14 Wall.) 644。<br />

2164.08 クレーム 範 囲 と 相 応 する 実 施 可 能 性<br />

実 施 可 能 性 のすべての 問 題 がクレームされた 保 護 対 象 に 対 して 評 価 される。 審 査 時 質 問 の 対<br />

象 は、クレーム 範 囲 内 のあらゆるものが 実 施 可 能 であるかどうかである。 従 って、 第 一 の 解<br />

析 ステップは、どの 保 護 対 象 がクレームに 包 含 されるかを 審 査 官 が 正 確 に 判 断 することを 求<br />

めている。 参 照 として、 例 えば AK Steel Corp. v. Sollac, 344 F.3d 1234, 1244, 68 USPQ2d<br />

1280, 1287 (Fed. Cir. 2003)。(ある 範 囲 がクレームされる 場 合 、 合 理 的 な 実 施 可 能 範 囲 が<br />

なければならない。ここで、 争 点 となるクレームは 10% 重 量 もの 高 いシリコンの 量 を 含 んで<br />

いた。ただし 明 細 書 は、アルミニウム 被 膜 中 の 0.5% 重 量 を 上 回 るシリコン 含 有 物 によって 被<br />

覆 の 問 題 を 発 生 させることを 明 確 且 つ 強 く 警 告 する 陳 述 を 含 んでいた。かかる 陳 述 は、クレ<br />

ームされた 発 明 では 量 が 多 く 実 動 しないことを 示 す。) 審 査 官 は、 各 クレームが 何 を 記 載 して<br />

いるか、 及 び、 当 該 クレームの 各 部 分 を 個 別 に 解 析 するときではなく 全 体 として 考 慮 したと<br />

きに、 保 護 対 象 は 何 であるかを 判 断 するべきである。いかなるクレームも 見 過 ごされるべき<br />

ではない。 従 属 クレームに 関 しては、 特 許 法 第 112 条 第 4 段 落 が 遵 守 されるべきである。こ<br />

の 段 落 は「 従 属 形 式 のクレームは、それが 参 照 するクレームのすべての 限 定 事 項 を 含 むもの<br />

と 解 釈 されなければならない」と 述 べており、 且 つ、クレームされた 保 護 対 象 を 従 属 クレー<br />

ムがさらに 限 定 するよう 求 めている。<br />

連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は「 明 細 書 は、 当 業 者 に 対 して、クレームされた 発 明 の 全 範 囲 の 製 造<br />

法 及 び 使 用 法 を『 過 度 の 実 験 』を 伴 わずに 教 示 しなければならない」と 繰 り 返 し 判 示 してき<br />

た。In re Wright, 999 F.2d 1557, 1561, 27 USPQ2d 1510, 1513 (Fed. Cir. 1993)。ただ<br />

279


し、 発 明 を 実 施 するのに 必 要 なすべてが 開 示 される 必 要 はない。 実 際 には、 周 知 のことは 省<br />

略 するのが 最 も 良 い。In re Buchner, 929 F.2d 660, 661, 18 USPQ2d 1331, 1332 (Fed. Cir.<br />

1991)。 当 業 者 における 知 識 及 び 技 術 の 水 準 が 与 えられれば、 当 業 者 がクレームされた 発 明 を<br />

実 施 できることだけを 必 要 とする。さらに、 実 施 可 能 性 の 範 囲 はクレーム 範 囲 と「 合 理 的 な<br />

相 関 関 係 」を 有 してさえいればよい。 参 照 として、 例 えば In re Fisher, 427 F.2d 833, 839,<br />

166 USPQ 18, 24 (CCPA 1970)。<br />

実 施 可 能 性 に 関 連 するクレームの 広 さに 関 して、 関 連 する 唯 一 の 懸 念 は、 当 業 者 に 開 示 によ<br />

って 提 示 された 実 施 可 能 性 の 範 囲 が、クレームが 求 める 保 護 の 範 囲 と 相 応 するか 否 かである<br />

べきである。AK Steel Corp. v. Sollac, 344 F.3d 1234, 1244, 68 USPQ2d 1280, 1287 (Fed.<br />

Cir. 2003); In re Moore, 439 F.2d 1232, 1236, 169 USPQ 236, 239 (CCPA 1971)。 参 照<br />

として、Plant Genetic Sys., N.V. v. DeKalb Genetics Corp., 315 F.3d 1335, 1339, 65 USPQ2d<br />

1452, 1455 (Fed. Cir. 2003) ( 発 明 の「パイオニア 的 ステータス」が 主 張 されたが、 実 施 可<br />

能 性 の 判 断 には 無 関 係 である)。<br />

実 施 可 能 性 範 囲 と 比 較 したクレーム 範 囲 に 基 づいた 拒 絶 の 妥 当 性 の 判 断 には 2 段 階 の 質 問 が<br />

含 まれる。 第 一 の 質 問 は、 開 示 についてのクレームの 広 さを 判 断 することである。クレーム<br />

全 体 が 考 慮 されなければならない。 第 二 の 審 査 は、 当 業 者 が 過 度 の 実 験 を 伴 わずにクレーム<br />

された 発 明 の 全 範 囲 の 製 造 及 び 使 用 を 実 施 できるか 否 かを 判 断 することである。<br />

教 示 がどのように 明 記 されるか、 即 ち、 特 定 の 実 施 例 によるか、 又 は、 広 い 用 語 によるかは<br />

重 要 ではない。In re Marzocchi, 439 F.2d 220, 223-24 169 USPQ 367, 370 (CCPA 1971)。<br />

特 許 法 第 112 条 に 基 づく 実 施 可 能 な 開 示 よりも 広 いことによるクレームの 拒 絶 は、 第 1 段 落<br />

の 実 施 可 能 性 要 件 の 拒 絶 であって、 第 2 段 落 の 明 瞭 性 の 拒 絶 ではない。クレームは、 当 業 者<br />

における 通 常 技 術 の 水 準 の 範 囲 内 にあると 推 定 されなければならない 要 因 を 取 り 扱 う 限 定 事<br />

項 を 包 含 していないことを 理 由 として、 特 許 法 第 112 条 に 基 づき 実 施 可 能 な 開 示 よりも 広 い<br />

ことによって 拒 絶 されない。 明 細 書 及 びクレームが 対 象 とする 当 業 者 が、 自 明 であると 考 え<br />

るであろう 要 因 は、クレームに 記 載 する 必 要 はない。In re Skrivan, 427 F.2d 801, 806, 166<br />

USPQ 85, 88 (CCPA 1970)。クレームされた 発 明 を 実 施 する 方 法 を 見 いだすには、クレームを<br />

見 ずに、 明 細 書 を 見 る。W.L. Gore & Assoc., Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 1558,<br />

220 USPQ 303, 316-17 (Fed. Cir. 1983);In re Johnson, 558 F.2d 1008, 1017, 194 USPQ<br />

187, 195 (CCPA 1977)。In re Goffe, 542 F.2d 564, 567, 191 USPQ 429, 431 (CCPA 1976)<br />

では、 裁 判 所 は 次 に 掲 げるように 述 べた。<br />

「 効 果 的 なインセンティブを 提 供 するために、クレームは 発 明 者 を 十 分 に 保 護 しなければな<br />

らない。 最 初 に 開 示 した 者 に 対 して、 自 らのクレームを、 自 らが 実 動 することを 見 いだした<br />

もの、 又 は、 関 係 するプロセスにおいて「 好 適 な」 材 料 に 指 示 された 指 針 を 満 たす 材 料 に 限<br />

定 するよう 要 求 することは、 有 用 技 術 における 進 歩 の 促 進 という 憲 法 の 目 的 に 適 わないであ<br />

ろう。」<br />

クレームの 実 施 可 能 範 囲 を 解 析 するとき、クレームには 明 細 書 と 一 貫 性 のある 最 も 広 い 合 理<br />

的 解 釈 が 与 えられるものとするので、 明 細 書 の 教 示 は 無 視 されてはならない。「クレームが<br />

明 細 書 に 照 らして 解 釈 されるとは、 明 細 書 中 のすべてがクレームに 読 み 込 まれねばならない<br />

ことをいわない。」Raytheon Co. v. Roper Corp., 724 F.2d 951, 957, 220 USPQ 592, 597<br />

(Fed. Cir. 1983), cert. denied, 469 U.S. 835 (1984)。<br />

記 録 は、 特 許 の 発 行 時 に 特 許 権 者 の 保 護 範 囲 に 関 して 公 衆 が 通 知 される 程 度 に、 明 確 でなけ<br />

280


ればならない。クレームの 合 理 的 解 釈 が 明 細 書 の 説 明 よりも 広 いならば、クレームの 全 範 囲<br />

が 実 施 可 能 であることを 審 査 官 が 確 認 する 必 要 がある。 明 細 書 における 限 定 事 項 及 び 実 施 例<br />

は、 一 般 には、クレームが 適 用 されるものを 限 定 しない。<br />

クレームの 広 さは Amgen v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200, 18 USPQ2d 1016 (Fed.<br />

Cir.), cert. denied, 502 U.S. 856 (1991)で 考 慮 された 要 因 であった。Amgen では、 特 許<br />

クレームはエリスロポエチン(EPO)の 類 似 体 であるポリペプチドをコードする 精 製 DNA 配 列<br />

を 対 象 とした。<br />

「Amgen は、すべてを 包 含 するクレームを 裏 付 けるのに 十 分 な DNA 配 列 の 調 製 を 実 施 可 能 と<br />

はしなかった。・・・ 作 成 可 能 な EPO 遺 伝 子 の 類 似 体 すべてに 関 する 明 細 書 中 における 詳 細 な 陳<br />

述 にかかわらず、 特 定 の 類 似 体 及 びそれら 類 似 体 の 製 造 法 の 実 施 可 能 な 開 示 はほとんどない。<br />

わずか 2、3 の EPO 類 似 体 遺 伝 子 を 調 製 するための 詳 細 が 開 示 されている。・・・この 開 示 はこ<br />

れら 類 似 体 及 び 類 似 の 類 似 体 を 含 む 属 クレームを 正 当 化 するといってもよいだろうが、 開 示<br />

は、すべての EPO 遺 伝 子 類 似 体 をクレームするという Amgen の 望 みの 不 十 分 な 裏 付 けを 表 し<br />

ている。EPO 型 生 成 物 をコードする 他 の 多 くの 遺 伝 子 配 列 がありうる。Amgen はそれらのうち<br />

2、3 のみの 製 造 法 及 び 使 用 法 を 述 べたのであって、 従 って、それらすべてをクレームする 権<br />

利 を 有 しない。」<br />

927 F.2dat 1213-14, 18 USPQ2dat 1027。しかし、クレームが、 特 定 の 名 前 が 付 けられた 蛋<br />

白 質 をコードするあらゆる 精 製 及 び 単 離 された DNA 配 列 を 対 象 とし、 当 該 蛋 白 質 が 具 体 的 に<br />

識 別 される 配 列 を 備 えるときは、 当 業 者 は、クレームされた 実 施 形 態 のうちあらゆる 一 実 施<br />

形 態 を 容 易 に 判 断 しうるので、 一 般 に、 実 施 可 能 な 開 示 よりも 広 いことによるクレームの 拒<br />

絶 は 適 切 でない。<br />

同 じく 参 照 として、In re Wright, 999 F.2d 1557, 1562, 27 USPQ2d 1510, 1513 (Fed. Cir.<br />

1993) ( 証 拠 は、 熟 練 当 業 者 が「あらゆる 動 物 中 であらゆる RNA ウィルスに 対 する 免 疫 防 御 活<br />

性 を 引 き 出 すあらゆるすべての 非 病 原 性 生 ワクチン 及 びかかるワクチンを 生 産 するプロセ<br />

ス」を 含 むクレームの 全 範 囲 を 実 施 するのに 必 要 な 工 程 を 実 施 できたであろうことは 証 明 し<br />

なかった( 原 文 の 強 調 ));In re Goodman, 11 F.3d 1046, 1052, 29 USPQ2d 2010, 2015 (Fed.<br />

Cir. 1993)( 明 細 書 は 哺 乳 類 のペプチドを 植 物 細 胞 中 に 生 成 するためのクレームの 広 い 範 囲<br />

を 実 施 可 能 にはしなかった。その 理 由 は、 当 該 明 細 書 は、ガンマインターフェロンを 双 子 葉<br />

種 において 生 成 する 実 施 例 のみを 含 んでいたから、 及 び、 単 子 葉 植 物 に 哺 乳 類 のペプチドを<br />

コードするためには 大 規 模 な 実 験 が 必 要 であったであろうとの 証 拠 が 出 願 時 にあったからで<br />

ある。);In re Fisher, 427 F.2d 833, 839, 166 USPQ 18, 24 (CCPA 1970)( 出 願 人 が 関 節<br />

炎 の 治 療 に 適 した「 少 なくとも」 特 定 値 の 効 力 を 有 する 組 成 物 をクレームした 場 合 、 裁 判 所<br />

は、 効 力 がわずかに 高 い 組 成 物 に 対 する 開 示 は 実 施 可 能 でないので、 当 該 クレームは 実 施 可<br />

能 な 範 囲 と 見 合 っていないと 判 示 した。 単 に、 出 願 人 が 特 定 の 閾 値 効 力 を 超 える 組 成 物 を 達<br />

成 した 最 初 の 者 であったからというだけでは、 当 該 閾 値 を 超 えたすべての 組 成 物 を 支 配 する<br />

であろうクレームを 正 当 化 も、 裏 付 けもしない。);In re Vaeck, 947 F.2d 488, 495, 20 USPQ2d<br />

1438, 1444 (Fed. Cir. 1991)( 関 係 する 生 物 工 学 分 野 における 比 較 的 不 完 全 な 理 解 、ならび<br />

に、 明 細 書 中 の 限 られた 開 示 とクレーム 中 に 求 められる 広 い 保 護 範 囲 の 間 の 合 理 的 な 相 関 関<br />

係 の 欠 如 を 考 慮 すると、 実 施 可 能 性 の 欠 如 による 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 拒 絶 は 適<br />

切 であった。)。<br />

実 施 可 能 性 がクレーム 範 囲 と 相 応 しないとの 見 解 に 基 づいて 拒 絶 が 行 われるならば、 審 査 官<br />

281


は 実 施 可 能 であると 考 えられる 保 護 対 象 を 特 定 するべきである。<br />

2164.08(a) 単 一 ミーンズクレーム<br />

単 一 ミーンズクレームは、 即 ち、 手 段 の 記 載 が、 記 載 された 手 段 の 他 の 要 素 と 組 み 合 わせて<br />

表 記 されていない 場 合 には、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づく 不 当 な 広 さによる 拒 絶 の 適 用<br />

を 受 ける。In re Hyatt, 708 F.2d 712, 714-715, 218 USPQ 195, 197 (Fed. Cir. 1983)( 表<br />

明 された 目 的 を 達 成 するためのすべての 考 えられる 手 段 を 含 んだ 単 一 ミーンズクレームは、<br />

明 細 書 は、 発 明 者 にとってせいぜい 既 知 である 手 段 のみを 開 示 したものであるから、 当 該 ク<br />

レーム 範 囲 に 対 して 実 施 可 能 でないと 判 示 された。)クレームが 記 載 されたある 特 性 に 従 属 し<br />

ているときは、Hyatt と 同 等 の 事 実 関 係 が 可 能 であり、クレームが 表 明 された 特 性 ( 結 果 )を<br />

達 成 するためのすべての 考 えられる 構 造 ( 手 段 )を 含 む 一 方 、 明 細 書 は 発 明 者 にとってせいぜ<br />

い 既 知 の 構 造 のみを 開 示 している。<br />

2164.08(b) 実 施 不 可 能 な 保 護 対 象<br />

クレーム 範 囲 内 に 実 施 不 可 能 な 実 施 形 態 が 存 在 しても、 必 ずしもクレームは 実 施 不 可 能 にな<br />

らない。 基 準 は、 当 業 者 が、 当 業 者 において 通 常 必 要 とされる 努 力 を 上 回 らない 努 力 を 用 い<br />

れば 着 想 されたがまだ 実 施 されていないいずれの 実 施 形 態 が、 実 施 不 能 か 又 は 実 施 可 能 かを<br />

判 断 できるか 否 かである。Atlas Powder Co. v. E.I. du Pont de Nemours & Co., 750 F.2d<br />

1569, 1577, 224 USPQ 409, 414 (Fed. Cir. 1984)( 机 上 実 施 例 によって、 開 示 を 実 施 不 可 能<br />

にすることはない)。<br />

典 型 的 には、 実 施 不 可 能 な 実 施 形 態 は 文 言 としてはクレーム( 例 えば 前 提 部 分 )から 削 除 され<br />

るものの、それでも、 実 施 可 能 な 実 施 形 態 を 判 断 する 際 に 過 度 の 実 験 を 伴 う 場 合 は、クレー<br />

ム 範 囲 は 実 施 可 能 とはならない 可 能 性 がある。 多 数 の 実 施 可 能 な 実 施 形 態 を 開 示 し、 且 つ、<br />

一 つの 実 施 不 可 能 な 実 施 形 態 を 特 定 しても、 実 施 可 能 な 実 施 形 態 を 判 断 する 際 に 過 度 の 実 験<br />

を 伴 わなかったからといって、クレームは 実 施 可 能 な 範 囲 よりも 広 くはならなかった。In re<br />

Angstadt, 537 F.2d 498, 502-503, 190 USPQ 214, 218 (CCPA 1976)。ただし、 多 数 の 実 施<br />

不 可 能 な 実 施 形 態 を 読 めるクレームは、 明 細 書 が 実 施 可 能 な 実 施 形 態 を 明 確 に 特 定 せず、 且<br />

つ、それが 実 施 可 能 であることを 判 断 する 際 に 過 度 の 実 験 を 伴 う 場 合 は、クレームは 実 施 不<br />

可 能 となるであろう。Atlas Powder Co. v. E.I. du Pont de Nemours & Co., 750 F.2d 1569,<br />

1577, 224 USPQ 409, 414 (Fed. Cir. 1984);In re Cook, 439 F.2d 730, 735, 169 USPQ 298,<br />

302 (CCPA 1971)。<br />

2164.08(c) クレームされていない 決 定 的 に 重 要 な 特 徴<br />

明 細 書 に 重 要 であると 教 示 され、 且 つ、クレームに 記 載 されていない 特 徴 は、 特 許 法 第 112<br />

条 の 実 施 可 能 性 の 規 定 に 基 づき、かかるクレームの 拒 絶 をきたすべきである。 参 照 として、<br />

In re Mayhew, 527 F.2d 1229, 1233, 188 USPQ 356, 358 (CCPA 1976)。クレームされてい<br />

ない 特 徴 が 決 定 的 に 重 要 であるかどうかを 判 断 する 際 には、 開 示 全 体 が 考 慮 されなければな<br />

らない。 単 に 好 適 な 特 徴 は 決 定 的 に 重 要 とは 考 えられないものとする。In re Goffe, 542 F.2d<br />

564, 567, 191 USPQ 429, 431 (CCPA 1976)。<br />

限 定 する 先 行 技 術 がない 好 適 な 材 料 に 出 願 人 を 縛 ることは、 有 用 な 技 術 の 進 歩 を 促 すという<br />

憲 法 の 趣 旨 には 資 さないであろう。 従 って、 開 示 された 決 定 的 に 重 要 な 限 定 事 項 がクレーム<br />

282


中 に 欠 けていることを 理 由 とする 実 施 可 能 性 要 件 による 拒 絶 は、 明 細 書 の 文 言 が、 当 該 限 定<br />

が 意 図 どおりに 発 明 が 機 能 するには 決 定 的 に 重 要 であることを 明 確 にしたときにのみ、なさ<br />

れるべきである。 主 張 される 決 定 的 に 重 要 な 特 徴 を 省 略 した、 要 約 書 を 含 む 開 示 中 における<br />

広 い 文 言 は、 決 定 的 重 要 性 の 主 張 に 反 駁 する 傾 向 がある。<br />

283


2165 最 良 実 施 態 様 (ベストモード) 要 件<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 1 段 落 の 第 三 の 要 件 は 次 に 掲 げるとおりである。<br />

明 細 書 は・・・ 自 己 の 発 明 を 実 施 した 発 明 者 が 考 える 最 良 の 態 様 を 規 定 するものとする。<br />

「 最 良 実 施 態 様 要 件 は 合 法 的 な 交 換 取 引 を 形 成 し、 当 該 取 引 によって、 特 許 権 者 はクレーム<br />

された 発 明 を 他 の 者 が 所 定 期 間 実 施 することを 排 除 する 権 利 を 取 得 し、 且 つ、 公 衆 はクレー<br />

ムされた 発 明 を 実 施 するための 好 適 な 実 施 形 態 の 知 識 を 受 け 取 る。」Eli Lilly & Co. v. Barr<br />

Laboratories Inc., 251 F.3d 955, 963, 58 USPQ2d 1865, 1874 (Fed. Cir. 2001)。<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 は、 法 律 によって 求 められる 全 面 開 示 を 行 わずに 特 許 保 護 を 取 得 したい 一<br />

部 の 者 の 望 みに 対 する 防 護 策 である。 当 該 要 件 は 発 明 者 が 次 善 の 実 施 形 態 であると 知 ってい<br />

るもののみを 開 示 する 一 方 、 最 良 のものを 自 己 のために 保 有 することを 許 可 していない。In<br />

re Nelson, 280 F.2d 172, 126 USPQ 242 (CCPA 1960)。<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 に 適 合 するかどうかを 判 断 するためには、2 段 階 から 成 る 質 問 を 必 要 とす<br />

る。 第 一 に、 発 明 者 が 出 願 時 点 で 発 明 を 実 施 するための 最 良 の 態 様 を 所 有 していたかどうか<br />

が 判 断 されなければならない。これは 出 願 時 の 発 明 者 の 心 の 状 態 に 焦 点 を 合 わせた 主 観 的 な<br />

質 問 である。 第 2 に、 発 明 者 が 最 良 の 態 様 を 所 有 していたならば、 書 面 記 載 が 当 業 者 が 実 施<br />

できる 程 度 に 最 良 の 態 様 を 開 示 したかどうかが 判 断 されなければならない。これは 客 観 的 な<br />

質 問 であり、クレームされた 発 明 の 範 囲 及 び 当 業 者 における 技 術 水 準 に 焦 点 を 合 わせている。<br />

Eli Lilly & Co. v. Barr Laboratories Inc., 251 F.3d 955, 963, 58 USPQ2d 1865, 1874 (Fed.<br />

Cir. 2001)。<br />

より 良 い 方 法 の 開 示 の 不 履 行 があっても、 発 明 者 が、 出 願 の 提 出 時 により 良 い 方 法 を 知 らな<br />

かったか 又 はそれが 最 良 の 方 法 であったと 認 識 していなかったならば、 特 許 を 無 効 とはしな<br />

い。すべての 出 願 人 は、クレームされた 保 護 対 象 に 対 する 発 明 者 が 考 える 最 良 の 態 様 を、た<br />

とえ 出 願 人 が 当 該 態 様 の 発 見 者 でなかった 場 合 であっても、 開 示 するよう 求 められる。Benger<br />

Labs. Ltd. v. R.K. Laros Co., 209 F. Supp. 639, 135 USPQ 11 (E.D. Pa. 1962).<br />

最 良 の 態 様 の 開 示 の 不 履 行 を 確 立 するには、 積 極 的 な 隠 蔽 若 しくは 著 しく 不 公 正 な 行 為 は 必<br />

要 でない<br />

最 良 の 態 様 の 開 示 の 不 履 行 は、 拒 絶 を 裏 付 けるか 又 は 特 許 を 無 効 にするために 積 極 的 な 隠 蔽<br />

又 は 著 しく 不 公 正 な 行 為 の 水 準 まで 至 る 必 要 はない。 発 明 者 が、 特 許 によってクレームされ<br />

た 効 果 の 複 製 を 成 功 させる 特 定 の 材 料 を 知 っているがそれを 開 示 せず、 代 わりに 広 範 な 分 類<br />

の 観 点 から 語 る 場 合 は、 最 良 実 施 態 様 要 件 は 満 たされていなかった。Union Carbide Corp. v.<br />

Borg-Warner, 550 F.2d 555, 193 USPQ 1 (6th Cir. 1977)。<br />

不 公 正 な 行 為 の 結 果 として 特 許 開 示 への 最 良 の 態 様 の 明 記 の 不 履 行 があったならば( 例 えば、<br />

特 許 明 細 書 が 重 要 な 成 分 を 省 略 し、 且 つ、 実 施 例 1 として 架 空 且 つ 実 施 不 可 能 なスラリーを<br />

開 示 した 場 合 )、 実 施 不 可 能 と 判 示 される 危 険 に 瀕 した 特 許 だけでなく、 同 一 作 用 に 起 因 して<br />

実 施 が 求 められている 同 一 技 術 を 取 り 扱 う 他 の 特 許 も、 実 施 できない 旨 の 判 示 の 適 用 を 受 け<br />

る。Consolidated Aluminum Corp. v. Foseco Inc., 910 F.2d 804, 15 USPQ2d 1481 (Fed. Cir.<br />

1990)。<br />

284


2165.01 最 良 の 態 様 に 関 連 した 考 慮 事 項<br />

I. 発 明 が 何 かを 判 断 する<br />

発 明 が 何 かを 判 断 する― 発 明 はクレームに 定 義 される。 明 細 書 は 発 明 の 本 質 と 関 連 しない 詳<br />

細 事 項 を 明 記 する 必 要 はない。In re Bosy, 360 F.2d 972, 149 USPQ 789 (CCPA 1966)。 同<br />

じく 参 照 として、Northern Telecom Ltd. v. Samsung Electronics Co., 215 F.3d 1281, 55<br />

USPQ2d 1065 (Fed. Cir. 2000)。(クレームされた 発 明 の 作 動 とは 関 係 ないクレームされてい<br />

ない 事 項 は、 最 良 実 施 態 様 要 件 を 誘 発 しない);Eli Lilly & Co. v. Barr Laboratories Inc.,<br />

251 F.3d 955, 966, 58 USPQ2d 1865, 1877 (Fed. Cir. 2001)(「 特 許 権 者 が、 日 常 的 詳 細 事<br />

項 を 達 成 するための、クレームされていない 好 適 な 態 様 の 開 示 を 履 行 しなくても、 当 業 者 は<br />

クレームされた 発 明 の 最 良 の 態 様 をなお 生 成 する 日 常 的 詳 細 事 項 を 達 成 するための 代 替 手 段<br />

を 知 っていることから、 最 良 実 施 態 様 要 件 の 違 反 とはならない。)<br />

II. 具 体 的 な 実 施 例 は 要 求 されない<br />

具 体 的 な 実 施 例 の 開 示 に 対 する 法 的 要 件 はない。 特 許 明 細 書 が 製 造 仕 様 書 となることは 意 図<br />

されておらず、 必 要 ともされていない。In re Gay, 309 F.2d 768, 135 USPQ 311 (CCPA 1962)。<br />

具 体 的 な 実 施 例 が 存 在 しないからといって 必 ずしも、 最 良 の 態 様 が 開 示 されなかったことの<br />

証 拠 とはならず、 若 しくは、 存 在 するからといって、 開 示 されたことの 証 拠 とはならない。<br />

最 良 の 態 様 は 条 件 の 好 適 な 範 囲 又 は 反 応 物 質 の 群 によって 表 されてもよい。In re Honn, 364<br />

F.2d 454, 150 USPQ 652 (CCPA 1966)。<br />

III. 最 良 の 態 様 と 指 示 することは 要 求 されない<br />

本 法 律 には、 出 願 人 が、いずれの 実 施 形 態 が 最 良 であると 考 えるかを 指 摘 する 要 件 はない。<br />

法 定 要 件 を 満 たすには、 開 示 が 出 願 人 が 考 える 最 良 の 態 様 を 含 むことで 十 分 である。<br />

Ernsthausen v. Nakayama, 1 USPQ2d 1539 (Bd. Pat. App. & Inter. 1985)。<br />

IV. 最 良 の 態 様 を 更 新 することは 要 求 されない<br />

特 許 法 第 119 条 に 基 づく 外 国 優 先 権 出 願 、Standard Oil Co. v. Montedison, S.p.A., 494<br />

F.Supp. 370, 206 USPQ 676 (D.Del. 1980) (イタリア 優 先 日 と 米 国 出 願 日 との 間 に 開 発 され<br />

た 改 良 された 触 媒 )、 及 び、 特 許 法 第 120 条 に 基 づく 先 願 日 の 利 益 を 主 張 する 継 続 出 願 、<br />

Transco Products, Inc. v. Performance Contracting Inc., 38 F.3d 551, 32 USPQ2d 1077<br />

(Fed. Cir. 1994) ( 旧 特 許 規 則 第 1.60 条 による 継 続 に 基 づく);Sylgab Steel and Wire Corp.<br />

v. Imoco-Gateway Corp., 357 F.Supp. 657, 178 USPQ 22 (N.D. Ill. 1973) ( 継 続 );<br />

Johns-Manville Corp. v. Guardian Industries Corp., 586 F.Supp. 1034, 221 USPQ 319 (E.D.<br />

Mich. 1983) ( 継 続 及 び CIP)に 関 連 した 更 新 の 要 件 はない。 最 後 に 引 用 した 事 例 では、 裁 判<br />

所 は、 改 良 が 発 明 の 実 施 の 成 功 のために 本 質 的 であり、 且 つ、 親 出 願 に 存 在 しなかった CIP<br />

の 補 正 に 関 連 しているならば、 出 願 人 は、 当 該 更 新 された 改 良 を 開 示 しなければならなかっ<br />

たであろうことを 述 べた。Carter-Wallace, Inc. v. Riverton Labs., Inc., 433 F.2d 1034,<br />

167 USPQ 656 (2d Cir. 1970)では、 裁 判 所 は、 出 願 人 が CIP 出 願 の 提 出 時 に 最 良 の 態 様 を 更<br />

新 するはずであると 推 定 したが、そう 決 定 はしなかった。<br />

285


V. 最 良 の 態 様 における 瑕 疵 は 新 規 事 項 によっては 是 正 できない<br />

出 願 の 提 出 時 に 発 明 者 によって 予 想 される 最 良 の 態 様 が 開 示 されないならば、かかる 瑕 疵 は、<br />

特 許 出 願 の 提 出 時 に 明 細 書 中 に 存 在 するべきものの 明 細 書 への 追 加 を 求 める 修 正 を 提 出 する<br />

ことによっては、 是 正 できない。In re Hay, 534 F.2d 917, 189 USPQ 790 (CCPA 1976)。<br />

( 出 願 時 の 願 書 に 記 載 されなかった 発 明 を 実 施 する 特 定 の 態 様 を 追 加 する) 提 案 されたこの 種<br />

のあらゆる 補 正 は 新 規 事 項 として 取 り 扱 われるべきである。 特 許 法 第 132 条 及 び 第 251 条 に<br />

基 づく 新 規 事 項 は 異 議 申 し 立 てされ、 新 規 事 項 を 取 り 消 す 要 件 と 結 び 付 けられるべきである。<br />

2165.02 実 施 可 能 性 要 件 と 比 較 した 最 良 実 施 態 様 要 件<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 性 要 件 とは 別 であり、 且 つ、 区 別<br />

可 能 な 要 件 である。In re Newton, 414 F.2d 1400, 163 USPQ 34 (CCPA 1969)。<br />

特 許 法 第 112 条 の 最 良 の 態 様 の 規 定 は、 出 願 におけるいかなる 態 様 の 明 記 の 不 履 行 状 況 も 対<br />

象 としていない。かかる 不 履 行 は 実 施 可 能 でないことに 相 当 する。In re Glass, 492 F.2d 1228,<br />

181 USPQ 31 (CCPA 1974)。<br />

実 施 可 能 性 要 件 は、クレームの 保 護 対 象 を 公 衆 が 一 般 に 手 に 入 るようにすることに 目 を 向 け<br />

ている。ただし、 出 願 人 が、 出 願 時 に 発 明 を 実 施 する 最 良 の 方 法 と 自 己 が 認 識 する 特 定 の 手<br />

段 又 は 技 術 を 開 発 した 場 合 は、 最 良 実 施 態 様 要 件 は 当 該 情 報 も 同 様 に 公 衆 に 開 示 する 義 務 を<br />

課 す。Spectra-Physics, Inc. v. Coherent, Inc., 827 F.2d 1524, 3 USPQ 2d 1737 (Fed. Cir.),<br />

cert. denied, 484 U.S. 954 (1987)。<br />

2165.03 最 良 実 施 態 様 要 件 の 欠 如 による 拒 絶 の 要 件<br />

反 証 がない 限 り 最 良 の 態 様 が 開 示 されると 想 定 する<br />

審 査 官 は、 矛 盾 する 証 拠 が 提 示 されない 限 り、 出 願 には 最 良 の 態 様 が 開 示 されていると 想 定<br />

するべきである。 査 定 系 手 続 きにおいて 最 良 の 態 様 による 拒 絶 が 適 切 に 行 われることはきわ<br />

めてまれである。 最 良 の 態 様 の 明 記 の 不 履 行 による 拒 絶 の 根 拠 を 形 成 するために 必 要 な 情 報<br />

は、 審 査 官 にとって、めったに 入 手 可 能 でないが、 一 般 には、インターフェアレンス、 訴 訟 ,<br />

又 は 他 の 当 事 者 系 手 続 きにおける 証 拠 開 示 手 続 中 に 明 らかにされる。<br />

審 査 官 は、 発 明 者 が 一 つの 態 様 が 別 の 態 様 より 優 れていることを 知 っていたことをかどうか、<br />

もしそうであれば、 開 示 が、 当 業 者 による 最 良 の 態 様 の 実 施 を 可 能 にするのに 十 分 であるか<br />

どうかを 判 断 しなければならない<br />

Chemcast Corp. v. Arco Industries, 913 F.2d 923, 16 USPQ2d 1033 (Fed. Cir. 1990)に<br />

おいて 裁 判 所 によって 使 用 された 手 法 によると、 適 切 な 最 良 の 態 様 の 解 析 は 2 つの 構 成 要 素<br />

を 有 する。<br />

(A) 発 明 者 が、 出 願 時 点 で、 自 己 があらゆる 他 の 態 様 よりも 優 れていると 考 えていた、クレ<br />

ームされた 発 明 を 実 施 する 態 様 を 知 っていたかどうかを 判 断 する。<br />

第 一 の 構 成 要 素 は、 出 願 時 点 の 発 明 者 の 心 の 状 態 に 焦 点 を 合 わせているので、 主 観 的 な 質 問<br />

である。 審 査 官 が、 発 明 者 が<br />

(1) 出 願 時 点 に<br />

(2) ある 態 様 が、 発 明 者 によってあらゆる 他 の 態 様 よりも 優 れていると 考 えられていた 旨 の<br />

情 報 を 所 有 していた 証 拠 を 持 っていない 限 り、 第 二 の 構 成 要 素 に 対 処 する 理 由 はなく、 且 つ、<br />

286


最 良 の 態 様 による 拒 絶 のための 適 切 な 理 由 はない。 事 実 が 第 一 の 構 成 要 素 を 満 たすならば、<br />

その 時 に 初 めて、 次 に 掲 げる 第 二 の 構 成 要 素 が 解 析 される。<br />

(B) (A)で 既 知 であったものを 開 示 されたものと 比 較 する。 当 該 開 示 は、 当 業 者 が 最 良 の 態 様<br />

を 実 施 するのを 可 能 にするのに 十 分 であるか?<br />

開 示 のこの 点 における 妥 当 性 を 評 価 することは、 当 業 者 における 技 術 水 準 に 依 存 した 概 ね 主<br />

観 的 な 質 問 である。 明 細 書 の 開 示 に 含 まれる 情 報 は 当 業 者 の 最 良 の 態 様 の 製 造 及 び 使 用 を 実<br />

施 可 能 にするのに 十 分 であるか?<br />

最 良 の 態 様 による 拒 絶 が 適 切 であるのは、 第 一 の 質 問 に 肯 定 の 回 答 ができ、 且 つ、 第 二 の 質<br />

問 に、 最 良 の 態 様 に 関 して 当 該 明 細 書 が 実 施 可 能 でないとの 結 論 を 裏 付 ける 理 由 とともに 否<br />

定 回 答 されるときのみである。<br />

2165.04 隠 蔽 の 証 拠 の 例<br />

最 良 の 態 様 の 開 示 の 妥 当 性 を 判 断 する 際 には、( 偶 発 的 又 は 意 図 的 な) 隠 蔽 の 証 拠 のみが 考 慮<br />

されるものとする。 当 該 証 拠 は、 出 願 人 の 最 良 の 態 様 の 開 示 の 質 が 非 常 に 低 かったため 実 質<br />

的 に 隠 蔽 に 至 ったことを 証 明 する 傾 向 がなければならない。<br />

I. 例 ― 最 良 実 施 態 様 要 件 が 満 たされる<br />

一 事 例 において、 発 明 者 が、 最 良 と 考 えられる 態 様 に 関 して 開 示 された( 既 知 のコンピュータ<br />

プログラム)よりも 多 くの 情 報 を 所 有 していた 場 合 であっても、 明 細 書 は、 実 動 可 能 なデジタ<br />

ルコンピュータプログラムの 生 産 のための 日 常 的 技 術 の 応 用 のみを 要 する 態 様 で、 最 良 の 態<br />

様 を 説 明 していると 判 示 された。In re Sherwood, 613 F.2d 809, 204 USPQ 537 (CCPA 1980)。<br />

別 の 事 例 では、クレームされた 保 護 対 象 は 時 間 制 御 型 温 度 自 動 調 節 器 であったが、 出 願 は 商<br />

業 的 実 施 形 態 において 使 用 された 特 定 の Quartzmatic モータを 開 示 しなかった。 裁 判 所 は、<br />

類 似 の 時 計 用 モータが 広 く 利 用 可 能 であり、 且 つ、 広 く 宣 伝 されていたことから、 商 業 的 な<br />

モータの 開 示 の 不 履 行 は 隠 蔽 に 相 当 しなかったと 結 論 づけた。 価 格 における 可 能 性 を 除 き、<br />

この 特 定 の Quartzmatic モータが 優 れていたことの 証 拠 はなかった。Honeywell v. Diamond,<br />

208 USPQ 452 (D.D.C. 1980)。<br />

たとえ、 発 明 者 が、 自 己 が 使 用 したプラスティック 棒 の 伸 び 率 を 計 算 する 唯 一 の 態 様 を 開 示<br />

しなかった 場 合 であっても、 当 該 態 様 は 出 願 時 点 で 当 業 者 によって 採 用 されたであろうから、<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 の 違 反 はないと 判 示 された。W.L. Gore & Assoc., Inc. v. Garlock Inc.,<br />

721 F.2d 1540, 220 USPQ 303 (Fed. Cir. 1983)。<br />

特 許 権 者 が、クレームされた 発 明 を 実 施 するための「 既 知 の 作 動 を 実 行 する 既 知 の 方 法 」を<br />

明 細 書 に 開 示 しなかった 場 合 は、 最 良 態 様 の 違 反 はなかった。「 既 知 の 作 動 を 実 行 する 既 知<br />

の 方 法 は、 当 該 情 報 を 故 意 に 差 し 控 える 意 図 の 証 拠 がなければ、 意 図 的 に 隠 蔽 されたとはみ<br />

なすことができない。」High Concrete Structures Inc. v. New Enter. Stone & Lime Co.,<br />

377 F.3d 1379, 1384, 71 USPQ2d 1948, 1951 (Fed. Cir. 2004)。フレームを 搭 載 し 傾 斜 さ<br />

せる 方 法 を 実 施 するために 特 許 付 与 されたフレームを 支 持 するクレーンの 使 用 の 明 細 書 への<br />

開 示 の 非 意 図 的 な 不 履 行 は、 当 業 者 は、 重 い 荷 重 を 移 動 させるためにクレーンを 認 識 し 且 つ<br />

使 用 するであろうから、 最 良 実 施 態 様 要 件 に 違 反 しないと 判 示 された。「[ 特 許 法 ] 第 112<br />

条 の 最 良 実 施 態 様 要 件 は、 発 明 の 分 野 における 当 業 者 にとって 容 易 に 知 っていたであろう 情<br />

報 の 非 意 図 的 な 省 略 によっては 違 反 とならない。」 同 文 献 。<br />

287


発 明 者 が 使 用 したモノクロナール 抗 体 が、 明 細 書 に 記 載 されたプロセスに 従 って 取 得 可 能 な<br />

ものとは 異 なっていたことの 証 拠 がなかった 場 合 は、 最 良 態 様 の 違 反 はなかった。 発 明 者 が<br />

発 明 に 使 用 した 抗 体 を 明 細 書 の 手 順 に 従 って 取 得 したこと、これら 手 順 が 発 明 者 の 好 適 な 手<br />

順 であったこと、ならびに、 明 細 書 に 報 告 されたデータが 発 明 者 が 実 際 に 使 用 した 抗 体 のデ<br />

ータであったことは、 争 点 とはならなかった。Scripps Clinic and Research Foundation v.<br />

Genentech, Inc., 927 F.2d 1565, 18 USPQ 2d 1001 (Fed. Cir. 1991)。<br />

ある 有 機 体 が、 遺 伝 物 質 の 一 般 利 用 可 能 な 供 給 源 から 取 得 した 細 胞 への 挿 入 によって 作 成 さ<br />

れる 場 合 、 最 良 実 施 態 様 要 件 を 満 たすために 要 求 されたのは、 発 明 を 実 施 する 手 段 の 十 分 な<br />

説 明 のみであって、 細 胞 の 寄 託 ではなかった。 出 願 人 により 使 用 された 細 胞 をいかなる 科 学<br />

者 もこれまで 正 確 に 複 製 できなかったであろうとの 所 見 に 関 して、 裁 判 所 は、 開 示 が 十 分 で<br />

あるかどうかが 問 題 であって、 正 確 な 複 製 が 必 要 であることが 問 題 ではないと 述 べた。Amgen,<br />

Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200, 18 USPQ 2d 1016 (Fed. Cir. 1991)。<br />

各 類 似 体 は「 少 なくとも 一 つの 当 該 薬 理 学 的 目 的 に 対 して・・・ 対 応 するプロスタグランジンの<br />

うち 一 つよりも、 驚 くほど 且 つ 意 外 に 有 用 性 にすぐれている」との 明 細 書 中 の 開 示 から 隠 蔽<br />

が 推 測 されうることを、 法 務 官 が 主 張 した 場 合 において、 最 良 実 施 態 様 要 件 の 違 反 ではない<br />

との 判 示 があった。 請 求 人 は、 当 該 陳 述 を 立 証 する 試 験 結 果 を 持 っていたはずであり、 且 つ、<br />

当 該 データは 開 示 されるべきであったと 主 張 された。 裁 判 所 は、これら 新 規 類 似 体 の 高 い 感<br />

度 及 びより 狭 いスペクトルの 効 力 のについての 一 般 的 陳 述 、 類 似 体 の 初 歩 的 薬 理 学 試 験 から<br />

導 き 出 されうる 諸 結 論 からは、いかなる 差 し 控 えも 推 測 されないであろうと 結 論 づけた。In<br />

re Bundy, 642 F.2d 430, 435, 209 USPQ 48, 52 (CCPA 1981)。<br />

II. 例 ― 最 良 実 施 態 様 要 件 が 満 たされない<br />

レーザーの 発 明 者 が、 先 行 技 術 に 含 まれておらず、 且 つ、 文 献 に 含 まれる TiCuSil の 使 用 基<br />

準 に 反 する、 自 己 の 好 適 な TiCuSil ろう 付 け 方 法 の 詳 細 の 開 示 を 履 行 しなかった 場 合 には、<br />

最 良 実 施 態 様 要 件 に 違 反 したと 判 示 された。Spectra-Physics, Inc. v. Coherent, Inc., 827<br />

F.2d 1524, 3 USPQ 2d 1737 (Fed. Cir. 1987)。<br />

処 理 を 行 う 方 法 自 体 が 当 業 者 では 既 知 であったものの、 発 明 者 が、 自 己 の 発 明 の 満 足 な 実 施<br />

に 必 要 であることを 知 っていた 特 定 の 表 面 処 理 を 使 用 するかどうかの 開 示 を 怠 ったので、 最<br />

良 実 施 態 様 要 件 に 違 反 した。 最 良 実 施 態 様 要 件 は、 先 行 技 術 において 既 知 であったものを 参<br />

照 するだけで 満 たされうるという 主 張 は、 誤 っているとして 拒 絶 された。Dana Corp. v. IPC<br />

Ltd. Partnership, 860 F.2d 415, 8 USPQ2d 1692 (Fed. Cir. 1988)。<br />

288


2171 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 2 つの 別 要 件<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 はクレームに 対 する 要 件 を 対 象 としている。<br />

明 細 書 は、 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 える 保 護 対 象 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 にクレー<br />

ムする 一 以 上 のクレームで 終 わらなければならない。<br />

本 段 落 において 規 定 される 2 つの 別 個 の 要 件 がある。<br />

(A) クレームは、 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 える 保 護 対 象 を 明 記 しなければならない、<br />

且 つ<br />

(B) クレームは、 特 許 付 与 によって 保 護 される 保 護 対 象 の 境 界 及 び 限 界 を 特 定 的 に 指 示 し、<br />

且 つ 明 確 に 定 義 しなければならない。<br />

第 一 の 要 件 は、ある 特 許 について 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 えるものに 依 存 しているの<br />

で 主 観 的 要 件 である。 第 二 の 要 件 は、 出 願 人 又 はいかなる 特 定 個 人 の 見 解 にも 依 存 しておら<br />

ず、 当 該 クレームが 明 瞭 であるか、 即 ち、クレームの 範 囲 が 関 連 技 術 において 通 常 技 術 レベ<br />

ルを 有 する 仮 想 の 者 にとって 明 確 であるかどうかの 文 脈 で 評 価 されることから、 客 観 的 要 件<br />

である。<br />

審 査 過 程 の 一 つの 本 質 的 目 的 は、クレームが、 先 行 技 術 に 対 する 新 規 性 及 び 非 自 明 性 がある<br />

発 明 を 定 義 しているかどうかを 判 断 することであるものの、 特 許 審 査 のもう 一 つの 本 質 的 目<br />

的 は、クレームが 正 確 、 明 確 で、 誤 りがなく、 且 つ 一 義 的 であるかどうかを 判 断 することで<br />

ある。 審 査 過 程 において、クレーム 範 囲 の 不 確 実 性 はできる 限 り 排 除 されなければならない。<br />

審 査 時 の 質 問 は、 出 願 人 が 発 明 であると 考 える 発 明 の 特 許 性 である。クレームが、 出 願 人 が<br />

いずれを 自 己 の 発 明 であると 考 えるかを 特 定 的 に 指 示 し、 且 つ 明 確 に 定 義 していなければ、<br />

審 査 官 による 適 切 な 措 置 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づきクレームを 拒 絶 することであ<br />

る。In re Zletz, 893 F.2d 319, 13 USPQ2d 1320 (Fed. Cir. 1989)。 拒 絶 が 特 許 法 第 112<br />

条 第 2 段 落 に 基 づくならば、 審 査 官 は 拒 絶 が 不 明 瞭 性 に 基 づくのか、 又 は、 出 願 人 が 自 己 の<br />

発 明 であると 考 えるものをクレームするのを 怠 ったことに 基 づくのかをさらに 説 明 するべき<br />

である。Ex parte Ionescu, 222 USPQ 537, 539 (Bd. App. 1984)。<br />

289


2172 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 える 保 護 対 象<br />

I. 審 査 の 焦 点<br />

この 要 件 を 満 たすことを 怠 ったことにに 基 づく 拒 絶 は、 出 願 人 が 出 願 時 の 願 書 以 外 のどこか<br />

で、 発 明 が、クレームにより 定 義 されるものとは 異 なるものであることを 陳 述 した 場 合 にの<br />

み 適 切 である。 即 ち、 反 証 のない 場 合 には、クレームに 明 記 された 発 明 は、 出 願 人 が 自 己 の<br />

発 明 であると 考 えるものであると 推 定 されなければならない。In re Moore, 439 F.2d 1232,<br />

169 USPQ 236 (CCPA 1971)。<br />

II. 反 証<br />

クレームが、 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 えるものの 範 囲 と 対 応 しないことを 証 明 する 証<br />

拠 は、 例 えば、 出 願 人 により 提 出 された 理 由 書 又 は 意 見 書 に 含 まれる 主 張 又 は 自 白 Solomon v.<br />

Kimberly-Clark Corp., 216 F.3d 1372, 55 USPQ2d 1279 (Fed. Cir. 2000);In re Prater,<br />

415 F.2d 1393, 162 USPQ 541 (CCPA 1969)、 又 は、 特 許 規 則 第 1.132 条 に 基 づく 宣 誓 供 述 書<br />

In re Cormany, 476 F.2d 998, 177 USPQ 450 (CCPA 1973)に 見 いだされうる。 出 願 人 の 明 細<br />

書 の 内 容 は、クレーム 範 囲 が 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 える 保 護 対 象 と 一 貫 していない<br />

ことの 証 拠 としては 使 用 されない。In re Ehrreich, 590 F.2d 902, 200 USPQ 504 (CCPA 1979)<br />

に 参 照 されるとおり、クレームと 明 細 書 との 一 致 又 は 一 致 の 欠 如 は 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落<br />

に 関 してのみ 適 切 に 考 慮 される。 当 条 第 2 段 落 への 適 合 とは 無 関 係 である。<br />

III. 許 可 されるクレームの 移 行<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 は、 出 願 人 が 自 己 の 発 明 であると 考 えるものを 出 願 係 属 中 に 変 更 す<br />

ることを 禁 止 していない。In re Saunders, 444 F.2d 599, 170 USPQ 213 (CCPA 1971)( 出 願<br />

人 は、 当 初 は( 方 法 を 対 象 とした)より 広 いクレームにおける 好 適 な 実 施 形 態 にすぎなかった、<br />

クレームされた 保 護 対 象 に 対 する 比 較 証 拠 を 主 張 及 び 提 出 することが 許 可 された。) 継 続 出 願<br />

中 のクレームが、 親 出 願 の 出 願 時 に 出 願 人 が 自 己 の 発 明 の 一 部 であるとは 考 えなかった、 当<br />

初 開 示 された 保 護 対 象 を 対 象 としたということは、 当 該 継 続 出 願 が 特 許 法 第 120 条 による 親<br />

出 願 の 出 願 日 の 利 益 を 受 けることを 妨 げないと 判 示 された。In re Brower, 433 F.2d 813, 167<br />

USPQ 684 (CCPA 1970)。<br />

2172.01 クレームされていない 本 質 的 事 項<br />

明 細 書 又 は 他 の 記 録 陳 述 書 に 発 明 にとって 本 質 的 であると 開 示 された 事 項 を 省 略 するクレー<br />

ムは、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づき 実 施 可 能 でないとして 拒 絶 されうる。In re Mayhew,<br />

527 F.2d 1229, 188 USPQ 356 (CCPA 1976)。 同 じく 参 照 として、MPEP 第 2164.08 条 (c)。か<br />

かる 本 質 的 事 項 には、 発 明 を 実 施 するために 必 要 であると 出 願 人 によって 記 載 された 欠 落 し<br />

た 要 素 、 工 程 、 又 は、 要 素 の 必 要 な 構 造 的 協 同 関 係 が 含 まれうる。<br />

加 えて、 明 細 書 中 に 出 願 人 により 定 義 された 発 明 の 本 質 的 要 素 を 相 互 に 関 連 付 けることを 怠<br />

ったクレームは、 発 明 を 指 示 し、 且 つ 明 確 に 主 張 することを 怠 ったことを 理 由 に 特 許 法 第 112<br />

条 第 2 段 落 により 拒 絶 されうる。 参 照 として、In re Venezia, 530 F.2d 956, 189 USPQ 149<br />

(CCPA 1976);In re Collier, 397 F.2d 1003, 158 USPQ 266 (CCPA 1968)。ただし、 参 照 と<br />

して、Ex parte Nolden, 149 USPQ 378, 380 (Bd. Pat. App. 1965) (「クレームされた 装 置<br />

の 要 素 間 に 相 互 依 存 性 があること、 又 は、すべての 要 素 が 所 望 の 結 果 に 向 かって 同 時 に 作 動<br />

290


することは、 特 許 可 能 な 組 み 合 わせにとって 本 質 的 ではない。」);Ex parte Huber, 148 USPQ<br />

447, 448-49 (Bd. Pat. App. 1965)( 様 々な 構 成 要 素 が、 同 時 に 機 能 しない、 機 能 的 に 直 接 関<br />

連 しない、 直 接 相 互 協 働 しない 及 び/ 又 は 独 立 した 目 的 に 資 している 場 合 は、クレームは 特<br />

許 法 第 112 条 第 2 段 落 への 適 合 を 必 ずしも 怠 っていない。)。<br />

291


2173 クレームは 発 明 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 に 主 張 しなければならない<br />

クレーム 文 言 の 明 瞭 性 の 本 要 件 の 一 次 的 な 目 的 は、 公 衆 が 特 許 侵 害 を 構 成 するものの 境 界 を<br />

知 らされる 程 度 に、クレーム 範 囲 が 明 確 であることを 保 証 することである。 二 次 的 な 目 的 は、<br />

クレームされた 発 明 がすべての 特 許 性 の 基 準 を 満 たすかどうか、 及 び、クレームされた 発 明<br />

に 関 して、 明 細 書 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 基 準 を 満 たすかどうかを 判 断 できる 程 度 に、<br />

出 願 人 が 発 明 であると 考 えるものの 明 確 な 基 準 を 提 示 することである。<br />

2173.01 クレーム 用 語<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 含 まれる 基 本 原 理 は、 出 願 人 は 自 己 の 辞 書 の 編 纂 者 であるという<br />

ことである。 出 願 人 は、 自 己 の 発 明 であると 考 えるものを、 用 語 に 割 り 当 てられたあらゆる<br />

特 別 な 意 味 が 明 細 書 に 明 確 に 明 記 されている 限 り、 自 己 が 選 択 する 実 質 的 にあらゆる 用 語 で、<br />

クレーム 中 に 定 義 することができる。 参 照 として、MPEP 第 2111.01 条 。 出 願 人 は、 保 護 を 求<br />

める 保 護 対 象 の 境 界 を 明 確 にする 機 能 的 文 言 、 代 替 表 現 、 否 定 的 限 定 、 又 は、あらゆる 形 の<br />

クレームの 表 現 又 は 形 式 を 使 用 してもよい。In re Swinehart, 439 F.2d 210, 160 USPQ 226<br />

(CCPA 1971)において 裁 判 所 が 指 摘 したように、クレームは、 特 許 保 護 を 求 める 保 護 対 象 を 定<br />

義 するために 使 用 される 文 言 の 種 類 のみを 理 由 として 拒 絶 されてはならない。<br />

2173.02 明 確 性 及 び 正 確 性<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 明 瞭 性 要 件 への 適 合 に 関 するクレームの 審 査 時 に 審 査 官 が 焦 点 を<br />

当 てることは、クレームが 明 確 性 及 び 正 確 性 の 閾 値 要 件 を 満 たすかどうかであって、より 適<br />

した 文 言 又 は 表 現 様 式 が 利 用 可 能 であるかどうかではない。 審 査 官 が 特 許 可 能 な 保 護 対 象 が<br />

開 示 されているとの 心 証 を 得 、 且 つ、 審 査 官 にとってクレームがかかる 特 許 可 能 な 保 護 対 象<br />

を 対 象 とすることが 明 白 であるときは、 審 査 官 は、 特 許 可 能 な 保 護 対 象 を 合 理 的 な 程 度 の 特<br />

定 性 及 び 識 別 性 を 備 えて 定 義 するクレームを 許 可 するべきである。 当 該 クレーム 文 言 が 審 査<br />

官 が 所 望 する 程 度 には 正 確 でなかったとしても、 表 現 方 法 及 び 用 語 の 適 切 さには 一 定 の 自 由<br />

度 が 許 可 されるべきである。 審 査 官 は、 使 用 される 文 言 の 明 確 性 又 は 正 確 性 を 高 めるために<br />

出 願 人 に 対 してクレーム 文 言 を 示 唆 することが 奨 励 されているが、 出 願 人 により 選 択 された<br />

他 の 表 現 様 式 が 法 的 要 件 を 満 たしているならば、クレームを 拒 絶 したり、 又 は、 自 己 の 嗜 好<br />

を 主 張 したりするべきではない。<br />

本 要 件 に 関 する 本 質 的 な 質 問 は、クレームが 合 理 的 な 程 度 の 明 確 性 及 び 特 定 性 をもって 特 定<br />

の 保 護 対 象 を 定 め、 且 つ、 制 限 しているかどうかである。クレーム 文 言 の 明 瞭 性 は、 次 に 掲<br />

げる 事 項 と 切 り 離 さずに、むしろそれに 照 らして 解 析 されなければならない。<br />

(A) 特 定 の 出 願 開 示 の 内 容<br />

(B) 先 行 技 術 の 教 示 、 及 び<br />

(C) 発 明 がなされた 時 点 において、 関 連 技 術 において 通 常 レベルの 技 術 を 有 する 者 によってな<br />

されるであろうクレーム 解 釈 。<br />

クレームの 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 への 適 合 を 審 査 する 際 には、 審 査 官 は、クレームを 全 体<br />

として 考 慮 して、 当 該 クレームが、 当 業 者 にクレームの 範 囲 を 知 らせており、それ 故 、 特 許<br />

侵 害 を 構 成 するものに 関 して 他 者 に 明 確 な 警 告 を 提 示 することにより、 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 によって 求 められる 通 知 機 能 を 果 たしているかどうかを 判 断 しなければならない。 参 照<br />

として、 例 えば Solomon v. Kimberly-Clark Corp., 216 F.3d 1372, 1379, 55 USPQ2d 1279,<br />

292


1283 (Fed. Cir. 2000)。 同 じく 参 照 として、In re Larsen, No. 01-1092 (Fed. Cir. May 9,<br />

2001)( 未 公 表 )(Larsen のクレームの 前 提 部 分 はハンガーとループのみを 記 載 しているが、ク<br />

レームの 本 体 部 は 直 線 部 材 を 肯 定 的 に 記 載 した。 裁 判 所 は、 発 明 者 の 当 該 技 術 への 貢 献 を 確<br />

定 するために、クレームのすべての 限 定 事 項 の 全 体 性 及 びそれら 限 定 事 項 の 相 互 関 係 が 考 慮<br />

されなければならないと 意 見 を 述 べた。クレームを 全 体 として 審 査 したうえで、 裁 判 所 は、<br />

争 点 のクレームは 当 業 者 にクレーム 範 囲 を 知 らせており、それ 故 、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落<br />

によって 求 められる 通 知 機 能 を 果 たしていると 結 論 づけた。) 同 じく 参 照 として、Metabolite<br />

Labs., Inc. v. Lab. Corp. of Am. Holdings, 370 F.3d 1354, 1366, 71 USPQ2d 1081, 1089<br />

(Fed. Cir. 2004)(「『 明 確 に』 主 張 する 要 件 とは、クレームが、 誤 りのない 原 理 によって 解<br />

釈 されたときには 当 業 者 にとって 識 別 可 能 な 意 味 を 持 たねばならないことをいう。・・・ 解 釈 時<br />

に 合 理 的 なすべてを 試 みた 後 でもクレームが 識 別 可 能 な 意 味 を 持 たず、 解 明 不 能 に 不 明 瞭 な<br />

ままであるときにのみ、 裁 判 所 は、 当 該 クレームを 不 明 瞭 であると 宣 言 する。」)。<br />

従 って、 明 細 書 中 に 使 用 若 しくは 定 義 されていないクレーム 用 語 は、クレーム 用 語 の 意 味 が<br />

識 別 可 能 ならば、 不 明 瞭 ではない。Bancorp Services, L.L.C. v. Hartford Life Ins. Co.,<br />

359 F.3d 1367, 1372, 69 USPQ2d 1996, 1999-2000 (Fed. Cir. 2004)( 明 細 書 に 定 義 若 しく<br />

は 使 用 されなかった 争 点 のクレーム 用 語 「 解 約 払 戻 金 で 保 護 された 信 用 出 資 」は 識 別 可 能 で<br />

あり、それ 故 「 用 語 の 構 成 要 素 は 良 く 認 識 された 意 味 を 有 しており、このことによって、 読<br />

者 は、 語 句 全 体 の 意 味 を 合 理 的 な 自 信 をもって 推 測 できる」ことを 理 由 に 不 明 瞭 ではないと<br />

判 示 )。<br />

クレームの 文 言 が、 当 業 者 が 侵 害 を 回 避 する 方 法 を 認 識 できる 程 度 にクレームの 境 界 及 び 限<br />

界 を 解 釈 できないであろう 場 合 には、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によるクレームの 拒 絶 は 適 切<br />

であろう。 参 照 として、Morton Int’l, Inc. v. Cardinal Chem. Co., 5 F.3d 1464, 1470,<br />

28 USPQ2d 1190, 1195 (Fed. Cir. 1993)。ただし、 出 願 人 により 使 用 された 文 言 が 特 許 法 第<br />

112 条 第 2 段 落 の 法 的 要 件 を 満 たすが、 審 査 官 が 出 願 人 に 対 して 使 用 した 文 言 の 明 確 性 又 は<br />

正 確 性 の 改 善 を 単 に 所 望 するだけならば、クレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づいて 拒<br />

絶 されてはならず、むしろ 審 査 官 は、より 良 い 文 言 を 出 願 人 に 示 唆 するべきである。<br />

例 えば、あるクレームが「 濾 過 対 象 の 汚 染 液 の 濾 液 といった 適 切 な 液 体 、および、 包 晶 、セ<br />

ルロース 粉 末 、 等 といった 濾 過 剤 の 固 体 」と 記 載 している。クレーム 中 における 語 句 「とい<br />

った」の 使 用 はそれ 自 体 ではそのクレームを 不 明 瞭 とはしない。 本 庁 の 方 針 は、 技 術 的 な 拒<br />

絶 のための 規 則 それ 自 体 を 採 用 しないことである。 不 明 瞭 であると 判 示 された MPEP 第<br />

2173.05(d) 条 に 規 定 されたクレーム 文 言 の 例 は、 事 実 特 定 的 であり、それ 自 体 で 規 則 として<br />

運 用 されるべきではない。 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 明 瞭 性 の 基 準 は「クレームを 明<br />

細 書 に 照 らして 読 んだときに 当 業 者 がクレームされているものを 認 識 するかどうか」である。<br />

Orthokinetics, Inc. v. Safety Travel Chairs, Inc., 806 F.2d 1565, 1576, 1 USPQ2d 1081,<br />

1088 (Fed. Cir. 1986)。 前 述 の 例 において 当 業 者 が 明 細 書 に 照 らして 用 語 「 適 切 な 液 体 」 及<br />

び「 濾 過 剤 の 固 体 」の 意 味 を 確 定 することができるならば、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 は 満 た<br />

される。 審 査 官 がクレームを 全 体 として 明 細 書 に 照 らして 審 査 したうえで、 前 述 の 例 におい<br />

て 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 が 適 切 でないと 判 断 するが、クレーム 中 の 語 句 「とい<br />

った」の 削 除 により 文 言 の 明 確 性 及 び 正 確 性 が 改 善 できるとの 意 見 を 持 つならば、 審 査 官 は<br />

出 願 人 に 対 してかかる 示 唆 を 行 ってもよい。 出 願 人 が 審 査 官 の 示 唆 を 受 け 入 れないならば、<br />

審 査 官 はこの 論 点 を 追 求 するべきではない。<br />

293


審 査 官 がクレームを 全 体 として 審 査 したうえで、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 が 適 切<br />

であると 結 論 づけたならば、かかる 拒 絶 がなされるべきであり、 且 つ、クレームに 使 用 され<br />

た( 一 以 上 の) 語 句 が「 曖 昧 且 つ 不 明 瞭 」である 理 由 についての 解 析 が 拒 絶 通 知 に 含 められる<br />

べきである。 出 願 人 が 補 正 の 提 出 の 有 無 にかかわらず 当 該 拒 絶 に 反 論 し、 且 つ、 審 査 官 が 出<br />

願 人 の 意 見 が 説 得 力 があると 考 えるならば、 審 査 官 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 先<br />

の 拒 絶 が 取 り 下 げられたことを 次 の 本 庁 通 知 に 示 し、 且 つ、 何 が 審 査 官 の 立 場 を 変 えるよう<br />

促 したかの 説 明 を 提 示 するべきである( 例 えば 審 査 官 は、 出 願 人 の 意 見 書 における 先 の 拒 絶 が<br />

取 り 下 げられた 根 拠 と 考 える 部 分 を 具 体 的 に 参 照 してもよい)。<br />

審 査 官 が 行 った 通 知 に 関 する 説 明 を 提 示 することによって、 出 願 経 過 記 録 の 明 確 性 が 高 まる<br />

であろう。Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 535 U.S. 722, 122 S.Ct.<br />

1831, 1838, 62 USPQ2d 1705, 1710 (2002)において 最 高 裁 判 所 により 指 摘 されたように、 明<br />

確 且 つ 完 全 な 出 願 経 過 ファイルの 記 録 は「 出 願 経 過 禁 反 言 は、 特 許 のクレームが 出 願 手 続 中<br />

の PTO の 手 続 に 照 らして 解 釈 されることを 要 求 している」という 点 で 重 要 である。Festo に<br />

おいて、 裁 判 所 は、「 特 許 法 のいかなる 要 件 を 満 たすためになされる 減 縮 補 正 も、 禁 反 言 が<br />

生 じうる」と 判 示 した。 裁 判 所 は、 特 許 法 第 112 条 の 要 件 に 適 合 するためになされた 補 正 に<br />

関 して「 第 112 条 補 正 が 真 に 字 面 を 整 えるものであるならば、 当 該 補 正 は、 特 許 範 囲 を 減 縮<br />

する、 若 しくは、 禁 反 言 が 生 じることはないであろう。 他 方 、 第 112 条 補 正 が 必 要 であり 且<br />

つ 特 許 範 囲 を 減 縮 するならば、より 良 い 記 載 とすることのみを 目 的 とした 場 合 であっても 禁<br />

反 言 が 適 用 されうる」と 述 べた。Id. at 1840, 62 USPQ2dat 1712。 裁 判 所 はさらに「 裁 判 所<br />

が、 減 縮 補 正 の 根 底 にある 目 的 を 判 断 できず、それ 故 、 禁 反 言 を 特 定 の 均 等 物 の 放 棄 に 限 定<br />

する 理 論 的 根 拠 を 判 断 できない 場 合 は、 裁 判 所 は、 特 許 権 者 は 当 該 広 い 文 言 と 狭 い 文 言 との<br />

間 のすべての 保 護 対 象 を 放 棄 したと 推 定 するべきである。・・・ 特 許 権 者 は、 当 該 補 正 が、 問 題<br />

となる 特 定 の 均 等 物 を 放 棄 しないことを 証 明 する 責 任 を 負 うべきである」と 述 べた。Id.at<br />

1842, 62 USPQ2dat 1713。このように、 審 査 官 は 可 能 な 限 りいつでも、 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 に 関 連 するあらゆる 拒 絶 を 行 う 若 しくは 取 り 下 げるための 明 示 的 論 拠 を 提 示 することに<br />

よって、 記 録 を 明 確 にするべきである。<br />

2173.03 クレームと、 明 細 書 の 開 示 又 は 先 行 技 術 との 矛 盾<br />

クレーム 中 の 用 語 が 一 見 明 瞭 に 見 えても、 明 細 書 の 開 示 又 は 先 行 技 術 の 教 示 との 矛 盾 によっ<br />

て、そうでなければ 明 瞭 なクレームに、 不 合 理 な 程 度 の 不 確 実 性 を 持 たせてしまう 可 能 性 が<br />

ある。In re Cohn, 438 F.2d 989, 169 USPQ 95 (CCPA 1971);In re Hammack, 427 F.2d 1378,<br />

166 USPQ 204 (CCPA 1970)。Cohn においてクレームは、 金 属 的 外 観 が「 不 透 明 な」 外 観 に 変<br />

わるまで 表 面 を 腐 食 液 で 処 理 するプロセスを 対 象 とした。 裁 判 所 は、いかなるクレームもそ<br />

れが 依 拠 する 裏 付 けとなる 開 示 とは 別 に、 且 つ、それとは 独 立 して 読 むことはできないと 指<br />

摘 し、 処 理 後 の 表 面 外 観 に 関 連 して 明 細 書 に 明 記 された 説 明 、 定 義 及 び 実 施 例 が 本 質 的 に 矛<br />

盾 しており、 且 つ、クレームを 不 明 瞭 にしたことを 認 定 した。<br />

2173.04 広 いことは 不 明 瞭 性 ではない<br />

クレームが 広 いことは 不 明 瞭 性 とは 同 じではない。In re Miller, 441 F.2d 689, 169 USPQ 597<br />

(CCPA 1971)。クレームに 包 含 される 保 護 対 象 の 範 囲 が 明 確 ならば、 且 つ、 出 願 人 が、 発 明 が<br />

クレームに 定 義 された 範 囲 とは 異 なる 範 囲 のものであると 自 己 が 意 図 していることを 他 の 方<br />

294


法 で 示 さなかったならば、クレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 している。<br />

クレームが 不 当 に 広 いことは、クレームが 広 すぎると 結 論 づける 理 由 次 第 で、 様 々な 法 規 定<br />

のもとで 取 り 扱 うことができる。 出 願 された 願 書 以 外 の 陳 述 で 証 明 された、 出 願 人 が 自 己 の<br />

発 明 であると 考 えるものをクレームが 明 記 していないことを 理 由 にクレームが 広 すぎるので<br />

あれば、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 が 適 切 であろう。クレームが 出 願 当 初 の 記 載 又<br />

は 実 施 可 能 な 開 示 によって 裏 付 けられていないことを 理 由 にクレームが 広 すぎるのであれば、<br />

特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 による 拒 絶 が 適 切 であろう。クレームが 先 行 技 術 に 抵 触 することを<br />

理 由 に 広 すぎる 場 合 は、 特 許 第 102 条 又 は 第 103 条 のいずれかによる 拒 絶 が 適 切 であろう。<br />

2173.05 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 争 点 に 関 連 した 特 定 の 問 題<br />

次 に 掲 げる 段 落 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 争 点 が 扱 われた 特 定 の 問 題 についての<br />

考 察 に 当 てられている。これらの 段 落 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 のもとで 生 じうる 争 点 の<br />

網 羅 的 一 覧 となることは 意 図 されておらず、 近 年 の 審 査 実 務 において 一 定 頻 度 で 扱 われた 領<br />

域 における 指 針 を 提 示 するよう 意 図 されている。 引 用 された 裁 判 所 及 び 審 判 部 の 決 定 は 代 表<br />

的 なものである。すべての 上 訴 の 決 定 と 同 様 に、 結 果 は 主 として 各 事 例 の 事 実 によって 決 定<br />

される。 同 一 の 文 言 を 異 なる 文 脈 で 使 用 すると、 異 なる 結 果 を 正 当 化 してしまう 可 能 性 があ<br />

る。<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるときに 出 願 人 が 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 に 適 合<br />

したかどうかを 判 断 する 際 の 指 針 は、MPEP 第 2181 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(a) 新 しい 用 語<br />

I. すべての 用 語 の 意 味 は 明 らかでなければならない<br />

クレームに 使 用 されるすべての 用 語 の 意 味 は、 先 行 技 術 又 は 出 願 時 の 明 細 書 及 び 図 面 より 明<br />

らかでなければならない。 出 願 人 は 先 行 技 術 に 使 用 された 用 語 に 限 定 する 必 要 はないが、ク<br />

レームされた 発 明 の 境 界 及 び 限 界 を 確 定 できるよう、 発 明 の 定 義 のために 使 用 される 用 語 を<br />

明 確 且 つ 正 確 にすることが 求 められる。 特 許 審 査 期 間 中 に 係 属 中 のクレームには 明 細 書 と 一<br />

貫 した 最 も 広 い 合 理 的 解 釈 が 与 えられなければならない。In re Morris, 127 F.3d 1048, 1054,<br />

44 USPQ2d 1023, 1027 (Fed. Cir. 1997);In re Prater, 415 F.2d 1393, 162 USPQ 541 (CCPA<br />

1969)。 同 じく 参 照 として、MPEP 第 2111 条 乃 至 第 2111.01 条 。 明 細 書 がクレーム 中 の 用 語 に<br />

持 たせようとしている 意 味 を 表 明 しているときは、その 意 味 を 使 用 して、 出 願 人 の 発 明 及 び<br />

その 先 行 技 術 との 関 係 についての 完 全 な 調 査 を 達 成 するために、クレームが 審 査 される。In<br />

re Zletz, 893 F.2d 319, 13 USPQ2d 1320 (Fed. Cir. 1989)。<br />

II. 明 確 性 及 び 正 確 性 の 要 件 は 文 言 の 限 定 と 均 衡 を 保 たなければならない<br />

裁 判 所 は、 新 しい 発 明 を 記 載 及 び 定 義 するときに、 多 くの 場 合 より 正 確 な 新 しい 用 語 を 使 用<br />

することは、 許 容 されるだけでなく、 多 くの 場 合 望 ましいと 認 識 していた。In re Fisher, 427<br />

F.2d 833, 166 USPQ 18 (CCPA 1970)。 先 行 技 術 には 見 られない 新 しい 用 語 が 使 用 されたとき<br />

にクレームされた 発 明 を 先 行 技 術 と 比 較 することは 困 難 であるものの、この 困 難 性 によって<br />

新 しい 用 語 が 不 明 瞭 になることはない。<br />

新 しい 用 語 は、 多 くの 場 合 、 新 しい 技 術 が 初 期 段 階 にあるか 又 は 急 速 に 進 化 しているときに<br />

使 用 される。 明 確 性 及 び 正 確 性 の 要 件 は 文 言 及 び 科 学 の 限 定 と 均 衡 を 保 っていなければなら<br />

295


ない。 明 細 書 に 照 らして 読 まれたクレームが 発 明 の 用 途 及 び 範 囲 の 両 方 を 当 業 者 に 合 理 的 に<br />

知 らせるならば、 且 つ、 保 護 対 象 が 許 す 程 度 に 文 言 が 正 確 であるならば、それ 以 上 は 法 律 ( 特<br />

許 法 第 112 条 第 2 段 落 )によって 要 求 されない。Shatterproof Glass Corp. v. Libbey Owens<br />

Ford Co., 758 F.2d 613, 225 USPQ 634 (Fed. Cir. 1985) (ガラス 板 の 処 理 を 対 象 とする 方<br />

法 クレーム 中 の「 自 由 に 保 持 する」の 解 釈 );Hybritech, Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc.,<br />

802 F.2d 1367, 231 USPQ 81 (Fed. Cir. 1986) ( 出 願 時 に 当 業 者 において 計 算 方 法 が 不 正 確<br />

であることが 既 知 であった 場 合 における 抗 体 親 和 性 の 数 値 を 指 示 する 限 定 の 解 釈 )。このこと<br />

は、 審 査 官 が 出 願 人 の 最 大 限 の 努 力 を 受 け 入 れねばならないというのではない。 保 護 対 象 が<br />

許 す 程 度 に 提 案 された 文 言 が 正 確 であると 考 えられないならば、 審 査 官 は 不 明 瞭 であるとい<br />

う 結 論 を 裏 付 ける 理 由 を 提 示 するべきであり、 且 つ、 異 議 の 生 じない 代 替 案 を 示 唆 すること<br />

が 奨 励 される。<br />

III. 通 常 の 意 味 に 反 して 使 用 される 用 語 は 書 面 記 載 に 明 確 に 再 定 義 されなければならない<br />

特 許 法 において 確 立 された、 特 許 権 者 又 は 出 願 人 が 自 由 に 自 己 の 辞 書 編 纂 者 であることがで<br />

きるという 原 理 と 一 貫 して、 特 許 権 者 又 は 出 願 人 は、 書 面 記 載 が 明 確 に 各 用 語 を 再 定 義 して<br />

いるならば、 用 語 を 一 以 上 の 通 常 の 意 味 に 反 した 若 しくはそれと 矛 盾 する 態 様 で 使 用 しても<br />

よい。 参 照 として、 例 えば Process Control Corp. v. HydReclim Corp., 190 F.3d 1350, 1357,<br />

52 USPQ2d 1029, 1033 (Fed. Cir. 1999) (「 一 方 、 我 々は、 特 許 権 者 が 通 常 の 意 味 と 反 する<br />

クレームの 用 語 を 具 体 的 に 定 義 するために、 自 己 の 辞 書 編 纂 者 の 役 目 を 務 めることができる<br />

と 何 度 も 判 示 してきた。」かかる 状 況 において、 書 面 記 載 は「 特 許 権 者 が 当 該 クレーム 用 語<br />

を 再 定 義 する 意 図 があることを 合 理 的 競 合 者 又 は 当 業 者 に 通 告 できる 程 度 に」 明 確 にクレー<br />

ムの 用 語 を 再 定 義 しなければならない;Hormone Research Foundation Inc. v. Genentech Inc.,<br />

904 F.2d 1558, 15 USPQ2d 1039 (Fed. Cir. 1990)。 従 って、ある 用 語 に 二 以 上 の 定 義 があ<br />

るとき、 発 明 をクレームするためにいずれの 定 義 に 依 拠 しているかを 明 確 にするのは、 出 願<br />

人 の 責 任 である。クレームに 使 用 される 用 語 又 は 語 句 の 意 味 が 明 確 になるまでは、 特 許 法 第<br />

112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 が 適 切 である。 先 行 技 術 を 応 用 する 際 は、クレームは、 出 願 人 の<br />

用 語 の 使 用 と 一 貫 したすべての 定 義 を 含 むと 解 釈 されるべきである。 参 照 として Tex.<br />

Digital Sys., Inc. v. Telegenix, Inc., 308 F.3d 1193, 1202, 64 USPQ2d 1812, 1818 (Fed.<br />

Cir. 2002)。 当 業 者 で 受 け 入 れられている 用 語 の 意 味 を 確 定 するためには、 技 術 辞 書 に 記 載<br />

されている 用 語 の 意 味 を 比 較 することが 適 切 である。In re Barr, 444 F.2d 588, 170 USPQ 330<br />

(CCPA 1971)。 同 じく 参 照 として、MPEP 第 2111.01 条 。<br />

2173.05(b) 相 対 的 な 語<br />

程 度 を 表 す 用 語 を 含 むクレーム 文 言 が 正 確 でない 可 能 性 があるからといって、 自 動 的 には、<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によりクレームが 不 明 瞭 なものとはしない。Seattle Box Co., v.<br />

Industrial Crating & Packing, Inc., 731 F.2d 818, 221 USPQ 568 (Fed. Cir. 1984)。ク<br />

レーム 文 言 の 受 入 可 能 性 は、 当 業 者 が 明 細 書 に 照 らしてクレームされるものを 認 識 するかど<br />

うかに 依 存 している。<br />

296


程 度 を 表 す 用 語 が 存 在 するとき、 基 準 が 開 示 されているかどうか、 又 は、クレーム 範 囲 が 当<br />

業 者 に 知 らされるであろうかどうかを 判 断 すること<br />

程 度 を 表 す 用 語 がクレームに 提 示 されるとき、まず、 明 細 書 が 程 度 を 測 定 するための 一 定 の<br />

基 準 を 提 示 しているかどうかについて、 判 断 がなされるものとする。 明 細 書 が 提 示 していな<br />

いならば、 先 行 技 術 及 び 技 術 状 況 に 照 らして、 発 明 の 範 囲 が 当 業 者 に 合 理 的 に 知 らされるで<br />

あろうかどうかについて、 判 断 がなされる。たとえ 明 細 書 が、クレームと 同 じ 程 度 を 表 す 用<br />

語 を 使 用 したとしても、 明 細 書 に 照 らして 読 んだときに 用 語 の 範 囲 が 認 識 されなければ、 拒<br />

絶 が 適 切 である 可 能 性 がある。 一 般 命 題 として、 拡 大 修 飾 語 句 は、 侵 害 訴 訟 における 均 等 論<br />

への 依 存 を 回 避 するためにクレームドラフティングにおける 基 準 ツールである 一 方 で、クレ<br />

ーム 範 囲 が 不 明 確 であるときは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 は 適 切 である。 参 照 とし<br />

て、In re Wiggins, 488 F. 2d 538, 541, 179 USPQ 421, 423 (CCPA 1973)。<br />

先 行 技 術 と 比 べた 改 善 が、 要 素 の 組 み 合 わせにおけるある 要 素 の 大 きさ 又 は 重 量 に 完 全 に 依<br />

存 しているクレームにおいて、 相 対 的 な 語 が 使 用 される 場 合 は、 基 準 の 開 示 の 妥 当 性 のほう<br />

がより 決 定 的 に 重 要 である。<br />

変 化 する 対 象 物 の 参 照 によって、クレームを 不 明 瞭 にする 可 能 性 がある<br />

変 化 する 対 象 物 を 参 照 することによって、クレームが 不 明 瞭 になる 可 能 性 がある。 例 えば、<br />

審 判 部 は、 自 転 車 に 対 するクレーム 中 の「 当 該 自 転 車 が 設 計 対 象 とした 運 転 者 の 身 長 の 58<br />

パーセントから 75 パーセントの 間 にあるホイールベースを 提 供 できるよう 間 隔 があいた 前<br />

記 前 輪 及 び 後 輪 」と 記 載 した 自 転 車 への 限 定 は、 部 品 間 の 関 係 が、 自 転 車 を 運 転 者 の 大 きさ<br />

に 合 わせて 製 造 するいかなる 既 知 の 基 準 にも 基 づいておらず、 明 記 されていない 体 格 の 運 転<br />

者 に 基 づいていることから、 不 明 瞭 であると 決 定 した。Ex parte Brummer, 12 USPQ2d 1653 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1989)。 他 方 、 小 児 科 用 の 車 椅 子 の 所 定 部 品 が「 自 動 車 のドアフレーム<br />

と 一 座 席 の 間 の 空 間 に 挿 入 可 能 となるような 寸 法 に 合 わせた」と 明 記 するクレーム 限 定 は、<br />

明 瞭 であると 判 示 された。Orthokinetics, Inc. v. Safety Travel Chairs, Inc., 806 F.2d<br />

1565, 1 USPQ2d 1081 (Fed. Cir. 1986)。 裁 判 所 は、 語 句 「ような 寸 法 に 合 わせた」は 保 護<br />

対 象 が 許 す 限 り 正 確 であると 述 べ、 特 許 法 は、 何 百 の 異 なる 自 動 車 の 空 間 に 対 応 するすべて<br />

の 可 能 な 長 さがクレームに 掲 載 されることは 言 うまでもなく、 特 許 中 に 掲 載 されることも 要<br />

求 していないと 指 摘 した。<br />

A. 「About ( 約 )」<br />

用 語 「about」によって 包 含 される 範 囲 を 判 断 する 際 には、 当 該 用 語 は 出 願 の 明 細 書 及 びクレ<br />

ーム 中 に 使 用 されるので、 用 語 の 文 脈 を 考 慮 しなければならない。Ortho-McNeil Pharm., Inc.<br />

v. Caraco Pharm. Labs., Ltd., 476 F.3d 1321, 1326, 81 USPQ2d 1427, 1432 (Fed. Cir. 2007)。<br />

W.L. Gore & Associates, Inc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 220 USPQ 303 (Fed. Cir.<br />

1983)において、 裁 判 所 は、プラスチックの 伸 び 率 を「1 秒 あたり 約 10%を 超 える」と 定 義 し<br />

た 限 定 を、ストップウオッチの 使 用 によって 侵 害 が 明 確 に 評 価 されうることから、 明 瞭 であ<br />

ると 判 示 した。ただし 裁 判 所 は、 類 似 の 先 行 技 術 があり、 且 つ、 明 細 書 、 出 願 経 過 又 は 先 行<br />

技 術 に 用 語 「about」によってどの 範 囲 の 具 体 的 な 活 動 がカバーされるかについて 指 示 を 提 示<br />

するものは 何 もない 場 合 は、「at least about( 少 なくとも 約 )」と 述 べるクレームは 不 明 瞭<br />

性 を 理 由 に 無 効 であると 判 示 した。Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., 927 F.2d 1200,<br />

18 USPQ2d 1016 (Fed. Cir. 1991)。<br />

297


B. 「Essentially ( 本 質 的 に)」<br />

語 句 「アルカリ 金 属 が 本 質 的 にない 二 酸 化 珪 素 源 」は、 明 細 書 が、 開 始 材 料 中 の 回 避 不 可 能<br />

な 不 純 物 と 本 質 的 成 分 の 間 に 境 界 を 定 めることを 当 業 者 ができるようにするために 十 分 であ<br />

ると 考 えられる 指 針 及 び 実 施 例 を 含 んでいることから、 明 瞭 であると 判 示 された。In re<br />

Marosi, 710 F.2d 799, 218 USPQ 289 (CCPA 1983)。 裁 判 所 はさらに、 自 己 の 発 明 と 先 行 技<br />

術 の 間 に 特 定 のカットオフ 値 を 明 記 するよう 出 願 人 に 要 求 することは 非 実 用 的 であろうと 意<br />

見 を 述 べた。<br />

C. 「Similar ( 類 似 の)」<br />

「 高 圧 洗 浄 装 置 又 は 類 似 の 装 置 用 の」ノズルを 対 象 とするクレームの 前 提 部 分 の 用 語<br />

「similar」は、 出 願 人 が、「similar ( 類 似 の)」 装 置 との 記 載 によって 扱 おうとしているも<br />

のが 明 確 でなかったことから、 不 明 瞭 であると 決 定 された。Ex parte Kristensen, 10 USPQ2d<br />

1701 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)。<br />

意 匠 特 許 出 願 中 の「 図 示 及 び 記 載 された 飼 料 おけ 又 は 類 似 の 構 造 装 飾 的 意 匠 」と 読 めるクレ<br />

ームは、 出 願 人 が「similar ( 類 似 の)」 構 造 を 記 載 することによって 扱 おうとしているもの<br />

が 明 細 書 からは 不 明 確 であったことから、 不 明 瞭 であると 決 定 された。Ex parte Pappas, 23<br />

USPQ2d 1636 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)。<br />

D.「Substantially ( 実 質 的 に)」<br />

多 くの 場 合 、 用 語 「substantially」は、クレームされた 発 明 の 特 定 の 特 徴 を 記 載 するために<br />

別 の 用 語 とともに 使 用 される。この 語 は 広 い 用 語 である。In re Nehrenberg, 280 F.2d 161,<br />

126 USPQ 383 (CCPA 1960)。 裁 判 所 は「 化 合 物 の 銅 抽 出 物 としての 効 率 を 実 質 的 に 増 加 させ<br />

るために」という 限 定 は、 明 細 書 に 含 まれる 一 般 指 針 に 鑑 みて 明 瞭 であると 判 示 した。In re<br />

Mattison, 509 F.2d 563, 184 USPQ 484 (CCPA 1975)。 裁 判 所 は「 実 質 的 に 等 しい E 面 及 び<br />

H 面 照 明 パターンを 生 成 する」という 限 定 は、 当 業 者 は「 実 質 的 に 等 しい」が 何 を 意 味 する<br />

か 知 っているであろうことから、 明 瞭 であると 判 示 した。Andrew Corp. v. Gabriel<br />

Electronics, 847 F.2d 819, 6 USPQ2d 2010 (Fed. Cir. 1988)。<br />

E.「Type ( 型 )」<br />

そうでなければ 明 瞭 な 表 現 ( 例 えば、フリーデルクラフツ 触 媒 )に 語 「type」を 付 加 すること<br />

は、 当 該 表 現 の 範 囲 を 不 明 瞭 にする 程 度 に 拡 張 する。Ex parte Copenhaver, 109 USPQ 118 (Bd.<br />

App. 1955)。 同 様 に、 語 句 「ZSM-5 型 アルミノ 珪 酸 ゼオライト」は、いずれの「type」が 伝<br />

えようとされたのかが 不 明 確 であったことから、 不 明 瞭 であると 決 定 された。 従 属 クレーム<br />

に 定 義 されたゼオライトが 独 立 クレームに 定 義 されたゼオライトの 型 の 属 ではないというこ<br />

とによって、 解 釈 はより 困 難 になった。Ex parte Attig, 7 USPQ2d 1092 (Bd. Pat. App. & Inter.<br />

1986)。<br />

F. 他 の 用 語<br />

語 句 「relatively shallow( 比 較 的 浅 い)」、「of the order of(とほぼ 同 程 度 の)」、「the order<br />

of about 5mm( 約 5mm 程 度 の)」 及 び「substantial portion( 実 質 部 )」は、 明 細 書 が 意 図 した<br />

程 度 を 測 定 するための 一 定 の 基 準 が 欠 如 していたことから、 不 明 瞭 であると 決 定 され、それ<br />

故 、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によって 不 明 瞭 であるとして 適 切 に 拒 絶 された。Ex parte Oetiker,<br />

23 USPQ2d 1641 (Bd. Pat. App. & Inter. 1992)。<br />

「コークス、レンガ、 又 は 同 様 の 材 料 」という 限 定 の 文 脈 での 用 語 「or the like( 又 は 同 様<br />

の 材 料 )」は、クレームの 限 定 を 満 たすためにコークス 若 しくはレンガ 以 外 の 材 料 が 当 該 2<br />

298


つの 指 示 された 材 料 とどのように 類 似 しなければならないかが 明 確 でなかったことから、ク<br />

レームを 不 明 瞭 にすると 決 定 された。Ex parte Caldwell, 1906 C.D. 58 (Comm’r Pat. 1906)。<br />

用 語 「comparable ( 同 等 の)」 及 び「superior ( 優 れた)」という 用 語 は、クレームされた 材<br />

料 の 特 徴 を 他 の 材 料 と 関 連 付 ける 限 定 の 文 脈 ―すなわち「 同 等 の」 先 行 技 術 材 料 「から 取 得<br />

した 特 性 よりも 優 れた 特 性 」―において、 不 明 瞭 であると 決 定 された。Ex parte Anderson, 21<br />

USPQ2d 1241 (Bd. Pat. App. & Inter. 1991)。 明 細 書 からは、いずれの 特 性 が 比 較 されなけ<br />

ればならなかったか、 及 び、 侵 害 問 題 を 判 断 するためにはどの 程 度 特 性 が 同 等 でなければな<br />

らないであろうかは 明 確 でなかった。さらに、 用 語 「superior」の 意 味 についての 指 針 はな<br />

かった。<br />

語 句 「aesthetically pleasing( 美 的 に 心 地 良 い)」は、 用 語 の 意 味 が 発 明 を 実 施 する 者 の 拘<br />

束 されていない 主 観 的 意 見 に 依 存 できないことから、 不 明 瞭 であると 判 示 された。Datamize<br />

LLC v. Plumtree Software, Inc., 417 F.3d 1342, 1347-48, 75 USPQ2d 1801, 1807 (Fed. Cir.<br />

2005)。<br />

2173.05(c) 数 値 範 囲 及 び 量 の 限 定<br />

一 般 的 には、 特 定 の 数 値 範 囲 のクレームへの 記 載 によって、クレームが 明 瞭 であるかどうか<br />

の 問 題 が 生 じることはない。<br />

I. 同 一 クレームにおける 限 られた 範 囲 とより 広 い 範 囲<br />

より 広 い 範 囲 に 含 まれる 限 られた 数 的 範 囲 を 同 一 クレームに 使 用 することによって、クレー<br />

ムの 境 界 が 識 別 可 能 でないときには、クレームを 不 明 瞭 とする 可 能 性 がある。 実 施 例 及 び 好<br />

適 例 の 説 明 は、 単 一 クレームよりもむしろ 明 細 書 に 適 切 に 明 記 される。より 狭 い 範 囲 又 は 好<br />

適 な 実 施 形 態 は、 別 の 独 立 クレーム 又 は 従 属 クレームに 明 記 されてもよい。 実 施 例 及 び 好 適<br />

例 が 単 一 クレームに 記 載 されたならば、それらは 意 図 されたクレーム 範 囲 に 混 乱 をきたす。<br />

クレームされたより 狭 い 範 囲 が 限 定 となるかどうかが 明 確 ではない 事 例 では、 特 許 法 第 112<br />

条 第 2 段 落 による 拒 絶 がなされるべきである。 審 査 官 は、クレームの 境 界 及 び 限 界 が 明 確 に<br />

記 載 されているかどうかを 解 析 するべきである。 不 明 瞭 であると 判 示 されたクレーム 文 言 の<br />

例 は(A)「 摂 氏 45 度 乃 至 78 度 、 好 適 には 摂 氏 50 度 乃 至 60 度 程 度 の 温 度 」 及 び(B)「 所 定 の<br />

量 例 えば 最 大 容 量 」である。<br />

広 い 範 囲 とより 狭 い 範 囲 の 両 方 を 含 む 単 一 クレームは 不 明 瞭 でありうる 一 方 で、 特 許 法 第<br />

112 条 第 2 段 落 に 基 づくと、ある 要 素 に 対 し、それが 従 属 するクレームに 明 記 された 範 囲 よ<br />

りもより 狭 い 範 囲 を 明 記 する 従 属 クレームを 提 示 することは 不 適 切 ではない。 例 えば、クレ<br />

ーム 1 が「 抵 抗 が 70~150 オームである・・・ 回 路 」と 読 め、 且 つ、クレーム 2 が「 抵 抗 が 70<br />

~100 オームであるクレーム 1 の 回 路 」と 読 めるならば、クレーム 2 は 不 明 瞭 であるとして<br />

拒 絶 されてはならない。<br />

II. オープンエンドの 数 値 範 囲<br />

オープンエンドの 数 値 範 囲 は、 明 瞭 性 を 注 意 深 く 解 析 されなければならない。 例 えば、 独 立<br />

クレームが「 少 なくとも 20%のナトリウム」を 含 む 組 成 物 を 記 載 し、 且 つ、 従 属 クレームが、<br />

合 計 100%となる 非 ナトリウム 成 分 の 具 体 量 を 明 記 して、 一 見 ナトリウムを 除 外 しているよう<br />

であるときは、「 少 なくとも」という 限 定 に 関 して( 非 ナトリウム 成 分 のパーセント 表 示 が 非<br />

299


ナトリウム 成 分 の 重 量 を 基 にしていない 限 り) 曖 昧 性 が 形 成 される。 他 方 で 裁 判 所 は、100%<br />

を 超 える( 即 ち A を 20~80%、B を 20~80%、 及 び C を 1~25%) 理 論 的 含 有 量 を 有 すると 主<br />

張 された 組 成 物 は、 単 にクレームが 実 際 には 処 方 が 不 可 能 な 組 成 物 を 含 むと 理 論 的 に 読 むこ<br />

とができるという 理 由 だけでは、 不 明 瞭 とはならないと 判 示 した。 実 際 に 存 在 不 可 能 な 保 護<br />

対 象 はクレームを 予 期 も 侵 害 もできないと 述 べられた。In re Kroekel, 504 F.2d 1143, 183<br />

USPQ 610 (CCPA 1974)。<br />

化 学 反 応 プロセスを 対 象 とするクレームにおいて、 限 定 は、 反 応 混 合 物 中 の 一 成 分 の 量 は 別<br />

の 成 分 量 を 基 にして「7 モルパーセント 未 満 に 維 持 されるべきである」と 要 求 した。 審 査 官<br />

は、 限 定 が 最 大 量 のみを 設 定 し、 且 つ、いかなる 反 応 の 終 了 をきたす 成 分 も 実 質 的 には 含 ま<br />

ないことから、クレームは 不 明 瞭 であると 主 張 した。 裁 判 所 は 同 意 しなかった。その 理 由 は、<br />

クレームされたプロセスの 実 施 を 除 外 するためにクレーム 全 体 の 意 味 を 歪 曲 することを 認 め<br />

ない 反 応 プロセスをクレームが 明 確 に 対 象 としているからである。In re Kirsch, 498 F.2d<br />

1389, 182 USPQ 286 (CCPA 1974)。<br />

いくつかの 用 語 は、 報 告 された 事 例 の 実 際 の 状 況 において 次 に 掲 げる 意 味 を 有 すると 判 断 さ<br />

れた。 用 語 「up to(まで)」は 下 限 値 としてゼロを 含 む。In re Mochel, 470 F.2d 638, 176 USPQ<br />

194 (CCPA 1974)。 及 び「70 重 量 % 以 下 の 水 分 量 」は 乾 燥 した 材 料 と 読 める。Ex parte Khusid,<br />

174 USPQ 59 (Bd. App. 1971)。<br />

III. 「Effective Amount ( 有 効 量 )」<br />

一 般 的 な 語 句 「an effective amount( 有 効 量 )」は 不 明 瞭 である 場 合 もそうでない 場 合 もある。<br />

適 切 な 基 準 は、 当 業 者 が 開 示 に 基 づいて 当 該 量 に 対 する 特 定 値 が 適 切 であると 判 断 しうるか<br />

どうかである。 参 照 として、In re Mattison, 509 F.2d 563, 184 USPQ 484 (CCPA 1975)。<br />

語 句 「 成 長 刺 激 のための... 有 効 量 」は、 当 該 量 が 決 定 的 に 重 要 ではなく、 且 つ、 当 業 者 が 実<br />

施 例 を 含 む 記 載 された 開 示 から 有 効 量 がどれだけかを 判 断 できるであろう 場 合 は、 明 瞭 であ<br />

ると 判 示 された。In re Hall eck, 422 F.2d 911, 164 USPQ 647 (CCPA 1970)。 語 句 「an effective<br />

amount」は、クレームが 達 成 するべき 機 能 の 記 載 を 怠 り、 且 つ、 明 細 書 又 は 関 連 技 術 から 二<br />

以 上 の 効 果 が 示 唆 できるときは、 不 明 瞭 であると 判 示 された。In re Fredericksen 213 F.2d<br />

547, 102 USPQ 35 (CCPA 1954)。より 近 年 の 各 事 例 は、「an effective amount」といった 限<br />

定 を、 裏 付 けとなる 開 示 に 照 らして 読 んだときに、かつ、クレーム 範 囲 に 関 して 不 確 実 性 を<br />

発 生 させうる 先 行 技 術 がなければ、 明 瞭 であるとして 受 け 入 れる 傾 向 にあった。Ex parte<br />

Skuballa, 12 USPQ2d 1570 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)において、 審 判 部 は、 達 成 され<br />

るべき 機 能 を 記 載 することなく「クレーム 1 の 化 合 物 の 有 効 量 」を 記 載 した 医 薬 品 の 組 成 物<br />

クレームを、とりわけ、 意 図 された 有 用 性 、 及 び、 用 途 が 達 成 されうる 方 法 についての 指 針<br />

を 提 供 する 裏 付 けとなる 開 示 に 照 らして 読 んだときに、 明 瞭 であると 判 示 した。<br />

2173.05(d) 例 示 的 なクレーム 文 言 (「for example( 例 えば)」「such as(といった」)<br />

実 施 例 又 は 好 適 例 の 説 明 は、クレームよりもむしろ 明 細 書 に 適 切 に 明 記 される。 実 施 例 及 び<br />

好 適 例 が、クレームに 記 載 されたならば、それらは 意 図 されたクレーム 範 囲 に 混 乱 をきたし<br />

うる。クレームされたより 狭 い 範 囲 が 限 定 となるかどうかが 明 確 でない 事 例 では、 特 許 法 第<br />

112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 がなされるべきである。 審 査 官 は、クレームの 境 界 及 び 限 界 が 明<br />

確 に 記 載 されているかどうかを 解 析 するべきである。 意 図 されたクレーム 範 囲 が 不 明 確 であ<br />

300


ったことから 不 明 瞭 であると 認 定 されたクレーム 文 言 の 例 は<br />

(A) 「R はハロゲン、 例 えば、 塩 素 である」<br />

(B) 「ロックウール 又 はアスベストといった 材 料 」Ex parte Hall , 83 USPQ 38 (Bd. App. 1949)<br />

(C) 「 例 えば 蒸 気 又 は 生 成 ガスといったより 軽 量 の 炭 化 水 素 」Ex parte Hasche, 86 USPQ 481<br />

(Bd. App. 1949)、 及 び<br />

(D) 「 配 分 器 の 容 器 中 にある 時 といった 通 常 の 作 動 条 件 」Ex parte Steigerwald, 131 USPQ 74<br />

(Bd. App. 1961)<br />

である。<br />

不 明 瞭 であると 判 示 された 前 述 のクレーム 文 言 の 例 は、 事 実 特 定 的 であり、それ 自 体 で 規 則<br />

として 運 用 されるべきではない。 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 拒 絶 をなすことが 適 切 な<br />

場 合 に 関 する 指 針 は MPEP 第 2173.02 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(e) 先 例 による 根 拠 の 欠 如<br />

クレームは、 意 味 が 不 明 瞭 な 語 又 は 語 句 を 含 むときは、 不 明 確 である。 明 確 性 の 欠 如 は、ク<br />

レームが「 前 記 レバー」 若 しくは「 当 該 レバー」を 参 照 する 場 合 、クレームがレバーについ<br />

て 先 の 記 載 又 は 限 定 を 含 まない 場 合 、 且 つ、 限 定 がいずれの 構 成 要 素 を 参 照 していたかが 不<br />

明 確 であろう 場 合 に、 生 じうる。 同 様 に、2 つの 異 なるレバーが 先 のクレームに 記 載 されて<br />

いるならば、2 つのレバーのうちいずれが 意 図 されたが 不 確 かな 場 合 は、 同 一 又 は 後 続 のク<br />

レームにおける「 前 記 レバー」の 記 載 は 不 明 確 であろう。「 前 記 アルミニウムレバー」を 参<br />

照 するが、 当 該 クレーム 中 で 先 に「レバー」とのみ 記 載 しているクレームは、 参 照 がなされ<br />

ているレバーが 不 確 かであることから、 不 明 瞭 である。ただし、 明 らかなことであるが、 用<br />

語 に 対 する 明 示 的 な 先 行 的 限 定 の 根 拠 の 提 示 を 怠 ったからといって 常 にクレームを 不 明 瞭 に<br />

するわけではない。 当 業 者 によってクレーム 範 囲 が 合 理 的 に 確 定 可 能 であると 思 われるなら<br />

ば、クレームは 不 明 瞭 ではない。Energizer Holdings Inc. v. Int’l Trade Comm’n, 435 F.3d<br />

1366, 77 USPQ2d 1625 (Fed. Cir. 2006) ( 示 唆 により 提 示 された「 陽 極 ゲル」が「 陽 極 亜 鉛 」<br />

の 先 行 的 限 定 の 根 拠 であることを 判 示 ); Ex parte Porter, 25 USPQ2d 1144, 1145 (Bd. Pat.<br />

App. & Inter. 1992) (「 流 体 の 制 御 された 流 れ」は「 制 御 された 流 体 」の 合 理 的 な 先 行 的 限<br />

定 の 根 拠 を 提 示 した)。 記 載 された 要 素 の 固 有 成 分 は、 成 分 自 体 の 記 載 において 先 行 的 限 定 の<br />

根 拠 を 有 する。 例 えば、「 前 記 球 の 外 表 面 」という 限 定 は、 球 は 外 表 面 を 有 するという 先 行<br />

的 限 定 を 要 求 しないであろう。 参 照 として、Bose Corp. v. JBL, Inc., 274 F.3d 1354, 1359,<br />

61 USPQ2d 1216, 1218-19 (Fed. Cir 2001)(「 楕 円 」の 記 載 は、「 数 学 的 に 楕 円 の 固 有 の 特<br />

徴 が 長 径 であることに 争 いはありえない」ことから、「 長 径 を 有 する 楕 円 」の 先 行 的 限 定 の<br />

根 拠 を 提 示 したことを 判 示 )。<br />

審 査 官 は 先 行 的 限 定 の 問 題 に 対 する 修 正 を 示 唆 するべきである<br />

クレーム 中 の 先 行 的 限 定 の 問 題 は、 典 型 的 には、ひとたび 出 願 人 の 目 に 留 まれば 簡 単 に 修 正<br />

がなされるドラフティングの 見 落 としである。クレーム 文 言 が 法 律 の 要 件 に 適 合 することを<br />

保 証 する 審 査 官 の 仕 事 は、 小 さな 問 題 が 特 定 及 び 簡 単 に 修 正 できるように、 且 つ、 主 たる 努<br />

力 がより 実 質 的 な 問 題 に 費 やされるように、 肯 定 的 且 つ 建 設 的 な 方 法 で 実 施 されなければな<br />

らない。ただし、たとえ、クレーム 文 言 の 不 明 瞭 性 が 意 味 に 由 来 するものであったとしても、<br />

クレームが 修 正 できたであろうという 理 由 だけでは、 異 論 がないことにはならない。In re<br />

301


Hammack, 427 F.2d 1384 n.5, 166 USPQ 209 n.5 (CCPA 1970)。<br />

開 示 中 に 先 行 的 限 定 の 根 拠 のないクレーム 用 語 は 必 ずしも 不 明 瞭 でない<br />

クレームに 使 用 される 用 語 又 は 語 句 が 明 細 書 の 開 示 に 先 行 的 限 定 の 根 拠 を 有 していないとい<br />

うことだけでは、 当 該 用 語 又 は 語 句 が 不 明 瞭 であることを 必 ずしも 意 味 しない。クレーム 中<br />

の 単 語 が 明 細 書 の 開 示 に 使 用 された 単 語 と 一 致 しなければならないという 要 件 はない。 出 願<br />

人 には、 使 用 された 用 語 及 び 語 句 が 合 理 的 な 程 度 の 明 確 性 及 び 正 確 性 をもって 発 明 を 定 義 し<br />

ている 限 り、 自 己 の 発 明 を 定 義 することを 選 択 する 方 法 において 大 きな 自 由 度 が 与 えられて<br />

いる。<br />

本 体 部 が 前 提 部 分 に 記 載 されていない 付 加 的 な 要 素 を 記 載 していても、クレームそれ 自 体 は<br />

不 明 瞭 ではない<br />

クレームの 本 体 部 がクレームの 前 提 部 分 には 見 られない 付 加 的 な 要 素 を 記 載 しているという<br />

ことだけでは、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によりクレームを 不 明 瞭 であるとしない。 参 照 とし<br />

て、In re Larsen, No. 01-1092 (Fed. Cir. May 9, 2001)( 未 公 表 )(Larsen のクレームの 前<br />

提 部 分 はハンガーとループのみを 記 載 しているが、クレームの 本 体 部 は 直 線 部 材 を 肯 定 的 に<br />

記 載 した。 審 査 官 は、クレーム 前 提 部 分 から 決 定 的 に 重 要 な 要 素 ( 即 ち 直 線 部 材 )を 省 略 する<br />

ことで 当 該 クレームを 不 明 瞭 にすることから、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づいて 当 該 クレ<br />

ームを 拒 絶 した。 裁 判 所 は 審 査 官 の 拒 絶 を 覆 し、 発 明 者 の 当 該 技 術 への 貢 献 を 確 定 するため<br />

に、クレームのすべての 限 定 事 項 の 全 体 性 及 びそれら 限 定 事 項 の 相 互 関 係 が 考 慮 されなけれ<br />

ばならないと 意 見 を 述 べた。クレームを 全 体 として 審 査 したうえで、 裁 判 所 は、 争 点 のクレ<br />

ームは 当 業 者 にその 範 囲 を 知 らせており、それ 故 、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によって 求 めら<br />

れる 通 知 機 能 を 果 たしていると 結 論 づけた)。<br />

2173.05(f) 別 のクレーム 中 の 限 定 の 参 照<br />

限 定 を 定 義 するために 先 行 クレームを 参 照 しているクレームは、 認 められる 構 成 であり、 特<br />

許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づいて 不 適 切 な 又 は 混 乱 をきたすとして 必 ずしも 拒 絶 されるべき<br />

でない。 例 えば「クレーム 1 の 方 法 によって 生 産 される 製 品 」 又 は「 次 に 掲 げる 条 件 のもと<br />

で・・・アミロースをクレーム 1 の 培 養 物 と 接 触 することを 含 むエタノールを 生 産 する 方 法 」と<br />

読 めるクレームは、 別 のクレームの 参 照 のみを 理 由 として 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づい<br />

て 不 明 瞭 とはならない。 同 じく 参 照 として、 方 法 クレームの「クレーム 7 のノズル」の 参 照<br />

は 特 許 法 の 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 すると 判 示 された Ex parte Porter, 25 USPQ2d 1144 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1992)。ただし、 別 のクレームに 記 載 された 限 定 を 参 照 する 形 式 が 混 乱<br />

をきたす 場 合 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 拒 絶 は 適 切 であろう。<br />

2173.05(g) 機 能 的 限 定<br />

機 能 的 限 定 とは、 何 かをそれが 何 であるか( 例 えば、 特 定 構 造 又 は 特 定 成 分 により 立 証 される<br />

ように)よりも、むしろそれが 何 を 行 うかによって 定 義 する 試 みである。 発 明 の 一 部 を 機 能 的<br />

用 語 で 定 義 することに 本 来 的 な 誤 りは 全 くない。 機 能 的 文 言 は、それ 自 体 としては、クレー<br />

ムを 不 適 切 なものとはしない。In re Swinehart, 439 F.2d 210, 169 USPQ 226 (CCPA 1971)。<br />

機 能 的 限 定 は、あらゆる 他 のクレーム 限 定 とまさしく 同 じく、 当 該 限 定 が 使 用 される 文 脈 で、<br />

302


関 連 技 術 分 野 において 通 常 技 術 を 有 する 者 に 対 して 何 を 公 正 に 伝 えるかについて、 評 価 及 び<br />

考 慮 されなければならない。 機 能 的 限 定 は、 多 くの 場 合 、 要 素 、 成 分 、 又 はプロセスの 工 程<br />

と 関 連 して、 記 載 された 要 素 、 成 分 又 は 工 程 が 果 たす 特 定 の 能 力 又 は 目 的 を 定 義 するために<br />

使 用 される。Innova/Pure Water Inc. v. Safari Water Filtration Sys. Inc., 381 F.3d 1111,<br />

1117-20, 72 USPQ2d 1001, 1006-08 (Fed. Cir. 2004)において 裁 判 所 は、クレーム 用 語 「 実<br />

施 可 能 に 接 続 された」が「クレームされた 構 成 要 素 間 の 機 能 的 関 係 を 反 映 するために 特 許 ド<br />

ラフティングにおいて 多 くの 場 合 に 使 用 される 一 般 的 な 記 述 的 クレーム 用 語 」であること、<br />

即 ち、 当 該 用 語 は「クレームされた 構 成 要 素 が、 指 示 された 機 能 を 実 施 できる 方 法 で 接 続 さ<br />

れなければならないことを 意 味 する」と 述 べた。「 修 飾 語 がない 場 合 は、 一 般 的 な 記 述 的 用<br />

語 は 典 型 的 には 完 全 な 意 味 を 有 すると 解 釈 される。」Id. at 1118, 72 USPQ2dat 1006。 争 点<br />

の 特 許 クレームにおいて「クレーム 範 囲 のあらゆる 明 確 且 つ 紛 れもない 否 認 の 適 用 を 受 けて、<br />

用 語 「 実 施 可 能 に 接 続 された」は、 完 全 な 広 さの 通 常 の 意 味 を 持 っている、 即 ち、 管 及 び 蓋<br />

が 濾 過 機 能 を 実 施 できる 態 様 で 配 置 されているときは「 前 記 管 は 前 記 蓋 に 実 施 可 能 に 接 続 さ<br />

れている。」Id. at 1120, 72 USPQ2dat 1008.<br />

機 能 的 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 するかどうかは、 当 該 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第<br />

1 段 落 に 基 づいて 適 切 に 裏 付 けられているかどうか、 又 は、 先 行 技 術 に 対 して 識 別 されるか<br />

どうかとは 異 なる 問 題 である。 機 能 的 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 するかどうかの<br />

問 題 が 考 慮 された 状 況 を 示 すために、2、3 の 例 が 次 に 掲 げられる。<br />

化 合 物 上 にある 基 を、 機 能 的 であるものの「 前 記 酸 化 現 像 液 によって 染 料 を 形 成 できない」<br />

と 定 義 するために 使 用 される 限 定 は、 求 められる 特 許 保 護 に 関 する 明 確 な 境 界 を 設 定 するこ<br />

とから、 完 全 に 認 められると 判 示 された。In re Barr, 444 F.2d 588, 170 USPQ 33 (CCPA 1971)。<br />

裁 判 所 は、 組 み 立 て 可 能 な 構 成 部 品 のキットを 対 象 としたクレームにおいて、 例 えば「 配 置<br />

されるよう 構 成 された 部 材 」 及 び「 弾 力 性 に 膨 張 性 のある 部 品 であって・・・これによって 前 記<br />

筐 体 が 摺 動 可 能 に 配 置 されうる」との 限 定 は、クレームされた 組 立 体 の 相 互 に 関 連 する 構 成<br />

部 品 の 現 在 の 構 造 的 特 性 を 正 確 に 定 義 するのに 資 すると 判 示 した。In re Venezia, 530 F.2d<br />

956, 189 USPQ 149 (CCPA 1976)。<br />

2173.05(h) 択 一 的 限 定<br />

I. マーカシュ 群<br />

択 一 的 表 現 は、クレームの 範 囲 若 しくは 明 確 性 の 問 題 に 関 して 不 確 実 性 又 は 曖 昧 性 を 提 示 し<br />

なければ、 許 可 される。 択 一 的 表 現 の 許 可 される 一 形 式 は、 一 般 にマーカシュ 群 と 呼 ばれ、<br />

構 成 要 素 を「A, B 及 び C から 成 る 群 から 選 択 される」と 記 載 する。 参 照 として、Ex parte<br />

Markush, 1925 C.D. 126 (Comm’r Pat. 1925)。<br />

Ex parte Markush は 所 定 の 指 定 材 料 から 成 る 群 として 表 現 される 属 をクレームすることを 是<br />

認 している。 最 も 多 くの 場 合 、 治 金 、 耐 熱 性 、 窯 業 、 薬 学 、 薬 理 学 及 び 生 物 学 における 発 明<br />

がマーカシュ 形 式 でクレームされるが、 純 粋 な 機 械 的 特 徴 又 はプロセス 工 程 もまたマーカシ<br />

ュ 形 式 のクレーム 作 成 を 使 用 してクレームされてもよい。 参 照 として、Ex parte Head, 214<br />

USPQ 551 (Bd. App. 1981);In re Gaubert, 524 F.2d 1222, 187 USPQ 664 (CCPA 1975);<br />

及 び In re Harnisch, 631 F.2d 716, 206 USPQ 300 (CCPA 1980)。 用 語 「comprising(を 含<br />

む)」を「consisting of(から 成 る)」の 代 わりに 使 用 することは 不 適 切 である。Ex parte Dotter,<br />

12 USPQ 382 (Bd. App. 1931)<br />

303


範 囲 を 減 縮 するするマーカシュクレームの 使 用 は、それ 自 体 、クレームに 対 する 異 議 又 は 拒<br />

絶 の 十 分 な 根 拠 であると 考 えられてはならない。ただし、かかる 実 施 によってクレームを 不<br />

明 瞭 にする 場 合 、 又 は、 不 当 に 多 項 化 をきたす 場 合 は、 適 切 な 拒 絶 がなされなければならな<br />

い。<br />

同 様 に、マーカシュ 群 の 部 材 による 要 素 の 二 重 包 含 は、それ 自 体 、クレームに 対 する 異 議 又<br />

は 拒 絶 の 十 分 な 根 拠 ではない。 正 しくは、 一 以 上 の 要 素 のクレームへの 複 数 包 含 が 当 該 クレ<br />

ームを 不 明 瞭 にするかかどうかを 判 断 するために、 各 事 例 における 事 実 が 評 価 されなければ<br />

ならない。 化 合 物 が、クレームに 記 載 されたマーカシュ 群 の 二 以 上 の 構 成 要 素 によって 包 含<br />

されうるということだけでは、 必 ずしもクレーム 範 囲 を 不 明 瞭 にしない。 例 えば、「アミノ<br />

基 、ハロゲン 基 、ニトロ 基 、クロロ 基 、 及 びアルキル 基 から 成 る 群 から 選 択 された」マーカ<br />

シュ 群 は、「ハロゲン 基 」が「クロロ 基 」に 対 して 包 括 的 であっても、 認 められなければな<br />

らない。<br />

マーカシュ 群 において 明 記 される 材 料 は、 広 く 認 められた 物 理 若 しくは 化 学 的 分 類 、 又 は、<br />

当 業 者 において 広 く 認 められた 分 類 に 通 常 属 していなければならない。ただし、プロセス 又<br />

は 組 み 合 わせ( 単 一 の 化 合 物 でない)を 記 載 するクレームにマーカシュ 群 が 発 生 するときは、<br />

群 の 構 成 要 素 が、クレームされた 関 係 においてそれら 構 成 要 素 の 機 能 を 主 として 担 う 少 なく<br />

とも 一 特 性 を 共 通 して 有 していることが 明 細 書 に 開 示 されていれば 十 分 であり、 且 つ、それ<br />

ら 構 成 要 素 すべてがこの 特 性 を 有 していることは、 構 成 要 素 の 本 質 若 しくは 先 行 技 術 から 明<br />

確 である。 過 去 において、マーカシュ 型 クレームの 基 準 ができる 限 り 自 由 に 適 用 されていた<br />

が、 一 方 、マーカシュ 群 を 記 載 するクレームが 包 括 的 クレームでないと 判 示 する 現 在 の 実 務<br />

(MPEP 第 803 条 )では、この 群 に 対 して 記 載 された 構 成 要 素 の 適 切 性 についてより 厳 格 な 基 準<br />

を 適 用 してもよい。マーカシュ 表 現 が 化 合 物 の 一 部 のみに 適 用 されるときは、グループ 化 の<br />

適 切 性 は 化 合 物 を 全 体 として 考 慮 することによって 判 断 され、 且 つ、マーカシュ 表 現 の 構 成<br />

要 素 に 特 性 の 共 通 性 があることには 依 存 しない。<br />

クレームに 記 載 された 材 料 が 適 切 なマーカシュ 群 を 構 成 できる 程 度 に 関 連 しているときは、<br />

材 料 は、 従 来 の 態 様 で 若 しくは 択 一 的 に 記 載 されてもよい。 例 えば、「ここに、R が A,B,C<br />

及 び D から 選 択 された 群 から 成 る 材 料 である」が 適 切 な 限 定 である 場 合 は、「ここに、R が<br />

A,B,C 又 は D である 場 合 」も 適 切 であると 考 えられる。<br />

亜 属 クレーム<br />

属 、 亜 属 及 びマーカシュ 型 クレームはすべて、 開 示 によって 適 切 に 裏 付 けられるならば、 出<br />

願 人 が 自 己 の 発 明 をクレームするために 認 められる 方 法 である。 出 願 人 は、 異 なる 範 囲 を 持<br />

つクレームを 提 示 するためには 異 なる 方 法 を 提 示 する。 従 って 審 査 官 は、マーカシュ 型 クレ<br />

ームを 包 含 する 属 クレームが 存 在 するだけの 理 由 で、マーカシュ 型 クレームを 拒 絶 するべき<br />

ではない。<br />

MPEP 第 608.01 条 (p) 及 び 第 715.03 条 も 参 照 のこと。<br />

マーカシュ 型 クレームに 関 する 限 定 の 実 施 は、MPEP 第 803.02 条 を 参 照 のこと。<br />

II. 「OR ( 又 は/ 若 しくは)」を 用 いる 語<br />

「ここに R は A,B,C 又 は D である」といった、「or( 又 は/ 若 しくは)」を 使 用 する 択 一 的 表<br />

現 が 認 められている。In re Gaubert, 524 F.2d 1222, 187 USPQ 664 (CCPA 1975) 事 例 にお<br />

304


ける 次 に 掲 げる 各 語 句 は 認 められており、 且 つ、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 違 反 していない<br />

と 判 示 された:「 完 全 にまたはその 一 部 が 行 われた」、「 少 なくとも 一 片 」 及 び「 鉄 、 鋼 又<br />

はあらゆる 他 の 磁 性 材 料 」。<br />

III. 「OPTIONALLY( 任 意 に)」<br />

文 言 が 不 明 瞭 であるかどうかを 結 論 づける 前 に 一 定 の 解 析 を 必 要 とする 択 一 的 形 式 は、 用 語<br />

「optionally」の 使 用 を 伴 っている。Ex parte Cordova, 10 USPQ2d 1949 (Bd. Pat. App. &<br />

Inter. 1989)において「A, B 及 び 任 意 に C を 含 む」という 文 言 は、いずれの 択 一 的 要 素 が 当<br />

該 クレームによって 適 用 されるかに 関 して 曖 昧 性 がなかったことから、 認 められる 択 一 的 文<br />

言 であると 考 えられた。Ex parte Wu, 10 USPQ2d 2031 (Bd. Pat. App. & Inter. 1989)にお<br />

いて、 用 語 「optionally」に 関 して 類 似 の 決 定 に 到 達 した。 可 能 性 のある 択 一 的 要 素 の 一 覧<br />

が 変 動 する 可 能 性 があり、 且 つ、 曖 昧 性 が 生 じる 場 合 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒<br />

絶 をなし、 且 つ、 混 乱 が 存 在 する 理 由 を 説 明 することが 適 切 である。<br />

2173.05(i) 否 定 的 限 定<br />

各 裁 判 所 の 現 在 の 見 解 では、 否 定 的 限 定 に 関 しては 本 来 的 に 不 明 瞭 若 しくは 不 確 かなものは<br />

何 もない。 求 められる 特 許 保 護 の 境 界 が、 否 定 的 にであっても、 明 瞭 に 記 載 されている 限 り、<br />

クレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 に 適 合 する。いくつかの 古 い 事 例 は、 発 明 を 指 し<br />

示 す 代 わりに、 発 明 が 何 でなかったのかの 観 点 から 発 明 を 定 義 する 傾 向 があったので、 否 定<br />

的 限 定 にとって 批 判 的 であった。こうして 裁 判 所 は「R は 2-ブテニル 及 び 2,4-ペンタジエニ<br />

ル 以 外 のアルケニル 基 である」という 限 定 は、 発 明 者 が 発 明 したものを 明 確 に 且 つ 特 定 的 に<br />

指 示 せずに、 代 わりに、 発 明 者 が 発 明 しなかったことを 除 外 することによって 発 明 をクレー<br />

ムする 試 みであったことから、クレームを 不 明 瞭 にする 否 定 的 限 定 であるという 意 見 を 述 べ<br />

た。In re Schechter, 205 F.2d 185, 98 USPQ 144 (CCPA 1953)。<br />

先 行 技 術 製 品 の 特 徴 を 除 外 するための「 前 記 ホモポリマーは、 天 然 のバラゴムノキに 存 在 す<br />

るタンパク 質 、 石 鹸 、 樹 脂 及 び 糖 類 を 含 まない」という 限 定 を 記 載 したクレームは、 記 載 さ<br />

れた 各 限 定 が 明 瞭 であったことから 明 瞭 であると 考 えられた。In re Wakefield, 422 F.2d 897,<br />

899, 904, 164 USPQ 636, 638, 641 (CCPA 1970)。 加 えて 裁 判 所 は「 前 記 酸 化 薬 によって 染<br />

料 を 形 成 できない」という 否 定 的 限 定 は、 求 められる 特 許 保 護 の 境 界 が 明 確 であったことか<br />

ら、 明 瞭 であったと 認 定 した。In re Barr, 444 F.2d 588, 170 USPQ 330 (CCPA 1971)。<br />

あらゆる 否 定 的 限 定 又 は 排 他 的 条 件 は 原 開 示 中 に 根 拠 を 持 たねばならない。 択 一 的 要 素 が 明<br />

細 書 に 肯 定 的 に 記 載 されていれば、 当 該 構 成 要 素 はクレームにおいて 明 示 的 に 除 外 してもよ<br />

い。 参 照 として、In re Johnson, 558 F.2d 1008, 1019, 194 USPQ 187, 196 (CCPA 1977) (「 全<br />

体 を 記 載 した 明 細 書 は、 必 然 的 に、 残 りの 部 分 も 記 載 した。」)。 同 じく 参 照 として、Ex parte<br />

Grasselli, 231 USPQ 393 (Bd. App. 1983), aff’d mem., 738 F.2d 453 (Fed. Cir. 1984)。<br />

単 に 肯 定 的 な 記 載 がないことは 除 外 の 根 拠 とはならない。 原 開 示 に 根 拠 を 有 していない 否 定<br />

的 限 定 を 含 むあらゆるクレームは、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づいて 書 面 記 載 要 件 への 適<br />

合 を 怠 ったとして 拒 絶 されるべきである。 否 定 的 限 定 に 対 する 文 言 根 拠 が 明 細 書 に 欠 如 して<br />

いることは、 記 載 による 裏 付 けが 欠 如 していることから、 一 応 の 証 明 を 確 立 するには 十 分 で<br />

はない 可 能 性 があることに 留 意 すること。Ex parte Parks, 30 USPQ2d 1234, 1236 (Bd. Pat.<br />

App. & Inter. 1993)。 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 書 面 記 載 要 件 の 考 察 は MPEP 第 2163 条 乃 至<br />

305


第 2163.07(b) 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(j) 古 いものの 組 み 合 わせ<br />

クレームは 古 いものの 組 み 合 わせを 理 由 に 拒 絶 されてはならない<br />

1952 年 特 許 法 の 成 立 により、 各 裁 判 所 及 び 審 査 部 は、 古 いものの 組 み 合 わせの 原 則 に 基 づく<br />

拒 絶 はもはや 有 効 ではないとの 見 解 を 示 した。クレームは、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 規 定<br />

に 適 合 する 限 り、 適 切 であると 考 えられるべきである。<br />

古 いものの 組 み 合 わせを 根 拠 とする 拒 絶 は、Lincoln Engineering Co. v. Stewart-Warner<br />

Corp., 303 U.S. 545, 37 USPQ 1 (1938)に 適 用 された 原 則 に 基 づいていた。 当 該 原 則 は、 一<br />

般 に 古 いものの 組 み 合 わせのうちの 一 要 素 以 外 に 対 する 改 善 又 は 貢 献 を 行 った 発 明 者 は、 新<br />

規 且 つ 改 善 された 要 素 を 含 む 組 み 合 わせ 全 体 に 対 する 特 許 を 取 得 できるべきではないとした。<br />

拒 絶 するためには、クレームされた 組 み 合 わせと 実 質 的 に 同 一 の 結 果 を 生 成 するために 実 質<br />

的 に 同 一 の 態 様 で 機 能 的 に 協 働 するクレームされた 要 素 の 組 み 合 わせを 広 く 開 示 した 単 一 の<br />

参 考 文 献 の 引 用 が 要 求 された。In re Hall, 208 F.2d 370, 100 USPQ 46 (CCPA 1953)はこの<br />

原 則 の 適 用 を 示 している。<br />

裁 判 所 は In re Bernhart, 417 F.2d 1395, 163 USPQ 611 (CCPA 1969)において、 法 律 の 文<br />

言 ( 特 定 的 に 指 示 し、 且 つ 明 確 に 主 張 する)が 古 いものの 組 み 合 わせによる 拒 絶 の 唯 一 の 適 切<br />

な 理 由 であること、 及 び、 拒 絶 を 適 用 する 際 には 当 該 文 言 が 出 願 人 が 何 をする 権 利 及 び 義 務<br />

を 有 するかを 決 定 すると 指 摘 した。<br />

審 判 部 の 大 多 数 の 意 見 は、 議 会 は Lincoln Engineering の 理 論 的 根 拠 を 1952 年 特 許 法 にて 排<br />

除 し、これによって、 当 該 判 決 を 実 質 的 に 排 除 するよう 立 法 したと 決 定 した。Ex parte Barber,<br />

187 USPQ 244 (Bd. App. 1974)。 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は 最 終 的 に Radio Steel and Mfg. Co.<br />

v. MTD Products, Inc., 731 F.2d 840, 221 USPQ 657 (Fed. Cir. 1984)において Bernhart<br />

に 追 従 し、クレームが 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 に 適 合 していたことから、クレームは<br />

Lincoln Engineering のもとでは 無 効 でなかったと 判 決 した。 従 って、クレームは 古 いもの<br />

の 組 み 合 わせを 根 拠 として 拒 絶 されるべきではない。<br />

2173.05(k) 寄 せ 集 め<br />

クレームは「 寄 せ 集 め」であることを 根 拠 に 拒 絶 されるべきではない。In re Gustafson, 331<br />

F.2d 905, 141 USPQ 585 (CCPA 1964)( 出 願 人 は、クレームが、 特 許 法 第 101 条 、 第 102 条 、<br />

第 103 条 又 は 第 112 条 のもとで 拒 絶 されているかどうかを 知 る 権 利 を 有 する);In re Collier,<br />

397 F.2d 1003, 1006, 158 USPQ 266, 268 (CCPA 1968)(「「 寄 せ 集 め」による 拒 絶 は 非 法 定<br />

的 である」)。<br />

クレームが 本 質 的 事 項 を 省 略 するか、 又 は、 出 願 人 により 明 細 書 中 に 定 義 された 発 明 の 本 質<br />

的 要 素 の 相 互 の 関 連 付 けを 怠 った 場 合 は、MPEP 第 2172.01 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(m) 冗 長<br />

審 査 官 は、クレームがあまりに 長 い 記 載 又 は 重 要 でない 詳 細 事 項 を 含 んでいるためにクレー<br />

ムされた 発 明 の 範 囲 が 不 明 瞭 になるときにのみ、クレームを 冗 長 であるとして 拒 絶 するべき<br />

である。クレームはクレームの 境 界 及 び 限 界 された 保 護 対 象 が 決 定 できない 程 度 に 長 い 記 載<br />

を 含 むときに 時 に 冗 長 であるとして 拒 絶 される。<br />

306


2173.05(n) 多 項 化<br />

特 許 規 則 第 1.75. 条 クレーム(1 個 または 複 数 )<br />

(a) 明 細 書 は、 出 願 人 が 自 己 の 発 明 又 は 発 見 とみなす 保 護 対 象 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 に 主<br />

張 するするクレームで 締 めくくらねばならない。<br />

(b)2 つ 以 上 のクレームは、 実 質 的 に 互 いに 異 なり、 且 つ、 不 当 に 多 項 化 されないことを 条 件<br />

として、 提 示 されてもよい。<br />

出 願 人 の 発 明 の 本 質 及 び 範 囲 に 鑑 みて、 出 願 人 が 反 復 的 且 つ 多 項 化 された 不 合 理 な 数 のクレ<br />

ームを 提 示 し、その 結 果 、 明 確 化 せずに 混 乱 を 生 じる 場 合 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基<br />

づく 不 当 な 多 項 化 についての 拒 絶 は 適 切 でありうる。In re Chandler, 319 F.2d 211, 225, 138<br />

USPQ 138, 148 (CCPA 1963)において 裁 判 所 により 指 摘 されたように「 出 願 人 は、 採 用 した 数<br />

及 び 用 語 に 関 してクレームへの 記 載 の 際 に 合 理 的 な 自 由 度 がみとめられなければならない。<br />

自 己 の 発 明 を 真 に 指 示 し 且 つ 定 義 する 用 語 を 選 択 する 際 の 選 択 の 自 由 に 対 する 出 願 人 の 権 利<br />

は 制 限 されてはならない。ただし、かかる 自 由 度 は、 定 義 を 迷 路 のように 混 乱 させる 反 復 及<br />

び 多 項 化 の 程 度 まで 認 可 するまで 拡 張 されるべきではない。 合 理 の 原 則 は、 個 別 の 事 例 にお<br />

ける 関 連 事 実 及 び 状 況 に 基 づいて 実 用 及 び 適 用 されなければならない。」 同 じく 参 照 として、<br />

In re Flint, 411 F.2d 1353, 1357, 162 USPQ 228, 231 (CCPA 1969)。 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 に 基 づく 不 当 な 多 項 化 による 拒 絶 は 思 慮 深 く 適 用 されるべきであり、 且 つ、まれである<br />

べきである。<br />

特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 不 当 な 多 項 化 による 拒 絶 が 適 切 ならば、 審 査 官 は、 電 話 で<br />

出 願 人 に 連 絡 し、クレームが 不 当 に 多 項 化 されており 且 つ 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づい<br />

て 拒 絶 されると 説 明 するべきである。MPEP 第 408 条 に 留 意 すること。 審 査 官 は、 審 査 目 的 の<br />

ために 指 定 された 数 のクレームを 出 願 人 が 選 択 することもあわせて 要 請 するべきである。 出<br />

願 人 が、 電 話 で 審 査 のためにクレームを 選 択 する 意 思 があるならば、 次 の 拒 絶 通 知 において、<br />

選 択 されたクレームの 実 体 に 対 する 措 置 とともに、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 不 当 な<br />

多 項 化 によるすべてのクレームに 対 する 拒 絶 がなされるべきである。 出 願 人 が 電 話 での 要 請<br />

に 応 じることを 拒 絶 するならば、 次 の 拒 絶 通 知 において、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく<br />

不 当 な 多 項 化 によるすべてのクレームの 拒 絶 がなされるべきである。 出 願 人 の 回 答 は 審 査 目<br />

的 のためにクレームの 選 択 を 含 めなければならず、その 数 は、 審 査 官 により 指 定 された 数 よ<br />

り 大 きくなってはならない。 出 願 人 の 回 答 への 応 答 時 に、 審 査 官 が 不 当 な 多 項 化 による 拒 絶<br />

に 執 着 するならば、 当 該 拒 絶 が 反 復 されるべきであり、 且 つ、 選 択 されたクレームの 実 体 が<br />

審 査 されるものとする。この 手 続 きは、 不 当 な 多 項 化 による 拒 絶 に 対 して、 審 判 部 によって<br />

審 判 を 受 ける 出 願 人 の 権 利 を 維 持 している。<br />

また、ある 一 つのクレームをある 許 容 されたクレームを 根 拠 に 拒 絶 することが、これらが 当<br />

該 技 術 分 野 の 古 い 保 護 対 象 によってのみ 異 なるならば、 可 能 である。 拒 絶 のこの 根 拠 は Ex<br />

parte Whitelaw, 1915 C.D. 18, 219 O.G. 1237 (Comm’r Pat. 1914)に 明 記 されている。Ex<br />

parte Whitelaw 原 理 はクレームが 不 当 に 多 項 化 されているか 又 は 実 質 的 なコピーである 事 例<br />

に 限 定 される。Ex parte Kochan, 131 USPQ 204, 206 (Bd. App. 1961)。<br />

2173.05(o) 二 重 包 含<br />

「 二 重 包 含 」がクレーム 中 では 不 適 切 であるというルールそれ 自 体 はない。In re Kelly, 305<br />

F.2d 909, 916, 134 USPQ 397, 402 (CCPA 1962)(「『 二 重 包 含 に 不 利 なルール』への 自 動 的<br />

307


な 依 存 は『 二 重 包 含 を 許 容 するルール』への 自 動 的 な 依 存 と 同 数 の 不 合 理 な 解 釈 をもたらす<br />

であろう。 支 配 的 な 考 慮 事 項 は 二 重 包 含 ではなく、クレームの 文 言 の 合 理 的 解 釈 は 何 かであ<br />

る。」)Ex parte White, 759 O.G. 783 (Bd. App. 1958) 及 び Ex parte Clark, 174 USPQ 40<br />

(Bd. App. 1971)といった 古 い 事 例 は、 各 事 例 の 事 実 に 従 って 配 慮 をもって 適 用 されるべきで<br />

ある。<br />

一 以 上 の 要 素 のクレームへの 複 数 回 の 包 含 が 当 該 クレームにおいて 不 明 瞭 性 を 生 じるかどう<br />

かを 判 断 するために、 各 事 例 における 事 実 が 評 価 されなければならない。ある 化 合 物 がクレ<br />

ームに 記 載 されたマーカシュ 群 のうち 2 つ 以 上 の 部 材 に 包 含 されうるということでだけでは、<br />

審 査 又 は 侵 害 いずれの 目 的 上 においても、 当 該 クレームの 範 囲 についていかなる 不 確 実 性 も<br />

生 じない。 他 方 、ある 装 置 を 対 象 とするクレームが、 同 一 の 要 素 を 2 回 含 むと 読 める 場 合 は、<br />

クレームは 不 明 瞭 である 可 能 性 がある。Ex parte Kristensen, 10 USPQ2d 1701 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1989)。<br />

2173.05(p) プロダクト・バイ・プロセス・クレーム、 又 は、 製 品 とプロセスを 対 象 とする<br />

クレーム<br />

多 くの 状 況 において、クレームは 2 つ 以 上 の 法 定 の 発 明 カテゴリーへの 参 照 を 含 むようにド<br />

ラフティングすることがみとめられる。<br />

I. プロダクト・バイ・プロセス<br />

プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、 製 品 が 製 作 されるプロセスの 観 点 からクレーム<br />

される 製 品 を 定 義 する 製 品 クレームであり、 適 切 である。In re Luck, 476 F.2d 650, 177 USPQ<br />

523 (CCPA 1973);In re Pilkington, 411 F.2d 1345, 162 USPQ 145 (CCPA 1969);In re Steppan,<br />

394 F.2d 1013, 156 USPQ 143 (CCPA 1967)。デバイス、 装 置 、 製 造 物 又 は 組 成 物 に 対 するク<br />

レームは、クレームがプロセスではなく 製 品 を 対 象 としていることが 明 確 である 限 り、プロ<br />

セスへの 参 照 を 含 んでもよく、このクレームでは、 当 該 プロセスは、 特 許 法 第 112 条 第 2 段<br />

落 による 異 議 申 立 の 可 能 性 なく 使 用 されるよう 意 図 されている。<br />

出 願 人 は、たとえクレームされる 製 品 をプロダクト・バイ・プロセスの 用 語 で 記 載 すること<br />

が 必 要 であったとしても、 変 わりうる 範 囲 を 持 つクレームを 提 示 してしまう 可 能 性 がある。<br />

Ex parte Pantzer, 176 USPQ 141 (Bd. App. 1972)。<br />

II. 同 一 クレーム 中 の 製 品 及 びプロセス<br />

装 置 と 装 置 を 使 用 する 方 法 手 順 の 両 方 をクレームする 単 一 クレームは、 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 に 基 づいて 不 明 瞭 である。IPXL Holdings v. Amazon.com, Inc., 430 F.2d 1377, 1384,<br />

77 USPQ2d 1140, 1145 (Fed. Cir. 2005); Ex parte Lyell, 17 USPQ2d 1548 (Bd. Pat. App.<br />

& Inter. 1990)( 自 動 変 速 作 業 台 及 びそれを 使 用 する 方 法 を 対 象 とするクレームは 不 明 瞭 で<br />

あると 決 定 され、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づいて 適 切 に 拒 絶 される).<br />

また、 法 定 の 発 明 カテゴリーを 択 一 的 にのみ 明 記 するようドラフティングされたクレームは<br />

「プロセス」 又 は「 機 械 」のいずれも 対 象 とせず、むしろ、 特 許 法 第 101 条 に 規 定 される 2<br />

つの 異 なる 発 明 の 法 定 カテゴリーを 包 含 する 又 は 部 分 的 に 重 複 しているという 理 論 に 基 づき、<br />

かかるクレームは 特 許 法 第 101 条 により 拒 絶 されうる。Id. at 1551。<br />

308


2173.05(q) 「Use( 用 途 )」クレーム<br />

プロセスに 含 まれるいかなる 手 順 も 明 記 せずにプロセスをクレームする 試 みは、 特 許 法 第<br />

112 条 第 2 段 落 に 基 づく 不 明 瞭 性 の 問 題 を 一 般 に 提 起 する。 例 えば「ヒト 繊 維 芽 インターフ<br />

ェロンを 分 離 及 び 精 製 するためにクレーム 4 のモノクロナール 抗 体 を 使 用 するプロセス」と<br />

読 めるクレームは、 用 途 を 単 に、 当 該 用 途 が 実 際 に 実 施 される 方 法 の 範 囲 を 定 めず、 何 ら 能<br />

動 的 、 肯 定 的 手 順 なしに 記 載 しているだけであるから 不 明 瞭 であると 判 示 された。Ex parte<br />

Erlich, 3 USPQ2d 1011 (Bd. Pat. App. & Inter. 1986)。<br />

他 の 諸 決 定 では、 特 許 法 第 101 条 がこの 種 の 拒 絶 のさらに 適 切 な 理 由 となることを 示 唆 して<br />

いる。Ex parte Dunki, 153 USPQ 678 (Bd. App. 1967)において 審 判 部 は、クレーム「 摺 動<br />

摩 擦 による 応 力 を 受 ける 車 両 ブレーキ 部 品 としての 遊 離 炭 素 成 分 の 一 部 を 有 する 高 炭 素 オー<br />

ステナイト 系 鉄 合 金 の 使 用 」は、プロセスの 不 適 切 な 定 義 であると 決 定 した。Clinical<br />

Products Ltd. v. Brenner, 255 F. Supp. 131, 149 USPQ 475 (D.D.C. 1966)において、 地<br />

方 裁 判 所 はクレーム「スルホン 酸 ポリスチレンに 吸 収 されたエフェドリンの 徐 放 治 療 剤 の 体<br />

内 への 使 用 」を 明 瞭 であるが、 特 許 法 第 101 条 のもとでは 適 切 でないと 判 示 した<br />

クレームは 明 細 書 の 開 示 に 照 らして 解 釈 されるべきであるが、 明 細 書 に 含 まれる 限 定 をクレ<br />

ームに 読 みこむことは 不 適 切 であると 一 般 に 考 えられる。 参 照 として、In re Prater, 415 F.2d<br />

1393, 162 USPQ 541 (CCPA 1969) 及 び In re Winkhaus, 527 F.2d 637, 188 USPQ 129 (CCPA<br />

1975)。これらは、クレームに 記 載 されていない 限 定 をクレームに 与 えるためには 明 細 書 に 依<br />

存 することはできないという 前 提 を 論 じている。<br />

「 用 途 」クレームは 特 許 法 第 101 条 及 び 第 102 条 のいずれかに 基 づき 拒 絶 されるべきである<br />

前 項 に 掲 げた 権 限 の 分 割 に 鑑 みて、 最 も 適 切 な 措 置 方 針 は 特 許 法 第 101 条 及 び 第 112 条 のい<br />

ずれかに 基 づき「 用 途 」クレームを 拒 絶 することであろう。<br />

審 判 部 は「utilizing( 利 用 する)」 工 程 を 不 明 瞭 ではないと 決 定 した<br />

多 くの 場 合 、クレームが 明 瞭 であるかどうかの 観 点 から、 許 容 可 能 なものと 異 議 申 し 立 て 可<br />

能 なものの 間 に 微 妙 な 境 界 線 を 引 くことは 困 難 である。Ex parte Porter, 25 USPQ2d 1144 (Bd.<br />

Pat. App. & Inter. 1992)において、 審 判 部 は「utilizing( 利 用 する)」 工 程 を 明 確 に 記 載 し<br />

たクレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づき 不 明 瞭 ではないと 決 定 した(クレームは「 反 応<br />

管 の 開 放 端 から 非 包 装 非 架 橋 及 び 包 装 架 橋 の 流 動 可 能 な 粒 子 触 媒 及 びビード 材 料 を 取 り 外 す<br />

方 法 であって、クレーム 7 のノズルを 使 用 することを 含 む 方 法 」を 対 象 とした。)。<br />

2173.05(r) オムニバスクレーム<br />

いくつかの 出 願 は、「 実 質 的 に 図 示 され 且 つ 説 明 されたとおりの 装 置 」と 読 めるオムニバス<br />

クレームとともに 出 願 される。このクレームは、クレーム 文 言 によって 包 含 若 しくは 除 外 さ<br />

れているものを 指 示 することができないという 点 で 不 明 瞭 であるので、 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 により 拒 絶 されるべきである。オムニバスクレームの 歴 史 の 考 察 及 びオムニバスクレー<br />

ムが 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 に 適 合 しない 理 由 の 説 明 は Ex parte Fressola, 27 USPQ2d<br />

1608 (Bd. Pat. App. & Inter. 1993)を 参 照 のこと。<br />

かかるクレームは 書 式 段 落 7.35 を 使 用 して 拒 絶 することができる。MPEP 第 706.03(d) 条 を 参<br />

照 のこと。<br />

309


審 査 官 による 修 正 によるかかるクレームの 取 消 は MPEP 第 1302.04(b) 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(s) 図 面 又 は 表 の 参 照<br />

可 能 な 限 り、クレームはそれ 自 体 が 完 成 したものでなければならない。 特 定 の 図 面 又 は 表 の<br />

参 照 による 引 用 は「 語 で 発 明 を 定 義 する 実 用 的 な 方 法 がない 場 合 、 且 つ、 図 面 又 は 表 をクレ<br />

ームに 複 写 するよりも 参 照 により 引 用 するほうがより 簡 潔 な 場 合 の 例 外 的 な 状 況 でのみ 許 可<br />

される。 参 照 による 引 用 は 必 要 性 の 原 理 であって 出 願 人 の 便 宜 のためのものではない」Ex<br />

parte Fressola, 27 USPQ2d 1608, 1609 (Bd. Pat. App. & Inter. 1993)( 引 用 は 省 略 )。<br />

詳 細 な 説 明 及 び 図 面 に 記 載 された 要 素 と 対 応 する 参 照 される 特 徴 は、クレーム 中 の 同 一 の 要<br />

素 又 は 要 素 群 の 記 載 と 併 用 して 使 用 してもよい。MPEP 第 608.01(m) 条 を 参 照 のこと。<br />

2173.05(t) 化 学 式<br />

化 合 物 及 び 化 合 物 を 含 む 組 成 物 に 対 するクレームは、 化 合 物 の 化 学 構 造 を 説 明 する 式 を 使 用<br />

することが 多 い。これらの 構 造 は、 指 定 された 化 学 式 が 誤 っていることを 示 す 証 拠 がなけれ<br />

ば、 不 明 確 又 は 推 測 的 であると 考 えてはならない。 裏 付 けとなる 分 光 法 又 は 他 のデータがな<br />

いことは、 構 造 が 不 明 瞭 であると 認 める 根 拠 とはならない。 参 照 として、Ex parte Morton, 134<br />

USPQ 407 (Bd. App. 1961) 及 び Ex parte Sobin, 139 USPQ 528 (Bd. App. 1962)。<br />

化 合 物 に 対 するクレームは、 単 に、 構 造 が 提 示 されていないから、 若 しくは、 部 分 的 な 構 造<br />

が 提 示 されているからといって 不 明 瞭 とはならない。 例 えば In re Fisher, 427 F.2d 833, 166<br />

USPQ 18 (CCPA 1970)において、 争 点 のクレーム 文 言 は、 化 合 物 を「 以 下 の 配 列 を 有 する 少 な<br />

くとも 24 個 のアミノ 酸 のポリペプチド」と 述 べた。 全 体 構 造 の 特 定 を 怠 ったことを 理 由 とす<br />

る 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 は 覆 され、 裁 判 所 は「かかる 限 定 のないことは、 明 ら<br />

かにクレームを 拡 大 し、 開 示 の 十 分 性 の 問 題 を 提 起 するものの、クレームを 不 明 瞭 とはしな<br />

い」と 判 示 した。 化 合 物 は、 当 業 者 に 対 して 材 料 を 的 確 に 説 明 する 名 称 によってクレームさ<br />

れてもよい。 参 照 として、Martin v. Johnson, 454 F.2d 746, 172 USPQ 391 (CCPA 1972)。<br />

未 知 の 構 造 の 化 合 物 は 物 理 的 及 び 化 学 的 特 徴 の 組 み 合 わせによってクレームされてもよい。<br />

参 照 として、Ex parte Brian, 118 USPQ 242 (Bd. App. 1958)。 化 合 物 は、 不 明 瞭 性 の 問 題<br />

を 提 起 することなく 当 該 化 合 物 が 製 作 されるプロセスの 観 点 から、クレームされてもよい。<br />

2173.05(u) クレーム 中 の 商 標 若 しくは 商 号<br />

クレームに 商 標 若 しくは 商 号 が 存 在 することそれ 自 体 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づい<br />

て 不 適 切 ではないが、 標 章 又 は 名 称 がクレーム 中 にどのように 使 用 されるかを 判 断 するため<br />

に、クレームは 注 意 深 く 解 析 されるべきである。 商 標 若 しくは 商 号 は、 商 品 自 体 ではなく、<br />

商 品 の 起 源 を 特 定 するために 使 用 されることを 認 識 することが 重 要 である。このように 商 標<br />

若 しくは 商 号 は、 商 標 若 しくは 商 号 と 関 連 付 けられた 商 品 を 特 定 も 記 載 もしない。MPEP 第<br />

608.01(v) 条 における 商 標 及 び 商 号 の 定 義 を 参 照 のこと。いくつかの 商 標 の 一 覧 が 付 属 書 I<br />

に 見 いだされる。<br />

商 標 若 しくは 商 号 が、 特 定 の 材 料 若 しくは 製 品 を 特 定 又 は 記 載 するための 限 定 として、クレ<br />

ームに 使 用 されるならば、クレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 に 適 合 しない。Ex parte<br />

Simpson, 218 USPQ 1020 (Bd. App. 1982)。 商 標 若 しくは 商 号 はいかなる 特 定 の 材 料 若 しく<br />

は 製 品 を 特 定 するためにも 適 切 に 使 用 することができないことから、クレーム 範 囲 は 不 明 確<br />

310


である。 実 際 には 商 標 の 価 値 は、 製 品 の 供 給 源 又 は 起 源 の 識 別 として 使 用 されるものではな<br />

く、 製 品 を 記 述 する 程 度 にまで 失 われるであろう。このように、 材 料 若 しくは 製 品 を 特 定 又<br />

は 記 載 するためにクレームに 商 標 若 しくは 商 号 を 使 用 することは、クレームを 不 明 瞭 にする<br />

だけでなく、 商 標 若 しくは 商 号 の 不 適 切 な 使 用 も 構 成 するであろう。<br />

商 標 若 しくは 商 号 がクレームに 記 載 されており、 且 つ、クレームにおける 限 定 としては 意 図<br />

されていないならば、それがクレーム 中 に 使 用 される 理 由 についての 問 題 に 対 処 されるべき<br />

である。クレームにおけるその 存 在 はクレーム 範 囲 について 混 乱 を 引 き 起 こすか?もしそう<br />

であれば、クレームは 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づいて 拒 絶 されるべきである。<br />

2173.05(v) 機 械 の 単 なる 機 能<br />

プロセス 又 は 方 法 クレームは、 開 示 された 機 械 又 は 装 置 の 本 来 的 機 能 を 定 義 しているという<br />

理 由 のみによっては、 米 国 特 許 商 標 庁 審 査 官 により 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 拒 絶 の<br />

適 用 を 受 けない。In re Tarczy-Hornoch, 397 F.2d 856, 158 USPQ 141 (CCPA 1968)。<br />

Tarczy-Hornoch において 裁 判 所 は、そうでなければ 特 許 付 与 可 能 なプロセスクレームは、 当<br />

該 クレームが 一 部 分 をなす 出 願 が、 記 載 された 工 程 を 本 来 的 に 実 施 する 装 置 の 一 部 を 開 示 し<br />

ているということだけで 拒 絶 されるべきではないと 判 示 した。<br />

2173.06 不 明 瞭 であるとして 拒 絶 されたクレームの 先 行 技 術 による 拒 絶<br />

クレームのすべての 語 は、 先 行 技 術 に 対 するクレームの 特 許 性 を 判 断 する 際 に 考 えられなけ<br />

ればならない。In re Wilson, 424 F.2d 1382, 165 USPQ 494 (CCPA 1970)。 用 語 が 不 明 瞭 で<br />

ありうるからといって、そのクレームを 先 行 技 術 に 対 して 自 明 であるとはしない。クレーム<br />

の 用 語 が 不 明 瞭 であると 考 えられるとき、 先 行 技 術 と 比 較 した 不 明 瞭 なクレームの 審 査 には<br />

少 なくとも 2 つの 手 法 が 可 能 である。<br />

第 一 に、 不 確 実 性 の 程 度 が 大 きくない 場 合 、 且 つ、クレームが 2 つ 以 上 の 解 釈 の 適 用 を 受 け<br />

少 なくとも 一 方 の 解 釈 がクレームを 先 行 技 術 に 対 して 特 許 付 与 不 可 能 にする 場 合 には、 適 切<br />

な 措 置 方 針 は、 審 査 官 が、2 つの 拒 絶 :(A) 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 不 明 瞭 性 に 基 づく<br />

拒 絶 、 及 び、(B) 先 行 技 術 を 適 用 可 能 とするクレーム 解 釈 に 基 づく 先 行 技 術 に 対 する 拒 絶 を 記<br />

入 することであろう。 参 照 として、 例 えば Ex parte Ionescu, 222 USPQ 537 (Bd. App. 1984)。<br />

これら 状 況 において 先 行 技 術 と 比 較 した 拒 絶 を 行 う 際 は、 審 査 官 が、クレームがどのように<br />

解 釈 されているかを 指 摘 することが 重 要 である。 第 二 に、クレームの 限 定 の 適 切 な 解 釈 に 関<br />

して 大 きな 混 乱 及 び 不 確 実 性 がある 場 合 は、かかるクレームを 先 行 技 術 を 理 由 に 拒 絶 するこ<br />

とは 適 切 ではないであろう。In re Steele, 305 F.2d 859, 134 USPQ 292 (CCPA 1962)にお<br />

いて 記 述 されたように、 特 許 法 第 103 条 に 基 づく 拒 絶 は、クレームに 採 用 された 用 語 の 意 味<br />

についての 相 当 の 推 測 、 又 は、クレーム 範 囲 についてなされるはずの 想 定 に 基 づいて 行 うべ<br />

きではない。<br />

最 初 の 手 法 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 審 査 官 の 拒 絶 が 確 認 されない 場 合 の 逐 次 的 審<br />

査 を 回 避 できることから、 審 査 の 見 地 から 推 奨 され、 且 つ、クレームが 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 の 拒 絶 を 回 避 するために 再 ドラフティングされる 場 合 に 出 願 人 が 関 連 の 先 行 技 術 をより<br />

良 く 理 解 できるようにする。<br />

311


2174 特 許 法 第 112 条 の 第 1 段 落 要 件 と 第 2 段 落 要 件 の 関 係<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 1 段 落 及 び 第 2 段 落 の 要 件 は、 別 のものであり 且 つ 識 別 性 がある。 明 細<br />

書 の 記 載 又 は 実 施 可 能 な 開 示 が、クレームに 包 含 される 保 護 対 象 と 相 応 する 範 囲 になくても、<br />

このことだけでは、クレームを 不 正 確 若 しくは 不 明 瞭 、 又 は、その 他 特 許 法 第 112 条 第 2 段<br />

落 に 適 合 していないとはしない。 正 しくは、クレームは 不 十 分 な 開 示 に 基 づいており( 特 許 法<br />

第 112 条 第 1 段 落 )、それを 理 由 に 拒 絶 されるべきである。In re Borkowski, 422 F.2d 904,<br />

164 USPQ 642 (CCPA 1970)。 明 細 書 が、 特 定 の 特 徴 又 は 要 素 が 発 明 を 実 施 するために 決 定 的<br />

に 重 要 若 しくは 本 質 的 であることを 開 示 しているならば、 当 該 特 定 の 特 徴 又 は 要 素 をクレー<br />

ムに 記 載 又 は 含 めることを 怠 ると、それらクレームが 実 施 可 能 な 開 示 によって 裏 付 けられて<br />

いないことに 基 づく 拒 絶 の 理 由 を 提 示 する 可 能 性 がある。In re Mayhew, 527 F.2d 1229, 188<br />

USPQ 356 (CCPA 1976)。Mayhew において、 審 査 官 は、 明 細 書 に 開 示 されたプロセスの 作 用 の<br />

唯 一 の 態 様 は、 処 理 サイクルにおける 特 定 の 位 置 での 冷 却 領 域 の 使 用 を 含 むと 主 張 した。ク<br />

レームは、 冷 却 工 程 若 しくはプロセスにおける 当 該 工 程 の 位 置 のいずれの 指 示 も 怠 ったこと<br />

から 拒 絶 された。 裁 判 所 は 冷 却 槽 及 びその 位 置 が 本 質 的 であると 納 得 し、 特 定 位 置 に 配 置 さ<br />

れた 冷 却 領 域 の 使 用 の 記 載 を 怠 ったクレームは 実 施 可 能 な 開 示 によって 裏 付 けられていない<br />

と 判 示 した( 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 )。<br />

加 えて、クレームが、 出 願 時 の 願 書 に 記 載 されなかった 発 明 を 含 むよう 補 正 されるならば、<br />

出 願 時 の 明 細 書 に 記 載 されていない 保 護 対 象 を 対 象 としているとした 特 許 法 第 112 条 第 1 段<br />

落 による 当 該 クレームの 拒 絶 が、 適 切 である 可 能 性 がある。In re Simon, 302 F.2d 737, 133<br />

USPQ 524 (CCPA 1962)。 組 成 物 の 反 応 生 成 物 に 対 するクレームを 含 んだ 再 発 行 出 願 を 伴 った<br />

Simon において、 出 願 人 は、 小 組 み 合 わせ A+B+C を 含 む 組 成 物 の 反 応 生 成 物 に 対 するクレー<br />

ムを 提 示 した 一 方 、 原 クレーム 及 び 発 明 の 詳 細 な 説 明 は 組 み 合 わせ A+B+C+D+E を 含 む 組 成 物<br />

を 対 象 としていた。 裁 判 所 は、クレームされた 反 応 生 成 物 にとって 成 分 D+E が 本 質 的 でない<br />

という 主 張 に 対 する 何 ら 意 味 ある 裏 づけをみとめず、 小 組 み 合 わせ A+B+C の 反 応 生 成 物 を 対<br />

象 とするクレームは 出 願 時 願 書 に 記 載 されていないと 結 論 づけた( 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 )。<br />

同 じく 参 照 として、In re Panagrossi, 277 F.2d 181, 125 USPQ 410 (CCPA 1960)。<br />

312


2181 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 の 限 定 を 特 定 する<br />

本 条 は、 特 許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 によるクレーム 中 の「ミーンズ・オア・ステップ・プラ<br />

ス・ファンクション」 限 定 の 審 査 のための 指 針 を 規 定 する。これら 指 針 は、 本 庁 の 現 在 の 法<br />

律 理 解 に 基 づいており、 最 高 裁 判 所 、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 、 及 び、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所<br />

の 下 級 裁 判 所 の 拘 束 力 ある 判 例 と 完 全 に 一 貫 していると 考 えられている。これら 指 針 は 実 質<br />

的 な 規 則 制 定 を 構 成 するものではなく、それ 故 、 法 律 の 効 力 及 び 効 果 を 有 していない。<br />

連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、In re Donaldson Co., 16 F.3d 1189, 29 USPQ2d 1845 (Fed. Cir.<br />

1994)での en banc 判 決 において「ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション」 限<br />

定 は、 過 去 において 特 許 審 査 実 務 が 指 示 した 方 法 とは 異 なる 方 法 で 解 釈 されるべきであると<br />

判 決 した。Donaldson 判 決 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 従 った「ミーンズ・オア・ステッ<br />

プ・プラス・ファンクション」 限 定 の 範 囲 が 審 査 時 に 解 釈 される 方 法 にのみ 影 響 する。<br />

Donaldson 判 決 は 本 特 許 法 の 他 のいかなる 項 が 解 釈 又 は 適 用 される 方 法 にも 直 接 には 影 響 し<br />

ない。<br />

特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 に 基 づく 特 許 性 の 判 断 を 行 う 際 、 過 去 の 実 務 は、「ミーンズ・<br />

オア・ステップ・プラス・ファンクション」 限 定 をそれに「 最 も 広 い 合 理 的 解 釈 」を 与 える<br />

ことによって 解 釈 することであった。このことは、PTO の 長 年 続 く 実 務 のもとでは、 先 行 技<br />

術 のミーンズ・オア・ステップが 明 細 書 に 記 載 された 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 と 均 等<br />

であるかどうかにかかわらず、かかる 限 定 を、クレームに 指 示 された 機 能 を 実 行 したあらゆ<br />

る 先 行 技 術 のミーンズ・オア・ステップに 読 めることと 解 釈 することを 意 味 した。ただし、<br />

Donaldson において 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 以 下 のように 述 べた。<br />

「 我 々の 判 示 によって、 審 査 官 がミーンズ・プラス・ファンクション 文 言 に 与 えうる『 最 も<br />

広 い 合 理 的 解 釈 』とは、 第 6 段 落 において 法 的 に 義 務 付 けられた 解 釈 を 与 えることをいう。<br />

従 って、PTO は 特 許 性 判 断 を 行 う 際 には、かかる 文 言 に 対 応 する 明 細 書 に 開 示 された 構 造 を<br />

無 視 してはならない。」<br />

I. 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 該 当 する 文 言<br />

USPTO は 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 を 適 宜 適 用 し、 出 願 中 の 発 明 の 書 面 記 載 に 照 らして 且 つそ<br />

れと 一 貫 した 最 も 広 い 合 理 的 解 釈 をクレームに 与 えなければならない。 参 照 として、<br />

Donaldson, 16 F.3dat 1194, 29 USPQ2dat 1850( 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は「 合 理 的 解 釈 の<br />

慣 例 に 基 づいて、PTO がどれだけ 広 くミーンズ・プラス・ファンクション 文 言 を 解 釈 しうる<br />

かについての 限 定 を 単 に 設 定 しているにすぎない」と 記 載 する)。 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、<br />

出 願 人 ( 及 び 再 審 査 特 許 権 者 )が、PTO での 手 続 き 中 に、 自 己 の 発 明 を USPTO に 対 して 正 確 に<br />

定 義 する 機 会 及 び 義 務 を 有 することを 判 示 した。 参 照 として、In re Morris, 127 F.3d 1048,<br />

1056.57, 44 USPQ2d 1023, 1029.30 (Fed. Cir. 1997)( 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 は 正 確 なク<br />

レームドラフティングの 責 任 を 出 願 人 に 課 している);In re Zletz, 893 F.2d 319, 322, 13<br />

USPQ2d 1320, 1322 (Fed. Cir. 1989)( 訴 訟 時 に 裁 判 所 によって 使 用 されるクレーム 解 釈 の 方<br />

法 は PTO に 対 する 係 属 出 願 の 手 続 において 適 用 可 能 なクレーム 解 釈 の 方 法 ではない);Sage<br />

Prods., Inc. v. Devon Indus., Inc., 126 F.3d 1420, 1425, 44 USPQ2d 1103, 1107 (Fed.<br />

Cir. 1997)( 手 続 中 に、より 広 いクレームを 交 渉 する 明 らかな 機 会 があったがそれを 行 わなか<br />

った 特 許 権 者 は、 均 等 論 によりクレームを 拡 張 することを 求 めてはならない。クレームされ<br />

た 構 造 のこの 予 見 可 能 な 変 更 への 保 護 を 怠 ったことの 代 償 は 公 衆 ではなく 特 許 権 者 が 負 わね<br />

313


ばならないからである。)。 出 願 人 及 び 再 審 査 特 許 権 者 は、クレーム 限 定 に 特 許 法 第 112 条 第<br />

6 段 落 が 適 用 されたときは、これらの 指 針 と 一 貫 して、USPTO に 対 して 明 記 する 機 会 及 び 義 務<br />

を 有 する。<br />

クレーム 限 定 は、 次 に 掲 げる 3 分 岐 解 析 が 満 たされるならば、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適<br />

用 されるものとする。<br />

(A) クレーム 限 定 は 語 句 「means for(のための 手 段 )」 又 は「step for(のための 手 段 )」を 使<br />

用 しなければならない。<br />

(B) 「means for」 又 は「step for」は 機 能 的 文 言 によって 修 飾 されなければならない。 及 び<br />

(C) 語 句 「means for」 又 は「step for」は 指 示 された 機 能 を 達 成 するために 十 分 な 構 造 、 材<br />

料 、 又 は 作 用 によって 修 飾 されてはならない。<br />

この 解 析 の 第 一 の 分 岐 に 関 して、 語 句 「means for」 又 は「step for」を 含 まないクレーム 要<br />

素 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるとは 考 えられないであろう。 出 願 人 が、クレー<br />

ム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 によって 処 理 されることを 希 望 するならば、 出 願 人 は(A)<br />

これら 指 針 に 従 って 語 句 「means for」 又 は「step for」を 含 めるようクレームを 補 正 するか、<br />

又 は、(B) 語 句 「means for」 又 は「step for」は 使 用 されていないけれども、クレーム 限 定<br />

が 実 行 される 機 能 として 書 かれており、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 の 適 用 を 除 外 する 十 分 な 構<br />

造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 記 載 していないことを 証 明 しなければならない。 参 照 として、Watts v.<br />

XL Systems, Inc., 232 F.3d 877, 56 USPQ2d 1836 (Fed. Cir. 2000)(クレーム 限 定 は、 用<br />

語 「means」がないことが、 限 定 がミーンズ・プラス・ファンクション 形 式 ではないこと、 及<br />

び、 出 願 人 が 当 該 推 定 に 反 論 しなかったことの 推 定 を 提 起 したことから、 特 許 法 第 112 条 第<br />

6 段 落 が 適 用 されないと 判 示 された); 同 じく 参 照 として、Masco Corp. v. United States, 303<br />

F.3d 1316, 1327, 64 USPQ2d 1182, 1189 (Fed. Cir. 2002)(「 方 法 クレームが 用 語 「step[s]<br />

for」を 含 まない 場 合 は、 当 該 クレームの 限 定 は、 当 該 限 定 が 作 用 を 含 まないことを 証 明 しな<br />

ければステップ・プラス・ファンクション 限 定 として 解 釈 できない。」)。<br />

次 に 掲 げる 例 のいくつかは、 語 句 「means for」 又 は「step for」は 使 用 されなかったにもか<br />

かわらず、 審 判 部 又 は 裁 判 所 のいずれかが、クレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 の 範<br />

囲 に 該 当 したと 判 断 した 状 況 を 示 した。 当 該 例 は 事 実 特 定 的 であり、それ 自 体 規 則 とされる<br />

べきではないことに 留 意 されたい。 参 照 として、Signtech USA, Ltd. v. Vutek, Inc., 174 F.3d<br />

1352, 1356, 50 USPQ2d 1372, 1374. 75 (Fed. Cir.1999)(「・・・に 配 置 されたインク 送 出 手<br />

段 」は 語 句 「インク 送 出 手 段 」が「インク 送 出 のための 手 段 」と 均 等 であることから 特 許 法<br />

第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 される);Al-Site Corp. v. VSI Int’l, Inc., 174 F.3d 1308, 1317-19,<br />

50 USPQ2d 1161, 1166-67 (Fed. Cir. 1999)(クレーム 要 素 「メガネ 用 ハンガー 部 材 」 及 び「メ<br />

ガネ 接 触 部 材 」は 機 能 を 含 んでいるものの、クレーム 自 体 がこれら 機 能 を 実 行 するために 十<br />

分 な 構 造 的 限 定 をこれらクレーム 要 素 が 含 んでいることから 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は 適 用<br />

されない);Seal-Flex, Inc. v. Athletic Track and Court Construction, 172 F.3d 836, 850,<br />

50 USPQ2d 1225, 1234 (Fed. Cir. 1999) (Radar, J., 同 意 意 見 )(「それにもかかわらず、<br />

明 白 なステップ・プラス・ファンクション 文 言 のないクレーム 要 素 は、 当 該 機 能 を 実 行 する<br />

ための 作 用 を 記 載 せずに 単 に 根 拠 をなす 機 能 をクレームするだけならば、 第 112 条 第 6 段 落<br />

に 該 当 する 可 能 性 がある。・・・ 一 般 的 用 語 において、 方 法 クレーム 要 素 の 根 拠 をなす 機 能 ’は、<br />

当 該 要 素 が、クレームの 他 の 要 素 及 び 当 該 クレーム 全 体 が 達 成 するものとの 関 係 において、<br />

何 を 究 極 的 に 達 成 するかに 対 応 している。 反 対 に、 作 用 ’は、 機 能 がどのように 達 成 される<br />

314


かに 対 応 している・・・。クレーム 要 素 が 語 句 step for’を 使 用 するならば、 第 112 条 第 6 段<br />

落 が 適 用 されると 推 定 される・・・。 反 対 に、 単 独 での 用 語 step’ 及 び 語 句 steps of’は、112<br />

条 第 6 段 落 が 当 該 限 定 を 支 配 していないことを 証 明 する 傾 向 にある。);Personalized Media<br />

Communications LLC v. ITC, 161 F.3d 696, 703. 04, 48 USPQ2d 1880, 1886. 87 (Fed. Cir.<br />

1998);Mas-Hamilton Group v. LaGard Inc., 156 F.3d 1206, 1213, 48 USPQ2d 1010, 1016<br />

(Fed. Cir. 1998)(「レバーを 移 動 させるレバー 移 動 要 素 」 及 び「レバーを 保 持 する・・・とと<br />

もにレバーを 解 放 する 可 動 リンク 部 材 」は、クレームされた 限 定 がそれらの 機 械 的 構 造 では<br />

なく 機 能 の 観 点 から 記 載 されたことから、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるミーンズ・<br />

プラス・ファンクション 限 定 として 解 釈 された);Ethicon, Inc. v. United States Surgical<br />

Corp., 135 F.3d 1456, 1463, 45 USPQ2d 1545, 1550 (Fed. Cir. 1998)(「その 語 を 使 用 し<br />

たことは『 発 明 者 が、ミーンズ・プラス・ファンクション 節 に 対 して 法 的 義 務 が 適 用 される<br />

と 知 らされた 上 で 用 語 を 使 用 したとの 推 定 を 生 じる』ことを 意 味 する」);O.I. Corp. v.<br />

Tekmar, 115 F.3d 1576, 1583, 42 USPQ2d 1777, 1782 (Fed. Cir. 1997)(ミーンズ・プラス・<br />

ファンクション 装 置 クレームと 対 応 しているが 文 言 「step for」を 欠 いた 方 法 クレームには、<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 を 適 用 しなかった)。このように 限 定 中 に 明 白 な 記 載 「means for」<br />

又 は「step for」がなければ、 最 も 広 い 合 理 的 解 釈 は「 対 応 する 構 造 ・・・ 及 びその 均 等 物 」ま<br />

で 限 定 されない。Morris, 127 F.3dat 1055, 44 USPQ2dat 1028(「 本 特 許 法 には、 第 112 条<br />

第 6 段 落 非 適 用 クレームのクレーム 範 囲 を 明 細 書 中 に 認 められた 特 定 事 項 に 関 連 づける 同 等<br />

の 義 務 はない」)。<br />

この 解 析 の 第 二 の 分 岐 に 関 して、クレーム 中 の 要 素 が、 少 なくとも 部 分 的 に、 機 能 を 実 行 す<br />

る 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 ではなく、 当 該 要 素 が 実 行 する 機 能 によって 規 定 されること<br />

が 明 確 でなければならない。 参 照 として、York Prod., Inc. v. Central Tractor Farm & Family<br />

Center, 99 F.3d 1568, 1574, 40 USPQ2d 1619, 1624 (Fed. Cir. 1996) ( 用 語 「means」を<br />

含 むクレーム 限 定 は、クレーム 限 定 が 用 語 「means」を 特 定 の 機 能 と 結 び 付 けなければ、 特 許<br />

法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されないことを 判 示 する)。Caterpillar Inc. v. Detroit Diesel<br />

Corp., 41 USPQ2d 1876, 1882 (N.D. Ind. 1996) ( 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は「 争 点 の 要 素<br />

が 特 定 の 結 果 に 到 達 するための 工 程 を 規 定 するが、 結 果 を 達 成 するために 使 用 された 特 定 の<br />

技 法 又 は 手 続 きを 規 定 しない 機 能 的 な 方 法 クレームに 適 用 される。」);O.I. Corp., 115 F.3d<br />

at 1582-83, 42 USPQ2d at 1782 (プロセスクレームに 関 して、[ 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 ]<br />

は 作 用 を 伴 わないステップ・プラス・ファンクションが 存 在 するときにのみ 関 与 する・・・。 我 々<br />

が、 例 えば passing( 通 過 させる)、heating( 加 熱 する)、reacting( 反 応 する)、transferring<br />

「 移 送 する」といった「ing」 形 の 動 詞 によって 記 載 されたすべてのプロセスクレームをステ<br />

ップ・プラス・ファンクションに 入 れて 解 釈 しようとするならば、 決 して 議 会 が 意 図 しなか<br />

った 方 法 でプロセスクレームを 限 定 するであろう。」( 強 調 は 原 文 のまま)。)ただし「 特 定 の<br />

機 構 が・・・ 機 能 的 用 語 に 定 義 されるということは・・・ 当 該 用 語 を 含 むクレーム 要 素 を 第 112 条<br />

(6)の 意 味 における「 指 示 された 機 能 を 実 行 するための 手 段 」へと 変 換 するには 十 分 ではない。<br />

Greenberg v. Ethicon Endo-Surgery, Inc., 91 F.3d 1580, 1583, 39 USPQ2d 1783, 1786 (Fed.<br />

Cir. 1996)( 機 能 的 用 語 において 定 義 される「 戻 り 止 め 機 構 」は 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適<br />

用 されるよう 意 図 されなかった)。) 同 じく 参 照 として、Al-Site Corp. v. VSI International<br />

Inc., 174 F.3d 1308, 1318, 50 USPQ2d 1161, 1166.67 (Fed. Cir. 1999)(クレーム 要 素 「メ<br />

ガネ 用 ハンガー 部 材 」 及 び「メガネ 接 触 部 材 」は 機 能 を 含 んでいるものの、クレーム 自 体 が<br />

315


これら 機 能 を 実 行 するために 十 分 な 構 造 的 限 定 を 含 むことからこれらクレーム 要 素 には 特 許<br />

法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されない。また、クレーム 前 提 部 分 にのみ 表 される 機 能 の 記 載 は<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるためには 一 般 に 不 十 分 である。O.I. Corp., 115 F.3dat<br />

1583, 42 USPQ2dat 1782( 前 提 部 分 への、 一 連 の 工 程 を 実 行 した 後 に 必 然 的 に 起 こる 結 果 を 記<br />

載 しても、それら 各 工 程 をステップ・プラス・ファンクション 節 には 変 換 しない。 工 程 「 通<br />

過 させる」は、 通 過 させる 工 程 によって 実 行 される 機 能 を 具 備 するクレームとは 個 別 に 関 連<br />

していない)。<br />

この 解 析 の 第 三 の 分 岐 に 関 しては、Seal-Flex, 172 F.3dat 849, 50 USPQ2dat 1234 (Radar,<br />

J., 同 意 意 見 )(「クレーム 要 素 が、 一 般 にステップ・プラス・ファンクション 形 式 に 該 当 す<br />

る 文 言 を 使 用 した 場 合 であっても、クレーム 限 定 自 体 が、 指 示 された 機 能 を 実 行 するための<br />

十 分 な 作 用 を 記 載 していない 場 合 は、 第 112 条 第 6 段 落 は 適 用 されない。」);Envirco Corp.<br />

v. Clestra Cleanroom, Inc., 209 F.3d 1360, 54 USPQ2d 1449 (Fed. Cir. 2000)(「 第 二 の<br />

バフル 手 段 」は、 語 「バフル」 自 体 が 構 造 を 知 らせ、 且 つ、クレームはバフルの 構 造 をさら<br />

に 記 載 していることから、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されないと 判 示 );Rodime PLC v.<br />

Seagate Technology, Inc., 174 F.3d 1294, 1303.04, 50 USPQ2d 1429, 1435.36 (Fed. Cir.<br />

1999)(「 移 動 のための 位 置 決 め 手 段 」は、クレームが 手 段 の 根 拠 をなす 構 造 の 一 覧 を 提 供 し<br />

ており、 且 つ、 移 動 機 能 を 実 行 するための 構 造 を 詳 細 に 記 載 したことにより、この 要 素 を 特<br />

許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 の 範 囲 から 削 除 することから、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 され<br />

ないことを 判 示 );Cole v. Kimberly-Clark Corp., 102 F.3d 524, 531, 41 USPQ2d 1001, 1006<br />

(Fed. Cir. 1996)(「 引 き 裂 くための・・・ 穿 孔 手 段 」は、クレームが 引 き 裂 き 機 能 ( 即 ち 穿 孔 )<br />

を 裏 付 ける 構 造 を 記 載 することから 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されないことを 判 示 )を 参<br />

照 のこと。 他 の 事 例 では、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は 違 うように 判 示 した。 参 照 として、<br />

Unidynamics Corp. v. Automatic Prod. Int’l, 157 F.3d 1311, 1319, 48 USPQ2d 1099, 1104<br />

(Fed. Cir. 1998)(「ばね 手 段 」には 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されると 判 示 )。ただし<br />

出 願 人 は、 審 査 中 に、クレーム 限 定 に 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるかどうかを 含 め<br />

て、 自 己 の 発 明 を 正 確 に 定 義 する 機 会 及 び 義 務 を 有 する。このように、 語 句 「means for」 又<br />

は「step for」が 指 示 された 機 能 を 達 成 するために 十 分 な 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 によって 修<br />

飾 されるならば、USPTO はかかる 修 正 文 言 がクレーム 限 定 から 削 除 されるまでは 特 許 法 第 112<br />

条 第 6 段 落 を 適 用 しないものとする。<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるかどうかを 要 素 ごとに 決 定 することが 必 要 である。 特<br />

許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 記 述 された 機 能 を 実 行 する 手 段 又 は 工 程 の 解 釈 にのみ 適 用 されるこ<br />

とから、ミーンズ・プラス・ファンクション 節 又 はステップ・プラス・ファンクション 節 の<br />

すべての 用 語 が、 書 面 記 載 及 びその 均 等 物 に 開 示 されているものに 限 定 されるわけではない。<br />

参 照 として、 例 えば IMS Technology Inc. v. Haas Automation Inc., 206 F.3d 1422, 54 USPQ2d<br />

1129 (Fed. Cir. 2000) ( 語 句 「データブロックの 問 い 合 わせを 逐 次 的 に 表 示 する 手 段 」にお<br />

ける 用 語 「データブロック」は、 逐 次 的 な 表 示 を 引 き 起 こした 手 段 ではなく、 且 つ、その 意<br />

味 は 開 示 された 実 施 形 態 及 びその 均 等 物 には 限 定 されなかった。)。 各 クレームは、たとえそ<br />

の 出 願 に 実 質 的 に 類 似 するプロセス 及 び 装 置 クレームが 含 まれている 場 合 であってさえも、<br />

特 許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 の 適 用 性 を 判 断 するために 独 立 して 審 査 されなければならない。<br />

O.I. Corp., 115 F.3dat 1583-1584, 42 USPQ2dat 1782(「 我 々は、 方 法 クレーム 中 の 工 程 が<br />

「means for」の 修 飾 を 欠 いているものの、 装 置 クレームにおける 限 定 と 実 質 的 に 同 一 の 文 言<br />

316


であることを 認 識 している・・・ 各 クレームは、 第 112 条 の 第 6 段 落 の 要 件 の 適 用 を 受 けるかど<br />

うかを 判 断 するために、 独 立 して 審 査 されなければならない。この 規 定 の 対 象 となる 他 のク<br />

レームに 使 用 される 文 言 と 類 似 の 文 言 を 使 用 していることだけを 理 由 に、ミーンズ・プラス・<br />

ファンクション 又 はステップ・プラス・ファンクションでないクレームがあたかもそうであ<br />

るかのように 解 釈 されたならば、クレームの 解 釈 は 混 乱 を 引 き 起 こすであろう」)。<br />

クレーム 限 定 が 3 分 岐 解 析 を 満 たしており、 且 つ、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づいて 処 理<br />

されている 場 合 、 審 査 官 は、クレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 によって 処 理 されてい<br />

ることを 拒 絶 通 知 中 の 陳 述 に 含 める。ただし、クレーム 限 定 が 語 句 「means for」 又 は「step<br />

for」を 使 用 していない、 即 ち、3 分 岐 解 析 のうち 第 一 の 分 岐 が 満 たされていないならば、 審<br />

査 官 はかかるクレーム 限 定 を 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づいて 処 理 しない。 出 願 人 が 特 定<br />

の 語 句 「means for」 又 は「step for」を 使 用 しなかったことを 理 由 に 出 願 人 が 特 許 法 第 112<br />

条 の 第 6 段 落 の 規 定 の 適 用 を 意 図 しなかったと 推 定 したので、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適<br />

用 されなかったことを 拒 絶 通 知 に 述 べる 必 要 はない。クレーム 限 定 が 語 句 「means for」 又 は<br />

「step for」を 含 むならば、 即 ち、3 分 岐 解 析 のうち 第 一 の 分 岐 が 満 たされるが、 審 査 官 が 3<br />

分 岐 解 析 のうち 第 二 の 分 岐 又 は 第 三 の 分 岐 のいずれかが 満 たされていないと 判 断 するならば、<br />

これら 状 況 において、 審 査 官 は、 語 句 「means for」 又 は「step for」を 使 用 するクレーム 限<br />

定 が 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づいて 取 り 扱 われていない 理 由 を 説 明 する 陳 述 を 拒 絶 通 知<br />

中 に 含 めねばならない。<br />

従 って、これら 指 針 は 出 願 人 に 対 して、 明 確 且 つ 単 純 な 基 準 の 組 に 基 づいて 特 許 法 第 112 条<br />

第 6 段 落 が 適 用 されるか 又 は 適 用 されないかいずれかの 機 会 を 提 供 する。<br />

次 に 掲 げる 例 は、 語 句 「means for」 又 は「step for」が 使 用 されなかったものの、 審 判 部 又<br />

は 裁 判 所 がクレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 の 範 囲 内 にあると 判 断 した 場 合 の 追 加<br />

的 状 況 を 示 す。この 例 は、 事 実 特 定 的 であり、それ 自 体 規 則 として 適 用 されるべきではない<br />

ことに 留 意 されたい。 上 記 に 指 摘 されたように、 審 査 官 は、3 分 岐 解 析 を 適 用 して、クレー<br />

ム 限 定 が、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるよう 解 釈 されるかどうかを 判 断 するべきで<br />

ある。 語 句 「means for」 又 は「step for」を 含 まないクレーム 要 素 は、 特 許 法 第 112 条 第 6<br />

段 落 が 適 用 されると 考 えられないものとする。 出 願 人 が、クレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 第<br />

6 段 落 に 基 づいて 処 理 されることを 希 望 するならば、 出 願 人 は、 語 句 「means for」 又 は「step<br />

for」を 含 むようクレームを 補 正 するか、 若 しくは、 語 句 「means for」 又 は「step for」が<br />

使 用 されていないものの、クレーム 限 定 が 実 行 される 機 能 として 記 載 されており、 特 許 法 第<br />

112 条 の 第 6 段 落 の 適 用 を 除 外 するであろう 十 分 な 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 記 載 していない<br />

ことを 証 明 する、のいずれかを 行 わなければならない。<br />

(A) ロータ 上 にロータを 駆 動 する・・・べく 構 成 及 び 配 置 されたジェット 駆 動 装 置 [「means」<br />

は 不 必 要 ]。 機 能 と 結 びついた 用 語 「デバイス」は、 特 許 法 第 112 条 の 最 終 段 落 に 従 った 構 造<br />

の 定 義 に 適 切 である。 用 語 「 装 置 」への 語 「ジェット 駆 動 」の 付 加 は、 単 に、 後 者 をより 明<br />

確 且 つ 具 体 的 にしているのみである。Ex parte Stanley, 121 USPQ 621 (Bd. App. 1958)。<br />

(B) 同 一 の 含 意 を 有 すると 思 われる「 印 刷 手 段 」 及 び「 印 刷 するための 手 段 」。Ex parte Klumb,<br />

159 USPQ 694 (Bd. App. 1967)。ただし、 構 造 を 持 たない 用 語 「means」の 修 飾 語 句 としての<br />

用 語 「 板 」 及 び「 翼 」は、 実 行 される 機 能 を 何 も 指 示 せず、 且 つ、 特 許 法 第 112 条 の 最 終 段<br />

落 に 該 当 しない。<br />

(C) ・・・を 提 供 するよう 構 成 された 力 生 成 手 段 。De Graffenreid v. United States, 20 Ct. Cl.<br />

317


458, 16 USPQ2d 1321 (Ct. Cl. 1990)<br />

(D) ・・・を 実 質 的 に 瞬 時 に 提 示 するデジタル 表 示 を 含 む 電 話 料 金 登 録 手 段 。Intellicall Inc.<br />

v. Phonometrics, Inc., 952 F.2d 1384, 21 USPQ2d 1383 (Fed. Cir. 1992)<br />

(E) 結 果 として 生 じたフィルムの 摩 擦 係 数 を 低 減 する[ステップ・プラス・ファンクション、<br />

「 工 程 」は 不 必 要 ]、In re Roberts, 470 F.2d 1399, 176 USPQ 313 (CCPA 1973)、 及 び<br />

(F) ・・・を 沈 殿 させるために 結 果 として 生 じたパルプの pH を 約 5.0 まで 上 昇 させる。Ex parte<br />

Zimmerley, 153 USPQ 367 (Bd. App. 1966)。<br />

クレーム 限 定 が 特 許 法 第 112 条 の 第 6 段 落 の 範 囲 内 にあるかどうかが 不 明 確 な 場 合 には、 特<br />

許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 拒 絶 が 適 切 である 可 能 性 がある。<br />

II. 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるクレーム 限 定 の 裏 付 けのために 必 要 な 記 載<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は、ミーンズ・プラス・ファンクション 文 言 で 表 現 されるクレーム<br />

文 言 は「 明 細 書 に 記 載 された・・・ 対 応 する 構 造 及 びその 均 等 物 を 扱 うものとして 解 釈 されるも<br />

のとする」と 述 べている。「クレームにミーンズ・プラス・ファンクション 文 言 を 採 用 する<br />

ならば、 明 細 書 には、 当 該 文 言 が 意 味 するものを 示 す 十 分 な 開 示 が 明 記 されなければならな<br />

い。 出 願 人 が 十 分 な 開 示 の 明 記 を 怠 った 場 合 は、 出 願 人 は 第 112 条 第 2 段 落 によって 求 めら<br />

れる 発 明 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 に 主 張 するすることを 事 実 上 怠 った。」In re Donaldson<br />

Co., 16 F.3d 1189, 1195, 29 USPQ2d 1845, 1850 (Fed. Cir. 1994) (in banc)。<br />

明 瞭 性 要 件 を 満 たすための 適 切 な 基 準 は、ミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクショ<br />

ン 限 定 の 対 応 する 構 造 ( 又 は 材 料 又 は 作 用 )が、 明 細 書 自 体 に、 当 業 者 がどの 構 造 ( 又 は 材 料 又<br />

は 作 用 )が 記 述 された 機 能 を 実 行 するかを 認 識 できる 程 度 に 開 示 されなければならないとい<br />

うことである。 参 照 として、Atmel Corp. v. Information Storage Devices, Inc., 198 F.3d<br />

1374, 1381, 53 USPQ2d 1225, 1230 (Fed. Cir. 1999)。Atmel において、 特 許 権 者 は「 高 電<br />

圧 生 成 手 段 」 限 定 を 含 んだ 装 置 をクレームし、これによって 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用<br />

されると 主 張 した。 明 細 書 は、 特 定 の 高 電 圧 生 成 回 路 を 記 載 した 技 術 雑 誌 からの 非 特 許 文 献<br />

を 参 照 により 引 用 した。 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 明 細 書 中 の 文 献 の 表 題 はそれ 自 体 で、 記<br />

述 された 機 能 を 実 行 するための 手 段 の 正 確 な 構 造 を 当 業 者 に 示 すには 十 分 であろうと 結 論 づ<br />

け、「 反 駁 されていない 証 言 に 基 づいて、 明 細 書 が 高 電 圧 手 段 の 限 定 に 対 応 する 十 分 な 構 造<br />

を 開 示 した 当 業 者 の 知 識 を 想 定 する」よう、 当 該 事 例 を 地 方 裁 判 所 に 差 し 戻 した。Id. at 1382,<br />

53 USPQ2dat 1231。<br />

いずれの 構 造 ( 又 は 材 料 又 は 作 用 )がミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション・ク<br />

レーム 限 定 に 対 応 するかが 当 業 者 に 対 して 明 確 であると 思 われるならば、 構 造 ( 又 は 材 料 又 は<br />

作 用 )の 開 示 は、 明 細 書 においては 黙 示 的 又 は 潜 在 的 であってもよい。 参 照 として、Id. at 1380,<br />

53 USPQ2dat 1229;In re Dossel, 115 F.3d 942, 946-47, 42 USPQ2d 1881, 1885 (Fed. Cir.<br />

1997)。 記 述 された 機 能 を 実 行 するための 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 の 開 示 がなければ、クレーム<br />

は 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 を 満 たすことができない。ミーンズ・プラス・ファンクシ<br />

ョン 限 定 の 文 脈 では「 既 知 の 技 術 又 は 方 法 を 使 用 できるという 最 小 限 の 記 載 は 構 造 を 開 示 し<br />

ない。」Biomedino, LLC v. Waters Technology Corp., 490 F.3d 946, 952, 83 USPQ2d 1118,<br />

1123 (Fed. Cir. 2007)( 発 明 は「 既 知 の 差 圧 、 弁 調 整 及 び 制 御 装 置 によって 制 御 されうる」<br />

という 開 示 は、クレームされた「 弁 調 整 を 操 作 するための 制 御 手 段 」に 対 応 するいかなる 構<br />

造 の 開 示 でもなく、 且 つ、クレームは 不 明 瞭 であると 判 示 された)。 同 じく 参 照 として、Budde<br />

318


v. Harley-Davidson, Inc., 250 F.3d 1369, 1376, 58 USPQ2d 1801, 1806 (Fed. Cir. 2001);<br />

Cardiac Pacemakers, Inc. v. St. Jude Med., Inc., 296 F.3d 1106, 1115-18, 63 USPQ2d 1725,<br />

1731-34 (Fed. Cir. 2002)( 裁 判 所 は「・・・を 起 動 するための・・・ECG 信 号 を 監 視 するための 第<br />

三 の 監 視 手 段 」の 文 言 を、 同 手 段 に 対 して 両 方 の 機 能 を 実 行 することを 要 求 すると 解 釈 し、<br />

且 つ、 明 細 書 において 参 照 された 両 方 の 機 能 を 実 行 しうる 唯 一 の 実 体 は 内 科 医 であると 解 釈<br />

した。 裁 判 所 は、 内 科 医 を 除 けば、いかなる 構 造 もクレームされた 二 重 機 能 を 達 成 しないと<br />

判 示 した。 発 明 の 実 施 形 態 に 開 示 されたいかなる 構 造 もクレームされた 二 重 機 能 を 実 際 には<br />

実 行 しないことから、 明 細 書 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 によって 求 められる 対 応 する 構 造<br />

を 欠 いており、 且 つ、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 できない。)。<br />

ミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション 文 言 中 の 要 素 を 記 載 するクレームが 特 許<br />

法 の 第 112 条 第 2 段 落 に 適 合 するかどうかは、 明 細 書 が 記 述 された 機 能 を 実 行 するために 十<br />

分 な 構 造 ( 又 は 材 料 又 は 作 用 )を 開 示 していないことから、 当 該 明 細 書 が 特 許 法 第 112 条 第 1<br />

段 落 の 記 載 要 件 を 満 たすかどうかの 問 題 と 密 接 に 関 連 している。 参 照 として、In re Noll, 545<br />

F.2d 141, 149, 191 USPQ 721, 727 (CCPA 1976)(ミーンズ・プラス・ファンクション 文 言 自<br />

体 が 不 明 確 でなければ、ミーンズ・プラス・ファクション 文 言 に 記 載 されたクレーム 限 定 は、<br />

明 細 書 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 の 書 面 記 載 要 件 を 満 たす 限 り、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 明<br />

瞭 性 要 件 を 満 たしている)。ただし、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に<br />

よって 課 される 要 件 に 加 えて、いかなる 要 件 も 課 していない。 参 照 として、In re Knowlton,<br />

481 F.2d 1357, 1366, 178 USPQ 486, 492.93 (CCPA 1973)。 反 対 に、 特 許 法 第 112 条 の 第 6<br />

段 落 の 適 用 があるからといって、 出 願 人 が 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 及 び 第 2 段 落 に 適 合 する<br />

ことは 免 除 しない。 参 照 として、Donaldson, 16 F.3dat 1195, 29 USPQ2dat 1850;Knowlton,<br />

481 F.2dat 1366, 178 USPQat 493。<br />

所 定 の 限 定 された 状 況 のもとでは、 書 面 記 載 は、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 によって 求 められ<br />

るように 発 明 を 特 定 的 に 指 示 し 且 つ 明 確 に 主 張 するために、ミーンズ (オア・ステップ)プラ<br />

ス・ファンクション 限 定 に 対 応 する 構 造 ( 又 は 材 料 又 は 作 用 )を 必 ずしも 明 示 的 に 記 載 する 必<br />

要 はない。 参 照 として、Dossel, 115 F.3dat 946, 42 USPQ2dat 1885。 適 切 な 状 況 のもとで<br />

は、 図 面 が 特 許 法 第 112 条 によって 求 められる 発 明 の 書 面 記 載 を 提 供 してもよい。Vas-Cath,<br />

Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1565, 19 USPQ2d 1111, 1118 (Fed. Cir. 1991)。むし<br />

ろ、どの 構 造 がミーンズ・プラス・ファンクション 限 定 に 記 述 された 機 能 を 実 行 しなければ<br />

ならないかが 当 業 者 に 明 らかであると 思 われるならば、ミーンズ・プラス・ファンクション<br />

限 定 に 対 応 する 構 造 の 開 示 は、 書 面 記 載 では 黙 示 的 であってもよい。 参 照 として、Atmel Corp.<br />

v. Information Storage Devices Inc., 198 F.3d 1374, 1379, 53 USPQ2d 1225, 1228 (Fed.<br />

Cir. 1999) (「 当 業 者 」による 解 析 を 適 用 して、ミーンズ・プラス・ファンクション 限 定 を<br />

裏 付 けるために 十 分 な 構 造 が 開 示 されたかどうかを 判 断 するべきであること、 且 つ、USPTO<br />

が 近 年 発 行 した 補 助 指 針 の 提 案 はこの 点 における 裁 判 所 の 判 示 と 一 貫 していることを 記<br />

載 );Dossel, 115 F.3dat 946.47, 42 USPQ2dat 1885(「 明 らかに、デジタルデータを 受 信 し、<br />

複 雑 な 数 学 演 算 を 実 行 し、 且 つ、 結 果 をディスプレイに 出 力 する 装 置 は( 書 面 記 載 が「コンピ<br />

ュータ」 又 は 何 らかの 等 価 語 句 を 全 く 記 述 してはいない 理 由 は 明 確 でないものの) 汎 用 目 的 又<br />

は 特 別 目 的 コンピュータによって 又 はその 上 で 実 装 されなければならない。」)。<br />

319


III. 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるときには、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 への 適 合 を<br />

判 断 する<br />

次 に 掲 げる 指 針 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 が 適 用 されるときに、 出 願 人 が 特 許 法 第 112 条<br />

第 2 段 落 の 要 件 に 適 合 しているかどうかを 判 断 するために 提 供 される。<br />

(A) 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 が 特 定 の 用 語 ( 例 えばエミッタ 組 み 合 わせ 電 圧 比 較 器 )で<br />

明 細 書 中 に 記 載 されており、 且 つ、 当 業 者 が 当 該 記 載 から 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 特 定 しう<br />

るならば、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 及 び 第 6 段 落 の 要 件 が 満 たされる。 参 照 として、Atmel, 198<br />

F.3dat 1382, 53 USPQ2d 1231。<br />

(B) 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 が 明 細 書 において 広 い 包 括 的 用 語 で 記 載 されており、 且<br />

つ、その 具 体 的 な 詳 細 が 参 照 によって 別 の 文 書 に 引 用 される( 例 えば、 参 照 により 引 用 された<br />

米 国 特 許 第 X 号 に 開 示 された 添 付 手 段 、 又 は、 参 照 により 引 用 された IBM 文 献 に 開 示 された<br />

比 較 器 ) 場 合 、 本 庁 審 査 官 は、 引 用 された 文 書 からのいかなる 材 料 にも 依 存 することなく、 明<br />

細 書 に 記 載 を 審 査 しなければならず、 且 つ、「 当 業 者 による」 解 析 を 適 用 して、 当 業 者 が 特<br />

許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 明 瞭 性 要 件 を 満 たすために、 記 述 された 機 能 を 実 行 するための 対 応<br />

する 構 造 ( 又 は 材 料 又 は 作 用 )を 特 定 しうるかどうかを 判 断 しなければならない。 参 照 として、<br />

Default Proof Credit Card System, Inc. v. Home Depot U.S.A., Inc., 412 F.3d 1291, 75<br />

USPQ2d 1116 (Fed. Cir. 2005)(「[ 特 許 法 ] 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づく 質 問 は、 特 許 権 者 が、<br />

構 造 と 関 連 する 明 細 書 に 材 料 を「 参 照 により 引 用 した」かどうかに 関 心 を 示 していないが、<br />

代 わりに 最 初 に、「 構 造 が 明 細 書 中 に 記 載 されているか、 且 つ、もしそうであれば 当 該 記 載<br />

から 当 業 者 が 構 造 を 特 定 するであろうかどうか」を 尋 ねる」)。<br />

(1) 当 業 者 が、 明 細 書 の 記 載 から、 記 述 された 機 能 を 実 行 するための 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用<br />

を 特 定 できると 思 われるならば、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 の 要 件 が 満 たされる。 参 照 として、<br />

Dossel, 115 F.3dat 946-47, 42 USPQ2dat 1885(ミーンズ・プラス・ファンクション 限 定 に<br />

記 述 された 機 能 は、データを「 再 構 築 する」ことを 伴 っていた。 争 点 は、この「 再 構 築 する」<br />

機 能 の 根 拠 をなす 構 造 が、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 を 満 たすために 書 面 記 載 に 十 分 に 記 載 さ<br />

れたかどうかであった。 裁 判 所 は、 書 面 記 載 又 はクレームのいずれも 魔 法 の 単 語 「コンピュ<br />

ータ」を 使 用 しておらず、 且 つ、 発 明 中 に 使 用 されうるコンピュータコードを 引 用 していな<br />

いと 表 明 した。ただし、 書 面 記 載 がクレーム 8 及 び 9 と 組 み 合 わせられる 場 合 は、 開 示 は 第<br />

112 条 第 2 段 落 の 要 件 を 満 たす。」 裁 判 所 は、 本 事 例 の 特 定 の 事 実 に 基 づき「デジタルデー<br />

タを 受 信 し、 複 雑 な 数 学 演 算 を 実 行 し、 且 つ、 結 果 をディスプレイに 出 力 する 装 置 は、 汎 用<br />

目 的 又 は 特 別 目 的 コンピュータによって 又 はその 上 で 実 装 されなければならない」ので、 当<br />

業 者 は「 再 構 築 」 機 能 を 実 行 するための 構 造 を 認 識 するであろうと 結 論 づけた。)。 同 じく 参<br />

照 として、Intel Corp. v. VIA Technologies, Inc, 319 F.3d 1357, 1366, 65 USPQ2d 1934,<br />

1941 (Fed. Cir. 2003)( 特 定 のプログラムを 実 行 するために 修 正 された「 中 核 論 理 」 構 造 は、<br />

明 細 書 では、 当 該 構 造 がどのように 修 正 されなければならないかを 正 確 に 示 した 中 核 論 理 の<br />

内 部 回 路 を 開 示 しなかったものの、クレームされた 機 能 に 十 分 な 対 応 する 構 造 であると 判 示<br />

された。)。<br />

(2) 当 業 者 が、 明 細 書 の 記 載 から、 記 述 された 機 能 を 実 行 するための 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用<br />

を 特 定 できないと 思 われるならば、 出 願 人 は、 参 照 により 引 用 された 材 料 を 含 め、 且 つ、 構<br />

造 、 材 料 、 又 は 作 用 をクレームに 記 述 された 機 能 と 明 確 に 関 係 若 しくは 関 連 付 けるために、<br />

明 細 書 を 補 正 するよう 要 求 されるものとする。 出 願 人 は、 参 照 された 文 書 全 体 に 記 載 された<br />

320


保 護 対 象 を、 明 細 書 に 挿 入 するよう 要 求 されてはならない。 簡 潔 な 明 細 書 を 維 持 するために、<br />

出 願 人 は、 参 照 された 文 書 のうちミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション 限 定 に<br />

対 応 する 関 連 部 分 のみを 含 めるべきである。 参 照 として、Atmel, 198 F.3dat 1382, 53<br />

USPQ2dat 1230(「 行 わなければならないことは・・・クレームが 意 味 することを 容 易 に 確 定 する<br />

ことができる 程 度 に 手 段 に 対 応 する 何 らかの 構 造 を 明 細 書 に 記 載 すること、 及 び、 第 2 段 落<br />

の 特 定 性 要 件 に 適 合 すること・・・のみである。)。<br />

IV. 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 裏 付 けが 存 在 するかどうかを 判 断 する<br />

クレームはさらに、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基 づくかかるクレームに 対 応 する 十 分 な 裏 付<br />

けが 存 在 するかどうかを 判 断 するために 解 析 されなければならない。クレーム 限 定 中 に 特 許<br />

法 第 112 条 第 1 段 落 の 裏 付 けがあるかどうかを 考 える 際 に、 審 査 官 は、 明 細 書 の 発 明 の 概 要<br />

及 び 発 明 の 詳 細 な 説 明 部 分 に 含 まれる 原 開 示 だけでなく、 出 願 当 初 のクレーム、 要 約 及 び 図<br />

面 も 考 慮 しなければならない。 参 照 として、In re Mott, 539 F.2d 1291, 1299, 190 USPQ 536,<br />

542.43 (CCPA 1976)(クレーム);In re Anderson, 471 F.2d 1237, 1240, 176 USPQ 331, 333<br />

(CCPA 1973)(クレーム);Hill-Rom Co. v. Kinetic Concepts, Inc., 209 F.3d 1337, 54 USPQ2d<br />

1437 (Fed. Cir. 2000)( 未 公 表 )( 要 約 );In re Armbruster, 512 F.2d 676, 678.79, 185 USPQ<br />

152, 153.54 (CCPA 1975)( 要 約 );Anderson, 471 F.2dat 1240, 176 USPQat 333 要 約 );Vas-Cath<br />

Inc. v. Mahurkar, 935 F.2dat 1564, 19 USPQ2dat 1117( 図 面 );In re Wolfensperger, 302<br />

F.2d 950, 955.57, 133 USPQ 537, 541. 43 (CCPA 1962)( 図 面 )。<br />

特 許 規 則 第 1.75(d)(1) 条 は、 一 部 分 において「クレームに 使 用 される 用 語 及 び 語 句 は、クレ<br />

ーム 中 の 用 語 の 意 味 が 記 載 を 参 照 することによって 確 定 可 能 となる 程 度 に、 記 載 中 に 明 確 な<br />

裏 付 け 又 は 先 行 的 限 定 の 根 拠 を 認 めなければならない」と 規 定 している。 書 面 記 載 のみがミ<br />

ーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクションと 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 黙 示 的<br />

又 は 潜 在 的 に 明 記 し、 且 つ、 審 査 官 が、いずれの 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 がミーンズ(オア・ス<br />

テップ)プラス・ファンクションに 記 述 された 機 能 を 実 行 するかを 当 業 者 が 認 識 するであろう<br />

と 結 論 づける 状 況 において、 審 査 官 は(A) 出 願 人 に 対 して、いずれの 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 が<br />

クレームに 記 述 された 機 能 を 実 行 するかを 明 示 的 に 記 載 する 程 度 に、 書 面 記 載 を 修 正 するこ<br />

とによって、 記 録 を 明 確 化 させるか、 又 は、(B)いずれの 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 がミーンズ(オ<br />

ア・ステップ)プラス・ファンクション 限 定 に 記 述 された 機 能 を 実 行 するかを 記 録 上 に 記 載 す<br />

るかのいずれかを 行 うべきである。たとえ、 開 示 が、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 及 び 第 2 段 落<br />

に 適 合 したミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション・クレーム 要 素 に 対 応 する 構<br />

造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 黙 示 的 に 明 記 していても、USPTO はそれでも、 特 許 規 則 第 1.75(d) 条 及<br />

び MPEP 第 608.01(o) 条 に 従 って、 明 細 書 を、クレーム 要 素 の 用 語 及 び 語 句 に 関 して、いずれ<br />

の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 がクレーム 要 素 に 記 述 された 機 能 を 実 行 するかを 明 示 的 に 記 載 する<br />

よう、 明 細 書 を 補 正 するよう、 出 願 人 に 対 して 要 求 してもよい。 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 (「ク<br />

レームにおける 組 み 合 わせのための 要 素 は、それを 裏 付 ける 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 の 記 述 を<br />

伴 わずに、 指 示 された 機 能 を 実 行 するための 手 段 又 は 工 程 として 表 現 されてもよく、 且 つ、<br />

かかるクレームは、 明 細 書 に 記 載 された 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 及 びその 均 等 物 を 扱<br />

うと 解 釈 されるものとする」( 強 調 を 追 加 ))を 参 照 のこと。 同 じく 参 照 として、B. Braun<br />

Medical, 124 F.3dat 1424, 43 USPQ2dat 1900(「 本 規 定 [ 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 ]に 従 っ<br />

て、 明 細 書 に 開 示 された 構 造 は、 明 細 書 又 は 出 願 経 過 が 当 該 構 造 をクレームに 記 述 された 機<br />

321


能 と 明 確 に 関 係 若 しくは 関 連 付 けている 場 合 にのみ、「 対 応 する」 構 造 であることを 判 示 す<br />

る。 構 造 を 機 能 と 関 係 若 しくは 関 連 付 けるこの 義 務 は、 第 112 条 第 6 段 落 を 採 用 する 便 宜 に<br />

対 する 対 価 である」);Medical Instrumentation and Diagnostic Corp. v. Elekta AB, 344<br />

F.3d 1205, 1218, 68 USPQ2d 1263, 1268 (Fed. Cir. 2003)( 当 業 者 はデジタル‐デジタル 変<br />

換 のためのソフトウェアプログラムを 書 くことができたと 思 われるが、 明 細 書 又 は 出 願 経 過<br />

中 のいずれもかかるソフトウェアを、 画 像 を 選 択 した 形 式 に 変 換 する 機 能 と、 明 確 に 関 係 若<br />

しくは 関 連 付 けなかったことから、かかるソフトウェアはクレームされた 画 像 を「 変 換 する<br />

ための 手 段 」の 範 囲 に 該 当 しなかった。);Wolfensperger, 302 F.2dat 955, 133 USPQat 542<br />

( 単 に、 開 示 がクレーム 要 素 に 対 する 裏 付 けを 提 供 しているからといって、それは、USPTO が、<br />

クレームに 使 用 される 用 語 及 び 語 句 が 書 面 記 載 に 明 確 な 裏 付 け 又 は 先 行 的 限 定 の 根 拠 を 認 め<br />

るという 要 件 を 強 要 できないことをいうのではない。)。<br />

V. 単 一 ミーンズクレーム<br />

Donaldson 事 件 は、 単 一 ミーンズクレームは 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 性 要 件 に 適<br />

合 しないという 旨 において In re Hyatt, 708 F.2d 712, 218 USPQ 195 (Fed. Cir. 1983)の<br />

判 示 に 影 響 しない。Donaldson 事 件 は 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 対 応 するようドラフティン<br />

グされた 限 定 の、 用 語 によって「 組 み 合 わせに 対 するクレームの 要 素 」へと 限 定 された 解 釈<br />

にのみに 適 用 されることから、Donaldson 事 件 は 組 み 合 わせを 対 象 としていないクレームに<br />

おける 限 定 には 影 響 しない。MPEP 第 2164.08(a) 条 も 参 照 のこと。<br />

322


2182 先 行 技 術 の 調 査 及 び 特 定 の 範 囲<br />

MPEP 第 2181 条 に 記 載 されたとおり、In re Donaldson Co., 16 F.3d 1189, 29 USPQ2d 1845<br />

(Fed. Cir. 1994)において、 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、クレーム 文 言 にはその 最 も 広 い 合 理<br />

的 解 釈 が 与 えられるべきであるという 原 則 を 保 持 することが 重 要 であると 認 めた。この 原 則<br />

は、 発 行 済 の 特 許 の 各 クレームに 起 因 した 有 効 性 の 法 的 推 定 が、 審 査 官 によって 行 われる 調<br />

査 及 び 審 査 によって 正 当 化 されることを 保 証 する 助 けとなることから、 重 要 である。またこ<br />

の 原 則 は、Donaldson 事 件 の 前 に 発 行 された 特 許 によって 提 供 された 保 護 の 範 囲 が、この 法<br />

規 定 の 最 新 解 釈 によって 不 必 要 に 限 定 されないという 見 地 からも 重 要 である。 最 後 にこの 原<br />

則 は、 特 許 明 細 書 が 既 存 技 術 の 列 挙 となる 必 要 性 を 回 避 するという 見 地 から 重 要 である。 明<br />

細 書 は、ミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション・クレーム 要 素 に 対 応 する 構 造 、<br />

材 料 、 又 は 作 用 の 均 等 物 を 記 載 する 必 要 はない。 参 照 として、In re Noll, 545 F.2d 141, 149-50,<br />

191 USPQ 721, 727 (CCPA 1976)(「『 均 等 物 』の 意 味 は 特 許 法 において 良 く 認 識 されている・・・ 及<br />

び、 出 願 人 は、 自 己 の 明 細 書 中 に、 自 己 の 発 明 のあらゆる 均 等 物 を 記 載 する 必 要 はない。」)<br />

( 引 用 は 省 略 )。 特 許 明 細 書 は 当 業 において 周 知 のものを 教 示 する 必 要 はなく 且 つ 省 略 するの<br />

が 好 ましい。Hybritech Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc., 802 F.2d 1367, 1384, 231<br />

USPQ 81, 94 (Fed. Cir. 1986)。<br />

こうして Donaldson 判 決 は、 審 査 実 務 及 び 調 査 範 囲 に 関 する 手 続 きを 実 質 的 に 変 更 しない。<br />

Donaldson 事 件 の 前 後 とも、ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション 限 定 への<br />

先 行 技 術 文 献 の 適 用 には、 先 行 技 術 要 素 がクレームに 指 示 された 機 能 と 同 一 機 能 を 実 行 する<br />

ことを 求 めている。ただし、 先 行 技 術 文 献 が、クレームに 指 示 された 機 能 に 対 する 機 能 の 同<br />

一 性 を 教 示 するならば、 審 査 官 は Donaldson 事 件 に 基 づき、 先 行 技 術 の 構 造 又 は 工 程 が、ク<br />

レームされたミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクションと 対 応 すると 特 定 された、<br />

明 細 書 に 記 載 された 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 と 同 一 または 均 等 であることを 証 明 する 最 初 の 立<br />

証 責 任 を 負 う。<br />

「ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション」 限 定 は 明 細 書 の 開 示 と 一 貫 した 方<br />

法 で 解 釈 されるべきである。 連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は Golight Inc. v. Wal-Mart Stores Inc.,<br />

355 F.3d 1327, 1333-34, 69 USPQ2d 1481, 1486 (Fed. Cir. 2004)において、ミーンズ・プ<br />

ラス・ファンクション 限 定 を 解 釈 する 際 に 伴 う 二 つのステップでの 解 析 を 説 明 した。<br />

ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの 限 定 を 解 釈 する 際 の 第 一 のステップは、ク<br />

レーム 限 定 の 特 定 機 能 を 定 義 することである。Budde v. Harley-Davidson, Inc., 250 F.3d<br />

1369, 1376 [58 USPQ2d 1801, 1806](Fed. Cir. 2001)。「 裁 判 所 はミーンズ・プラス・ファ<br />

ンクション 限 定 の 機 能 を、クレーム 文 言 に 含 まれる 限 定 を 含 んでいると、 且 つ、それら 限 定<br />

のみを 含 んでいると 解 釈 しなければならない。」Cardiac Pacemakers, Inc. v. St. Jude Med.,<br />

Inc., 296 F.3d 1106, 1113 [63 USPQ2d 1725, 1730] (Fed. Cir. 2002)・・・。ミーンズ・プ<br />

ラス・ファンクション・クレーム 限 定 を 解 釈 する 際 の 次 のステップは、 明 細 書 を 見 て、 当 該<br />

機 能 に 対 応 する 構 造 を 特 定 することである。「この 第 二 のステップでは『 明 細 書 に 開 示 され<br />

た 構 造 は、 明 細 書 又 は 出 願 経 過 が 当 該 構 造 をクレームに 記 述 された 機 能 と 明 確 に 関 係 若 しく<br />

は 関 連 付 けている 場 合 にのみ、「 対 応 する」 構 造 である』」。Med. Instrumentation &<br />

Diagnostics Corp. v. Elekta AB, 344 F.3d 1205, 1210 [68 USPQ2d 1263, 1267] (Fed. Cir.<br />

2003) (B. Braun Med. Inc. v. Abbott Labs., 124 F.3d 1419, 1424 [43 USPQ2d 1896, 1900]<br />

(Fed. Cir. 1997)を 引 用 )。<br />

323


明 細 書 が、クレームされた 発 明 の 目 的 上 において 限 定 が 何 を 意 味 するかを 定 義 しているなら<br />

ば、 審 査 官 は、 限 定 が 当 該 意 味 を 有 すると 解 釈 するべきである。いかなる 定 義 も 提 示 されて<br />

いなければ、 限 定 の 範 囲 を 判 断 する 際 に 何 らかの 判 断 がなされなければならない。 参 照 とし<br />

て、 例 えば B. Braun Medical, Inc. v. Abbott Labs., 124 F.3d 1419, 1424, 43 USPQ2d 1896,<br />

1900 (Fed. Cir. 1997)(「 我 々は[ 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 ]に 従 って、 明 細 書 に 開 示 された<br />

構 造 は、 明 細 書 又 は 出 願 経 過 が 当 該 構 造 をクレームに 記 述 された 機 能 と 明 確 に 関 係 若 しくは<br />

関 連 付 けている 場 合 にのみ「 対 応 する」 構 造 であると 判 示 する。 構 造 を 機 能 と 関 係 若 しくは<br />

関 連 付 けるこの 義 務 は、 第 112 条 第 6 段 落 を 採 用 する 便 宜 の 対 価 である。」 裁 判 所 は、 特 許<br />

権 者 によって 主 張 されたようにミーンズ・プラス・ファンクション 限 定 が 開 示 された 弁 座 構<br />

造 と 対 応 すると 解 釈 することを 拒 絶 した。その 理 由 は、この 構 造 が 記 述 された 機 能 に 対 応 す<br />

る 旨 の 指 示 が 明 細 書 又 は 出 願 経 過 になかったこと、 及 び、 当 該 機 能 と、 明 細 書 に 開 示 された<br />

横 断 面 バー 構 造 との 間 に 明 示 的 に 明 確 な 関 連 があったからである。)。<br />

324


2183 均 等 の 一 応 の 証 明<br />

審 査 官 が、 先 行 技 術 要 素 が、<br />

(A) クレームに 指 示 された 機 能 を 実 行 する<br />

(B) 明 細 書 に 提 示 されたいかなる 明 示 的 定 義 によっても 均 等 物 として 除 外 されない、 及 び<br />

(C) ミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション 限 定 の 均 等 物 である<br />

ことを 認 めたならば、<br />

審 査 官 は、 先 行 技 術 要 素 が 均 等 物 である 理 由 についての 説 明 及 び 理 論 的 根 拠 を 拒 絶 通 知 に 提<br />

示 するべきである。 先 行 技 術 要 素 が 均 等 物 であるという 結 論 を 裏 付 ける 要 因 は 次 に 掲 げると<br />

おりである。<br />

(A) 先 行 技 術 要 素 は、クレームに 指 示 された 機 能 と 同 一 の 機 能 を 実 質 的 に 同 一 の 方 法 で 実 行<br />

し、 且 つ、 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 と 実 質 的 に 同 一 の 結 果 を 生 成 する。Kemco Sales, Inc.<br />

v. Control Papers Co., 208 F.3d 1352, 54 USPQ2d 1308 (Fed. Cir. 2000)( 封 筒 のポケッ<br />

ト 内 面 を 密 封 する 内 部 接 着 剤 は、ポケット 外 側 に 付 けられた 見 返 し 部 上 の 接 着 剤 と 均 等 であ<br />

るとは 判 示 されなかった。クレームされた 発 明 及 び 被 疑 装 置 の 両 方 とも、 封 筒 に 封 をすると<br />

いう 同 一 の 機 能 を 実 行 した。しかし、 被 疑 装 置 は 当 該 機 能 を 実 質 的 に 異 なる 方 法 で(ポケット<br />

内 側 への 内 部 接 着 剤 によって) 実 行 し、 実 質 的 に 異 なる 結 果 ( 接 着 剤 はポケット 両 側 の 内 面 に<br />

付 けられた)を 得 た。;Odetics Inc. v. Storage Tech. Corp., 185 F.3d 1259, 1267, 51 USPQ2d<br />

1225, 1229-30 (Fed. Cir. 1999);Lockheed Aircraft Corp. v. United States, 193 USPQ 449,<br />

461 (Ct. Cl. 1977)。Graver Tank & Mfg. Co. v. Linde Air Products 339 U.S. 605, 85 USPQ<br />

328 (1950)に 明 記 された 均 等 物 の 概 念 はあらゆる「 均 等 物 」の 判 断 に 関 連 している。Polumbo<br />

v. Don-Joy Co., 762 F.2d 969, 975 n.4, 226 USPQ 5, 8-9 n.4 (Fed. Cir. 1985)。<br />

(B) 当 業 者 は、 先 行 技 術 に 示 された 要 素 の 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 との 置 換 可 能 性 を 認<br />

識 したであろう。Caterpillar Inc. v. Deere & Co., 224 F.3d 1374, 56 USPQ2d 1305 (Fed.<br />

Cir. 2000);Al-Site Corp. v. VSI Int’l, Inc., 174 F.3d 1308, 1316, 50 USPQ2d 1161,<br />

1165 (Fed. Cir. 1999);Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus. Inc.,<br />

145 F.3d 1303, 1309, 46 USPQ2d 1752, 1757 (Fed. Cir. 1998);Lockheed Aircraft Corp.<br />

v. United States, 193 USPQ 449, 461 (Ct. Cl. 1977);Data Line Corp. v. Micro Technologies,<br />

Inc., 813 F.2d 1196, 1 USPQ2d 2052 (Fed. Cir. 1987)。<br />

(C) 先 行 技 術 要 素 と 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 との 間 に 非 実 質 的 な 差 異 がある。IMS<br />

Technology, Inc. v. Haas Automation, Inc., 206 F.3d 1422, 1436, 54 USPQ2d 1129, 1138<br />

(Fed. Cir. 2000);Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chemical Co., 117 S. Ct. 1040,<br />

41 USPQ2d 1865, 1875 (1997);Valmont Industries, Inc. v. Reinke Mfg. Co., 983 F.2d 1039,<br />

25 USPQ2d 1451 (Fed. Cir. 1993)。 同 じく 参 照 として、Caterpillar Inc. v. Deere & Co.,<br />

224 F.3d 1374, 56 USPQ2d 1305 (Fed. Cir. 2000)(クレームされた 機 能 に 対 応 する 構 造 全 体<br />

のうちいくつかの 構 成 要 素 を 欠 き、 且 つ、 部 品 の 数 及 び 大 きさが 異 なる 構 造 は、 開 示 された<br />

構 造 とは 非 実 質 的 に 異 なりうる。ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームにおける 限<br />

定 は、クレームされた 機 能 に 対 応 する 全 体 構 造 である。クレームされた 機 能 に 対 応 する 全 体<br />

構 造 の 各 構 成 要 素 はクレーム 限 定 ではない。また、 構 造 のクレームされた 機 能 とは 関 係 しな<br />

い 潜 在 的 利 点 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づく 均 等 物 の 判 断 において 考 慮 されるべきで<br />

はない)。<br />

(D) 先 行 技 術 要 素 は 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 の 構 造 的 均 等 物 である。In re Bond, 910<br />

325


F.2d 831, 15 USPQ2d 1566 (Fed. Cir. 1990)。 即 ち、 先 行 技 術 要 素 は、クレームに 指 示 され<br />

た 機 能 を、 当 該 機 能 が 明 細 書 に 記 載 された 対 応 要 素 によって 実 行 されるのと 実 質 的 に 同 一 の<br />

方 法 で 実 行 する。<br />

前 項 に 掲 げた 要 因 のうち 少 なくとも 一 つの 審 査 官 による 証 明 は、 先 行 技 術 要 素 が 均 等 物 であ<br />

るという 結 論 を 裏 付 けるために 十 分 であるべきである。 次 いで 審 査 官 は、クレームされた 限<br />

定 が 先 行 技 術 要 素 によって 満 たされると 結 論 づけるべきである。 先 行 技 術 要 素 が 均 等 物 であ<br />

るという 結 論 に 加 えて、 審 査 官 は、 適 切 であれば、 出 願 人 が 記 載 した 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用<br />

が 先 行 技 術 文 献 に 記 載 されたもののと 置 換 されることが、 当 業 者 にとって 発 明 時 に 自 明 であ<br />

ったであろう 理 由 も 示 すべきである。 参 照 として、In re Brown, 459 F.2d 531, 535, 173 USPQ<br />

685, 688 (CCPA 1972)。 次 いで、 先 行 技 術 に 示 された 要 素 が 出 願 に 開 示 された 構 造 、 材 料 、<br />

又 は 作 用 の 均 等 物 ではないことを 証 明 する 責 任 は、 出 願 人 に 転 換 する。In re Mulder, 716 F.2d<br />

1542, 219 USPQ 189 (Fed. Cir. 1983)。 出 願 人 が、 審 査 官 の 結 論 に 同 意 せず、 且 つ、 先 行 技<br />

術 要 素 が 均 等 物 と 考 えられるべきではない 理 由 を 提 供 するまで、 審 査 官 は、 均 等 物 のいかな<br />

る 追 加 解 析 も 要 求 されない。 同 じく 参 照 として、In re Walter, 618 F.2d 758, 768, 205 USPQ<br />

397, 407-08 (CCPA 1980)( 法 定 の 保 護 対 象 の 判 断 の 文 脈 で 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 を 取 り 扱<br />

い、 且 つ、「 機 能 的 に 定 義 された 開 示 された 手 段 及 びそれらの 均 等 物 が 非 常 に 広 いため、 記<br />

述 された 機 能 を 実 行 するためのあらゆるすべての 手 段 を 包 含 するならば・・・クレームが、 同 一<br />

機 能 を 実 行 可 能 な 他 の 装 置 とは 異 なる 特 定 の 装 置 に 対 して 真 に 向 けられていることを 示 す 責<br />

任 は、 出 願 人 に 課 されなければならない」と 注 記 している 事 例 );In re Swinehart, 439 F.2d<br />

210, 212-13, 169 USPQ 226, 229 (CCPA 1971)( 裁 判 所 が、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 による 機<br />

能 的 文 言 の 拒 絶 を 不 適 切 であるとして 処 理 したが、「クレームされた 保 護 対 象 の 新 規 性 を 確<br />

立 するために 決 定 的 に 重 要 であると 主 張 された 機 能 的 限 定 が、 実 際 には、 先 行 技 術 の 潜 在 的<br />

な 特 徴 であると、 特 許 庁 が 信 じる 理 由 がある 場 合 は、 特 許 庁 は、 出 願 人 に 対 して、 先 行 技 術<br />

にあると 示 された 保 護 対 象 が 依 拠 する 特 徴 を 有 していないことを 証 明 するよう 要 求 する 権 限<br />

を 有 する」と 記 載 した 事 例 ); 及 び、In re Fitzgerald, 619 F.2d 67, 205 USPQ 594 (CCPA 1980)<br />

( 拒 絶 が 特 許 法 第 102 条 による 潜 在 的 特 性 に 基 づくか、 又 は、 特 許 法 第 103 条 による 自 明 性 に<br />

基 づくかにかかわらず、 先 行 技 術 の 保 護 対 象 が 依 拠 する 特 徴 を 有 していないことを 証 明 する<br />

責 任 は 出 願 人 に 転 換 しうることを 示 す 事 例 )。<br />

出 願 人 が、 先 行 技 術 要 素 が 出 願 人 の 明 細 書 に 記 載 された 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 と 均 等 でない<br />

ことを 証 明 する 責 任 を 果 たすことに 成 功 したかどうかを 判 断 する 際 には MPEP 第 2184 条 を 参<br />

照 のこと。<br />

非 均 等 性 が 証 明 されたならば、 審 査 官 は 自 明 性 を 考 慮 しなければならない<br />

しかし、たとえ 出 願 人 が 立 証 責 任 を 果 たし、 先 行 技 術 要 素 が 出 願 人 の 明 細 書 に 記 載 された 構<br />

造 、 材 料 、 又 は 作 用 と 均 等 でないことを 証 明 した 場 合 であっても、 審 査 官 はそれでも、 特 許<br />

法 第 103 条 の 解 析 を 行 って、クレームされたミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンク<br />

ションが 当 業 者 にとって 先 行 技 術 から 自 明 であるかどうかを 判 断 しなければならない。この<br />

ように、 非 均 等 性 を 認 定 することによって、 先 行 技 術 要 素 が、クレーム 中 のミーンズ・オア・<br />

ステップ・プラス・ファンクション 限 定 が 新 規 性 を 喪 失 することを 妨 げる 一 方 で、 先 行 技 術<br />

要 素 が、クレーム 限 定 を 当 業 者 にとって 自 明 とすることは 妨 げない。「 均 等 物 」の 正 確 な 範<br />

囲 が 不 確 かな 可 能 性 もあるので、クレーム 限 定 の 残 存 部 が 依 拠 する 先 行 技 術 によって 新 規 性<br />

326


を 喪 失 する 場 合 に、 特 許 第 102 条 / 第 103 条 による 拒 絶 を 適 用 することが 適 切 であろう。プ<br />

ロダクト・バイ・プロセス・クレームの 事 例 では、クレームされた 製 品 又 は 先 行 技 術 製 品 の<br />

正 確 な 同 一 性 は 審 査 官 によって 判 断 できないので、 類 似 の 手 法 が 承 認 されている。In re Brown,<br />

450 F.2d 531, 173 USPQ 685 (CCPA 1972)。 加 えて、クレームを 拒 絶 する 際 に 最 良 の 先 行 技<br />

術 文 献 のみに 依 拠 することが、 通 常 、 最 良 の 実 務 であるものの、 先 行 技 術 が、 互 いに 異 なり、<br />

且 つ、 明 細 書 に 記 載 された 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 とは 異 なる 要 素 を 示 しているが、ク<br />

レームに 指 示 された 機 能 を 実 行 していない 場 合 は、 代 替 の 拒 絶 理 由 が 適 切 である 可 能 性 があ<br />

る。<br />

327


2184 一 応 の 証 明 が 行 われた 後 、 非 均 等 性 の 立 証 責 任 を 出 願 人 が 果 たしたかどうかの 判 断<br />

明 細 書 は、ミーンズ(オア・ステップ)プラス・ファンクション・クレーム 要 素 に 対 応 する 構<br />

造 、 材 料 、 又 は 作 用 の 均 等 物 を 記 載 する 必 要 はない。 参 照 として、In re Noll, 545 F.2d 141,<br />

149-50, 191 USPQ 721, 727 (CCPA 1976)( 均 等 物 の 意 味 は 特 許 法 において 良 く 認 識 されてお<br />

り、 及 び、 出 願 人 は、 自 己 の 明 細 書 中 に、 自 己 の 発 明 のあらゆる 均 等 物 を 記 載 する 必 要 はな<br />

い) ( 引 用 は 省 略 )。 参 照 として、Hybritech Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc., 802 F.2d<br />

1367, 1384, 231 USPQ 81, 94 (Fed. Cir. 1986)(「 特 許 明 細 書 は 当 業 者 において 周 知 のもの<br />

を 教 示 する 必 要 はなく 且 つ 省 略 するのが 好 ましい」)。ただし、 何 が 均 等 物 を 構 成 するかにつ<br />

いて 明 細 書 は 沈 黙 しており、 且 つ、 審 査 官 が 均 等 性 の 一 応 の 証 明 を 行 った 場 合 は、クレーム<br />

された 機 能 を 実 行 する 先 行 技 術 要 素 が 明 細 書 に 開 示 された 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 の 均 等 物 で<br />

はないことを 証 明 する 責 任 は 出 願 人 に 課 せられる。 参 照 として、In re Mulder, 716 F.2d 1542,<br />

1549, 219 USPQ 189, 196 (Fed. Cir. 1983)。<br />

出 願 人 が 先 行 技 術 文 献 から 導 き 出 された 均 等 性 の 推 論 に 同 意 しなければ、 出 願 人 は、 先 行 技<br />

術 要 素 が 明 細 書 に 開 示 された 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 と 均 等 であると 考 えられるべきで<br />

はないと 自 己 が 信 じる 理 由 を 提 示 してもよい。かかる 理 由 は 以 下 を 含 んでもよいが、それら<br />

に 限 定 されない。<br />

(A) 特 定 の 先 行 技 術 が 均 等 ではないことの 明 細 書 中 の 教 示<br />

(B) 非 均 等 性 を 示 す 傾 向 をもちうる 先 行 技 術 文 献 自 体 における 教 示 、 又 は<br />

(C) 非 均 等 性 を 示 す 傾 向 をもちうる 事 実 の 特 許 規 則 第 1.132 号 の 宣 誓 供 述 書 の 証 拠<br />

I. 出 願 人 の 明 細 書 における 教 示<br />

出 願 人 が、 出 願 人 自 身 の 明 細 書 における 教 示 に 依 拠 するときは、 審 査 官 は、 出 願 人 がクレー<br />

ム 中 の「ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション」 限 定 を 明 細 書 中 の 開 示 と 一<br />

貫 した 方 法 で 解 釈 していることを 確 認 しなければならない。 明 細 書 が、クレームされたミー<br />

ンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクションの 目 的 上 において 開 示 された 実 施 形 態 の「 均<br />

等 物 」が 意 味 するものを 定 義 しているならば、 審 査 官 は、 限 定 が 当 該 意 味 を 有 すると 解 釈 す<br />

るべきである。いかなる 定 義 も 提 示 されていなければ、「 均 等 物 」の 範 囲 を 判 断 する 際 に 何<br />

らかの 判 断 が 行 われなければならない。 一 般 に「 均 等 物 」は、 指 示 された 機 能 を 実 行 するた<br />

めの 明 細 書 に 記 載 された 特 定 の 要 素 を 超 えるが、クレームに 指 示 された 機 能 を 実 行 するいか<br />

なる 要 素 未 満 のものを 包 含 するものとして 解 釈 される。 参 照 として、 例 えば NOMOS Corp. v.<br />

BrainLAB USA Inc., 357 F.3d, 1364, 1368, 69 USPQ2d 1853, 1856 (Fed. Cir. 2004)( 一 実<br />

施 形 態 のみが 記 載 されている。 従 って 対 応 する 構 造 は 当 該 実 施 形 態 及 びその 均 等 物 に 限 定 さ<br />

れる)。「ミーンズ・プラス・ファンクション」 限 定 を 明 細 書 に 明 記 された 特 定 の 手 段 への 限<br />

定 として 解 釈 するならば、 限 定 が、 明 細 書 に 記 載 された 構 造 及 びその 均 等 物 を 扱 うと 解 釈 さ<br />

れなければならないことを 要 求 する 特 許 法 第 112 条 の 規 定 を 無 効 とするであろう。D.M.I.,<br />

Inc. v. Deere & Co., 755 F.2d 1570, 1574, 225 USPQ 236, 238 (Fed. Cir. 1985)。<br />

クレーム 限 定 によって 包 含 される 均 等 物 の 範 囲 は「 均 等 物 」の 解 釈 に 依 存 している。 解 釈 は、<br />

要 素 が 裏 付 けとなる 明 細 書 にどのように 記 載 されているかによって 変 わる。 明 細 書 が 当 該 問<br />

題 をどのように 取 り 扱 っているかに 応 じて、クレームは、クレームされた 機 能 を 実 行 するた<br />

めのあらゆるすべての 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 ではなく、 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 ( 例 えば<br />

工 程 )に 限 定 される 場 合 も、 又 は、そうでない 場 合 もありうる。 参 照 として、 例 えば Ishida Co.<br />

328


v. Taylor, 221 F.3d 1310, 55 USPQ2d 1449 (Fed. Cir. 2000)( 裁 判 所 は、クレームされた<br />

機 能 を 実 行 するために 明 細 書 が 2 つの 構 造 的 に 非 常 に 異 なる 実 施 形 態 を 開 示 した 場 合 におけ<br />

る、ミーンズ・プラス・ファンクション・クレーム 要 素 の 範 囲 を、 各 実 施 形 態 を 個 別 に 見 る<br />

ことによって 対 応 する 構 造 を 判 断 することによって 解 釈 した。 裁 判 所 は、 両 方 の 実 施 形 態 を<br />

包 含 する 単 一 クレーム 構 造 を、 当 該 構 造 が、 各 実 施 形 態 の 基 本 的 な 構 造 の 特 徴 を 持 つシステ<br />

ム 及 び 持 たないシステムの 両 方 を 記 載 する 程 度 に 非 常 に 広 いと 思 われるであろうから、 採 用<br />

することを 拒 絶 した。)。<br />

開 示 が、クレームされた 機 能 を 実 行 するためのあらゆるすべての 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 を 含<br />

む 程 度 に 非 常 に 広 ければ、 特 許 性 を 判 断 するときには、それに 応 じてクレームを 読 まれなけ<br />

ればならない。このような 場 合 には、そうでなければ「 均 等 物 」によって 提 供 される 限 定 は、<br />

均 等 物 は、クレームされた 機 能 を 実 行 する 明 細 書 に 記 載 されたもの 以 外 のあらゆる 構 造 、 材<br />

料 、 又 は 作 用 であるであろう 点 で、クレームの 範 囲 に 対 する 限 定 であることを 中 止 する。 例<br />

えばこの 状 況 は、(A)クレームされた 発 明 が 要 素 の 組 み 合 わせであり、その 一 以 上 が 古 い 要 素<br />

からそれ 自 体 選 択 される 場 合 、 又 は、(B) 装 置 クレームが 方 法 クレームとは 識 別 不 可 能 である<br />

として 扱 われる 場 合 のいずれかにおいて、 多 く 認 められる。 参 照 として、 例 えば In re Meyer,<br />

688 F.2d 789, 215 USPQ 193 (CCPA 1982);In re Abele, 684 F.2d 902, 909, 214 USPQ 682,<br />

688 (CCPA 1982);In re Walter, 618 F.2d 758, 767, 205 USPQ 397, 406-07 (CCPA 1980);<br />

In re Maucorps, 609 F.2d 481, 203 USPQ 812 (CCPA 1979);In re Johnson, 589 F.2d 1070,<br />

200 USPQ 199 (CCPA 1978); 及 び In re Freeman, 573 F.2d 1237, 1246, 197 USPQ 464, 471<br />

(CCPA 1978)。<br />

もう 一 方 の 極 では、クレームに 適 用 された「 均 等 物 」の 限 定 は、 開 示 された 実 施 形 態 のみを<br />

実 質 的 に 扱 うところまで、クレーム 範 囲 を 収 縮 するよう 機 能 する。このことは 明 細 書 が 発 明<br />

を、クレームに 指 示 された 機 能 を 実 行 するために 使 用 される 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 の<br />

文 脈 でのみ 記 載 する 状 況 において 起 こりうる。<br />

II. 均 等 性 を 決 定 する 際 に 考 慮 される 要 因<br />

出 願 人 が、クレームされた 機 能 を 実 行 する 先 行 技 術 要 素 の 非 均 等 性 を 証 明 する 責 任 を 果 たし<br />

たかどうかを 決 定 するときは、 次 に 掲 げる 要 因 が 考 慮 されうる。 第 一 に、 要 素 がクレームに<br />

指 示 された 機 能 と 同 一 の 機 能 を 実 行 しない 限 り、 要 素 は 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 上 の 目 的 で<br />

は 均 等 とはなりえない。Pennwalt Corp. v. Druand-Wayland Inc., 833 F.2d 931, 4 USPQ2d<br />

1737 (Fed. Cir. 1987), cert. denied, 484 U.S. 961 (1988)。<br />

第 二 に、 絶 対 的 な 確 実 性 及 び 予 測 可 能 性 をもって 適 用 可 能 な「 均 等 物 」のリトマス 基 準 はな<br />

い 一 方 で、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 の 文 脈 において、ある 一 要 素 が 異 なる 要 素 の「 均 等 物 」<br />

であるか 又 はそうではないかの 結 論 を 裏 付 けるのに 十 分 ないくつかの 兆 候 がある。 一 要 素 が<br />

別 の 要 素 の 均 等 物 であるか 又 はないかの 結 論 を 裏 付 ける 兆 候 の 例 は、 次 に 掲 げるとおりであ<br />

る。<br />

(A) 先 行 技 術 要 素 が、クレームに 指 示 された 機 能 と 同 一 の 機 能 を 実 質 的 に 同 一 の 方 法 で 実 行<br />

し、 且 つ、 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 と 実 質 的 に 同 一 の 結 果 を 生 成 するかどうか。Kemco<br />

Sales, Inc. v. Control Papers Co., 208 F.3d 1352, 54 USPQ2d 1308 (Fed. Cir. 2000)( 封<br />

筒 ポケット 内 面 を 密 封 する 内 部 接 着 剤 は、ポケット 外 側 に 付 けられた 見 返 し 部 上 の 接 着 剤 と<br />

均 等 であるとは 判 示 されなかった。クレームされた 発 明 及 び 被 疑 装 置 の 両 方 とも、 封 筒 に 封<br />

329


をするという 同 一 の 機 能 を 実 行 した。しかし、 被 疑 装 置 は 当 該 機 能 を 実 質 的 に 異 なる 方 法 で<br />

(ポケット 内 側 への 内 部 接 着 剤 によって) 実 行 し、 実 質 的 に 異 なる 結 果 ( 接 着 剤 はポケット 両 側<br />

の 内 面 に 付 けられた)を 得 た;Odetics Inc. v. Storage Tech. Corp., 185 F.3d 1259, 1267,<br />

51 USPQ2d 1225, 1229-30 (Fed. Cir. 1999);Lockheed Aircraft Corp. v. United States,<br />

193 USPQ 449, 461 (Ct. Cl. 1977)。Graver Tank & Mfg. Co. v. Linde Air Products 339 U.S.<br />

605, 85 USPQ 328 (1950)に 明 記 された 均 等 物 の 概 念 はあらゆる「 均 等 物 」の 判 断 に 関 連 して<br />

いる. Polumbo v. Don-Joy Co., 762 F.2d 969, 975, n. 4, 226 USPQ 5, 8-9, n. 4 (Fed. Cir.<br />

1985)。<br />

(B) 当 業 者 は、 先 行 技 術 に 示 された 要 素 の 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 との 置 換 可 能 性 を 認<br />

識 したであろうかどうか。Caterpillar Inc. v. Deere & Co., 224 F.3d 1374, 56 USPQ2d 1305<br />

(Fed. Cir. 2000);Al-Site Corp. v. VSI Int’l, Inc., 174 F.3d 1308, 1316, 50 USPQ2d<br />

1161, 1165 (Fed. Cir. 1999);Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus.<br />

Inc., 145 F.3d 1303, 1309, 46 USPQ2d 1752, 1757 (Fed. Cir. 1998);Lockheed Aircraft<br />

Corp. v. United States, 193 USPQ 449, 461 (Ct. Cl. 1977);Data Line Corp. v. Micro<br />

Technologies, Inc., 813 F.2d 1196, 1 USPQ2d 2052 (Fed. Cir. 1987)。<br />

(C) 先 行 技 術 要 素 と 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 との 間 に 非 実 質 的 な 差 異 があるかどうか。<br />

IMS Technology, Inc. v. Haas Automation, Inc., 206 F.3d 1422, 1436, 54 USPQ2d 1129,<br />

1138 (Fed. Cir. 2000);Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chemical Co., 117 S. Ct.<br />

1040, 41 USPQ2d 1865, 1875 (1997);Valmont Industries, Inc. v. Reinke Mfg. Co., 983<br />

F.2d 1039, 25 USPQ2d 1451 (Fed. Cir. 1993)。 同 じく 参 照 として、Caterpillar Inc. v. Deere<br />

& Co., 224 F.3d 1374, 56 USPQ2d 1305 (Fed. Cir. 2000)(クレームされた 機 能 に 対 応 する<br />

構 造 全 体 のうちいくつかの 構 成 要 素 を 欠 き、 且 つ、 部 品 の 数 及 び 大 きさが 異 なる 構 造 は、 開<br />

示 された 構 造 とは 非 実 質 的 に 異 なりうる。ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームに<br />

おける 限 定 は、クレームされた 機 能 に 対 応 する 全 体 構 造 である。クレームされた 機 能 に 対 応<br />

する 全 体 構 造 の 各 構 成 要 素 はクレーム 限 定 ではない。また、 構 造 のクレームされた 機 能 とは<br />

関 係 しない 潜 在 的 な 利 点 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づく 均 等 の 判 断 において 考 慮 され<br />

るべきではない)。<br />

(D) 先 行 技 術 要 素 が 明 細 書 に 開 示 された 対 応 要 素 の 構 造 的 均 等 物 であるかどうか。In re Bond,<br />

910 F.2d 831, 15 USPQ2d 1566 (Fed. Cir. 1990)。 即 ち、 先 行 技 術 要 素 はクレームに 指 示 さ<br />

れた 機 能 を、 当 該 機 能 が 明 細 書 に 記 載 された 対 応 要 素 によって 実 行 されるのと 実 質 的 に 同 一<br />

の 方 法 で 実 行 する。<br />

これらの 例 は、 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 上 の 目 的 において、ある 要 素 が 別 の 要 素 の 均 等 物 で<br />

あるか 又 はないかの 知 見 を 裏 付 けるであろう 兆 候 の 網 羅 的 一 覧 となるよう 意 図 されていない。<br />

前 項 に 掲 げた 例 のうちいずれによる 知 見 であっても、 要 素 が 均 等 物 であるか 又 はそうでない<br />

かの 結 論 を 裏 付 けるのに 十 分 であるが、 唯 一 可 能 というわけではない 理 由 を 表 すであろう。<br />

結 論 を 裏 付 けると 思 われる 他 の 兆 候 もありうるであろう。<br />

III. 単 なる 非 均 等 性 の 主 張 は 十 分 でない<br />

出 願 人 により 提 示 された 意 見 又 は 特 許 規 則 第 1.132 号 の 証 拠 が、 先 行 技 術 に 示 された 要 素 が<br />

均 等 物 ではないことの 説 得 力 があるかどうかを 判 断 する 際 には、 審 査 官 は、 出 願 人 により 提<br />

示 された 前 項 に 掲 げたか 又 は 他 の 兆 候 のうちできるだけ 多 くを 考 慮 すべきであり、 且 つ、 出<br />

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願 人 が 結 局 非 均 等 性 を 証 明 する 責 任 を 果 たしたかどうかを 判 断 するべきである。ただし、い<br />

かなる 状 況 においても、 審 査 官 は、 先 行 技 術 に 示 された 要 素 がクレーム 限 定 によって 包 含 さ<br />

れる 均 等 物 ではないという、 最 小 限 の 陳 述 又 は 意 見 を 説 得 力 があるとして 受 け 入 れるべきで<br />

はない。さらに 出 願 人 は、クレーム 中 の「ミーンズ」 又 は「ステップ」プラス・ファンクシ<br />

ョン 文 言 が(その「 均 等 物 」ではなく) 所 定 の 特 定 の 構 造 的 又 は 追 加 的 な 機 能 特 徴 に 限 定 され<br />

ると 主 張 するならば、 明 細 書 が 発 明 をそれら 特 定 の 特 徴 であるとして 記 載 していない 場 合 は、<br />

それら 特 定 の 構 造 的 又 は 追 加 的 な 機 能 特 徴 を 記 載 するようクレームが 修 正 されるまでは、ク<br />

レームは 許 可 されてはならない。そうでなければ、 広 い 機 能 的 文 言 を 有 するクレームが 許 可<br />

される 可 能 性 があるが、 実 際 は、 明 細 書 に 開 示 された 特 定 の 構 造 又 は 工 程 にのみ 限 定 されて<br />

いる。このことは、クレームの 真 の 範 囲 について 公 衆 に 十 分 な 通 知 を 提 供 するという、 特 許<br />

を 付 与 する 公 共 政 策 に 反 するであろう。<br />

IV. 出 願 人 はクレームを 補 正 してもよい<br />

最 終 的 には、 過 去 と 同 じように、 出 願 人 は、 特 許 商 標 庁 での 手 続 き 中 に、クレームされた 発<br />

明 が 特 許 性 のすべての 法 的 基 準 を 満 たすことができるように、クレームを 補 正 する 機 会 を 有<br />

する。 出 願 人 は、 先 行 技 術 要 素 によって 教 示 された 機 能 と 同 一 のいかなる 機 能 も 存 在 できな<br />

いように 機 能 をさらに 限 定 することによってクレームを 補 正 することを 選 択 してもよく、 又<br />

は、 出 願 人 は、クレームされたミーンズ・プラス・ファンクション 限 定 を 先 行 技 術 に 記 載 さ<br />

れていない 特 定 の 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 に 置 換 することを 選 択 してもよい。<br />

331


2185 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 又 は 第 2 段 落 に 基 づく 関 連 争 点<br />

MPEP 第 2181 条 に 規 定 されたクレームの 解 釈 は、 出 願 人 が 発 明 であると 考 えるものに 関 して、<br />

一 定 の 不 確 実 性 を 形 成 しうる。この 問 題 が 発 生 したならば、この 問 題 は 特 許 法 第 112 条 第 2<br />

段 落 による 拒 絶 に 記 載 されなければならない。 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 はクレーム 限 定 の 特<br />

定 の 形 態 を 許 可 する 一 方 で、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 記 載 、 実 施 可 能 性 又 は 最 良 態 様 の 要<br />

件 、 若 しくは、 第 2 段 落 の 明 瞭 性 要 件 のいずれかに 対 する 例 外 を 形 成 したと 読 んではならな<br />

い。In re Knowlton, 481 F.2d 1357, 178 USPQ 486 (CCPA 1973)。<br />

クレームに 記 載 された「ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション」 限 定 が 明 細<br />

書 の 開 示 中 の 対 応 する 構 造 、 材 料 、 又 は 作 用 によって 裏 付 けられていなければ、 次 に 掲 げる<br />

拒 絶 が 考 慮 されるべきである。<br />

(A) 実 施 可 能 な 開 示 によって 裏 付 けられていないことによる、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 に 基<br />

づくもの。 当 業 者 は、 機 能 を 実 行 するために 要 素 の 記 載 がなければ 発 明 を 製 造 及 び 使 用 する<br />

方 法 を 知 らないことを 理 由 とする。 装 置 の 機 能 を 記 載 するが 構 造 を 記 載 しないブロック 図 に<br />

よる 装 置 の 記 載 は、 当 該 構 造 が 従 来 的 であり、 且 つ、 過 度 の 実 験 を 行 わずに 判 断 できる 限 り<br />

は、 特 許 法 第 112 条 第 1 段 落 の 実 施 可 能 性 要 件 のもとでは 致 命 的 ではない。In re Ghiron, 442<br />

F.2d 985, 991, 169 USPQ 723, 727 (CCPA 1971)、<br />

(B) 不 明 瞭 であることによる、 特 許 法 第 112 条 第 2 段 落 に 基 づくもの。 参 照 として、Biomedino,<br />

LLC v. Waters Technology Corp., 490 F.3d 946, 952, 83 USPQ2d 1118, 1123 (Fed. Cir. 2007),<br />

In re Dossel, 115 F.3d 942, 946, 42 USPQ2d 1881, 1884 (Fed. Cir. 1997) 及 び MPEP 第<br />

2181 条 、 且 つ<br />

(C) クレームに 指 示 された 機 能 を 実 行 する 手 段 又 は 工 程 を 含 むクレームされた 保 護 対 象 は、<br />

先 行 技 術 により 新 規 性 を 喪 失 する 又 は 自 明 になる 場 合 に、 特 許 法 第 102 条 又 は 第 103 条 に 基<br />

づくもの。 当 該 理 論 は、ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション 限 定 を 限 定 す<br />

る 対 応 する 構 造 等 が 明 細 書 にはないことから、 均 等 物 は 指 示 された 機 能 を 実 行 するあらゆる<br />

要 素 であるとするものである。<br />

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2186 均 等 論 との 関 係<br />

均 等 論 は 侵 害 訴 訟 の 文 脈 で 生 じる。 被 疑 製 品 又 はプロセスが 特 許 付 与 された 発 明 を 文 言 通 り<br />

侵 害 しなくても、 当 該 被 疑 製 品 又 はプロセスが 均 等 論 により 侵 害 すると 認 定 される 可 能 性 が<br />

ある。 本 質 的 な 客 観 的 な 質 問 は「 被 疑 製 品 又 はプロセスが、 特 許 付 与 された 発 明 のクレーム<br />

された 各 要 素 と 同 一 又 は 均 等 の 要 素 を 含 むか?」である。Warner-Jenkinson Co. v. Hilton<br />

Davis Chemical Co., 117 S. Ct. 1040, 41 USPQ2d 1865, 1875 (1997)。 均 等 を 判 断 する 際<br />

「 特 定 の 特 許 クレームの 文 脈 で 各 要 素 が 果 たす 役 割 の 解 析 は、このように、 代 替 要 素 がクレ<br />

ームされた 要 素 の 機 能 、 方 法 、 及 び 結 果 と 一 致 するかどうか、 又 は、 代 替 要 素 がクレームさ<br />

れた 要 素 とは 実 質 的 に 異 なる 役 割 を 演 じるかどうかについての 質 問 を 伝 える。」41 USPQ2dat<br />

1875。<br />

特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 は「かかるクレームの 広 い 文 字 通 りの 文 言 の 適 用 は「 特 許 明 細 書 に<br />

示 された 実 際 の 手 段 と『 均 等 な』 手 段 のみに 限 定 されなければならない 旨 の 但 し 書 きを 付 け<br />

ることによって、クレーム 中 の『ミーンズ・オア・ステップ・プラス・ファンクション』の<br />

組 み 合 わせへの 限 定 を 許 可 している。これは 制 限 的 役 割 における 均 等 論 の 適 用 であり、 広 い<br />

文 字 通 りのクレーム 要 素 の 適 用 を 減 縮 する。」41 USPQ2dat 1870。 従 って、 均 等 論 を 伴 う 決<br />

定 は 考 慮 されなければならないが、 査 定 系 の 審 査 中 は 特 許 法 第 112 条 第 6 段 落 に 基 づく 判 断<br />

に 不 当 に 影 響 を 及 ぼしてはならない。<br />

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2190 出 願 手 続 懈 怠<br />

連 邦 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 は、 手 続 における 不 合 理 且 つ 不 当 な 遅 延 を 理 由 とした 出 願 手 続 懈 怠 の<br />

原 則 に 基 づいて、 出 願 人 が、 特 許 に 対 する 自 己 の 権 利 を 喪 失 したことを 根 拠 とするクレーム<br />

の 拒 絶 を 維 持 した。In re Bogese, 303 F.3d 1362, 1369, 64 USPQ2d 1448, 1453 (Fed. Cir.<br />

2002)( 出 願 人 は「8 年 の 期 間 中 に 12 件 の 継 続 出 願 を 提 出 し、 且 つ、PTO によって 手 続 を 進 め<br />

るよう 要 求 され 機 会 を 与 えられたときも、 手 続 を 実 質 的 に 進 めなかった。」) 懈 怠 がいつ 適 用<br />

されるかを 判 断 する 確 固 たる 指 針 はないものの、 懈 怠 は 手 続 における 不 合 理 且 つ 説 明 のない<br />

遅 延 の 甚 だしい 事 例 にのみ 適 用 される。 例 えば、「 正 当 化 されない 遅 延 手 続 の 傾 向 を 示 す 反<br />

復 的 な 出 願 の 複 数 回 の 事 例 」がある 場 合 は、 懈 怠 が 適 用 されうる。Symbol Tech. Inc. v.<br />

Lemelson Med., Educ., & Research Found., 422 F.3d 1378, 1385, 76 USPQ2d 1354, 1360 (Fed.<br />

Cir. 2005)( 裁 判 所 は、 特 許 出 願 を 再 提 出 する 正 当 な 理 由 と、 過 去 に 許 可 されたクレームの 発<br />

行 を 遅 延 させる 業 務 目 的 での 最 提 出 との 差 異 を 論 じた。) 審 査 官 は、 出 願 手 続 懈 怠 を 根 拠 に 拒<br />

絶 を 行 う 前 に、テクノロジーセンター 長 の 承 認 を 取 得 するべきである。<br />

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