San Diego Yu Yu, January 16th, 2015

Dr. 美 甘 の 心 の 健 康 ノート
Mental Health
不 眠 症 (1)
みかも
美
あきこ
甘 章
子 心 理 学 博 士
38 SAN DIEGO YU-YU JANUARY 16, 2015
眠 れない、 眠 りが 浅 いというのは、
心 も 体 もリフレッシュできないため 本 当
に 辛 いことです。もう 何 年 もぐっすり 眠
れていないから 慣 れてしまったという 人
も、 一 度 ぐっすり 眠 って 目 覚 めることが
あったとすると、「 普 通 の 気 分 って、こ
んなにいいものだったのか」と 驚 くほど
です。
不 眠 のパターン
不 眠 を 訴 える 人 の 多 くは、 眠 りに 落 ち
るのに 長 い 時 間 がかかるという 入 眠 困 難
と、 眠 りについても 眠 りが 浅 く 夜 中 に 何
度 も 目 が 覚 める、または 夜 中 に 何 度 も 目
が 覚 める 中 途 覚 醒 に 悩 まされています。
また、7 〜 8 時 間 眠 っているのだけれど、
眠 りが 浅 いために 熟 睡 した 感 じがないと
いう 熟 眠 障 害 や、 朝 早 すぎる 時 間 に 目
が 覚 めてしまい、 眠 りにつけないという
早 朝 覚 醒 もあります。
眠 りの 科 学 と 不 眠 の 生 理 的 要 因
不 眠 の 原 因 は、 生 理 的 なものや 精 神
的 なものと 環 境 のコンビネーションがあ
ります。まず、 生 理 的 なものとしては、
アルコールやニコチンやカフェインや 薬
の 副 作 用 など 脳 に 影 響 を 与 える 物 質 、
睡 眠 時 無 呼 吸 症 候 群 、 高 血 圧 、 頻 尿 、
痛 みやかゆみ、 食 事 の 量 や 種 類 、 日 周
リズム (24 時 間 周 期 の 体 内 リズム )、 縮
美 甘 章 子
日 周 期 ( 約 90 分 の 体 内 リズム )、 女 性
ホルモンの 変 調 、 体 温 が 十 分 に 下 がら
ないなどがあります。
アルコールを 飲 まないと 眠 れないとい
う 人 や、 飲 んだ 方 がよく 眠 れるという 人
が 少 なくありませんが、アルコールは 眠
くさせることはあっても、 脳 波 に 現 れる
自 然 の 眠 りの 構 造 を 狂 わせ、 自 己 免 疫
力 やストレス 解 消 や 心 身 のリフレッシュ
に 必 要 な 深 い 睡 眠 に 到 達 することがで
きなくなってしまい、 同 じ 時 間 を 眠 った
としても、スッキリできません。ニコチ
ンやカフェインは 脳 神 経 を 覚 醒 させます
ので、 不 眠 があるならまず 避 けたい 物
質 です。
人 間 は 24 時 間 周 期 の 体 内 リズムを
持 っていることは 周 知 の 通 りですが、 約
90 分 のリズムもあるのです。 睡 眠 中 の
脳 波 は 大 部 分 が 約 90 分 のリズムになっ
ており、 睡 眠 が 深 くなったり 浅 くなった
りしています。ぐっすり 眠 れた、または
スッキリ 目 が 覚 めるという 感 覚 は、 睡 眠
時 間 そのものよりも、 睡 眠 が 深 くなりつ
つある 時 に 起 きるか、 睡 眠 が 浅 くなって
きた 時 に 起 きるかで 大 きな 違 いがある
のです。 深 くなりつつある 時 に 起 こされ
ると 機 嫌 が 悪 くなるのも 無 理 はありま
せん。ですから、もし 昼 寝 をするなら、
90 分 くらい 眠 れる 環 境 であれば、その
価 値 が 高 いといえます。
広 島 大 学 教 育 学 部 ・ 大 学 院 から 教 職 を 経 て 渡 米 。 心 理 学 博 士 として
医 療 や 教 育 現 場 で 幅 広 く 臨 床 経 験 をつんだ 後 開 業 。 元 みなと 学 園
コンサルタント。 現 在 、メディカル・サイコロジストとして 臨 床 とコ
ンサルテーション(エグセキュティブ・コーチング、 産 業 心 理 、スポー
ツ 心 理 等 ) 日 米 両 国 において 幅 広 く 活 動 。
環 境 要 因
海 外 出 張 などが 多 く、 時 差 の 中 を 行
き 来 している 人 は、 前 述 した 24 時 間 周
期 のリズムが 狂 ってしまい、 時 間 があっ
ても 熟 睡 することができない 場 合 が 多
い も の で す。 特 に 、 地 球 上 を 西 か ら 東 ( ア
ジアからアメリカ、アメリカからヨーロッ
パなど ) へ 行 った 場 合 に、 夜 は 眠 れな
いが、 昼 はぼーっとして 集 中 できないと
いう 経 験 をする 人 が 多 くいます。 時 差 の
ほ か に も 、 部 屋 が 明 るす ぎ る 、 騒 音 、ベッ
ドが 硬 すぎる ( 柔 らかすぎる )、 気 温 や
体 感 温 度 、 隣 に 人 がいる ( いない ) な
どの 環 境 に 大 きく 影 響 される 場 合 もあ
ります。
部 屋 が 明 るすぎるなどの 場 合 、 対 処
法 がないとあきらめて、それなりに 適 応
できているのならよいのですが、 睡 眠
不 足 やその 他 の 精 神 的 要 因 からネガティ
ブで 極 端 にしか 物 事 が 考 えられないた
めに、どうせ 対 処 法 はない、と 最 初 から
あきらめてしまって 不 眠 に 苦 しみ 続 けて
いる 場 合 があります。
「 ブ ラ イ ン ド を 換 え た い け れ ど お 金 が
な い 」、「 ア イ マ ス ク は 邪 魔 に な る 」、「 高
いところの 窓 は 覆 えない」などと 決 め
つけてしまっている 場 合 も、 他 の 予 算 を
削 ってブラインドを 換 える 価 値 があるか
どうか、 心 地 悪 くないアイマスクを 探 す
価 値 があるかどうか、はしごを 出 してき
て、または 誰 かに 頼 んで 高 いところの 窓
を 覆 う 価 値 があるかどうかなどの 優 先
順 位 の 問 題 で、 対 処 法 が 100% 全 くない
という 状 況 の 方 が 少 ないのが 現 実 です。
精 神 的 要 因
一 番 多 いのは、イライラや 心 配 事 など、
意 識 的 に 考 えていなくても、 何 かが 頭 に
張 り 付 いてい る 場 合 で す。 日 常 の 範 囲
で、このような 不 快 な 出 来 事 や 気 持 ちが
頭 の 中 でぐるぐるしてしまうことも 時 に
はあることです。しかし、これが 何 週 間
も 続 く、 頻 度 や 程 度 がどんどん 増 してい
く、 他 のことが 考 えられず 手 につかない
などの 場 合 は、 抑 うつ 状 態 や 不 安 症 の
疑 いがあります。
何 かが 悲 しかったり 辛 かったりするば
かりがうつ 状 態 ではありません。 特 に 何
も 感 じない、 喜 びを 感 じられない、 何
となく 希 望 が 持 てない、 以 前 楽 しんでい
たことも 楽 しく 感 じないなどが 主 観 的 体
験 で、 食 欲 減 退 や 食 べすぎ、 性 欲 や 活
力 の 減 退 、 集 中 力 や 注 意 力 の 減 退 など
がある 場 合 は、 入 眠 困 難 や 中 途 覚 醒 や
熟 眠 障 害 が 認 められる 場 合 が 多 くあり、
根 本 的 なうつ 状 態 を 改 善 しないと、い
くら 眠 剤 を 飲 んでその 晩 は 眠 れたとして
も、 根 本 的 に 不 眠 は 改 善 しません。も
ちろん、 不 眠 であるからこそ、ますます
うつ 状 態 や 不 安 がひどくなるという 悪 循
環 もあります。
次 回 は 不 眠 症 の 対 策 と 治 療 について
述 べます。
X X X X X
「 心 の 健 康 ノ ー ト 」 シ リ ー ズ で は 、 主
な 心 の 病 気 やストレスの 表 れ 方 、 心 理
療 法 、 精 神 科 薬 、 人 との 接 し 方 、 家 族
関 係 、 職 場 でのメンタルヘルスなどにつ
いて、 心 と 体 の 健 康 のために、 皆 さん
に 正 しく 理 解 して 頂 きたいことを 紹 介 し
ていきたいと 思 います。