San Diego Yu Yu, September 1, 2023

アメリカ 健 康 ノート (252)
Medical
がん 免 疫 療 法
(Immunotherapy for Cancer) = 下 =
金 一 東 日 本 クリニック・サンディエゴ 院 長
金 一 東
日 本 クリニック 医 師 。 神 戸 市 出 身 。 岡 山
大 学 医 学 部 卒 業 。 同 大 学 院 を 経 て、 横 須
賀 米 海 軍 病 院 、 宇 治 徳 洲 会 等 を 通 じ 日
米 プライマリケアを 経 験 。その 後 渡 米 し、
コロンビア 大 学 公 衆 衛 生 大 学 院 を 経 て、
エール 大 学 関 連 病 院 で 内 科 ・ 小 児 科 合 併
研 修 を 終 了 。スクリップス・クリニックに 勤
務 の 後 、 現 職 に 。 内 科 ・ 小 児 科 両 専 門 医 。
26 SAN DIEGO YU-YU SEPTEMBER 1, 2023
がん 免 疫 療 法 ( 続 き)
★モノクローナル 抗 体
人 工 的 に 作 られた 抗 体 で、がん 細 胞 の 受
容 体 に 結 合 して 直 接 攻 撃 したり、がん 細 胞
に 目 印 をつけて 免 疫 システムから 攻 撃 され
やすくします。 異 物 / 外 敵 を 攻 撃 する 免 疫 シ
ステムの 一 つは 抗 体 で、 通 常 、 免 疫 細 胞 の
B 細 胞 から 作 られますが、モノクローナル 抗
体 は 人 工 的 に 多 量 に 作 成 され、 異 物 / 外 敵
であるがん 細 胞 の 抗 原 に 結 合 するのです。
モノクローナル 抗 体 を 作 成 するには、が
ん 細 胞 の 抗 原 を 特 定 する 必 要 があります。
これは 必 ずしも 簡 単 な 作 業 ではありません。
モノクローナル 抗 体 は 作 成 されたものにより
4 つの 種 類 があります。ネズミのタンパク 質
から 作 成 したマウス 抗 体 、 一 部 ネズミ、 一
部 ヒトのタンパク 質 から 作 成 したキメラ 抗
体 、ネズミの 少 量 のタンパク 質 をヒトのタ
ンパク 質 に 結 合 したヒト 化 抗 体 、そしてヒト
のタンパク 質 だけで 作 成 した 完 全 ヒト 抗 体
です。
がんの 治 療 で 使 われる
モノクローナル 抗 体 の 種 類
* 裸 のモノクローナル 抗 体
裸 のモノクロ-ナル 抗 体 は、 薬 物 も 放 射
性 物 質 も 結 合 していない 抗 体 です。その 機
能 は:
(1) がん 細 胞 に 結 合 して、 体 の 免 疫 システ
ムががん 細 胞 を 攻 撃 する 際 の 目 印 になる。
(2) チェックポイントに 働 きかけ 免 疫 反 応
を 活 発 にさせる。
(3) がん 細 胞 の 抗 原 に 結 合 し、がんの 増 殖
や 転 移 を 抑 える。
* 結 合 型 モノクローナル 抗 体
化 学 療 法 薬 や 放 射 性 物 質 と 結 合 したモノ
■ 筆 者 閑 談 「 暑 い/ 温 暖 化 」
クローナル 抗 体 で、がん 細 胞 の 抗 原 に 結 合
して 化 学 療 法 薬 や 放 射 性 物 質 ががん 細 胞 を
攻 撃 するのを 助 けます。
・ 放 射 性 標 識 抗 体 ―― 少 量 の 放 射 性 物 質 を
結 合 させたモノクローナル 抗 体 で、がん 細
胞 に 結 合 し、がん 細 胞 を 攻 撃 します。 放 射
免 疫 治 療 とも 呼 ばれています。
・ 化 学 標 識 抗 体 ―― 化 学 療 法 薬 が 結 合 した
モノクローナル 抗 体 で、がん 細 胞 に 結 合 し
て 攻 撃 をします。
* 二 重 特 異 性 モノクローナル 抗 体
2つのモノクローナル 抗 体 が 合 体 した 抗
体 。 例 えば、 一 つのモノクローナル 抗 体 が
がん 細 胞 に 結 合 し、 他 のモノクローナル 抗
体 が T 細 胞 に 結 合 して、 免 疫 システムがが
ん 細 胞 を 攻 撃 するのを 助 けます。
モノクローナル 抗 体 の 副 作 用 は、アレル
ギー 反 応 、 発 熱 、 悪 寒 、 頭 痛 、 嘔 気 、 嘔 吐 、
下 痢 、 低 血 圧 、 発 疹 などです。 一 般 的 に 化
学 療 法 薬 に 比 べ 重 篤 な 副 作 用 は 少 ないとさ
れています。
他 のモノクローナル 抗 体 は = 上 = で 述
べたように、チェックポイント 阻 害 薬 とし
て 使 われます。チェックポイント 阻 害 薬 は、
がん 細 胞 が 免 疫 システムをブロックできな
いように 予 防 します。
★がんワクチン
がんワクチンには、がん 細 胞 を 攻 撃 する
ワクチンとがんの 予 防 のためのワクチンが
あります。
*がん 治 療 ワクチン
がん 細 胞 に 対 する 免 疫 システムの 反 応 を
今 年 の 夏 は、サンディエゴ 以 外 は 猛 暑 ですね。 私 の
友 人 は 、 日 本 か ら 娘 さ ん と 大 学 見 学 に フェニックスへ 行 っ
たところ、 摂 氏 4 5 度 で、 1 日 でイヤに なったそうで す。
地 球 の 温 暖 化 は 確 実 に 進 んでいます。
高 め、がん 細 胞 を 攻 撃 したり、がんの 治 療
後 にがんが 再 発 したり、 転 移 したりするの
を 防 ぎます。ある 種 のがん 治 療 ワクチンは
がん 細 胞 、がん 細 胞 の 一 部 あるいはがん
細 胞 の 抗 原 を 利 用 して 作 成 されています。
がん 患 者 さんの 免 疫 細 胞 を 体 から 取 っ
て、がん 細 胞 などに 曝 してワクチンをつく
ります。できたワクチンは、 注 射 して、が
ん 細 胞 に 対 して 免 疫 反 応 を 増 強 します。ワ
クチンはアジュバント( 免 疫 補 助 剤 )とい
う 物 質 と 一 緒 に 使 うと 免 疫 反 応 がさらに 増
強 されます。 プロベンジというがんワクチ
ンはホルモン 療 法 も 効 かなくなった 重 度 の
前 立 腺 がんの 治 療 に 使 われます。
*がんの 予 防 のためのワクチン
ある 種 のがんはウイルスによって 起 こり
ます。このようなウイルスの 感 染 を 予 防 す
るワクチンはそのウイルスによるがんも 予
防 します。HPV(ヒト 乳 頭 ウイルス)の 高 リ
スク 群 は 子 宮 頚 部 、 肛 門 、 咽 頭 、 膣 、 外
陰 部 、 陰 茎 のがんの 原 因 になります。 小 児
や 若 い 成 人 に HPV のワクチン 接 種 をする
と 子 宮 頚 部 がんやそれ 以 外 の 部 位 のがん
を 予 防 することが 可 能 になります。
慢 性 B 型 肝 炎 は 肝 臓 がんのリスクにな
ります。B 型 肝 炎 のワクチンを 受 けること
で 肝 臓 がんになりにくくなります。
* 樹 状 細 胞 ワクチン 療 法
樹 状 細 胞 は、がんを 攻 撃 する 免 疫 細 胞 に
「がん」という 異 物 を 認 識 させて 効 率 よく
攻 撃 できるように 指 令 を 出 す、いわば 免 疫
の 司 令 塔 になる 細 胞 です。 樹 状 細 胞 ワクチ
ン 療 法 は、 免 疫 システムから 逃 れて 成 長 を
始 めたがんに 対 して、 攻 撃 するように 指 令
を 与 える 治 療 法 です。
★サイトカイン 療 法
サイトカインは 免 疫 システムの 一 部 で、
細 胞 間 のメッセンジャー 役 の 小 さなタンパ
ク 質 で、 免 疫 細 胞 を 刺 激 してがんと 闘 うよ
うにします。インターロイキン、インターフェ
ロン、 腫 瘍 壊 死 因 子 、 成 長 因 子 などの 種
類 があります。
*インターロイキン
インターロイキンは、 白 血 球 間 のシグナ
ル 役 をするサイトカインです。インターロ
イキン2(IL-2)は 免 疫 細 胞 の 成 長 を 助 け、
分 裂 を 促 進 します。 人 工 的 に 作 ったインター
ロイキン2は 重 度 の 腎 臓 がんや 転 移 のある
黒 色 腫 に 効 果 をもたらすものもあります。
インターロイキン2の 副 作 用 は、 悪 寒 、 発 熱 、
疲 労 、 精 神 的 混 乱 、 嘔 気 、 嘔 吐 、 下 痢 な
どです。 他 のインターロイキンの 種 類 もが
んに 効 果 があるか 研 究 されています。
*インターフェロン
インターフェロンはウイルス 感 染 やがん
を 抑 制 するサイトカインです。 インターフェ
ロン α、インターフェロン β、それにイン
ターフェロン γ があります。この 中 でイン
ターフェロン α の みががん の 治 療 に 使 わ れ
ます。ある 免 疫 細 胞 を 活 性 化 させて、がん
細 胞 を 攻 撃 します。がん 細 胞 の 成 長 を 直 接
抑 えたり、 腫 瘍 に 栄 養 を 運 ぶ 血 管 の 成 長 を
妨 げます。
インファーフェロン α は 白 血 病 やリンパ
腫 、 腎 臓 がん、 黒 色 腫 などの 治 療 に 使 わ
れ ま す。イ ン タ ーフ ェ ロ ン の 副 作 用 は 、 悪 寒 、
発 熱 、 頭 痛 、 疲 労 、 食 欲 不 振 、 嘔 気 、 嘔 吐 、
白 血 球 の 減 少 、 発 疹 、 毛 が 薄 くなる、など
です。
★ 腫 瘍 溶 解 性 ウイルス 療 法
ウイルス 療 法 とも 呼 ばれています。ウイ
ルスをがん 細 胞 に 感 染 させて 攻 撃 する 治 療
法 ですが、 遺 伝 子 組 み 換 え 技 術 を 利 用 して、
がん 細 胞 のみに 感 染 して 攻 撃 するウイルス
をラボで 作 成 し、がん 細 胞 に 注 入 します。
単 純 ヘルペスウイルス1 型 やアデノウイルス
などのウイルスが 使 われています。
* * * * *
* この 記 事 に 関 するご 質 問 は 日 本 クリニック
☎ 858-560-8910 まで。