講義要綱 PDFファイル【冊子版】※2013/3/11現在 - 慶應義塾大学-塾生HP
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【文経法商医理薬】<br />
【文経法商医理薬】<br />
【文経法商医理薬】<br />
【文経法商医理薬】<br />
近代思想史Ⅰ 2 単位(春学期)<br />
日本近代の思想と社会Ⅰ<br />
片山 杜秀<br />
授業科目の内容:<br />
西洋近代は、人間個々人の自立をよしとして、そういう人間にな<br />
ればなるほど、立派な近代人なのだという思想を打ち立てました。<br />
しかし、人間は誰しもひとりで逞しくこの世の荒波に立ち向かって<br />
いけるほど強い存在なのでしょうか。必ずしもそうではないから、<br />
近代の進展とともに、人間の心の病を扱う精神医学が発達したり、<br />
ノルウェーの画家、ムンクの『叫び』に端的に象徴されるような、<br />
孤独のやりきれなさを表現する芸術が勃興したのではないでしょう<br />
か。<br />
あるいは西洋近代は、人間の文明は哲学思想と科学技術の連繋に<br />
よってどんどん進歩してゆくものだという考え方を当然としました。<br />
しかも、産業革命やフランス革命を経た西洋は、物の考え方の面で<br />
も、実際的な力の面でも(経済力や生産力や軍事力などの面でも)、<br />
東洋より進んでいるというのがあたりまえの前提になりました。そ<br />
ういうことは西洋人が勝手に思っていたわけではなくて、たとえば<br />
明治時代の初めには日本人の多数派にとっても常識になったのです。<br />
明治のスローガンは「文明開化」ですけれども、これを丁寧に言い<br />
直せば「新しくなおかつ模範的な西洋文明に向かって、古めかしく<br />
劣等な従来の日本文明を、なるたけ早く開いて化けさせること」と<br />
いった表現になるでしょう。その「文明開化期」のベストセラーと<br />
いえば福沢諭吉の『学問のすすめ』ですが、そこでどんな学問をす<br />
すめているかといえば、これはもう「新しい西洋の学問のすすめ」<br />
なのです。<br />
とはいえ、そういう西洋近代の人間中心主義や個人主義や自由主<br />
義や進歩主義が良いことずくめかといえば、そうとばかりも言えな<br />
いでしょう。たとえば日本の近代を例にとっても、福沢諭吉のよう<br />
な物わかりのいい人ばかりだったのではありません。西洋の文化や<br />
思想はどこまでがグローバル・スタンダードで、どこまでがやはり<br />
西洋に特殊と考えられるべきなのだろうか。文明とは本当に進歩す<br />
るものなのだろうか。進んだようにみえているものが実は遅れてい<br />
るとか退化し逆行しているということは、ないのだろうか。そもそ<br />
も、欧米がアジアよりも進んでいるというのは果たして真実なのだ<br />
ろうか。考えようによっては、話をひっくり返せるのではないだろ<br />
うか。幕末から今日まで、そんな想念にとらわれる日本人はたくさ<br />
ん居ました。日本と西洋の関係をどのようにとらえたらいいのか、<br />
悩み苦しみ、突破口をみつけたつもりになったり、やはり錯誤と呼<br />
べるような落とし穴にはまってしまったり……。さまざまな思想の<br />
営みがくりひろげられてきたのです。<br />
この時間では、西洋近代に違和感を抱いたり疑問を呈したり反発<br />
したりした日本の思想の歴史を主に扱ってゆきます。けれども何に<br />
反発したのかが分からないと話にならないので、西洋近代とは何か<br />
ということにもそれなりの比重がかかるでしょう。その相剋や軋轢<br />
の思想史から、近代とは何かという大命題に思いを馳せていただけ<br />
たらと願っています。<br />
具体的には水戸学、岡倉天心、西田幾多郎、宮澤賢治などを、主<br />
に取りあげる予定です。「近代思想史Ⅱ」でも同じテーマを扱い、続<br />
きをやる格好になりますが、「近代思想史Ⅰ」だけでも、まとまった<br />
内容として聞いていただけると思います。<br />
テキスト(教科書):<br />
特にありません。それにある程度まで代わるものとして適宜プリ<br />
ントを配布します。<br />
近代思想史Ⅱ 2 単位(秋学期)<br />
日本近代の思想と社会Ⅱ<br />
片山 杜秀<br />
授業科目の内容:<br />
西洋近代は、人間個々人の自立をよしとして、そういう人間にな<br />
ればなるほど、立派な近代人なのだという思想を打ち立てました。<br />
しかし、人間は誰しもひとりで逞しくこの世の荒波に立ち向かって<br />
いけるほど強い存在なのでしょうか。必ずしもそうではないから、<br />
近代の進展とともに、人間の心の病を扱う精神医学が発達したり、<br />
ノルウェーの画家、ムンクの『叫び』に端的に象徴されるような、<br />
孤独のやりきれなさを表現する芸術が勃興したのではないでしょう<br />
か。<br />
あるいは西洋近代は、人間の文明は哲学思想と科学技術の連繋に<br />
よってどんどん進歩してゆくものだという考え方を当然としました。<br />
しかも、産業革命やフランス革命を経た西洋は、物の考え方の面で<br />
も、実際的な力の面でも(経済力や生産力や軍事力などの面でも)、<br />
東洋より進んでいるというのがあたりまえの前提になりました。そ<br />
ういうことは西洋人が勝手に思っていたわけではなくて、たとえば<br />
明治時代の初めには日本人の多数派にとっても常識になったのです。<br />
明治のスローガンは「文明開化」ですけれども、これを丁寧に言い<br />
直せば「新しくなおかつ模範的な西洋文明に向かって、古めかしく<br />
劣等な従来の日本文明を、なるたけ早く開いて化けさせること」と<br />
いった表現になるでしょう。その「文明開化期」のベストセラーと<br />
いえば福沢諭吉の『学問のすすめ』ですが、そこでどんな学問をす<br />
すめているかといえば、これはもう「新しい西洋の学問のすすめ」<br />
なのです。<br />
とはいえ、そういう西洋近代の人間中心主義や個人主義や自由主<br />
義や進歩主義が良いことずくめかといえば、そうとばかりも言えな<br />
いでしょう。たとえば日本の近代を例にとっても、福沢諭吉のよう<br />
な物わかりのいい人ばかりだったのではありません。西洋の文化や<br />
思想はどこまでがグローバル・スタンダードで、どこまでがやはり<br />
西洋に特殊と考えられるべきなのだろうか。文明とは本当に進歩す<br />
るものなのだろうか。進んだようにみえているものが実は遅れてい<br />
るとか退化し逆行しているということは、ないのだろうか。そもそ<br />
も、欧米がアジアよりも進んでいるというのは果たして真実なのだ<br />
ろうか。考えようによっては、話をひっくり返せるのではないだろ<br />
うか。幕末から今日まで、そんな想念にとらわれる日本人はたくさ<br />
ん居ました。日本と西洋の関係をどのようにとらえたらいいのか、<br />
悩み苦しみ、突破口をみつけたつもりになったり、やはり錯誤と呼<br />
べるような落とし穴にはまってしまったり……。さまざまな思想の<br />
営みがくりひろげられてきたのです。<br />
この時間では、西洋近代に違和感を抱いたり疑問を呈したり反発<br />
したりした日本の思想の歴史を主に扱ってゆきます。けれども何に<br />
反発したのかが分からないと話にならないので、西洋近代とは何か<br />
ということにもそれなりの比重がかかるでしょう。その相剋や軋轢<br />
の思想史から、近代とは何かという大命題に思いを馳せていただけ<br />
たらと願っています。<br />
具体的には丘浅次郎、北一輝、大川周明、権藤成卿、三井甲之、<br />
「京都学派」などを、主に取りあげる予定です。「近代思想史Ⅰ」で<br />
も同じテーマを扱い、その続きをやる格好になりますが、「近代思想<br />
史Ⅱ」だけでも、まとまった内容として聞いていただけると思いま<br />
す。<br />
テキスト(教科書):<br />
特にありません。それにある程度まで代わるものとして適宜プリ<br />
ントを配布します。<br />
近代思想史Ⅰ 2 単位(春学期)<br />
ドイツ近代社会思想における自由と共同<br />
針谷 寛<br />
授業科目の内容:<br />
ヨーロッパ社会思想史における「市民社会」概念の変遷を手がか<br />
りとしながら,西欧近代社会とその思想の諸問題を検討する。材料<br />
としてはカント,ヘーゲル,マルクスなどドイツ近代の思想家の社<br />
会理論を重点的に取り上げる予定である。これらの理論を扱うに際<br />
しては歴史的なコンテクストの中で考察することに努める。これを<br />
材料にして,現代の生活についてもその特殊性をみずからの頭で考<br />
え表現する力を培ってほしい。<br />
テキスト(教科書):<br />
使用しない。必要に応じてレジュメを配布する。<br />
近代思想史Ⅱ 2 単位(秋学期)<br />
ドイツ近代社会思想における自由と共同<br />
針谷 寛<br />
授業科目の内容:<br />
ヨーロッパ社会思想史における「市民社会」概念の変遷を手がか<br />
りとしながら,西欧近代社会とその思想の諸問題を検討する。材料<br />
としてはカント,ヘーゲル,マルクスなどドイツ近代の思想家の社<br />
会理論を重点的に取り上げる予定である。これらの理論を扱うに際<br />
しては歴史的なコンテクストの中で考察することに努める。これを<br />
共通授業科目<br />
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