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18 SAN DIEGO YU-YU SEPTEMBER <strong>16</strong>, <strong>2022</strong><br />
C<br />
こだわりの 芸 、 妥 協 許 さず<br />
鉄 の 街 が 生 んだ 戦 時 指 導 者<br />
ウクライナは 8 月 24 日 、ロシアの 侵 攻 から 半 年 の 節 目 と 重 なる 独 立 記 念 日 を 迎 えた。ゼレンスキー 大 統 領 はビデオ 声 明 を 発 表 し、 領 土 に 関 して 妥 協 せず、<br />
ロシアが 2014 年 に 強 制 編 入 したクリミア 半 島 と、 大 半 を 実 効 支 配 される 東 部 ドンバス 地 域 について「いかなる 手 段 を 使 っても 取 り 戻 す」と 宣 言 した<br />
戦 時 大 統 領 として 国 民 を 鼓 舞 するウク<br />
ライナのウォロディミル・ゼレンスキー 氏<br />
(44) の 人 物 像 が、 出 身 地 クリブイリフに<br />
暮 らす 知 人 の 話 から 垣 間 見 えた。 際 立 つ<br />
のは、 物 事 の 細 部 や 組 織 運 営 に 妥 協 を<br />
許 さない 性 格 だ。コメディアン 時 代 に 培 っ<br />
た 発 信 力 が 武 器 だが、 危 うさもはらむ。<br />
自 由 と 狂 乱 の 中<br />
人 口 約 67 万 のウクライナ 第 7の 都 市<br />
クリブイリフは 無 数 の 煙 突 がそびえ、 道<br />
や 電 柱 、 家 屋 が 赤 錆 ( さび ) に 染 まる。<br />
ソ 連 時 代 から 稼 働 する 製 鉄 所 やボタ 山<br />
の 粉 塵 ( じん ) のせいだ。クリブイリフ<br />
は「 鋼 鉄 の 町 」の 異 名 をとる。<br />
1999 年 の 春 、 市 内 の 映 画 館 兼 劇 場 に<br />
は 声 を 張 り 上 げ 学 生 劇 を 指 導 する 21 歳<br />
のゼレンスキー 氏 の 姿 があった。 何 度 も<br />
何 度 も 繰 り 返 させる。 当 時 、 大 学 対 抗 で<br />
劇 やダンスを 競 う 大 会 が 数 少 ない 娯 楽<br />
だった。 既 に 卒 業 していたゼレンスキー<br />
氏 は 駆 け 出 しだった。 現 場 を 見 たワレン<br />
チン・オルロフ 氏 (52) は「 脚 本 や 演 技 、<br />
演 出 など 細 部 のこだわりがすごかった」<br />
と 話 す。<br />
「 自 由 と 狂 乱 の 時 代 だ っ た 」。 1 学 年 上<br />
でゼレンスキー 氏 と 演 劇 活 動 を 共 にし、<br />
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母 校 の 学 長 となったアンドリー・シャイ<br />
カン 氏 (45) は 述 懐 する。1991 年 にソ<br />
連 が 崩 壊 。 重 苦 しい 体 制 が 消 滅 すると、<br />
大 学 は 様 変 わり。 経 済 が 疲 弊 する 中 、<br />
工 場 の 鉄 鋼 を 車 両 ごと 盗 んで 得 た 金 で<br />
教 員 を 買 収 する 学 生 もいた。<br />
そんな 時 代 に 芸 に 打 ち 込 む 珍 しい 学<br />
生 だった。 当 時 結 成 したコメディー 集 団<br />
「 第 95 街 区 」では「 絶 対 的 なリーダーと<br />
して 存 在 感 があった。グループの 決 まり<br />
を 破 った 親 友 を 追 い 出 し、 二 度 と 関 わら<br />
なかった」( シャイカン 氏 )。70 代 の 今<br />
も 同 じ 大 学 で 教 壇 に 立 つ 厳 格 な 父 親 の<br />
影 響 とみる 関 係 者 は 多 い。<br />
財 閥 と 対 決<br />
大 統 領 就 任 後 、 汚 職 と 癒 着 の 温 床 だっ<br />
た 有 力 財 閥 オリガルヒとの 対 決 でその 性<br />
格 がのぞいた。ロシアと 近 い 財 閥 や、 後<br />
援 者 だったイーホル・コロモイスキー 氏<br />
(5 9) の 政 治 的 影 響 力 を 削 ぐ「 反 オリガル<br />
ヒ 法 」 に 昨 年 1 1 月 署 名 。 2 月 の ロ シ ア 侵<br />
攻 後 もコロモイスキー 氏 らにメディアを<br />
手 放 させた。<br />
元 大 統 領 の 顧 問 などを 務 めた 評 論 家<br />
ワジム・カラショフ 氏 (66) は、 最 近 の<br />
閣 僚 級 や 大 使 の 更 迭 を 含 め「 競 争 者 をな<br />
© Alexandros Michailidis / shutterstock.com<br />
ロシア 侵 攻 から 半 年 の 節 目 と 重 なるウクライナの 独 立 記 念 日 を 迎 え、<br />
戦 闘 車 両 が 展 示 された 首 都 キーウ 中 心 部 で 国 旗 を 掲 げて 歩 く 女 性<br />
プーチン 大 統 領 は「 戦 闘 が 長 引 くほど 和 平 合 意 は 難 しくなる」と 主 張 。<br />
クリミア 半 島 の 帰 属 問 題 は「 決 着 済 み」として、 協 議 自 体 を 拒 んでいる<br />
ゼレンスキー 氏 は 大 統 領 就 任 後 、トランプ 米 大 統 領 ( 当 時 ) から SNS<br />
の 利 用 を 学 んだと 語 った。 選 挙 戦 ではメディア 露 出 より 交 流 サイトの<br />
発 信 に 集 中 。 戦 時 でもネットを 通 じて 国 民 の 感 情 に 訴 え 続 けている<br />
くし 権 力 を 集 中 させている。スポンサー<br />
だったコロモイスキー 氏 の 影 響 力 は 今 は<br />
ない」と 話 す。<br />
SNS に 集 中<br />
「 あ な た か ら 学 ん だ 」。 ゼ レン ス キ ー 氏<br />
は 2019 年 の 大 統 領 選 での 勝 利 後 、 米<br />
国 のトランプ 大 統 領 ( 当 時 ) との 電 話<br />
会 談 で 語 りかけた。 選 挙 戦 では 対 立 候<br />
補 との 討 論 を 避 け、メディア 露 出 より 交<br />
流 サイト (SNS) の 発 信 に 集 中 。ネット 上<br />
で 人 々の 感 情 に 訴 えるスタイルは 戦 時 で<br />
も 同 じだ。<br />
前 線 で 兵 士 が 死 傷 する 中 、 高 級 ファッ<br />
ション 誌 の 撮 影 に 最 近 応 じ、 強 い 批 判<br />
を 浴 び た 。 地 元 記 者 は「 戦 時 大 統 領 を<br />
演 じることを 楽 しんでいるように 見 える」<br />
と 評 した。■<br />
(クリブイリフ 共 同 )<br />
© kyodo<br />
© Rokas Tenys / shutterstock.com<br />
© shutterstock.com<br />
侵 攻 半 年 、 高 まる 緊 張<br />
戦 死 者 甚 大 、 停 戦 見 通 せず<br />
ロシアによるウクライナ 侵 攻 から 8 月 24<br />
日 で 半 年 が 経 過 した。この 日 はウクライナ<br />
が 1991 年 にソ 連 から 独 立 宣 言 した 記 念 日<br />
でもある。 米 政 府 はロシアが 民 間 インフラ<br />
や 政 府 施 設 への 攻 撃 を 激 化 させるとの 情<br />
報 があると 警 戒 を 促 し、 首 都 キーウでは<br />
行 動 制 限 が 強 化 されるなど 緊 張 が 高 まる。<br />
双 方 とも 戦 死 者 の 増 加 に 歯 止 めが 掛 から<br />
ない 中 、ロシアは 戦 果 を 求 めて 強 硬 姿 勢 。<br />
ウクライナも 譲 歩 しない 構 えで、 停 戦 交 渉<br />
の 再 開 は 見 通 せない。<br />
ゼレンスキー 大 統 領 は、 独 立 記 念 日 に<br />
合 わせ「ロシアはひどく 残 酷 な 行 為 を 実 行<br />
するかもしれない」と 警 告 。ロシア 軍 が 国<br />
境 近 くに 戦 闘 機 やヘリコプターを 集 結 させ<br />
たとの 報 道 もある。<br />
ウクライナ 軍 は 8 月 22 日 、 戦 死 者 が 約<br />
9,000 人 に 上 ると 公 表 。ロシア 軍 の 損 失 も<br />
数 万 人 規 模 との 観 測 もある。 戦 闘 長 期 化<br />
で、 双 方 の 人 的 被 害 は 拡 大 している。<br />
ウクライナのシンクタンクが 8 月 に 実 施<br />
した 世 論 調 査 によると、90% 超 が 勝 利 を<br />
信 じており、 何 をもって 勝 利 と 見 なすかと<br />
の 問 いには、5 割 超 が 全 土 からのロシア<br />
軍 撤 退 と 回 答 。20.5%はロシアの 軍 壊 滅<br />
や 内 政 崩 壊 が 進 むこととした。<br />
ミハイロ・ポドリャク 大 統 領 府 長 官 顧 問<br />
は 8 月 のインタビューで、 停 戦 協 議 再 開 は<br />
世 論 が 許 さないとの 認 識 を 示 した。<br />
一 方 、プーチン 大 統 領 は 7 月 、 停 戦 交<br />
渉 を「 拒 否 しない」としながらも「 戦 闘 が<br />
長 引 くほど 我 々との 和 平 合 意 は 難 しくな<br />
る」と 主 張 。2014 年 に 強 制 編 入 したクリ<br />
ミア 半 島 の 帰 属 問 題 に つ いて は 「 決 着 済<br />
み」としており、 協 議 対 象 とすること 自 体<br />
を 拒 んでいる。<br />
ゼレンスキー 氏 は 8 月 23 日 、ロシアの<br />
実 効 支 配 下 にあるクリミア 半 島 や 東 部 、 南<br />
部 の 都 市 名 を 多 数 挙 げ な が ら「 占 拠 は 一<br />
時 的 なものだ」と 主 張 。 将 来 的 には「ウク<br />
ライナ 国 旗 が 永 遠 にはためくことになる」<br />
と 訴 え、 領 土 奪 還 の 意 思 を 示 した。<br />
* 資 料 : 共 同 通 信 社<br />
© shutterstock.com