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San Diego Yu Yu, April 1, 2021

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アメリカ 健 康 ノート (228)<br />

Medical<br />

* 本 記 事 に 対 するご 質 問 がありましたら 日 本 クリニック<br />

☎︎ 858-560-8910 までご 連 絡 ください。<br />

新 型 コロナワクチン 最 新 情 報<br />

(COVID-19 Vaccines-Update)<br />

金 一 東 日 本 クリニック・サンディエゴ 院 長<br />

金 一 東<br />

日 本 クリニック 医 師 。 神 戸 市 出 身 。 岡 山<br />

大 学 医 学 部 卒 業 。 同 大 学 院 を 経 て、 横 須<br />

賀 米 海 軍 病 院 、 宇 治 徳 洲 会 等 を 通 じ 日<br />

米 プライマリケアを 経 験 。その 後 渡 米 し、<br />

コロンビア 大 学 公 衆 衛 生 大 学 院 を 経 て、<br />

エール 大 学 関 連 病 院 で 内 科 ・ 小 児 科 合 併<br />

研 修 を 終 了 。スクリップス・クリニックに 勤<br />

務 の 後 、 現 職 に 。 内 科 ・ 小 児 科 両 専 門 医 。<br />

22 SAN DIEGO YU-YU APRIL 1, <strong>2021</strong><br />

昨 年 7 月 の 第 219 回 アメリカ 健 康 ノートで、 新 型 コ<br />

ロナワクチンの 開 発 状 況 について 解 説 をしましたが、<br />

今 回 は 実 際 に 接 種 が 始 まっているワクチンの 解 説 です。<br />

アメリカでは、 新 型 コロナワクチン 接 種 は 昨 年 12 月<br />

から 始 まり、3 月 17 日 現 在 、すでに 国 民 の 約 12%が<br />

ワクチン 接 種 を 終 了 しています。1 億 1 千 万 回 分 以 上<br />

のワクチンが 接 種 されたことになります。65 歳 以 上 の<br />

人 に 限 ると 少 なくとも 1 回 ワクチン 接 種 している 人 は<br />

65.4%、ワクチン 接 種 を 終 了 している 人 は 37.6%います。<br />

アメリカではすでに 290 0 万 人 以 上 の 累 積 感 染 者 数<br />

がありますが、1 日 当 たりの 新 規 感 染 者 数 は 1 月 の<br />

ピーク 時 よりは 下 がっています。このままワクチン 接<br />

種 者 が 増 えていくと、 新 規 感 染 者 数 はもっと 下 がるの<br />

で は な い か と 予 想 さ れ ま す。た だ 一 方 、テ キ サ ス 州 な ど 、<br />

マスク 着 用 の 義 務 などを 中 止 し、あらゆるビジネスを<br />

再 開 している 地 域 などもあり、ロックダウンやマスク<br />

の 着 用 義 務 を 早 期 に 解 除 すると 新 規 感 染 者 数 が 再 び<br />

増 加 する 可 能 性 もあります。<br />

新 型 コロナワクチンの 働 く 背 景<br />

- 免 疫 の 基 礎 知 識 -<br />

新 型 コロナワクチンの 働 く 仕 組 みは、 体 の 免 疫 につ<br />

いての 知 識 が 少 しあると 理 解 しやすくなります。 ヒト<br />

の 体 には、ウイルスなどの 外 敵 が 侵 入 してくると、そ<br />

れ を「 抗 原 」と 認 識 して 無 害 化 して 排 除 しようとする<br />

免 疫 防 御 機 構 があります。この 免 疫 には 液 性 免 疫 と<br />

細 胞 性 免 疫 の2 種 類 があり、いずれも 血 液 中 の 白 血<br />

球 が 関 与 しています。<br />

白 血 球 にはいくつかの 種 類 ( 好 中 球 、 単 球 、リン<br />

パ 球 など ) がありますが、 ウイルス 感 染 の 場 合 は、<br />

単 球 とリンパ 球 が 主 に 働 きます。 抗 原 が 体 内 に 侵 入 し<br />

てくると、 単 球 は 樹 状 細 胞 とマクロファージに 分 化 し、<br />

食 作 用 で 分 解 したり、 細 胞 表 面 に 移 動 させ「 抗 原 提 示 」<br />

という 機 能 をします。それを、リンパ 球 のT 細 胞 が 認<br />

識 し、 同 じリンパ 球 であるB 細 胞 を 増 殖 させ、そのB<br />

細 胞 に 抗 体 を 作 らせ、ウイルスと 闘 います。T 細 胞 の<br />

一 種 キラーT 細 胞 は、 直 接 ウイルスを 攻 撃 排 除 します。<br />

抗 体 が 関 与 するのが 液 性 免 疫 、T 細 胞 やマクロファー<br />

ジが 直 接 攻 撃 するのが 細 胞 性 免 疫 というわけです。 両<br />

■ 筆 者 閑 談 「うそ」<br />

方 の 免 疫 とも、 感 染 後 は 記 憶 細 胞 が 形 成 され、 将 来<br />

の 感 染 に 備 えます。<br />

ワクチンは、この 抗 原 をあらかじめ 体 に 与 え、 液<br />

性 免 疫 と 細 胞 性 免 疫 の 両 方 を 準 備 させるわけですが、<br />

従 来 のワクチンが、 病 気 の 原 因 となるウイルスや 細 菌<br />

を 弱 毒 化 させたり、 死 滅 させて 体 に 与 えるのに 対 し、<br />

新 型 コロナワクチンは 抗 原 の 遺 伝 情 報 ( 抗 原 の 設 計<br />

図 ) だけをヒトに 与 え、ヒトの 細 胞 にその 抗 原 を 作 ら<br />

せ、そして 免 疫 反 応 を 誘 導 し、 液 性 免 疫 と 細 胞 性 免<br />

疫 を 活 性 化 させるという 画 期 的 な 方 法 を 取 っています。<br />

新 型 コロナワクチンの 働 く 仕 組 み<br />

新 型 コロナワクチンの 多 くは、コロナウイルスの 表 面<br />

にある 突 起 状 のスパイクタンパク 質 を 抗 原 として 使 用<br />

しています。このスパイクタンパク 質 は、ヒトの 細 胞<br />

表 面 の AC E2 受 容 体 と 結 合 してヒトの 細 胞 内 にウイル<br />

スの 遺 伝 子 を 注 入 し、ウイルスを 増 殖 させます。すな<br />

わち 感 染 を 引 き 起 こすので、このスパイクタンパク 質<br />

を 攻 撃 すれば、ヒトの 細 胞 と 結 合 できなくなって 感 染<br />

しなくて 済 むようになります。<br />

新 型 コロナワクチンの 多 くは、このスパイクタンパ<br />

ク 質 を 直 接 ワクチンに 含 めてヒトの 体 内 に 注 入 するわ<br />

けではなく ( タンパク 質 ワクチンを 除 く )、スパイクタ<br />

ンパク 質 の 遺 伝 情 報 ( 設 計 図 ) の 一 部 だけをヒトの<br />

体 に 注 入 します。 注 入 された 遺 伝 情 報 はヒトの 細 胞 に<br />

コロナウイルスのスパイクタンパク 質 の 一 部 を 作 らせ、<br />

それに 対 する 免 疫 応 答 を 誘 導 させます。 注 入 された 遺<br />

伝 情 報 がヒトの 遺 伝 子 に 影 響 することはありません。<br />

あくまで、 新 型 コロナウイルスの 一 部 のタンパク 質 を<br />

作 るだけなのです。<br />

新 型 コロナワクチンの 種 類<br />

=メッセンジャー RNA(mRNA)ワクチン=<br />

新 型 コロナウイルスの 遺 伝 情 報 の 一 部 (mRNA) を<br />

脂 質 の 膜 で 包 んだもので、ヒトの 細 胞 にウイルスのス<br />

パイクタンパク 質 を 作 らせます。ヒトの 細 胞 がそのタ<br />

ンパク 質 を 作 ると、その 遺 伝 情 報 (mRNA) は 破 壊 さ<br />

れます。ヒトの 体 はそのタンパク 質 を 認 識 し、それに<br />

その 昔 、 中 条 きよしの 「うそ」という 歌 が 流 行 ( はや ) って<br />

いて、 練 習 しましたが、ものにはならなかったですね。「 女 が<br />

ホロリと くるような 優 しいうその 上 手 い 男 ( ひと )」なんて<br />

いう 歌 をものにしようと 思 ったのが 間 違 いでした。<br />

対 する 液 性 免 疫 と 細 胞 性 免 疫 が 誘 導 され、 将 来 の 感<br />

染 に 備 えるのです。m R NA は 不 安 定 なので、 超 低 温<br />

でワクチンを 保 存 する 必 要 があります。(ファイザー・<br />

ビオンテック・ワクチン= 以 下 、ファイザー・ワクチン、<br />

モデルナ・ワクチン)<br />

<br />

害 のない、 新 型 コロナウイルスのスパイクタンパク<br />

質 を 含 むワクチンで、 体 に 投 与 すると、ヒトの 体 はそ<br />

のタンパク 質 を 認 識 し、それに 対 する 液 性 免 疫 と 細<br />

胞 性 免 疫 が 誘 導 され、 将 来 の 感 染 に 備 えます。<br />

<br />

新 型 コロナウイルスではない 他 の 害 のないウイルス<br />

( ベクターウイルス: 運 び 手 ウイルス ) に、 新 型 コロナ<br />

ウイルスのスパイクタンパク 質 の 遺 伝 情 報 を 組 み 込 ん<br />

だワクチンです。ヒトの 体 に 入 ると、その 遺 伝 情 報 に<br />

基 づいてヒトの 細 胞 はスパイクタンパク 質 を 作 り、それ<br />

に 対 する 液 性 免 疫 と 細 胞 性 免 疫 が 誘 導 され、 将 来 の<br />

感 染 に 備 えます。(ジョンソン&ジョンソン・ワクチン)<br />

現 在 認 可 されている 新 型 コロナワクチン<br />

<br />

mRNA ワクチンで、アメリカでは 最 初 に 認 可 された<br />

新 型 コロナワクチンです。 昨 年 12 月 から 医 療 関 係 者 を<br />

中 心 に 接 種 が 始 まりました。 輸 送 や 保 存 に 摂 氏 マイナ<br />

ス 70 度 以 下 を 要 するために、 接 種 場 所 が 限 られてい<br />

ますが、ワクチンの 有 効 率 が 95%あり 幅 広 く 接 種 され<br />

ています。2 回 の 接 種 が 必 要 で、 間 隔 は 3 週 間 です。<br />

16 歳 以 上 が 対 象 になります。<br />

当 初 、 接 種 後 の 重 症 アレルギー 反 応 であるアナフィ<br />

ラ キ シ ー が 問 題 に なりまし た が 、1 0 0 万 人 に 5 人 程 度 で、<br />

他 の 予 防 接 種 と 比 べても 特 別 多 いわけでもありません。<br />

一 般 的 な 副 作 用 としては、 注 射 部 位 の 疼 痛 ( とうつう )<br />

、 筋 肉 痛 、 関 節 痛 、 発 熱 、 嘔 吐 、 嘔 気 などです。1 回<br />

目 よりも 2 回 目 接 種 後 の 方 が 副 作 用 は 強 いようです。<br />

<br />

これも m R N A ワクチンで、ファイザー・ワクチンに<br />

続 いて 昨 年 12 月 から 接 種 が 始 まっています。 保 存 は<br />

摂 氏 マイナス 20 度 程 度 でよいので、より 広 範 な 場 所<br />

で 接 種 できる 可 能 性 があります。ワクチンの 有 効 率 は<br />

94%でファイザー・ワクチンとほとんど 同 じです。2 回<br />

接 種 が 必 要 で、 間 隔 は 4 週 間 です。18 歳 以 上 が 対 象<br />

になりますが、 現 在 、 生 後 6 か 月 以 上 の 小 児 と 妊 婦 の<br />

臨 床 治 験 が 進 んでいます。 近 い 将 来 、 小 児 も 接 種 を 受<br />

けることができるかもしれません。<br />

接 種 後 のアナフィラキシーの 頻 度 は 100 万 人 に 3.5 人<br />

程 度 で、 他 の 副 作 用 はファイザー・ワクチンと 同 様 です。<br />

<br />

ウイルスベクター・ワクチンで、ファイザー ・ ワクチン、<br />

モデルナ・ワクチンに 続 いて、 今 年 2 月 に3つ 目 の 新 型<br />

コロナワクチンとして 認 可 されました。18 歳 以 上 が 対 象<br />

です。ワクチンの 有 効 率 は 前 者 の 2 つよりも 少 し 低 く、<br />

軽 症 および 中 等 症 の 新 型 コロナ 感 染 症 に 対 する 有 効 率<br />

は 72%くらいですが、 重 症 の 新 型 コロナウイルス 感 染 症<br />

には 前 者 2つと 同 じく、ほぼ 100% 予 防 効 果 があります。<br />

他 に、いくつかの 長 所 があります。 接 種 は 1 回 のみ、<br />

保 存 は 摂 氏 2 〜 8 度 で 3 か 月 保 存 可 能 、それに、 南<br />

アフリカ 変 異 株 やブラジル 変 異 株 などにもある 程 度 効<br />

果 が 期 待 できる、などです。mRNA ワクチンと 違 って、<br />

スパイクタンパク 質 の 情 報 を 無 毒 化 したアデノウイルス<br />

の DNA に 組 み 込 んでいるので、 安 定 性 が 良 いのも 特<br />

徴 です。<br />

副 作 用 も 前 者 2つと 同 様 に、 注 射 部 位 の 痛 み、 腫 れ、<br />

発 赤 、 疲 労 感 、 筋 肉 痛 、 嘔 気 、 発 熱 などです。<br />

ワクチンを 受 ける 前 に<br />

ワクチンを 受 ける 前 に、 次 の 事 項 がある 人 は 予 防 接<br />

種 供 給 者 に 伝 えてください。アレルギー 反 応 の 既 往 ( 特<br />

に 予 防 接 種 に 対 して )、 発 熱 、 出 血 性 の 疾 患 、 抗 凝 固<br />

剤 の 使 用 、 免 疫 不 全 、 免 疫 系 に 影 響 を 与 える 薬 の 服 用 、<br />

妊 娠 中 か 妊 娠 を 予 定 、 母 乳 で 授 乳 中 、などです。1 回<br />

目 の 接 種 時 に 重 度 のアレルギー 反 応 のあった 方 は 2 回<br />

目 のワクチンは 接 種 できません。<br />

現 在 、 新 型 コロナワクチン 接 種 の<br />

対 象 になる 人<br />

カリフォルニア 州 では 3 月 17 日 時 点 で、 フェーズ<br />

1A、1B、1C の 人 までがワクチン 接 種 の 対 象 者 になっ<br />

ています。フェーズ 1A は 医 療 や 介 護 関 係 者 、 介 護 施<br />

設 入 居 者 、フェーズ 1B は 65 歳 以 上 の 高 齢 者 、 教 育<br />

やチャイルドケア 関 係 者 、 食 品 ・ 農 業 に 関 する 従 業 者<br />

などです。フェーズ 1C は 基 礎 疾 患 のある16 〜 64 歳<br />

の 人 、 上 下 水 道 や 金 融 機 関 などの 従 事 者 などです。<br />

ここで いう 基 礎 疾 患 と は 、 悪 性 腫 瘍 、 慢 性 腎 臓 疾 患 、<br />

COPD、ダウン 症 候 群 、 心 不 全 、 冠 動 脈 疾 患 、 心 筋 症 、<br />

臓 器 移 植 による 免 疫 不 全 状 態 、 肥 満 、 妊 娠 、 鎌 状 ( か<br />

まじょう) 赤 血 球 症 、 喫 煙 、2 型 糖 尿 病 、 中 症 以 上<br />

の 喘 息 、 脳 血 管 系 疾 患 、 嚢 胞 ( のうほう) 性 線 維 症 、<br />

高 血 圧 、 免 疫 不 全 、 認 知 障 害 などの 神 経 的 異 常 、 肝<br />

臓 疾 患 、 肺 線 維 症 、サ ラ セミア、1 型 糖 尿 病 、な ど で す。<br />

サンディエゴ 郡 のサイトや C V S などのサイトからワ<br />

クチン 接 種 の 予 約 が 可 能 です。

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