近代日本における、ある異邦人の宿命 - subsite

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科 書 に 含 まれるなどして、 比 較 的 知 られている 者 たち、 例 えば 北 原 白 秋 、 与 謝 野
晶 子 、 萩 原 朔 太 郎 、 高 浜 虚 子 などに 対 し、ヨネ・ノグチは 一 般 的 には 無 名 のまま
にとどまっているのが 実 情 である。
『 二 重 国 籍 者 の 詩 』 以 外 にも、ノグチへの 評 価 や 理 解 が 遅 れている 理 由 は 考 え
られる。まず、ノグチの 実 績 の 多 様 さ 故 の、 統 一 的 な 視 野 の 下 に 位 置 付 けること
の 困 難 さが 挙 げられる。 津 島 に 生 まれ、アメリカ(サンフランシスコ、オークラ
ンド、シカゴ、ニューヨーク、ボストン) 及 びイギリスのロンドンに 合 わせて 十
数 年 住 むがアメリカ 国 籍 は 得 ずに 帰 国 、 藤 沢 市 常 光 寺 に6ヶ 月 滞 在 、 鎌 倉 円 覚 寺
六 庵 に 滞 在 。その 間 、 慶 應 義 塾 大 学 の 英 文 科 で 教 鞭 を 取 り、オックスフォード 大
学 を 筆 頭 に、アメリカ 及 びインドの 諸 大 学 で 講 演 、 藤 沢 市 常 光 寺 へ 埋 葬 されるな
どによって、 世 界 各 地 の 地 元 レベルのメディアを 一 時 興 奮 させ、 各 地 の 歴 史 に 名
前 は 刻 んで 来 てはいても、そのままでは 雑 然 としていて 一 貫 性 がない。
また、この 世 を 去 るのが 早 すぎた。 高 村 光 太 郎 や 藤 田 嗣 治 は 戦 後 の 混 乱 期 を、
世 論 との 戦 いと 自 己 反 省 の 中 で 生 き 続 け、 多 少 は 自 らで 名 誉 挽 回 を 果 たすことが
できた。その 点 、ノグチは 戦 後 丸 2 年 を 待 たずに 他 界 した。 極 めてタイミング 悪
くこの 世 を 去 ったと 言 わざるを 得 ない。1986 年 、 高 井 蒼 風 が 出 版 した1 冊 の 小 さ
な 本 『 英 詩 人 ヨネ・ 野 口 の 栄 光 :その 英 米 における 遍 歴 苦 闘 の 秘 録 』 (38) は、ノ
グチの 業 績 への 賛 辞 や、なぜこんなにも 評 価 が 遅 れているのかという 疑 問 をその
まま 世 に 投 げかけたようなものだった。ノグチの「 世 界 に 広 く 日 本 の 芸 術 精 神 を
闡 明 した 一 大 功 績 はラフカディオ・ハーン 以 上 の 文 化 的 偉 業 であり、 日 本 有 史 以
来 、 日 本 の 和 歌 、 俳 句 、 美 術 、 能 楽 から 万 葉 集 、 日 本 書 紀 などの 古 典 文 学 の 真 髄
までを 広 いレパートリーに 把 握 して 外 国 に 日 本 文 化 精 神 を 闡 明 した 功 績 は 文 学 者
のまさしく 第 一 人 者 と 賞 讃 しても 過 言 ではない」 (39) にもかかわらず、「 政 府 は 文
化 勲 章 ひとつ 与 えていない」どころか、「 日 本 のマスコミや、 有 名 な 雑 誌 社 、 出
版 社 の 不 認 識 も 甚 だしく、 一 社 としてこの 詩 人 の 死 後 、その 大 芸 術 を 認 めず、 一
冊 の 伝 記 すらいまだなく、 死 後 四 〇 年 にならんとする 現 在 (40) まだ 全 集 一 つ 出 し
ていないのである」 (41) と 続 く。だが、 死 後 61 年 経 った 2008 年 においても、 状 況