近代日本における、ある異邦人の宿命 - subsite

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他 界 すると、 日 本 人 詩 人 として、ニューヨーク・タイムズ 紙 にも 死 亡 記 事 が 掲 載
された (5) 。これほどの 国 際 的 な 業 績 を 伴 った 劇 的 な 人 生 ならば、 既 に 神 話 化 さ
れていても 不 思 議 ではないはずであるが、ノグチに 限 って、 日 本 では 未 だに 殆 ど
知 られていないどころか、ごくごく 断 片 的 な 研 究 しかされていない。 何 が、 今 日
に 至 るまでノグチの 知 名 度 をかくも 隠 ぺいしてきたのだろうか?
ノグチの、 日 本 人 として 稀 にみる 業 績 と、 今 日 の 無 視 のされ 方 との 間 に 横 たわ
るギャップは、あまりに 深 く 大 きい。なぜこのような 状 況 が 生 じたのだろうか?
その 一 番 大 きな 要 因 は、ノグチ 自 身 が 1921 年 ( 大 正 10 年 )に 出 版 した 彼 の 初 め
ての 日 本 詩 集 『 二 重 国 籍 者 の 詩 』に 収 められた 自 らを 語 る 序 詩 にあると 考 える。
日 本 人 が 僕 の 詩 を 読 むと、
「 日 本 語 の 詩 はまずいね、だが 英 語 の 詩 は 上 手 だろうよ」といふ。
西 洋 人 が 僕 の 詩 を 読 むと、
「 英 語 の 詩 は 読 むに 堪 えない、 然 し 日 本 語 の 詩 は 定 めし 立 派 だらう」と
いふ。
実 際 をいふと、
僕 は 日 本 語 にも 英 語 にも 自 信 が 無 い。
云 わば 僕 は 二 重 国 籍 者 だ・・・・
日 本 人 にも 西 洋 人 にも 立 派 になりきれない 悲 しみ・・・・
不 徹 底 の 悲 劇 ・・・・
馬 鹿 な、そんなことを 云 うにはもう 時 既 に 遅 しだ。
笑 ってのけろ、 笑 ってのけろ! (6)
当 時 の 日 本 人 には 容 易 には 為 し 遂 げられないほど 多 くの 業 績 を 積 み 上 げた、 当
時 50 歳 直 前 のノグチは、この 詩 で、 表 面 的 には 謙 遜 や 自 嘲 を、そして、 水 面 下
では、 日 本 と 英 米 両 方 に 通 ずるという 特 権 を 自 信 と 誇 りをもって 表 わしたかった