近代日本における、ある異邦人の宿命 - subsite

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は 作 らずに、 常 に 日 本 の 詩 人 社 会 を 眺 めていたようである。ウィリアム・ロゼッ
ティは、ノグチを 一 番 始 めに 認 めた 英 国 人 だが、そのロゼッティが、 詩 について
“If there is poetry at the heart of the verse written in Nippon, its appeal holds
good on the banks of the Thames” (54) と 比 喩 を 使 いながら、“This sort of diversity
is no disadvantage but an added delight” (55) だとノグチの 詩 を 賞 賛 している 文
章 が、 英 詩 集 『 巡 礼 』の 後 書 きに 掲 載 されている。ノグチはこのロゼッティの 言
葉 を 誇 りに 思 っただろう。だが、その 後 更 に 12 年 も 日 本 語 で 詩 を 書 くことを 躊
躇 していた。 外 山 の 推 測 によると、1919-1920 年 のアメリカ 講 演 旅 行 の 際 、 国 際
的 詩 人 としてのキャリアを 自 覚 したノグチは、やっと、その 業 績 を 日 本 でも 見 て
もらおうと 思 った、ということである。そして、それまで 書 いた 英 詩 の 中 から
53 篇 を 邦 訳 して『 野 口 米 次 郎 英 詩 選 集 』 (56) を 作 ろうとしたところ、その 編 集 者
である 玄 文 社 の 長 谷 川 巳 之 吉 がノグチに 興 味 をもち、 日 本 詩 集 『 二 重 国 籍 者 の
詩 』の 出 版 も 約 束 したのだという (57) 。
『 二 重 国 籍 者 の 詩 』も 基 本 的 には 英 詩 の 邦 訳 であるが、『 野 口 米 次 郎 英 詩 選 集 』
に 収 録 されたものに、 更 に 磨 きをかけたものであった。それに、 長 谷 川 巳 之 吉 が
特 殊 な 出 版 技 術 を 使 い、 濃 褐 色 のバック・スキンに 花 瓶 の 花 の 金 版 押 しをほどこ
した 森 田 恒 友 画 伯 の 装 慎 の 豪 華 本 として 出 版 された。ほぼ 同 時 期 に、 微 妙 に 違 う
邦 訳 で 出 来 上 がった 詩 集 を 2 冊 出 版 していたことになるが、『 二 重 国 籍 者 の 詩 』
は、デザインも 凝 ったように、ちょっと「しゃれ」ようと 思 い、 序 詩 に 入 れた 詩
が、 結 果 的 には、「 他 人 を 引 落 とし、 悪 口 をいい、やきもちをやき、 陰 口 を 喜 ぶ
日 本 人 たちに 対 して 好 個 の 証 明 書 を 渡 したような 結 果 になってしまった」 (58) と、
外 山 は 残 念 がっている。 一 番 悔 しい 思 いをしたのはノグチ 本 人 に 違 いない。
その 萩 原 朔 太 郎 の 強 いノグチ 論 が 受 け 入 れられたことにおける、ノグチへの 情
けのようなものもある。 山 宮 允 は、「 野 口 の 二 重 国 籍 者 の 自 覚 は 間 違 いではない
が、 悲 しむべき 悲 劇 ではなく、ラフカディオ・ハーンの 場 合 同 様 、 自 他 共 に 祝 福
してよい 特 権 の 自 覚 ではなかったろうか」 (59) と、むしろ 萩 原 朔 太 郎 の 意 見 を 否
定 している。 亀 井 俊 介 は、 本 人 も 容 易 でなかっただろうと 察 すると 同 時 に、 彼 に