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散 文 抜 きで[ポオ]を 考 へることは 不 可 能 である、 又 詩 抜 きで 彼 を<br />
考 へることは、 彼 に 対 する 冒 涜 であり 侮 辱 である。 彼 は 散 文 と 詩 との<br />
両 端 を、 世 界 に 稀 な 理 智 と 想 像 の 力 で 橋 掛 けた。 然 し 彼 の 散 文 が 彼 を<br />
尽 きない 批 評 の 問 題 としている 所 からいうと、 彼 は 散 文 の 人 で、 彼 を<br />
従 として 取 扱 ったものとも 見 える。[ポオ] 自 身 では 詩 の 人 と 信 じたに<br />
相 違 いないが、 収 穫 の 外 側 から 見 ると、 彼 に 対 する 散 文 は 主 となって<br />
いるように 見 える。 少 なくとも 彼 は 散 文 のお 陰 で、 世 界 の 文 学 史 に 沢<br />
山 の 頁 を 割 かしている (90) 。<br />
ノグチが、この『ポオ 評 伝 』を 出 版 した 時 、『 二 重 国 籍 者 の 詩 』の 発 表 から 6<br />
年 経 っていた。ポオは、ノグチとは 違 い、 二 カ 国 語 で 書 いたり、 二 カ 国 の 狭 間 に<br />
落 ち 込 んだわけでもない。だが、ノグチは、ポオの 評 伝 執 筆 を 通 して、 母 国 に 居<br />
ながら 益 々 疎 外 されてゆく 自 分 の 境 遇 を 重 ね 合 わせたはずである。ノグチはこの<br />
評 伝 を 通 して、ポオへの 尊 敬 を 表 明 しただけではなく、ポオの 人 生 のあらゆる 面<br />
を 弁 護 している。 更 に、アメリカ 人 が、 同 国 出 身 のポオに 正 しい 理 解 を 寄 せてい<br />
ないことも 非 常 に 残 念 がっている。<br />
米 国 人 はその 現 実 的 悲 哀 を 見 て 同 情 しないばかりか、この 憐 れな 其<br />
の 一 生 を 歌 舞 伎 芝 居 のように 徒 に 強 烈 な 色 彩 で 塗 りたてている。そし<br />
てどうしても 彼 を 平 和 な 無 害 な 人 情 の 人 間 と 見 ることを 承 知 しないよ<br />
うである。 彼 は 誇 張 の 筆 で 後 世 に 誤 り 伝 えられたかの 感 がある…かか<br />
る 文 学 者 は 世 界 広 しともその 比 較 を 見 ない (91) 。<br />
ノグチは、1926 年 出 版 『ポオ 評 伝 』を、「 一 言 で 言 うと、ポオは 米 国 文 壇 の 異 端<br />
者 だ。 私 は 彼 を 異 端 者 だと 賛 美 してこの 評 伝 を 終 る」 (92) という 文 で 締 め 括 って<br />
いる。 異 端 者 として、また、 異 端 者 を 応 援 する 一 人 の 知 識 人 としての 堂 々とした<br />
自 信 が 感 じられる 一 言 である。ところが、1934 年 に 研 究 社 から 出 版 された 改 訂