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近代日本における、ある異邦人の宿命 - subsite

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88<br />

に 業 績 を 残 してきた 日 本 人 は 今 日 に 比 べて 圧 倒 的 に 少 なかった。 従 って、 多 くの<br />

人 々は 藤 田 嗣 治 やノグチのような 者 たちを、「 異 邦 人 」として 片 付 けていた。と<br />

ころが、 今 日 は、 異 邦 人 、すなわち、 二 国 や 二 文 化 を 越 えた(trans-) 第 三 の 文<br />

化 を 持 つ、またはそこに 生 きることを 余 儀 なくされている 人 々も 少 なくない。こ<br />

のような、「トランスカルチュラリズム」 (45) を 生 き 方 としている 人 々は、 移 民 や<br />

亡 命 という 形 をとっていないが、 二 カ 国 やそれ 以 上 の 国 とその 文 化 に 創 造 力 の 源<br />

泉 があるのだ。ノグチのようなケースもまさしくそれである。 人 が 移 動 し、それ<br />

に 伴 って 文 化 が 既 存 のものを 越 えていくのは、 今 日 の 世 界 的 な 現 象 なのである。<br />

このようなトランスカルチュラリズムが 大 きな 課 題 になっている 時 代 だからこ<br />

そ、 本 論 文 は、 出 来 るだけ 多 くのノグチの 業 績 を 明 らかにすると 共 に、ノグチを<br />

再 評 価 するべきだと 提 案 するものである。 現 代 では、ノグチのように 一 度 国 外 に<br />

出 て、ホスト 国 で 心 地 よく 受 け 入 れられた 後 で 帰 国 して 母 国 で 暮 らす 人 々は 以 前<br />

よりもはるかに 増 えたはずである。だが、 帰 国 先 の 周 囲 の 人 間 がその 経 験 に 対 し<br />

て 理 解 や 正 当 な 評 価 を 示 さずにいることが、 国 外 を 経 験 した 者 が 再 び 母 国 に 根 を<br />

下 ろしにくくなる 環 境 を 生 み 出 し、 母 国 に 居 ながら 疎 外 感 を 感 じるような、 或 い<br />

は、どこか 他 に 本 来 所 属 すべき 場 所 があると 感 じる 者 が 少 なくない。そして、 彼<br />

等 個 人 の 中 では、「トランスカルチュラリズム」を 通 して、 既 に 文 化 変 容 が 行 な<br />

われているにも 関 わらず、 周 囲 の 無 理 解 によってあるいは 周 囲 の 理 解 を 求 める 行<br />

動 によって、 余 計 に 疎 外 され、 異 邦 人 (L’Etranger)とならざるを 得 ないのであ<br />

る。その 意 味 で、ノグチ 研 究 は、 今 後 増 え 続 けるであろう、トランスカルチュラ<br />

リズムとともに 生 きている 人 々の 先 駆 けの 研 究 となるはずである。<br />

II<br />

これまで、 比 較 的 、 伝 記 的 な 部 分 を 中 心 にノグチの 人 生 を 見 てきたが、 本 章 で<br />

は、ヨネ・ノグチが、どのように 日 本 人 の 詩 人 として 生 きてきたかということ<br />

を、 実 際 に 彼 の 詩 作 品 を 通 して 分 析 する。ノグチは、 明 治 時 代 には 日 本 語 で 一 つ<br />

も 詩 を 発 表 していないことから、 明 治 詩 人 には 分 類 されていないことは 正 当 であ

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