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C<br />
18 SAN DIEGO YU-YU DECEMBER <strong>16</strong>, <strong>2023</strong><br />
AI の 判 決 草 稿 作 成 で 議 論<br />
台 湾 、 懸 念 出 て 試 行 延 期<br />
台 湾 では 法 律 サービスとITを 結 合 させた「リーガルテック」ブームが 起 きている。 台 湾 司 法 院 は 音 声 認 識 による 法 廷 議 事 録 を 作 成 するシステムを 導 入 。<br />
だが、 刑 事 事 件 の 判 決 と 量 刑 の 決 定 については「 最 も 重 要 なのは 裁 判 官 の 心 証 」と 反 論 する 弁 護 士 団 体 や 国 会 議 員 の 抵 抗 で 施 行 開 始 が 延 期 された<br />
司 法 の IT 化 を 進 める 台 湾 で、 人 工 知 能<br />
(AI) を 使 った 刑 事 事 件 の 判 決 文 草 稿 の 作<br />
成 システムをめぐり 議 論 になっている。 最<br />
高 司 法 機 関 、 司 法 院 は 裁 判 官 が 判 決 の 核<br />
心 部 分 を 決 めることに 変 わりはないと 強 調<br />
するが、 弁 護 士 団 体 からは「AI の 作 った 判<br />
決 文 で 被 告 の 権 利 が 損 なわれた 場 合 は、<br />
誰 が 責 任 を 取 るのか」と 懸 念 も。 司 法 院<br />
はシステムの 試 行 を 延 期 し、 不 安 の 払 拭 に<br />
追 われている。<br />
5 か 年 計 画<br />
IT 化 は 裁 判 官 の 負 担 軽 減 や 司 法 の 透 明<br />
性 の 確 保 が 目 的 で、 司 法 院 は 1990 年 代 か<br />
ら 本 格 的 に 乗 り 出 し、 訴 訟 記 録 の 電 子 化<br />
などを 推 進 。2018 年 にはデジタル 政 策 の<br />
5 か 年 計 画 を 策 定 し、 法 廷 での 発 言 を 音 声<br />
認 識 で 文 字 に 変 換 して 議 事 録 を 作 成 するシ<br />
ステムを 開 発 した。 今 年 に 入 り 同 システム<br />
のほか、 刑 事 事 件 の 量 刑 を 分 析 するシステ<br />
ムの 運 用 も 始 まった。<br />
AI による 判 決 文 の 草 稿 作 成 は 今 年 8 月<br />
に 策 定 された 2 期 目 の 5 か 年 計 画 に 盛 り 込<br />
まれた。「 智 慧 化 ( スマート 化 ) 裁 判 草 稿<br />
システム」として、 刑 事 事 件 のうち 酒 気 帯<br />
びや 詐 欺 幇 助 ( ほうじょ ) の 軽 微 な 事 件 で<br />
試 行 を 始 め、その 後 、 対 象 となる 犯 罪 を<br />
拡 大 する 計 画 だ。<br />
「 草 稿 シ ス テ ム が 有 罪 や 無 罪 を 決 め る わ<br />
けではない。 事 実 認 定 、 適 用 法 律 、 量 刑<br />
も 裁 判 官 が 決 める」。 草 稿 作 成 について 司<br />
法 院 情 報 処 の 邱 士 賓 ( きゅう・しひん ) 処<br />
長 は 判 決 の 核 心 部 分 は 裁 判 官 が 担 うと 強<br />
調 する。システムは 起 訴 状 の 内 容 を 取 り 込<br />
むなどして 草 稿 を 提 供 するだけで、 裁 判 官<br />
は 草 稿 を 修 正 できると 説 明 した。<br />
共 同 声 明<br />
ただ、 計 画 が 発 表 されると 弁 護 士 団 体<br />
や 立 法 委 員 ( 国 会 議 員 ) から 導 入 を 不 安<br />
視 する 見 方 が 噴 出 。 司 法 関 係 者 で 構 成 さ<br />
れる 各 団 体 は 9 月 に 共 同 声 明 を 発 表 し、<br />
司 法 院 に 対 し 各 界 の 意 見 を 丁 寧 に 聴 取 す<br />
るよう 求 め、 早 急 な 運 用 開 始 を 控 えるよう<br />
訴 えた。<br />
共 同 声 明 は、 米 国 で AI による 再 犯 予<br />
測 システムを 判 決 の 参 考 に 使 う 例 があるが<br />
「 証 拠 整 理 段 階 」の 使 用 に 留 まり、 草 稿 作<br />
成 はその 範 囲 を 超 えていると 指 摘 した。<br />
司 法 院 は 当 初 予 定 していた 9 月 の 試 行<br />
開 始 を 延 期 。 台 湾 メディアによると、 不 安<br />
払 拭 のため、システムの「 手 引 」を 作 って<br />
から 試 行 を 始 めることにしたという。<br />
検 察 官 出 身 の 何 俊 英 ( か・しゅんえい )<br />
弁 護 士 は「 社 会 が 多 様 化 し、 事 件 数 が 増<br />
える 傾 向 にある 中 、 裁 判 官 の 数 は 簡 単 に<br />
© shutterstock.com<br />
裁 判 の 迅 速 化 と 判 事 の 負 担 軽 減 が 求 められる 時 代 。 司 法 界 での AI 利<br />
用 は 台 湾 と 韓 国 が 先 行 しているが「 人 を 裁 く」 重 責 に 伴 う 倫 理 がある<br />
日 本 では 12 月 に G PT 技 術 を 活 用 した『 本 人 訴 訟 GPT』を 公 開 。<br />
高 額 な 弁 護 士 費 用 を 支 払 わなくても 訴 訟 文 書 の 作 成 が 可 能 に?<br />
台 湾 司 法 院 は1990 年 代 から 本 格 的 にリーガルテックに 着 手 し、 判 例 の<br />
中 から 訴 訟 ケースに 類 似 した 判 決 文 を 簡 便 に 提 示 するシステムを 実 現<br />
台 湾 司 法 院 は IT 化 について「 訴 訟 関 連 文 書 の 草 稿 提 供 が 中 心 。<br />
言 うまでもなく、 判 決 の 核 心 を 担 うのは 裁 判 官 」と 説 明 している<br />
増 やせない」と 述 べ、AI を 利 用 した 裁 判<br />
官 の 負 担 軽 減 に 理 解 を 表 明 。 一 方 で、 判<br />
決 で 最 も 重 要 なのは 裁 判 官 の「 心 証 」とし<br />
ており、AI が 裁 判 官 に 取 って 代 わることは<br />
あり 得 ないと 強 調 した。■<br />
© shutterstock.com<br />
© shutterstock.com<br />
© shutterstock.com<br />
© Jack Hong / shutterstock.com<br />
生 成 A I で 判 例 誤 り、 調 査<br />
ブラジルの 連 邦 判 事<br />
ブラジルの 国 家 司 法 審 議 会 は、 生 成 AI<br />
「 チャット G P T」を 使 用 し、 存 在 しない 判<br />
例 を 根 拠 に 判 決 文 を 作 成 したとして、 北<br />
部 アクレ 州 の 連 邦 判 事 を 召 喚 し 調 査 を 開<br />
始 した。ブラジルメディアが 11 月 14 日 ま<br />
でに 報 じた。<br />
ブラジルでは 判 事 の 生 成 AI 使 用 は 規 制<br />
されていないが、この 種 の 調 査 は 初 めて<br />
だという。<br />
召 喚 されたのはジェフェルソン・ロドリ<br />
ゲス 判 事 。チャット G PT や「 信 頼 できる<br />
補 佐 」の 助 けを 借 りて 判 決 を 作 成 したと<br />
説 明 した。ただ、チャット G PT が 根 拠 と<br />
して 示 した 上 級 裁 判 所 の 判 例 は 存 在 して<br />
いなかったという。 同 判 事 は「 単 純 なミス」<br />
と 説 明 し「 判 事 の 仕 事 が 多 過 ぎる」ことが<br />
原 因 だと 述 べた。<br />
日 本 『 本 人 訴 訟 GPT』12 月 公 開<br />
AI による 訴 状 作 成 / 修 正 の 時 代 へ<br />
共 同 通 信 社 の11 月 14 日 付 ニュース<br />
リリースによると、 株 式 会 社 Web staff<br />
( 代 表 : 吉 永 安 智 氏 ) は、 今 年 12 月 に<br />
O p e n A I の G P T 技 術 を 活 用 した『 本 人<br />
訴 訟 GPT』を 公 開 すると 発 表 した。<br />
このツールは 訴 状 や 答 弁 書 などの 作<br />
成 ・ 修 正 、 相 手 側 の 主 張 の 要 約 と 理 解<br />
支 援 機 能 を 提 供 する。<br />
経 済 的 な 理 由 で 弁 護 士 を 雇 えない<br />
人 々 の た め に 開 発 さ れ た『 本 人 訴 訟<br />
GPT』は、ChatGPT の 自 然 言 語 処 理 技<br />
術 を 活 用 し、 裁 判 文 書 作 成 の 負 担 を 軽<br />
減 する。 法 的 知 識 がない 人 も、 訴 訟 関 連<br />
文 書 を 簡 単 に 理 解 できる。<br />
主 要 機 能 は、 訴 状 作 成 と 文 書 翻 訳 ・<br />
解 説 。 今 後 は 反 論 ポイントや 証 拠 ・ 証<br />
明 のアドバイス、 文 書 の 読 み 上 げと 解 説<br />
を 実 装 予 定 だという。 法 律 相 談 には 対<br />
応 していない。<br />
吉 永 氏 は、 本 人 訴 訟 の 重 要 性 は 相 手<br />
に 理 解 される 文 章 を 書 くことだと 指 摘 。<br />
被 害 額 が 少 額 の 場 合 、 弁 護 士 依 頼 費 用<br />
が 高 額 になりがちだが、 裁 判 費 用 自 体<br />
は 低 価 格 という。<br />
A I の 法 規 制 が 他 国 より 緩 和 傾 向 にあ<br />
る 日 本 は、 人 工 知 能 による 司 法 先 進 国 を<br />
目 指 している。 令 和 3 年 度 の 司 法 統 計<br />
年 報 概 要 版 によれば、 民 事 事 件 の 新 受<br />
事 件 総 数 は 約 140 万 件 で、メタバースや<br />
ゲームの 世 界 での 訴 訟 も 増 加 している。<br />
このような 背 景 から、AI を 用 いた 法 的<br />
対 応 の 必 要 性 が 高 まっている。<br />
* 資 料 : 共 同 通 信 社