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大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学

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②:「居場所」の心理的機能各因子×アイデンティティ確立尺度得点の重回帰分析の考察<br />

考察Point1:「居場所」の心理的機能の因子の中で「自己肯定感」因子の得点が高い人は、アイデン<br />

ティティ確立尺度の得点も高い。<br />

考察Point2:「居場所」の心理的機能の因子の中で「自然体」因子の得点が高い人は、アイデンティ<br />

ティ確立尺度の得点も高い傾向がある。<br />

考察Point3:「居場所」の心理的機能の因子の中で「思考・内省」因子の得点が高い人は、アイデン<br />

ティティ確立尺度の得点も高い傾向がある。<br />

Erikson 33 (1959)は「青年は、自由な役割実験を通して、社会の中に、適所(niche)を発見する。・・<br />

(中略)・・この適所を発見する中で、青年は、内的な連続性と社会的な斉一性の確かな感覚を得るの<br />

である」と述べている。このEriksonの記述に対して、小沢 34 (2000)は、「エリクソンはここで、適<br />

所、言い換えれば、居場所を得ることによって、アイデンティティの感覚を持つことができると述べ<br />

ている。」と解釈している。エリクソンは「居場所」という表現こそしていないものの、彼が用いた“適<br />

所”という概念は、“自分にとってふさわしい場所”などの意味合いがあり、現代の用語に置き換えれ<br />

ばおそらく「居場所」という言葉がかなり適切であると考えることができる。したがって、「居場所」<br />

と「アイデンティティ」の関係性については、先行論文からも十分に示唆のあるところと言える。し<br />

かし、本研究においては「居場所」の心理的機能という概念と「アイデンティティの確立」との関係<br />

性を見ているという点で、先行研究とは幾分異なった考察をする必要がある。<br />

Point1についてだが、これは「自己肯定感」の心理的機能と「アイデンティティの確立」の関係性<br />

を示唆するものである。そもそも本研究において「自己肯定感」因子を構成する項目は、「(ア)自分<br />

はうまくやれる」「(イ)自分の能力を発揮できる」「(ウ)自分に自信が持てる」「(エ)何かに夢中に<br />

なれる」の4項目からなっている。「居場所」と感じる場所で、(ア)(イ)(ウ)のような感覚を持つ<br />

ことができるということは、「家族のいる居場所」では家族成員と、「家族以外の人のいる居場所」で<br />

は家族以外の人々との間で、その人は対人関係的な“有能感”や“自信”を尐なからず持っていると<br />

考えることができる。本研究においては、「居場所」を一緒にいる人の違いによって「自分1人の居場<br />

所」、「家族のいる居場所」、「家族以外の人のいる居場所」の3分類にしたことは先述した。「家族のい<br />

る居場所」や「家族以外の人のいる居場所」のような自分以外の人がいる「居場所」では、対人関係<br />

的な文脈で“有能感”や“自信”を感じることができる可能性があるが、「自分1人の居場所」ではど<br />

うだろうか。「自分1人の居場所」では、自分以外の人がいないので、対人関係的な文脈で“有能感”<br />

や“自信”を感じることができる可能性は極めて低い。しかしそのような自分1人の状況においても、<br />

他者の目を気にせず自分の好きに、自由に振舞えるなどの理由から「自分はうまくやれる」や「何か<br />

に夢中になれる」というような感覚を持つことは決して不可能ではない。このような自分1人しかい<br />

ない場合においても、その人の主観ではあるが、自分についての「自己肯定感」は持つことができる<br />

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