大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学
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(2)「居場所」の心理的機能と「アイデンティティ確立得点」の関係性について<br />
第3章本調査の結果と考察では、「居場所」の心理的機能の中で「アイデンティティ確立得点」との<br />
関係性が予測される因子について焦点を絞り、各因子と「アイデンティティ確立得点」の関係性につ<br />
いて説明してきた。「アイデンティティ確立得点」に関しては、その全体で見ても、「SDS得点」より<br />
「居場所」の心理的機能と統計的にも有意な関係性が見られた。したがって、本研究においては、「居<br />
場所」の心理的機能と「アイデンティティ確立」の関係性はある程度示唆されたと考えることができ<br />
る。「居場所」の心理的機能の中で特に「アイデンティティ確立」との関係性が強かったのは、第Ⅵ因<br />
子「自己肯定感」であった。この関係性についての詳しい考察は第3章に譲るが、「自分が役に立てて<br />
いる」、「うまくやれている」という感覚が持てるような「居場所」の存在は、「アイデンティティ確立」<br />
に寄与することが示された。加えて、同じ「役に立てている」という感覚でも、それを“家族”に対<br />
して感じているよりも、“家族以外の人(友達や部活仲間)”に対して感じている場合のほうが、「アイ<br />
デンティティ確立」に高く寄与することが示された。<br />
「居場所」の心理的機能と「アイデンティティ確立」の関係性については、本研究において定めた<br />
3つの分類の「居場所」によってその関係性が変わることも示された。例えば、「自分1人の居場所」<br />
を選択した44名は、「思考・内省」因子が「アイデンティティ確立」と関係性が予測されている点が<br />
特徴的である。また「家族以外の人のいる居場所」を選択した109名は、「自然体」因子が「アイデン<br />
ティティ確立」と関係している点が特徴的である。このように、各「居場所」分類によって、「アイデ<br />
ンティティ確立」に寄与する「居場所」の心理的機能が異なってくる可能性が、本研究において示さ<br />
れた。この結果は、実に興味深いものであり、「居場所」という概念からの援助を考える際には、考慮<br />
に入れるべき問題ともなるだろう。<br />
2.「居場所」という観点からの効果的な援助のあり方<br />
(1)「居場所」がない人々に対する援助<br />
「居場所」がない人々において懸念される点は、周囲の援助資源が乏しくなることによって生じる<br />
“寂しさ・孤独感”という精神的な苦痛と、実際に“孤立”してしまうという現象である。本研究に<br />
おいて「居場所」がないと回答した人の多くは、決して周りに「居場所」候補がないわけではないが、<br />
周りにあるいかなる場所も「居場所」とは感じられていないという人々であった。このことから、た<br />
だ卖に「居場所」候補の場所を用意するという援助を行ったとしても、その場所が「居場所」と感じ<br />
てもらいやすい特徴を持ち合わせた場所でない限りは、結局用意した場所も「居場所」とは感じても<br />
らえないという事態になってしまう。『「居場所」がない人は、精神的健康が低く援助対象となる人々<br />
であること』や、『それらの人々をいかに援助ルートに乗せ、適切な援助を行っていくのか』という点<br />
が重要であることは第3章で述べた。しかし、本研究においては、面接調査協力依頼の過程から、「居<br />
場所」がない人々と外側からコンタクトを取ることの難しさが実感された(面接調査依頼をした8名<br />
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