大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学
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と考える。<br />
以上のことから本研究の「居場所」という観点から「自己肯定感」の4項目を見てみた場合に、以<br />
下の2つの異なる「自己肯定感」の概念が包含されると考えられる。その2つとは(ⅰ)被調査者自身<br />
の主観的な自分についての「自己肯定感」、(ⅱ)「居場所」にいる人との関係性を含んだ社会的自分に<br />
ついての「自己肯定感」である。つまり本研究において、「自己肯定感」を構成する4項目の得点が高<br />
いということは、上記の(ⅰ)主観的な自分自身と(ⅱ)社会的自分が、双方満足できるような状態<br />
にあるということを意味する。アイデンティティの感覚が“内的なまとまりを持った主観的自分自身”<br />
と“社会的自分”との関係性に関係しているというErikson 35 の指摘を考慮に入れれば、本研究におい<br />
て第Ⅵ因子として現れた「自己肯定感」という「居場所」の心理的機能が、「アイデンティティの確立」<br />
と高い関係性があるということは、最もなことである。以上のような理由から、「自己肯定感」と「ア<br />
イデンティティ確立」の関係性は説明できる。<br />
Point2についてだが、この考察には「自然体」の心理的機能と「アイデンティティ」との関連を示<br />
唆する文献Erikson 36 (1959)を参考にできる。Eriksonはアイデンティティの感覚を得ることについ<br />
て、「こうして生きている自分を、意識、主観としての自分も、他者も、納得して受け入れているとい<br />
う実感を得ることである」と述べている。そしてそのアイデンティティの感覚を得るためには、「自分<br />
が自分であることを、他者から承認され、自分も納得して受け入れることが出来る「居場所」を得る<br />
ことである」と述べている。このEriksonの考え方を受けて、小沢 37 (2004)は、“自分自身を納得し<br />
て受け入れられる居場所の存在が、アイデンティティの感覚につながる”と結論付けている。この観<br />
点から「自然体」因子を構成する項目を検討してみると、いずれも“本当の自分”や“素の自分”で<br />
いられるといういわば“自然に振舞える自分自身を肯定的に捉えている意味合い”の項目であること<br />
がわかる。「安心する」に関しては、やや他の項目とは色合いが違うが、自身を肯定的に捉えることが<br />
できているという心理状況を考慮すれば、内容的に整合性の取れている項目である。「居場所」におい<br />
て“本当の自分”や“素の自分”でいられるというのは、その「居場所」において、その人自身が認<br />
識している自分自身(意識や主観)と、実際にその場で表現されている自分自身(周りからみられて<br />
いる自分)とが一致している状態であると考えることができ、この状態においては、その人は自分自<br />
身を納得して受け入れている状態であると考えられる。つまり「居場所」において「自然体」の心理<br />
的機能の因子得点が高い状態であるということは、“自分自身を納得して受け入れられる場所がある”<br />
という意味で、その人のアイデンティティ確立に寄与する可能性があると考えられる。<br />
Point3についてだが、これは「思考・内省」の心理的機能と「アイデンティティ確立」との関係性<br />
を示唆するものである。「アイデンティティの確立」という問題は、Erikson 38 が青年期の発達課題に<br />
も挙げているように、無視して通り過ぎることはできない問題である。ともすれば、アイデンティテ<br />
ィの感覚というものは、“自分自身について(自分とは何か)”や“自分と周囲の関係について”など<br />
を、じっくりと自分自身の中で考慮し、内省をしていく中で確立されていく部分も大きいと考えられ<br />
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