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大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学

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る。本研究における「思考・内省」という心理的機能は、「物思いにふける」「自分のことについてよ<br />

く考える」「1日のことについてよく考える」「ボーっと考え込むことがある」「寝ることができる」と<br />

いう5項目で構成されており、「寝る事ができる」以外の4項目に関しては、自己やその他のことにつ<br />

いて考えるという内容になっている。つまり本研究において、「思考・内省」の心理的機能の因子得点<br />

が高いということは、その「居場所」が、落ち着いて、じっくりと“思考・内省”できる場であると<br />

いうことを示しており、結果的にはその人自身のアイデンティティの感覚を明確にしたり、その人の<br />

アイデンティティの確立に影響を与えるという可能性が十分に考えられる。このような理由から、「思<br />

考・内省」の心理的機能と「アイデンティティ確立」の関係性が説明できると思われる。<br />

*本調査結果『③「居場所」の心理的機能尺度各因子得点×SDS得点の重回帰分析(「自分1人の居場<br />

所」を選択した44名のみ)の考察』から、『⑧:「居場所」の心理的機能尺度各因子得点×アイデン<br />

ティティ確立尺度得点の重回帰分析(「家族以外の人のいる居場所」を選択した109名のみ)の考察』<br />

までは、原稿の掲載上、考察を割愛させて頂く。詳しい考察については、平成19年度文学研究科教<br />

育学専攻の修士論文(<strong>創価大学</strong>中央図書館所蔵)を参照して頂きたい。<br />

(2)分散分析の考察<br />

⑨:「居場所分類」による各「居場所」の心理的機能、特徴についての考察<br />

(ⅰ)「自分1人のいる居場所」の心理的機能について<br />

「自分1人の居場所」は文字通り自分以外の誰もいない、静かな静的な「居場所」と考えることが<br />

できる。この「居場所」では「思考・内省」、「行動の自由」、「他者からの自由」の心理的機能が高く<br />

なっている。「思考・内省」は、誰からも邪魔されず、静かな場所で自分の時間を持てることによって、<br />

物思いにふけたり、ボーっとしたり、自分のことについてよく考えたりできるということである。「行<br />

動の自由」は、「自分1人の居場所」という、自分だけが所属・管理できる空間にいることによって、<br />

その空間で自分の好きなように出来たり、自由に好きなことができるということである。「他者からの<br />

自由」は、「自分1人の居場所」という、他者の目を一切気にせず、また他者に一切気兼ねする必要の<br />

ない空間において、人を気にせず自分のペースで自由に振舞えるということである。<br />

以上の「自分1人の居場所」において因子得点が高い心理的機能に対して、「被受容感」、「自己肯定<br />

感」、「高揚感」の心理的機能は低くなっている。「被受容感」に関しては、自分1人しかいない「居場<br />

所」においては、他者の存在がないため“受け入れられている”という感じがないことも理解できる。<br />

ただ「自己肯定感」や「高揚感」の心理的機能が低いというのはいかなる理由からなのだろうか。そ<br />

れを以下で考察してみる。<br />

まず「自己肯定感」に関してだが、この心理的機能が低いということは、被調査者は、自分の能力<br />

や自分への自信というものは、他者の存在を通して獲得されるものであると考えた可能性が高い。後<br />

述する面接調査からは、「自信に関係するのは友達がいる場だとか、クラブの環境」という発言や「何<br />

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