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大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学

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(3)「 居場所」がないと答えた被調査者の調査結果に対する考察<br />

(ⅰ)「居場所」がない被調査者の特徴について<br />

本研究において「居場所」がないと回答した被調査者10名のフェイスシートから理解できる特徴に<br />

ついて考察する。<br />

第一に、サークル所属に関してだが、これに関しては10名中8名が所属していると回答している。<br />

したがって、これらの被調査者は、サークルという場所を「居場所」候補としては持ちながらも、そ<br />

こを「居場所」として感じられていない人々ということになる。これらの被調査者はサークル内の人<br />

間関係等が上手くいっておらず、サークルがあるにもかかわらずそこが「居場所」とはなっていない<br />

可能性が示唆される。<br />

第二に、住まいの形態に関してだが、これに関しては10名中8名が「アパート」と回答している。<br />

アパートでは1人暮らしのため、これらの被調査者は有事の場合でも“他者からの援助”を受けにく<br />

い、いわばソーシャルサポートが乏しい状況にある可能性が高い。「居場所」がない人々は、大学関係<br />

組織や外部組織にも一切「居場所」が見出せていない場合が多く、住居も1人暮らしの「アパート」<br />

に住んでいる人が大半ということで、援助資源が乏しく、孤立する可能性が極めて高いという特徴が<br />

ある。<br />

第三に、「何でも話せる家族の存在」についてである。「居場所」がないと回答した被調査者10名の<br />

中で、「何でも話せる家族の存在」がないと回答した被調査者は、半数の5名であった。この数字は、<br />

もし何か困った事があった場合に、家族に相談できない可能性がある人が50%いるということを示し<br />

ている。この数値は「居場所」があると回答した被調査者の数値よりかなり高い値となっている。<br />

(ⅱ)「居場所」がない被調査者が「居場所」に対して望む心理的機能について<br />

「居場所」がない人が「居場所」に対して望む心理的機能は、大きく因子Ⅰ「被受容感」、因子Ⅱ「自<br />

然体」、因子Ⅲ「思考・内省」の3つである。因子Ⅶ「高揚感」や因子Ⅵ「自己肯定感」はこれらの因<br />

子より得点が低く、求められる「居場所」の心理的機能としては4番手、5番手につけている。このこ<br />

とから、「居場所」がない状態の被調査者においては、「居場所」に楽しさや自信をつけるという心理<br />

的機能を望むより前に、一緒にいる誰かに「受け入れてもらうこと」や「大切にされること」、「悩み<br />

を聞いてもらうこと」などを強く望んでいるという現実が見えてくる。加えて、その誰かと一緒にい<br />

る場所でも「自分らしくいられる」ことや「無理をしないでいられる」ことも強く望んでいることが<br />

わかる。そして、その「居場所」で、「物思いにふけったり」「自分のことを考えたり」することも望<br />

んでいるようである。つまりこれらのことから、「居場所」がない状態の人々は、何かワクワクし、楽<br />

しさあふれるようなアクティブな「居場所」を求めているというよりも、まずは、自分を受け止めて<br />

くれる人がいて、そこでは自分らしくいられて、じっくりいろいろなことを考えることができるよう<br />

な、いわば落ち着いた、「受容的で静的な居場所」を求めている傾向があることが示された。<br />

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