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大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学

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場所」の心理的機能尺度得点と「SDS得点」の関係性を統計的に分析した。しかし、本研究の分析結<br />

果から、「居場所」の心理的機能と「SDS得点」の関係性について、さらに考慮すべき点が浮かび上<br />

がってきた。したがって、この節においては、本研究において、「居場所」の心理的機能と精神的健康<br />

の関係性があまり見られなかった要因について、以下の4つの考慮点から考察する。<br />

まず1つ目は、そもそも「居場所」の心理的機能という概念と「抑うつ感」の間には関係性がなか<br />

ったのではないかという問題である。杉本・庄司 47 (2006)、田島 48 (2000)の指摘は厳密に言うと、<br />

「居場所」のなさと「抑うつ感」の関係性を示唆したものであり、「居場所」の心理的機能と「抑うつ<br />

感」の関係性を示したものではない。本研究は探索的研究の意味合いが強かったとはいえ、「居場所」<br />

の心理的機能と「抑うつ感」の関係性の理論的背景については、もう尐し慎重に押さえておくべきで<br />

あった。ただ、「居場所」の心理的機能の下位尺度の中には「SDS得点」との関係性が見られている<br />

ものもあるので、「居場所」の心理的機能と「抑うつ感」の関係性がまったくないと結論付けてしまう<br />

ことも難しい。<br />

次に2つ目は、「居場所」の心理的機能との関連が予測される精神的健康の指標が別にあるという可<br />

能性である。これは、「居場所」の心理的機能との関係が予測される指標として、「SDS得点」以外に<br />

より適切な指標があったのではないかということである。本研究における問題点は、精神的健康の指<br />

標として「抑うつ感」以外の指標を考慮に入れなかったことである。この点に関しても、上述の1つ<br />

目の考慮点と併せて今後検討される余地がある。<br />

次に3つ目は、被調査者の“個人要因”が「居場所」の心理的機能と「抑うつ感」の関係性に影響<br />

を与える可能性である。本研究においては、「居場所」の心理的機能という“環境要因”と「抑うつ感」<br />

の関係性のみを、研究目的に合わせて切り取って考察してきたが、面接調査の結果から、被調査者の<br />

「パーソナリティ要因」や「対処法略」も「抑うつ感」に影響を与える要因として、考慮に入れる必<br />

要があることが示唆された。したがって、今後の研究において、「居場所」の心理的機能と精神的健康<br />

の関係性を探求する際には、被調査者の“個人要因”も考慮に入れることによって、「居場所」と精神<br />

的健康の関係性の実態をより正確に把握できると考えられる。<br />

最後に4つ目は、本研究における質問の仕方の問題である。本研究においては、便宜上第1の「居場<br />

所」のみを被調査者に尋ねたが、実際は第2、第3の「居場所」の重要性も面接調査から示された。「居<br />

場所」の心理的機能は、さまざまな「居場所」によって総合的に満たされうるものであるとされてい<br />

る。今後の「居場所」研究においては、第2、第3の「居場所」の存在とその心理的機能についても考<br />

慮に入れられるような研究計画が望まれる。<br />

以上の点から、本研究の結論として、「居場所」の心理的機能と「SDS得点」の関係性については<br />

部分的に示唆されたが、その両者の根本的な部分の理論的な関係性については、今後更なる研究の蓄<br />

積が必要であると思われる。<br />

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