大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学
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①KJ法分類から理解できる「自分1人の居場所」の特徴のまとめ<br />
表12で示したように、「自分1人の居場所」を選択した面接対象者からは14個の分類項目が抽出され<br />
た。これらの大ラベルや小ラベル、面接対象者の回答内容から見えてくる「自分1人の居場所」の特<br />
徴について、以下に簡卖にまとめてみたい。<br />
まず「自分1人の居場所」は、“対人関係が苦手”であったり“ずっと人といると疲れてしまう”と<br />
いった特性をもつ人によって、一時的な安息を求めるシェルターのような役割を果たす「居場所」と<br />
して選択されやすい。そこでは他者の目を気にすることなく、自由に振舞えることで、一時的な“安<br />
心感”や“満足感”を感じることができる。しかし、他者の存在がない「居場所」であるが故のマイ<br />
ナスポイントもある。それは、常に“寂しさや孤独感”を感じる危険と隣り合わせの場所であるとい<br />
うことと、長きに渡り対人的接触を断つことによって生じる自身への「これでいいのか?」という“自<br />
責の念”である。これらのネガティブ要因が生じてしまうと、「自分1人の居場所」は精神的健康を高<br />
めるような「居場所」としては機能しにくくなってしまう。統計的分析において「自分1人の居場所」<br />
を選択した人のSDS得点が比較的高めな傾向が見られているのは、彼らのパーソナリティ要因ととも<br />
に、「自分1人の居場所」が精神的健康に対して与える影響の不安定さも関係しているように思われる。<br />
「自分1人の居場所」を選択する人は、寂しさや孤独感に対して、対人的な援助を求めたい気持ち<br />
はあるが、自ら積極的に援助を求めることはあまりなく、“待ちの姿勢”が多い。しかし、実際の援助<br />
として求めるものは、“話をしたい”、“話を聴いて欲しい”というものがほとんどであり、その点では<br />
一度外部の援助資源を得られることがあれば、すぐに気持ちは満たされる可能性がある。<br />
「自分1人の居場所」を一番の「居場所」に選択した人の中でSDS得点が低い、いわば例外的な面<br />
接対象者は、「自分1人の居場所」以外に、「部活」や「クラブ」などの“密な人間関係がある場所”<br />
を第2、第3の「居場所」として確立しており、その点で適切な外部の援助資源が得られていると考え<br />
ることができる。<br />
「自分1人の居場所」を選んだ人に「居場所」を提供するという視点で援助を考える際には、“自分<br />
で選択できる”というポイントと“その場所の環境(人々)がよい”という2つのポイントを踏まえ<br />
た上で、「居場所」提供を考える必要がある。<br />
②KJ法分類から理解できる「家族といる居場所」の特徴のまとめ<br />
表13で示したように、「家族といる居場所」を選択した面接対象者からは16個の分類項目が抽出さ<br />
れた。先ほどと同様に、これらの大ラベルや小ラベル、面接対象者の回答内容から見えてくる「家族<br />
といる居場所」の特徴について、以下に簡卖にまとめてみたい。<br />
「家族といる居場所」は外の世界から離れたプライベート空間という点で、「自分1人の居場所」と<br />
同様“安心感”や“落ち着き”を感じさせる「居場所」であるのと同時に、家族という人の存在がい<br />
ることによっても精神的健康によい影響を与え得る「居場所」である。「家族といる居場所」は、“安<br />
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