大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学
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果からも、「自分1人の居場所」で精神的な落ち着きを得たり、「新たに自分を見つめなおせる」とい<br />
う効果も見出され、トラブルや問題が起こったときの“対処法略”の1つとして、「自分1人の居場所」<br />
に行くということの有効性が示唆されている。「居場所」の心理的機能という視点から考えても、「自<br />
分1人の居場所」は、「家族以外の人といる居場所」では得られにくい、「思考・内省」「行動の自由」<br />
「他者からの自由」という心理的機能を満たす場であり、第2の「居場所」として十分に機能する可<br />
能性はある。以上から、「家族以外の人といる居場所」を第一の「居場所」としており、相対的に外部<br />
との接触機会は多いが、その中で問題を抱え精神的に苦しくなっているタイプの人に対しては、「悩み<br />
を受容的に聴く人」の存在と「落ち着いてじっくり自分を見つめなおせる1人の場所」の双方を提供<br />
することが効果的であると考えられる。<br />
(3)「居場所」を用意する際の全体的な留意点について<br />
(1)、(2)では援助対象者のタイプ別に援助ポイントを見てきた。ただ全体として考えねばならな<br />
い根本的な問題として、援助対象者が「居場所」と感じた場所しか「居場所」にはなり得ないという<br />
厳しい事実がある。本研究では、心理的援助として「居場所」を用意するという視点から、いかに援<br />
助対象者に「居場所」と感じてもらえる場所を提供できるかということに焦点を当ててきた。その結<br />
果、大枠の大前提としては、「受け入れてもらえること」「話を聴いてもらえること」「認めてもらえる<br />
こと」などのポイントが、「居場所」と感じられるかどうかにおいて非常に重要であることがわかった。<br />
この点では、カウンセリングの姿勢が「居場所」という視点においても重要であることが改めて示唆<br />
された。これらのポイントに加えて、『用意された「居場所」がどうすればより「居場所」と感じても<br />
らえる場所になるのか』というポイントを、本研究から示し、第3節を締めくくりたい。<br />
用意された場所が「居場所」と感じるためには、大きく①「自分で選択できた場所であること」、②<br />
「その場所の人や環境がうまく適合すること」の2点がある。②に関して言えば、どのような場所が<br />
自分に適合していると感じるかは各人によって千差万別であり、決して一括りにはできない。かとい<br />
って、各人にあった「居場所」を1つ1つ創出していくわけにもいかない。したがって、②に関しては<br />
本研究において分類した、大きく3種類の性質の異なる「居場所」候補を最低限用意することが効果<br />
的であると思われる。ただ外部機関が用意するのならば「家族といる居場所」はとりあえず除外して<br />
考えてもよい。ただ尐なくとも「仲間同士で楽しく、一致団結してやっていくような居場所(家族以<br />
外の人といる居場所)」と「気分を落ち着けて、じっくり自分自身や周囲を見つめなおせるような居場<br />
所(自分1人のいる居場所)」の2タイプの居場所は必要であると思われる。このような性質の異なる<br />
「居場所」候補をいくつか用意し、それらの「居場所」の中から自分の好きな場所を選択してもらえ<br />
るよう工夫する。その工夫によって、①の条件も満たされることになる。面接調査からは、『「居場所」<br />
を「自分で選択した」という事実が、その場所を「居場所」にしていこうというモチベーションにつ<br />
ながる』と意見が得られており、①の条件が「居場所」となる上で非常に重要な条件であることがわ<br />
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