大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学
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「居場所」はあるが「SDS得点」が高い人には大きく2つのタイプがある。まず1つ目は、「自分1人<br />
の居場所or家族といる居場所」を第一の「居場所」としており、相対的に外部との接触機会が尐ない<br />
タイプ。2つ目は、「家族以外の人といる居場所」を第一の「居場所」としており、相対的に外部との<br />
接触機会は多いが、その中で問題を抱え精神的に苦しくなっているタイプ、である。以下では、この<br />
2つのタイプにおける援助のポイントを簡卖に考えてみる。<br />
まず「自分1人の居場所or家族といる居場所」を第一の「居場所」としており、相対的に外部との接<br />
触機会が尐ないタイプの人々に対しては、「第三者との安心できる交流」を提供したい。自分の部屋に<br />
閉じこもるということはその人の自己イメージを悪くする可能性があり、また社会的スキルも低下さ<br />
せる恐れがある。何か辛いことがあったときにそれを話せる第三者の存在を確保するためにも、自分<br />
1人や家族という身内以外の“第三者”が存在する場所を、第2の「居場所」として提供することをこ<br />
のタイプの人々には考えたい。このタイプの人々の中には、第三者に援助を求めたいと思っていても<br />
自分からは援助要請できない人々や、与えられた場所であってもそこにいる人(環境)がよければそ<br />
こが「居場所」となる可能性は高いと回答している人が多い。これらのことから、このタイプの人々<br />
には、適度な周囲からの働きかけが有効であると思われる。ただ、「強制」となると抵抗を感じる人も<br />
尐なからずいるので、例えば、形式的にはクラスや部活に所属することはある程度制度化した上で、<br />
選べる「居場所」候補としていくつかの場所を用意するような方策が適当であると思われる。ここで<br />
重要なのは、「自分1人の居場所」や「家族といる居場所」では得られにくい心理的機能を、第2の「居<br />
場所」で補うという視点であり、その目的を果たすために、「クラス」や「部活」という「家族以外の<br />
人のいる居場所」を上記で例示したにすぎない。したがって、「家族以外の人のいる居場所」の心理的<br />
機能を満たす場所であれば、上記の場所以外でも「居場所」候補として提供する意義はあると考えら<br />
れる。<br />
2つ目の、「家族以外の人といる居場所」を第一の「居場所」としており、相対的に外部との接触機<br />
会は多いが、その中で問題を抱え精神的に苦しくなっているタイプの人に対しては、その人を受容し、<br />
話を丁寧に聴くことができる人がいる場所を第2の「居場所」として提供することが効果的である。<br />
現在起きている「居場所」内での問題に関しては、やはり相談することによって解決がはかられるこ<br />
とが望ましい。この点については、先述の「居場所」がない人に対する援助策と共通する部分がある。<br />
ただ「家族以外の人といる居場所」を第一の「居場所」としている人の特徴としては、人と付き合う<br />
ことに積極的な姿勢をもっているということが考えられ、この点は「居場所」がない人々とは異なる<br />
援助方策も有効となる可能性がある。その援助方策は「自分1人の居場所」の創出である。「家族以外<br />
の人といる居場所」を選択した人々は、活動的な人が多く、常に多くの人々との関わりを持ちながら<br />
日々を過ごしていることが予想される。このような状況において、一度対人関係上のトラブル等が生<br />
じると、予想外のスピードで一気に歯車が狂い始める可能性は高い。そのような時に、一時の“シェ<br />
ルター”的な役割として、「自分1人の居場所」があることは有効であると考えられる。面接調査の結<br />
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