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大学生における「居場所」と精神的健康に関する一研究 - 創価大学

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持った目標達成的な集団の構成員となることによって、日々の修練や達成経験を通して、より自分の<br />

能力や自分への自信を確認、獲得できる部分も大きかったと考えることができる。<br />

以上の「家族以外の人のいる居場所」で因子得点が高い心理的機能に対して、「自然体」、「思考・内<br />

省」、「行動の自由」、「他者からの自由」の心理的機能は低くなっている。これらに共通する要因とし<br />

て考えられるのは、やはり、赤の他人と同じ空間や時間を共有している、場合によっては共有せざる<br />

を得ないという事実である。いくら同じ目的などを持った親密な関係性があったとしても、最終的に<br />

は他人であり、何でもありというわけにはいかず、「自然体」でいられなくなる場面がでてくる。また、<br />

クラブなどの活動がメインの「居場所」であれば、1人でじっくり物事を考える時間など物理的に存<br />

在しないだろうし、もし時間が確保できたとしてもすぐ傍に他者の存在があるので、思索にふけって<br />

いる場合ではないだろう。「家族以外の人がいる居場所」は基本的には“社会的な場所”であることが<br />

多いと考えられるので、当然そこにはルールや規範などがあり、そういう意味では「行動の自由」な<br />

ど下手をすればまったく保証されない可能性がある。「他者からの自由」は、「家族以外の人といる居<br />

場所」が1人ではない以上、そもそも他者からは自由ではないし、そばにいる人が他人という状況で<br />

は、とりわけ、その人たちのことを全く考えずに自由に行動するということは不可能に近い。<br />

以上、「家族以外の人のいる居場所」の心理的機能の特徴について考察してきたが、この「居場所」<br />

に関しては、とても重要なアンビバレントな2つの性質を孕んでいると考えることができる。1つは、<br />

親密な他者によってこそ味わえる、最高の「高揚感」や「自己肯定感」といった動的でポジティブな<br />

エネルギーをそこにいる人に感じさせる機能。もう1つは、他者の存在やルールなどの社会的制約に<br />

よって奪われる「行動の自由」「他者からの自由」や「自然体」の自分でいられなくなるという、いわ<br />

ばエネルギーを消耗させる可能性が高い部分である。面接調査から、「自分1人の居場所」に関しては、<br />

「外から帰ってきて、一番癒される場所として、今の部屋があるかなって思います」や「外にいると<br />

周りの事をすごい考えてしまうので、(アパートは)素の自分になれる場所です」などの発言が得られ、<br />

「家族以外の人のいる場所」がエネルギーを消耗させる様子と、「自分1人の居場所」がうまく安息の<br />

場所として機能している様子が示されている。また、「家族のいる居場所」に関しても、「家にいる時<br />

間は、大学のことは忘れてリラックスしたい」や「居間は一日のことを忘れて家族と共に過ごす安心<br />

できる空間」という発言が得られており、「家族以外の人のいる場所」がエネルギーを消耗させる様子<br />

と、「家族といる居場所」がうまく安息の場所として機能している様子が示されている。<br />

以上から、このような「家族以外の人のいる場所」での消耗を癒してくれるのが、「自分1人のいる<br />

居場所」であったり、「家族のいる居場所」であると考えることができ、各々の特徴が異なる「居場所」<br />

をうまく組み合わせて活用することによって、人々の精神的健康を安定させる効果がある可能性が示<br />

唆された。<br />

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