生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理
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生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理<br />
を 主 に 扱 った 論 文 を 検 索 したところ、 古 くは、20 世 紀 初 頭 の 志 田 (1902)<br />
や 麻 生 (1903)による 生 命 再 保 険 に 関 する 論 考 が 確 認 できるものの、そ<br />
れ 以 降 、 旧 協 栄 生 命 が 設 立 された1936 年 までの 間 、 筆 者 の 調 べた 限 り<br />
において 主 として 生 命 再 保 険 に 焦 点 を 絞 った 論 文 は 見 当 たらなかった。<br />
勿 論 、1936 年 はある 意 味 においてわが 国 の 生 命 再 保 険 の 誕 生 の 年 であ<br />
るから、この 年 には、 森 (1936)、 川 井 (1936)、 中 村 (1936)と 三 篇 もの<br />
論 文 が 刊 行 されている。 特 に、 森 (1936)は、「わが 国 には 生 保 の 再 保 が<br />
未 だ 行 われていない 為 、 余 り 多 額 の 契 約 をとることも 出 来 ず、 又 、 保<br />
険 金 額 の 最 高 制 限 が( 再 保 険 がなき 故 ) 幾 分 か 高 きに 失 するのでは 無<br />
いかとの 懸 念 もある。( 中 略 ) 私 はさしあたり 我 が 国 において 実 行 可 能<br />
な 再 保 険 の 方 法 として、 同 一 資 本 系 統 の 会 社 の 間 に、 再 保 険 を 受 授 す<br />
ることを 提 案 した。」と 述 べており、わが 国 の 生 命 再 保 険 市 場 の 発 展 に<br />
対 する 高 い 期 待 を 述 べている。ただ、その 後 は、 川 部 (1970)や 岡 本<br />
(1991)らによる 実 務 的 論 文 を 除 き、 生 命 再 保 険 に 関 する 論 文 はほとん<br />
ど 見 当 たらず、 戦 後 、 長 きにわたって 生 命 再 保 険 に 対 する 関 心 は 高 く<br />
なかったと 推 察 される。<br />
ところが、 最 近 のわが 国 の 生 保 再 保 険 市 場 の 展 開 を 見 る 限 り、 学 術<br />
的 な 観 点 から 極 めて 興 味 深 く、この 分 野 を 掘 り 下 げ 研 究 する 価 値 は 十<br />
分 にあると 言 える。というのも、3.2 節 ならびに3.3 節 で 論 じたように、<br />
90 年 代 後 半 以 降 の 生 保 会 社 の 商 品 戦 略 の 多 様 化 を 背 景 としてわが 国 生<br />
命 再 保 険 の 市 場 規 模 が 拡 大 しており、かつ、 元 受 生 保 会 社 間 でその 利<br />
用 の 程 度 に 差 異 (ばらつき)が 存 在 することが 確 認 できたからである。<br />
ここに、「そもそも 保 険 会 社 、 特 に 生 保 会 社 の 再 保 険 購 入 はどのような<br />
要 因 の 影 響 を 受 けるのか」という 問 題 への 学 術 的 関 心 が 生 じてくる。<br />
勿 論 、「なぜ 保 険 会 社 は 再 保 険 を 購 入 するのか」という 問 いに 対 す<br />
る 一 定 の 説 明 は、 伝 統 的 な 保 険 論 においても 存 在 する。 例 えば、 木 村 ・<br />
近 見 ・ 安 井 ・ 黒 田 (1993)によれば、 再 保 険 とは、「 保 険 者 が 保 険 契 約 に<br />
基 づき 保 険 金 を 支 払 うことによってこうむる 損 害 につき、さらに 他 の<br />
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