生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理
Zou(2008) 等 がある。
24) 結 局 、 保 険 購 入 を 企 業 にとってのリスクマネジメントの1つと 考 えるなら
ば、リスクマネジメントは、 期 待 倒 産 コストの 変 化 を 通 じて、 企 業 の 資 本 構
成 の 問 題 に 影 響 を 与 える。 要 するに、 企 業 の 資 本 構 成 の 問 題 とリスクマネジ
メントの 問 題 は 相 互 依 存 関 係 、つまり、コインの 裏 と 表 の 関 係 にあるといえ、
それゆえ、それぞれの 意 思 決 定 は 独 立 に 行 われるべきものではないというこ
とになる。
25)“Small life insurers are expected to gain more from reinsurers’ real services (e.g.,
underwriting advice and loss control) than large life insurers.”(Adams, Hardwick,
and Zou(2008, p.105))
26)Swiss Re.(2010a)によれば、 保 険 会 社 の 資 本 力 水 準 と 保 険 ポートフォリオ
の 分 散 化 の 程 度 が 再 保 険 利 用 のインセンティブに 重 要 な 影 響 を 与 えるという。
そもそも、 再 保 険 は 保 険 会 社 のリスク 管 理 の 手 法 の1つであり、リスク 保 有
と 代 替 的 な 関 係 にある。つまり、 十 分 な 自 己 資 本 を 積 んでいる 保 険 会 社 にと
っては、 出 再 による 第 三 者 へのリスク 移 転 のインセンティブはさほど 大 きく
ないといえる。 他 方 、 資 本 力 水 準 が 低 い 保 険 会 社 の 場 合 は、 再 保 険 を 購 入 す
るインセンティブが 相 対 的 に 高 いと 考 えられる。ここで、 重 要 なことは、 規
模 が 小 さく 営 業 拠 点 がローカルな 保 険 会 社 や、 特 定 の 保 険 種 目 に 偏 っている
保 険 会 社 の 場 合 、 地 理 的 な 意 味 においても、 異 種 のリスク・エクスポージャ
ー 間 の 相 殺 という 意 味 においても、 元 受 保 険 業 務 におけるリスク 分 散 能 力 が
限 定 されるという 点 である。リスク 分 散 能 力 が 限 定 されると、 相 対 的 にリス
ク 保 有 能 力 も 限 定 的 となり、 代 替 手 法 としての 再 保 険 購 入 のインセンティブ
が 高 まる。
27) 特 に、 生 保 会 社 の 再 保 険 需 要 と 保 険 種 目 構 成 ( 分 散 化 の 程 度 )に 関 しては、
Adams, Hardwick, and Zou(2008) が 次 の よ う に 述 べ て い る 。 "Product
diversification can also produce economies of scale and scope for life insurance
companies, enabling them to realize cost efficiencies in their management of asset
portfolios, for instance, through lower per unit investment handling charges. As a
result, the economic benefits emanating from product diversification are expected to
reduce life insurers’ demand for reinsurance. "(Adams, Hardwick, and Zou(2008,
pp.105-106)) 要 するに、 保 険 種 目 が 多 様 化 している 生 保 会 社 ほど、 再 保 険 と
代 替 的 な 機 能 を 元 受 保 険 ポートフォリオによって 実 現 できる 余 地 が 大 きいた
め、 再 保 険 需 要 は 逆 に 小 さくなってしまうという 予 想 である。
28)たとえば、 東 証 一 部 上 場 企 業 の 株 主 と 閉 鎖 的 会 社 の100% 株 主 とでは、 当 該
企 業 に 対 するリスク 回 避 の 要 望 は 大 きく 異 なるだろう。 後 者 の 場 合 、 会 社 自
らが 自 社 に 固 有 のリスクを 何 らかのリスクマネジメント 活 動 を 通 じて 軽 減 す
ることを、 株 主 自 らが 強 く 除 くことは 容 易 に 想 像 できる。なぜなら、かりに
当 該 企 業 の 企 業 価 値 が 会 社 固 有 のリスクを 原 因 として 著 しく 減 価 した 場 合 、
その 損 失 はすなわち100% 株 主 の 損 失 に 他 ならないからである。
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