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生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

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生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理<br />

をどのように 拡 張 することで、 現 実 の 企 業 の 保 険 需 要 行 動 を 説 明 する<br />

ことができるのだろうか。そこで、Mayers and Smith(1982)による 先<br />

駆 的 研 究 を 契 機 として、その 後 、 多 くの 先 行 研 究 は 上 述 の 理 想 的 な 世<br />

界 を 構 成 する 諸 仮 定 を 緩 和 することによって、 企 業 の 保 険 購 入 の 要 因<br />

を 解 明 することに 注 力 してきたのである。すなわち、 取 引 コストが 存<br />

在 しないという 仮 定 を 緩 和 する 方 向 と、よく 分 散 化 された 株 主 という<br />

仮 定 を 緩 和 する 方 向 、つまり、 分 散 化 制 約 を 課 す 方 向 で 理 論 的 かつ 実<br />

証 的 な 検 討 が 行 われてきたのである。<br />

実 は、このような 論 理 展 開 は、コーポレート・ファイナンスにおけ<br />

る 最 も 重 要 な 基 本 命 題 であるModigliani and Miller(1958)の 資 本 構 成<br />

に 関 する 無 関 連 性 命 題 と 同 様 のものである。そもそも、MMの 無 関 連 性<br />

命 題 では、 完 全 資 本 市 場 を 仮 定 とした 場 合 に 資 本 構 成 の 変 化 が 企 業 価<br />

値 に 影 響 を 与 えないということが 主 張 されている。そのうえで、 無 関<br />

連 性 命 題 の 諸 仮 定 を 緩 和 することによって、 資 本 構 成 が 企 業 価 値 に 影<br />

響 を 与 えうるという 点 、つまり、 最 適 資 本 構 成 の 存 在 を 示 すという 形<br />

で 論 理 が 展 開 している。<br />

同 様 に、「 企 業 はリスクマネジメントを 行 うことによって 企 業 価 値<br />

を 高 めることはできない」あるいは「リスクマネジメントと 企 業 価 値<br />

は 無 関 連 である」という 命 題 をMMの 諸 仮 定 のもと 示 した 上 で、その 後 、<br />

その 諸 仮 定 を 緩 和 することを 通 じて、 現 実 の 企 業 はリスクマネジメン<br />

トによって 企 業 価 値 を 高 めることができることを、 理 論 的 フレームワ<br />

ークの 中 で 提 示 できるのである。 実 は、このような 理 論 的 フレームワ<br />

ークのもと、 企 業 の 保 険 需 要 に 関 しても 一 定 の 実 証 研 究 の 蓄 積 があ<br />

る 15) 。また、 企 業 の 保 険 需 要 を 含 むリスクマネジメント 動 機 に 関 す 理<br />

論 的 フレームワークに 関 しては、 既 に 欧 米 の 保 険 論 あるいはリスクマ<br />

ネジメント 論 の 基 本 的 教 科 書 において 十 分 な 説 明 が 加 えられており、<br />

まさにこの 領 域 の 議 論 に 不 可 欠 な「 共 通 言 語 」となっており、 例 えば、<br />

最 近 の 代 表 的 な 教 科 書 として、Harrington and Niehaus(2003)や<br />

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