20.09.2015 Views

生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理<br />

向 にあること 明 らかにしている。これは、 相 互 会 社 にとって 資 本 市 場<br />

へのアクセスが 容 易 ではないため、 損 失 発 生 後 の 資 金 調 達 コストが 相<br />

対 的 に 割 高 になるということに 起 因 すると 説 明 される。この<br />

Harrington and Niehaus(2002)の 研 究 を 踏 まえ、Adams, Hardwick, and<br />

Zou(2008)は、 他 の 条 件 を 所 与 とした 場 合 に、 相 互 会 社 のほうが 株 式 会<br />

社 よりも 再 保 険 需 要 に 積 極 的 であると 論 じている。<br />

しかしながら、 他 の 条 件 を 所 与 とした 場 合 に、 株 式 会 社 のほうが 相<br />

互 会 社 よりも 再 保 険 需 要 に 積 極 的 であるという 議 論 もある。これは、<br />

先 ほどの 理 論 的 帰 結 とは 正 反 対 のものである。そもそも、5.1 節 では、<br />

Mayers and Smith(1987)をはじめとする 既 存 研 究 に 基 づき、 財 務 上 の<br />

困 難 に 直 面 した 企 業 が 直 面 する 過 少 投 資 問 題 を 緩 和 するために、 企 業<br />

は 事 前 に 保 険 購 入 を 行 う 可 能 性 があることを 論 じた。ここで、 過 少 投<br />

資 問 題 の 原 因 を 思 い 起 こせば、 顧 客 や 債 権 者 等 の 利 害 関 係 者 が、 法 持<br />

分 権 者 に 優 先 して 企 業 の 将 来 キャッシュフローの 分 配 を 受 けるため、<br />

残 余 財 産 の 分 配 請 求 権 を 有 するのみの 持 分 権 者 の 投 資 のインセンティ<br />

ブに 重 大 な 負 の 影 響 を 及 ぼすというロジックであった。 換 言 すれば、<br />

持 分 権 者 ・その 他 利 害 関 係 者 間 のエージェンシー 問 題 に 他 ならない。<br />

しかしながら、 相 互 会 社 というのは、 言 うまでもなく、「 持 分 権 者<br />

= 保 険 契 約 者 ( 債 権 者 とも 言 える)」という 図 式 の 中 にあるため、 理 論<br />

的 には、 上 述 のようなエージェンシー 問 題 は 大 きく 軽 減 されうる<br />

(Adams(1996), Adams, Hardwick, and Zou(2008) 他 )。したがって、<br />

過 少 投 資 問 題 が 保 険 需 要 に 与 える 影 響 という 観 点 からは、 相 互 会 社 に<br />

とっての 再 保 険 需 要 は 相 対 的 に 小 さいものになることが 理 論 的 に 示 唆<br />

される。 以 上 、 要 約 すれば、 相 互 会 社 か 株 式 会 社 かという 会 社 形 態 の<br />

相 違 は、 保 険 会 社 の 再 保 険 需 要 に 影 響 を 及 ぼしうる 要 因 であるが、そ<br />

の 影 響 の 方 向 については 不 明 瞭 であり、 実 証 的 に 確 認 すべき 論 点 の1<br />

つである。ただし、 実 証 モデルにおける 重 要 なコントロール 変 数 の1<br />

つであるということは、 少 なくとも 言 えるだろう。<br />

―106―

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!