生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理
という 議 論 を 展 開 している。
その 一 方 で、Mayers and Smith(1990)らは、 分 散 化 の 程 度 が 高 けれ
ば 高 いほど 再 保 険 需 要 が 小 さくなるというさきほどとは 正 反 対 の 可 能
性 も 論 じている。なぜなら、 保 険 会 社 が 保 険 種 目 の 分 散 化 によって 元
受 保 険 種 目 の 引 受 リスクを 軽 減 することは、 再 保 険 の 購 入 と 同 様 の 機
能 を 有 するので、そうした 元 受 保 険 ポートフォリオの 分 散 化 の 程 度 は
再 保 険 需 要 に 影 響 を 及 ぼすと 考 えられるからである 26) 。すなわち、 保
険 会 社 がすでに 元 受 保 険 ポートフォリオのなかで 十 分 に 分 散 化 を 図 る
ことができていれば、 何 も 追 加 的 にコストをかけてまで 再 保 険 を 購 入
する 必 要 性 は 高 くないという 趣 旨 の 議 論 である 27) 。このように、 先 行
研 究 によれば、 保 険 会 社 の 保 険 種 目 の 分 散 化 の 程 度 は、 保 険 会 社 によ
る 再 保 険 需 要 に 対 して 正 の 影 響 あるいは 負 の 影 響 のいずれの 可 能 性 も
あるが、いずれにせよ 実 証 モデルにおいてはコントロールすべき 要 因
の1つだと 言 える。
5.5. 相 互 会 社 vs. 株 式 会 社
会 社 数 という 観 点 から 見 れば、わが 国 の 生 保 会 社 の 多 くは 株 式 会 社
形 態 を 採 用 しているが、その 市 場 シェアという 意 味 においては、 現 在
でも 相 互 会 社 形 態 の 生 保 会 社 の 存 在 感 は 大 きい。 実 は、 相 互 会 社 か 株
式 会 社 かという 会 社 形 態 の 相 違 もまた、 保 険 会 社 の 再 保 険 需 要 に 影 響
を 及 ぼしうる 要 因 なのである。 以 下 、この 点 について、 所 有 構 造 と 保
険 需 要 に 関 する 一 般 的 な 議 論 を 踏 まえて、 議 論 の 整 理 を 行 いたい。
そもそも、4.2 節 で 詳 しく 論 じたように、 分 散 化 制 約 が 存 在 せず、
エージェンシー・コストや 税 金 、 倒 産 コストといった 取 引 コストが 存
在 しない 状 況 を 仮 定 する 限 り、 理 論 的 には、 企 業 の 保 険 需 要 に 関 して
合 理 的 な 根 拠 は 存 在 しない。というのも、 十 分 な 分 散 投 資 を 行 うこと
によって、ゼロコストで 企 業 固 有 の 要 因 に 基 づくリスク、すなわち、
アンシステマティック・リスクを 除 去 可 能 だからである。
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