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生命保険会社の商品・販売戦略と 生命再保険によるリスク管理

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生 命 保 険 会 社 の 商 品 ・ 販 売 戦 略 と 生 命 再 保 険 によるリスク 管 理<br />

は、 持 分 権 者 に 分 配 される 前 に 他 の 利 害 関 係 者 のものになってしまう。<br />

特 に、 過 剰 債 務 問 題 に 直 面 しているような 企 業 の 場 合 、その 負 債 利 子<br />

の 負 担 はかなり 大 きくなるので、 将 来 収 益 の 大 半 は 債 権 者 に 対 する 利<br />

払 いに 充 当 される。その 結 果 、 持 分 権 者 の 新 規 投 資 に 対 するインセン<br />

ティブは 低 下 し、 持 分 権 者 は 正 の 現 在 価 値 をもつ 新 規 の 投 資 プロジェ<br />

クトを 見 送 ることになる。 要 するに、 債 権 者 をはじめとする 他 の 利 害<br />

関 係 者 と 持 分 権 者 との 利 害 対 立 を 原 因 として、 本 来 であれば 投 資 され<br />

るべき 水 準 の 投 資 が 実 行 されないという 意 味 での 過 少 投 資 問 題 が 生 じ<br />

るのである 21) 。<br />

Mayers and Smith(1987)をはじめとする 先 行 研 究 は、 事 前 の 保 険 購<br />

入 によって、こうした 過 少 投 資 問 題 を 緩 和 できることに 注 目 し、この<br />

点 にも 企 業 の 保 険 購 入 の 理 由 を 求 めたのである 22) 。この 点 を 要 約 する<br />

と 以 下 のようになる。まず、 現 時 点 では 財 務 的 困 難 の 原 因 となるよう<br />

な 保 険 事 故 を 経 験 していない 企 業 が 借 入 れを 検 討 しているとしよう。<br />

この 場 合 、 予 想 される 財 務 的 困 難 の 原 因 となるような 事 故 に 対 して 保<br />

険 を 購 入 している 企 業 と、そうでない 無 保 険 の 企 業 との 間 では、その<br />

金 利 水 準 に 差 異 が 生 じる。 無 保 険 の 企 業 のほうが 相 対 的 に 高 い 金 利 を<br />

提 示 されるのである。なぜなら、 貸 し 手 は、 上 述 の 理 由 により、 無 保<br />

険 の 企 業 に 対 して 将 来 の 過 少 投 資 問 題 を 懸 念 するからである。 貸 し 手<br />

は、 万 が 一 、 将 来 時 点 で 当 該 企 業 に 財 務 的 困 難 の 原 因 となるような 保<br />

険 事 故 が 生 じた 場 合 、 過 少 投 資 のインセンティブによる 自 らのキャッ<br />

シュフローの 低 下 を 懸 念 し、 現 時 点 で 債 権 者 として 当 該 企 業 にコミッ<br />

トすることをためらうし、かりにコミットするとしても 契 約 条 件 、す<br />

なわち 提 示 する 金 利 水 準 を 上 昇 させるだろう。 結 局 、このような 無 保<br />

険 のコストは、 金 利 水 準 の 上 昇 を 通 じて 事 前 に 持 分 権 者 が 負 担 するこ<br />

とになるのである。<br />

その 一 方 で、 企 業 が 事 前 に 保 険 を 購 入 している 場 合 には、 過 少 投 資<br />

問 題 に 対 する 貸 し 手 の 懸 念 は 軽 減 される。なぜなら、 万 が 一 、 深 刻 な<br />

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