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2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会

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144<br />

得るために分光解析を用いる理由とそれぞれの研究状況につ<br />

いて次の 4 種類にまとめて述べられた:1)RGB カメラと人<br />

間の分光感度特性の違い,2)個人間の分光感度特性違い,3)<br />

観測時の光源と再現時の光源の違い,4)メタメリズム.長<br />

年に亙って分光画像処理を手がけてきた講演者の経験談を交<br />

えた丁寧な解説に観衆は聞き入っていた.次に Imai による基<br />

調講演では自然界に近い色再現を実現するための技術とし<br />

て,測色的色再現の基礎から分光画像処理,高ダイナミック<br />

レンジ処理,そしてカラーアピアランスモデルや再現画質の<br />

定量化について述べられた.基礎から応用まで論理的にわか<br />

りやすく述べられていた.また Hauta-Kasari は基調講演にお<br />

いて分光処理の産業応用に焦点を当て,フィンランドのヨー<br />

エンス大学における企業と大学の共同研究の実情を交えなが<br />

ら具体的な研究プロジェクトを紹介した.多数の写真やビデ<br />

オを使った説明は大変興味深いものであった.その他,一般<br />

講演の件数をトピック別に数えると,計測と再現に関する研<br />

究が 8 件,分光推定に関する研究が 7 件,分光解析や視覚モ<br />

デルの基礎研究が 6 件,分光応用に関する研究が 10 件であっ<br />

た.それぞれのトピックにおいて大変活発に議論が交わされ<br />

た.<br />

以下に <strong>2007</strong> 年度の分光画像に関する研究動向をトピック<br />

別にまとめる.<br />

5.1 分光画像の記録と再現<br />

Yamamoto らは LED アレイ,フォトダイオードアレイ,レ<br />

ンズアレイを使った分光スキャナシステムを提案した.分光<br />

推定精度は LED に大きく依存するため,40 種類の商用 LED<br />

を用意して最適化により 5 種類を決定した.900 以上の評価<br />

サンプルに対して分光推定誤差を評価したところΔE94色差に おいて,平均 1.02,最大 2.84 と非常に高い精度が得られてい<br />

る.また FPGA と DSP を併用した高速演算ハードウェアを実<br />

装することにより,0.5 mm ピッチの解像度において 100 mm/<br />

sec のスキャン速度を実現している(JIST,51(1),61).一方,<br />

Chorin らは DLP プロジェクターを 6 原色に拡張したディス<br />

プレイを提案した.光源の選択から 6 原色分解アルゴリズム,<br />

そしてシステム評価まで行っている.最終的には印刷校正の<br />

ハードコピーに置き換え可能となる水準の色再現性を目的と<br />

しており,未だ完全とは言えないものの高い精度を実現して<br />

いる(JIST,51(6),492).<br />

5.2 分光解析の基礎研究<br />

Tsutsumi らは LabPQR 色空間を用いた色域マッピング手法<br />

を提案した.LabPQR とは分光情報を測色値 L*a*b*3 成分と<br />

メタメリックブラックを考慮した追加 3 成分で表現する色空<br />

間であり,Derhak らによって 2004 年に提案された.本論文<br />

では 6 色プリンタでの再現を前提としており,分光から<br />

LabPQR 空間への変換,色域マッピングを行うためのパラ<br />

メータ調整法を提案し,その評価において高い再現性を実現<br />

している(JIST,51(6),473).また Tsutsumi らは LabPQR<br />

色空間から 6 色プリンタへの色変換を LUT によって行う手法<br />

を提案した.17×17×17×5×3 の要素を持った LUT を構築し<br />

ており色域マッピングと組み合わせることで高い精度を実現<br />

<strong>日本写真学会</strong>誌 71 巻 3 号(2008 年,平 20)<br />

した(CIC,184).さらに Nakaya らは LabRGB という CIELAB<br />

と RGB を組み合わせた 6 次元色空間を提案し分光情報の次<br />

元圧縮性能を評価した.比較対象として固有ベクトルを 6 種<br />

類の三角関数でモデル化する手法と,異なる光源下で観察し<br />

た CIELAB 値を 2 セット用いる手法も提案しそれぞれの評価<br />

を行ったところ,LabRGB が最も優れた結果を示した(CIC,<br />

190).色域マッピングに関してはさらに Bastani らが分光領<br />

域における手法を提案し,多色プリンタに応用している.こ<br />

の手法は非負の最小自乗法を用いており,従来の手法は凸包<br />

形状の色域しか扱えなかったのに対し,提案手法は凹面を有<br />

する色域にも適応できたとしている.数値モデルと実インク<br />

を用いた実験を行ってインクの種類と色再現性の関係につい<br />

て評価した(CIC,218).<br />

Morovic らはメタメリズムにおける色彩計測センサの特性<br />

を定量化するフレームワークを提案した.またメタメリズム<br />

の程度を可視化する頻度画像計算手法も提案し,評価を容易<br />

にしている.評価の指標として標準光源下でのメタマー,一<br />

般光源下でのメタマー,色の不一致度といった量を算出する<br />

ところが新しい.実験の結果から,センサ数の増加および狭<br />

帯域バンド数の増加につれてメタメリズムを抑制できること<br />

が客観的に示された(CIC,18).<br />

5.3 分光推定<br />

Bochko らは分光推定手法の提案と比較検討を行った.従来<br />

一般的に用いられてきた主成分分析に基づく方法,Wiener 推<br />

定を用いた方法,重回帰分析を用いた方法はどれも線形性を<br />

仮定している.そこで筆者は非線形性を考慮した学習に基づ<br />

く手法として回帰型 PCA 手法と区分線形型 Wiener 推定手法,<br />

そして非線形回帰分析手法を提案し,それぞれ比較実験を<br />

行った.その結果,回帰型 PCA 手法が推定精度,計算時間の<br />

両方において高いパフォーマンスを示した(JIST,51(1),70).<br />

また Skaff らはエントロピー最大化法を色恒常性に適用した.<br />

従来の色恒常性に対するアプローチは線形基底関数が用いら<br />

れてきたが,エントロピー最大化法は線形性を仮定する必要<br />

がないため柔軟な表現が可能である.ノイズ付与条件下で分<br />

光反射率分布,分光放射輝度分布を推定する実験を行った結<br />

果,エントロピー最大化法は大変良好な結果を示した(CIC,<br />

100).<br />

Shimano らは分光推定時の平均自乗誤差(MSE)について<br />

解析を行った.本研究では Wiener 推定時に発生する MSE を<br />

ノイズ依存成分と非依存の成分に分離解析する手法を提案し<br />

ている.本手法を量子化誤差の解析に適用したところ,ノイ<br />

ズ依存性が顕著に見られた.このノイズ依存性分離手法は<br />

様々な MSE 解析において有効であると考えられる(CIC,<br />

147).<br />

5.4 分光画像処理の応用研究<br />

Zhang らは分光撮影による植生指数の計測法を提案した.<br />

従来は限られたバンド数の分光情報から植生指数を推定して<br />

いたが,AVIRIS と呼ばれる 224 次元の分光計測が可能な計測<br />

器を用いて計測し,計測されたデータから様々な植生指数を<br />

算出する推定手法 VIUPD を提案した.VIUPD を使った計測

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