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2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会

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撮影をするというようなスタイルが広がりつつある.<br />

画像処理に視点を移すと,画像処理を用いた,新しい撮影<br />

と表現のテクニックとして,三脚に固定したデジタルカメラ<br />

で,星と風景を連続的にインターバル撮影した複数枚の画像<br />

を,画像処理ソフトを用いて合成(合成時の条件として比較<br />

(明)を選択)を利用した,デジタル版長時間露出とでも言う<br />

べき手法が広がってきた.都会の風景と組み合わせた星空な<br />

ど,銀塩フィルムによる長時間露出では得ることができな<br />

かった画像が,デジタル撮影機材と画像処理によって得られ<br />

るようになったことは,新しい可能性を示唆するものとして<br />

注目される.<br />

また高精細な広い画角の画像を得るために,写野をずらし<br />

ながら撮影した,複数枚の画像を用いてモザイク合成すると<br />

いう手法も広がっている.風景写真などで,水平方向に順次<br />

撮影した複数枚の画像からパノラマ写真に仕上げるというよ<br />

うなデジタル処理の応用にあたるものだが,星像はできるだ<br />

け小さく,背景のノイズはできるだけ少なくしたいという,<br />

天体写真ファンの高画質へのこだわりが見てとれる.<br />

昨年の本稿でも記したが,新天体の捜索を行うために,撮<br />

影から未確認天体の捜索(データベースとの比較),新天体が<br />

発見されれば所定の手続きでその報告まで行うような,統合<br />

的なソフトウェアの進化もあるように,アマチュアの世界で<br />

も,天候(降雨状況や雲の状況)を調べ,観測施設のドーム<br />

の開閉や回転を行い,望遠鏡を遠隔地から自動コントロール<br />

して天体の自動導入をし撮影をするなど,一連の動作をさせ<br />

る統合環境づくりを目指した動きが始まっている.そういう,<br />

画像処理に止まらない作業の自動化は今後,「より楽に」,「よ<br />

り高画質を」,「より高い生産性で」という方向に向かい,さ<br />

らに進化するものと期待されている.<br />

高度なリモートセンシングという面では,宇宙航空研究開<br />

発機構(JAXA)が月周回衛星「かぐや(SELENE)」を打ち<br />

上げ(<strong>2007</strong> 年 9 月),日本放送協会(NHK)が開発したハイ<br />

ビジョンカメラによって月の周回軌道から撮影された,月の<br />

表面の精密な映像や,月の縁から上る地球,沈む地球の映像<br />

が発表された.もちろん「かぐや(SELENE)」に限った話で<br />

はなく,これまでの惑星探査衛星やハッブル宇宙望遠鏡もそ<br />

うであるように,リモートセンシング技術により,研究や鑑<br />

賞のための高画質映像を,居ながらにして撮影できるように<br />

する取組みは,今後ますます加速すると予想されている.<br />

10. 画像入力(撮影機器)<br />

長 倫生(カメラ技術研究会)<br />

<strong>2007</strong> 年は前年に続きデジタルカメラ市場の成熟化が一層<br />

進み,昨年に続き業界の再編や生産開発拠点の統廃合が進ん<br />

だ.以下にその流れを示す.<br />

9 月:富士フイルム株式会社はデジタルカメラ生産の全面<br />

的中国移管,生産技術の開発機能を有する宮城県黒川郡大和<br />

町の拠点に,デジタルカメラの製品開発,調達,品質保証機<br />

能を統合することを発表.<br />

<strong>2007</strong> <strong>年の写真の進歩</strong> 151<br />

10 月:HOYA 株式会社と,ペンタックス株式会社は,平成<br />

20 年 3 月 31 日に合併すると発表.<br />

このような中でフイルムカメラはほとんど登場せず,デジ<br />

タルカメラもコンパクトタイプでは製品サイクルが一層短く<br />

なりコストだけではなく,新しい付加価値を模索した数多く<br />

の製品が登場している.また,デジタル一眼レフカメラも普<br />

及機からフルサイズセンサー搭載機まで,ラインナップが充<br />

実してきている.研究や製品開発に関した発表はセミナーや<br />

学会誌などで活発になされ,デジタル技術や周辺技術に関し<br />

た多岐にわたる成果の数々が報告された.<br />

①カメラ<br />

研究・開発ではデジタルカメラのノイズ低減や画像処理を<br />

含めた撮像素子・画像関連技術,手ブレ防止技術,外装技術<br />

などの周辺技術が報告された.フイルムカメラの研究報告は<br />

無かった.<br />

デジタルカメラの撮像素子・画像関連技術関連では多くの<br />

報告がされており,風見(ニコン)はデジタル一眼レフの最<br />

新技術動向について報告した(デジタルカメラ基礎講座,).<br />

南(富士フイルム)は FinePix S5Pro 写真画質へのアプロー<br />

チについて報告した(カメラ技術,10).黒田(松下電器)は<br />

イメージセンサにおける画像情報の構造と画質に関する基礎<br />

的考察について報告した(カメラ技術,30).原口(キヤノン)<br />

は EOS KISS Digital X の開発について報告した(日写誌,70,<br />

189).若林,赤木(ニコン)はデジタル一眼レフカメラ D80<br />

の開発について報告した(日写誌,70,185).井浜(富士フ<br />

イルム)は有機光電変換膜を積層した CMOS イメージセン<br />

サーについて報告した(富士フイルム研究報告,52,3).<br />

手ブレ防止技術やデザイン・外装技術を中心に周辺技術で<br />

も盛んに報告されており,信乃(キヤノン)は Canon IXY デ<br />

ザインの系譜について報告した(カメラ技術,19).鷲巣(キ<br />

ヤノン)は光学式手ブレ補正技術の歴史と技術分類について<br />

報告した(PIE,).清水(ペンタックス)はデジタルカメラ<br />

におけるタッチディスプレイの UI について報告した(カメ<br />

ラ技術,15).森(オリンパス)は小型防水耐衝撃デジタル<br />

カメラ μ720SW の開発について報告した(日写誌,70,181).<br />

野中(富士フイルム)は大量の DSC 撮影画像からの自動選択<br />

を可能とする画像評価技術“iAgent”の開発ついて報告した<br />

(富士フイルム研究報告,52,17).張(富士フイルム)は<br />

FinePix S6000fd の顔検出応用技術について報告した(日写誌,<br />

70,196).畳家,上中,最上谷(ペンタックス)は「K10D」<br />

の企画背景および手ブレ補正技術について報告した(日写誌,<br />

70,201).<br />

フイルムカメラでは市場縮小が進み,一眼レフとしては新<br />

機種の発表は無く,コンパクトカメラでも富士フイルム<br />

KLASSE S の 1 機種のみの登場にとどまっている.しかしな<br />

がら,レンジファインダー機では 21 mm 広角レンズに対応し<br />

たファインダーを持つコシナ BESSA R4M,R4A の 2 機種が<br />

登場し,フイルムカメラの根強い人気に対応している.<br />

デジタルカメラは一眼レフでは普及機から高級機まで幅広<br />

い層が登場.すべてが 1000 万画素を超えて登場した.前年

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