2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会
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CR プレートを安価に作成できるメリットがあるので,ハン<br />
ドリング性を求めるカセット型 CR システムのプレートとし<br />
て普及している.一方,蛍光体を柱状に形成し,ライトガイ<br />
ド効果で読み取り時に LD 光の層内散乱を抑える蒸着型プ<br />
レート技術は CR プレートの高画質化を図る有効な技術手段<br />
であり,両技術ともそれぞれのメリットを活用し,医用画像<br />
診断の質の向上に寄与できると報告している(日写誌,70<br />
(別),10).<br />
山﨑(キヤノン)は,同セッションで,「間接型 FPD(flatpanel<br />
detector)技術」と題して,間接型と直接型の FPD の原<br />
理,特徴,要求仕様,X 線検出器の評価について解説し,そ<br />
の中で医療診断用 X 線撮影分野の静止画および動画の両応用<br />
で使用されている間接型 FPD 技術が,静止画においてほぼ十<br />
分な高感度化がなされているが,動画に関しては 1 枚あたり<br />
の撮影線量が非常に少ないことから,さらなる高感度化が求<br />
められており,今後は,透視線量を十分に抑制できるように,<br />
高ゲイン化,低ノイズ化をそれぞれ追求し,高感度化を目指<br />
すと報告している(日写誌,70(別),24).<br />
三品(島津製作所)は,同セッションで,「直接型 Flat Panel<br />
Detector(FPD)技術(FPD システムにおけるアプリケーショ<br />
ンの開発)」と題して,直接型 FPD を使用したアプリケーショ<br />
ンとして,エネルギーサブトラクション,スロットラジオグ<br />
ラフィー,デジタルトモシンセシス,長尺トモシンセシス,<br />
コーンビーム CT について解説し,その先進性のために FPD<br />
自身の技術に注目されがちであるが,実際には FPD はシステ<br />
ムの一部でしかなく,FPD の能力を十分に引き出し臨床的な<br />
意義を高めていくのはシステム全体であるとし,これらのシ<br />
ステムに関する種々の技術をまとめ上げ,常に今後の大きな<br />
可能性を追求し,FPD を中心としたシステムを,画像診断の<br />
新しい領域にまで発展させていくことが我々の責務であると<br />
報告している(日写誌,70(別),26).<br />
②画質評価<br />
新田ら(コニカミノルタエムジー)は,10 ~ 30 倍の高倍<br />
率撮影位相イメージングでの半影による像のボケが生じる画<br />
像辺縁において,位相コントラストによる画像辺縁強調を得<br />
るための撮影条件を検討し,X 線管焦点径(20 μm),撮影拡<br />
大率(20 倍),平均 X 線エネルギー(20 keV 以下)を適切に<br />
組合せることで,鮮明な高倍率位相コントラスト像を得るこ<br />
とができ,今後は,検出器画素サイズを含めたエッジ像取得<br />
の最適撮影条件を検討することが課題であると報告している<br />
(日写誌,70(別),18).<br />
松本ら(阪大院)は,エネルギー弁別型放射線ラインセン<br />
サを用いて,診断用 X 線装置の管電圧 120 kV,管電流 0.22<br />
~ 0.25 mA の撮影条件で,5 keVのエネルギー幅で作成した<br />
被写体(炭素とアルミニウムの円柱とアクリルの正方形柱)<br />
の X 線画像から被写体の材質として減弱係数と原子番号を計<br />
算し,理論値と比較して,被写体の材質が識別可能かどうか<br />
検討した結果,識別可能であることを実験的に確認し,今後<br />
は,理論値との誤差をできるだけ小さくして,実用化に耐え<br />
るようにしていきたいと報告している(日写秋,35).<br />
<strong>2007</strong> <strong>年の写真の進歩</strong> 149<br />
窪田ら(鈴鹿医大院)は,医用画像のノイズの低減法とし<br />
て,これまで,wavelet 係数絶対値のヒストグラム形状だけ<br />
から閾値を決定する手法を提案し,さらに,広範囲な画像 SN<br />
比に対しても,ノイズ低減の性能が安定するように,閾値決<br />
定のアルゴリズムを改良して,154 枚の胸部 X 線ディジタル<br />
画像でノイズ低減性能を評価した結果,広範囲な SN 比のノ<br />
イズ画像に対しては,Donoho の閾値よりも安定であり,低<br />
い SN 比のノイズ画像に対しては,Donoho の閾値と同等のノ<br />
イズ低減効果が得られたと報告している(日写秋,39).<br />
8.2 医用画像の応用<br />
①診断への応用<br />
志村ら(千葉大院)は , 放射性薬剤(RI: Radioisotope)の<br />
集積をイメージングする小型ガンマカメラ(GC)と光学カメ<br />
ラ(OC)の画像合成法をラットなどの小動物イメージングに<br />
適用した時の誤差を見積り,対象物に起伏がある場合にはGC<br />
から離して撮影する必要があるが,距離を離して撮影を行う<br />
と GC の感度が低下してしまうので,近距離での撮影を可能<br />
にするために OC を二眼にしてステレオ撮影を行い,対象物<br />
の形状の復元に成功したので,今後は,対応点検出精度の向<br />
上と対象物の形状に合わせた画像合成法に取り組むと報告し<br />
ている(日写誌,70(別),16).<br />
窪田ら(鈴鹿医大院)は,マンモグラフィのコンピュータ<br />
支援診断システム(CAD: Computer-Aided Diagnosis)で使用<br />
する病巣陰影のコントラスト強調処理に,quoit フィルタのリ<br />
ング上画素値の統計量として,平均値でなく,中央値を採用<br />
し,様々な形状の quoit フィルタでコントラスト強調処理を<br />
行い,平均値を用いた場合と比較した結果,コントラスト強<br />
調効果に大きな違いはなく,逆に計算時間が増大したので,<br />
今後は,実用的な処理時間でより効果的に病巣陰影コントラ<br />
ストを選択的に強調できるように改良していくと報告してい<br />
る(日写秋,41).<br />
②治療への応用<br />
藤淵ら(千葉大)は , 放射線治療での非物理 wedge の線量<br />
プロファイル測定で,従来から行われているフィルム線量分<br />
布測定法で使用されているフィルムの代わりにイメージング<br />
プレート(IP: Imaging Plate)を利用した線量プロファイル測<br />
定を検討し,IP にビーム照射後に一定量の露光によるフェー<br />
ディングを行うことで,100 MU 以上での測定が可能であり,<br />
電離箱線量計で測定した軸外線量比(OCR: Off Center Ratio)<br />
を比較した場合,オープン照射野,非物理 wedge 照射野とも<br />
に,金属フィルタを使用することで誤差を抑え,電離箱線量<br />
計での測定値に近似させることができたので , IP を利用した<br />
線量プロファイル測定は IP の特性を考慮すれば,非物理<br />
wedge の簡便な QA(Quality Assurance)として使用可能であ<br />
ると報告している(日写誌,70(別),12).<br />
松隈ら(千葉大院)は,仮想現実(VR: Virtual Reality)技<br />
術を利用した腹腔鏡下手術トレーニングシステムのための 2<br />
点接触を可能にするリアルタイム肝臓変形シミュレーション<br />
用に,リアルタイム弾性体変形モデルを提案し,2 点の作用<br />
点のそれぞれに梁を考え,2 本の梁の変形を足し合わせるこ