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2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会

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あり,写真の記録性の価値を感じさえてくれるものであった.<br />

今回で 4 回目を迎える「アジアの写真家たち」はインドが<br />

取り上げられた.<strong>2007</strong> 年は日印文化協定締結 50 周年にあた<br />

り,文化,学術交流,人と人との交流の強化を目的とした「日<br />

印交流年」であった.東京写真月間の「アジアの写真家たち<br />

インド」はインド大使館より日印交流事業と認定された.<br />

この企画では 12 名のインドの写真家により捉えられた現<br />

在のインドの文化,風俗,人々の暮らしが紹介された.スベ<br />

ンダー・チャタジーの「Manipur」(銀座ニコンサロン,5 月<br />

30 日~ 6 月 12 日)は,インド北東部のマニプル州でアイデ<br />

ンティティ制度によって生まれた社会問題の解決のために立<br />

上がった女性達の解放闘争の記録であった.パラシャント・<br />

パンジェールの「KING, COMMONER, CITIZEN」(貴族&庶<br />

民)(コニカミノルタプラザ・ギャラリー C,5 月 19 日~ 28 日)<br />

は生活者の視点から階級制度のギャップを越えて精一杯生き<br />

るインド人の生活の記録であった.パブロ・バーソロミュー<br />

の「Nagaland “Marked by beauty”」(オリンパスギャラリー,<br />

6 月 7 日~ 13 日)は,東端のミャンマーと国境を接する山岳<br />

地帯に住む少数民族の文化,風俗の記録であった.「India in<br />

her colour and vibrancy: インドの輝き・彩り」(キヤノンギャ<br />

ラリー銀座,5 月 31 日~ 6 月 6 日)は,7 人のインドの写真<br />

家により,宗教が半ば社会習慣化された同国の風俗,文化を,<br />

様々な暮らしをとおして紹介した.「India in diversity インド<br />

百態」(アイデムフォトギャラー「シリウス」,5 月 31 日~ 6<br />

月 6 日)は 5 名の写真家により,現在のインドの貧しい人々<br />

の風俗,文化と近代文明を享受する富裕な中間層の暮らしぶ<br />

りを紹介していた.<br />

「日本写真協会賞」は,写真文化の国際交流や写真界への貢<br />

献・功労のあった個人や団体と,地域において写真文化の振<br />

興発展に寄与している個人や団体,写真作家活動や写真研究<br />

活動において顕著な業績を残した写真家・研究者,将来を嘱<br />

望される新人写真家を表彰するものである.その「日本写真<br />

協会賞受賞作品展」(富士フォトサロン,6 月 1 日~ 7 日)が<br />

開催され,その表彰式が 6 月 1 日,笹川記念館で行われた.<br />

・国際賞:テリー・ベネット<br />

氏の収集による豊富な実作品に基づいた研究・調査の集<br />

大成である 2006 年に出版された著書「PHOTOGRAPHY<br />

IN JAPAN1853-1912(日本の写真 1853 ~ 1912)」と,同時<br />

に出版された収集・調査の手引書「OLD JAPANESE PHOTO-<br />

GRAPHES: COLLECTORS’DATA GUIDE(日本古写真コレ<br />

クター・データガイド)」は日本の古写真研究に関わる国内<br />

外の研究者にとって貴重な成果であり,日本の写真文化に<br />

多大に寄与している.<br />

・功労賞:大西實<br />

富士写真フイルム(株)の社長,会長在任中には,写真<br />

界各方面の要職を歴任し,日本の写真感光材料をレベル<br />

アップするリーダーシップをとり,日本写真工業の国際的<br />

地位の確立に寄与した.また日本写真協会の理事,副会長,<br />

会長を歴任し,日本写真協会の協賛組織の充実と,「東京写<br />

真月間」など写真文化活動の強化を計った.<br />

<strong>2007</strong> <strong>年の写真の進歩</strong> 155<br />

・功労賞:津田洋甫<br />

これまでの写真集・写真展などの制作活動と共に,浪華<br />

写真倶楽部の代表としての活動に対して贈られた.浪華写<br />

真倶楽部は 2005 年に 100 周年を迎えた日本で最古の写真<br />

倶楽部である.その代表として 100 周年記念行事の写真展<br />

を関西・東京で催し,写真集も上梓された.そして今後益々<br />

の発展が期待されている.<br />

・功労賞:故・倉持悟郎<br />

2006 年に食道がんのため逝去された氏は日本における<br />

フォトコーディネータの草分け的存在であり,100 以上の<br />

写真展を企画運営し,日本の写真家を海外に,また海外の<br />

写真家を日本に紹介した.「国境なき医師団」展 ’95 や<br />

「ヒューマンライツ写真展」など人権問題,人道支援など<br />

ヒューマンな問題を多くの写真展で社会に訴えた功績は大<br />

きい.<br />

・学芸賞:光田由里<br />

2006 年出版の著書「写真,「芸術」との界面に」で,野<br />

島康三などの巨匠たちの実作品と関連資料の研究調査によ<br />

り独自の視点で写真と芸術の「界面」に関する論を展開し,<br />

彼らの仕事の位置づけに再検討を促すとともに,総論とし<br />

て写真と芸術の新たな光景を浮き上がらせた.また写真と<br />

芸術に関する研究方法の可能性を広げた功績も大きい.<br />

・文化振興賞:飯田市(藤本四八写真文化賞)<br />

長野県飯田市は平成 9 年に「飯田市藤本四八写真文化賞」<br />

を制定し,10 年目を迎える.「推薦の部」はプロ写真家の<br />

業績に対し授与されるものでる.また「公募の部」はプロ・<br />

アマを問わず応募された中からすぐれた写真表現に対して<br />

表彰するものである.写真表現の発展のために力をそそい<br />

だ行政に対し贈られた.<br />

・文化振興賞:京都写真クラブ「How are you, PHOTO-<br />

GRAPHY ? 展」実行委員会<br />

京都写真クラブは,写真文化の活性化と振興の理念を掲げ<br />

て活動している.2006 年に 11 回を迎えた「How are you,<br />

PHOTOGRAPHY ? 展」は,プロ・アマ問わず様々な人が京都<br />

を中心にギャラリーなどで開催される写真展に参加し,自主<br />

的に運営するものである.地域における写真文化振興のため<br />

の草の根運動として注目すべき試みである.<br />

・年度賞:中村征夫<br />

水中写真家である氏は世界 76 カ国の海を巡り,多様な<br />

作品群を発表してきた.その集大成といえる写真展・写真<br />

集「海中 2 万 7000 時間」に対して贈られた.また 30 年に<br />

わたる東京湾の撮影は貴重な記録となっている.氏のもう<br />

一つの特質は,カラー写真と共に黒白写真で水中の世界を<br />

表現したこともあげられる.<br />

・作家賞:永坂嘉光<br />

氏は高野山の門前町に生まれ,高野山の写真を撮り続け,<br />

30 冊近くの写真集を出している.1990 年頃からは更に日<br />

本人の山岳信仰に視野を広げ,吉野,大峯をはじめとし北<br />

は恐山,南は桜島まで全国の聖地を巡っている.自然の中<br />

で神仏を信ずるという日本人独特の宗教観を長年に渡って

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