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2007 年の写真の進歩 - 日本写真学会

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し,ドーリー移動で最も加速度が高い結果を得,荷取扱者へ<br />

の働きかけと梱包による緩衝の強化での対応を図るとしてい<br />

る(76).岡山ら(東京農工大)は,アコースティック・エ<br />

ミッション法を用いて,保存紙資料の耐折回数・引裂強さ・<br />

引張強さ・ゼロスパン引張強さを測定し,この方法による紙<br />

の物理的測定値が自然劣化した紙の劣化度評価に有効である<br />

ことを示した(80).<br />

9 月には第 2 回「映画の復元と保存に関するワークショッ<br />

プ」が神戸・大阪で開催され,太田(大阪芸術大学)は映画<br />

の復元について,とちぎ(東京国立近代美術館フィルムセン<br />

ター)はフィルム・アーカイブの仕事と現状,森脇(京都府<br />

京都文化博物館)は映画復元の歴史と地域の映画文化アーカ<br />

イブ,石原(NPO 映画保存協会)は映画保存の里親制度と映<br />

画学校について,平野(富士フィルム)は映画フィルムの種<br />

類と特性,山本(IMAGICA ウェスト)はフィルム修復と復<br />

元の方法,越智(IMAGICA)はデジタル・インターメディエ<br />

イトとデジタル修復について,森田(撮影監督)は撮影者か<br />

らの提言といった様々な角度からの講演があり,さらに<br />

IMAGICA ウェストにて技術研修が行われた.劣化フィルム<br />

の問題は写真業界と同様の悩みであり,映画界と情報交換や<br />

連携することが望まれる.映像の保存では,「映画はフィルム<br />

で」「デジタルもフィルムで」が世界の動きであるという.<br />

平成 18 年度画像保存セミナーの講演内容を基に,「アナロ<br />

グおよびデジタルによるアーカイブの現状と課題」が日本写<br />

真学会誌第 70 巻 2 号に特集された.谷(東京大学史料編纂<br />

所)は,古文書の調査・研究における写真・デジタル画像の<br />

利用の変遷について,史料の研究利用と保存の両面での画像<br />

保存を模索する東京大学史料編纂所での取り組みを紹介し,<br />

問題点として画像データの技術の多様性が未知であることを<br />

挙げた.また,すでに多様化してしまったデジタルデータの<br />

有益な運用方法や基準となる仕様の構築が必要と述べている<br />

(日写誌,70(2),77).井上(奈良文化財研究所)は,写真<br />

の保存について,文化財写真の永久保存的記録という観点か<br />

ら,銀塩大判のカラーポジと白黒フィルムによる撮影を推薦<br />

している.また,デジタル画像の利用として採用した,PRO<br />

Photo CD の規格に対する長期保存性への懸念を示している<br />

(同,70(2),81).木目沢(国立国会図書館)は,デジタル<br />

画像の長期的な再生可能性についてと題し,所属館での電子<br />

出版物の長期保存と利用の可能性について,媒体・機器・OS・<br />

再生アプリケーションの観点から動作確認をおこなった.全<br />

体の 7 割弱の資料の利用に問題が生じたことからその解決策<br />

を探り,最後にメタデータやデジタルデータ・フォーマット<br />

の維持管理・標準化・規格化,著作権について,関係機関と<br />

の連携・協力を求めている(同,70(2),84).本多(福井県<br />

教育庁埋蔵文化財調査センター)らは,「福井豪雨」による水<br />

害被災写真原板の状況と救済についての詳細を記した.写真<br />

材料を考えると,水害に遭った場合には適確な専門的判断と<br />

迅速な対応が不可欠である.今回の経験から,災害時の対応<br />

マニュアルや災害復旧プログラムの作成,災害に遭わないた<br />

めの予防対策の整備の必要性を説いている(同,70(2),91).<br />

<strong>2007</strong> <strong>年の写真の進歩</strong> 147<br />

また,11 月に開催された画像保存セミナーでは,金子(東<br />

京都写真美術館)は文化財としての写真について,写真資料<br />

が重要文化財に「科学・産業技術遺産」「文化財の調査記録」<br />

での枠組みによって指定されてきた経緯に触れ,将来的には<br />

芸術としての写真,つまり「近代化遺産」としての新たな捉<br />

え方が必要との見解を述べた(画像保存,1).木下(東京国<br />

立博物館)は,①見やすさ,②わかりやすさ,③居心地のよ<br />

さを基本に展示空間づくりをおこなっている.文化財を安全<br />

に配置するとともに,照度制限等の展示条件を満たしながら,<br />

なおも美しい鑑賞環境を作り上げる照明デザインの役割につ<br />

いて事例を挙げ解説した(同,2).山口(東京都写真美術館)<br />

は,所属館の収集指針,作品管理および長期保存において重<br />

要な温湿度管理・空気質の最適化・虫菌への対応,使用して<br />

いる包装材料や保存方法,また展示における写真技法ごとの<br />

照度設定について具体的に解説した(同,7).<br />

7. 映画<br />

玉城和明(富士フイルム)<br />

7.1 概況<br />

<strong>2007</strong> 年の日本国内における映画興行収入は,洋画邦画合わ<br />

せて 1998 億円(前年比 97.8%),公開作品数 810 本(前年よ<br />

り 11 本減),入場者数 1 億 6319 万人(前年比 99.2%)と一<br />

昨年に比べ微減という結果であった.11 月末までの興業では<br />

前年比 100%を超えていたが,正月興行の 12 月が前年の 83<br />

%であったためこうした結果となった.<br />

邦画の公開作品数は 407 本,興行収入は 947 億円,洋画は<br />

403 本,1034 億円となり,一昨年と比べて再び洋画が邦画の<br />

興行収入を逆転した形となった.一昨年は興行収入 50 億円<br />

以上の作品が邦画で 6 作品あったのに対し,「HERO」「劇場<br />

版ポケットモンスター」の 2 作品に留まっている.<br />

洋画で興収 100 億円を突破したのは,「パイレーツ・オブ・<br />

カリビアン / ワールド・エンド」1 作品のみであった.<br />

スクリーン数は依然増加傾向にあり,昨年から 159 増え,<br />

3221 となった.この傾向は本年も続く見込みである.その<br />

内,シネコンのスクリーンシェアは 76%(前年比 104%)に<br />

達している.<br />

複合型商業施設の集客の核としてシネコンを設置する傾向<br />

は変わっていないが,その結果シネコン同士の競合が始まっ<br />

ている箇所もある.<br />

文化庁は,日本映画・映像の創造,流通促進,人材育成と<br />

普及,フィルムの保存・継承の推進を目的とした「日本映画・<br />

映像振興プラン」の平成 20 年度予算を,対前年わずか減額<br />

の約 20 億円とした.<br />

米国の映画興行収入は,96 億ドル(前年比 105.4%)で,<br />

それまでの最高だった 2004 年を上回り過去最高を記録した.<br />

公開本数は前年ほぼ同数の 603 本であったが確実にヒットが<br />

見込める「続編」に投資を集中し,好成績につなげた.<br />

7.2 フィルム<br />

富士フイルム(株)は業界初,デジタルインターメディエ

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